1.地震・火山現象の解明のための研究

 地震・火山災害を軽減するためには,地震・火山現象の根本的な理解を深めることが重要である。長期間にわたる過去の地震や火山噴火の発生事例,地震・火山現象の物理・化学過程や,構造,応力場,変形場などに関する研究を進め,地震や火山噴火が発生する仕組みを解明する。一旦発生すれば甚大な被害をもたらす低頻度大規模の地震・火山噴火現象に関しては,新たな観測データの解析に加えて,史料・考古データ,地質データ等の収集・拡充を進めて事例を増やし近代的な観測データとの比較研究を行うことで,その特徴や多様性を把握する。また,地震・火山噴火の発生予測やそれらが引き起こす災害誘因の予測を高度化するために,地震発生過程と火山現象の解明・モデル化に加えて,地震発生及び火山活動を支配する場の解明・モデル化を進める。

(1)地震・火山現象に関する史料・考古データ,地質データ等の収集と解析

  地震・火山噴火現象に関係する過去の事象を理解し,現在の状況の把握,ならびに将来の活動推移の予測に資するために,史料,考古資料,地質の調査から得られた情報を活用する。現存する膨大な史料の中から,文献として信頼できる地震・火山活動関連史料を抽出し,信頼性の高い史料データベースを構築する。考古情報については,これまでに公開されている10万冊以上に及ぶ考古遺跡の調査報告書から,地震・火山現象に関連する遺物や災害痕跡などの資料を収集し,データベース化を進める。

 地質情報については,活断層の位置,形状に関する情報の取得とその過去の活動履歴・地震規模を解明し,データベースの整備を進める。また,地震に伴う地質学的な痕跡を調査し,データの収集,整理を行うとともに,津波堆積物等の識別手法の高度化と年代決定精度の向上をめざす。火山噴火に関しては,地形・地質調査により活動的火山の噴火堆積物等の基礎データを蓄積するとともに,海底火山や海洋底の調査を行い,地質・岩石学的データの収集・整理を行い,データベース化を進める。

ア.史料の収集とデータベース化

○大学は,既刊の地震・火山関連史料集のデータベースを構築する。データベース化にあたっては校訂作業をほどこして正確な情報を提供する。また,史料中に現れる地名に位置情報を与え,史料を地図表示できるようにして利便性を図る。
○大学は,既刊の地震史料集に収録されていない地震・火山関連史料を収集する。特に,同一地点における有感地震記録の長期的な把握及び近代的な観測データのない明治初年の関係史料の発見に重点をおく。また,地震・火山関連史料を単体ではなく,史料群としての性格も把握することによって,史料から適切な理解を導き出せるように努める。

○大学は,史料に記述された地震・火山現象に関連する言語表現が,どのような自然現象をとらえたものであるのか,各種史料の比較検討によって確定し,地震・火山活動の規模や態様を推定するための指標として活用することを目指す。また,史料から検出できる家屋倒壊率を震度推定として適切に活用する方法について各種の事例から検討する。

○大学は,近世・近代の村絵図,国絵図,地籍図等から得られる地理空間情報を分析して,地形の歴史的変遷を考察する。それによって,過去の地震災害の実態解明を進めるとともに,将来発生が懸念されている災害の被害軽減への活用を図る。

イ.考古データの収集・集成と分析

○奈良文化財研究所は,全都道府県の既存考古データを網羅するとともに,災害痕跡考古資料の収集とデータベース作成・公開事業をさらに拡充する。その上で,南海トラフ沿いの巨大地震などを念頭に,特定地域の災害考古資料の収集と災害履歴の再構築・分析を行う。

