人文・社会科学の振興について-21世紀に期待される役割に応えるための当面の振興方策-(報告) はじめに

 人文・社会科学は、人々の思索や行動あるいは社会的な諸現象の分析・考察を通して、人間の精神生活の基盤を築き、日々の営みに希望や行動の手がかりを与えるとともに、社会的合意形成や社会的諸問題の解決に寄与するものである。
 今日、日本を含む国際社会は、世界的規模での人口問題、環境問題の噴出、科学技術の加速度的進展の負の側面、また経済不安や民族対立、テロリズムの国際化など、様々な問題に直面している。
 私たちの身近な世界に目を転じても、日々の営みにおける精神不安、家族の絆や社会の連帯の希薄化に伴う社会規範の弛緩、子供をめぐる教育問題、高齢化に伴う社会的問題等、人間の生き方にかかわる諸問題が現出している。
 これらは、転換期における、文化・政治をめぐる諸制度のゆらぎや軋みの現れといえよう。
 こうした現代的諸問題を克服し、科学技術とも調和した新たな文化的アイデンティティや文明を構築するためには、今一度、人間や社会の在り方について問い直すことが必要であり、人文・社会科学が有する批判的役割や文化の担い手としての役割、さらに人文・社会科学による新たな知の組み換えなどの使命に対する期待が大きい。
 これらのことを踏まえて、平成13年6月に、科学技術・学術審議会学術分科会の下に人文・社会科学特別委員会を設置した。同特別委員会では、学術審議会等においてこれまで審議されてきた人文・社会科学の振興方策について引き続き検討を行った。その検討結果を踏まえて、このたび本報告を取りまとめた。
 本報告は、我が国における人文・社会科学の研究・教育の現状を見据えつつ、上記の期待に応えていく上で、人文・社会科学分野において当面重要と考えられる課題及び振興方策を提案するものである。

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