1.地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進 (5)近年発生した地震に関する観測研究

機関名略称: 国土地理院→地理院 防災科学研究所→防災科研 産業技術総合研究所→産総研 海上保安庁水路部→水路部 通信総合研究所→通総研

(a)1999年トルコ・イズミット地震(Ms7.4)

  • 震源域に展開していた日本-トルコ合同微小地震観測網により、この地震の震源近傍で頻発していた群発地震活動が観測されていた。(大学)
  • 本震の強震波形から、この地震の震源過程が推定されており、破壊域の長さや断層面上でのすべり量分布などが得られた。(大学)
  • 地震発生直後から実施された余震観測からは、断層に沿う線状の余震分布が得られ、更にアスペリティー周辺部で余震が多いなどの特徴が明らかになった。(大学)
  • 震源域を横切る測線で、地震発生前から実施し、地震後も続行した比抵抗探査からは、震源近傍は高比抵抗領域であり、余震もこの領域に発生していることがわかった。また、西部の余震活動ギャップ域では逆に比抵抗が低いことも明らかになった。ただし、比抵抗構造とVp/Vs構造との対応は今のところ明瞭ではない。(大学)
  • トルコの北アナトリア断層の調査では、断層北西部で活動した1999年の2つの地震セグメントと過去における地震セグメントは同一ではないこと、また、比較的規模の大きな屈曲を伴った断層の不連続部分が、地震セグメントの境界となりやすいことが推定された。(産総研)

(b)1999年台湾・集集地震(Ms7.7)

  • 地形調査、余震観測のデータ解析によって、1999年台湾大地震の発生が、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの衝突域にできたすべり面(デコルマ)とそこから立ち上がるランプ面の形状に支配されていたことが分かった。(大学)
  • 現在進めている活断層研究・手法を用い、この地震の位置・規模・発生時期がどの程度予測可能であったかの検証をおこなった結果、発生位置はほぼ予測通りであることが判明した。(大学)
  • この地震の北側への破壊の終焉が、1935年の地震によって応力が解消されていたためであったことを明らかにした。(気象庁)

(c)2000年鳥取県西部地震(M7.3)

  • 稠密地震観測によって余震の分布が詳細に調査された。特にこの地域では1989年以来、M5クラスの地震が断続的に発生しており、それらの前駆的地震活動と余震域との関連が調査された。その結果、2000年の地震は前駆的地震活動の端から破壊が始まり、北西部及び南東部の地震空白域に拡大したことが分かった。また、余震は本震の大きな破壊域の周辺で多数発生していること、北西部においては本震の破壊面と直交あるいは斜行した方向の地震の並びが幾つか存在することなど、震源域の詳細な情報が得られている。さらに、本震の近くのモホ面付近で低周波地震活動が起こっていることも見出されている。(大学、気象庁等)
  • 鳥取県での比抵抗構造探査の結果、鳥取をほぼ東西にわたって線状に分布する地震帯の南端を境界として、地殻の比抵抗構造に極端なコントラストがあること、地震発生層の下には低比抵抗領域が存在することがわかった。このような構造は鳥取県西部地震の震源域内でも見られた。(大学)
  • 横ずれ断層の直上においても複数の分岐断層(フラワー構造)が形成されることを理論的に示した。(大学)
  • この地震の初期破壊継続時間2.5秒は、従来得られている地震規模との比例関係を満たすことも確認された。(大学)

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研究開発局地震調査研究課