1.地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進 (1)定常的な広域地殻活動

機関名略称: 国土地理院→地理院 防災科学研究所→防災科研 産業技術総合研究所→産総研 海上保安庁水路部→水路部 通信総合研究所→通総研

(1.1)具体的目標

(ア)プレート運動とプレート境界域の調査

(a)日本列島周辺でGPS、VLBI、SLR等の観測により、プレート間の相互運動を決定する。
(b)広域かつ長期にわたる地震観測データを用いて、プレート境界の形状や物性を推定し、その不均質構造と地震活動の関係の解明を目指す。
(c)海洋における精密海底地形と音響画像の調査及び音波探査、磁気・重力探査により、プレート境界域の微細な変動地形や地殻構造解明を行う。

(イ)プレート間カップリングの空間分布の把握

(a)プレート内部の変形をGPS等の地殻変動データを用いて捕捉することにより、プレート境界における固着域とすべりを生じている領域を推定し、プレート間カップリングの空間分布の把握を目指す。
(b)地震観測と地殻変動観測によってプレート境界での急速なすべり(地震)とゆっくりしたすべりを推定する。
(c)人工震源を用いた探査により、カップリングの空間分布に関係したプレート境界の状態の違いを解明する。
(c-1)日本海溝の不均質構造の解明。
(c-2)海底地震による伊豆・小笠原海域の不均質構造の解明(蛇紋岩の役割)。
(c-3)フィリピン海プレートの沈み込み形態に関する観測研究。

(ウ)プレート内部の不均質構造の解明

(a)島弧下の不均質構造の解明、特に地殻の大局的構造と深部断層系のマッピング。
(a-1)日本海溝-東北日本弧-日本海の大局的な構造変化の解明。
(a-2)東北日本弧の不均質構造と地殻活動の解明。
(a-3)北海道中軸部(日高地域)における島弧間衝突による地殻変形過程の解明。
(a-4)千島・カムチャツカ海溝-北海道東部-オホーツク海の地殻、マントル構造の解明。
(b)日本列島における電磁気学的構造研究の推進。
(b-1)ネットワークMT法観測による日本列島の大局構造の解明 -北海道、東北、四国・中国及び九州地域における研究観測及び解析手法の高度化。
(b-2)広帯域MT法観測による精密構造探査。

(エ)長期的な地震発生確立の推定

(a)断層の横ずれ量推定手法の確立。
(b)活断層系から発生する地震の震源規模の予測の高度化。
(c)古文書・津波調査による地震発生時期の解明。

(1.2)実施状況

(ア)プレート運動とプレート境界域の調査

(a)日本列島周辺でGPS、VLBI、SLR等の観測により、プレート間の相互運動を決定する。

  • GPS観測により、西南日本がアムールプレートの一部であることが示された。(地理院)
  • プレート内の変形の研究により、西南日本の速度場はフィリピン海プレートの沈み込みと東北日本弧の衝突による寄与からなることが示された。(地理院)
  • 南太平洋のGPS連続観測の解析から、太平洋プレートには有意な内部変形は認められなかった。(地理院)
  • 銭州岩礁でのGPS観測により、銭州岩礁から神津島・新島に至る構造線を境界に、応力場の変化や相対運動の境界が見いだされ、「伊豆マイクロプレート」の存在が示唆された。(大学)
  • 父島で行ったVLBI観測の結果、フィリピン海プレート上の父島が鹿島局に対して西北西に1年あたり約3.7cm移動していること、鹿児島県姶良町の観測局と父島局との間の基線長が年間約7cm短縮していることが検出された。(地理院)
  • 首都圏広域地殻変動観測のVLBI観測局位置を国際座標系で位置づけた。(通総研)
  • SLRからは、下里、父島、石垣島がユーラシアプレートに対して、それぞれ年間3.2cm西北西、6.6cm西北西、3.9cm南南東に動いていることが明らかになった。(水路部)

