科学技術・学術審議会測地学分科会測地学分科会（第16回）/地震部会（第20回）/火山部会（第23回）合同会議配付資料［資料5－2］地震及び火山噴火予知研究計画の次期計画検討にかかるアンケート調査（様式3）

《研究成果の社会への還元（国民や防災担当者への理解増進を含む）》

（実施状況等レビュー結果及び外部評価結果を踏まえ、今後の考え方や取組み等についてご意見をお願いします。特に、外部評価で指摘された下記の項目について、どのように反映していくべきかなどについてご意見をお願いします。）

　地域防災情報支援室の積極的運用によりアウトリーチ活動の推進を図る。地元マスコミ等との連携による広報活動の強化により日頃からの防災意識の向上を試みる。一般人や行政関係者も参加可能な地震・火山に特化した大学院集中講義を開講することにより研究成果を踏まえた教育活動を展開する。
　国民に対するマスコミの影響力は極めて大きいので、それをうまく利用することが必要である。協議会の中に広報的な部門を作って、マスコミに頻繁に情報提供を行うことが考えられる。その際、東京以外の研究者も取り上げてもらえるようにすると、地元からの関心も高まって全国的な理解増進に寄与すると考えられる。これはまた、大学院生の確保にもプラスに働くであろう。
　秋田大学が実施する予定の地震予知に関する研究観測は秋田県や岩手県という限定された地域で行うが、数十点もしくは百点近くに及ぶ数多くの観測点を広範囲にわたって展開する。それぞれの観測点で観測を行うということは、観測機材を2週間もしくはそれ以上の期間にわたって個人もしくは大学以外の機関の土地を借り受けることになる。土地交渉の段階で研究観測の意義や目的を丁寧に説明する努力を行っている。規模は小さいが、観測に対する理解は得られていると実感できる。地域に暮らす人達に機会を見つけて地震予知研究の現実・成果を公開講演会やセミナーで説明しているが、この努力は今後とも必要であり、研究成果の社会への還元につながると考えられる。
　地震予知連絡会、地震調査委員会など全国を対象とした検討・評価の組織がある反面、地方の自治体、地方の防災組織との連携が希薄な感じがする。地方ごとの検討会、評価組織を設置し、その地方の行政組織，防災担当者を含めた定期的な会合を持つことにより、担当者の現状認識の質を高め、あわせて住民への情報発信の場とすることができる。これまで各大学の自主的活動にまかされていたが、もっと組織的に取り組む必要があるかもしれない。
　大地震が発生した時に（いわゆる）地震学者がマスコミに登場して解説する姿はそれほど珍しいものではなくなっている。しかし、その解説内容は必ずしも正しいとは限らないものが含まれているように思う。地震を研究していると自負する者は、常日頃から、国民に向けて「今日の地震学で何がわかって、何がわからないのか」を極力正確に情報発信することが求められていると思う。小・中・高校生、一般市民への啓蒙活動を各人が勝手に行うことでも良いが、組織的な活動を目指すべきと考える。予知連や地震調査委員会で「評価」が出るが、それをもっと噛み砕いて理解しやすくするところまで組織的なケアが必要に思う。たとえばアウトリーチ・広報専門のスタッフを、個々の大学ではなくて予知連のような全国組織に配置することはできないだろうか。
　また、地方の防災担当者の理解度の増進を期待しても、かなりの素養のある人でなければ、その成果は期待できない。むしろ、大学で専門教育を受けた人材を地方自治体に送り出すべきであり、そのような仕組みを作り上げるような努力が求められる。アウトプットが確保できるようになれば、若手人材の確保にもフィードバック効果が期待できる。
　火山噴火予知研究の成果は、これまでにも、火山噴火予知連絡会や関係自治体の対策会議などを通して、防災対策の策定に役立っている。一方で、火山が観光地になっている地域の中には、行政担当者に火山観測研究の意義すら理解してもらえないところも存在する。これらの地域においては、時間をかけて相互の信頼関係を構築するところから始める必要がある。
　社会とは具体的に何を意味するのかブレークダウンし、それぞれの対象に対して、何をどのように伝えるのかを明確にしたアウトリーチの戦略を立てるべきである。たとえば、アウトリーチの対象として、一般的な国民というものはなかなか想定しにくく、むしろマスメディアを通して伝えるべき対象と割り切った方がすっきりする。やや乱暴だが、防災担当者、マスメディア・一般国民、こども・学生、地域住民のような区分けが基本になるのではないだろうか。
　予知研究という基本的にはサイエンスの成果を、防災・減災対策という工学的・社会的な分野に適用するためには、単に研究の結果得られた情報をわかりやすく伝える以外にも、何らかの応用研究が必要なのではないか？（それを予知研究の中でできるのかはわからないが）。
　最新の科学技術コミュニケーション手法を活用して予知研究の研究成果を社会に還元するための人材を養成すべきである。主体としては地震学会等が対応できるのではないか。
　地震研究所アウトリーチ推進室の組織的な強化が必要である。
　火山ガスの専門家として、火山噴火のポテンシャルや噴火後の推移について、ひきつづき、地方自治体および気象庁と綿密な連携をはかり、火山噴火による災害を軽減するよう努める。
　地震予知研究に関しては、地震防災施策を通じた研究成果の社会への還元がなされている。役に立つという視点ではかなり十分なレベルに達しているが、必ずしも地震予知研究の成果が理解できているわけではない。研究成果の理解のためには、わかりやすい著作の出版が効果的である。
　噴火予知は、住民の避難という防災行動に直結する情報が気象庁（噴火予知連）を通じて発信されている。
　このような情報も、地方自治体レベルでは，政府等から発信される研究成果の情報を処理し切れない面が多いと思われる．そこで，地方自治体毎に各大学・研究機関とのパートナーシップを確立させ，研究者が行政側からの相談に対応することが必要．地震学研究者が実質的に存在しない地域もあるので，戦略的にこうした枠組みを構築すべきである。
　また、国民の理解を促進のためには、まずマスコミの担当者が十分に理解する必要がある。そのためには常日頃からの交流が必要であり、研究者とマスコミ担当者による勉強会が相互理解のためには効果的である。
　火山としてはすでに十分行っていると考える。
　地震では、まだ十分とは言えず、最新の研究成果を社会に還元するために、一般向けの解説書の出版、各種講演会やマスメディアでの解説等を積極的に行うことが重要である。講演会以外の形式の、普及行事も模索すべきである。例えば、毎年秋の地質学会では、一般子供向けの普及行事を産総研が協賛行事として開催する形で、開催されている。地質学という学問のイメージを普及するのにはこのような形式の行事が有効であると思われる。地震学会、火山学会でも開催できないか、検討すべきである。
　初等教育を担当する教員への普及広報活動も重要である。小中学校の教員養成課程で地震火山の最先端の研究成果を学ぶ機会は少なく、その知識は限られている。教員免許制度の改革が議論されているが、防災教育の観点から、地震火山に関する知識を学ぶ機会を、研究者サイドから積極的に模索すべきである。項目1とも関連するが、高校の進路指導担当教員に対しても、地震火山研究の最先端を広報することは大事である。いずれにおいても、本計画内で十分な予算措置を行うことが望ましい。
　鳥取県西部地震が発生以来、また、国立大学法人発足を経て、地方の鳥取大学の現場では、教育・研究だけでなく、地域に根ざした大学として関連する様々な仕事が課されている。
　特に、山陰地方においてはマグニチュード7クラスの内陸地震発生域に関連する深部構造のモデルが得られつつあり、この知見は防災の観点から利用価値が高いと考えている。
