参考資料2 2014年御嶽山火山噴火に関する総合調査 研究計画の概要

研究課題 

2014年御嶽山火山噴火に関する総合調査

研究代表者 

山岡耕春  名古屋大学大学院環境学研究科 教授

研究目的  

 長野県・岐阜県境の御嶽山では2014年9月27日に噴火が発生し,大量の噴石,火山灰が放出された。不幸にも登山シーズンの休日とあって山頂付近において登山者が噴火に遭遇し,多数の死傷者が発生する事態となった。翌日以降も噴火は継続し,火山性地震が多発した。噴煙量や火山性地震の回数は減少傾向にあるようにも見える。しかし,10月1日に至っても微動活動が断続的に活発化するなど,噴火発生の危険性が依然高い状態が続いている。今回の噴火に先立ち,9月10日から11日にかけて山頂付近の火山性地震の増加が見られたが,その後次第に減少していたことから,噴火警戒レベルに反映されなかった。
 御嶽山では1979年に有史以来の噴火となる水蒸気噴火が発生し,その後1984年に山麓南部において長野県西部地震M6.8が発生して山体崩壊を生じた。しかし,1991年,2007年の小規模な噴火以外にはこれまで目立った噴火活動は見られなかった。
 本研究の目的は,(1)8月末から始まった直前の噴火準備過程から水蒸気噴火を経て推移していく火山活動を,地質学・地球化学・地球物理学的手法によって解明することで,これまで十分に観測がなされていない水蒸気噴火のプロセスに関する知見を深め,(2)今回の噴火に対する行政や住民の対応を調査することにより防災上の課題を明らかにすることである。これらの研究結果を総合することにより,今回の噴火を御嶽火山の噴火サイクルに位置づけて理解し,また,火山噴火災害の軽減方策に貢献する。
 具体的には,9月27日の水蒸気噴火とそれ以降現在も進行している御嶽山の噴火活動について,地震観測,地殻変動観測,写真測量,火山灰・火山ガス等の噴出物の調査分析などから噴火のメカニズムを解明する。また,水蒸気噴火からマグマ噴火への移行の可能性を視野にいれつつ,地殻変動観測や広帯域地震観測により火山活動推移を解明する。また,噴火以前の火山性地震活動を精査して水蒸気噴火に至る過程を解明することは,火山噴火のメカニズムを解明するばかりでなく,今後の火山活動の予測や評価にとって極めて重要である。今後の火山防災に生かすことを目指し,火山活動情報の発信方法や自治体の対応について学術的な観点から検討する。

調査内容 

1.山頂周辺の地形変化と噴出物調査

 小型機あるいは有人ヘリによる航空写真測量やレーザー測量により,火山体,特に火口周辺の詳細地形に関する3次元データを取得する。また,今回の噴火の噴出物の飛散範囲・堆積量や状況を調査し,噴火の規模や噴火が進行したメカニズムを正確に把握する。また,火砕流が流下した痕跡の状況を詳細に観察し,その特性を明らかにする。

2.火山体周辺の地震観測及び地殻変動観測による火山活動の詳細調査

 大学,自治体,気象庁等の地震記録を用い,8月31日の開始以来の地震活動(震源分布や規模,タイプ,メカニズムなど)の推移を精査し,水蒸気噴火に至る1か月間に何が起きたのかを解明する。それに加え,GNSS記録,水準測量,衛星SAR解析などの地殻変動解析により9月27日の噴火のメカニズムを解明する。また,現在進行中の噴火活動を把握し,噴火の推移を明らかにするため,広帯域地震計や地震計アレイによる地震観測,傾斜計,GNSSによる地殻変動観測を行う。また,空振を観測し地震観測結果と合わせて解析し噴火の形態を推定する。なお,水蒸気噴火からマグマ噴火への移行の兆候がある場合には,これらの調査は火山活動の推移を理解する上で有用である。

3.火山灰・火山ガス等の調査による噴出物成分調査

 自立飛行型無人機により各種空中観測を行い,火口温度,ガスや火山灰の直接採取などを行う。また,噴出物から噴火前の御嶽山山体内部の物質科学的構造を推定するとともに,水溶性成分を採取し,それらから今回の水蒸気噴火に関わる火山ガスの分析を行う。既に噴火初期の火山灰の分析により,新鮮なマグマは直接関与していないことが報告されているが,火山灰の噴出が継続する場合には,随時サンプリングと分析,火口噴気ガス及び周囲の温泉のヘリウム同位体分析によりマグマの活動との関与の有無を捉える。

4.火山災害情報の発信の在り方

 登山者の多くは広く全国から訪れる観光客であり,火山活動や火山噴火に対する十分な情報を必ずしも有していない。また,災害発生時の避難を促進するために,観測情報やそこから得られた知見を事前に発信する情報提供の方策を検討するために,火山災害に対する人々のリスク認識についてアンケート調査を実施する。また,災害対応における自治体間の広域連携の在り方について,ヒアリング調査を通して検討する。

研究経費

 30,500千円

研究組織

(研究代表者)

山岡 耕春  名古屋大学大学院環境学研究科教授 (地震学・火山学) 研究総括

(研究分担者※及び連携研究者)

氏名

所属・職名

専門分野

役割分担

 1.山頂周辺の地形変化と噴出物調査

 中田 節也※

 東京大学地震研究所・教授

 火山学

 噴出物調査

 三宅 康幸※

 信州大学理学部・教授

 地質学

 噴出物調査

 嶋野 岳人

 富士常葉大学社会環境学部・准教授

 地質学・岩石学

 噴出物調査

 鈴木 康弘

 名古屋大学環境学研究科・教授

 地形学

 地形調査

 鈴木 毅彦

 首都大学東京 都市環境科学研究科・教授

 火山地質学

 地形調査

 2.火山体周辺の地震観測及び地殻変動観測による火山活動の詳細調査

 大倉 敏宏※

 京都大学理学研究科・教授

 火山学

 水準測量

 山中 佳子

 名古屋大学環境学研究科・准教授

 地震学

 広帯域地震観測解析

 加藤 愛太郎

 名古屋大学環境学研究科・准教授

 地震学

 地震アレイ観測解析

 松島 健※

 九州大学理学研究院・准教授

 地殻変動学

 水準測量

 中道 治久※

 京都大学防災研究所・准教授

 火山地震学

 地震観測、傾斜観測

 井口 正人

 京都大学防災研究所・教授

 火山学

 地震観測、傾斜観測

 村瀬 雅之

 日本大学文理学部・助教

 測地学

 水準測量

 山本 希※

 東北大学理学研究院・准教授

 火山学

 地震アレイ観測解析

 伊藤 武男

 名古屋大学環境学研究科・助教

 測地学

 GNSS観測解析

 小澤 拓※

 防災科学技術研究所・主任研究員

 火山学

 SAR解析

 武尾 実※

 東京大学地震研究所・教授

 火山学

 空振観測解析

 市原 美恵

 東京大学地震研究所・准教授

 火山学

 空振観測解析

 3.火山灰・火山ガス等の調査による噴出物成分調査

 前野 深※

 東京大学地震研究所・助教

 火山学

 噴出物調査

 森 俊哉※

 東京大学理学系研究科・准教授

 地球化学

 火山ガス調査解析

 寺田 暁彦※

 東京工業大学火山流体センター・講師

 地球熱学

 赤外観測

 吉本 充宏

 山梨県富士山科学研究所・主任研究員

 火山地質学

 噴出物調査

 橋本 武志※

 北海道大学理学研究院・准教授

 地球電磁気学

 映像観測・ガス観測

 篠原 宏志

 産業技術総合研究所活断層・火山研究部門・首席研究員

 火山化学

 ガス観測

 佐野 有司※

 東京大学大気海洋研究所・教授

 大気海洋化学

 地下水同位体調査解析

 山本 鋼志

 名古屋大学環境学研究科・教授

 地球化学

 火山ガス調査解析

 野上 健治※

 東京工業大学火山流体センター・教授

 火山化学

 水溶性成分分析・噴出物分析

 三輪 学央

 防災科学技術研究所・任期付研究員

 火山学

 火山灰堆積物調査

 4.火山災害情報の発信の在り方 

 田所 敬一

 名古屋大学環境学研究科・准教授

 地震学

 情報発信

 阪本 真由美

 名古屋大学減災連携研究センター・特任准教授

 情報学

 アンケート、ヒアリング調査

 臼田 裕一郎

 防災科学技術研究所・主任研究員

 政策・メディア

 リスクコミュニケーション調査

 高木 朗充※

 気象庁気象研究所・主任研究官

 火山学

 情報発信

なお、本研究計画は自然災害研究協議会を通じて、全国の研究者が連携して実施するものである。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年11月 --