1.地震・火山現象の解明のための研究

1.1 史料と地質データに基づく地震・火山大規模災害の解明

1.1.1 史料に基づく地震・火山現象の解明

 歴史記録の調査により,日本で発生した地震,火山噴火,津波の特性を調べ,信頼度とともにデータベース化する。大地震の再来などの低頻度大規模現象の性質を明らかにし,地震や火山噴火の長期評価に活用する。

1.1.2 地質・地形データに基づく地震・火山現象の解明

 大地震発生の長期評価に利用するため,地質・地形データに基づいた地震発生履歴を推定する。甚大な被害を引き起こすカルデラ形成噴火や大規模火山体崩壊について,地質学的調査や観測資料をもとに,その特徴や前駆的現象をまとめ,噴火事象系統樹の構築の基礎データとする。

 

1.2 地震・火山噴火発生場のモデル化

1.2.1 東北地方太平洋沖地震の地殻応答

 東北地方太平洋沖地震及びその余効変動により,上盤プレートの応力場は大きな擾乱を受け,変動は継続中である。このような大きな変動を観測することにより,地殻の変形特性や応力状態を解明し,これらが地震活動,火山噴火に及ぼす影響を評価する。

1.2.2 プレート境界地震

 地震の震源過程,プレート境界の非地震性滑り過程,プレート境界域の構造等の調査や岩石実験,数値シミュレーションにより,地震発生の複雑性に影響を与えるプレート境界の摩擦特性や応力の不均一性を解明する。

1.2.3 海洋プレート内部の地震

 海洋プレート内部の構造や応力場を明らかにし,津波被害をもたらすアウターライズ地震,強震動をうむスラブ内地震の発生機構を解明する。

1.2.4 内陸地震と火山噴火

 地殻内の非弾性変形,流体の存在,複数断層の相互作用等に着目し,各種観測データや岩石実験等を利用して,内陸断層への応力集中機構を調べ,内陸地震発生の物理モデル構築を進める。また,火山体及びその周辺構造と応力状態の調査を行い,火山噴火機構や噴火と地震の相互作用を解明する。

 

1.3 地震発生予測のためのモデル構築

1.3.1 構造共通モデルの構築

 これまでのプレート境界面形状,地震波速度等の構造推定結果を収集,評価し,多くの研究者が利用できる,現時点での標準的な構造モデルを構築する。

1.3.2 物理モデルの構築

 共通構造モデルと断層の摩擦構成則等を組み合わせることにより,プレート境界や断層の破壊・滑り過程の数値シミュレーションを行うための物理モデルを構築する。

 

1.4 火山現象の定量化とモデル化

1.4.1 マグマ噴火を主体とする火山

 大規模の災害を引き起こすマグマ噴火を主体とする火山において多項目の観測を実施するとともに,理論研究の成果や異なる火山の解析結果との比較から,マグマ噴火の時空間発展に重要な物理過程を解明し,噴火活動の分岐条件を明らかにする。主な対象は,有珠山,浅間山,伊豆大島,桜島など。

1.4.2 熱水系が卓越する火山

 火口付近での人的被害が懸念される水蒸気爆発の発生や,強い噴気や火山ガスの噴出発生を予測するため,火口近傍で多項目観測を実施し,これらの前兆現象の検知と定量化を試みる。対象は,口永良部島,阿蘇山,九重山,草津白根山,吾妻山,十勝岳など。

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研究開発局地震・防災研究課

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