用語集

アスペリティー
 プレート境界や断層面において固着の強さが特に大きい領域のこと。この領域が地震時にすべると、すべり量がまわりよりも大きくなり、大振幅の地震波を放出する。

アムールプレート
 バイカル湖付近を北西縁、スタノボイ山脈を北縁、中部日本を東縁とするプレート。もとはユーラシアプレートの東端の一部と考えられていた。

インテリジェント型歪計
 歪計にCPUやメモリーを組み込み、あらかじめスケジュールされた通りに記録を収録する機能をもった装置。ボアホール内に設置すれば、従来のような太いケーブルが不要になったり、ケーブルなしで応力測定ができる。

エンベロープ波形記録
 地震波形の放絡線(波のピークをなめらかに結んだ曲線)の波形記録。

応力
 物体内部での力のかかり具合を示す。物体内部に考えた面積片を通して及ぼされる単位面積あたりの力。震源域の応力が破壊強度より高くなったときに地震が発生すると考えられている。

応力蓄積過程
 プレート等の運動により、来るべき地震の発生領域に応力が蓄積されていく過程。

大森公式
 余震の発生回数nが本震からの時間tとともに減衰していく状況を表す公式。n(t)=K/(t+c)p(K、c、pは定数)。べき指数pが1のとき大森公式、1以外の場合を改良大森公式と呼ぶ。

開口クラック
 地殻内などに発生する割れ目のうち、ずれ成分より開口成分が卓越しているもの。

ガウジ
 断層運動に伴う破砕によって生じた細粒・未固結の断層内物質。

カップリング
 接触した二つの面の結合の強さのこと。固着度とほぼ同義に使われることが多い。ここでは特にプレート間の結合の強さについて「カップリング」という用語を用いている。

間隙水圧
 土や岩石中の空隙を占めている水の圧力。

間欠的非地震性すべり
 断層やプレート境界において、地震波を放出しないゆっくりとしたすべり(非地震性すべり)が間欠的に発生する現象のこと。実際には同一の場所で間欠的に繰り返し発生しているかどうか不明の場合もあるが、同様の非地震性すべりが常時続く「定常的非地震性すべり」も存在するため、それと区別するために「間欠的非地震性すべり」と呼ばれることが多い。この場合には「サイレント地震」と同義となる。

キネマティックGPS
 GPSによる相対測位の一種で、搬送波位相を用いて移動体の位置を測定する技術。数cm程度の精度が得られるが実用的な基線長は10kmまでと短い。

グーテンベルグ・リヒターの式
 ある地域、期間に発生した地震のマグニチュードM別の度数nを表す公式。logn(M)=a-bM(a、bは定数)、bは0.7~1.0程度の値。

クラック
 割れ目。ここでは地殻内に存在する割れ目。

固着域
 プレート境界において、二つのプレートが堅固にくっついている領域のこと。

コヒーレント弾性波
 ここでは位相まで正確に制御した弾性波(岩石中を伝わる波)を示す。位相まで制御することにより複数の制御震源を同時に稼働させた際に振動波面まで制御でき、地下構造の時間変動の検出効率の向上に役立つ。

固有地震
 同一の震源域において同一のすべり量分布で繰り返し発生する地震群のこと。もともとは、地震のすべり量分布に再現性がある地震群を指していたが、日本国内では、さらに再来間隔にも再現性がある地震群のことを固有地震と呼ぶ。ただし、すべてが完全に再現されることはあり得ないので、震源域がほぼ同じで、地震の規模と再来間隔がほぼ一定の場合に「固有地震的である」と呼ぶことが多い。

サイレント地震
 断層やプレート境界におけるゆっくりとした一時的なすべりのこと。通常の地震と同様に始まりと終りがあるが、地震波を放出しないゆっくりとしたすべりなので、始まりと終りの時期を特定することは困難なことが多い。すべりの継続時間は数ヶ月以上に及ぶ場合もある。プレート境界で発生していると考えられているが、実体はまだよくわかっていない。