(b)広域かつ長期にわたる地震観測データを用いて、プレート境界の形状や物性を推定し、その不均質構造と地震活動の関係の解明を目指す。

  • 一元化処理が開始され、新しい走時表及び震源決定のための観測点ウェイトの導入により、内陸の地殻内に発生する地震について、リニアメントやクラスター分布がより明瞭にとらえられるようになった。(気象庁)
  • デジタル化した検測値を用いて、これまで気象庁地震カタログの収録期間が1926年1月以降であったものを、現存する最古の地震観測原簿に対応する1923年8月以降に延伸した。(気象庁)
  • 過去に遡った地震カタログ精度の改善を図ることで、現在の地震活動との比較評価がより信頼度を持つて行えるようになってきており、1923年関東地震の震源域と現在の南関東の地震活動域との関係等につき知見が得られた。(気象庁)・関東・東海直下の地震活動、発震機構の分布、反射波や変換波の解析から、詳細なプレートの形状の把握、東海地域の固着域の推定、及び地震活動変化の把握と、その解釈が行われた。(防災科研)
  • 関東・東海地域における、より空間分解能の高い地震波速度構造トモグラフィー、地震波減衰構造が求められ、プレートの微細構造や、異方性の存在が確かめられた。(防災科研)
  • 地震活動予測統計モデルが提示された。(防災科研)
  • GPS観測データの解析から、三陸沖における大地震震源域のアスペリティーの位置が50~100km程度の分解能で明らかに成り、非地震性すべり領域がか成りの面積を占めていること、この部分がバリアとして働いている可能性が高いことがわかった。(大学、地理院)
  • 三陸沖において発生する微小地震の波形データの解析から、相似地震からなるクラスターが存在することが明らかとなった。相似地震群の空間分布を、GPSから明らかとなった広域的なカップリング強度の分布と比較すると、相似地震の発生領域は広域的に強く固着していると考えられる領域の周辺に分布することが分かった。相似地震は、非地震性すべりを起こしている領域に囲まれた小さなアスペリティーの繰り返し破壊を反映していると考えられ、相似地震の活動履歴からその場における平均的な非地震性すべりレートの見積もりが可能であることが分かった。また、1896年の津波地震の震源域周辺には多数の相似地震が発生しており、津波地震の震源域では、非地震性すべりを生じている領域の中に多数の小さなアスペリティーが存在していることが示された。このような小さなアスペリティーが同時に多数破壊することにより、津波地震の発生につながるものと考えられる。(大学)
  • 三陸沖における合同観測データの解析により、沈み込んだ太平洋プレートの第2層に微小地震が多く発生していることを明らかにした。(大学)
  • 微小地震観測網の整備により、九州・琉球地域の深発地震面の位置と形状及び深発地震の発震機構の精度が大きく向上した。(大学)
  • 九州下の地殻・最上部マントルの3次元速度構造が推定され、地溝帯に対応する低速度領域、火山フロントより背弧側の深さ70km付近の低速度領域などがみつかった。(大学)
  • 九州中南部域における浅発地震の発震機構解の解析から、九州南部域ではほぼ南西-北東圧縮、南東-北西引張の横ずれ型が卓越するが、九州中部域では西南西-東北東圧縮、北北西-南南東引張の横ずれ型に成り、応力場が徐々に時計周りに回転していることが明らかとなった。(大学)
  • 九州・琉球弧の背弧の北端部にあたる男女海盆において、地殻浅部からマントル最上部にまで至る詳細な地震波速度構造を明らかにすることにより、背弧域において、リフティングやマントルアップウエリングなどの活発な活動があることが推定された。(大学)

(c)海洋における精密海底地形と音響画像の調査及び音波探査、磁気・重力探査により、プレート境界域の微細な変動地形や地殻構造解明を行う。

  • プレート境界域において測量船を用いた調査を実施した海域については、海底地形図、海底地質構造図、変動地形分類図を作成した。(水路部)
  • 平成10年に測量船「昭洋」が就役し、日本海溝において、マルチビーム音響測深機による詳細な海底変動地形、深海用曳航式サイドスキャンソナー「アンコウ」による鮮明な海底音響画像、マルチチャンネル音波探査装置による浅部地殻構造のデータが得られた。駿河湾から遠州灘にかけては、マルチビーム音響測深機のサイドスキャン機能を使用した調査を実施し、鮮明な海底音響画像が得られ、海底の変動地形が明らかになった。日本海東縁部については、平成11年度までに、ほぼ全域の調査が終了し、新生プレート境界と考えられる日本海東縁部の海底変動地形の全容が明らかになった。(水路部)・マルチビーム音響測深機を用いた調査により、日本周辺海域の多くの詳細な海底地形が判明した。成果は順次、海の基本図(1/20万)として取りまとめ、海底地形図として刊行している。(水路部)
  • 地磁気・重力調査については、平成10年~平成12年に留萌沖、伊豆南東方沖、三宅島西方海域、島根沖の地磁気・重力測量を終了し、地磁気全磁力異常図、フリーエア重力異常図、ブーゲー重力異常図を作成した。(水路部)

