地震火山観測研究計画部会(第37回)議事録

1.日時

令和2年9月3日(木曜日)10時00分~11時57分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 地震火山観測研究計画の令和2年度年次計画の追加修正
  2. 地震火山観測研究計画の令和元年度年次報告【成果の概要】
  3. 地震火山観測研究計画の令和2年度年次報告【機関別】のとりまとめ

4.出席者

委員

平田部会長、鈴木部会長代理、井口委員、石川委員、市原委員、大湊委員、加藤委員、鎌谷委員、高橋委員、中川委員、仲西委員、宗包委員、山元委員、大倉委員、阪本委員、篠原委員、寺川委員、橋本委員、日野委員、三宅委員、松島委員、森岡委員

文部科学省

長野研究開発局審議官、鎌田地震・防災研究課長、青木地震調査管理官、上山地震火山専門官、加藤科学官、矢部学術調査官

オブザーバー

東京大学地震研究所 大園准教授

5.議事録

【平田部会長】それでは、只今より測地学分科会第37回地震火山観測研究計画部会を開催いたします。まず、事務局よりご挨拶がございますので、よろしくお願いします。

【上山地震火山専門官】ありがとうございます。本日は、長野審議官から新任のご挨拶をさせていただきます。

【長野審議官】長野でございます。
8月1日に着任いたしまして、審議官を拝命しております長野裕子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【平田部会長】よろしくお願いいたします。

【長野審議官】こちらの部会では、昨年度からの5か年計画を先生方に進めていただいているというふうにお聞きしております。今日は、その計画の進展をお聞かせいただくということ、それから、今後に向けてご議論いただくというふうに思ってございますので、有意義な議論がされるのを楽しみにしてございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【平田部会長】ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。
それでは、委員の出席状況と事務局の異動などについて事務局からご説明ください。よろしくお願いします。

[委員の出欠状況など]



・委員の出欠状況:全員出席
・事務局の異動:岡村研究開発局審議官に代わり、長野研究開発局審議官が着任。工藤地震・防災研究課長に代わり、鎌田地震・防災研究課長が着任。
・配布資料確認

[議事1.地震火山観測研究計画令和2年度年次計画の追加修正]



【平田部会長】それでは、議事次第に従いまして、議事1「地震火山観測研究計画の令和2年度年次計画の追加修正」にまいりたいと思います。事務局からご説明をお願いいたします。

【上山地震火山専門官】事務局でございます。まず、資料1をご覧ください。こちらは地震火山観測研究計画について、前回の部会以降に変更があったものについてまとめております。計画の変更については、本来は年度の最初の部会で一度更新するだけということにしているのですけれども、今回、1つの課題で研究者の異動が報告されているにもかかわらず、別の課題で同じ先生の異動が報告されていないという事例がございましたので、地震・火山噴火予知研究協議会の事務局の方でそのような事例についてまとめていただいて、この機会に併せて承認することとしたものでございます。来年度以降はこのようなことがないように地震・火山噴火予知研究協議会の方と協力して年度1回目の部会の際には漏れがないようにしたいと思いますが、本日、追加的にこのような形で承認いただければと考えております。
変更の内容ですけれども、第36回(前回)の部会と同様に人事異動等に伴う形式的なものとなっておりますので、個別の説明に関しては割愛させていただきます。今後の計画内容についての変更はございませんので、ご了承いただけますと幸いです。事務局からは以上でございます。

【平田部会長】ありがとうございました。これ、関係の機関の方がもう一度ご確認いただいて、万が一漏れているもの、あるいは間違っているところがございましたら事務局の方にご連絡いただきたいと思います。
それでは、この修正についてご異議があるかどうかお諮りしたいと思います。ご異議のある方はご自分でマイクのミュートを解除してご発言いただくか、あるいは、手を挙げるなどをして意思表示をしてください。一番簡単なのはマイクのミュートを解除してご発言いただければいいと思います。それでは、ご異議がございませんかどうかお諮りします。異議のある方はご発言ください。ちょっと遠隔ですので不安ですけれども、しばらく時間というかタイミングをはかって、特にご発言がなければ了承されたというふうにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
特段、ご異議があるというご発言がございませんでしたので、この最初の議事1については皆さんのご異議がないということにさせていただきたいと思います。議事1については以上でございます。

[議事2.地震火山観測研究計画の令和元年度年次報告【成果の概要】]



【平田部会長】それでは、議事2に移りたいと思います。議事2は、「地震火山観測研究計画の令和元年度年次報告【成果の概要】」でございます。これはお手元の資料2-1と資料2-2を基にしてこれから審議をしていきたいと思います。それでは、まず事務局から概要の説明をお願いいたしまして、その後にとりまとめをお願いしている委員として橋本委員と日野委員からのご説明をお願いしたいと思います。まず事務局からお願いいたします。

【上山地震火山専門官】事務局でございます。まず、これは前回承認いただいた参考資料をお見せしております。この成果の概要作成方針に従いまして、これまで原稿を取りまとめてまいりました。
取りまとめの際には、取りまとめ委員でございます日野委員、橋本委員、および地震・火山噴火予知研究協議会の事務局の皆さまに多大なる貢献をいただいております。この場を借りまして、まずは御礼申し上げます。
先ほど、部会長からもございましたように、詳細については取りまとめ委員の先生方からご説明いただきますので、私の方からは簡単に概要のみ説明させていただきます。
まず、毎年、顕著な地震や火山噴火事象に関する研究成果について掲載してございますけれども、令和元年度に関しては6月18日に発生した山形県沖の地震に関する成果について掲載しております。また、例年と同様に、令和元年度の成果の概要を掲載し、最後にまとめ、用語解説、実施機関および研究課題の一覧表を掲載しております。本日、この内容についてご議論いただきますが、議論に乗せるまでもない細かい表現上の修正等については会議終了後も受け付けたいと思います。9月11日(金曜日)までにそのような軽微な修正について受け付けますので、事務局までお知らせいただければ取りまとめ委員とも相談しながら適宜修正させていただきますので、よろしくお願いします。
それでは、具体的な内容について橋本委員および日野委員からご説明をお願いいたします。

【平田部会長】まず、橋本委員からお願いします。

【橋本委員】橋本です。ここでは、パワーポイントのスライドを共有していただきながら、報告書の中の概要の図が幾つか掲載されておりますけれども、そこを中心に令和元年度の成果を紹介していきたいと思います。私と日野先生で交互に説明させていただきますので、入れ替わりながら進行させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【平田部会長】では、よろしくお願いします。

【日野委員】日野です。それでは、私の方から数枚、スライドをご紹介させていただきたいと思います。スライドめくりは事務局の方にお願いしたいと思います。
基本的には本文の方に掲載されております図版をスライドにお見せして、それで主要な成果をご説明していくというような流れで進めてまいりたいと思っております。今、表示していただいているのは口絵の上3文になります。今年度から開始になりました地震火山観測計画の構成を示したものでございます。
①が地震火山現象解明、これが地震火山そのものの研究を下支えする部分であって、②予測のための研究ということであります。これは、現象を解明したものを災害軽減につなげるという1つの道筋として地震調査研究推進本部の方でやっている地震発生あるいは地震発生の予測というようなものにつないでいくという1つの出口があるだろうということで、今回の計画から重点的なものというふうに取り上げられております。
大きく3つ、長期予測、それから、地殻活動モニタリングによる、ですから、これはある程度時間変化の推移を使って予測ができるかということ、そして、火山活動の推移をモデル化することによって火山噴火の予測というような研究を特に重点的に進めていくというのがこの②になっております。
③ですが、これは前期の計画でもございましたけれども、地震火山現象の理解を通して実際に発生したときに、そうした現象が発生したときに、災害誘因となる地震であるとか津波であるとか、そういうようなものを予測するための研究ということになります。
こうした研究成果をどのように一般の社会の人たちに返していくかというところが実は非常に重要なテーマでございますが、その中で情報の受け取り手との受け渡し方のところを研究する、そのものが研究のテーマとなるだろうというのが④の防災リテラシー向上のための研究課題。こうした4つのテーマを1つの具体的な事象に対して一括して考えるということで、分野横断レトリックの研究という体制をつくるために、研究体制整備の中で5つのテーマを1回設定して、総合的研究というものを整理してやっていきます。
全体としてこういう構造でやっておって、この研究成果の初年度分をご説明しようということになります。スライド、次、お願いいたします。
これは、今日ご紹介しようと思っている項目全体を1つの図で示したような目次だと思っていだたければいいですが、こういうようなテーマのものを順次、ご説明していこうと思います。この図そのものは皆さんのお手元にあります参考資料2にございますので、適宜参照されながら説明を聞いていただきたいと思います。次、お願いします。
この中で、先ほど事務局の方からもご紹介がありましたけど、毎年度顕著な注目すべき地震活動あるいは火山噴火現象があった場合に取り上げているわけですが、昨年度に関しましては、山形県で発生しました地震についてということなります。この地震は幸いにしてあまり大きな被害は伴ったわけではなかったわけですが、一方で、日本海東縁部で発生した地震ということで、非常に注目されました。ということで、緊急的な地震観測、海域も含めて展開しました。沿岸に非常に近いということで、少し若干の観測技術の工夫が必要だったわけですけれども、そういうものを使って緊急対応の観測をやった結果、断面図に示してありますようなきれいな面状構造に余震が並んでいるのが見えてきて、この形は上にCMT解を示しましたけれども、それの説明の片方、具体的には東側に傾斜する、いったん下がるのですけれども、それと整合するようなものが見つかっています。
一方で、この海域ですと、地震探査等では非常に複雑で西側傾斜、東側傾斜、いろんな断層面があります。そういう複雑な断層面のどちらを使うかというのは、まだはっきり分かっていないわけですが、そういうコンプレクシティーを示す1つの重要な成果であるというふうに考えています。次のスライドをお願いします。ここで説明担当を交代します。

