機動的多項目観測による火山爆発機構の研究

課題番号:1213

(1)実施機関名:

東北大学大学院理学研究科(代表機関),北海道大学大学院理学研究科,東京大学地震研究所,
東京大学大学院理学系研究科,東京工業大学火山流体研究センター,
名古屋大学大学院環境学研究科,京都大学防災研究所,京都大学大学院理学研究科、
鹿児島大学理学部,富士常葉大学環境防災学部

(2)研究課題(または観測項目)名:

機動的多項目観測による火山爆発機構の研究

(3)最も関連の深い建議の項目:

2(3)(3‐3)ア.噴火機構の解明とモデル化

(4)その他関連する建議の項目:

1(2)(2‐2)イ.噴火シナリオに基づく噴火予測
2(2)(2‐2)ア.マグマ上昇・蓄積過程
2(4)エ.マグマの分化・発泡・脱ガス過程

(5)平成20年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

  • 爆発地震の波形解析により,火口浅部の力系やスケーリング,空振励起プロセスが明らかとなった(Ohminato et al., 2006; 西村・内田東,2005).火山性低周波地震の詳細な震源分布や発震機構解が推定された(Nakamichi et al., 2003, Nakamichi et al., 2006).
  • 諏訪之瀬島,スメル火山において,ブルカノ式の小爆発に先行する山体膨脹現象が捉えられるとともに,爆発的噴火の発生直前に,微小な山体収縮が発現していることが初めて明らかとなった(Iguchi et al, 2009).弾性体に囲まれたマグマ内の気泡成長の基礎モデル,脱ガス過程を組み込んだマグマ上昇モデルが構築された(Nishimura, 2004, 2006; Shimomura et al., 2006).
  • 光の屈折率の変化や水蒸気の蒸発や凝縮によって視覚的に捉えられた,火山爆発によって生じる衝撃波を解析し,圧力波発生源を考察した(横尾・他,2004).火山活動に伴う空気振動の発生源としてマグマ表面での気泡の膨張・破裂過程が第一に想定されることを理論的に明らかにした(Marchetti, Ichihara, and Ripepe ,2004)
  • 火山ガス放出率測定装置の小型化を行い,十勝岳,樽前山,三宅島,桜島での放出率観測を実施した(Mori et al., 2006,2007). 火山噴煙中の二酸化硫黄のカラム量分布可視化装置が開発され,高時間分解能(秒オーダー)での二酸化硫黄放出率の変動がとらえられるようになった(Mori and Burton, 2006).

(6)本課題の5ヶ年の到達目標:

 本研究課題では,繰り返し噴火を引き起こす火山において,地震,地殻変動,空気振動などの地球物理学的観測と火山ガスや火砕噴出物などの収集を行い,それらのデータ解析や物質科学的分析を行う.具体的には,以下の目標を掲げる.

  1. 火山噴火現象を定量的に記録する.また,爆発性や火砕流発生の状況をデータの特徴で整理し,火道内過程と噴火様式や規模との関連性を多量のデータをもとに明らかにする.
  2. マグマ上昇モデルや噴火モデルと観測データと比較を行うことで,火道内および火口極浅部のマグマ内揮発性物質の挙動の定量化を行う.
  3. 測定された揮発性成分の挙動と,定量化された火山の爆発性や様式を比較することにより,火山噴火を支配する要因を明らかにする.

本課題で行う観測項目とその目的は以下の通りである.
(1)   広帯域地震観測と解析.噴火発生時の火道浅部の力系の推定.
(2)   地殻変動観測と解析.火道内増圧過程の時空間分布推定.噴出量推定.
(3)   空気振動観測と解析.爆発圧力の時間変化測定.
(4)   噴出物収集と分析.噴出物特性の測定.噴出量推定.
(5)   火山ガス観測と分析.噴火前後の火山ガス放出量,火山ガス起源の推定.

(7)本課題の5ヵ年計画の概要:

 平成21~23年度は鹿児島県諏訪之瀬島において,平成24~25年度はインドネシア・スメル火山において観測を実施し,得られたデータ解析結果をもとに,噴火活動の定量化を行い,噴火規模や様式,支配要因を調べる.

  • 平成21年度においては,鹿児島県諏訪之瀬島において,ボアホール型傾斜計を6地点に設置し,現地収録方式でデータの取得を開始し,データ解析を行う.現在,京都大学防災研等により展開されている広帯域地震計および空振計のメンテナンスを行い,データを収録する.GPS受信機を設置し,連続観測を開始する.火山ガスの遠隔モニタリングの臨時観測を実施する.また,噴火時の噴出物サンプルを可能な限り収集する.
  • 平成22年度においては,諏訪之瀬島で傾斜観測およびそのデータ解析を継続するとともに,火山性地震の発生機構を明らかにするため臨時地震観測を実施する.空振観測,火山ガス観測,噴出物サンプリングも前年度に引き続き実施し,それぞれデータ解析を行う.
  • 平成23年度においては,上記観測を秋まで継続する.約2年間の多項目データの解析結果をまとめ,諏訪之瀬島火山の噴火活動を定量化する.
  • 平成24年度および25年度においては,インドネシア・スメル山において,地殻変動観測,地震観測などを実施し,データを解析する.スメル山の噴火活動を定量化し,諏訪之瀬島などの火山における解析結果と比較することにより,噴火規模や様式,支配要因を調べる.

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

東北大学 西村太志,北海道大学 青山 裕,東京大学 及川純,東京工業大 野上健治,
名古屋大学 中道治久,京都大学 井口正人,鹿児島大 八木原寛,富士常葉大 嶋野岳人

他機関との共同研究の有無:なし

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
電話:022‐795‐6532
e‐mail:zisin‐yoti@aob.geophys.tohoku.ac.jp
URL:http://www.zisin.geophys.tohoku.ac.jp/

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成22年02月 --