4.総括的評価

1.「地震予知計画」から「地震予知のための新たな観測研究計画」へ

 昭和40年(1965)に地震予知計画が始まったが、発足当初の基本的考え方は、昭和37年(1962)に提言された「地震予知‐現状とその推進計画‐」に基づいている。その中で、日本全域の地殻変動観測が取り上げられ、水準測量、三角測量の繰り返しに加え、全国的には100km四方、特定の地域には50km四方ごとに、合計130の地殻変動連続観測所を設けるよう提言されている。現時点でこのような地殻変動観測を総括するならば、地震調査研究推進本部の下で整備されてきた基盤的調査観測のGPS連続観測網(GEONET)で、より高度に実現されたと言える。また、あらゆる大きさの地震の活動状況を調べるために、全国180点から成る微小地震観測網の設置が提言されたが、現在では基盤的調査観測の高感度地震観測網(Hi-net)として、より高度に実現できている。活断層に関しては、当初は活断層が密集する近畿・中部地域を中心とする領域の活断層の地形学的調査が提言されたが、基盤的調査観測の活断層調査では、全国の主要約100活断層がトレンチ調査を主体とする調査の対象となり、当初の提言がより高度に実現できていると言える。
 このような当初の地震予知計画における基本とも言える調査観測は、地震災害から国民を守ることを目的とした地震調査研究推進本部の主要事業として、約35年後に、より充実した形での実現を見た。地震予知計画では、こうした全国的観測網から異常現象を捕捉し、地震の長期的予知、短期的予知を行うことを目指していた。これに対し、現在の基盤的調査観測では、国民が地震現象を正しく理解し、地震に備えることができるよう、地震現象(地殻活動や地震動を含む。)の把握、理解、評価に主眼が置かれている。地震予知計画における目標は、地震の三要素、つまり地震の規模、場所、時期を地震発生前に予測することであったが、その実現には地震現象の把握、理解、評価は欠かせない。事実、地震予知計画においても、実用的地震予知の実現は非常に困難な課題であることが次第に判明するにつれて、地震発生過程の把握と理解の重視という方向性が鮮明になってきた。以下ではそのような推移を現在の立場で概観する。
 地震予知計画の初期の段階で、全国の地殻の水平及び上下方向の変動が国土地理院による測地測量から求められ、北海道東部と東海地域に大きな地殻変動が発見された。前者では、昭和48年(1973)に根室半島沖地震(M7.4)が発生したこともあり、地殻変動モニターの重要性が広く認識されることとなった。現在のGPS連続観測網からは、プレート境界の固着域の同定や三陸沖や東海地域などでの非地震性すべりの検出などが可能となってきており、地殻変動観測の高度化の具体的成果として位置付けることができる。微小地震に関しては、気象庁による全国的観測網のほかに、大学や防災科学技術研究所による微小地震観測網が構築され、各地の地震検知能力は著しく向上した。その結果、太平洋プレートに二重深発地震面が発見され、更に内陸における地震は上部地殻でのみ発生することも突き止められた。現在の高感度地震観測網では、余震分布とアスペリティーとの関係、非火山地域での低周波微小地震、詳細な地震波速度構造、中小地震の震源メカニズムなど、より詳しい情報が得られ、地震観測の高度化の成果が随所で見られる。活断層調査については、全国の変動地形学者・地質学者による研究グループが結成され、「日本の活断層(1980)」が編纂されるなど、組織的調査研究が始まった。現在でもこのような研究グループが中心となってトレンチ調査を主体とする活断層調査が進められ、個々の活断層の活動履歴が解明されてきた。