【橋本委員】このスライドについて、橋本が説明いたします。
こちらの方は、3-1の項目になりますが、地震火山現象の解明のための研究で、その中の史料・考古・地質データというものになります。こちらの写真は平城宮の遺跡の発掘の写真なのですけれども、これは地震に伴います液状化の痕跡を示している遺跡の写真になります。平城宮の遺跡発掘でこうしたものが幾つか発見されているのですが、ここで発掘調査からこの痕跡がどういった地震に伴うものかということを調べるために、近畿地方の歴史資料から候補を幾つか調べていくと2つの候補が特定できたと、そういった例になります。そこの右側の下の方に書いてありますように827年の京都地震、855年の奈良地震のこのどちらかであろうということが特定されたということになります。一言で言えば、考古学と歴史学が共同してこうした成果ができたということであります。この背景にあるものは、前計画から取り組んでおりましたこのデータベース、これの作成が着実に進捗しているということの一つの現れ、成果になっているかと思います。こうして系統的に液状化の現象などを調べることによって、観測データがなかった時代の大地震の地震像に迫れるという可能性が出てきたのではないかというふうに思います。ここから先、地震学の方にさらにつないでいって、研究が発展されることが期待されると思います。次のスライドをお願いします。

【日野委員】ここでまた日野に交代いたします。
こちらは、南海トラフ沿いで検出された浅部SSE(スロースリップイベント)についての成果となります。
南海トラフで発生するプレート境界型大地震の震源域周囲でゆっくり滑り、あるいは、スロー地震と呼ばれるような地震波の影響を伴わないような断層移動現象があることが知られてきています。
その周囲というのは、海溝軸(トラフ軸)に近い側の浅部部分ですけれども、そこにもそうしたスロー地震活動があるということが徐々に知られつつあるわけですが、地殻変動でしか検出することはできないスロースリップイベントの存在については、なかなか今まで観測網がなかった、手薄だったということで分かっていなかったわけですけれども、これは海上保安庁さんの成果ですが、観測の頻度を上げることによって、今でもまだキャンペーン観測しかなくて連続観測が取れないのですが、このキャンペーンの頻度を上げることによって非定常の地殻変動といって、左上にあるのは、あるベンチマークの位置の時間変動を表しているわけですが、ブルーのバーが示した範囲で少し変わって、それ以外の違う動きということでこれを非定常の地殻変動と考え、これをモデル化したところ、今まであるだろうけれどもよく分かっていなかったというか、考えられていた浅部スロースリップイベントによる地殻変動であるということが確かめられました。これは、巨大地震発生帯の浅部側がどのように固着して滑り、あるいは、滑り状態にあるか、これは東北地方太平洋沖地震のときのように海溝に近い断層浅部の挙動というのが近年非常に注目されるようになっているわけですが、そういうことを知るために、新しい知見による非常に重要な成果だということで取り上げさせていただいています。次のスライドをお願いします。ここでまた交代いたします。

【橋本委員】このスライドは、橋本が説明いたします。
これも現象解明のための研究ですが、地震発生過程になります。これは、地震破壊の階層性を実データで検証した研究成果になります。左側の「断層系」と書いてあるところは、実際の断層のイメージをこのように模式的に書いたものなのですが、こういった複雑な断層系を少しこういうカスケードモデルのような、右側に書いてあるように幾つかのパッチ、階層的な大きさを持っているパッチで説明するというモデルが従来からありますけれども、実際に日本海溝から千島海溝辺りで観測されている大地震と、中小の地震の波形を比較するということをこの研究では行い、その結果、カスケードモデルを支持するような結果が、そういった波形の特徴が確認できたという内容になっています。
地震波のこの右の下のグラフにありますように、小地震、それから中規模地震、大地震に対応した3つの線がありますけれども、いずれの大きさの地震に関しても、その始まりの部分というのは非常に似通っているということが分かった、というのが結果になります。これはどういう意味があるかということなのですが、右側のカスケードモデルのポンチ絵で書いてありますように、こういった観測波形の相似性というのは、階層的なアスペリティの連鎖的な破壊ということで説明できるということになります。こういった観測データから実証を試みようとする事例というのは過去にも研究例があったのですけれども、こういった波形のレベルで、しかも規模を超えて相似性が示されたというのは初めてになるのではないかということです。こういった破壊のカスケードアップということは、連続的というよりは離散的に起こっているという点が新しい知見かと思われます。
それから、実用的な面で申し上げますと、これは地震の即時予測というところと非常に関係していまして、既にP波の初動部から地震の規模を予測するというような研究例もあるのですけれども、今回の結果というのは、そういったことが原理的には困難だということを示しているということになります。ただし、全ての地震でこういったモデルが成り立つのかどうかというのは、まだ確かめられていないので、一般化できるかどうかについては継続して引き継ぐことが必要だというふうに思います。次のスライドをお願いします。

【日野委員】こちらのスライドは私、日野がご説明いたします。
先ほどまでがその地震現象そのものを対象にした研究だったのですが、今度はその地震を起こす場を理解しようというものです。
その地震が発生する場所の媒質の構造、例えば、地震波速度であったり、温度であったりというものは、今まで様々な観測で推定されてきていたわけですが、逆にその下、観測された物理量1つの媒質モデルにしてみて、地球の構造に対して力を加えることで実際に起こっている地殻変動とか地震活動といったものがどの程度再現できるか、それが非常に優位な再現性でモデル化が進むことができるのであれば、地震発生の予測につながるという考えでこうした研究が進められてきております。
今年度取り上げた成果は、中部日本を対象にしたもので、地下の温度で媒質の硬さ、柔らかさが決まってくるわけですが、それに、他に地質学的に知られている断層の分布や、地震波速度構造の知見を入れて媒質モデルをつくる。それを使って、仮にそのモデルに対してコンピューターの上で東西圧縮の力を掛けてみたところ、B図にありますように、地表に塑性ひずみが現れるわけですが、これが実際に地殻変動観測、測地観測で見られているひずみ集中帯の姿にある程度見える、再現できているだろうというようなこと、あるいは、それで実際に地下の応力場というのは実測できないので、そういうものを間接的に知る方法としてこういうモデルは有効と考えられているわけですが、実際にこのモデルで計算してみたら、深さ14 kmでの、これはミーゼス応力になりますけれども、それで見てあげると、応力状態に非常に大きな変化があって、低応力の場所が、これはもう往復してしまっているところというふうに考えると、そういうところでは地震活動が低くて、そうでないところに脆性的な領域が残っていて、そういうところで地震活動が活発であるというふうに解釈できるということで、まだまだ、初歩的なものではあるだろうと思いますけれども、このように地殻内部の現実を再現できるような地下構造モデルの研究が進みつつあるということで紹介させていただいております。
次のスライドお願いします。ここで交代します。

【橋本委員】橋本が説明いたします。
こちらは、火山活動の発生場、噴火の発生場に関する地下構造探査の研究成果になります。これは対象としているのは、群馬県の草津白根山なのですけれども、この火山では、従来、観測が集中していた火口というのがこの上の地図で言いますと、少し真ん中の上の方にあります湯釜という火口です。と申しますのは、この湯釜は実際に歴史時代に繰り返し水蒸気噴火をしてきたということが知られていたからでして、そこに集中していたわけなのですが、皆さんご記憶かと思いますが、2018年1月にそれとは全く別の火口から水蒸気噴火が起こりました。これは本白根山の火口で、この地図で言うと、真ん中の南側の辺りになります。ここの火口に関しては、これまでノーマークだったわけなのですけれども、こういったことが起こりましたので、これまでの観測や調査の対象範囲をもう少し広げないといけないということで、この研究では本白根山の周辺も含めまして、広帯域MT法探査、電気低比抵抗の分布の探査ですが、これを実施したということになります。これは従来の調査データと併せて再度、この広域で3次元比抵抗構造を推定したところ、この右下の東西断面図にありますように、本白根山の直下を中心とした深さ1 kmから3 kmぐらいの深さのところに、大きく広がっている低比抵抗の領域、電気の通りやすい領域があるということが今回明らかになったということです。これは、湯釜火口、従来の注目されていた火口の方にもつながっていますし、東西方向にも広がりを持って、山麓部の温泉にも熱水を供給しているソースになっているのではないかということが今回の研究によって推定されたということになっています。以上です。次のスライドお願いいたします。

