日・米・NZ国際協力によるスロースリップでのプレート境界面断層滑りメカニズムの解明

課題番号1524

(1)実施機関名:

東京大学地震研究所

(2)研究課題(または観測項目)名:

日・米・NZ国際協力によるスロースリップでのプレート境界面断層滑りメカニズムの解明

(3)関連の深い建議の項目:

4.(6)国際共同研究・国際協力

(4)その他関連する建議の項目:

1.(2)イ.プレート境界巨大地震
1.(3)ア.プレート境界地震
1.(4)イ.断層滑りと破壊の物理モデルの構築
2.(2)ア.プレート境界滑りの時空間発展
3.(3)地震・火山噴火の災害誘因の事前評価手法の高度化
3.(4)地震・火山噴火の災害誘因の即時予測手法の高度化

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

海溝型地震全般

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

新規研究

(7)本課題の5か年の到達目標:

 地震活動やスロースリップなど,プレート境界における多様な滑り運動を詳細に把握し,プレート境界の形状や物性などの構造的要因との関係を明らかにすることは,地震発生メカニズムや断層破壊過程の理解に重要な貢献をなす.ニュージーランド北島では陸上地震観測網に加えて,近年GPS観測網が整備され,東海岸沖合いのヒクランギ沈み込み帯における通常の地震活動に加え,プレート間固着強度分布や,スロースリップの発生が明らかとなってきた.特に本研究の対象地域であるヒクランギ沈み込み帯北部では,~2年周期でスロースリップが発生しており,過去にはM7級津波地震による被害も受けている.太平洋プレートの沈み込みが浅いため,地震波構造調査によって海山の沈み込みなど詳細なプレート境界周辺の形状や反射強度が得られており,断層すべり運動とプレート境界の構造的要因との関係について議論を行う上で,世界的に最適な場所である.
 海底下深度掘削によって実際にプレート境界面周辺物質までを取得し,沈み込みに伴う脱水反応過程や水の流路,およびその低周波イベントとの関係を明らかにすることを目的とした国際共同研究を計画している.国際共同研究の枠組みの中で,日本の得意とする地震・海底地殻変動観測を,日・ニュージーランド・米の共同で多点展開することによって行い,ヒクランギ沈み込み帯で発生するスロースリップ,およびそれに伴う多様な地震活動の推移を詳細に把握する.ここで得られた結果と地震波構造断面と比較することによって,多様な断層滑り現象とプレート境界面周辺の構造的要因との関係を解明する.

(8)本課題の5か年計画の概要:

 ヒクランギ沈み込み帯では,~2年周期でスロースリップが発生しているが,このうち~6年に一度程度の周期で大規模なイベントが起こっている.海底地震計や海底圧力計を用いて,海域においてこのスロースリップおよびそれに付随する地震活動をとらえ,プレート境界の性質と運動の関係について解明を目指す.そのために我々は,日・米合わせて10台の海底地震・圧力計,5台の海底地震計および17台の海底圧力計を用いて,大規模なスロースリップの滑り過程の全体像をとらえることを目的とした観測を,2014年5月から1年間に渡り行うことを計画している. この観測で得られたデータについて,日・NZ・米の共同で多面的な解析をし,議論・検証を行う.この3カ国共同観測後にも,複数回のスロースリップを観測することを目的として,本研究計画による海域観測を続け,プレート境界運動の詳細を把握する.

(平成26年度)

  • 日・ニュージーランド・米共同による海底地震観測および海底圧力計を用いた海底上下変動観測を開始する.
  • 東京大学地震研究所では,2012年4月から2013年3月までの期間,同海域で4台の海底地震計を用いたパイロット観測を行った.観測期間中に観測網の南方で発生した比較的大きなスロースリップについて,その滑り過程を国際共同研究者が解析中である.スロースリップと地震活動との関係を把握するために,海底地震観測記録の解析を進める.
  • 2013年3月に設置した東北大学の海底圧力計4台の回収を行う.観測期間中の2013年7月に,少~中規模のスロースリップが発生した.このイベントにおけるプレート境界滑り分布について,解析を始める.

(平成27年度)

  • 日・ニュージーランド・米による海底多点観測網の回収を行い,解析を開始する.
  • 東北大学の海底圧力計については,回収後再設置を行い,引き続き観測を行う.
  • これまでに得られた海底地震計,および海底圧力計の記録の解析を進める.

(平成28~29年度)

  • 東北大学の海底圧力計の回収・再設置を行い,引き続き観測を行う.
  • 海底地震計のデータと陸上観測網のデータを合わせて解析し,地震活動やスロースリップに付随する低周波イベントの同定,および震源の決定を行う.
  • 震源決定の精度を上げるため,海域下の地震波速度構造モデルの改善を行う.
  • 震源メカニズムの決定を行う.

(平成30年度)

  • 東北大学の海底圧力計の回収を行う.
  • 精度よく決定された地震や低周波イベントの震源および震源メカニズムと地震波反射断面との比較を行い,構造的要因との関係について検討を行う.
  • 日・ニュージーランド・米共同研究者によるワークショップを行い,結果のとりまとめに向けた検討を行う.

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

望月公廣・篠原雅尚・山田知朗・塩原肇・小原一成

他機関との共同研究の有無:有
伊藤喜宏(京都大学防災研究所)、日野亮太・木戸元之(東北大学災害科学国際研究所)

Stuart Henrys・Stephen Bannister・Bill Fry・Charles Williams(GNS Science, NZ)Phil Barnes(NIWA, NZ)
Laura Wallace(UTIG, USA)
Susan Schwartz(UCSC, USA)
Spahr Webb(LDEO, USA)
Anne Sheehan(University of Colorado at Boulder, USA)

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京大学地震研究所
電話:03-5841-5712
e-mail:yotikikaku@eri.u-tokyo.ac.jp
URL:

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:望月 公廣
所属:東京大学地震研究所 地震予知研究センター

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --