地震部会(第16回) 議事要旨

1.日時

平成19年1月9日(火曜日) 15時30分~17時40分

2.場所

学術総合センター 2階 中会議場1~2

3.出席者

委員

 石原、平、長谷川、深尾
臨時委員
 入倉、大竹、笠原、久家、濱野、松浦、堀 貞喜、村上、濱田
専門委員
 伊藤、梅田、小川、金沢、西沢、野津、平田、藤井

文部科学省

 板谷大臣官房審議官(研究開発局担当)、土橋地震・防災研究課長、橋本地震調査管理官、奥課長補佐、本藏科学官、加藤学術調査官 他関係官

オブザーバー

 小泉(産業技術総合研究所)、渡辺(海上保安庁)、堀 高峰(海洋研究開発機構)

4.議事要旨

(1)観測研究計画推進委員会の活動報告

 観測研究計画推進委員会の活動状況について事務局より報告があった。

(2)地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の実施状況等のレビューについて

 「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の実施状況等のレビューについて(報告)(案)」について、観測研究計画推進委員会の平田主査より説明があり、質疑応答を行った。

【委員】
 2005年の宮城県沖地震について、「想定された地震ではないことが分かり、地震防災にも貢献した」という部分があるが、こういう書き方は非常に形式論理だと思う。想定宮城県沖地震はマグニチュード7.4だが、実際に起こったのはマグニチュード7.1だから、それは想定していないというのは非常に形式論である。科学的な論理から言うと、1978年の地震が3つの主破壊域があって、そのアスペリティが3つあって、その1つが壊れたと書かれている。要するに主破壊領域の一部が壊れたと書いてあるのに、こういう書き方をするのは非常に気になる。ここで、もう少し正確に書くならば、「2005年、宮城県沖地震については、想定された地震ではない」と書くのではなくて、「想定された地震の震源域の一部が活動した」と、むしろ肯定的に書くべきではないか。その方が、後ろに書いてある文章によく合っている。「想定された地震ではない」と記述しておきながら、総括的展望の55ページの社会への貢献のところに「貢献した」と書いてあるのは違和感がある。「2005年宮城県沖の地震が想定されていた地震ではないと評価する際に社会に貢献した」とか、「宮城県沖地震が想定された地震の破壊域の一部が活動した」という評価の方が正当な評価ではないか。つまり、肯定的評価につなげるべきである。しかし、これは恐らく、推本との整合性をとるために、このような書きぶりにしたのだと思う。やはりこの場は科学的なレビューという立場をとるならば、そういった防災行政上の評価とは別に書いても良いのではないか。
 46ページの人材養成について、4つほど記述があるが非常にわかりにくい。また、49ページの「今後の展望」で、人材の養成と確保に関して、「任期制の研究職に就いても、その任期終了後に身分の安定した職を得ることが難しく、地震学を修めた大学院生が分野の異なる民間企業等へ流出したり」という記述があり、分野の異なる民間企業へ流出したのを、ネガティブな評価で記述されている。むしろ大学、大学院の教育の成果を民間企業に活かす、つまり民間企業に行くことを積極的に、ポジティブに受けとめる方が良い。だから、もしこれが事実だとすれば、地震学を修めた人間が民間企業にたくさん行っているということは、むしろ成果の1つだろう。これに数字的根拠はないが、もし本当にそうであるならポジティブに書くべきだと思う。地震学を修めれば、どんな分野に進んでも役立つということを誇りに思い、民間企業に行くことをネガティブに書くべきではない。

【委員】
 私も同様に地震防災に貢献したという記述が唐突だと思う。しかも、ここで、地震防災に貢献したということを書こうとすると、かなり詳しく発生確率が変わったとか、そういったことを書かなければならないので、いっそのこと、割愛するというのも1つの方法だと思う。もし、地震防災に貢献したということを書くのであったら、先ほどの意見に合ったようなことを詳しく記述しないと、わからないと思うんです。

【委員】
 アスペリティモデルということが書いてある限りは、今回の地震は想定した地震の一部が破壊したんだというように、正確に書いた方が、アスペリティモデルの意味づけが有効になると思う。そうじゃないと、アスペリティモデルが抜け出してしまうと思う。

【委員】
 要するに、地震防災とは別に、サイエンスという側面からきちんと記述した方が良いと言うことだと思う。ここで地震防災と記述するのであれば、もう少し詳細に記述しなければならないと思う。

【委員】
 先ほどの意見と同意見である。結果的に2003年の十勝沖地震も、結局アスペリティモデルに基づけば、ある意味では東側にあるもう一つのアスペリティが52年に滑ったのではないかという議論が残ったわけである。だから、想定された地震では、調査委員会の部会が開かれていた段階でのアスペリティの理解は、まだ十分ではなかったというところがあって、結果的に2003年と2005年が起きた結果が、もっとアスペリティモデルを適用していく上で、もうちょっと調べる必要があるということを提示したのだと思う。
 それが、2003年の場合には、7割程度まで滑っているから良いだろうと言う考えがあって、2005年の宮城県沖の場合は、これはまだ3割程度で、逆に7割残っている。だからこの部分については、まだ2005年の方が要注意であるという意識がある。実際にここで決めるために、言葉をどう表現すればいいかという提案までとなると、少し難しいけれども、実際に2つの地震が教えてくれたのは、そういうことだったと思う。