○大学は,災害痕跡考古データベースと,文献史料から得られた地震・火山活動のデータベースを統合して検索することが可能なシステムを構築し,成果の活用を図る。

ウ.地質データ等の収集・集成と分析

○大学及び海洋研究開発機構は,津波堆積物の認定・対比手法の確立や,年代決定手法の改良を進め,津波をもたらした海溝型巨大地震の発生履歴とその規模の解明を進める。同時に,既存の津波堆積物データの再検討に加え,国内外での堆積物調査を実施する。
○産業技術総合研究所は,津波堆積物等の調査結果に基づき,津波による浸水履歴データベースの整備・更新を行う。また,地形・地質調査により,全国の活断層のセグメント区分の見直しや活動評価を進め,熊本地震後の調査などの最新知見に基づく活断層データベースの整備・更新を行う。さらに,複数セグメントにわたる連動型地震の履歴を解明し,地震の発生頻度や地震規模,破壊の多様性を明らかにする。
○大学は,火山噴火の規模や継続時間,爆発性,噴火活動の推移を評価する上で重要となる噴出量等の基礎データを収集・整理する。特に,火山噴出物を用いて岩石・鉱物学的解析を行い,マグマ溜まりの深度や温度,含水量等の情報を得る。
○産業技術総合研究所は,火山防災のために監視・観測体制の充実が必要な火山を対象として火山地質図の整備を推進する。また,全国の火山を対象として,噴出量や歴史記録を含めた噴火年代等の基礎的な地質情報を収集した火山データベースの整備・更新を行う。さらに,火山噴出物から噴火年代を高分解能で推定する年代測定手法を開発する。

(2)低頻度大規模地震・火山噴火現象の解明

 史料・考古データ,地質データ等と近代的な観測データを対比・統合することによって,近代的な観測開始以前の現象の規模・発生場所を明らかにし,地震,津波,火山噴火の発生履歴を解明する。低頻度大規模地震については,海外で発生した事例も含め近代的観測データを解析し,その特徴を手掛りに史料・考古データ,地質データ等の分析を進める。特に,東北地方太平洋沖地震及び南海トラフ沿い・千島海溝沿いの巨大地震に関する研究を優先的に実施する。火山に関しては,カルデラ噴火を含む低頻度の大規模噴火も対象とし,活動的火山の噴火履歴及びマグマの発達過程を高い精度で明らかにする。また,噴火推移・履歴の時空間解像度を上げるため,地質学的解析手法,岩石鉱物の微細組織解析及び年代学的手法の開発・改良を進める。
○大学は,南海トラフ沿いの巨大地震・津波や西南日本内陸部など,過去に繰り返し大規模な地震が発生している地域について,海外所在の史料も含め新資料の発掘に努める。津波痕跡に関しては,津波堆積物の形成過程を分析することによって,現存する堆積物から過去の現象の規模を推定する手法の構築を目指す。
○産業技術総合研究所は,日本列島周辺の各海溝沿いで発生する低頻度大規模地震について,津波堆積物や海岸地形など地質学的調査により,発生履歴及び津波波源を解明し,震源断層モデルを構築する。
〇大学,防災科学技術研究所,海洋研究開発機構及び産業技術総合研究所は,東北地方太平洋沖地震の震源域,南海トラフ沿いや千島海溝沿いにおける地震活動や中規模以上の地震の震源過程を調べ,巨大地震の発生との関連に関する研究を実施する。
○大学は,低頻度大規模地震後の余効変動を理解するために,東北地方太平洋沖地震後の重力変化を追跡することにより,地下で進行している物質移動や密度変化の要因を明らかにする。
○海洋研究開発機構は,日本海溝沿いや南海トラフ沿いにおいて,高精度な海底下3次元構造調査を実施し,海底震源断層の連続性やセグメント化に関する評価方法について検討する。
○大学は,伊豆大島や霧島山等での爆発指数(VEI)が4~5クラスの大規模噴火を対象として,地質調査や,噴出物に対する物質科学的解析,数値モデル解析を行い,マグマ供給系の実体を解明する。また,近代以降,海外で発生した大規模噴火について,古記録などをもとに噴火の先行現象や噴火推移,被害状況を整理する。
○大学は,洞爺や阿蘇等のカルデラ火山を対象として,放射非平衡を利用した年代測定法などを適用し,カルデラ噴火に至るマグマの蓄積や分化の過程を解明する。また,鬼界カルデラ等の海底カルデラを対象として物質科学的研究を進める。

(3)地震発生過程の解明とモデル化

 プレート間で生じる低速変形から高速滑りまでの多様な滑り過程を包括的に理解するために,スロー地震を含む地震活動の特徴や,スロー地震と通常の地震の発生メカニズムの類似性・関連性及び海域のプレート間の固着状態等を明らかにする。また,地震時の動的破壊過程や,複雑な断層系における断層間の相互作用による連鎖的な破壊現象,地震活動の階層性等に関するデータ解析や理論研究を実施する。さらに,地球物理・地球化学的観測や野外観察,科学掘削で採取された試料の解析,室内実験や数値シミュレーションなどの研究を通して,地震発生や下部地殻・上部マントルのレオロジー特性に与える地殻流体の効果や,滑りの多様性を生み出す断層面の摩擦特性及び断層破砕帯の微細構造等に関する理解を深め,地震断層滑りの物理・化学モデルを構築する。