【日野委員】こちらのスライド、日野がご説明いたします。
今度は、今期からの目玉と冒頭にご説明しました、地震発生予測のための研究の成果を紹介していきます。
これは、長期予測に関する研究の成果。内陸地震ですけれども、内陸地震に関する長期予測は、現在のところ指定された活断層沿いの地震発生履歴を地質学的な調査等によって調べて、それに基づいて評価をするという方法を取っています。ですが、指定している断層が必ずしも次の地震につながっているとは限らないのではないかというような問題点も指摘されています。
一方で、私たちは、現在、非常に緻密な、測地学的な観測網で、地表のひずみ場を知って、そのひずみ速度が速いところで地震活動が高そうだということは直感的に分かっているわけですが、それを定量的に地震発生確率の計算につなげて見ることはできないかというチャレンジをやってみたというのがこの成果ということになります。図面の左側、マップの左側ですけれども、こちらが測地学観測網から得られた変形場の中から、これは南海トラフでの巨大地震発生時の固着による変形がもちろん含まれていますから、それを、固着分布モデルを使って、まず弾性変形を推定して、それを観測値から探す。これが実際の内陸の地殻の中でのひずみ速度であるというふうに考えて、これを解釈しようということになります。
これをどうやって地震の発生確率に持っていくかという考え方を示したものが、図の下の赤枠でくくったところになります。測地学的観測データがあって、それでひずみ速度が場所の関数で表す、そこから弾性ひずみ速度を求めてあげて、それを、弾性ひずみ速度と、地震モーメントに換算してどれぐらいの蓄積になっているかというところを計算するというところまでは、ある程度の定式化ができている。そこまでが分かっていれば、グーテンベルク・リヒターのa値に相当するものを推定することができる。一方で、地震カタログの方を使ってあげて、その各地域での地震活動の癖になるb値ですけれども、それを求めてあげればG-R式をつくってあげることができますので、ポアソン過程を仮定することによって特定の地域における内陸地震の発生確率が計算できる、こういうコンセプトでやろうということなるのですが、この中で少し苦労するところは、測地学的観測で得られているひずみ速度は、必ずしも全て弾性ひずみ速度であるわけではないことになります。そこをどうクリアするかというので、今回取ったアプローチが下の青枠になるわけですけれども、実際に観測されている変形は弾性と非弾性成分、一方で、弾性速度の成分の観測全体に対する割合というものを求めることができれば、そこで探査ができるはずだというということになります。そのレートですけれども、ここに関しては、個別の領域で求めるのはさすがに無理だということで、領域平均を取る。その弾性成分の変形というのは、これを歴史地震のカタログを使って領域平均としてのモーメント回復速度を計算してあげて、これと変形が釣り合っているという仮定において、弾性成分の割合を求めることをやっている。これを使って上のマップから確率計算に戻したのが右になります。最初に申し上げた、直感的にひずみ速度が速いところで地震活動が高いということになっているわけですが、それに実際の値が入ってくるということになります。
地震カタログを要所々々で使っていることになりますので、地震活動履歴に全くよらないとは言えませんけれども、あまりよらない新予測手法の試行ということになります。まだたくさんの仮定があって、それぞれの妥当性を吸収していく必要がもちろんありますのですが、新しいアプローチということで取り組ませていただきます。次のスライドをお願いします。
続いて、こちらも日野の方からご紹介させていただきます。
今度はモニタリングに基づく地震発生予測に関する検討ですが、今のところは対象としては南海トラフで発生するプレート間巨大地震、そのモニタリングでどういうものが見えてくるかということを今調べていて、先立ってもちょっとお話ししましたけど、多様なゆっくり滑りの現象が起こっていることが分かっているわけですが、それを検知する方法は、あるときは繰り返し地震であったりとか、あるときは低周波微動であったりとか、あるときは地殻変動であったりという、別々の多項目の観測で別なアスペクトを見るというようなことで研究は進んできたわけですが、それらを一括して同じ時間、空間のライブラリーとして見ると、異なる種類のスロー地震が相互作用しながら固着域の外側をずっと時間的に移動していっているという姿が見えてくるということで、多項目の観測量のモニタリングでゆっくり滑りの全貌が捉えられるということが示されたわけで、非常に興味深い成果であるというふうに考えております。
次お願いします。

【橋本委員】橋本が説明します。
こちらは、予測のための研究の火山活動推移モデルの構築に関する研究成果になります。こちらは、噴火していない時期です。非噴火時の火山活動の活発化に関する研究で、こういった噴火していない時期でもある程度の活動というのが活火山では多くの場合ありますが、それが、少しレベルが上がってきますと、アンレストと呼ばれるような現象になるわけですけれども、これをどのようにして定量的に評価するのかというような試みとなっています。ここでタイトルに記していますVUIというのは、Volcano Unrest Indexの略、これは日本語で言うと火山活発化指数というふうに訳していますけれども、これは最近ニュージーランドで開発されている指標になります。これを本研究では幾つかの日本の火山にも適用できないかということで取り組んでいるということになります。
このVUIというのは、本来は1つの火山について多項目の観測項目でもって基準を決めて評価するといった指標になるのですけれども、ここで示している図ではそういった項目の1つとして、火山活動に伴う地磁気変化、これが、これまでも各地で報告されていますけれども、火山活動に伴って温度が上がることによる地磁気の変化、これは熱消磁と言っていますが、こういったアンレスト現象をどのようにこのVUIという指数に結び付けていくかということを検討したという研究になります。
ここで示しているのは、これをやるために、様々な機関から報告されている過去の観測データをコンパイルして、このアンレストイベントを収集しまして、そこから推定されたこのソースの深さと、それから強度、これを左の散布図の横軸と縦軸に取ったものにまとめたということです。これは横軸が変化の生じている深さ、それから縦軸がその変化の強度になるわけなのですけれども、ソースが浅くて、地表面に近くて強いソースだということがもし推定されれば、かなり危ないアンレストだということは直感的には分かると思いますので、この左上にプロットされるものほど危ない事象だというふうに考えまして、それに沿うようにこの指数をVUI 0~4まで5段階あるのですけれども、こういうふうに分類してみたということです。これは、このようにするということがどこかでもう決まっているわけではなくて、試行的にこういうふうにやってみようということを考えたということになります。
この散布図の方で、各地で収集されたアンレストイベントのそれぞれ1つずつが1個の点になっているのですけれども、薄い丸で囲っているのがそのアンレスト現象が観測された後、実際に噴火した事例になっています。ですので、これを見ていただければ分かるように、左上にプロットされているものは噴火したものが多いということになっています。
こういった事例を今後どんどん蓄積していけば、やがては確率評価にもつながる可能性があるのではないかというふうに我々は考えています。
以上です。次のスライドをお願いします。
これも私が説明します。
こちらは、地震の危険度評価を表示するためのシステムの開発になります。これは事前評価手法というカテゴリーになりますが、何をやっているかといいますと、実際に地震が起こった場合、その地域がどれぐらい揺れる危険があるのかとか、建物がどれぐらい倒壊する割合があるのかというようなことを事前にリスク評価をしたいわけなのですけれども、そのためには想定する地震がどこで起こるのかということや、規模、それからメカニズムであるとか、そういったものも様々な地震が当然あるわけですし、それから地盤特性を計算するための手法とかテクニックということに関しても、アルゴリズムなんかに関しても幾つかのものがあると聞いていますけれども、そういったものの違いによって最終的に出てくる結果というのは、かなりのばらつきがあると想定されるわけですが、そういうことを織り込み済みで何とか評価をしたいということで、ここの研究ではいろいろな地震のシナリオとか計算手法の違いを取り込んで1万通りについて数値実験を試行して、それをコンパイルした結果です。これが危険度の度数に応じて色分けして表示されているということになります。左側の図が地震動の最大速度が100 cm/s 以上のものがどれぐらいの度数になっているかということになります。右側が建物の倒壊率30%以上になる度数がどれぐらいかというのが色付けで表示されていて、大阪府と高知県についてこういったことをやってみたということになっています。こういったシステムを開発することによって、予測の不確定性も織り込んだ防災計画に反映できるような可能性が将来あるということが期待されます。以上です。次のスライドをお願いします。
引き続き橋本が説明します。
こちらは、津波の即時予測手法の開発に関する研究になります。こちらは、津波を即時予測するために、地震観測のデータ、地震計のデータを使わずに海底圧力計のデータだけを使って津波予測ができるか、どれぐらいの精度でできるかということを過去の地震のデータを使って検証したという事例になります。ここで検証に使っている地震は、左側の地図にあります鳥島で起こっている地震になります。これはいわゆる津波地震と呼ばれているタイプの地震でして、地震動の大きさの割には大きな津波を起こすような、そういうタイプの地震でして、ここの地図で示されている地震のメカニズム解の図がありますが、これを見ていただくとお分かりのように、非常に奇妙な地震です。ここは鳥島ですので火山なのですけれども、ここの海底でこういった非常に不思議なタイプの地震が起こっています。これは地面が恐らく盛り上がるようなタイプの地震ではないかと思いますが、こういったタイプの地震ですと、普通の地震動から震源情報を推定して、さらに津波を推定するというようなプロセスでやるとなかなかうまくいかないだろうと予想されます。これは海底圧力計を使うとうまくいきますよというのがこの研究結果で、右側のグラフは串本と土佐清水、この2点で検証した、ここの観測、津波波形がどうなるかということをシミュレートしたものになります。ここはそれぞれ3本の波形がありますけれども、黒が観測波形で、青が予測波形の1、津波の到達20分前に予測したもので、赤いのが津波の到達する15分前に予測したものです。
当然、到達する直前に予測した方が精度は良くなるわけですけれども、仮に20分前に予測したとしても振幅はやや過小評価になっていますが、それなりに良い予測が得られているという結果になっています。土佐清水についても同様、ある程度良い結果が得られていますよということになっています。これはDONETの海底圧力計のデータを使っているということになっています。
まとめますと、地震観測からは予測が困難な津波地震と言われるタイプの地震による津波の予測には特に有効だということが分かったということになります。では、次のスライドをお願いします。
こちらは、防災リテラシー向上のための研究で、これは災害事例の歴史資料から読み解くということになります。こちらは、東大の史料編纂所に所蔵されていた絵巻です。これは1855年の安政江戸地震の様子を記した絵巻になるそうなのですが、この2枚の絵巻には様々なことが描かれていまして、例えば、上の図ですと被害の様子が詳細に描かれています。右側の方ですと長屋が倒壊している様子であるとか、左側ですと薩摩藩主の屋敷が被害を受けているというようなことが書かれていたりとか、それから、下の図ですと、こちらは人々がどのようにこの災害に対応したかというようなことが描かれているようで、右側ですと、食べ物を配給しているというようなことが書かれていたり、左側でいくと、これは仮設住宅ですかね、御救小屋と書いてあるので、仮に被災者が身を寄せるところだと思いますが、そういったものがつくられているというような様子が描かれています。この絵巻とこの文献と文字で書かれたものとを照合して、これらのものが非常に信頼度の高いものだということが図と文章から照合された結果として確認できたという成果になっています。こうしたことによって、被害とか人々がそのときどのように対応したかということを知ることができますので、復興過程の実態を見る手掛かりになります。
いわゆる温故知新ということでして、社会状況とかがこの時代とは現代は全く違いますので直接的な参考にはならないかもしれませんが、防災とか復興施策の検討にも活用可能な事例になるのではないか。また、昔の人がどのように災害に立ち向かっていったのかということを知るということ自体が防災リテラシーの向上になると思いますので、そういったことにも寄与する成果だというふうに考えています。以上です。