(イ)プレート間カップリングの空間分布の把握

(a)プレート内部の変形をGPS等の地殻変動データを用いて捕捉することにより、プレート境界における固着域とすべりを生じている領域を推定し、プレート間カップリングの空間分布の把握を目指す。

  • GPSデータから東海・南関東のプレート境界面固着域を推定し、プレート境界域の変形が周辺に分配されるメカニズムが普遍的なものであることを指摘した。(地理院)
  • 1944年東南海地震、1946年南海地震に伴う地殻変動データを整理し、断層モデルの推定を行った。非地震時の変動を考慮することの重要性、陸域のデータだけでは解像力が不足すること、四国でプレート境界から派生した副断層が活動した可能性などを指摘した。(地理院)
  • フィリピン海プレートの沈み込み帯では、GPS連続観測データから、日本列島中央部、特に伊豆半島周辺のプレート内での変形の影響が認められ、想定東海地震の震源域で従来考えられていたよりも歪蓄積速度が小さい可能性が指摘された。ここでのプレート境界の固着域の推定もこの結果と矛盾しないことから、東海地震が発生しなかったことが説明できる可能性が示された。(地理院)
  • 1994年三陸はるか沖地震の余効すべりの領域は、最初の10日間は本震の破壊域と一致していたが、その後の1年間では深部と南側に拡大していた。1年間の余効すべりによって解放されたモーメントは少なくとも本震の80%に達する。一方、東北地方南部のプレート境界は強く固着している。(地理院、大学)
  • 日本列島の現在の地殻変動場を明らかにするとともに、長期的な地殻活動との関連を示した。また、日本列島内陸部の変動帯(新潟-神戸構造帯)の存在を提唱し、内陸地震の発生を考える上での重要性を指摘した。(地理院)
  • 日本列島のGPS連続観測結果に含まれる周期成分から、地殻変動の進行に年周を基本とする季節成分が存在する可能性と、それが日本列島周辺の海溝で発生する巨大地震の季節性と関連する可能性を指摘した。(地理院)

(b)地震観測と地殻変動観測によってプレート境界での急速なすべり(地震)とゆっくりしたすべりを推定する。

  • GPS連続データの解析に時間発展インバージョン手法を応用し、1997年に発生した豊後水道付近のサイレント地震の存在を指摘した。また、直前に発生した日向沖地震との関連を詳細に明らかにした。(地理院・大学)
  • 地殻変動連続観測データから、房総半島沖でもサイレント地震を検出した。(大学・防災科研・地理院)
  • 1978年宮城県沖地震に続いてプレート境界で顕著な余効すべりが発生し、その発生域が本震の断層面から深部へ向かって移動したこと、余効すべりによるモーメント解放量が本震の80-140%に及んだことを明らかにした。(大学)

(c)人工震源を用いた探査により、カップリングの空間分布に関係したプレート境界の状態の違いを解明する。
(c-1)日本海溝の不均質構造の解明。

  • 三陸沖において、プレート境界反射強度と地震活動との逆相関性が発見され、流体の関与によるカップリング強度低下の可能性が指摘された。(大学)
  • 1994年三陸はるか沖地震の破壊域とその周辺地域において顕著な構造の差が見られた。(大学)

(c-2)海底地震による伊豆・小笠原海域の不均質構造の解明(蛇紋岩の役割)。

  • 伊豆小笠原海溝にける海底地震観測により、プレート境界付近でマントル物質が蛇紋岩化していることが推定された。これは、同地域で浅い大地震が発生しないことを説明する有力な考えである。(大学)

(c-3)フィリピン海プレートの沈み込み形態に関する観測研究。

  • 南海トラフから四国下中央構造線までのフィリピン海プレートの形状を解明した。土佐ばえから四国下中央構造線までのプレート境界が極めて反射的であり、沈み込むプレートからの流体(水)が関与している可能性が考えられる。また、四国下の下部地殻・モホ面の大局的な形状が明らかとなった。(大学)

