資料3 次期研究計画に関する意見

次期研究計画案について

※計画案全般について御意見がありましたら記入願います。

御意見1

平成25年5月にコメントを求められました「次期計画の基本的方針(案)」並びに「次期観測研究計画骨子(案)」の内容がより具体的に示されており、計画の全体を十分に理解することが出来ました。
以下、幾つか意見を述べさせていただきますが、専門家でないため、また、これまでの経緯等につきまして不案内でありますことから、的外れな意見もあるかと存じます。御寛恕(かんじょ)の程、お願い申し上げます。

  1.  予算・研究者の数が限られている状況下で、観測計画の対象とする地域について、どのように選択と集中を行うのか、対象地域の明確化が必要であると思われる。
  2. 本研究計画では、喫緊の課題である南海トラフに関する記述が少なく、まとまって記述されていない。今回提示されている観測研究計画を、喫緊の対応が必要とされている南海トラフ地震に対して、具体的にどのように適用するのかを示すことは、非常に重要と思われる。一節を設け、適用した場合の、観測計画、研究計画等を示し、計画終了時に、可能性としてどのような成果が得られるのかを、より見える形で社会に示すことは、本計画を実用科学、災害科学と位置付ける最も良い方法ではないか。具体的な成果を示すことが、広く啓発活動に資するものと思われる。
  3. 145~146行:実用科学の内容を「最先端の地震・火山研究の科学的知見を基に,防災・減災に貢献すること」としているが、このような表現には違和感を覚える。地震動・津波等の即時予測等には最先端の研究結果を積極的に活用する必要があると思われるが、例えば、地震の長期評価・地殻活動予測、地震発生の短期予測等には、その結果の社会的な影響が大きいことから、得られた最先端の研究成果を十分に吟味・評価して、実用科学として耐えられる結果を使用して、防災・減災に貢献する必要があるのではないか。防災・減災の内容によっては、まず試してみるという方法は馴染まないと思われる。
  4.  295~301行:四つの柱の順序は必ずしも、重要性の順序を示しているとは思われないが、順序として、科学的理解が1番目、科学的な予測が2番目、災害の軽減に資するが3番目と思われる。事実、309行目以降では、解明、予測、災害、体制の順序になっている。
  5.  336行以下:本研究計画は観測研究計画であるにも関わらず、計画の概要を説明する部分で、史料、低頻度、解明、モデルの順序になっているのには、違和感を覚える。少なくとも解明が最初に来るのではないか。解明・低頻度・モデル化・史料の順序ではないか。
  6.  522行:「地学的環境」とあるが、その内容について、より具体的に示すことが必要ではないか。
  7.  884行:「創出」という用語の使用には違和感を覚える。「引き起こす」等の使用が適切と思われる。
  8.  951~967行:災害情報の高度化の項目において、その具体的な内容としてもう少し、地震に特化した計画の提示が必要と思われる。
  9.  普及啓発関連:
  • 501~505行
  • 1014~1022行
  • 1169~1177行
    上記の部分において、対象を防災担当者・地方自治体等に限定しているが、広報・普及・啓発の対象を、国を含めて行政担当者等とより広くすべきと考える。
    また、このような活動に関する連携を防災業務機関等に限定せず、研修機関(例えば人事院、あるいは各府省、地方自治体の研修部門等)とも連携する必要があると思われる。行政関係者への理解を進めるために、国並びに地方公共団体の実施する種々の研修計画に積極的に参画し、研修において、説明を行うことが、ひいては行政部門における理解を得る方法の一つになると思われる。例えば、1052行に述べられているALOS-2等については、その計画が必ずしも順調に推移しているとは思われないことから、広範囲の行政担当者に地震火山の研究計画並びに成果の現状を御理解いただくことが重要と考える。
    以上

