課題番号:1210
東北大学大学院理学研究科
準静的滑りの時空間変化に基づく地震発生切迫度評価の研究
2(3)(3‐1)イ.先行現象の発生機構の解明
2(1)ア.列島及び周辺域のプレート運動,広域応力場
2(2)(2‐1)ア.アスペリティの実体
2(2)(2‐1)イ.非地震性滑りの時空間変化とアスペリティの相互作用
プレート境界で発生するスローイベントや余効すべりが地震や低周波微動の発生を促していることが次第に明らかになっており,このことは,アスペリティモデルで定性的には説明できる.平成21年度からの5ヶ年では,これを地震の切迫度評価に役立てるために,この影響を定量化することを目指す.地震同士,またスロースリップイベント同士の相互作用についても,さらに詳細に検討し,そのメカニズムの理解を深める.
平成21年度は,小繰り返し地震やGPSデータによるプレート境界でのすべりモニタリングの自動化や改良を行う.これらの推定結果の相互比較により,すべり量推定の高精度化を目指す。さらに地震サイクルに伴うすべり欠損・前駆すべり・余効すべり過程の数値シミュレーションを行い,上で得られたすべり量推定結果との比較により,プレート間すべりによる局所的な応力の変化やプレート境界の有効法線応力の絶対値の推定を試みる。陸上および海底地震観測網で精度よく求めた地震のメカニズム解を用いて,宮城沖の海溝陸側斜面下の陸側地殻内または沈み込むプレート内部の応力場を調べる.また,相互作用の検証のため,プレート境界での大小地震が入り混じった地震クラスターの抽出を行う.東北日本沈み込み体周辺域のGEONETと東北大学のGPSデータを自動的に併合処理するシステム開発を開始する.
平成22‐25年度は,抽出された地震クラスター内の小繰り返し地震の発生の時間間隔のゆらぎに注目し,周囲の地震や地震の規模等の影響を調べる.東北日本沈み込み帯における小繰り返し地震のモニタリングも継続する.メカニズム解に基づき,地震性および非地震性のプレート間すべりに対応した局所的な応力の変化を調べて,応力場の空間変化に基づく地震発生の切迫度評価の可能性を探る.また,GEONETと東北大学のGPSデータを自動的に併合処理するシステムによって数ヶ月単位でのすべり欠損分布を定量的に評価し,プレート間での歪み蓄積の時空間的な不均質について詳細に検討する.数値シミュレーションにより,GPSや小繰り返し地震で観測されている深部側での余効すべりに対して,間隙水圧の推定へのフィードバックを図る.最終的にこれらの観測事例とシミュレーションを組み合わせることで,切迫度に影響する様々な事象の効果を理解する.
内田直希・伊藤喜宏・松澤暢・太田雄策(東北大学理学研究科)、ほか5名程度(大学院生含)
他機関との共同研究の有無:有
海洋研究開発機構 有吉慶介
部署等名:東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター
電話:022‐225‐1950
e‐mail:zisin‐yoti@aob.geophys.tohoku.ac.jp
URL:http://www.aob.geophys.tohoku.ac.jp/
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成22年02月 --