課題番号:1441
東京大学地震研究所
深部地殻応力測定手法開発研究
3 新たな観測技術の開発
(3)観測技術の継続的高度化
ウ.大深度ボアホールにおける計測技術
課題番号1419において,原理的問題点が指摘されている水圧破砕法に代わる地殻応力測定手法として,ボアホールジャッキ式乾式破砕法の開発研究,水圧破砕法の問題点の解明,および地殻応力測定手法の主力であった水圧破砕法によりえられた過去のデータの見直し手法に関する研究を実施した.岩盤の不均質性の影響から逃れるため,同一の亀裂を対象に複数手法による比較試験を実施した結果,一般に用いられてきた水圧破砕法でえられた最大主応力値には問題があること,高剛性水圧破砕法とボアホールジャッキ式破砕法による結果は信頼できること,水圧破砕法における再開口の瞬間に亀裂開口部にボアホール水圧が作用すること,および適切な流量記録が存在すれば,従来型の水圧破砕法による結果も見直しが可能であることがわかった.なお,比較試験を実施した地点,すなわち地表から0.6km,跡津川断層から1.1kmの地点でえられた結果は水平面内最大圧縮応力が跡津川断層にほぼ垂直であった.この事実は,測定地点近傍の跡津川断層がせん断応力を支えていないことを示している.
これまでの技術開発研究により,地殻応力測定の主力であった水圧破砕法の問題点は解明され,新たな手法,すなわち地震研究所でボアホールジャッキ式乾式破砕法が,東北大学の共同研究者が中心となって高剛性水圧破砕法が開発されたが,いずれの手法も掘削に伴うボアホール孔壁破壊が生じると適用不能となる.破壊条件は応力状態や強度特性に依存するが,通常,3km以深で急激に破壊確率が高まる.そこで本研究課題では,ボアホール孔壁破壊が生じ,既存のすべての直接測定手法が適用不能な応力条件でも直接測定が可能な手法の開発を目標とする.
ボアホール孔壁面歪測定プローブはボアホール壁に内圧をかけることができると同時にミクロンオーダーの変位計測が可能なものでなければならない.また,数キロメートルオーダーとなると高温・高圧条件で使用可能でなければならない.さらに電源あるいは信号を数キロメートルオーダーにわたって伝送する機能も必要である.このような条件を満足するセンサーとして光ファイバーセンサー系の利用を想定している.ダウンホールと地表との通信機能は不要であり,ダウンホールにエレクトロニクス系も不要というメリットがある.一方,光ファイバーセンサーは横荷重の耐性が低く,切れやすい.したがって,ある程度の段差が避けがたいボアホール壁面にセンサーを押し付けて歪を計測するためのセンサー保護媒体の設計が肝要である.
平成21年度では,その手法のなかで重要な役割を果たすボアホール孔壁面歪分布測定プローブの開発研究を実施する.本研究課題で開発される孔壁面歪分布測定手法の原理はボアホールジャッキ式破砕法にも適用可能である.現状では,破砕性能や再開口性能は2km~4km程度の深さの応力状態まで対応可能であるが,計測すべき孔壁変位が小さいため極めてデリケートな取り扱いが必要なため,数kmオーダーの計測には障害となっている.そこで,ボアホール孔壁面歪分布測定プローブと同じ原理を利用してボアホールジャッキ式乾式破砕法の亀裂再開口検出装置の改良を実施する.
平成22年度はボアホール孔壁面歪計測プローブの室内試験用プロトタイプを作成し,機能試験を実施する.
平成23年度はボアホール孔壁面歪計測プローブの現位置実証試験用プロトタイプを作成し,機能試験を実施する.
平成24年度は現位置計測を目指した機能試験を実施する.
東京大学地震研究所(佐野修)
他機関との共同研究の有無:
京都大学工学研究科(石田 毅),崇城大学工学部(平田篤夫)
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研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成22年02月 --