独立行政法人海洋研究開発機構

次期計画の構成等について

 以下の意見を取り入れて,次期計画策定されることをお願いしたい。

 

別紙1から3で次期計画に必要とされている点について:

  1. 研究計画の中長期的展望の提示
    (a) 長期(最終)目標は「予知あるいは予測」である。
    (b) 長期目標を明記した上で,次期5か年計画の位置付けを明らかにすべき。更にはその先も見据える必要がある。
    (c) 「長期予測」と「短期予測」の定義を明確に整理して記述し,それぞれについて何をするのかを提示する必要があろう。
    (d) 地震研究と火山噴火研究の統合,融合も含めた具体的なロードマップが見えないことが課題である。ただし,地震と火山噴火を無理に統合,融合することはないのではないか。
    (e) 分科会の「科学的視点にたつ」も重要であるが,様々な地震・津波,火山噴火の可能性を発生頻度や被害評価の優先度なしに議論しているのが現状。発生頻度は地震本部の長期評価,被害評価は中防が実施しているが,次期計画から長期評価や被害評価に結びつけられる成果をどのように出すかがひとつの目標ではないか。
  2. 研究計画の優先順位の提示
    (a) 海溝型地震については,国の減災施策としての南海トラフ,首都直下が最優先課題であるべきで,日本海溝は検証フィールドとして調査研究を継続すべきである,ということがみえる形で記載すべきである。
    (b) 海域観測網の早急な整備による海陸モニタリング研究体制の確立,シミュレーション研究の推進が喫緊の課題である。
  3. 低頻度大規模現象への取り組み
    (a) 超巨大地震やカルデラ噴火現象などの低頻度超巨大災害の認識と研究は必要である。
    (b) それ以上に300から400年に1回程度発生する巨大災害現象についての研究と災害対策への研究成果の活用が重要である。
  4. 観測体制の維持・強化
    (a) 観測基盤の維持とデータ収録の体制維持の重要性を明確にすることは重要であるが,陸域観測網についてはHi-net,GEONETの成果と課題の評価を実施した上で,必要な観測研究,システムを導入すべきである。
    (b) 海域観測計画については,5年(早急に津波ブイを展開する)の短期計画,10年,20年といった中長期計画として立案し,その間に発生した事象については機動的観測で対応する体制とすることを提案する。
    (c) 火山噴火予知については,予測漏れがないような観測体制にすべきである。
  5. 国際連携,共同研究の推進
    (a) 世界的視点,国際プログラム,プロジェクトとの協力,枠組みの活用も含めるべきである。
    (b) 個別の共同研究も重要であるが,日本−海外間の共同研究がさらに重要である。
    (c) 国際シンポやワークショップ頻度を高めることや,海外研究者の受け入れ体制強化も不可欠である。
  6. 人文・社会,工学分野など他分野との連携,社会との関係,ハザードの観点
    (a) 南海連動や首都直下プロジェクトなどで既に連携研究として実施されており,より緊密な連携を図ることが重要。
    (b) ケーススタディを実施し,その成果で連携度を評価することも重要。
  7. 社会への説明(アウトリーチ)
    (a) 具体的アクションプランをたてる必要がある(例:南海連動プロジェクトの地域研究会など)


    その他,必要な観点,事項:
  8. 次期計画のタイトル
    (a) 現行計画の「・・・観測研究」は「・・・観測・研究」が正しい表現ではないか。
  9. 研究を推進するための実施体制の提示
  10. 若手人材の育成方針
  11. 地震本部との役割分担の整理
    (a) 本来,事務局が整理をすべきである。
    (b) どのような役割分担になるにせよ,地震本部と次期計画が成果,情報を互いに共有し,次期計画の成果が地震本部に取り入れられる仕組みを作るべきである。

 

全体を通じてのコメント:

(a) 個別課題,個別プロジェクトへの建設的評価,批判は必要不可欠であるが,震災以降の非難中傷的な議論は不要である。
(b) 次期計画(またそれ以降の計画)が担う基礎研究,応用研究が継続的に実施されることによって初めて,減災研究(実用)の進展が図られる。

 

地震・火山噴火予知研究協議会WGによるたたき台(案)について

  1. 包括的な意見:
     現行計画とあまり代わり映えがしない印象を持つ。
  2.  3つの研究の柱の相互の関係等,より具体的なシナリオの提示,時間軸を入れた達成目標の設定等,プロジェクトマネージメントの手法を取り入れたアプローチが必要。
  3.  地震と火山噴火予知が無理に統合されている感が否めず,それがわかりにくい原因にもなっているだろう。
  4.  何をやるかは理解できるが,どのようにやるかという戦略が不明。特に地震研究に関しては,地震発生物質そのもの,あるいは地震発生場での観測から得られるデータの利用が考慮されていないことは,改善されるべきと思慮。モデルを規制するパラメータを実データによって代入し,地震発生の物理化学過程を試料から読み取り,その繰り返された歴史を読み取る事が,地震発生帯の掘削試料によって可能となりつつある現状を認識し,具体的な研究戦略(ビジョン)を示す事が必要。
  5.  研究推進体制,教育・若手人材の育成,基礎的な観測研究体制,研究基盤の整備,社会への対応,国際共同研究の推進等については,前項目の「○次期計画の構成等について」 で既に述べている。重複のためここでは割愛する。

 JAMSTECが実施することを予定・検討している具体的な課題を以下に記す。
[現状骨子案で対応すると思われる項目]