【日野委員】日野です。図面を使った中身の説明はここまでということで、最後、まとめを日野の方から説明いたします。3枚ございますけれども、基本的には本文に書いてあるまとめの部分をこれは再掲してございます。
まず、最初ですけれども、本ページに書いてあります、冒頭にご紹介しました新しい計画でどこに力を入れるということを宣言しているかということですが、予測に関する実験課題を置いたということ。それから、新しい防災リテラシー向上のための研究というところが、今期、特に力を入れて進めていこうとしているところであり、これが本格的に始動した1年であったというふうに考えております。
そして、5つの防災グループ全体を通して1つ特定の現象を理解しようという試みですけれども、これもまだ1年目ですからこれから成果が上がってくると思いますけれども、そういう活動について、今後、成果を折に触れて発信していきたいというふうに考えております。
次、お願いします。
次ですけれども、上の段落ですが、これは今日ご紹介しました長期予測、あるいは地殻活動のモニタリングによる地震発生予測に関する研究を進めていきますということです。太い字で書いたのが初年度の成果としてのキーワードでありますが、その下の部分、太く書いていませんが、こうした地殻活動の観測を地震発生予測の下で使うための本当に重要なパートになるのは、地下構造、あるいは応力状態、そして、断層滑り現象を理解し、それをどうやってモデルにするか、どうやって再現していくかということが非常に重要であり、冒頭に説明しましたその基礎研究というのがこの予測の中で生かされるだろうというような全体の道筋の話を少しまとめに入れていただいております。
火山活動推移モデルも同様で、火山噴火活動や火山噴火の予測をどのように進めていくか、それに加えて基礎研究がどういうコントリビューションをするかというようなことをまとめさせていただいております。
最後のページ、お願いします。
防災リテラシー向上を目指した研究ですが、どうしても図版で説明しようと思うと図になっているものを取り上げがちですので、ちょっとそちらで紹介できなかったものをこちらの方に取り上げさせていただいております。情報発信をするわけですけれど、受け取り手側の現状の理解というのは、これがまた研究テーマとして非常に重要であり、防災リテラシーの実態、あるいは発信される情報に対するニーズの把握というようなものが始まっています。
また、その情報を得たときにそれをどう使えるかというのは個人差があるだろう、そういうものは認知科学というようなアプローチによって研究を進めていこう、というものも始まった。
それから、実際に防災・減災の活動に一般の市民の皆さんを巻き込んでいくというのもまた重要なアプローチであって、その中でも広く全員というわけではなくて、特定の実務者であるとか有志市民というような者を対象にした研修プログラムの有効な在り方を研究し開発するというものが進められております。
最後、総合研究グループ、先ほど5つあるというふうに言いましたけれども、今年度に関しては千島海溝沿いと高リスクというのは今期の計画から始まったものということで少し触れさせていただいております。千島海溝沿いに関しては巨大の地震が迫っているというような長期評価がありますので、そういうことも踏まえて海底地殻変動の観測が開始されたのが昨年度の1つ重要な特筆すべき事項であったというふうに思っております。
一方で、高リスクの小規模噴火ですけれど、現象としては小さいのですが世界的なインパクトが大きいということで、社会科学的なアプローチも必要であるというようなものをまとめとして挙げさせていただきました。
少し長くなりましたが、これで説明を終了させていただきます。

【平田部会長】ありがとうございました。大変ご丁寧な説明で、全般的に橋本委員、日野委員、ありがとうございました。
それでは、ただ今のご説明を受けて少し議論をしたいと思います。まだ、予定された時間、順調に進んでおりますので、十分議論する時間があると思いますので委員の皆さんからただ今のご発表について質問、あるいはコメントがあればお話をご発言いただきたいと思います。ご発言のある委員は、ご自分でマイクのミュートを解除してお名前を言った上でお話していただきたいと思います。いかがでしょうか。では、皆さん考えている間に、私の方で少し感想を述べさせていただきます。

日野さんが最後にまとめられたとおり、1年目としては非常に多くの成果が上げられていると思いますので、素晴らしいと思います。2ページにまとめられたような、この計画全体を俯瞰するような概念図も作っていただけたので、地震と火山の現象について総合的に取り組んで、これを災害の軽減に貢献するところまで持っていくという、このプログラムの趣旨が非常によく分かっていると思いますのでよろしいかと思います。
それで、2ページ目ですが、これにはちゃんと目次というか、何ページのどの図に関係していることということも書いてありますので、非常に分かりやすいと思います。
それから、今は特に強調されませんでしたけど、本文の方には今の図の成果の基になった課題の番号などもきちんと書いてございますので、例えば資料2-1において、図2を引用した本文のところにはそれに対応した課題番号が出ていて、イ.の「考古データの収集と分析」というものの中で図2というところにNAB-01ですか、それを検索していただくと後ろの方に表があって、それをコピペして検索して後ろの方に行くと、それが奈良文化財研究所の番号で課題のテーマがどういうものであるかということがきちんと書いてございますので、次の議題になりますけれども、機関別の詳しい専門的な記載のところに飛んでいくことができます。ものによってはこれがちゃんとした学術誌に出版された文献にもつながっていくというふうになっていると思いますので、一般の方はここまで戻る必要はないと思いますけれども、このデータの取りまとめが全体としてどういう研究の進捗があるかということが非常によく分かる仕組みになっていると思いますので、大勢の方のご努力によってここまでまとめられたことには大変感謝したいと思います。皆さんご意見を、考えがまとまりましたらぜひご発言ください。

【寺川委員】寺川ですけれども、よろしいでしょうか。

【平田部会長】はい、寺川委員どうぞ、ご発言ください。

【寺川委員】中部日本のレオロジーモデルを見せていただいたのですけれども、大変興味深い結果だと思いますが、まず、応力については、これはミーゼスの応力という説明をいただいたのですけれども、報告書の方にはその説明がないので、それをぜひ入れていただきたいと思います。

