用語解説

一元化震源

気象庁・防災科学技術研究所・大学等の各機関で管理・運営している地震観測データをリアルタイムで収集し,それらを利用して気象庁が一元的に処理を行うことによって決定された震源。

インバージョン

ある事象に関して物理モデルが設定されているとき,その事象で観測された測定値を合理的に説明するモデル中の変数を推定するための数学的解析手法。

応力降下

地震発生時に,断層滑りによって蓄積されたひずみエネルギーが解放され,断層面にかかる応力が低くなる現象。

応力場

岩盤等の物体内部に考えた仮想的な面を通して及ぼされる単位面積当たりの力を応力という。震源域の応力が岩盤の破壊強度より高くなったときに地震が発生すると考えられている。物体内部の応力の向きや大きさの空間的な分布の状態を応力場という。

海底間音響測距

海底に設置された複数の音響トランスポンダー(観測点)で,それぞれの観測点間の距離を音波を用いて測定する方法。一定期間,繰り返し測定することによって観測点間の距離の変化がわかり,海底の水平方向の地殻変動を把握することができる。

確率利得

無作為に発生していると仮定した場合に予測が的中する確率に対する,実際の予測の的中率。

火山灰

火山噴火により噴出した個体のうち,直径2mm未満の細かい破片。

間隙水圧

土や岩石中の粒子間のすきま(間隙)に入り込んだ水などの流体にかかる圧力。

間隙流体圧

→間隙水圧を参照。

干渉SAR

同じ場所を撮影した時期の異なる2枚のSAR 画像の差をとる(干渉させる)ことにより地表面の変動を詳細にとらえる手法。

強震動

被害を及ぼすような強い地震動(揺れ)のこと。

空振

空中を音波として伝わる振動のこと。耳に聞こえない低い周波数の音波をさす場合が多い。噴火に伴って火山ガスや噴煙が火口から大気中に放出される際に発生することがよく知られているが,地震,津波,雪崩等の発生時に放出されることもある。

クラック

岩石中の裂け目,ひび割れのこと。

警報分率

対象期間のうち,警報を発している期間の割合。

コミュニティ・モデル

地震や火山噴火を含む多様な地殻活動を定量的に理解することを目的として,これまで蓄積された日本列島の沈み込み構造に関する知見を統一的に集約し,統合的に構築した共通モデル。

災害素因

災害誘因を受けた際に生じる被害・損失の規模,様態を左右する,地形・地盤などの自然環境の脆弱性(自然素因)や,構造物・人間社会の脆弱性(社会素因)のこと。

災害誘因

災害をもたらす原因(加害力,外力)のこと。地震や火山噴火による災害は災害誘因である地震動,津波,火山灰や溶岩の噴出などの外力(ハザード)が災害素因に作用することで引き起こされる。

三次元有限要素法

解析的に解くことが難しい微分方程式の近似解を数値的に得る方法として,構造力学分野で発達し,他の分野でも広く使われている有限要素法を3次元空間に適用したもの。

山体崩壊

山体が地震や火山噴火などによって大きな崩壊を起こす現象。

事象系統樹

火山ごとに,可能性のある複数の噴火現象の時間的推移を網羅的に示したもの。示された複数の噴火推移のうち,どの道筋をたどるかの分かれ目を事象分岐という。

地震・火山噴火予知研究協議会

科学技術・学術審議会(測地学分科会)による建議に基づく地震及び火山噴火の観測研究に関して,関係機関の連携を緊密にして観測研究計画を協議し,研究の有効な推進を図ることを目的として東京大学地震研究所に設置されている組織。

地震波干渉法

2つの観測点で記録された地動の波形を処理することで,それらの間を伝わる波を抽出する手法。地震探査と違い,人工震源を使わずに地下構造を探査することができる。

地震発生長期評価

主要な活断層で繰り返し発生する地震や海溝型地震を対象に,地震の規模や一定期間内に地震が発生する確率を予測したもの。

地震波によって誘発された地震

大地震の震源域から離れている場所において,その地震動で誘発されて発生する地震。

消磁

磁鉄鉱などの磁性鉱物を含む岩石の磁化(磁性の強さ)が低下,または失われること。特に,高温化よる消磁のことを熱消磁という。マグマが地表へ近づくなどの原因により火山体内の温度が上昇することで,熱消磁が起こることがある。消磁領域の周辺では磁場(磁界)が変化する。

滑り欠損

プレート境界の変位を考えた時,プレートの収束運動から期待される量から,実際に生じているずれの大きさを減じた量。欠損が大きいとはプレート間が固着していることを意味する。

スロー地震

通常の地震のように断層が急激にすべること無く,ゆっくりと滑ることによって蓄積されたひずみエネルギーを解消させる現象。

全球移流拡散モデル

全地球表層を対象として,物質や温度などの物理量が流れによって移動する現象と拡散する現象を同時に考慮したモデル。噴火によって噴出された火山灰や噴石の挙動のシミュレーションでも用いられる。

先行現象

地震や火山噴火の発生前に震源域や火山の周辺で発生するさまざまな異常現象。土地の隆起・沈降,地震活動の変化,電磁気異常,地下水の変化などがある。前兆現象と呼ばれることもある。