　また、上の1、でも述べたが、国民・住民レベルでのサービスとして、地方に根ざした地震研究の担い手の存在の重要性を感ずる。その例の一つとして、2000年鳥取県西部地震前後における鳥取大学の社会への還元となる取り組み事例などをあげることができる。それは、（ア）防災訓練の実施、（イ）地震活動などの特徴の把握、（ウ）鳥取県の災害対策本部の役割、などの3つの項目に関する知識提供に要約できるが、先端的な研究が行われたからといって、この役割を担う者がいなければ、必ずしも、その研究成果がその情報を必要とする住民に正確に伝わるわけではないと考える。従って、例えば、各都道府県や各地域、各断層（各火山）などに対しての説明ができる地震ドクター（火山ドクター）などのような人材を養成するとともに、このような人材を通して、定期的に地域社会へ成果の還元を行うことが重要ではないかと考える。
　いつも思うことですが、地震予知を目的にしている組織において社会への還元というと、地震が予知できるようにならなければ始まらないのではないかと考えてしまいます。このような状況の中では無理に地震予知の成果を還元しようとせず、国民や防災担当者との間で、一般的な地震や防災の啓蒙などのつきあいを行って信頼関係を作っておくことが、いざ地震予知可能になったときに、それを災害軽減まで結びつけるのに役に立つのではないでしょうか？予知研究の成果の還元だけに限ってしまうと硬直化するのではないかという気がします。
　研究成果の社会への還元や防災対応の必要性は認めるが、既にそれぞれの機関でかなりの時間と労力を割いて対応しており、講演会や国・自治体の防災計画策定および各種委員会員など、一部の研究者には相当な負担になっている。東大地震研究所にはアウトリーチのポストがあるが、それぞれの大学・センター等でも同様なポストを措置できることが望ましい。しかし、現実には地方大学の施設でポストの確保は難しいので、予知連絡会などの中にアウトリーチ担当グループを設け、予知計画のコミュニティとして組織的に取り組むことはできないだろうか？たとえば、定年退職した研究者を再雇用してこのポストに充て、国民や自治体の防災担当者を対象とした広報・啓発活動を全国巡回して実施することも一つの方策であると思われる。
　また、研究成果の広報に関しては、わが国や地域のオピニオンリーダーに対して積極的にレクチャーを行い、予知計画に対して彼らの理解と支援を得るように努力することも重要であると考える。
　自治体の要請による各種委員会の委員の承諾のほか、一般向けの啓蒙活動、出前講義、オープンキャンパス等を活用した高校生への啓蒙を継続的に行なう。
　地震災害や火山噴火災害を経験した地域での、一般聴衆向けの成果報告会の実施。
　プレスレリース・定期的講演会をこれまで通り積極的に活用してゆく。
- リアルタイムモニタリングによる緊急地震・津波情報に資する情報提供
- 地震予測モデルの高度化による高信頼度の切迫度評価の実現
- 地震津波研究の成果・進展への理解促進のための講演、セミナー等の実施
　各自治体や国の防災担当者と研究者の間で情報交換を行なえるよう、シンポジウム開催、地方開催の地質情報展等の場で知識の分かり易い普及に努める。
　国民への積極的な情報発信
　地震予知に対する悲観論が一時期流布されたため、最新の研究成果についての正しい理解のないまま、否定的な見解が流されることがある一方、根拠の薄い「予知」情報がウェブ上などで流布することもある。最近は、これらの状況を改善するために学会などが積極的にインターネットや普及・啓発書などにより情報発信に努めるようになっていることは評価できる傾向であり、これらの動きを公的な立場からも支援・推進していく必要がある。情報発信については、研究者のボランタリーな努力だけによるものではなく、地震・火山噴火予知のための観測・研究・調査を進める一環として体制を整備する中で、政策的に取り組むべき重要課題として位置づけるべきである。
　「災害認知社会」の構築
　地震や火山噴火に伴う災害を防止するため、予知研究の推進が重要であることはもちろんであるが、国民が地震や火山噴火の発生を自らのこととして認識し、国民と行政が連携・協力して災害に強い社会を構築することが必要である。そのためには、地震や火山に関する研究成果を活かし、国民が具体的な地震像・火山噴火像を描き、それを日々の生活と結びつけることのできる情報を国民に提供していくことが必要である。リアリティのある詳細なハザード情報の提供、啓発を促進し、「災害認知社会」を構築することを重要課題として位置づけるべきである。
　大地震発生等の緊急時においての迅速な各種情報と報道発表、さらには、平常時におけるホームページへの掲載や講演会等への講師の派遣を、引き続き行っていくとともに、よりわかりやすい内容とするように心がけていく。
　海上保安庁では，海域利用・開発、環境保全、防災利用等を目的として，これまでに海底地形，沿岸域活断層や海域火山調査を実施してきた。これらの調査は、手法等の制約から陸域調査と異なり調査にかなりの困難を伴うため、陸域に比べ海域のデータの蓄積は極めて少ないことから、予知研究に大いに貢献してきた。
　今後とも国民の安全を確保するために海域の基礎情報を整備していくとともに，海域調査の成果は情報図の作成、インターネット、航行警報で情報を提供し、地震調査委員会、地震予知連絡会や火山噴火予知連絡会への報告等によって社会への更なる還元に努めたい。
　骨子の大項目として取り上げ、単に一般国民や防災担当者だけではなく、予知計画に直接かかわらない地球科学、他の分野の研究、学校教育へも直接あるいは間接的に（たとえば、推本や国土交通省を通して）還元されることも明確にしたほうが良いと思う。具体的には、1）地震情報や火山情報の向上、2）地震や火山に関する各種資料、地図、出版物等、3）その他啓蒙活動等。
　成果の社会への還元を効果的ならしめるために、地震調査研究推進本部との一層の連携が必要だと考える。
　ホームページでさまざまな成果やデータが公開されているのは大変よいので、ますます積極的に推進してほしい。
　研究成果の社会への還元や防災対応の必要性は認めるが、既にそれぞれの機関でかなりの時間と労力を割いて対応しており、講演会や国・自治体の防災計画策定および各種委員会員など、一部の研究者には相当な負担になっている。東大地震研究所にはアウトリーチのポストがあるが、それぞれの大学・センター等でも同様なポストを措置できることが望ましい。しかし、現実には地方大学の施設でポストの確保は難しいので、予知連絡会などの中にアウトリーチ担当グループを設け、予知計画のコミュニティとして組織的に取り組むことはできないだろうか？たとえば、定年退職した研究者を再雇用してこのポストに充て、国民や自治体の防災担当者を対象とした広報・啓発活動を全国巡回して実施することも一つの方策であると思われる。
　また、研究成果の広報に関しては、わが国や地域のオピニオンリーダーに対して積極的にレクチャーを行い、予知計画に対して彼らの理解と支援を得るように努力することも重要であると考える。
　国民や防災担当者へ正確な情報を提供し、震災・火山災害に備える上で一般聴衆向けのeducation outreach（EO）は必要だが、地震が発生するたびに、学会で重要な位置にある研究者が常識的な解説のためにマスコミに頻繁に登場するのは、良くない傾向と思う。本来研究に使うべき時間を犠牲にしているのであって、”プレートの沈み込みによってひずみがたまり、そのリバウンドによって地震が起こりました”程度の解説は、ビデオにとっておいて必要なときに放映するか、アナウンサーに原稿を読ませればよいと思う。
　地震保険の正当な料率算定や、重要構造物の設計時に考慮すべき地震の規模や種類を提案する、国交省の津波対策への地震時隆起沈降まで考慮した提言など低頻度だが甚大な被害も生じうる地震や噴火災害には、理学が貢献できる部分が多数ある。地方自治体の被害想定などでは時々びっくりするような設定があるので、そういう面でも人材を活用して貰うべきことはまだまだある。
　特に噴火は地震と違って大体の場所が限定できるし、いきなり極大噴火にはいたらないし、噴火が開始した後でも、活動の終了を予測するなど、活躍できる場面が多いと思う。