【地震】

  • 環太平洋およびインド洋における地震発生帯研究推進[1.1]
  • 米国,カナダならびにインドネシア等の大学研究機関との共同・連携研究
  • 海底観測の技術開発ならびにデータ活用[1.1, 2.4]
  • 米国,カナダおよび欧州の国際的な海底ネットワークの研究グループと連携
  • 超巨大地震とそれに起因する現象の解明のための観測研究(超巨大地震に限らず)[1.1,2.1,2.4,3]
  • 海溝域浅海部の超巨大地震はアウターライズ地震と対をなして発生する過去の事例があるため,プレート境界付近とアウターライズの現在の応力変化やアウターライズの地震発生場を理解するための調査観測を実施する[2.1]
  • 発生サイクルの解明,長期評価手法:海溝域での地震履歴を残している海溝域での高分解能地下構造探査(千島,日本,南海,および世界の沈み込み帯)および深海掘削などを含んだ地球物理学的,変動地形学的,古地震的,地質学的手法を用いて解明する[1.2 ただし,史料と地質データの項目名は不適切。掘削科学も含む地球物理学的データも加えるべき]
  • 発生とその前後の過程の解明:3/11の震源過程解明のため,海域で観測研究を実施。これにより数10メートルに及び地震制滑りの実態解明とその特殊制や一般性について理解を深める(大学とともに実施)[1.1]
  • 巨大地震発生サイクルと深部低周波微動やスロースリップとの関係をシミュレーション研究を通して明らかにする。その為,高精度海陸統合調査により深部低周波微動やスロースリップ発生場の物理モデルの高度化を図る
  • 震源域の地殻活動モニタリング:DONET,DONET2,東北ケーブルで実施・実施予定(地震観測と地殻変動観測)。今後は 室戸沖~日向灘(DONET3),日本海,沖縄~琉球海溝域の観測体制強化が不可欠。[1.1]
  •  津波の早期検知,規模予測:DONET,DONET2,室戸沖~日向灘(DONET3),東北ケーブルで実施予定[3]
  •  海底地殻変動観測技術,深海型のシステム開発(大学とともに)[2.4]
  •  JAMSTECでは東北大,JAXAと共同で新型ブイ(津波早期検知,海底地殻変動観測機能)を開発・試験中

【火山噴火】

  1.  マグマの成因はまだ未知の部分が多い。しかし,火山噴火現象はマグマの発生に由来する現象である。よって,(木を見て森を見ずを教訓として,)マグマの成因(いつ,どこで,どのようにして,マグマが発生するか)の追求は学究のみならず,現実的にも必須であると考えられる。
  2.  低頻度大規模噴火の理解の重要性は高まっている。よって地質データに基づく噴火シナリオの構築,とくに海底下構造探査及び海底掘削を利用して巨大カルデラ噴火の地質データを蓄積することは重要であろう。
  3.  低頻度大規模噴火は珪長質マグマの噴火であるが,珪長質マグマの成因の可能性の一つとして,沈み込み帯でできる中部地殻の大規模融解があげられる。地球深部探査船「ちきゅう」を用いた中部地殻掘削は現在Chikyu+10で議論される最重要課題のひとつである。「ちきゅう」を用いた中部地殻掘削は,大規模噴火の原料を明らかにするという意味でも必要である。

 

以下の項目については,加えるべき視点を以下に記す。
1.4 火山活動のモニタリングと時空間発展の予測
1.5 噴火シナリオの高度化
 火山噴火はマグマの発生-集積-滞留-上昇に引き続く現象であると理解される。この噴火に至るまでのマグマの準備過程(成因)は基礎研究のみならず,個々の火山の将来の噴火に関する予測にも必須であると考えられる。そこで,
 「火山活動のモニタリングと時空間発展の予測」では,マントルから地殻内部(マグマに関する地震,地殻構造),地表現象(地殻変動やガス噴出の変化)に至るまで,既存の観測項目だけでなく,広範囲の予兆現象の整理とモニタリング技術開発の提言が求められる。
 「噴火シナリオの高度化」に際しては,既存の歴史的・地質学的噴火履歴をもとにして,地質学データや物質科学にもとづく噴火準備過程の推定や整理とともに,噴火現象の推移についての解析やシミュレーション理論・技術の一層の向上が求められる。これらの研究や技術開発の発展を具体化する提言が望まれる。

 

2.2 火山現象の定量化とモデル化
2.2.1 マグマ噴火を主体とする火山
2.2.2 熱水系が卓越する火山
2.2.3 低頻度大規模噴火

 陸域におけるマグマ噴火・熱水噴火・低頻度大規模噴火だけでなく,海域で発生するこれらの火山噴火の理解は重要である。とりわけ地震や噴火に励起された海洋島火山体の崩壊や,海底カルデラ噴火などによって発生する噴煙や津波の影響についても,陸域のそれらとともに比較し検討する必要性がある。地質データや物質科学的検討に基づく噴火シナリオの構築や,地下構造探査や熱水・ガス,地殻変動モニタリングなどが新たな研究項目として提言されるべきと考えられる。
 日本の場合,珪長質マグマによる低頻度大規模噴火は地質時代には高い頻度で起きており,歴史時代の火山噴火に比較してきわめてカタストロフィックであるから,「低頻度大規模噴火」が新規に計画に組み込まれることに歓迎する。大規模珪長質マグマの発生-蓄積などの噴火準備過程に関する研究は,国内では近年停滞している。陸域・海域の大規模カルデラをモデルケースとした,地質学的・地球物理学的・物質科学的総合研究(例:イエローストーン・カルデラ研究の事例)が提言されるべきと考えられる。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)