1.はじめに

 平成26年9月27日に発生した御嶽山での火山噴火は、死者57名、行方不明者6名(平成26年10月28日時点)もの被害をもたらし、戦後最悪の火山災害となった。この噴火は、マグマ噴火と比較すると先行過程のシグナル(先行現象)の小さい水蒸気噴火であり、事前に噴火の発生に関する適切な情報提供を行うことが出来なかった。また、火山噴火と人間の活動に関する問題として、紅葉時期の昼時に発生したため、火口付近を訪れていた観光客も多く、噴火の規模と比較すると多くの犠牲が出たという問題が提起された。
 火山観測研究に関しては、大学の法人化により限られた研究リソースで効果的に研究を進めるために、「選択と集中」の考え方の下に、重点的に観測研究を推進する火山を絞ってきたが、今回の噴火によって、

  1. 当初選定した重点的に観測研究を行うとした火山以外でも噴火は起こり得ること
  2. 水蒸気噴火は、マグマ噴火に比較して噴火発生予測が難しいこと
  3. 比較的規模が小さな噴火であっても、多大な犠牲をもたらし得ること

といったような、災害の軽減を図るための課題が改めて浮き彫りとなった。
 地震火山部会においては、平成25年11月に科学技術・学術審議会で建議された、平成26年度からの5か年の観測研究計画(「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」、以下「5か年計画」という。)に基づき、火山観測研究を推進してきているところであるが、今般の御嶽山の噴火災害で明らかになった課題を真摯に受け止めて、火山観測研究の現状に関しての課題を整理し、今後の対応に関して、主に以下の5点について検討を行い、取りまとめた。
(1) 御嶽山における観測研究体制
(2) 火山観測研究全体の方向性
(3) 戦略的な火山観測研究体制
(4) 火山研究者の人材育成
(5) 防災・減災対策への貢献
 今後、火山観測研究を推進する際には、以下の方向性に沿って、関係機関が連携し、防災・減災に貢献できるように取り組んでいく必要がある。

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