日本列島基本構造モデルの構築

課題番号1505

(1) 実施機関名:

東京大学地震研究所

(2) 研究課題(または観測項目)名:

日本列島基本構造モデルの構築

(3)関連の深い建議の項目:

1.(3)ウ.内陸地震と火山噴火

(4)その他関連する建議の項目:

1.(3)ア.プレート境界地震
1.(4)ア.構造共通モデルの構築

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

 2011年東北太平洋沖地震.

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

新規研究

(7)本課題の5か年の到達目標:

 東北地方太平洋沖地震は,日本列島の沈み込みシステムに大規模な影響を与えており,この巨大地震によって引き起こされるプレート境界及び島弧内陸域の地殻活動を定量的に明らかにしていくことは,喫緊の重要な課題となっている.近年,詳細な地震観測網の整備や解析方法の進展,大規模な制御震源による地殻構造探査によって,日本列島の沈み込みシステムの基本構造についての知見は著しく増加した.しかしながら,これらの情報が組織的・統一的に集約され統合的な共通モデルが構築されているわけではない.日本列島の基本構造についてのコミュニティ・モデルの構築とそれらの更新は,日本列島の地殻活動予測にとって本質的に重要であり,現状の活動を把握し,今後の観測を合理的に進めていくためも欠かせないものである.東北太平洋沖地震に関して言えば,プレート境界をこれまでの研究成果から可能な限り正確に定義し,その面上での運動(地震時滑り及び余効滑り)による島弧域の弾性的/粘性的変位・歪・応力を計算し,現在進行中の地殻活動との比較によってプレート境界及び島弧域のモデルの妥当性を検証し,地殻活動の背景となる物理的メカニズムの理解につながるであろう.また,島弧域の広域応力の蓄積過程がある程度定量化できれば,島弧内の構造モデルをより精緻化し,更に列島内に分布する断層をモデル化することによって内陸地震活動の理解にも大きく貢献することができる.

 本課題は,こうしたコミュニティ・モデルを構築し,これらを共有し,更新していくことにより,地殻活動予測,巨大地震発生にいたるプロセスの定量的な理解など,火山噴火予測を含む多様な地殻活動についての定量的な理解を深めようとするものである.日本列島は,千島弧・東北本弧・西南日本弧・琉球弧・伊豆小笠原弧から成り,各々の島弧下で進行しているプレート沈み込みが複雑な相互作用を及ぼしあっている.従って,これらの領域を広範に覆う領域でのモデル化が必要である.特に東北地方太平洋沖地震後の地殻変動・地震活動現象等を支配する歪み・応力状態の定量的評価に必要な項目を含むものとし,ジオダイナミクス・被害地震の発生評価などを考慮し,統合モデルは以下の6要素を表現するものとなる.
(1)地形, (2)沈み込みプレート境界,(3)モホ面,地殻内脆性/延性境界(eg. D90),(4)震源断層の形状,(5)リソスフェアー・アセノスフェアー境界,(6)日本列島下のマントルおよび地殻のレオロジー

(8)本課題の5か年計画の概要:

 本提案は,既往の成果を可能な限り収集・整理し,(5)で挙げた6つの要素についてのデジタルモデル(grid データ)を構築していくものである.従って,研究というより地道な実作業という色彩が濃い.本研究で対象とする要素の中の地形及びプレート境界についてモデル化がかなりの程度進んでおり,5ヶ年計画の初期の段階で整備する.また,モホ面・脆性/延性境界,震源断層については,現在も調査・研究が進行しており,その成果を随時取り込みながら,5ヶ年かけて実施する.また,リソスフェアー・アセノスフェアー境界,日本列島下のマントルおよび地殻のレオロジーについては,境界の位置や物性値そのものについても不明な点も多く残されている.これらについては,その直接的(実験的)/間接的な推定方法の開発も含め,研究的要素が強い.5ヶ年計画の前半では関係研究者による集会を通じて最新の知見を集約し,後半で実験/実作業を行うこととしたい.表1に5ヶ年計画の概要を示し,モデル化の手順の要約する.

(1)地形・海溝軸モデルの構築 (H26年度):対象域における地形データを統合する.更にモデルとしての海溝軸を定義する.(H26年度).
(2)プレート境界モデルの構築 (H26-27年度):これまでの制御震源探査・tomography解析・高精度震源分布に基づき,Pacific Plate及びPhilippine Sea Plate境界を定義する.
(3)日本列島及びその周辺の震源断層モデルの構築 (H26-30):これまでの制御震源構造探査・変動地形的調査等に基づき,震源断層の位置・形状のモデル化を図る
(4)日本列島下のモホ面及び脆性・延性域境界モデルの構築 (H27-30).これまでの制御震源探査・tomography解析・高精度震源分布に基づき,日本列島下のモホ面及び脆性・延性域境界モデルの構築のモデル化を図る.
(5)リソスフェア・アセノスフェア境界の構築 (H26-30):広域・深部tomography・これまでの地殻変動シミュレーションの結果を踏まえ,日本列島周辺のリソスフェア・アセノスフェア境界及びその粘性的構造を推定する.
(6)日本列島下の岩石モデル・レオロジーモデルの構築(H26-H30):これまでの制御震源探査・tomography解析から得られた地震波速度構造・比抵抗構造を組み合わせ,まず島弧スケールにおける岩石モデルを構築する.構成岩石の推定は,室内での高温・高圧下での弾性波速度の測定結果との比較によって行う.高温変形試験を行い,岩石の粘性についての基礎資料を直接的に得る.日本列島下の温度構造についての知見を加え, レオロジー構造を推定する.
 
 尚,ここで想定しているモデルでは,観測されている細かい形状変化などが,報告されている場合は,それらを反映したものとし,数値計算に必要なスムージングなどについては,初期モデルでは実施しない,いわば観測寄りの統合モデルを想定する.

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

佐藤 比呂志・岩﨑 貴哉・石山 達也・篠原 雅尚

他機関との共同研究の有無:有
参加人数:20名.
参加機関:防災科学技術研究所・国土地理院・海上保安庁・海洋研究開発機構・岩手大学・東北大学・新潟大学・愛知教育大学・中部大学・京都大学. 

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京大学地震研究所
電話:03-5841-5712
e-mail:yotikikaku@eri.u-tokyo.ac.jp
URL:

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:岩﨑 貴哉・佐藤 比呂志
所属:東京大学地震研究所

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --