精密弾性波計測による微小応力変化測定手法の開発

課題番号:1437

(1)実施機関名:

東京大学地震研究所

(2)研究課題(または観測項目)名:

精密弾性波計測による微小応力変化測定手法の開発

(3)最も関連の深い建議の項目:

3 新たな観測技術の開発
(3)観測技術の継続的高度化
ア 地下状態モニタリング技術

(4)その他関連する建議の項目:

(5)平成20年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 課題番号1420において,精密に制御された高周波振動をもちいた精密な弾性波速度変化測定による微小な応力変化測定手法開発研究を実施した.実施地点は釜石鉱山550mレベル地表から450m,坑道入り口から2kmの地点,地震研究所油壷旧観測坑および名古屋大学瑞浪観測点である.またパリ地球物理研究所との共同研究により,フランスのアルプス内でも同様なシステムを導入し,1年半連続観測を実施した.これまでにえられた主要な成果を列記すると,釜石鉱山においては最小分解能が0.5ppmのオーダーに達している.これは世界最高のレベルである.現在,4方向のP波,1方向のみS波の連続観測を継続しており,方向による速度変化の違いが見出されている.また,亀裂系と関係したS波のスプリッティングも明らかとなっている.速度増加方向だけでなく減少する方向も存在するので,速度変化が静水圧的な圧力変化ではなく,応力場の変化を捉えているものと考えられる.応力変化に対する感度係数をもとに推定すると,N50E方向では年間 50~100hPa程度の圧縮応力増加が示唆される.N50Eの測線では1~2ヶ月程度の比較的大きな変動が見られるが,最終年度に設置したボアホール水圧計測結果と対応している.方向により振幅に違いがあるが,年周変動も認められている.フランスでの計測では観測位置近傍に夏季と冬季で大きく水位が変動するダム湖が存在しており,水位の急激な変動と弾性波速度変化に対応が認められた.

(6)本課題の5ヶ年の到達目標:

 地殻変動観測はGPSやSAR等,人工衛星利用技術が主流となっている.しかし地殻変動現象を明らかにするためには,変位や歪だけでなく,応力状態およびその変化も知る必要がある.地殻応力の絶対量は,改良された水圧破砕法(高剛性水圧破砕法)やボアホールジャッキ式乾式破砕法等により,2km以浅については計測可能な手法が開発されたが,これらの分解能は高々0.1MPa,通常はMPaのオーダーであり,伸縮計等による歪計測とは数桁も分解能が劣っている.本研究は,原子時計等,精密な計時装置を導入し,岩盤そのものを計測装置の一部として取り込むことにより,応力変化にともなう弾性波伝播特性変化を検出する手法の開発であり,測定地点近傍のhPaオーダーの応力変化がモニター可能となる.平成21年度は,既設観測点において,精度の向上をはかると同時に,新たに複数観測点に比較観測系を導入する

(7)本課題の5ヵ年計画の概要:

 平成21年度は,既設観測点において,精度の向上を目指す.また,レーザー伸縮計,超伝導重力計やボアホール水圧計測等,多様な観測系が集まっている神岡鉱山,および石英管伸縮計や水圧計測系が整備されている京都大学防災研究所の観測坑に本研究で開発された手法を導入し,比較観測を開始する.
 平成22年度は,前年度に新たに設置された比較観測点の計測系の精度向上をはかる.
 平成23年度は,これまでに設置された比較観測点の計測系の精度向上をはかる.
 平成24年度は,これまでの開発結果をふまえて,精密応力測定手法の妥当性を検証する.   

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

佐野修,新谷昌人(東京大学地震研究所)

他機関との共同研究の有無:
加納靖之(京都大学防災研究所)

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:
電話:
e‐mail:
URL:

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成22年02月 --