(0) |
課題番号:1806 |
(1) |
実施機関名:京都大学防災研究所 |
(2) |
研究課題名:断層面上の不均一な応力・強度分布の解明 |
(3) |
最も関連の深い建議の項目:
1.(3)ア.断層面上の不均質性 |
(4) |
その他関連する建議の項目:
1.(1)イ. |
列島規模のプレート内の構造と変形 |
1.(2)イ. |
内陸地震発生域の不均質構造と歪・応力集中機構 |
|
(5) |
平成15年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:
・ |
2000年鳥取県西部地震
2000年鳥取県西部地震( 6.6)では本震前の地震活動と本震の破壊過程の不均質性について重要な情報が得られた。地震後に設置された59カ所の臨時観測点からは多数の余震の記録を得ることができた。本震の前後の地震の震源は3-D速度モデルを使って高い精度で決定された。本震の前の地震活動は本震の震源近くと本震による大きなすべり(アスペリティ)の縁に集中している。一方、余震ははっきりと北西方向の断層に沿って起きており、発震機構は主として本震と同様の横ずれを示している。しかし、P軸の方位分布には地域性がある。また、震源断層近傍の不均質構造と本震時のすべり分布を比較した結果、大きなすべりを持つ領域は高速度異常域を避けるように伝播したことがわかった。本震に近い場所の高精度記録を解析すると、本震は比較的小さな活動( 5.5)から始まり、約2.5秒後に南東に5キロの地点で大きなすべりが起きてほとんどのモーメントが解放されたことがわかった。 |
・ |
活断層の地震活動の評価
山崎断層、および近畿地方の人口集中地域に被害をもたらす可能性のあるいくつかの場所で色々な観測を行なった。とくに断層の不均質性を解明するために微小地震と歪の観測に重点をおいた。
山崎断層では新しく井戸の水位と水温の観測が行われ、大沢に新しい伸縮計が設置されたほか、微小地震のhydrophone記録がとられるようになった。これらは、これまで行われてきた地震活動の記録と安冨の歪み計に新たに加えられたものである。大沢では2002年6月にわたって小さな歪みの変化が観測され、これは山崎断層の一部地域で数ミリのすべりが起きているものと解釈された。歪計のある安冨と小沢では、遠い地震による歪みステップの分析から、山崎断層の物質的構造に由来すると思われる不均質性が示された。毎年行われるGPS観測によれば、山崎断層では年に数ミリの動き(おそらく左横ずれ)が見られる。高い精度での微小地震の震源決定とb値の研究は将来の大地震の際にどこで大きなすべりが起きるかを探るために行われている。また、重力と密度の観測は歴史的な断層運動を考慮しつつその構造を探ることに貢献している。
花折断層(京都市東端)では年2回GPS観測が行われ、毎年1〜3 程度の不均質な動き(おそらく回転)が見られた。また井戸の水位と水圧の観測は近畿地方の5カ所において、産業総合研究所と協力して行われている。 |
・ |
強震動シミュレーション
山崎断層と琵琶湖西岸断層の地震シナリオのために、波形とその結果としての震度が計算された。シミュレーションによると 7.1の地震の場合、山崎断層付近では震度6、山崎町では震度5となっている。琵琶湖西岸断層では 6.5の場合、琵琶湖西岸に沿って震度6強、大津地区で震度5となる。また、和歌山県で行われた小さいアレイ観測はサイト・リスポンスの研究に使われ、Qと散乱によるサイト・レスポンスが決定された。これは地震の際の揺れのレベルに影響を与える重要な要素である。 |
|
(6) |
本課題の平成16年度からの5ヶ年の到達目標と、それに対する平成16年度実施計画の位置付け:
本課題の平成16年からの5ヶ年の到達目標は以下のとおりである。
1) |
断層面上の不均一な応力・強度分布と関係する断層構造を解明することにより、強震のシミュレーションのために必要な入力情報を得る。特に、大地震発生前にアスペリティの位置や大きさを推定することを試みる。 |
2) |
微小地震の詳細な時間的空間的パターンと地殻構造および地殻変動の分布を分析する。 |
3) |
将来の大地震の破壊パターンの予知へ繋げる。 |
そのために、具体的には以下の研究を行う。
地震活動(b値、clustering)とアスペリティ分布の関係を研究する。2000年鳥取県西部地震については、アスペリティと群発地震活動の関係が見られたため、合同余震観測等で得られたデータの解析を行う。山崎断層においては、高サンプリングの地震観測を行い、極微小地震活動を検知して、より精細な地震活動の把握を試みる。
山崎断層およびその周辺において地殻変動連続観測および地下水観測を行い、歪ステップなど、周辺の地震によるコサイスミックな変動を解析して、断層の変形特性とその不均質性の解明を試みる。地下水観測を行う既存ボアホールにおいては、ハイドロホンによる観測も行い極微小地震活動を捉える。
重力データの解析により密度構造を解明して、断層とその周辺の不均質な地殻構造を把握する。
平成16年度計画は、「直下型地震の地震環境評価」の中で行った山崎断層の地殻変動、地下水、地震活動の観測を継続し、アスペリティの検知へ向けて、観測データを収集することであり、山崎断層の観測、データ解析は5ヶ年計画の柱のひとつである。 |
(7) |
平成16年度実施計画の概要:
平成16年度
- |
2000年鳥取県西部地震を対象に、地震活動(b値、clustering)とアスペリティ分布の関係を研究する。 |
- |
山崎断層とその周辺の重力データを解析する。 |
- |
山崎断層とその周辺において、微小地震を観測するため、ハイドロホンと高サンプル記録計を配置する。 |
|
(8) |
実施機関の参加者氏名または部署等名:Mori James Jiro、澁谷拓郎、竹内文朗、柳谷俊
他機関との共同研究の有無:無 |
(9) |
問い合わせ先:
部署等名:防災研究所附属地震予知研究センター
電話:0774-38-4200
e-mail:
URL:http://www.rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp/ |