【平田部会長】日野さんか橋本さん、今のことについては。

【日野委員】そうですね、応力とだけ言っていると何の応力だか分からないということが多分ご指摘だと思います。それで、基の研究成果の方に戻って見たところ、ミーゼス応力を計算しているということが分かったので、今日そのようにご説明させていただいたのですが、一方で、本文の方はあんまり専門的な用語を使わないようにということがあることと、特に、資料2-2のエ.に関してはできるだけシンプリファイしたいという意向があって、それで結果的にミーゼス応力というキーワードを消してしまったわけですが、ご指摘ごもっともだと思いますので、何の応力なのかということが分かるようにするということと、それを必要に応じて用語集にミーゼス応力とは何だということが分かるようにするということも含めて、戦略室の皆さんと相談しながら対応させていただこうと思います。

【寺川委員】ありがとうございました。もう1つ続けてよろしいでしょうか。

【平田部会長】はい、どうぞ、続けてください。

【寺川委員】こちらの図に関連するものなのですけれども、ミーゼス応力というのは、恐らく最大せん断応力の大体√3倍ぐらいの値になるものだと思うのですけれども、このレベルがかなり幅広い、300 MPaというかなり大きな値まで取っているわけですが、一方で、東北沖で推定された差応力というのが15 MPa、これは最大せん断応力に直すと7.5 MPaということで、かなり値に開きがあるというか、東北の場合は大きな地震を起こすところでかなり小さな応力ということを主張したい研究だと思うのですけれども、こちらの中部の方は、むしろプレート境界に近い大きな地震を起こしそうなところですごく何百MPaという値が出ているということで、どちらも重要な研究だと思うのですけれども、まだ、やはり応力のレベルに関しては議論が必要なところだと思うので、その点も確認していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【日野委員】日野です。応力の絶対値に関しては、確かに、私は、実はこのコメントを先に文章でいただいておりまして、われわれの方でも少し検討していたのですが、あんまり正直申し上げて、応力の絶対値が非常に大きいというところ、あるいは、応力が絶対的に低い、コントラストが非常に大きいということについては、あまり重要視しなかったところがあります。その辺は、まだ、モデルの未熟さによるところだと思いますので、現在のところ、カテゴリーとしては、今後の検証が必要というような書きぶりでまとめさせていただいているのですが、もう少し何か特別に加筆が必要だというふうなことでしたら、もう少しサジェスチョンいただきたいです。いかがでしょうか。

【寺川委員】これ以上どうこうというのは、要するに、議論が必要ということを書いていただけているのだったらいいと思うのですけれど、ただ、あちこちで出てくる応力のレベルの値がいろいろ違って、差応力とかミーゼス応力というのは全然違うふうに書かれてしまうと、少し理解するのが難しいので、その点は用語集か何かにまとめていただいた方がいいかもしれません。内容自体は、議論が必要ということが書いてあればよろしいのではないでしょうか。ありがとうございます。

【平田部会長】貴重なご指摘ありがとうございます。この概要というのは、ある意味で地震学や火山学を専門としていない、まさに科学のリテラシーがある人が読んで分かるということが重要ですので、恐らく、最先端の研究ですから、専門家の間でも議論が分かれるようなことも新しい発見として記載していただくことは重要です。そのときに、必ずしも専門家の間のコンセンサスが得られていないようなものについては、記載について少しご注意いただけるといいかと思います。
それで、今、差応力とかミーゼス応力というのも確かに、少なくとも修士課程の学生、1年生、2年生が分かる程度の話にしていただく必要があるので、用語集の方に必要があればきちんと記載していただくということは重要かと思いますので、全体としては非常によく分かりやすくまとめられていると思いますので、ちょっとご苦労だと思いますが引き続きご努力ください。
今日はこれを決定するのではなくて、最後は部会長預かりになってしまいますけれども、基本的にはお認めいただける範囲をみんなで理解し合うというのが今日の目的ですので、今のような貴重なご意見はぜひご発言いただきたいと思います。
橋本さん、日野さん、今の点については対応できますか。

【日野委員】はい。まず、応力ですね、差応力であったりミーゼス応力であったりというのも出てきているので、それはまず用語集の方で吸収するように。丸めてしまうと確かに誤解を招きやすいということがありますので、そこはそのように対応したいと思っております。

【平田部会長】分かりました。地震学や物理の人は応力と言ったときに何か明確に分かりますけれども、応力はテンソルですから、一体何を言っているか分からないと、かえって専門家には分からないということがあるのかもしれませんので、そこをご注意ください。
ありがとうございました。他にございますでしょうか。

【鎌谷委員】鎌谷ですが、よろしいでしょうか。

【平田部会長】はい、どうぞお願いします。

【鎌谷委員】まず、編集を担当された委員の方々どうもありがとうございました。地震・火山噴火予知研究協議会の方々どうもありがとうございました。資料2-1の本文なのですけれども、その資料2-1の、PDFで言うとページが44ページ目、下の方についているページ番号では41ページ目になるのですけれども、それの上の方に地震火山現象のデータベースの構築と利活用・公開というのがあります。そこで気象庁はということでJMA_14の成果を載せていただいています。これにつきましては、さらに少し追記をしていただきたいと思っていまして、
震源の再計算というのを過去の地震について行っており、既に1919年~1921年の過去震源については各地の地震観測原簿等を用いて震源計算を行いまして、2010年1月に公開をしております。
これによって、日本周辺の地震活動について一定品質の地震データが100年以上の期間で利用可能となりました。このような震源再計算の結果というのは、なかなか成果が出ないものなのですけれども、やっと出たということなので、ぜひそれを追記していただきたいと思います。文面につきましては、事務局の方に提出しておりますので、ご検討いただければと思います。よろしくお願いします。

【平田部会長】ありがとうございました。日野委員、大丈夫でしょうか、今の件については。

【日野委員】はい、承っております。軽微ではありませんけれど、追記ということで対応するということで、実際、全体の取りまとめを大園先生にお願いしているところですけれども、大園先生の方も承知してくださっているので、今後、他の軽微なものを直していく場所がありますので、あるいは、先ほどの用語集の件、それに併せて変えさせていただきます。

【平田部会長】ありがとうございます。気象庁の震源データベースについての記載について少し議論がありました。他にございますでしょうか。

【加藤(愛)委員】加藤ですけど、よろしいでしょうか。

【平田部会長】はい、加藤委員どうぞ。

【加藤(愛)委員】図9の磁気モーメント変化率および変化源深度とVUIの対応関係を表す図、資料2-1ですと25ページになります。こちらの図の方で、左の上に向かって火山活動は活発化しているというのは図のキャプションにも書いてあるのですが、活発化の指標というのはすぐに読み取れないかなと今気付きました。橋本委員のご説明によると、この白抜きの印が実際に噴火した火山ということで正しいでしょうか。その数が左上の方が多いから活発化したという説明になるという理解でよろしいでしょうか、確認のためご説明いただけますと幸いです。

【橋本委員】橋本です。お答えします。

【平田部会長】橋本委員お願いします。

【橋本委員】少し分かりにくかったかもしれません。すみません。この左側のグラフでは、薄くて見えにくいかもしれませんが、マークを取り囲むように少し薄めの円が書かれているものがありますけれども、それらのイベントがこのアンレストが起こった後に噴火した事例になっています。白抜きとか中黒とかは特に意味はなくて、違いを表現しているだけになります。

【加藤(愛)委員】何の違いですか。単なる活動の違いとかですか。

【橋本委員】マークの違いです。

【加藤(愛)委員】マークの違いですか。では、この丸についての説明を少なくとも図のキャプションに入れておかないと、ぱっと見た感じでは分からないかなという気がしたのですが。

【橋本委員】はい、そうですね。ご指摘ありがとうございます。

【加藤(愛)委員】あと、丸はもう少しクリアにした方がいいということですね。

【橋本委員】はい、そうですね。あと、ここでは活発化と書いているのですけども、何をもって活発になっているかというのはいろいろな考え方があるので、むしろ、ここで示しているのは、こういったアンレスト事象が起こった後に活発化したという、噴火に至ったかどうかということであって、ちょっと曖昧な表現になっているのですけれども。ここはもう少し分かりやすくできるように図を修正する方向で考えたいと思います。

【加藤(愛)委員】すみません、ありがとうございます。

【平田部会長】ありがとうございました。
今のところで、アンレストという言葉は、火山学では普通に使われている用語なのですか。

【橋本委員】はい、よく使われておりますが、最初ここはアルファベットでunrestと書いていたのですが、片仮名で表記するように後で変えました。

【平田部会長】英語で書いてあれば、restとunrestだから想像はできるけど、カナでいきなり書かれると、少し想像しにくいですね。でも、これは用語集にあるのですよね。

【橋本委員】すみません、用語集に入れていたかどうか確認していませんが、もし入っていなければ入れるようにいたします。

【平田部会長】つまり、1つは、火山学的に明確な定義のある言葉かということと、一般の人というか、少なくとも今日委員の皆さんで火山に関係している皆さんはアンレストと言われたら何のことか直ちに分かる程度の用語なのですか。火山関係は市原委員とか、山元委員かな。皆さん知っていますか。