【委員】
 調査委員会は、地震が起きた直後に開催し評価をすぐ出さなければいけないが、情報がその後の研究によってどんどん蓄積して、今のような1つの理解があったと思いますけれども、ここにこれほどデータはないから、その時点で調査委員会では評価をして、それを公表せざるを得ない、そういう時間的制約があったので、あのような評価文だったと思う。調査委員会の表現が間違っていたということはないと思うが、より的確な表現があるのではないかという指摘があればそれもまた正しいのではないかと思う。
 しかし、一方でそういう調査委員会の評価文が公表されているという事実を踏まえて、どういう表現が良いか、またこれで適切かどうか、おそらく主張だろうと思う。

【委員】
 それほど気にする必要はないと思う。もしも気になるのであれば、その部分の文面を調整すればよい。

【委員】
 これを、なぜ2つに分けたかというと、地震調査委員会は、長期評価した地震に関連したもので、想定した地震が初めて起きたのは十勝沖地震である。これは想定した地震が発生したので発生確率が変化した。一方、2005年の宮城県沖の地震は、想定した地震ではないという評価を出したために、発生確率は不変である。これが地震防災のための、国として国民に公表した統一見解である。その見解を出すときに、どういう知識があって、それができたかといったときに、ここでは地震予知計画によって考え出されたアスペリティモデルというものが貢献したと、そういう意味で地震防災に貢献したと記述したのである。だから、これは現時点でこの地震がどういう地震であるかということを言っている文章ではないので、私としては、この原文のままで良いと思うが他の意見が多ければ記述について変更しても良いと思う。

【委員】
 地震防災ということをどのようにとらえたかで、多分、調査委員会がある種の行政的判断を下すときの根拠として、アスペリティモデルにもいろいろあるというようなことを踏まえて、ある種の施策を指導することに貢献したのであって、防災そのものに役立ったのではないのではないかという気がするけれども、行政的判断をするに当たり役立つというか、根拠を与えたのだと思う。根拠を与えたからといって、どうして防災をやるかは、私にはわからないというのではないので、唐突であるという意見はそういったところから出てきていると思う。だから、「地震防災」という言葉をもう少し、きちんと定義すれば良いのかもしれない。

【委員】
 推進本部が当面推進すべき4つの課題は何のためにやっているかというと、地震防災のための地震調査研究というのが定義であって、そのうちの4つのうちの1つが、地震予知計画である。地震予知計画は国民の命を守るという観点からは、直前予知ということが究極の方法であると記述したが、直前予知ができない段階でも、地震像を確定する、つまり3つのアスペリティがあるうちの1つが壊れたので、本来想定していた地震より単に規模が小さかったということではなくて、宮城県沖の地震は、3つのアスペリティが1つしか壊れていないで、本体である2つはまだ残っている。それから、十勝沖地震は、マグニチュードは少し小さかったわけだが、これは基本的に想定していたアスペリティが壊れたという、そういう見解をとったわけである。そういうことができるようになったのは、第1次地震予知計画で、プレート境界の地震がどういうものであるかということがわかったから初めて評価できたわけで、推進本部は、その時々の判断をしているけれども、その科学的根拠を与えたのは地震予知計画であるということを書きたかったので、ここでわざわざ記述した。わかりにくいと言う意見があればそのとおりかもしれない。適切に修正したい。

【委員】
 先ほど意見があった、優秀な学生が民間企業に流出してしまうという部分についてはどのような記述にするか。

【委員】
 難しい問題である。確かに民間企業に流出したという考えもあるが、この分野が民間企業に優秀な人材を供給したという考え方もある。火山噴火予知計画のレビューについても同時並行で進行中なので、両方とも書きぶりをあわせる必要がある。検討した上で必要に応じて修正と言うことにしたい。

【委員】
 今後の展望だが、58ページの前駆的滑りの検知、これは重要だということで、それの技術革新等をするということをうたっており、今後次の計画にも関連するのだが、その前に書いてある地震発生確率の高い地域での研究というのは重要だと思う。それで、地震調査委員会でも、実際には東海・東南海だけではなくて、日本全体をしっかりと評価すべきだということで、海溝の地震に関しては全部評価したわけである。その結果として、千島海溝、例えば根室沖、あるいは今の三陸北部などというのも、当然、東海・東南海の確率とほぼ同じくらいの値を持っていて、そこがここに明記されずに落ちているというのは、非常に残念なことである。もし、このままで次の計画が東海や東南海のみに重点を置くような形で進んでしまうと、東海・東南海の地震以外の地震が起きた場合に、また別な場所で起きてしまったというような話になって、実際に前駆的滑りを観測してみようという計画そのものが、崩れてしまうような気がする。ぜひ、この部分にそういった調査委員会の結果を踏まえた、発生確率の高い地域というものは、明確に名前を挙げておいた方が良いと思う。