ア.地震発生機構の解明

○大学,防災科学技術研究所及び海洋研究開発機構は,陸域及び海域における長期間の観測により,プレート境界で発生する様々な時間スケールをもつ滑り現象を明らかにする。日本海溝沿いでは,東北地方太平洋沖地震発生後のプレート間の固着状態と,周辺の応力場の時空間変化を明らかにする。また,南海トラフ沿いでは,モニタリング手法の高度化を進めるとともに,プレート境界周辺の詳細な不均質構造を推定し,多様な滑り現象の発生機構を解明する。
○大学及び海洋研究開発機構は,地震・地殻変動観測に基づいて震源分布,地震波速度構造,ひずみ・応力場等を推定するとともに,室内実験や数値シミュレーションに基づいて,複雑な断層系における断層間の相互作用及び連鎖的な動的破壊過程についての理解を深める。
○大学は,地震活動の階層性を定量化する手法を開発する。また,世界各地の沈み込み帯を対象とした国際共同研究を推進し,異なる地質学的環境における地震活動の階層性の特徴を明らかにする。
○大学は,鉱山で得られた掘削コア等の分析と,震源のごく近傍で取得された観測データの解析から,応力と地震活動の関係を明らかにする。
○大学及び海洋研究開発機構は,地球物理・地球化学的観測や室内実験,数値シミュレーション,野外観察に基づいて,地震発生及び下部地殻・上部マントルのレオロジー特性に及ぼす流体の影響や地殻流体の存在形態を明らかにする。

イ.地震断層滑りのモデル化

○大学及び海洋研究開発機構は,国内外の海域及び陸域の科学掘削で採取された試料や,地球物理・地球化学的観測,室内実験,数値シミュレーション,野外観察から得られた情報を統合して,断層面の摩擦特性の解明など地震断層滑りの物理・化学モデルの高度化に取り組む。
○大学及び海洋研究開発機構は,応力載荷速度の変化などの様々な擾乱に対する断層滑りの応答を室内実験や理論により解明し,観測データと比較することで,断層滑りのダイナミクスを明らかにする。また,摩擦特性が不均一な断層における複雑な滑り及び地震サイクルの複雑性に関する理解を深める。
○産業技術総合研究所は,地質調査に基づいて,岩石のレオロジーの空間的不均質が断層の滑り挙動に与える影響を評価する。また,断層破砕帯の微細構造解析及び室内実験に基づいて,断層の滑り機構・強度や脆性―塑性遷移領域におけるひずみの集中過程を明らかにする。

(4)火山現象の解明とモデル化

 噴火の推移や多様性を理解するためには,現象の発生源にできるだけ近づき,多項目観測を実施することが不可欠である。一方,地表付近の現象の理解には,深部からのマグマ供給過程の理解も重要である。そのため,活火山周辺や火口近傍において地球物理・地球化学的観測,火山噴出物や火山ガスの分析からなる多項目同時観測・採取・解析を行い,火山の深部から浅部で進行する様々な過程や噴火現象を時空間的に定量化する。また,火山現象はマグマの動きや状態の変化に支配されるため,マグマの流動・破砕・脱ガス・結晶化などの各素過程の物理・化学的な実験研究や,数理モデルによる理論解析を進め,マグマ溜まりや火道内過程のモデル化を行う。さらに,噴火様式の分岐条件や噴煙形成の支配因子を定量化し,多くの火山に適用することを念頭に置いて噴火機構モデルの一般化を目指す。

ア.火山現象の定量化と解明

○大学及び海洋研究開発機構は,霧島山,阿蘇山,伊豆大島等,海域を含む国内外の活動的な火山や最近噴火した火山を対象に,火山周辺や火口近傍における多項目観測,リモートセンシング観測,噴出物の物質科学分析を行い,噴火発生前,噴火継続中,噴火終息後の火山活動の推移やその多様性を把握する。これらの結果と素過程の理解に基づいて,マグマの蓄積,上昇,噴火を統一的に理解し,火山活動のモデル化を進める。また,新たな観測・分析手法の開発や既存の手法の高度化にも取り組む。