【市原委員】私、地震でこの言葉は知っていまして、それは大丈夫です。あと、これに関連した質問があるので、今の議論が終わったら質問させてください。

【平田部会長】学術的に明確に定義できている用語であれば問題ないし、それは一般の人というか、私は不勉強で知らなかったのですけれども、英語で言えばrestが休みで、このunだから休んでいないで活発化したという感じは何となく分かっているので、用語集に入れていただければ問題ないと思いますけれども。例えば、山元委員はどうですか。

【山元委員】大丈夫です。アンレストは普通に使います。

【平田部会長】普通に使う言葉ですか。はい、分かりました。では、火山学的には問題ないので、用語集のところに説明を入れてください。では、どうぞ市原委員お願いします。

【市原委員】この変化率ですけれど、符号がある量で、ここに集められているのは全て消磁が進行した進行率だけを集めていると考えていいですか。

【橋本委員】はい、橋本です。そのとおりです。

【市原委員】その場合、縦軸を例えば、温度上昇の昇温を表す磁気モーメントの変化率とかにしてはどうでしょうか。

【橋本委員】そうですね。少し長くなってしまいますけれども、その方が分かりやすくて正確だとは思います。

【平田部会長】分かりやすいということと正確というのは、いつもトレードオフがあって難しいですけれども、基本はこのドキュメントは一般の人というか地震学、火山学以外の人で科学の素養のある人、大体、修士課程の1、2年生程度が、地震学じゃないその程度の科学の人が読んでも分かるということが基本だと思いますので、この担当の方でちょっと議論していただいて分かりやすくしてください。他にございますか。

【鈴木部会長代理】すみません、鈴木ですが。

【平田部会長】はい、鈴木委員どうぞ。

【鈴木部会長代理】今の図の火山活発化指数というのがあまり見ないのですが、もう少し説明を入れていただいたらどうかと思います。

【平田部会長】このVUIというやつですか。

【鈴木部会長代理】はい、VUIです。VEIというのはポピュラーですが、VUIというのは、ああ、こういうのがあるのだと、興味を持たせていただいたのですが。

【平田部会長】私もVEIは知っていたけど、VUIは知らなかったです。

【鈴木部会長代理】分野によって、やはりやっていらっしゃる方はやっていらっしゃる。アンレストも同じで、アンレストは、われわれは知っていますけど、例えば、ハザードマップには出てこない言葉です。一般的にという意味では、少し珍しいかなと。ただ、火山屋としてはよく分かっている言葉です。以上です。

【平田部会長】了解です。すみません、VUIもこれはキーワードだから、多分、本文には説明されていると思うのですけど、ぜひ用語集に載せていただけるといいかなと思いますが、ご検討ください。
今のご指摘は、いいご指摘で、これは「災害の軽減に貢献する」という、このプログラムの名前に変えたということは、災害の軽減に従事している、例えば、人文社会科学の人たちも読んで理解しようという気になるぐらいにしておかないと、全く何のことだか訳分からないというのでは困るので。VUIというのは英語で言うと何の略なのですか。

【橋本委員】Volcanic Unrest Indexです。

【平田部会長】Unrest Indexか。なるほど。じゃあ、アンレストというのがキーワードですね。それでは、丁寧に用語集に書いてください。
図1を見せていただけますか。山形県沖の地震でこれは非常にプリミティブな質問ですが、この断面図は東西断面図なのでしょうか。それとも、何か上の方にはインデックスの絵があって、斜めの長方形があるのですけれども。断面図の断面はどういう方向の断面図なのでしょうか。

【日野委員】頭が慣れてしまっているので、全く言われるまで考えもしませんでしたが、上のインデックスマークの長方形を切っているところに直行する方向であり、それでその地図も上が北ではなく、その直角。

【平田部会長】分かりました。回転してあるわけね。

【日野委員】なので、どうしましょうかね。北マークを地図に書けばいいですかね。

【平田部会長】分かりました。これは直行しているから南北東西に一瞬見えたので、北マークを地図に書くのと、あと断面図も回転しているのだったら回転を入れて、例えば、インデックスマップにA、B、C、Dとか、ともかくこの断面図が東西でないということが分かるように書いてください。

【日野委員】はい、分かりました。幾つか、あまりくどくならないような方法を少し工夫してみます。

【平田部会長】はい。回転しているということがともかく何か分かれば結構です。

【大倉委員】大倉ですけどよろしいですか。

【平田部会長】はい、どうぞ、大倉委員お願いします。

【大倉委員】断面図続きで、草津白根の比抵抗構造の断面図をお見せいただきたいのですが、要点は、深さ方向のスケールを入れた方が分かりやすいのではないかと。右下の図です。

【平田部会長】上には書いてあるのですよね。

【大倉委員】水平方向はそうですね。そこは1対1なのかどうかなのかが、恐らく1対1だとは思うのですが。というのが1点です。

【平田部会長】それは私も同じ意見ですので、ぜひ、1対1ならば1対1と書くか、もしそうじゃなければvertical exaggerationが幾つかというのが分かるように、縦方向の拡大が幾つかと分かるようなものを入れてください。はい、どうぞ。

【大倉委員】もう1点は、非常に細かいことですが、プレゼン用のパワーポイントの2ページ目の図になると思うのですが、「リアルタイム観測日記録」の「日」、これは変換ミスだと思います。右側の上から3つ目ですね。違いますか。

【日野委員】日野です。確認しました。分かりました。

【大倉委員】以上です。

【日野委員】ありがとうございます。

【平田部会長】では、すみません、これはタイポですので直してください。他にございますか。

【高橋委員】高橋です。

【平田部会長】はい、高橋委員、お願いします。

【高橋委員】地震危険度という話があったのですけれども、今、いろいろなところでハザードマップを見るということを地元でやっているわけで、それに比べて課題が何なのかとか、どこが違うのかということを本文中に少し入れた方がいいと思うのですが、いかがでしょうか。

【平田部会長】地震危険度で、これは高い低いというのがいろいろあるのですけど、危険度が何かというのが、これは本文では定義されているのですか。

【橋本委員】橋本です。確か本文には度数というふうに書いてあったと思います。

【平田部会長】恐らくもとの研究では、この危険度とは何かというのが計算しているのですからはっきりと定義されていると思いますけど。さっきご説明があったのかもしれませんが、これはハザードとエクスポージャーか何かを掛けたものなのですか。

【松島委員】すみません、松島ですけども。補足させていただいてもよいでしょうか。

【平田部会長】はい、お願いします。

【松島委員】ここで言っている危険度というのは、基本的にはハザードで、左側は起こり得る最大速度ですので、基本的にはハザードレベルがどれぐらいの頻度で超えるかということを表しているものです。右側については、もしそこに木造2階建ての建物があったとしたら30%以上倒壊してしまう回数は1万回のうち何回あるかというのを示したもので、エクスポージャーはここではまだ掛かっていません。

【平田部会長】分かりました。そうすると、両方とも結局ハザードということか。

【松島委員】そうです。

【平田部会長】分かりました。上の方に確かに地震動最大速度100 cm/s 以上とか、建物倒壊率30%と書いてあるから、それを危険度と言うかというのはどうですかね。

【松島委員】危険度はいろいろな指標があるので、1つでは表せませんので、ここでは最大速度と建物の倒壊の危険性というのを表しているということになります。

【平田部会長】高橋委員、今のご説明でよろしいですか。

【高橋委員】はい、分かりました。そこは理解させていただきました。ただ、いろいろな地図が重なってくると、一般の人が見るには混乱してしまうので、そこをもう少し何か分かりやすくできるといいかなというふうに感じたのは確かです。

【松島委員】例えばどうすればよろしいでしょう。

【高橋委員】どうすればいいですかね。例えば、本文中でまず、今のハザードマップに対して何が違うのかというか、何が課題なのかというところを少し書いてみてはいかがでしょうか。それに対して、木造だったらこう、というような話の展開にすると、もう少し分かりやすくなるかなと思ったのですが。

【平田部会長】はい、なかなか難しい議論になりましたが。だけど図10のキャプションにはきちんと書いてあるから。

【松島委員】ええ、一番の問題はばらつきがあるということが表したいのですね。基本的にハザードを示している場合には、平均値、もしくは何かしらの値を持ってきて、それを1つの固定値というか、1つの値として出している場合がほとんどで、それについてどれぐらいの予測幅があるかというのは示されていませんので、そこについていかに幅があるかというのを表すということにチャレンジしているという状況です。それが一般に分かりやすいかどうかは、まだ、確かにご指摘のとおりだと思うのですけども、示そうとしているのは、そのハザードマップには含まれているようには見えてこないばらつき、予測幅があるのだということを分かってもらいたいというのが一番の大きな趣旨です。

【平田部会長】分かりました。
低いとか高いとかという、このカラーは、結局はシミュレーションをやったときの頻度、1万通りの中で、そのあるレベルを超えた頻度が幾つかということなのですか。

【松島委員】ここで示しているのはそうです。

【平田部会長】分かりました。多分、論文なんかだったらこれは%とか確率らしくされるのだけど、これは分かりやすく高い低いというふうに言われたというふうに理解します。

【松島委員】そうです。本文中にはこれに対してどれぐらいの幅があるかというのを示す図が入っています。

【平田部会長】了解です。高橋委員、今の説明でよろしいですか。

【高橋委員】分かりました。結構です。

【平田部会長】他にございますか。

【井口委員】平田先生、よろしいですか。井口です。

【平田部会長】はい、井口委員お願いいたします。

【井口委員】橋本委員の今さっきの図9の図そのものは、私は非常にいい図だと思っているのですが、説明文のところで1つ気になるところがございまして、先ほどのアンレストの考え方に関して、物の考え方に関わることなので少し気になったのが、特に噴火の前駆現象であるアンレスト事象の定量的評価を目指しているというふうに書いているのですね。そうすると、アンレスト事象は前駆現象であるというふうに書かれているというのは、全てのアンレストが前駆現象ではないので、少しまずいと思っています。だから、アンレストの評価ではインデックスみたいなものが必要ですというのがこの研究の趣旨だと思うのですよ。そうすると、前駆現象であるアンレスト事象というふうに書くというのは、まずくて、多分、特に火山活動の活発化を示すアンレスト事象というふうに、前駆現象とアンレストを分けて説明しておく必要があるのかなと思いました。

【平田部会長】ありがとうございました。今のご指摘は結構内容に関わる話なので、橋本委員、簡単にご説明できますか。あるいは、もう少し議論した方がいいですか。

【橋本委員】橋本から回答します。ご指摘ありがとうございます。実は、ここの部分、私も提出前のぎりぎりのとき、最終版を見たときに、実は少し引っ掛かっていたところなのですけれども、すみません時間足らずで、ここまで手が回っていなかったところです。ご指摘いただいたとおりだと思います。ここは修正したいと思います。

【平田部会長】ありがとうございました。それでは、関係者で議論していただいて修正していただければいいかなと思います。他にございますか。
そうしたら図4を見せていただけますか。階層的地震破壊の実例検討というので、これはまず質問は、井出さんの論文を基に作成と書いてあるのですけれども、これは概念図だとは思うのですが、地震波の波形が出てくるところで、一言で言うと、これはスケールが何かというのが書いていないのですけれども、これは概念図だからスケールがないのだろうとは思うのですが、下に座標のティックはあるのですけれども、一体これは1秒なのか1分なのかというような程度でもいいからスケールを入れることはできないかということと、この波形も、これは完全な概念図ではあると思うけれども、あたかも本物の波形のようにも見えるのですけれども、事実としては、これは実際の観測波形なのですか、それとも概念図として作った波形ですか。

【日野委員】日野ですけれども、この辺の図の簡略化については、戦略室の皆さんにお任せしているので、今具体的にお答えすることができません。どなたか説明できる方が今ここの席におられましたらご説明をお願いできますか。

【平田部会長】では、ご検討いただければよいと思います。概念図ですから概念図で結構なのですけれども、本物はこんなにぴったりいくわけはないと思うので、概念図でいいのですが、マグニチュード4.5以上の地震と、マグニチュード4以下の中小地震を網羅的に比較した結果なんて書いてある以上は、物理次元が入っているので、せめて波形のところに時間軸のスケールを1秒とか0.1秒とか、何かそれはぜひ入れていただきたいなと思います。
それから左の絵も、これも断層系の概念図だと思うのですけれども、これも一体1 km の話なのか、1 cm の話なのかというぐらいは元の論文には絶対に書いてあるはずなので入れていただきたいなと思うのですけれども、ご検討ください。

【日野委員】はい。

【平田部会長】あと、ここだけIde,2019,Natureと書いてあるのだけど、他も全部論文をこういうふうに引用しているのですか。Natureの論文は重要な論文だからこう書きたいというのは分かると思うけれども、平仄を合わせていただきたいなと思いました。

【日野委員】はい、すみません。例えば図3も引用がありますよね。ですが、全体としての統一性はちゃんと取ろうと思います。

【平田部会長】図3にも書いてあるか。分かりました。全体として平仄が合っていれば結構です。

【加藤(愛)委員】加藤ですけど、コメントよろしいですか。

【平田部会長】はい、どうぞ。

【加藤(愛)委員】その図に関しまして、階層的な構造を示す概念図なので、特定のスケールを取ってくるというのは難しいような気がするのですけど、あえてどこかのスケールだけに着目するということですか。時間軸に関しても。

【平田部会長】階層的だから。難しいのですね。

【加藤(愛)委員】階層的ですので、どの階層間の比較に着目するかで絶対的なスケールが異なります。M3からM6を見るのか、M5からM7を見るのかというイメージです。

【平田部会長】だから、少なくともここにはM4.5以上の大地震と、M4以下の中小地震とありますよね。

【加藤(愛)委員】ええ、でもスケールを1つ与えてしまうと、そのスケールに閉じた話になってしまうので、階層的であるというイメージが伝わりにくくなってしまうと思うのですけど。

【平田部会長】ああ、そうですか。

【加藤(愛)委員】概念図なので。

【平田部会長】だけど、概念図でも全くスケールを与えないというのはどうなのでしょう。

【加藤(愛)委員】あるスケールだけを取ってくれば、それはできると思います。そういうスケールは他にも本当はあるわけですよね。M4とM5を比較した場合だけでなく、M5とM6を比較した場合など。なので、どこかのスケール間だけ取ってきてしまうと階層的というイメージが逆に伝わりにくくなるのではないかと危惧します。

【平田部会長】でも、これを書いている人の頭のイメージには、これはkmの話なのか、mmの話なのかというのはあるわけでしょう。

【加藤(愛)委員】そういうオーダーのイメージですか。

【平田部会長】だから、それをもう少し分かりやすくしてはどうだろうか。つまりこれは実験室のスケールのことからフィールドのまで全部をなっているという話にしたいのだろうか。

【加藤(愛)委員】多分そうだと思います。ただ、現実の観測では観測帯域が狭いために、ある限られたレンジでの話しにはなりますが。

【平田部会長】分かりました。断層系と書いてあるのだから、kmスケールか何かだとは思います。だけど、見た人には全く分からないというのが私の懸念です。

【加藤(愛)委員】なるほど。どれぐらいのスケールかが分かればいいということですね。

【平田部会長】そうです。

【加藤(愛)委員】mmではなく、kmぐらいのスケールの。

【平田部会長】そうそう、nmではないということが。

【加藤(愛)委員】nmとか小さいスケールの話ではないと。

【松島委員】すみません、松島ですけれども、そういう意味ではここで上に小地震、中規模地震、大地震と書いてあるので、これは例えば秒だとかというのは入れられるのではないですかね。

【平田部会長】右は入れられるよね。

【松島委員】右は、はい。

【平田部会長】だからそれに対応する左だってあるだろうと、私は思うのですが。

【松島委員】なので、左の図も、この全体の図のスケールが例えば10 km とか、そういうオーダーは入れられそうな気がしないでもないですけど。確かに、この右の図と左の図の表現の仕方が少し違うので対応をどうするかですけど、でも、キャプション中はM4.5以上とM4以下でということになるので、そうすると、この黄色い範囲が小パッチというふうになっていますので、それが小地震に対応するのだとすればここはM4以下の地震だということであれば、例えばここの全体で数kmとか、そういうオーダー感はあってもいいような気がします。

【加藤(愛)委員】ええ、そうですね。ただ、引用元の論文にはスケールが明示されていないので、やはり著者としてはこういうものが全スケールにわたって成り立っているのではないかという思いが背景にあるような気がします。そこを、こちらで解釈して良いのかというのが悩ましいところです。概念ですので、どのスケールでもこういうことが成り立っているのではないかという考えがあると思います。だから、そこにあえてスケールを入れてしまうのは、私は少し抵抗を感じます。

【平田部会長】はい。では、専門家の考えとして、これにスケールを入れるべきではないという強い意見があるのであれば結構ですので、もう一度その関係者と本日の議論を含めて検討してください。

【日野委員】はい、検討してみます。

【平田部会長】 そろそろ時間になってはまいりましたが、他にご意見ございますでしょうか。全体を通してで結構ですので、ご意見ございますか。
そうしますと、特にこれ以上のご発言がなければ、今、幾つか指摘があった事項について検討するものもちょっとありましたけれども、大体合意が得られていますので、引き続き作業はしていただきたいと思うのですけれども、今の議論を含めて事務的に修正するということで進めていきたいと思いますが、そのような方向でよろしいかについてお諮りしたいと思いますので、もう少し何かについてはちゃんと議論した方がいいというようなご意見ございますか。特にこれ以上はないようですね。単なる事務的なことではなくて、内容に関わるようなことも議論されましたが、大体コンセンサスが得られたと思いますので、その方向で事務的に処理をして、関係者でまとめていきたいと思います。事務局、成果の概要の最終版を皆さんに見ていただく時間はありますか。

