平成20年度年次報告
課題番号:7002
気象庁地磁気観測所
伊豆半島東部における地磁気全磁力観測
1.(2)ウ.地震発生前の物理・化学過程
2.(2)エ.その他特定の地域
伊東市御石ケ沢付近における地磁気全磁力観測(連続及び繰り返し)を実施し、地磁気異常減少と地殻活動等との関連を解明する。また自然電位の観測領域を拡大し、空間的な電位分布を調査する。平成20年度は地磁気全磁力観測を実施する。
伊東市御石ケ沢において地磁気全磁力連続観測(1点)、繰り返し観測(4点)を実施するとともに、伊豆半島東部の地震活動、地殻変動等のデータ収集および自然電位の解析を行う。
1999年から始めた地磁気全磁力の連続観測を継続した。また9月に地磁気全磁力繰り返し観測と、昨年実施した自然電位観測域の詳細な電位分布を調べるために、観測可能な地域での自然電位観測を実施した。第1図に地磁気全磁力観測点の位置を示す。
第1図 地磁気全磁力観測点位置図 (◎は連続観測点、●は繰り返し観測点)
第2図に柿岡地磁気観測所を基準とした連続観測点の夜間(01h00m~03h59m)の平均値を旬平均したものを、1999年3月~2009年1月まで示す。第3図に、柿岡地磁気観測所を基準とした各繰り返し観測点の観測結果を示す。値は繰り返し観測を実施した日の夜間(01h00m~03h59m)の平均である。また連続観測点の結果も合わせて示してある。
第2図 地磁気全磁力連続観測の結果
(OIS‐KAKが柿岡地磁気観測所を基準とした連続観測の結果でスケールは左側、KAKは柿岡地磁気観測所の地磁気全磁力値でスケールは右側。←→の期間の変動は観測点の近くに鉄材が置かれた影響である。)
第3図 地磁気全磁力繰り返し観測の結果
2008年の地磁気全磁力連続観測結果は、これまでの減少傾向から増加へと変化している。繰り返し観測の結果では、御石ケ沢の北側に配置したN(new)、N参照点でこれまでの減少からやや増加へと傾向が変化したが、南側のS点では減少傾向が継続している。この期間の同地域における地震活動は低迷であり、この傾向の変化と地震活動との関係はわからない。
第4図に2006年、2007年および2008年に実施した自然電位の観測結果から作成した自然電位分布を示す。電位の基準点は御石ケ沢入り口とした。電位分布は、御石ケ沢付近およびその南側で高く、北側で低くなっている。電位分布と、地磁気全磁力繰り返し観測で得られた御石ケ沢を挟む北側における地磁気全磁力のやや増加傾向への変化、および南側で減少傾向の継続との関係については今後解析を進める。
第4図 御石ヶ沢付近の自然電位分布図 (作図にはQuick Graphを使用した)
(「この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の『2万5千分の1地形図(網代)』を複製したものである。(承認番号 平20業複、第647号)」)
なし
地磁気異常減少の見られる伊東市御石ヶ沢付近において地磁気全磁力観測(連続及び繰り返し)、および自然電位の観測を実施した。その結果減少傾向が継続していた地磁気全磁力は、2008年から増加となる変化が観測された。しかし、2006年1月から5月の同地域における地震回数の増加に関連する地磁気全磁力変化は見られなかった。
2006年、2007年、2008年の自然電位からこの地域の自然電位分布を明らかにすることができた。電位分布は、御石ケ沢付近を境界に北側と南側で電位が違い、2008年の地磁気全磁力繰り返し観測結果に見られる御石ケ沢の北側で増加傾向、南側で減少傾向の継続と何らかの関係があるかもしれない。今後は、地磁気全磁力、自然電位および地震活動等との関係を解明する。
気象庁地磁気観測所
他機関との共同研究の有無:なし
部署等名:気象庁地磁気観測所調査課
電話:0299‐43‐6909
e‐mail:kakioka@met.kishou.go.jp
URL:http://www.kakioka‐jma.go.jp/
研究開発局地震・防災研究課