平成20年度年次報告
課題番号:8003
海上保安庁海洋情報部
海底地殻変動観測
1.(2)ア. プレート境界域における歪・応力集中機構
2.(2)ア. 日本列島域
2.(2)イ. 東海地域
2.(2)ウ. 東南海・南海地域
2.(2)エ.
その他特定の地域
3.(1) 海底諸観測技術の開発と高度化
宮城県沖地震、東南海・南海地震等の海溝型地震の発生が想定される海域において、海底地殻変動観測を継続するとともに、観測技術の開発・高度化を図る。
既設の海底基準点において継続的な観測を実施する。
既設の海底基準点において海底地殻変動観測を実施した。
福島沖海底基準点(塩屋崎東方約80km、水深約1200m)では、2002年6月~2008年3月の間に行った計6回の観測から、ユーラシアプレート安定域に対して西向きに3.1cm/年の速さで移動していることを検出し、地震予知連絡会等において報告した(第1図、第2図)。この結果は、沿岸の陸上GPS連続観測点の移動速度と同水準であるとともに、太平洋プレートのユーラシアプレート安定域に対する速度(9.2cm/年;NUVEL‐1Aモデル)と比べて有意に小さいことから、この辺りではプレート境界の固着がそれほど強くないと考えられる。また、この結果は、同海底基準点の北東約130kmに位置する宮城沖1海底基準点の移動速度(西北西に7.3cm/年)とは有意に異なっており、場所による固着の度合いの違いを観測により初めて捉えた。
この他、20年度は、「宮城沖1」、「宮城沖2」、「相模湾」、「東海沖1」及び「東海沖2」の各海底基準点における最近の結果について、地震予知連絡会等で報告した。
Matsumoto, Y., T. Ishikawa, M. Fujita, M. Sato, H. Saito, M. Mochizuki,
T. Yabuki, and A. Asada (2008): Weak interpolate coupling beneath the subduction
zone off Fukushima, NE Japan, inferred from GPS/acoustic seafloor geodetic observation,
Earth Planets Space, 60, e9‐e12.
海底地殻変動観測結果(地震予知連絡会会報第81号)
宮城県沖地震や、東南海・南海地震等の海溝型地震の発生が想定される海域において、海底基準点を2点新設し(16年度)、既設の海底基準点と併せて継続的に海底地殻変動観測を実施した。また、宮城沖1海底基準点における集中観測や、度重なる観測及び解析手法の改良により、観測精度の向上に努めた。
これまでに実施した繰り返し観測から、「宮城沖1」、「福島沖」、「相模湾」、「東海沖1」の各海底基準点における定常的なプレート運動を検出した(第3図)。また、宮城沖2海底基準点では、2005年8月16日の宮城県沖の地震(M7.2)に伴い、東向きに約10cmの地殻変動を検出した(第4図)。
観測結果については、随時、地震予知連絡会等で報告した。
海洋調査課航法測地室
他機関との共同研究の有無:有
機関名: 東京大学生産技術研究所 浅田昭教授ほか1名
機関名: 東北大学大学院理学研究科 藤本博己教授ほか3名
部署等名:海上保安庁海洋情報部海洋調査課航法測地室
電話:03‐3541‐4232
e‐mail:下記URLの問い合わせフォームから問い合わせ下さい。
URL:http://www1.kaiho.mlit.go.jp
(付図)
第1図 「福島沖」海底基準点のユーラシアプレート安定域に対する速度ベクトル
(赤、黒の矢印は、それぞれ当庁海底基準点及び当庁GPS連測観測点の速度ベクトルを表す。)
第2図 「福島沖」海底基準点の位置変化((a)下里固定,(b)ユーラシアプレート安定域固定)
第3図 ユーラシアプレート安定域に対する動き
(赤い矢印は海底基準点の動き、黒い矢印は国土地理院の電子基準点の動きを示す)
第4図 2005年8月16日の宮城県沖の地震(M7.2)に伴う地殻変動
(赤い矢印は観測値、黒い矢印は国土地理院断層モデルによる計算値を示す)
研究開発局地震・防災研究課