【上山地震火山専門官】この後の予定としましては、先ほど申し上げましたとおり、ここで議論した以外にも軽微な文言の修正、表現の修正の気付いた点について9月11日(金曜日)まで受け付けたいと思っております。それを反映させたものについては、基本的には部会長預かりとして、委員の方にはそれ以上はお見せせずに公開する予定でした。もし委員の皆さまの方で公開する前に最終確認したいということでしたら、その時間も取らせていただきますが、いかがでしょうか。

【平田部会長】はい、それを皆さんにお聞きしたいと思います。今の議論を含めて最終的に部会長預かりで作業を進めてよろしいか、あるいは、もう一度皆さんにお戻しして確認をした方がよいかということについて2つの考えがございますので、お諮りしたいと思いますが、ご意見ありますか。今の議論を踏まえて基本的には事務的な修正をするという方向で、最終的に部会長預かりでこのまま進めるというのが事務局提案です。ご異議ございますか。特にご異議、ご発言がなければ事務局提案のとおりで、部会長預かりで進めさせていただきたいと思いますがよろしいでしょうか。
それでは、特にご反対ございませんので、これで議題2の成果の概要については審議を終了したいと思います。異議なしというふうに認めますので、これでこの議題は終わりたいと思います。事務局、これでよろしいですか。あと何か聞かなければいけないことは。

【上山地震火山専門官】部会長預かりということで承知しました。

【平田部会長】では、もう一度まとめます。今の議論を踏まえて、事務局の方で関係者と連絡を取って修正をさせていただいて、最終原稿を部会長が確認して決定するということにしたいと思います。ありがとうございました。

[議事3.地震火山観測研究計画の令和2年度年次報告【機関別】のとりまとめ]



【平田部会長】それでは、議事3に移ります。議事3は、機関別ですね、令和2年度年次報告の機関別の部分についての議論に進めたいと思います。では、事務局からご説明ください。

【上山地震火山専門官】先ほど議事2の方で令和元年度の成果の概要について議論いただきましたけれども、今年度も半年が過ぎようとしていますので、令和2年度の年次報告の進め方について、ここでご確認いただきたいと考えております。これも昨年度のものと全く同じで数字だけを変えたものにはなりますけれども、今後のスケジュールについて簡単にご説明差し上げたいと思います。
まず、報告の様式ですけれども、こちらは、昨年度提示したものと全く同じです。令和2年度の成果の概要および令和2年度の成果に関連の深いもので、令和2年度に公表されたものは成果物、論文、報告書等、そして、令和3年度の実施計画の概要ということで、こういった内容について例年同様の様式で報告いただければと思います。
報告の方法ですけれども、こちらも例年と同様地震・火山噴火予知研究協議会の方で準備いただくオンライン入力システムに入力をいただければと思います。
日程の案のところでございます。まず、今回、第37回地震火山観測研究計画部会を開催いたしましたけれども、本日以降、1月中旬ごろにかけましてオンライン入力システムの準備を地震・火山噴火予知研究協議会にお願いする予定でございます。1月下旬以降に各機関により年次報告作成の依頼をさせていただきまして、締め切りは2月中旬から下旬を予定しております。COVID-19の影響でまだ流動的だとは思いますけれども、一応例年どおり3月に成果報告シンポジウムということで予定を入れております。例年同様、年度の最初の部会を4月から5月ぐらい、なるべく早めに開きたいと考えておりますが、そこで年次報告(機関別)の取りまとめを行い、8月から9月にかけて本日と同様に年次報告(成果の概要)の取りまとめを行うというスケジュールにしております。
昨年度は10月に成果の概要の検討のための地震火山部会を開催して、今年は9月に開催しましたけれども、平田部会長からはなるべく早めに成果の概要を取りまとめて公表した方がよいというご意見をいただいておりますので、少し幅を持たせて8月~9月と書いてございます。こういったスケジュール感で考えております。
この取りまとめの方針で問題ないかということについてご了承いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

【平田部会長】ありがとうございました。今、事務局からご説明があったのですけれども、先ほどまで議論していたのは令和元年度の成果の取りまとめをしたわけですけれども、令和2年度とは、つまり今ですね、今年度の成果を来年の今頃また議論をするために、各機関の成果の取りまとめをその前にするということです。令和3年1月下旬に報告書の作成の依頼をして、2月中には報告をしていただく。
それは、3月に成果報告シンポジウムを行う、COVID-19の影響が少なくて対面でできればシンポジウムをぜひやっていただきたいと思いますけれども、その前に機関ごと、つまり研究者としてまとめていただくということを2月にするというスケジュールです。それで、それに基づいてシンポジウムを行って、シンポジウムの中で今年度取り組んでいる研究成果の重要なものについて議論が行われると思いますので、これを夏ぐらいまでには取りまとめて、本日議論したような成果の概要というものをまとめて、これは測地学分科会地震火山観測研究計画部会としてまとめて、測地学分科会として公表されると思いますので、そういうスケジュールでやっていきたいというのがご提案でございます。このスケジュールや方針についてご意見ある方はご発言ください。日野委員、橋本委員にはいろいろとご苦労をかけて、今日までのところでまとめていただきましてありがとうございました。今年度の経験を生かして来年度のスケジュールとして、このようなものでよろしいでしょうか。

【日野委員】日野です。実現可能だろうと思います。ただ、成果シンポジウムがあるかないかで効率が結構変わってしまうので、今後のCOVID-19に対策して、そういう人が集まるという状況がどれぐらいできるかというのが少し影響する可能性はあると思います。今年度は全体の成果報告シンポジウムは結果的にできなかったのですけれども、その前の地震火山部会の集まりは結構できていたのですが、今年度、令和2年度はそこが難しくなるので、そういう意味では努力してこのスケジュールでやりますとは、はっきりとは申し上げにくいところです。やるようにするしかないと思いますが、そういう懸念があるということでお話しさせていただきます。

【平田部会長】はい。関係者は相当ご努力をしていただいて、今日までにまとめていただいて、今日の議論が非常に有効にできたのも、ほとんど全部できている段階で最後のチェックというところで議論ができたと思いますので、また引き続きぜひお願いしたいと思います。場合によっては、オンラインのシンポジウムというのも、今いろいろなところで行われておりますので、少しご検討をいただく必要があるかなと思います。
本日の議事2のところでお分かりと思いますが、非常に優れたというか豊富な研究成果が出ておりますので、ぜひこれは研究を実施しているコミュニティーの外の人に対しても、どのような成果が出ているかということをタイムリーにお知らせする必要があると思いますので、引き続きよろしくお願いします。
必ずしも専門家のコンセンサスが得られていないような、非常に重要な成果もあることは重要ですけれども、もう1つは、専門家の間ではもうよく分かってしまったというようなことについても、研究の成果としてまとめていただけることがあればよいかなとも思います。
本当の学術的な成果については、ぜひジャーナルの論文を執筆していただいて出ていくことが重要でございますけれども、まず、大きな成果としてこのようなことがあったのだというようなことをまとめる概要が出ていくことが重要でございます。本日の議論もかなり専門的な議論もあったし、それから、分かりやすい点、ハザードマップとの関連などについても議論があったように、研究をしている人以外の人がわれわれのグループの研究がどういうものかというのが分かるということも重要だと思いますので、ぜひ成果の概要ではそういうことを取りまとめていただきたいと思います。
このスケジュールやこの方針について、他にご意見ございますでしょうか。それでは、特にご発言がないようですので、これを実際に取りまとめていただく地震・火山噴火予知研究協議会の関係者の方で、大園先生がオブザーバーで参加されていますが、大園先生、このスケジュールでよろしいでしょうか。

【大園准教授】地震・火山噴火予知研究協議会の大園です。お世話になっております。このスケジュールで問題ないです。

【平田部会長】ありがとうございます。このスケジュールで令和2年度のまとめについて、まず機関別の報告書を作っていくということで進めていっていただきたいというふうに思います。どうもありがとうございました。
それでは、これで用意した議事は全て終了となりますので、事務局から連絡をしていただきたいと思いますが、その前に委員の方で、全体を通して意見のある方、ご発言いただけるようなことをお持ちの方はお願いいたします。オンライン開催でなかなか不自由なところもありましたけれども、議論がしっかりできたと思いますのでありがとうございました。それでは、これで全ての議事を終了といたします。事務局から、事務連絡をお願いいたします。

【上山地震火山専門官】事務局、上山でございます。先ほどから申し上げておりますように、成果の概要について軽微な加筆修正、誤記訂正等ございましたら、9月11日(金曜日)まで受け付けますので、気付いた点等、事務局にお知らせください。よろしくお願いいたします。
1点ご連絡ですけれども、毎年実施しております地震火山観測研究における年次基礎データ調査について、今年度もこの後、地震火山観測研究計画の実施機関の皆さまに照会させていただきますので、引き続き皆さまのご協力の方をよろしくお願いいたします。
また、次回の会議の日程については、今のところ開催の有無も含めて未定でございます。また日程が決まりましたら改めてご連絡させていただきますのでよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

【平田部会長】ありがとうございました。それでは、長い間活発な議論をありがとうございました。これでこの会議を閉会したいと思います。本日はお忙しい中ご出席いただきましてありがとうございました。
―― 了 ――

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