 このような全国的地殻変動観測、地震観測、活断層調査は、地震予知計画では長い間、長期的地震予知という位置付けであった。これに対し、特定の地域における集中的観測は短期的地震予知を目指すという位置付けで、各種観測の集中化と強化が図られた。例えば、伊豆半島における異常地殻隆起の発見の後、各種観測が行われる中、1978年伊豆大島近海地震(M7.0)や頻発した群発地震活動に関連し、現在までに多くの成果が得られた。特に、ボアホール歪計、ボアホール傾斜計、GPSの連続観測、光波測距、水準測量などからは、地殻変動のメカニズムが解明され、群発地震活動の具体的イメージが得られてきた。さらに、地下水変化、重力変化、電磁気変化も明瞭に観測され、その原因として流体の流動や応力の変化などが提唱されている。こうした成果を受ける形で、平成12年(2000年)に発生した三宅島‐新島・神津島群発地震活動の際には活動の早い段階から地殻変動に目が向けられ、活動の推移がGPS観測などでモニターされていた。このように、特定の地域における集中的観測から、群発地震活動という特殊性はあるものの、地震活動の把握と理解は急速に進展してきたと言える。さらに基礎研究として、地震に先行することが期待される現象を中心に、岩石破壊等の実験的研究も推進されてきた。このような研究は、断層摩擦構成則や破壊核成長過程といった地震発生を支配するプロセスの理解へとつながってきた。
 地震予知研究の対象が内陸地震にも向けられるようになり、地殻の構造やテクトニクスに関する基礎的研究の重要性が認識されてきた。こうした新たな視点も、地震の前駆現象の検出というそれまで方針の延長上にあったにせよ、地震発生場の構造と状態の解明という今日的課題の端緒を開くものであった。最近では、地震発生層としての上部地殻の不均質構造、流体の分布とその役割、活断層の深部延長部の形状と下部地殻とのかかわりなど、内陸地震発生プロセスを支配すると考えられる要因について多様な手法で研究が推進されている。
 第7次地震予知計画(前回の5か年計画)では、これまでの長期予知、短期予知という基本的方針を踏まえた上で、地震発生のポテンシャル評価という新しい課題が出された。この中では、プレート構造とプレート内応力分布の解明、プレート境界のすべり運動の把握と広域応力場の長期的変動の予測といったプレート境界地震の大局的理解を目指す基礎的研究の重要性が指摘されている。さらに、内陸地震のテクトニクスも引き続き重要課題として取り上げられており、新しい方針を内包する計画となっている。こうした状況の中、平成7年(1995)1月17日に兵庫県南部地震(M7.3)が発生した。この地震の後に発足した地震調査研究推進本部の地震防災対策の一環として基盤的調査観測計画が策定され、本格的GPS観測などがスタートすることになった。日本列島全体を覆うGPS観測網は画期的で、地震時の地殻変動、その後の余効変動、非地震性すべりなどが詳しく分かり始めた。
 これまでの地震予知計画を担ってきた体制に関しては、全国的には地震予知連絡会、東海地方に関しては地震防災対策強化地域判定会を中心とした監視、評価が主体であったが、地震予知連絡会が担ってきた地震・地殻活動の評価機能については、地震調査研究推進本部の地震調査委員会に引き継がれてきている。大学における基礎研究の面では、地震予知研究協議会を中心として体制の整備が図られてきたが、これも更に強化され、幾つかの部会を中心に研究計画の立案、実施、評価などが積極的に行われつつある。

2.「地震予知のための新たな観測研究計画」の総括的評価

 地震発生直後から次の地震発生に至る応力蓄積過程を地震発生準備過程と位置付け、その進行状況を把握するために、プレート運動に起因する広域的、長期的地殻活動を理解するための観測研究が基本となる。すなわち、不均質応力蓄積過程の場所を観測によって特定し、その推移を把握することである。その結果、三陸沖においては、新しい地震発生像が得られつつある。
 大地震発生時の断層面上でのすべり量は一般に不均一であることが分かってきた。すべり量の大きい領域は地震発生前に断層面の固着が強いところであり、アスペリティーと呼ばれている。三陸沖で発生した幾つかの大地震では、同一のアスペリティーが繰り返し破壊していることが分かってきた。一方、大地震後の余震分布にも、すべり量が大きい領域では余震は少ない傾向にあるという特徴が見られる。地殻変動連続観測やGPSのデータから、三陸における大地震後に、時定数が数日以上に及ぶゆっくりしたすべりがあったことが分かってきた。このようなすべりが地震の規模に匹敵するほど顕著なものであることも稀ではない。さらに、GPSデータの解析からは、プレート境界の固着域や非地震性すべり領域などが分かりつつある。また、三陸沖における相似地震の研究からは、相似地震は非地震性すべり領域に囲まれた非常に小さなアスペリティーの繰り返し破壊に対応していることが分かってきた。特筆すべきは、釜石沖の固有地震の発見である。ここでは、M4.8の地震が約5年間隔で規則的に発生していることが突き止められ、次の地震発生の長期予測が行われていたが、ほぼこの長期予測どおり、平成13年11月13日に地震が発生した。