御意見2

5か年の計画で目指す達成点が具体的に提示できていないことに問題があると思います。達成点は、計画全体においても、四つの項目各々においても、不鮮明(具体性がない)であり、何ができたら5か年計画が成功といえるのか、測ることができない状況です。また、目指す5か年計画の達成点が、長期的に見たゴールに向けて、どのレベルになるのかを提示する必要があると思います。現在の案は、読み方によっては、5か年で、必要とされる研究は全て完了できるかのように読めます。

「3.観測研究計画の長期的な方向」の「ロードマップ」とついた小項目に、理想像のようなものは記されていますが、それらをどのような時間スケールで、どのようなステップで実現していこうとするのか、ということは記されていません。もう少し掘り下げて、具体的に長期的な計画・展望を提示する必要があるのではないかと考えます。

「1.本計画の基本的考え」に書かれていることが、上記の「長期的な方向」の中でどのような位置付けなのかが分かりません。5か年で、192行~195行の予測1~4各々をどのレベルにしたいのか、222行~232行に書かれている現況をどのレベルまで上げようとしているのか、を記すなどして、「3.観測研究計画の長期的な方向」と関連させて5か年の計画を記すことが必要だと思います。「1.本計画の基本的考え」については、295行からの節と302行からの節の対応関係もよく分かりません。重複した内容を繰り返しているだけに見えます。もし両者が必要ならば、(1)~(4)の各々が、四つの柱のどれになるのかは明確にするべきです。

11行目の「十分には」は誠実さに欠くと感じました。削除した方が良いと思います。

以上、御検討いただけると幸いです。

なお、参考までに、以下に、誤植、意味不明と感じたところを挙げておきます。
27行目:噴火の→噴火による
46行目:あるとの考え→あると考え
162行目:成果を→成果に
412行目:ためは→ためには
486行目、1033行目:地下状態→地下の状態
494行目:分野関→分野間
501行目:かかる→関わる
555行目:マグマ噴火想定→マグマ噴火が想定
716行目:「摩擦構成を改良や~」 意味不明
860行目:前進→前震
946行目:「社会的分布」 意味不明
1150行目:学祭→学際
1151行目:「研究拠点と共同研究を実施する」 意味不明

御意見3

三. 計画の実施内容 において639から642行に置かれている
○ 海上保安庁は, DGPS局のデータを利用して地殻変動を検出する。また,和歌山県下里において人工衛星レーザー測距(SLR)観測を実施し,広域のプレート相対運動決定に資するデータを得る。また,プレート境界域等において海底変動地形等の調査を実施する。

のうち、「海上保安庁は, DGPS局のデータを利用して地殻変動を検出する。」と「また,プレート境界域等において海底変動地形等の調査を実施する。」を4.研究を推進するための体制の整備-(2) 研究基盤の開発・整備-ア.観測基盤の整備に移す。

(理由)これらの観測項目は空間的に広い範囲を対象としており、プレート境界地震・内陸地震等の研究対象で区分することができないことから、観測基盤の整備に含めるのが適当。