相似地震

地震波形が良く似ている地震群のこと。ほぼ同じ断層面で同じような滑りが起きた場合に発生すると考えられる。

速度状態依存摩擦則

摩擦係数が,滑り速度と接触面の状態によって規定されるとする法則。

帯磁

磁性鉱物を含む岩石が磁化を獲得すること。

断層ガウジ

断層運動に伴う破砕によって生じた細粒・未固結の物質からなる断層中心部の層。

超低周波地震

短周期成分がほとんど含まれず長周期成分が卓越する地震波を放射する地震で,20~200秒程度の帯域に卓越した周期を持つもの。ゆっくり滑りや火山活動にともなって生じる。

低周波地震

短周期成分がほとんど含まれず長周期成分が卓越する地震波を放射する地震で,2~8Hz程度の帯域に卓越した周期を持つもの。ゆっくり滑りや火山活動にともなって生じる。

低周波微動

数分から数日の間,断続的に低周波振動を発生する現象。低周波地震の重ね合わせと考えられている。

トレンチ調査

地質調査法の一つで,地表から溝状に掘り込み,地表では観測できない地層を新たに露出させ,断面を観察する手法。地震分野では過去の断層運動の年代や周囲の環境の調査,火山分野では過去の噴火史を調査するために有力な方法である。

比抵抗

比抵抗とは,単位断面積・単位長さ当たりの電気抵抗値のことであり,電気伝導度の逆数である。マグマの周辺では高温や流体の存在によって低い比抵抗値を示すことが多いため,地中の比抵抗の分布(比抵抗構造)を調べることで火山噴火の発生ポテンシャルや地下のマグマの状態を把握する研究が進められている。また,地震の破壊領域と地中の比抵抗構造との関連が注目されている。

表面波

地表面に沿って伝わる地震動。地表が波の進行方向に対して直交方向に水平に振動して伝播するラブ波と,地表が上下方向に楕円を描くように伝播するレイリー波とがある。

付加体

海洋プレートが海溝で陸側プレート下に沈み込む際に,海洋プレートの表面にある堆積物が剥ぎ取られ,陸側プレートに付加したもの。

ボーリング調査

地質調査法の一つで,地盤を掘削して円筒状の地質サンプルを取得し,そのサンプルを用いて地盤の詳細な性質を把握する手法。

メカニズム解

地震時の断層運動を断層面の向き(走向,傾斜角)と相対滑りの向き(滑り角)によって表現したもののことをいう。地震波の放射パターンなどから求められ,震源域の応力場を知る手がかりとなる観測データである。

モーメントマグニチュード

地震のエネルギーを表す指標で,地震の規模を表す最も基本的な量である,地震断層の面積と滑り量及び剛性率(岩盤の変形のしにくさを表す物性値)の積で計算される地震モーメントから求められる。中規模から大規模な地震に対して用いられる。

ゆっくり滑り

断層面やプレート境界面で発生する非地震性滑りの一種で,非定常なゆっくりとした滑り。長いものでは継続時間が数年に及ぶものもある。スロースリップ,スロースリップイベント(SSE)ともいう。

余効滑り

地震の後に震源域周辺の断層面で起こる滑り。

余効変動

地震の後に震源域あるいはその周囲で生じる長期間に及ぶ地殻変動の総称。代表的な例としては,断層面上で発生する余効滑りや,マントルの粘弾性緩和による変形などが挙げられる。

予知率

発生した地震数に対する,予知された地震数。

ラブ波

→表面波を参照

レイリー波

→表面波を参照

a-b値

断層面のすべる速度と状態によって摩擦係数を規定する物理定数。a-b値が負の場合,通常断層は固着しているが,地震時に急激に滑り,地震波を発生する。a-b値が正の場合,断層はゆっくり滑っており,急激な滑りは発生しない。値が0に近い時は,通常はゆっくり滑っているが滑り速度が速い時には急激な滑りを発生する。

b値

地震の規模別頻度を,横軸にマグニチュード,縦軸に地震の発生数の対数を取ってプロットした際の傾きのこと。通常は0.7~1.0 程度である。

GIS

地理情報システム(Geographic Information System)の略語。地理的位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し,視覚的に表示し,時間や空間の面から分析できる技術である。

GNSS

全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)の略称。位置や時刻同期を目的とした電波を発射する人工衛星群,地上の支援システム及び電波の受信装置の総称。利用者は,受信機で電波を受信することで自分の3次元的な地球上の位置や正確な時刻を計測することができる。アメリカ合衆国が構築したGPSは現在最も実用的なGNSS であるが,他にもロシアのGLONASSや,ヨーロッパ連合(EU)のGalileoなどのシステムがある。

GNSS-音響測距結合方式

海底における地殻変動を観測するための手法の一つ。海上の船舶やブイの位置をGNSS によって精度よく決定し,それらと海底に設置された基準点(観測点)との距離を,海中音波を用いて測定することにより,海底の基準点の位置を推定する。長期にわたり繰り返し測定して,海底の変動を求める。

PL波

P波の到達後,S波の到達前に現れる,周期5~20秒が卓越するやや長周期の地震波。震源が浅い,大きな地震の際に顕著に見られる。長周期の地震波が,地殻内で広角反射を繰り返すことで形成される。

SAR

Synthetic Aperture Radar の略。人工衛星や航空機などに搭載されたアンテナが高速で移動することにより,大型アンテナと同等の高い分解能を実現したレーダーシステム。

XバンドMPレーダー

従来よりも短波長のXバンド(波長約3cm)を用いた高分解能なレーダー。さらに水平偏波と垂直偏波の2種類の電波を同時に送信・受信するマルチパラメータ(MP)方式によって精度の良い観測が実現される。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)