ジオイド
 地球重力場の等ポテンシャル面(水準面)のうち、その位置が海洋上では平均海面に一致する面。地球楕円体に対して、数十メートルから100メートル程度の起伏をもつ。

ジオスライサー
 2枚の大きな金属板を地中に差し込んで地層を抜き取る装置。活断層をトレンチ調査する代わりに用いられる。

地震発生サイクル
 地震が発生し、その後にテクトニックな力が働き、再び応力を蓄積して次の地震に至るまでの一連の過程。

シミュレーション
 コンピュータを用いた数値シミュレーションのこと。ここでは、広域GPS観測網や地震観測網等の地殻活動データを用い、プレート相対運動によって駆動されるテクトニック応力の蓄積から準静的な破壊核の形成を経て動的破壊の開始・伝播・停止に至る大地震発生過程の定量的予測を行うことを目的としている。

蛇紋岩
 かんらん岩(上部マントルの主要な岩石)が水を含んで変成した岩石。強度が小さく変形しやすい。

褶曲断層帯
 逆断層の前縁に拡がる盆地において、低角度の逆断層や褶曲により地層が短縮している地域を指す。日本海東縁や北部フォッサマグナの他、北海道中軸帯西部、台湾西部などが典型。

シュードタキライト
 断層運動などに伴う摩擦熱により母岩が融解・急冷されて生成したと考えられている断層岩。

震源核
 地震が発生する前に断層面上で準静的に成長すると考えられている地震の種(たね)。外的な力の増大とともにすべりが進行し応力が低下している領域。ある臨界状態に達すると成長が加速し、動的破壊、すなわち地震発生に至る。

震源関数
 ここでは、制御震源装置によって発生する空間的・時間的振動パターンを記述する関数である。並進・回転・歪などのような複数のモードを組み合わせて周波数成分ごとに表現する。アクロスのような制御震源を用いて時間変動を高精度にモニターするためには震源関数の時間変化を記述して補正することが必要になる。

深部低周波微動
 地下深部において、微小地震と同程度の振幅だが通常の微小地震より低周波の地震波が、非常に長時間にわたって放出され続ける現象のこと。低周波微小地震と似た現象だが、波の始まりが不明瞭でかつ非常に長時間継続することが異なる。西日本において多数発生していることが最近発見され、この発生源は地殻底付近に推定されている。

スパーカー
 海底の音波探査に用いられる震源の一つ。水中での高電圧放電により振動をだす。

スラブ
 沈み込んだ海洋プレート。

絶対重力計
 絶対重力とは、基準点からの重力差(相対重力)と対をなす概念で、観測点における重力加速度そのものを指す。現在の絶対重力計は、真空中でコーナーキューブなどの反射鏡からなる物体を、投げ上げもしくは自由落下により重力場の中で鉛直運動させて、加速度を計測する。測定精度・確度とも1マイクロガル(地上重力値の10億分の1)程度である。

全磁力
 地球磁場ベクトルの絶対値。磁場の観測量として、その長期的安定性が最も高い。磁気を帯びた鉱物の帯磁は、温度や応力によって変化するので、全磁力の変化は地下の温度、応力状態の変動を示唆する。

剪断応力
 面の接線方向に働く応力成分。ある面に働く剪断応力が最大静摩擦応力より大きくなるとずれが生ずる。

相似地震
 互いに波形が良く似ている地震群のこと。ここでは、波形の相似性が極めて高い地震群のみについて「相似地震」と呼んでいる。このような地震群は、ほぼ同一の震源域で繰り返し発生したのだと考えられている。

相対重力計
 基準点からの重力差(相対重力)を、精密な零長バネをもちいて計測する装置。小型・軽量のため、絶対重力値のわかった点を基準として、周囲の多数の地点での重力差を求めるのに適している。公称精度は1マイクロガルであるが、バネのクリープ現象などのため、実際の確度は10マイクロガル程度である。

送波ファンビーム
 マルチビーム音響測深に用いられる、指向性の強い音波。

断層構成則
 断層面上の摩擦をすべり変位やすべり速度などの関数として記述したもの。

断層の回復過程
 地震が発生したときに低下した断層の摩擦強度が、時間とともに高まっていく過程。

断層破砕帯
 岩石の破壊によって生ずる不連続面を断層とよぶが、破壊が繰り返されることなどにより断層は厚みをもつようになり、破砕された岩石などで充填されている。その充填されているゾーンを断層破砕帯とよぶ。

注水試験
 地下に圧力をかけて水を注入して人工的な擾乱を与えることによる様々な変化を計測する実験。地下の岩石の透水係数や水の注入によって引き起こされる微小地震、比抵抗変化を計測する。

津波地震
 地震の揺れがそれほど大きくないのに、大きな津波を引き起こす地震。三陸沖の海溝近くなどで起こる。

低周波微小地震
 通常の微小地震に比べて卓越周波数が低い波を放出する地震のこと。火山の深部に多いと言われていたが、最近は大地震の震源域の深部付近にも見つかるようになった。地下の流体(マグマや水等)に関係していると考えられている。

電子基準点
 国土地理院が全国に展開している、GPS衛星からの電波を受信する基準点のこと。受信アンテナ、受信機、テレメータ装置などが配備されている。

同化
 観測データをモデルに取り込み、モデルを改良する技術。データ同化のこと。

透水係数
 岩石などの水の通しやすさを表わす係数。単位断面積を単位時間に通過する流量と水圧勾配の比として定義される。

トモグラフィー
 地下の2次元または3次元構造を求める手法。地震波速度や減衰構造の推定によく用いられる。医学の分野において、X線や超音波で身体の2次元断面を求めるための手法が、地球物理学に応用されたもの。

トレンチ調査
 断層面を横切る方向に細長い溝を堀り、断層のずれ方や地層の年代を測定して、断層の動いた年代や周囲の環境を調べる調査。

新潟ー神戸構造帯
 新潟から神戸にかけての歪速度が大きな領域。GPS観測によって明らかになった。

背孤
 島弧における海溝と反対側の背後側。

発震機構
 地震波の放射パターンなどから求まる断層メカニズム解(走行、傾斜角、すべり角)を指す場合が多い。

半制御実験
 鉱石の採掘による岩盤への応力の集中のために発生する地震を用いた実験。採掘のやり方により地震の発生をある程度制御することが可能であり、至近距離で地震を観測できる。

非地震性すべり
 断層やプレート境界における、地震波を放出しないゆっくりとしたすべり。

ヒンジライン
 南海トラフ沿いなどで起こる海溝型巨大地震による地面の隆起・沈降領域の境界となる線。地震時には、ヒンジラインより海溝側で隆起となる。地震断層の下端の直上付近に位置する。

ブイテレメータ式海底地震計
 通常、海底に設置した観測装置は装置内で記録を保存し、装置回収後に記録を回収するため、リアルタイム性がない。その欠点を補うため、海底の観測装置の直上に浮かべたブイまで信号を送り、そこから無線によって信号を送信することによりリアルタイムでデータを取得することができる。

ブーゲー異常
 地表面の凹凸を平坦にならし、標高0メートルの地点で測定したら得られるであろう重力値と、標準重力値(楕円体上の正規重力式)の差を、ブーゲー異常という。地上での生の重力測定値は、測定点の高度、周囲の不規則な地形などによる擾乱をうけているので、地下の密度構造の推定には各種補正を施してブーゲー異常を計算することが必要になる。

不均質構造
 地球内部の物性定数が、空間的に均質ではない状態(構造)。例えば、組成の違いや空隙の分布状態、流体の含有などによって、物性定数が変化する。応力の蓄積等も不均質になり、特定の場所にその集中が起きる可能性がある。

プレート
 地球表面は、厚さ100km程度の固い岩石の層(リソスフェア)で覆われ、そのリソスフェアはいくつかのブロックに分割されている。それぞれの板状(球殻状)のブロックをプレートという。

プロトタイプ
 原型。実用的に用いられる前の段階の模型。

ボアホール
 地下深部の情報を取得するために掘削される円筒状の穴。直径は10~20cm程度のものが多いが、深いほど大きくするのが普通である。ボアホールは地下深部の岩石のサンプル(コアサンプル)を取得する目的の他、地下深部での地震計や歪計などの計測機器の設置、応力測定などに利用される。