御意見4

  • 14~15行目
    「十分なデータから理解することができていなかった。」は、十分なデータがなかったから理解できなかったのか、それとも十分なデータがあったのに理解できなかったのかが分かりにくい。文章の前半から、本文の趣旨は前者と思われるので、「十分なデータが不足していたため」のような表現にするのが良い。
  • 22行目
    5点挙げられている問題点の5点目(防災・減災に役立てる計画になっていなかった)は、「見直し建議」の文章には現状認識として出てこない。したがって、この点に関しては「これらに対応するために、」観測研究計画の見直しを行ったという記述は不正確(悪い言い方をすれば、ごまかしとも取られる)。最後に「全ての問題点には対応できていない」とされている中に含めたつもりかもしれないが、(対応しようとして)「対応できていない」のではなく、そもそも見直し建議で取り扱う問題点として「扱わなかった」のではないか?限られた期間で可能な対応として、5点目以外について「見直し建議」で(対応としては不十分ながらも)取組を開始し、5点目(及び1~4点目の取り組みの不十分な部分)については次期建議への課題として検討を続けた、のような筋書きにするべきではないか?見直し建議の「(今後の課題)」に「外部評価も加えた計画全体の再構築」に向けて検討するとされていることが、その根拠となるはず。
  • 22~23行目
    一つ前の指摘と重複するが、「全ての問題点には対応できていない」と書くと、「全ての問題に対応する意図で計画の見直しを行ったが、期間が短いため対応できなかった」との誤解を与える(と同時に言い訳がましく聞こえる)。そもそも、「全てに対応できていないこと」ではなく、「全てに対応するための計画を立てられない(そのためにより徹底した検討が必要だった)」ことが問題で、それによって「見直し」の内容が「今すぐにやることが必須な内容」に限定された、というのがより正確な認識ではないか?
  • 68~69行目
    「また,噴火現象の理解が深まり,火山噴火予知のために重要な知見が蓄積された。」は抽象的。二つ後の項目に、まだ理解が進んでいない点が具体的に挙げられているのと対照的。どのような「理解」「知見」なのか、具体的な記述(例示でもよい)が欲しいところ。
  • 70行目
    「これまでの研究成果に基づき」とあるのは、前項の「理解」「知見」が活かされてのことか?もしそうなら、そのことが分かるように一言加えるのが良い。
  • 129~135行目
     本項目においては、
    (1)「予知」「予測」という言葉の捉え方
    (2)アクション(災害情報のあり方の見直し)
    という二つの内容が
    (3)求められている「予知」像
    を介して無理矢理結び付けられているが、(ペンローズの三角形のように)部分ごとの論理はつながっていても、全体として何を言いたいのかが分からない。(1)と(2)は論点が異なるので、別々の項目に分けて記述するべき。
  • 136~143行目
    外部評価での指摘のうち「世界的視野での観測研究」が、ここに挙げられたまとめでは読めない。新たな課題項目を加えるか、あるいは、低頻度大規模現象の課題項目に付随して記述するのが良いだろう。
  • 141行目
    「研究成果を防災・減災に生(活)かすため」とあり、本研究計画(の実施者)が、防災・減災に研究成果を活かす「主体」であることを前提とした書き方だが、それは違うのではないか?防災・減災に活かすことを見据えた研究計画を立て、成果を活かすための普及に従事するのは良いとして、それは「活かす主体」としてではなく、「活かす主体をサポートする主体」としての活動ではないか?本研究計画が扱う範囲の規定に関わるので、こういった点は明確に区別した方が良いと思われる。
  • 150~154行目、159~164行目
     前置きが長い。「現状認識」の方に記載し、ここではそれを引用するなどして短くまとまた方が良い(既に現状認識に記載されている部分もある)。
  • 158行目
    「十分な精度を持つ観測データに裏付けられた経験則も活用する」は、東北地方太平洋沖地震で、「プレート境界の巨大地震発生機構に関して限られたモデルに固執していた」という反省と矛盾していないか?アスペリティモデルも「十分な精度を持つ観測データに裏付けられた経験則」だったはず。また、火山噴火についても、三宅島などは、「十分な精度を持つ観測データに裏付けられた経験則」が成立しなかった事例。経験則の活用を書くのなら、「十分な精度を持つ観測データに裏付けられていたにも関わらず」うまくいかなかった経験則を踏まえた記述が必要。(あるいは「活用するけど固執しない」のようなことを記述するか。)
  • 166行目
     「組織的に防災・減災に活用することに努める」とあるが、重要なのは、努めるかどうかではなく、「活用」に向けて「どのような努め方をするのか」という方法論。「災害科学の一端を担っているという視点を持つ」というのがその方法だとすると、方法論というよりは精神論。精神論が必要ないとは言わないが、計画としてはその精神を踏まえたアクションの方向性を示す必要があるのではないか?
  • 295~301行目
    四つの柱の順序が、302~323行目の記述と異なっており読みにくい。順序を揃えた方が良い。
  • 1048行~1051行
    実際には東海地方に限定せず、南海トラフ巨大地震の想定震源域が対象となるので、次のように修正願います(他にも微修正しました)。
    「国土地理院は、GNSS連続観測(GEONET)による地殻変動連続観測を継続的に実施し、南海トラフ巨大地震の想定震源域において地殻変動連続観測、絶対重力観測、及び水準測量を行う。また、局所的な地殻変動を詳しく捉えるために水準測量、GNSS測量、重力測量、自動測距・測角装置等による観測を行う。」
  • 全般
    地震、火山ともに観測網の増強が(一般論的に)うたわれているが、「今までうまくいっていないのは、観測網が足りないせいだ」「増強したからうまくいく」というものでもないのではないか?特に増強の規模が大きな場合、何百億もの負担を強いる論拠にはならない。増強に関しては一般論的に書くのではなく、何のために必要な増強か、その目的をある程度明確化する必要があると思われる。例えば、「このような観測網が充実すればうまくいくかもしれないから、パイロット的に限定的な重点観測をして手法の是非を検討する」のような書きぶりが穏当ではないか。

