課題番号:1416
東京大学地震研究所
海域から陸域までの総合的調査・観測によるアスペリティの実体解明
2.地震・火山現象予測のための観測研究の推進
(2) 地震・火山噴火に至る準備過程
(2‐1) 地震準備過程
ア.アスペリティの実体
2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進
(1)日本列島及び周辺域の長期・広域の地震・火山現象
イ. 上部マントルとマグマの発生場
ウ.広域の地殻構造と地殻流体の分布
2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進
(2)地震・火山噴火に至る準備過程
(2‐1)地震準備過程
ア.アスペリティの実体
イ.非地震性滑りの時空間変化とアスペリティの相互作用
エ.スラブ内地震の発生機構
3.新たな観測技術の開発
(1)海底における観測技術の開発と高度化
イ. 海底地震観測技術
1995年以降、南海トラフ、三陸沖、日本海東縁、伊豆小笠原沖において観測を実施し、プレート境界域付近での不均質構造とプレート境界からの反射波の振幅強度の空間分布を求めた。また、東大海洋研、海洋研究開発機構等の観測船の利用により、釧路沖、茨城沖、東海沖、南海トラフ、日向灘、南西諸島海域、日本海等においても、構造調査、地震活動マッピングが進んだ。2004年は、宮城沖において想定震源域付近で大規模な構造探査実験を行い、沈み込む海洋プレートの形状とアスペリティに関連があるらしいことを見いだした。また、宮城県沖地震のアスペリティからの反射波の振幅強度は相対的に小さいことが示唆された(篠原・他、2007)。2006年は、福島沖及び茨城沖陸側海溝斜面において、大規模な構造探査実験を行い、2007年は海溝平行測線下の構造を求めた。その結果、最上部マントル速度が、8km/sを切る速度に低下する領域があることがわかった。この低速度域は、1938年の塩屋崎地震群の震源域の一部にあたっている(篠原・他、2008)。
2002年7月から、茨城沖日本海溝陸側斜面において、長期観測型海底地震計を用いた繰り返し観測を開始した。この領域は、1982年にM7.0が発生し、沈み込んだ海山が地震発生に大きな影響を及ぼしていると考えられている。また、約20年間隔でM7級の地震が発生している。1982年に発生した地震の震源過程の研究より、約20年間隔で同規模の地震が発生していれば、海陸プレートの相対変位をほぼ地震のすべり量のみで説明できることが示されている。このような地域で長期間にわたって、地震活動をモニタリングすることは、アスペリティ実体解明に重要な役割を果たすと考えられ、現在も観測は続行中である。これまでに解析された地震の震央分布を見ると、1982年地震の震源周辺、および震源断層境界部に集中的に地震が発生しており、さらに地震時の滑り量が大きかったと考えられている場所でも発生頻度が高いことがわかった(望月・他、2007)。また、2003年から文部科学省委託研究により、長期観測型海底地震計を用いた繰り返し観測を、日本海溝域、南海トラフ域で実施し、詳細な地震活動をもとめた(望月・他、2008、桑野・他、2008)。
太平洋プレートの沈み込む、北海道東部太平洋岸(厚岸・根室)、同中部太平洋岸(えりも)、宮城県牡鹿半島沿岸、およびフィリピン海プレートの沈み込む東海地方(御前崎・豊橋)、日向灘沿岸(宮崎)の各地域において、絶対・相対重力観測を続け、数年ないし5年間にわたる重力の経年変動データを蓄積してきた(御前崎については10年)。一方、重力変動データ・GPS変位データを解析する手法については、粘弾性や水平方向不均質を考慮した計算手法を開発した(Tanaka,
et al, GJI, 2006, 2007; Fu, and Sun, GJI, 2007 )。
静岡県中西部において、GPS稠密観測網による観測を行った。GEONET観測網とあわせ統合的な解析処理を実施した。こうした中、愛知県で発生した短期的スロースリップによるものと思われる遷移的変位を捕らえることができた(濱、2008)。これまで、短期的スロースリップは変化が微細であることからHinet傾斜計等のみで観測されてきたが、微小な地表変位をGPS観測でも捕らえられるように解析手法を高度化して測位解の精度を向上させたところ、2004年12月に発生した短期的スローイベントに対して2mm程度の変位のジャンプが測定された。
歪・傾斜の連続観測は横坑では10年以上、ボアホール観測でも7年以上の実績があり、10‐9あるいはそれ以上の高分解能のデータが蓄積されている。そこで、スローイベント等の検出をめざして、油壺、鋸山、富士川観測坑内に設置された石英管伸縮計および水管傾斜計の長期間の連続データを作成した。超広帯域地震計としての活用も視野にいれ、過去のデータの編集・解析を行った。
本観測研究計画は
1)アスペリティの空間規模及び分布の把握
2)プレート間固着を支配する物理的過程の理解
3)プレート境界近傍で発生する地震の震源と発震機構の高精度推定
を進めることにより,アスペリティの実体を解明することが目的である.さらには,境界での滑りと固着の状態の時間的変化についても研究を行う.このために,様々な分野の観測を有機的に結合し,研究を行う.最終的な目標であるアスペリティの実体把握のために,陸域・海域地殻変動,繰り返し地震などを用いて,プレート間の固着度の分布を精度良く求め,さらに固着が強い領域,弱い領域のプレート境界付近及びこれまでに求められているアスペリティ(大地震震源域)の詳細な構造,地震活動,発震機構解による応力分布を求め,それらの比較検討を行う.
本観測研究計画は大きく次の5つの観測研究項目からなる.
本課題の5つのテーマそれぞれについて,全年度にわたって以下の観測研究を実施する。
1.篠原雅尚・金沢敏彦・望月公廣・山田知朗
他機関との共同研究の有無:あり
北海道大学(村井芳夫)、東北大学(日野亮太・伊藤喜宏)、九州大学(植平賢司)、鹿児島大学(八木原寛)、千葉大学(佐藤利典)
2.篠原雅尚・金沢敏彦・篠原雅尚・望月公廣・山田知朗
他機関との共同研究の有無:あり
北海道大学(村井芳夫)、東北大学(日野亮太・伊藤喜宏)、九州大学(植平賢司)、鹿児島大学(八木原寛)、千葉大学(佐藤利典)
3.篠原雅尚・塩原肇・金沢敏彦・篠原雅尚・望月公廣・山田知朗
他機関との共同研究の有無:あり
北海道大学(村井芳夫)、東北大学(日野亮太・伊藤喜宏)、九州大学(植平賢司)、鹿児島大学(八木原寛)、千葉大学(佐藤利典)
4.大久保修平・加藤照之・孫文科
他機関との共同研究の有無:なし
5.佐野修
他機関との共同研究の有無:なし
部署等名: 東京大学地震研究所 地震予知研究推進センター
電話: 03‐5841‐5712
e‐mail: yotik@eri.u‐tokyo.ac.jp
URL:http: //www.eri.u‐tokyo.ac.jp/index‐j.html
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成22年02月 --