4.まとめ

「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の4年度目にあたる平成29年度には,草津白根山(本白根山)において人的被害を伴う噴火災害が発生し,霧島山でも新燃岳の噴火や硫黄山の活発化が見られた。霧島山については,2011年の新燃岳噴火以降進められた観測研究の成果が,今回の噴火活動の即時的な把握に活かされたと言える。一方,草津白根山の噴火では,噴火の予測の難しさが改めて提示された。引き続き,活動度の高い火山を対象に重点的な観測研究を進めるとともに,効率の良い火山監視手法の開発や,火山活動史の解明のための地質学的研究をより一層推進する必要がある。
南海トラフ沿いでは,地殻活動のモニタリングにとって海底観測の重要性が明らかとなった。そのため引き続き陸域観測を含めた観測網を維持・充実し,その記録を利用した研究を遂行することが,巨大地震の発生に対し備える上で欠かせない。また災害軽減に資するためには,何が起きうるかを明らかにすることに加えて,その不確かさに関する研究が重要である。不確かさを大きくする要素を集中的に研究することで,不確かさ自体を軽減し被害予測の精度向上が見込める。更に地震に伴い被害を受けるユーザーが想定外の事象に対応していくためには,災害のおおよその規模だけでなく,その不確かさであるばらつきも新たに認識することが大切である。
本計画は前計画まで中心的役割を果たしていた理学研究分野に留まらず,工学や人文・社会科学分野の研究者の参加による学際的研究の推進を特徴としている。この点に関し,平成29年7月に発表された「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画に関する外部評価報告書」の中では,史料等に基づく前近代の地震・火山噴火研究や,総合的な災害科学の確立を目指した拠点間連携研究が実施される等,災害科学の一部としての一歩を踏み出していると評価されている。一方で,災害の軽減に貢献する事を一層意識した研究を進めることや,研究成果を社会に対して適切に発信すること等も指摘されており,本計画の最終年度である平成30年度における課題であり,引き続き,本計画に参加する研究者間の連携を強化し,地震や火山噴火による災害の軽減に貢献できる観測・調査・研究を推進していかなければならない。

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