4.地震・火山噴火に対する防災リテラシー向上のための研究

 地震・火山現象の理解・予測を災害の軽減につなげるためには,地震・火山現象に関する科学的な理解を深め,現象を予測するだけでは必ずしも十分ではなく,地震・火山現象の理解・予測の研究成果を社会に適切に還元する必要がある。そのために,過去から近年までに発生した地震・火山災害の事例に対して,地震・火山噴火によって引き起こされる地震動や津波,降灰などの災害誘因が建物の脆弱性や暴露人口等の社会素因へ与える作用に焦点を当てながら,災害が発生した仕組みや要因を解明する。さらに,社会における防災リテラシーの実態調査等を通して,社会が被害の発生を抑止,あるいは軽減する対策を考えるために必要な知識体系を解明する。それに基づいて,災害の軽減に結びつく効果的な知識要素を特定し,防災リテラシー向上に資する実践的な研修プログラムを開発する。

(1)地震・火山噴火の災害事例による災害発生機構の解明

 史料・考古データ,地質データ等に基づく先史時代から現代に至るまでの災害事例のデータベースを活用するとともに,近年発生した地震・津波・火山災害の事例検証を通して,地震動・津波・火山噴出物などの災害誘因が,居住地の空間構造,コミュニティ構造,社会的脆弱性などの社会素因とどのように関連し被害をもたらすのか,その発生過程の解明に向けた文理融合による研究を行う。また,過去に起きた地震・津波・火山災害事例を対象に,災害からの復旧・復興過程に関して社会の回復力に焦点を当てた研究を進める。さらに,地震・火山研究で得られた知見の社会への発信に関しては,地域の行政機関やステークホルダーと連携する。
○大学は,過去に起きた地震・津波・火山災害事例を対象に,当時の社会情勢や周辺環境との関係を検討して被害の実態や人々の対応,復旧・復興過程を明らかにし,時代的・地域的な特性を導き出す。
○大学は,明治時代や江戸時代の史料をもとに古地形等を復元・可視化し,地形と災害被害の関連性を明らかにする。加えて,歴史的な地形変遷から将来の災害を予測し,災害予防と防災意識の啓発等への活用を図る。
○大学は,近年の地震災害に注目して,被害の地理的・社会的分布の分析と,コミュニティの社会的脆弱性や防災対策,リスク認知や防災意識などの検討を通して,地域的な災害発生機構を解明する。また,災害発生機構と防災リテラシーとの関連性を調査し,防災リテラシーを向上させるための方策を提案する。
○大学は,火山地域における災害軽減策に寄与するため,地域の行政機関やステークホルダーと連携して地震・火山研究の知見を整理し,社会へ適切に発信する手法について検討する。
○気象庁は,地震・津波・火山噴火に関する地域の災害特性や過去の災害履歴等の把握に資するデータベースの整理を進めることで,地域の特性や災害リスクの認知,防災リテラシーの向上を図る。

(2)地震・火山噴火災害に関する社会の共通理解醸成のための研究

 社会が地震・火山噴火災害による被害の発生を抑止,あるいは軽減する対策を考えるために必要な知識体系を明らかにすることを目的として,活動的な火山や想定巨大地震などを対象に社会の防災リテラシーの実態やニーズ調査を実施する。知識体系を明らかにする過程で,実効性のある防災対策に必要な知識要素を特定する。さらに,それらの知識要素を組み合わせることで構築した実践的な防災リテラシーの研修プログラムを,特定の地域において開発し,その効果を検証することで実効性を高める。また,マイクロジオデータやオープンサイエンスの手法を活用することで,社会の共通理解の醸成と防災リテラシーの向上を図る。
○大学及び防災科学技術研究所は,活動的な火山や想定巨大地震に着目し,住民や行政に対し防災リテラシーの実態やニーズ調査を実施する。自然災害事例マップやモニタリング情報等を積極的に活用しながら,実効性のある防災対策に必要な知識体系を明らかにし,それに基づいて知識体系を構成する要素を特定する。それらの知識要素を組み合わせることで,実践的な研修プログラムを開発し,その効果を検証する。
○大学は,地理空間情報,GIS,衛星測位データを統合して時空間データベースを構築し,避難行動に関するマイクロジオデータ等を収集して,防災・減災に関して社会的有効性の高い統合的な情報活用法を開発する。
○大学は,一般市民と研究者とが共同して観測研究や災害軽減の取り組みを進める「オープンサイエンス」の手法により,防災リテラシーの向上に向けた研究を進める。

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)