○防災科学技術研究所は,基盤的火山観測網やリモートセンシング技術等による多項目の火山観測データを活用し,多様な火山現象の発生機構の解明や火山災害過程を把握するための研究開発を進める。また,火山体周辺や火口近傍において火山観測網を補完する機動的な調査観測を行うほか,遠隔で火山ガスや火山灰等の分析を行うモニタリング技術を開発し,火山現象の定量化を図る。

○産業技術総合研究所は,活動的な火山において火山ガスの観測を実施する。マグマ性の噴火を繰り返して大量の火山ガス放出を継続している火山においては,噴火活動推移の多様性をもたらす火山ガス放出過程のモデル化を行う。また,熱水の関与が見られる火山においては,熱水系とマグマ性ガスの相互作用を明らかにする。

○産業技術総合研究所は,三宅島等のマグマ噴火を繰り返す火山を対象として,火山活動履歴に基づく活動推移の類型化を行う。また,桜島等を対象として,火山灰粒子の岩石・鉱物学的特徴の経時変化と,地球物理・地球化学的観測データを比較することで,爆発的・非爆発的噴火の分岐メカニズムの解明を行う。これと共に,噴火準備段階から噴火に至るまでのマグマ挙動の解明に向けて,噴火履歴に沿った噴出物の岩石・鉱物学的特徴の解明及び高温高圧実験装置を用いた実験岩石学的研究を行う。特に,大規模カルデラ火山に対して,マグマ供給系の時間発達過程を解明することで,大規模噴火の準備過程や噴火の開始に関する研究を行う。

イ.マグマ溜まりと火道内過程のモデル化

○大学及び防災科学技術研究所は,火道モデルや噴煙拡散等の数値モデル解析を行い,噴火に伴う諸現象とその推移,噴出量・噴出率などの物理パラメータ,マグマ供給系の実体とその時間変化を解明する。また,マグマ溜まりや火道内過程を支配するマグマの流動・脱ガス・結晶化などの各素過程に対する物理・化学的な実験を行い,噴火様式を支配するマグマの物質科学的性質を明らかにする。数値モデル解析の結果と素過程の理解に加えて,地球物理・地球化学的観測や物質科学分析の結果を組み合わせることにより,噴火機構及び噴火推移の理解を深める。

(5)地震発生及び火山活動を支配する場の解明とモデル化

  地質学的環境の特性に応じて,プレート境界域と海洋プレート内部,内陸を含む地殻・マントル内の地震発生域,火山地域に分けて,震源分布,構造,応力場,ひずみ場,流体分布等を観測により明らかにする。特に,プレート境界域においてはスロー地震活動等の滑りの多様性を明らかにし,内陸地震発生域においては,実験・物質科学的知見に基づくレオロジー構造モデルの構築や震源断層への応力載荷過程についての理解を深める。さらに,火山周辺地域に関しては,観測データの解析と物質科学的研究を統合し,熱水系及びマグマ供給系を含む火山体浅部からやや深部までの構造を明らかにする。
 地震活動と火山活動の誘発・抑制現象の事例を引き続き蓄積するとともに,地震発生及び火山現象を支配する場の理解に加えて,室内実験,理論モデルを通して地震と火山活動の相互作用に関する研究を推進する。
 海域から陸域までを包括した地震波速度・減衰構造,構造境界の分布の精緻化を進めるとともに,比抵抗構造,応力場,変形場などの情報を含めることにより,多くの研究者が利用できる標準的な構造共通モデルをより一層発展させ,地殻活動データ解析や地震発生数値シミュレーション,強震動の事前評価・即時予測手法,火山災害予測手法などの高度化につなげる。

ア.プレート境界地震と海洋プレート内部の地震

○大学,海洋研究開発機構及び産業技術総合研究所は,日本周辺及びニュージーランドなどの海外の沈み込み帯において,プレート境界面の形状とプレート境界周辺の地下構造及び応力場,ならびに通常の地震活動とスロー地震活動の分布等を明らかにする。

