2.「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の基本的な考え方

 地震発生と火山噴火は、海洋プレートが日本列島下に沈みこむ際に生じる地殻・上部マントルの構造不均質と力学的・化学的不安定が原因である。このように、地震及び火山噴火活動は同じ地球科学的背景を持った自然現象であり、それぞれの現象に共通の場の理解を深める必要性が強く認識されるようになった。このため、地震予知研究と火山噴火予知研究のこれまでの成果に基づいて、新たに両研究が連携して実施できるように、二つの計画を統合した「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」が、平成21年度から平成25年度までの5か年計画として策定された。その基本的な考え方は以下のとおりである。
 近年の研究の進展によって、海洋プレートの沈み込みと巨大地震の発生、マグマの発生と蓄積・移動、内陸の大地震の発生を、関連する現象として包括的に研究することが現実的になってきた。したがって、地震予知研究と火山噴火予知研究で共通の課題を設定して共同で観測研究を実施する。また、両者には、測地学・地震学・電磁気学等の共通の観測手法で研究することのできる対象が多い。我が国には、世界に類を見ない高密度な地震・地殻変動の基盤的観測網が整備されており、これらの研究資源を地震及び火山現象のいずれの観測研究にも有効に活用する。
 また、地震予知研究計画では、これまで、地震発生に至る全過程を理解するための研究を推進し、その成果に基づく地殻活動予測シミュレーションモデルとモニタリングシステムの開発を計画の基本としてきた。現行計画でもこの方針を引き継ぎ、予測科学的視点をより重視する。地震と同じ地球科学的背景を持つ火山噴火についても、同様に予測科学的視点を取り入れた研究を推進し、「予測システムの開発」を志向する。
 その一方で、地震発生と火山噴火では、一方は岩石の脆性(ぜいせい)破壊、他方はマグマの流出と爆発的破砕であることから、発生予測の研究戦略や実現の到達度において各々異なる。したがって、両者を統合した現行計画においても、これらの違いを踏まえて、研究を効果的に推進する。
 上記のような基本的な考え方に基づいて、これまでの地震予知研究と火山噴火予知研究の成果を十分に生かしつつ、両者を発展的に統合した計画を推進することとした。その際、予知の実現という最終目標に向かって段階的に計画を進めることが必要である。さらに、研究の過程で得られる知見も、地震や火山噴火に対する防災や減災に有益であることから、研究の成果を積極的に社会に発信していく必要がある。
 このような考え方に従い、現行計画では、「予測システムの開発」をより明瞭に志向した研究に重点を置くこととし、以下の4項目を柱として推進している。(1)地震・火山現象予測のための観測研究。(2)地震・火山現象解明のための観測研究。(3)新たな観測技術の開発。(4)計画推進のための体制の強化。このうち、(1)では、地震・火山現象のモニタリングシステムを更に発展させ、そのデータを用いて地震・火山現象の推移予測を行うための予測システムを開発する。さらに、データベースを構築して情報の統合化を図る。(2)では、予測システムの開発の基礎となる、日本列島及び周辺域の長期・広域の地震・火山現象、地震及び火山噴火に至る準備過程、地震発生先行・破壊過程と火山噴火過程、地震発生・火山噴火素過程の解明のための観測研究を推進する。(3)では、地震・火山現象やその発生に至る過程に伴う地殻現象を高精度で検出するため、海底における観測技術の開発をはじめとして、地下の状態のモニタリングや噴火活動域における観測技術の高度化、宇宙技術などの利用の高度化を進める。(4)では、計画を一層効果的に推進できる体制の整備や、観測研究プロジェクトを立案・推進するための広く開かれた仕組みの整備を図る。また、成果を社会に効果的に提供するなど、地震・火山噴火災害軽減に関する社会的要請に応えるよう努める。

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