課題番号1101
弘前大学理工学研究科
地殻流体と地震活動の関係及び過去地震の災害誘因の解明
1.（3）ウ．内陸地震と火山噴火
2.（2）イ．地殻ひずみ・応力の変動
3．（1）地震・火山噴火の災害事例の研究
3．（2）地震・火山噴火の災害発生機構の解明
東北地方太平洋沖地震
東北地方太平洋沖地震後の見直し建議に基づく課題の1444において、森吉山周辺で発生している誘発地震について、臨時地震観測データを用いて震源のマイグレーションを詳細に調べ、後続波を構成する散乱源の位置を推定し、地殻流体の分布と移動について議論した。
内陸地震の発生機構の理解のためには、地震発生域の構造やそこでの地震活動の特徴把握が重要であるが、最近は特に地震発生と地殻流体の関係が注目されている。そこで本課題では、2011年東北地方太平洋沖地震の誘発地震発生域での精密な震源と震源メカニズム解の分布を求め、地震活動の移動現象と地殻流体との関係を明らかにする。また、流体の存在が確実である火山周辺において、火山深部・浅部低周波地震及び高周波地震の観測と解析を通して、低周波地震発生機構、地殻応力場や地震活動との関わりを明らかにし、地震火山相互作用の解明に資する。さらに、2011年東北地方太平洋沖地震及びその余効変動による応力場の擾乱が地震・火山活動に及ぼした影響についても調べる。
建議では、工学、人文・社会科学分野と連携し、歴史学的な観点も加えて、防災や減災につながる成果を挙げることが求められている。そこで、17・18世紀にM7級地震が頻発した青森県の日本海沿岸と内陸地域を対象に、分野横断型の研究を実施する。自然地震及び微動観測データ、及び歴史資料に基づき、強震動が地形・地盤及び建造物の脆弱性とどう結び付いて災害を出現させたかを検討し、地震・火山災害の特性を社会環境の時代的変化に留意して理解する。また、地殻流体に関する知見も加え、地震テクトニクス的背景が共通する他地域での検証と比較し、災害誘因の解明を目指す。
(a) 地殻流体と地震火山相互作用に関する研究
東北地方北部の誘発地震発生域では、震源を精密に決定して震源移動を明らかにする。低周波地震発生域や、流体の存在が確実である火山周辺においては、波形相関を用いるなどして地震活動を詳細に把握する。また、これらの領域で、震源メカニズム解、地震波速度、地震波散乱強度、及びS波偏向異方性の分布を求める。低周波地震に関しては、アレイ観測により低周波地震の後続波の起源を明らかにし、波形インバージョン等により発生機構の推定を行う。（平成26〜28年度）
低周波地震発生域での場の特徴把握を基に、低周波地震の発生を地殻活動全体像の中で理解する。また、誘発地震、低周波地震、火山周辺の地震の震源分布や地震波散乱強度の時間変化を詳細に調べ、東北地方太平洋沖地震発生に伴う地殻の応答、流体の存在と移動、火山が存在することによる構造不均質のそれぞれが地震発生に及ぼす影響と、地震火山相互作用について検討する。（平成29・30年度）
(b) 過去の地震の災害事例の検証
青森県内の地震波速度構造・地震動距離減衰・地盤特性を自然地震観測及び微動探査により把握する。また、青森県の日本海沿岸と内陸で発生した歴史地震の研究を行い、社会環境の時代的変化に留意しつつ被害分布を再検討する。（平成26〜28年度）
28年度までに行った地震動距離減衰、地盤特性、及び被害分布の検討を基に、歴史地震の断層モデルの見直しが必要かどうかを検討する。また、歴史地震の分布や断層モデルを、(a)の地殻流体や(b)の地下構造に関する知見、及び同じ日本海東縁部で発生した2004年中越地震・2007年中越沖地震の地震テクトニクス的背景を通して解釈し、災害誘因について検討する。（平成29・30年度）
小菅正裕・渡邉和俊・有賀義明・片岡俊一・津村浩三（以上弘前大学理工学研究科）
白石睦弥（弘前大学地域社会研究科）
他機関との共同研究の有無：有
部署等名：弘前大学理工学研究科
電話：0172-39-3652
e-mail：mkos@cc.hirosaki-u.ac.jp
URL：http://hrsryu.geo.hirosaki-u.ac.jp/
氏名：小菅正裕
所属：弘前大学理工学研究科
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録：平成26年07月 --