マルチチャンネル反射法音波探査
 調査船がけん引するエアガンと多チャンネルのハイドロフォンによって海底の地下構造を探査すること。船でけん引するエアガンを繰り返し発振し、同時にけん引している多くのハイドロフォンを用いてその信号を受ける。その記録から海底下の反射強度分布を調べるものである。

マルチビーム音響測深機
 海底の深さを測る際には音波を用いる。音波の伝播方向をコントロール(ビームをしぼる)することにより、海底の狭い領域の深さを測定することができる。このようなビームをたくさん同時に利用する(マルチビームを用いる)ことによって、広い範囲の海底の深度を同時に測定できる。

余効すべり
 地震のあとに震源域あるいはその周囲で発生するゆっくりすべり。

流動電流係数
 岩石中などを水が流れるとイオンが運ばれ電流が発生する。流動電流係数は電流と水圧勾配の比として定義される。

連動セグメントモデル
 活断層は小さな小領域(セグメント)に分かれ、地震時に連動してすべるセグメントの組みあわせは毎回一定ではないとするモデルのこと。

ロギング
 ボアホールを用いて、地下深部の各種物理量を直接はかることを言う。測定するものは、弾性波速度、比抵抗、割れ目分布などがある。ボアホールに測定器をおろしながら、各深度での測定を行うことにより、それらの測定量の深さ分布がわかる。

AE
 Acoustic Emissionの略。岩石中などで微小破壊が発生したときに放射される高周波の弾性波。

DGPS局
 GPSのコードを用いた相対測位方式であるDGPS(Differential GPS)を実施するために設けられた基地局のこと。DGPS局から発信される補正信号によって、観測局ではリアルタイムに1~2mの測位精度が得られる。日本では海上保安庁やFM局による日本全国のDGPS局網がある。

GPS
 汎地球測位システム(Global Positioning System)の略。地上高20,000kmを航行するGPS衛星からの電波を地上で受信し、3次元的位置と時刻を正確に計測するシステム。地殻変動計測には干渉測位と呼ばれる搬送波位相を用いた相対測位法が用いられる。

SAR
 合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar)の略。人工衛星や航空機から、一定時間間隔でマイクロ波を発射し、それが地上で散乱されて戻ってくるエコーを受信・解析することにより、地表面の散乱係数、標高、標高変化などを求める技術。1枚のSARのSLC画像(Single Look Complex)上の画素は、地上点の複素反射係数(反射強度と位相遅れ)からなる。2枚のSAR画像を干渉させることによって、ホログラフィーの原理で地形標高データ(DEM)を求めることができる(干渉SAR)。地殻変動をはさむ、異なる時期の2枚の干渉SAR画像と、DEMから期待される干渉SAR画像の差をとると、地殻変動の効果が干渉縞として現れる。これは衛星・航空機から地表面までの視線距離が、地殻変動の前後で変化したために生じる。

S波偏向異方性
 振動方向によってS波(横波)の伝播速度が異なること。

SLR
 人工衛星レーザ測距(Satellite Laser Ranging)の略。人工衛星に搭載した逆反射プリズム(コーナーキューブ)に対して、地上基地局からレーザ・パルスを発射し、そのパルスの往復時間から衛星までの距離を1cm程度もしくはそれより良い精度で求める技術。

VLBI
 超長基線電波干渉計(Very Long Baseline Interferometer)の略。クエーサー(準恒星状天体)から放射される宇宙電波を数千km離れた複数の観測点で同時に受信し、その到達時間差から観測点間の距離や位置関係を測定する。

Vp/Vs
 P波とS波の伝播速度の比のこと。通常の岩石は、1.7~1.8程度の値をとることが多い。岩石の鉱物組成、割れ目の量・形状、割れ目内の流体の性質等によってこの値が変化するため、地下の岩石や流体の状態・性質を調べるための有用な情報となる。

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科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)