　それ以外に、科学としての地震学で日本が本当の意味でトップランナーであることは、世界から尊敬されるという、日本にとって重要な価値があるので、社会の強い要請を受けて行う研究と、すぐには役に立ちそうもないが若者もひきつけられる理学的研究と、上手に学問を進展させていくバランス感覚が重要である。
　地震災害や火山噴火災害を経験した地域を中心に、一般聴衆を対象とした成果報告会を実施する。また、地震工学分野にとどまらず、社会科学分野とも連携を強化していくことが重要であろう。
　NPOとの協力。各県や地域の自然系博物館との協力。マスコミ関係者との高頻度・定常的の情報交換の場の設置。火山の噴火の仕組みと防災対応を要約した小中学生向け小教科書の作成および火山近傍の小中学校における火山防災教育の推奨・支援。
　兵庫県南部地震以降様々な努力が行われており、以前に比べ状況はずいぶん改善され、成果が上がっていると思われるが、成果は飽和点に近づいており、マンネリ化の恐れもある。さらに進めるためには、斬新なアイデアが求められる。
　地震・火山に関係しているそれぞれの機関では、講演会開催やホームページ、冊子（リーフレット）の配付など、成果の社会還元は積極的に行っている。しかしながら、それらの還元手段では、成果の還元が防災担当者とその周辺にとどまっているケースが多く、国民全体に浸透しているとは言い難い。国民全体に浸透させるような「情報の効果的伝達方法」は研究者や地震・火山の専門家だけでなく、メデイア関係者の協力も得て開発する必要がある。そのために必要な経費は、配当された予算の一部（たとえば10パーセント程度）を充てることを考える。気象情報のように毎日、地震活動や火山の状態、地殻の状態を説明付で報道するのも一つの手段である。各機関が行っている「成果の社会還元」情報や講演会開催などの情報をまとめて報道することも必要。
　科学技術コミュニケーション手法を活用して予知研究の研究成果を社会に還元するための人材を養成すべきである。アウトリーチを推進する部署の組織的な強化が必要であり、東大など総合大学では、一定期間の社会情報学の専門家との人材交流も有効と考える。
　学会や共同利用研究所のアウトリーチ担当を通じて、中高生や一般へのアウトリーチ活動をますます推進していかねばならない。
　リアルタイムモニタリングによる緊急地震・津波情報に資する情報提供。地震予測モデルの高度化による高信頼度の切迫度評価の実現。地震津波研究の成果・進展への理解促進のための講演、セミナー等の実施。
　研究者と国民や防災担当者との間の通訳になれる専門家／解説者を，特別に養成する。
　正規に授業でも課外授業でもよいですが、大学の研究者が小中学校へ出前授業を行うことが出来ると、単に初等中等教育における防災教育へ寄与するばかりでなく、長い目で見れば研究後継者の確保にも寄与するのではと思います。
　防災に役立つ知識を伝えていくとともに、もっと根源的な、「何故どのように地震・火山噴火が発生するのか」を丁寧に説明していく必要がある。大地震が起きた直後には、専門家向きの解説だけではなく、一般の人にわかりやすい解説が必要である。予知連か推進本部にアウトリーチ専門の職員を配置することも重要のように思う。
　防災担当者や行政の政策担当者を対象とした教育を立ち上げることは必要であるし、教育が実施された場合にはその効果も期待できる。しかし、こうした教育を実施していく場合、魅力ある大学教育などのプログラムは3年程度の年限が設けられており、立ち上げたとたんに補助が終了してしまうのが現実である。10年程度の長さで教育を継続できる支援プログラムの設立を希望する。
　研究成果の社会への還元は非常に重要である。地震災害や火山災害に慣れ親しんでいる地域は少なく、頭の中では何となく判っているものの具体的な事象については知らない住民が多い。火山噴火の場合は、火山周辺に住む人々はそうでない人々よりは比較的噴火という言葉には慣れているが、火山噴火は多くても20～30年に一度であるので、実際の噴火に直面したことがある人は少ない。予知計画を広く知ってもらい、必要性を理解してもらうためにも、研究成果のみならず、一般的な防災の観点からの啓蒙の努力は惜しんではならないと思う。