○大学及び海洋研究開発機構は,長期孔内観測システムを含む海域における地殻変動観測を推進し,ゆっくり滑りや地震の発生等の地殻活動の現状を把握する。また,ゆっくり滑り発生領域及びその周辺の地震学的・電磁気学的構造の時間変化の検出を試み,ゆっくり滑りの発生場の理解を深める。
○大学及び海洋研究開発機構は,日本海溝アウターライズ域周辺の地震観測と構造探査を実施し,沈み込む前の海洋プレート内の地下構造や震源断層の分布,地震発生域における流体分布を推定する。また,地球化学的観測に基づいて,プレート境界周辺域の流体変動のモニタリングを行う。
○大学及び海洋研究開発機構は,日本海溝周辺や関東地方などの稠密な地震観測が行われている地域を対象に,スラブ内地震の震源域における不均質構造を高い空間分解能で推定する。さらに,スラブ中の含水鉱物の脱水やマントルの主要構成岩石の相転移に着目して,スラブ内地震の発生機構の理解を深める。

イ.内陸地震

○大学及び海洋研究開発機構は,東北地方太平洋沖地震後の地震活動・応力場・ひずみ場の時間変化を捉え,地震波速度・減衰構造,比抵抗構造及び室内実験・物質科学的知見に基づいて,レオロジー構造モデルの高度化を図る。
○大学は,東北地方太平洋沖地震前後の地殻応答シミュレーションを実施し,地震・地殻変動等の観測結果や古地震学的知見との比較により,内陸地震震源断層への応力載荷過程の解明を進める。また,誘発地震発生域などでは,地震活動及び発震機構解の特徴に基づいて地殻流体の時間発展を推定し,内陸地震の発生に及ぼす地殻流体の役割を分析し,内陸地震発生モデルの構築を目指す。
○大学は,西南日本のひずみ集中帯や島弧会合部などにおいて,高密度地震観測と電磁気観測などの実施に加えて,既存データの再解析により,内陸地震の震源断層周辺の不均質構造や変形場,流体分布を捉え,断層への応力載荷過程及び間隙流体が断層の強度低下に及ぼす影響を明らかにする。
○大学は,断層破砕帯における地球物理・地球化学的観測に基づいて,断層破砕帯の透水性及びその構造を推定する。また,地殻流体のモニタリング手法を開発する。
○国土地理院は,ひずみ集中帯などにおいて,GNSS・SAR干渉解析・水準測量による高密度地殻変動観測を実施し,東北地方太平洋沖地震発生後の地殻変動を明らかにする。

ウ.火山噴火を支配するマグマ供給系・熱水系の構造の解明

○大学は,草津白根山,蔵王山,御嶽山等,近年噴火したが地下構造の推定が不十分な火山,あるいは活発な火山活動に伴い顕著な地殻変動や地震活動が最近認められる火山を対象として,自然地震や雑微動を用いた地震学的解析や地下の比抵抗を求めるMT法により,地表から深さ10㎞程度までの地下構造を推定する。将来噴火する可能性が高い火山についても,山体内部の構造や状態を把握するための基礎的観測を実施する。
○大学及び海洋研究開発機構は,鬼界カルデラ等において地球物理学的観測等を実施し,カルデラ噴火を引き起こした火山のマグマ供給系を明らかにする。


エ.地震発生と火山活動の相互作用の理解

○大学は,地震及び活火山の分布や地震学的構造,電磁気学的構造,応力場,温度場,地球化学的特性,数値シミュレーションなどを組み合わせ,地震の発生しやすい領域とマグマなどの地殻流体の生成と蓄積が起きる領域との関係を明らかにする。これらの研究を基に地殻・マントルの変形場を理解し,地震発生と火山活動の相互作用の理解を目指す。
○大学は,大地震によって火山噴火が誘発される現象や火山活動が地震活動や断層の動的破壊過程へ及ぼす影響など,観測の実施と過去のデータ解析を通して引き続き事例を蓄積する。

オ.構造共通モデルの構築

○大学及び防災科学技術研究所,海洋研究開発機構,産業技術総合研究所は,日本列島及びその周辺域を対象とする海域から陸域までを包括した地震波速度・減衰構造,構造境界の分布の精緻化を進めるとともに,比抵抗構造や応力場,変形場,震源断層の形状などの情報を含めた構造共通モデルの構築を進める。

○大学は,陸域及び海域における地殻変動データに加えて,衛星重力データを用いて列島規模の広域粘弾性モデルを開発する。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)