 さらに、プレート境界域における不均質構造に関しては、主として構造探査により、固着の度合いの強さを決める要因の解明を目指した研究が進められている。例えば三陸沖では、地震反射波の強度と微小地震活動との対応が分かりつつある。また、GPSと音響測距を組み合わせた海底測位システムの実用化が進み、海域において数cmの地殻変動の検出が可能となりつつある。
 このようにプレート境界域における固着域とすべり領域の時空間分布に関する理解は飛躍的に高まりつつある。このようなアスペリティーモデルによって、一見複雑に見える大地震発生様式を統一的に理解することができるようになった。さらに、強震動予測についても現実的な道筋を示すことができるようになった。
 内陸地震についても、観測研究に大きな進展が見られる。断層面上でのすべり量が不均一であることは、内陸地震においても同様であることが分かり、非地震性すべりによるアスペリティーへの応力集中が内陸地震においてもやはり基本的な地震発生機構であろうと考えられるようになった。例えば、2000年鳥取県西部地震(M7.3)では、地震発生の10年くらい前から断層面上において群発的な地震活動が発生しており、アスペリティーへの応力集中が示唆される。内陸地震発生場としての地殻構造の解明についても大きな進展が見られた。東北地方においては、自然地震を用いたトモグラフィーにより、詳細な3次元速度構造が明らかになってきた。反射法探査からは、活断層深部の形状が分かってきた。また、断層深部の地震発生域より深い下部地殻内にS波の反射面や散乱体、低周波微小地震が多数見つかっている。さらに、比抵抗構造とVp/Vs構造との対比なども可能となってきた。
 このように、内陸地震に関しては、幾つかの大きな成果が見られるものの、これらを統合し、プレート境界地震に対する地震像のような具体的イメージを描ける段階には至っていない。
 前駆現象のデータを蓄積し、その発現形態を見極めることは、短期間では困難な課題である。また、前駆現象は、それが現われない場合も含めて複雑多岐にわたっているので、実際に大地震が発生するまでは因果関係を検証できない。したがって、単に経験主義的に事例を蓄積する手法には限界がある。「建議」に述べられているように、応力の蓄積過程の結果として出現する現象の発現機構の解明を観測的研究だけでなく、理論的・実験的研究などを通じて目指すべきである。例えば、プレスリップの発現メカニズムを解明するために、理論モデルの構築や実験的研究を進め、さらに、類似の現象である非地震性すべりについての観測的研究を進める必要がある。モデル化及びシミュレーションにおいても、要素モデルの構築や、横ずれ型プレート境界での3次元準静的地震発生サイクルシミュレーションモデルの構築といった成果が出始めている。一方、基本的考え方で示したような、“地震発生に至る過程を把握、理解し、その過程をモニターしつつ、地震発生準備過程のモデル化との連携による総合的地震発生予測システムを構築する”という視点からは、上に述べた観測研究の成果を取り込んだ統合化モデルの構築には至っていない。
 “地殻活動モニタリングシステムの高度化”に関しても大きな進展が見られた。基本的には、基盤的地震観測網と基盤的GPS観測網の整備による。高感度地震観測網については、気象庁、防災科学技術研究所、大学のデータの一元化が完成し、またデータ流通体制も確立しつつある。こうした高度化により、プレート境界域あるいは内陸における地震発生過程に関する研究が大きく進んだ。
 東海地域におけるモニタリングシステムについても、歪計の増設など進展が見られている。また、断層摩擦構成則に基づく地震サイクルシミュレーションが行われ、出現が想定される地震発生直前の歪変化を考慮した実践的モニターが行われるようになった。さらに、体積歪計のノイズレベルの詳細な検討により、異常判定基準の見直しがなされ、より小さな異常のモニターが可能な体制になっている。平成12年6月から始まった三宅島‐新島・神津島の地殻活動に伴い、東海・南関東のGPSデータに変化が現われていた。その後、東海地方では浜名湖付近を中心に顕著な異常変化が続き、プレート境界での非地震性すべりによるものと解釈された。このような非地震性すべりは過去にも見られたことが、地殻変動観測データから推定されている。