　火山学・火山防災に関するサイエンスインタプリターの養成、NPOなどの活用などを図るべき。既に研究者の不足が議論されているときに全てを研究者に任せるのは効率的でない。ポスドクを活用するのも一つ。
　自治体と大学研究者等でNPOを立ち上げ、住民および防災担当者への火山防災に関する啓発活動をおこなう。
　もし日本海東縁の地震発生メカニズムの解明や予知研究を行うなら、5年間で何を明らかにしようとしているかだけでなく、単年度ごとに何にお金を使うかをその年度ごとに広報し、その結果報告（観測器機の設置のレベルから）をするなど、わかりやすい報告をTV、科学新聞や新聞の科学欄などで行うべきと思います。学会報告やシンポジウムの開催だけでは、閉じた参加者で終わってしまいます。
　現在は、予知計画レビューに際して、主として研究者を対象としたシンポジウムを開催しているだけであるが、一般を対象とした研究成果のアピールも必要であろう。
　予知計画に関わる研究者には、国民や防災担当者、さらに広く地球科学や他分野の研究者にも研究成果と予知の現状を示す社会責任があるが、より効果的・効率的な社会還元は行政の問題と考える。火山のハザードマップは行政が研究成果の受け皿となって作成されてきたし、最新の研究成果を耐震基準に取り入れるか否かは行政判断である。研究計画の中で社会還元を取り上げるのならば、個々の研究者あるいは研究機関はもちろんのこと、研究成果を直接的に還元する組織（推進本部や気象庁）、また間接的に還元する行政組織の責務も示す必要があろう。
　プレスレリース・定期的講演会をこれまで通り積極的に活用してゆく。
　（防災担当者）　防災関係者の社会人入学による大学院教育によって、観測研究への理解者を増やす努力が必要。また、特に国の防災関係に携わる者は大学の文系卒業者が多いと考えられるので、彼らが大学に在学中に漏れなく災害教育を受けられるような環境づくりができることが望ましい。それが無理でも、防災についての知識取得者が少しでも増えるような機会を作ることが必要とされる。
　（国民）　観測網の維持が困難になっている現状ではホームドクター的な役割を地方のセンターがすることが困難になってきていると予想される。これを打開するためには防災機関とのデータ流通や意見交換が絶えず取れるような体制を確立することが必要である。また、インターネット時代ではホームドクター的に対応する組織が必ずしも地域にある必要がかならずしもなく、全国共同利用研究所などのアウトリーチ室が全国のセンターや観測所と連携して、地域住民や防災担当者と対応することも必要になってくると予想さえる。そのためには、地震、火山噴火でそれぞれに対応できるアウトリーチ専門員を複数確保することが必要である。このような社会的還元のための専任者を予知グループとしてどれだけ割けるかが、国民への説明責任の義務を果たすことになるだけでなく、研究者への研究への専念と研究自体の成果向上、地震火山噴火予知の高度化、国民への成果の還元につながると考えられる。
　各機関で役割は異なると思うが、大学に関しては、予知に関連する研究成果を科学雑誌に論文としてきちんと公表することが、第一の社会貢献であろう。
　また、地震現象や火山現象（洪水や大雨などについても）について、これまで明らかとなった現象や経験則などを国民が知っていると、警戒区域設定、避難指示などの行政対応への理解が得られると予想される。複雑で多様な地震・火山現象をきちんと理解してもらうために研究者個人が国民や防災担当者を啓発することも必要であるが、噴火予知事業で得た知識・経験を継続的に社会へ伝える体制をしっかりと整備することであると思う。例えば、義務教育や高校レベルでの教育現場で、地球の現象の理解を深めるための授業をきちんと実施していくことが挙げられよう。また、最新の研究成果や予知に向けた取り組みだけでなく、地震学や火山学の基礎を一般向け、あるいは防災担当者向けに解説した書籍などを随時発行していくことも、国民への防災に対する啓発となる。