長谷川 昭 臨時委員

次期計画の構成等について

 外部評価では
1)観測研究の体制,運営方法などの抜本的見直し
2)防災・減災に役立つ研究の実施
3)研究成果の社会への発信
が強く求められていると指摘された。
 そして,その総評の中で,改善すべき点として
あ)国民の命を守る実用科学としての地震・火山研究の推進
い)低頻度ながら大規模な地震および火山噴火に関する研究の充実
う)研究計画の中・長期的なロードマップの提示
え)世界的な視野での観測研究の一層の推進
お)火山の観測・監視体制の強化
か)研究の現状について社会への正確な説明
き)社会要請を踏まえた研究と社会への関わり方の改善
が掲げられ,評価結果を充分に踏まえて現行計画を抜本的に見直した上で,次期計画を推進し,着実に成果を生み出し社会に貢献することを強く期待する,とされた。
 測地学分科会における次期計画の方針は,外部評価で指摘された上記の改善点について,可能な限り取り入れて検討することとしている。
従って,次期計画の構成は,上記の方針を踏まえてつくるということになる。ただし,指摘された改善点の中には,「地震・火山噴火予知のための観測研究計画」の枠組みの中ではとても実現不可能なものまで含まれている。そのことを知りながら,あえて書かれたのかも知れないが,いずれにしても,そのようなものを取り入れることはできないので,それらを除くなど,整理したうえで,可能な限り取り入れつつ策定するという方針になろう。特に,上記指摘事項の,防災・減災に役立つ研究,研究成果の社会への発信は,これまでの計画にも含まれていたとは言え,その取り組みが弱かったが故に指摘されたのであり,構成の中で陽にみえるようにするとともに,実際にも,格段に強化して実施していくのが良いと思う。

 

地震・火山噴火予知研究協議会WGによるたたき台(案)について

 1)観測研究の体制,運営方法などの抜本的見直し,2)防災・減災に役立つ研究の実施,3)研究成果の社会への発信が強く求められている,との外部評価の指摘を踏まえて検討し,つくられた次期計画案であり,その「基本的な考え方」を支持する。
 とりわけ,2)についてはきちんと対応することを意識してつくられた計画案であると理解した。その意味で,「これまで活用されてこなかったデータやモデルを利用して長期予測を改善するための研究」,「強震動や津波の予測精度向上のための基礎的な研究」を行うとし,それらを構成の中に陽に示してあることは非常に良いと思う。
 また,「試験的に地震発生や火山噴火活動の予測を実践しながら予測手法の開発と改良を行う」ことも研究としては極めて重要であり,それを計画に含めることに賛同する。ただし,この項目は,特に「地震予測」について言えば,対社会との関わりという点で,非常に注意を要する。計画では,推移予測を目指して研究を進めるわけで,推移予測をするのではないと理解したが(そう理解したから賛同するわけであるが),これまでのことを振り返れば,あたかもすぐに推移予測ができるかのように社会に受け取られかねない。そうならないように,また同じ轍を踏まないように,注意には注意をして計画を進めていかないとならない。その点で,WGによる次期計画案の現在の構成案のままでは,強い不安を覚える。「1.」で「予測手法の開発」となっているから,「1.1」以下で「予測」となっていても,それは,「手法の開発」であると云うのかもしれないが,それは,これまでの経緯を考えれば,いささか慎重さに欠ける判断であると言えよう。例えば,「1.」と「2.」を入れ換える,「1.予測手法の開発」の中で,この項目の表現の仕方を変える等々,構成案については,地震学の実力を超えて期待をもたれないよう,それなりの工夫が必要と思う。社会の期待にできるだけ答えようとする考え方は理解するが,学問の実力を超えて役に立つことはできないことを念頭に置くべきである。
 「研究成果の社会への発信」については,これまでも個々の研究者や研究機関で努力してきてはいるが,それだけではやはり限界があることは,現在の状況から明らかである。WGのたたき台(案)では,ある程度の記述はあるものの,それらを,計画の中でどのように具体的に進めるかは述べられていない。まだまだ対応が弱いとの印象は否めない。本計画の中で組織的に取り組む必要があるし,それが外からわかるような計画の作り方をした方が良いと思う。構成の中に陽に掲げるとともに,それに対応して,例えば「アウトリーチ推進部会」のようなものを立ち上げ,具体的に推進できる「仕組み」を計画の中に組み込んでおくのも一案であろう。
 「人材の育成」については,この分野だけに限った問題ではないが,将来を考えると極めて深刻であると常々心配している。第一に,研究者や技術者のポストをきちんと確保することが重要である。この計画の中で(例えば建議に書けば)それが可能となるわけではないことは重々承知しているが,関係機関の間でそのことをきちんと共通認識しておくことは,その基本であり,そのことをまず理解する必要がある。次に,地震や火山噴火の予測というこの分野の研究が,科学として魅力的であり,かつ極めてチャレンジングな研究であることを,小中学生や高校生・大学生などを主対象として,もっと積極的にアピールする努力が必要である。予測はまだできないものの,近年研究は格段に進展し,地球内部で進行している現象を極めて詳細に把握し理解できるようになってきたのだから。優秀な人材がこの分野に数多く入ってくるように,外に向けた魅力的な研究成果の発信を,この計画の中で組織的に取り組む,さらに,そのためにそれを推進する仕組みを組み込むことはできないだろうか。例えば,上記の「アウトリーチ推進部会」の中で組織的に取り組むことを目指すなど。計画の進め方の中でも,そのことを意識した取り組みが必要であるのは,勿論である。

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研究開発局地震・防災研究課

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