御意見5

192-195の地震予測の並べ方と,223-226の火山噴火予測段階の並べ方が対をなしていないのがちょっと目立ちます。地震予測はタイムスケールのように見えてそうでなく,達成可能かどうかとタイムスケールが合わさったような順になっており,要求されているロードマップ的には書かれていないように見受けます。何をやれば何が分かって,次に何をやれば何が分かるというような達成度の順序建てで記述できないのでしょうか。あるいは予測項目毎に達成目標を掲げられないのでしょうか?

  1. 地震・火山噴火現象の理解のための研究
  2. 地震・火山噴火予測のための研究
  3. 災害誘因としての地震・火山噴火予測研究
    となっていますが,全ての地震・火山噴火現象は災害誘因(ハザード)であるので,三つ目のタイトルは不自然です。災害に直結する,あるいは防災を強く意識した役立つ研究でしょうから,タイトルを変えることができないでしょうか?中身は即時予測,災害事例,災害発生機構,災害情報なので,ハザードに関する基礎研究の防災への活用であるとすれば「防災のための。。。研究」「災害軽減のための。。。研究」などとする方が王道であると思われる。

4の研究を推進するための体制の整備において,体制を整備するとなっているがあまり具体的に記述されていません。学術的に基礎研究体制としては予知研究協議会が担うとなっていますが,(3)の関連研究分野との連携強化を図るのも予知研究協議会のことでしょうか?研究計画全体の傘になる体制が担うか,あるいは,それぞれの機関が努力するのか,どこが主体なのか,どうしたいかが具体的に記述されていないように思います。あるいは,この計画中にそのような体制を作り上げたいということのなのでしょうか。やや歯切れが悪いように思います。

細かいですが,498-499の所で地質学,歴史学が基礎専門分野ではなく,幅広い技術と並列とされています。地質学は地学の一部です。基礎専門分野という表現も変です。

御意見6

 全体的に非常によく整理されていて,分かりやすくなったと思います.関係者のご努力に敬意を表します.
 ただ,「災害誘因」の考え方がまだ整理されていないように思います.「地震・火山噴火」そのものが「誘因」ではなくて「地震動・津波・降灰・火砕流等」が「誘因」であり,「地震・火山噴火」は「誘因」を生じさせる「源」ないし「きっかけ」という位置づけだと思います.そのような,「誘因の源(きっかけ)」,「誘因」,「素因」について整理してやや詳しく解説した文章を「3.観測研究計画の長期的な方向」の「(基本的考え方)」の中に入れた方が良いと思います.この考え方は,これまでのやり方からの大きな方針転換ですので,字数を使うのは仕方がないし,むしろそうした方が良いと思います.
 それ以外の誤植修正等は本文に書き込みましたので御参照ください.

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)