プレート境界の固着域とその深部延長上遷移領域の構造と物理特性の解明

課題番号:1415

(1)実施機関名:

東京大学地震研究所

(2)研究課題(または観測項目)名:

プレート境界の固着域とその深部延長上遷移領域の構造と物理特性の解明

(3)最も関連の深い建議の項目: 

2(2)(2‐1)ア.アスペリティの実体

(4)その他関連する建議の項目:

(5)平成20年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 1997年以降、制御震源地殻構造探査と稠密自然地震観測を組み合わせ、島弧地殻変形過程解明の実験・観測を実施してきた。プレート境界域の構造研究は、1999年以降、海洋研究開発機構と大学との間で海陸統合地殻構造探査を実施し、得られたデータの解析により、海域から陸域下までのプレートの沈み込み構造を明らかにしてきた。それら地殻構造探査で得られたデータで特筆すべきことは、フィリピン海プレートが沈み込む東海地域から西南日本での探査において、いくつのも測線上の陸域の観測点においてプレート境界からの非常に強い反射波が観測されたことである。それらのデータを用い、東海地域ではアスペリティの可能性となりうる、沈み込む海嶺によるプレート上面の凹凸の様子を描き出した。また、四国東部で観測されたプレート境界からの反射波の振幅解析により、固着域の深部延長上でプレート境界面上の反射係数が大きいことが明らかになり、アスペリティとプレート境界面上の反射強度に関係があることを見出した。このように、沈み込むフィリピン海プレートの形状や、反射強度の違いが沈み込む深さに沿って大きく変化することがわかり、プレート境界の固着状況や物性の変化の理解において大きな進展をもたらしてきた。

(6)本課題の5ヶ年の到達目標:

 フィリピン海プレートが沈み込む相模トラフ・駿河トラフから南海トラフにかけてのプレート境界域では、巨大地震が繰り返し発生している。これら巨大地震の発生様式を考える上で、フィリピン海プレートの沈み込み過程に関する知見は非常に重要である。近年、固着域深部延長上のプレート境界遷移領域では、深部低周波地震、深部低周波微動、超低周波地震、スロースリップといったプレート境界のすべり運動と考えられる現象が発見されている。本計画では、過去に実施された海陸統合地殻構造探査データと、新規にプレート境界域の陸域において実施する稠密アレイ観測で得られるデータとの統合解析を実施することで、固着域から固着域深部延長上の遷移領域におけるプレート境界域の3次元構造と物理特性を明らかにし、アスペリティの実体の解明を目指す。

(7)本課題の5ヵ年計画の概要:

 平成21年度においては、紀伊半島において取得されている既存の地殻構造探査データの統合解析を実施し、紀伊半島下の3次元的不均質構造の解明を目指す。また、紀伊半島南部下の遷移領域における詳細な不均質構造を明らかにするための稠密自然地震アレイ観測を実施する。
 平成22年度においては、紀伊半島南部において、深部低周波微動・低周波地震が活発に発生している場所の反射法断面図が得られる測線を設定し、制御震源を用いた地殻構造探査を実施する。得られたデータに対して反射法解析を実施し、測線下の反射法断面図を得る。
 平成23年度においては、平成22年度に取得した地殻構造探査データと平成21年度に得た稠密自然地震アレイ観測データに、それ以前に紀伊半島において取得している海陸統合地殻構造探査データ・自然地震観測データを加えた統合解析を行ない、プレート境界、特に固着域からその深部延長上の遷移領域における3次元地震波速度構造を得る。
 平成24年度においては、平成22年度に取得した地殻構造探査データと、それ以前に取得している地殻構造探査データに対して反射法解析を適応し、固着域から固着域深部延長上の遷移領域におけるプレー境界面の3次元形状を得るとともに、観測されるプレート境界面からの反射波に対しての振幅解析を行い、プレート境界面上の反射係数の空間分布を明らかにする。
 平成25年度においては、本計画で取得した稠密自然地震アレイ観測・地殻構造探査データと既存地震観測データの統合解析により得られたプレート境界域の3次元構造・物理特性とプレート境界域における地震活動・深部低周波微動発生場所との対応関係を考察し、地殻変動、構造地質、熱力学モデルから得られている知見と比較することで、アスペリティの実体の解明を目指す。

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

地震研究所 飯高隆・蔵下英司・岩崎貴哉

他機関との共同研究の有無:
海洋研究開発機構
〔金田義行、小平秀一、尾鼻浩一郎〕

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京大学地震研究所 地震火山噴火予知研究推進センター
電話:03‐5841‐5712
e‐mail:yotik@eri.u‐tokyo.ac.jp
URL:http://www.eri.u‐tokyo.ac.jp/index‐j.html

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成22年02月 --