 「新たな観測研究計画」を推進するための体制については、調査観測面で大学及び関係機関がそれぞれの役割を分担しつつ、協力・連携を図ってきた。中央省庁等改革に伴い、測地学審議会の機能は、科学技術・学術審議会測地学分科会に引き継がれた。測地学分科会においては、大学や関係各機関の責任者的な立場にある研究者で構成される地震部会を常置の組織として設置し、建議で述べられた常置の組織とは言えないが、「新たな観測研究計画」を推進するための体制を整えた。地震予知連絡会は、大学及び関係機関の委員による地震予知研究に関する情報交換や学術的に深く掘り下げた意見交換を定期的に行っており、それを通じて各機関の観測研究の自己点検・評価や個別具体的な観測研究戦略の検討などを促し、「新たな観測研究計画」の推進に貢献している。また、大学においては、全国共同利用研究所と各大学の地域センター等で構成される新しい地震予知研究協議会が発足し、その中の企画部と計画推進部会が中心となって研究計画の立案、成果の取りまとめなどが行われている。地震予知研究協議会には、更に外部評価委員会も設置されている。

3.今後の展望

 本計画では、アスペリティー分布、非地震性すべり、固有地震、相似地震などにより、プレート境界域における固着状態の時空間変化の研究が進み、地震発生予測に向けて応力蓄積状況を把握できる見通しが付いた。このことは、大地震発生の長期予測だけでなく、強震動予測にとっても大変重要な成果である。プレート境界域では、大地震発生繰り返し間隔のゆらぎの時間幅(数十年程度)での長期予測ができるという現段階から、予測時間幅を更に小さくしていくことがこれからの具体的課題となる。例えば、アスペリティー周辺の非地震性すべりの時空間変化を更に詳しく調べる必要があるが、そのためには陸上GPSデータの解析だけでは限界があり、どうしても海底地殻変動観測が必要となる。実用化されつつある海底測位システムの高精度化に大きな期待が掛かる。
 特に、以下に指摘する問題の解明が急がれる。(1)アスペリティーの実体。プレート間結合の強さを支配する要因(地形、物質、温度、流体など)の解明とアスペリティーの空間スケールの把握などが課題となる。(2)地震の最終的な大きさ。これは、幾つかの独立したアスペリティーがどのように連動するかという問題に帰着され、その解明には、アスペリティーの相互作用に関する実験的な研究やシミュレーションなどが必要である。(3)大地震発生前の非地震性すべりの時間変化。特に、震源域の深部延長における非地震性すべりの加速の有無が重要な課題となる。(4)アスペリティーと震源(破壊開始点)との関係。三陸における事例では、大地震の震源はアスペリティーから離れたところにある場合が多い。破壊開始点付近の非地震性すべりの時間変化や応力集中が発生する過程を解明することが重要であり、実験的・理論的な研究やシミュレーションを更に強力に推し進める必要がある。統合シミュレーションモデル構築のためには、平成14年3月に運用開始された「地球シミュレータ」の利用が不可欠である。
 今後は、観測研究からの成果を取り入れた地殻活動・地震発生シミュレーションモデルを構築し、地震発生に至るアスペリティーでの応力蓄積過程のどの段階にあるかを知るという地震発生予測の次の段階に進むべきである。このようなアプローチにより、プレート境界域における地震発生時期の予測時間幅(数十年程度)を逐次小さくしていくことは十分可能であろう。