(ウ)プレート内部の不均質構造の解明

(a)島弧下の不均質構造解明、特に地殻の大局的構造と深部断層系のマッピング。
(a-1)日本海溝-東北日本弧-日本海の大局的な構造変化の解明。

  • 海域及び陸域データの統合的解析が行われ、日本海溝から東北日本弧を経て日本海東縁に至る、東西方向の構造的変化がほぼ明らかになった。島弧域の地殻の厚さは32-35kmであるのに対し、日本海の海岸下で27km、大和海盆では17-18kmとなり、日本海の生成に伴う島弧から日本海にかけての地殻の薄化現象が顕著であることが分かった。また、この地殻の薄化は一様ではなく、特に島弧側では、下部地殻は西に向かって一様な厚さで推移するのに対し、上部地殻の厚さは半減することが分かった。Pn波速度は、日本海下では8.0km/sあるのに対し、島弧下では7.6-7.7km/sである。このPn波の遷移領域は、日本海の海岸線近くに存在し、その幅は数10km程度であることが分かった。(大学)

(a-2)東北日本弧の不均質構造と地殻活動の解明。

  • 東北脊梁山地に発達する逆断層系が"listric fault"としてマッピングされた。断層に沿って低速度帯が分布する。反射的下部地殻に達する深さで断層はほぼ水平となる。(大学)
  • 稠密地震観測と広域地震観測のデータを解析して、東北日本弧の詳細なVp、Vs、Vp/Vs構造を求めた。脊梁直下の最上部マントルは顕著な高Vp/Vsを示し、地震発生域は低Vp/Vsとなっている。また、低周波地震や地震波反射面は、地殻内の高Vp/Vs域の上端を縁取るように分布している。(大学)

(a-3)北海道中軸部(日高地域)における島弧間衝突による地殻変形過程の解明。

  • 千島前弧の東北日本弧側への衝上がマッピングされた。日高衝突帯西方の褶曲・衝上断層帯下では低速度層が発達していることが判明した。これが衝突による東北日本弧側浅部地殻の変形に対応するとすれば、地殻短縮速度が年に4mmに達する可能性がある。(大学)
  • 日高地域を中心とする稠密自然地震観測網から、海域部を含む日高衝突帯の3次元的構造が推定され、千島弧の下部地殻がdelaminateしている様子がトモグラフィーにより初めて明らかになった。また、その先端で1982年浦河沖地震が発生したことがわかった。浅発地震の発震機構解により、日高山脈周辺では衝突に起因すると考えられる圧縮場が支配的であることが分かった。沈み込む太平洋プレート内部の詳細な震源分布か明らかになった。これらは、プレートを垂直又は水平に断ち切る3枚の面によって特徴付けられる。(大学)

(a-4)千島・カムチャツカ海溝-北海道東部-オホーツク海の地殻、マントル構造の解明。

  • 北海道東部の地殻浅部構造について、測線北部(知床半島の付け根)と南部では、浅部構造の差が著しいことが分かった。海域のエアガン記録では深部からの反射波が見られ、沈み込むプレートの形状及び陸域のモホの構造に関する知見が得られつつある。(大学)

(b)日本列島における電磁気学的構造研究の推進。
(b-1)ネットワークMT法観測による日本列島の大局構造の解明 -北海道、東北、四国・中国及び九州地域における研究観測及び解析手法の高度化。

  • 九州、中国・四国、東北、北海道各地方において良好な電磁場応答関数が面的に決定された。1、2次元解析から、島弧地下深部に沈み込む水の存在を示唆する構造が得られた。電磁場応答関数の周期及び空間分布から、上記の各地すべてにおいて背弧マントルウェッジ部に水ないしはメルトが存在する可能性が示唆された。(大学)

