精密制御信号システム(アクロス)による地下の高精度常時モニタリング技術の高度化

課題番号:1707

(1)実施機関名:

名古屋大学環境学研究科

(2)研究課題(または観測項目)名:

精密制御信号システム(アクロス)による地下の高精度常時モニタリング技術の高度化

(3)最も関連の深い建議の項目:

3.(3)ア.地下状態モニタリング技術

(4)その他関連する建議の項目:

1.(1)ウ、2.(2‐2)ア.

(5)平成20年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 前計画において、名古屋大学は、東京大学地震研究所、京都大学防災研究所、静岡大学、日本原子力開発機構東濃地科学センター、気象研究所などと共同で、地殻を伝わる弾性波の伝播特性の時間変動を高分解能で検出するために、弾性波アクロス震源装置による精密制御信号の発信およびそれを高安定度で長期間測定する技術開発と実証実験を行ってきた。それにより、機器および観測システムは実用に足るレベルの完成を見た。また、前計画では、アクロス震源装置と地震計アレイおよび定常観測網を用いたプレートからの地震波の検出と反射係数の時間変動の検出に重点を置いて研究を実施した。地震計アレイと定常観測網を用いた波群の検出の方法論を構築し、実際に波群の検出とそのモニタリングが行えることを実証した。また、長期間のデータの収集と解析を行い、プレート境界からの反射波と解釈される波群を検出し、その時間変動を検出した。
 また、東海地震の震源域である静岡県西部および愛知県東部をターゲットとして観測を実施するために、愛知県豊橋市に2台のアクロス震源装置を移設した。これにより東海監視を行う準備が整ったとともに、震源アレイなどの基礎研究が実施できる環境が整った。
 対象までの深度および距離、S/N比によって時間分解能が規定されるが、長期連続運転・観測の実現により、断層破砕帯近傍での地震波通過時の走時遅れ(数日)、地下浅部を伝播する波動の気温や気圧に同期した走時変動(1日~数ヶ月)、断層の固着強度回復と整合的な走時遅れの減少と振幅の増加(数年)、プレート境界での反射波の走時変動と年周変動および低周波微動活動との相関(数ヶ月)といった異なる時間スケールの変動現象を捉えることに成功した。

(6)本課題の5ヶ年の到達目標:

 本課題では、平成21年からの5ヶ年において、前計画で確立した精密制御信号システムの技術の高度化を行うとともに、地下の状態の時間変動のモニタリングの実証に重点を置く。

1.モニタリング技術の高度化

 精密制御信号の送信技術は確立されたので、目標とする地下の地震波伝播特性の時間変化の検出精度を高めるための高度化を行う。震源関数の推定手法および浅部の環境変化による擾乱を除去する手法を高度する。また、目標に向かって信号を照射するために震源アレイの技術を高度化する。さらに、地震計アレイによる解析手法についても高度化する。

2.火山におけるモニタリング技術の開発

 火山における噴火準備過程の能動的モニタリング手法を確立する基礎研究を実施する。火山を対象とした場合の信号の伝達効率や伝達特性に関する理論的検討、震源・観測点配置、変動源の検出手法やモニタリング手法の開発を行う。また、現行の震源装置に加え、より低い周波数帯域の地震波信号の送信が可能な震源について検討する。

(7)本課題の5ヵ年計画の概要:

1.モニタリング技術の高度化

 平成21年度においては、複数のアクロス震源装置の発震信号を制御して震源アレイを構成する手法の高度化に着手する。
 平成22年度においては、震源関数の推定手法および浅部の環境変化による擾乱を除去する手法の高度化に着手する。
 平成23年度においては、地震計アレイによる解析手法の高度化に着手し、Hi‐net観測点などのデータを用いて実証する。
 高度化された手法は順次モニタリングに反映させ、平成24年度以降においては、定常的モニタリングを実施する。

2.火山におけるモニタリング技術の開発

 平成21年度においては、火山における噴火準備過程の能動的モニタリング手法を確立する基礎研究を実施する。
 平成22年度においては、火山を対象とした場合の信号の伝達効率や伝達特性に関する理論的検討、震源・観測点配置の検討、変動源の検出手法やモニタリング手法の開発を行う。
 平成23年度以降において、現行の震源装置に加え、より低い周波数帯域の地震波信号の送信が可能な震源について検討する。
 計画期間中に実際の火山における能動的モニタリングの実施を目指し、可能になった場合はモニタリングの実施に集中する。

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

名古屋大学環境学研究科(山岡耕春、渡辺俊樹)、静岡大学理学部(生田領野)、鹿児島大学理学部(宮町宏樹)

他機関との共同研究の有無:
東京理科大学(佐伯昌之)、気象庁気象研究所(勝間田明男、3名)

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:名古屋大学環境学研究科附属地震火山・防災研究センター
電話:052‐789‐3046(事務室)
e‐mail:
URL:http://www.seis.nagoya‐u.ac.jp/

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成22年02月 --