 内陸地震は、一般に規模が小さく、繰り返し間隔が長い。したがって、ある特定の地震について、1サイクル全体を調べることのできる観測データは期待できない。この点において、繰り返し間隔が比較的短いプレート境界地震とは異なった研究戦略が要求される。つまり、地震発生サイクルの種々の段階にあると考えられる多くの地震を調査することにより、内陸地震の発生サイクルの一般性を抽出する。そのためには日本列島の代表的地域での事例の集積が必要であり、ある程度時間がかかるのはやむを得ないが、内陸地震発生予測のためには必要な道筋である。広域的には、GPS観測網による日本列島の変位の全貌が明らかになり、更に新潟‐神戸歪集中帯も発見されるなど、観測研究からは大きな進展が見られた。これらの観測事実を説明するモデルも種々提唱されているが、更なる高度化を進める必要がある。
 内陸地震発生域では、地震波反射面、低周波微小地震、地震波速度構造、比抵抗構造、活断層深部構造など、基礎的研究においては大きな進展が見られた。地震波反射面、低周波微小地震、低比抵抗帯には地殻内流体が関係している可能性が高いので、地震発生層の下に存在すると思われる地殻内流体が地震発生にどのようにかかわっているのかという重要な問題が浮かび上がってきた。さらに、高感度地震観測網による質の高い波形データを用いた研究によって、フィリピン海プレートの上の陸側プレートで低周波微動の震源が多数決められている。こうした低周波微動は、地殻内流体の急激な移動に対応すると考えられ、内陸地震発生場における流体の役割に関する重要な情報をもたらすものと期待される。
 今後は、地震学的、電磁気学的、地球化学的手法により、地殻流体の分布をより詳細に調べるとともに、その時間変化の検出をも視野に入れた観測研究が望まれる。伊豆半島の群発地震後に観測された重力変化は地殻流体の移動を反映しているとの解釈も出されており、他の手法も加えた総合的観測研究の推進が望まれる。
 しかし、現在においても、実用的な地震予知については、一定の場合に可能と考えられる想定東海地震を除き、プレート境界地震と内陸地震を問わず困難であり、また、地震予知の実用化のめどや道筋も単に観測体制やその精度の問題だけでなく、前兆現象が明確に現われない場合を含めて複雑多岐であり、信頼性のあるデータが蓄積されていないこと等から、現在においても立っていない。このことは、既に「地震予知計画の実施状況レビューについて」(平成9年6月)において、指摘しているところである。我々は、前兆現象に依拠した経験的な地震予知の実用化というアプローチでなく、地震予知の実用化については、将来の課題としつつ、2章で述べたアプローチを採ることとしたところであり、今後もこうした方針で進めるべきである。
 新たな観測研究計画を効果的に推進するための体制については、大きな転機を迎えようとしている。
 地震調査研究推進本部の発足により、地震予知連絡会が担ってきた地震・地殻活動の評価機能については、地震調査研究推進本部の地震調査委員会に引き継がれてきているが、地震予知研究に関する学術的情報及び意見交換の場としての地震予知連絡会の役割は重要であり、今後一層、その役割を明確にしてその機能を果たしていく必要がある。
 特に、この計画の一翼を担う国立大学の法人化に伴う諸問題がある。法人化により、各大学の独自性が強まることが予想されるが、地震予知のための観測研究においては、これまでと同様、各大学の連携・協力は必須の条件である。これをいかに確保し、更に強固なものにしていくかが重要である。各大学の地震関連観測研究センターにおいても、法人化に際して、教育・人材養成という機能を確保しつつ、それぞれのセンターを地震予知観測研究のための全国的組織の一部として位置付ける必要がある。また、全国共同利用研究所の役割はこれまで以上に重要なものとなる。こうした位置付けの上で、大学の地震予知研究協議会が果たしてきた機能の継続、発展が期待される。大学の高感度地震観測網については、基盤的調査観測計画との調和を図りながら、大学が本来担うべき研究的な調査観測へ一層重点を移すことが期待される。
 現在、地震調査研究推進本部の発足により、国として政策的に必要な地震調査研究は、同本部の方針の下に行われている。地震予知のための観測研究は、同本部の「地震調査研究の推進について」(平成11年4月)において、当面推進すべき地震調査研究の一つとして位置付けられているが、今後、この観測研究計画の在り方や具体的な位置付けをどう考え、どのように推進していくかについては、十分検討を行っていく必要がある。

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