(b-2)広帯域MT法観測による精密構造探査。

  • 千屋断層を含む活断層に沿って発達すると予想される低比抵抗層は、2次元モデルから検出できず、断層沿いの破砕帯は薄いものと考えられる。奥羽脊梁山地では地殻中部に低比抵抗ブロックが見られ、地震波反射体がその境界部に見られることから、この低比抵抗ブロックは流体の存在を示していると解釈できる。ここでは、高比抵抗ブロックと低比抵抗ブロックの境界で地震が発生するという明瞭な傾向が見られ、低比抵抗ブロックの流体が高比抵抗ブロックに移動することによって地震が誘発されているのではないかと解釈できる。(大学)
  • 糸魚川-静岡構造線でも、地震の震源は低比抵抗ブロックを避けるように分布している。また、糸静線直下の10km以深に東下がりの顕著な低比抵抗異常体が存在する。このような地殻深部の顕著な低比抵抗異常は、地殻変動の大きな場所に対応している可能性がある。立山付近の深度2km付近にも低比抵抗ブロックが存在し、地震波のトモグラフィーで得られた低速度異常に対応する。(大学)
  • トルコ北アナトリア断層ではやや異なった特徴が見られた。イズミット地震の震源域はこの地震の発生前から群発的地震活動が間欠的に見られていたが、そこでは浅部に低比抵抗層、5km以深には高比抵抗ブロックが広がっている。また、イズミット地震の震源はこの高比抵抗ブロックの中に位置するし、余震は低比抵抗層中では発生せず、高比抵抗ブロック内に集中していることがわかった。イズミット地震の断層すべり分布との対比などから、この高比抵抗ブロックはアスペリティーに対応するものと解釈している。断層面上でのアスペリティーの分布を知ることは非常に重要であるが、比抵抗構造によりアスペリティーの分布に関する情報が得られる可能性が示された。(大学)・宮城県北部地震震源域で得られたELF、ULF-MTデータの再解析を行い、2次元断面を得た。その結果、地震活動域が上部地殻の中では相対的に低い比抵抗域(数10Ωm)に位置すること、その直下の下部地殻が非常に低比抵抗(数Ωm以下)を持つことなどが示され、地震活動と水との関連が指摘された。(大学)
  • 長野県西部地震震源域で行われた電磁気共同観測データを用いて2次元構造解析が行われた。同地震断層西縁をNNW-SSEに切った測線では、上部地殻内の想定断層を境にして、北側で数100Ωm、南側で数kΩmという顕著な比抵抗のコントラストが明らかとなった。相対的に低比抵抗である北側領域で、活発な微小地震活動が起こっていたが、3次元比抵抗構造のモデリングによると、深さ1-4kmに数10Ωm程度の低比抵抗領域が存在し、地震活動は主にこの低比抵抗体の周囲で頻発し、低比抵抗体内部では殆ど起こっていないことが明らかになった。さらに、北側の微小地震域直下8km以深に100Ωm以下の低比抵抗域が検知され、その上面付近に地震波の反射面の一つが位置していた。(大学)

(エ)長期的な地震発生確立の推定

(a)断層の横ずれ量推定手法の確立。

  • 丹那断層及び畑野断層においてトレンチ手法を用いて横ずれ変位量の推定に成功した。(大学)

(b)活断層系から発生する地震の震源規模の予測の高度化。

  • 活断層で起きた地震断層規模と活断層の長さの調査から、松田(1990)による起震断層がその活断層系での最大規模の活動単位として妥当であること、歴史地震の多くが起震断層の長さの1/4~1の断層長に相当する規模を持つことが判明した。(産総研)
  • 根来断層の最新活動は1900年BP以降であるが、和歌山平野伏在断層の最新活動時期は約6000-3000年前であり、中央構造線活断層の中でも最新活動時期が異なることが明らかとなった。(産総研)
  • 濃尾断層系の梅原断層のトレンチ調査では、完新世の活動は濃尾地震に伴うもの1回のみであることが明らかと成り、梅原断層と約3千年の活動間隔を持つ根尾谷断層は別の活動セグメントに区分されることがわかった。(産総研)
  • トルコの北アナトリア断層の調査では、断層北西部で活動した1999年の2つの地震セグメントと過去における地震セグメントは同一ではないこと、また、比較的規模の大きな屈曲を伴った断層の不連続部分が、地震セグメントの境界となりやすいことが推定された。(産総研)
  • 台湾の車籠埔断層では、トレンチ調査の結果、東に傾斜する断層面、折り畳まれるように変形した表土の断面形態などが明らかになったほか、一つ前の車籠埔断層の活動は15~17世紀以前に発生したと推定された。(産総研)

(c)古文書・津波調査による地震発生時期の解明。

  • 江戸・明治時代の宮城県沖地震の震度・津波分布の推定を行い、長期評価に貢献した。(大学)
  • 浜名湖及び紀伊半島の潟湖の湖底堆積物ピストン採取調査から、先史時代の東海地震の同定ができた。(大学)

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研究開発局地震調査研究課