【委員】
 同じ意見だが、この根室沖や三陸北部については、かなり高確率であるわけだが、そういうところでの研究というものを重点的に進めるということは、東南海・南海にかけている勢いのある部分を、もう少しそちらにも割いておかなければならないと思う。

【委員】
 これは、確率の高い地域にやるということを書きたかったのであって、例示として書いただけである。ここに記述が無いからといって、その地域については研究をしないということでは全くない。

【委員】
 第1次新計画、第2次新計画というのは、基本的には全国まんべんなく観測研究を行うということと、地震予知の発生過程の中で位置付けて研究するという戦略をとってきて、そこで集められたデータから発生確率の高い地域というものを出したわけである。直前過程の研究に、そういったものを積極的に使うということにしだしたわけであり、根室沖や三陸北部について、どうしても記述した方が良いという意見が強ければ、検討しなければならないだろう。

【委員】
 ここの展望をどう位置付けるかということだと思う。現在検討しているのはレビューであり、東海と東南海地域を特別に取り上げておりそれに関してコメントするというのは、特に不自然なことではないと思う。先ほどの意見で危惧されていることは、この部分をレビューに記述することによって次の建議でどれだけ影響が出てくるかということであると思うが、レビューであるということを考えると特段気にしなくても良いのではないか。

【委員】
 時間もないので、今までの意見を踏まえ再度検討していただくということにしたいと思う。

【委員】
 41ページの修正履歴の箇所で「旧浜岡観測点(BM2595)」とあるが、この「BM2595」というのが不必要かと思う。記述があっても、読み手からすれば何のことか良くわからないので、削除した方が良いのかもしれない。

【委員】
 同じことが43ページにも記述されている。もし残すのであれば、例えば観測点番号であるとか、分かりやすいように注釈をつけるなりすべきである。
 事務局としてはどうか。

【オブザーバー】
 分かりやすく記述すべきであると思うが、委員の中で検討していただき必要に応じて削除、修正ということで良いと思う。

【委員】
 計画実施者の間では、観測点番号にも愛着があると思うが、こういう性格の名称なので、必要ないと思う。

【委員】
 58ページの下線が引いてある箇所の次の文章「しかし、例えば2003年、十勝沖地震のように前駆的滑りの規模が現在の地殻変動による検知限界を下回る場合もあり」という箇所についてだが、「十勝沖地震のように」と書かれているので、「十勝沖地震が前駆的滑りの規模が小さかったために検知できなかった」と読めてしまう。だがそれは真実ではなくて、単に検知できなかったということだと思うので、ここを「前駆的滑りが現在の地殻変動観測による検知能力から検知しなかった場合もあり」とか、そういった表現に変更する方が正確だと思う。

【委員】
 資料(8)の2ページ目の項目15、「現実的な摩擦構成則に変えた」とあって、もっと正確に「現実に近いと思われる」という表現になっているが、これでもまだ断定的な言い方のような気もするがどうか。

【委員】
 「現実的な」というのは、プラティカルも含めてそう記述したが、折衷案として「現実に近い」にしたのだが、どうだろうか。判断が難しかったので、他の委員の意見に従いたいと思う。

【委員】
 「現実に近いと思われる」という表現と、「現実的に」という表現はどちらも現実的と思われる。元の通り「現実的な」で良いのではないか。

【委員】
 8ページの箇所で、福岡西方沖の地震に関して、結構詳しく評価が記述されているが、正直なところ結論が良くわからない。最初に書いたのが恐らく結論だと思うが、「警固断層の延長上で発生した」というように警固断層の一部で地震が起こったというような内容で良いと思う。しかし、その後、いろいろとわかりにくいことが記述されており、少なくともレビューの表現としてはわかりにくく、書き過ぎという気がする。ここに記述されていることは正確だとは思うが、ここでいろいろなことを記述してしまうと、つまりここで何が言いたいのかという結論がわかりにくくなってしまう。結論は一番最初に書いてあり、続けて走向がずれているけれども、余震分布は一致しているという2つの違った見解・事実が書かれているが、この表現でよいか。

【委員】
 確かに、途中の文章で、疑問的なことが書かれていたりしてわかりにくい。担当委員と事務局で検討して頂きたい。

【委員】
 用語集の中の、蛇紋岩の箇所で「水を含んで変成した」とは、余り使わない表現かと思う。おそらく「変質」だと思うが、これについては、私の方で調べて必要に応じて修正したい。

【委員】
 「ボアホールによる地下深部計測技術の開発と高度化」という項目が43ページにあり、その6行目くらいに「絶対歪計」という表現が出てくるが、おそらくこれは、前のページにある「レーザー計測方式絶対歪計」のことだと思うが、ほかにもレーザー計測方式距離変換計だとか、インテリジェント型ボアホール歪計という記述もあるので、「絶対歪計」も用語集に加えた方が良いのかと思う。この43ページには「絶対歪計」としか出てこないがおそらくこれは「レーザー計測方式絶対歪計」のことだと思う。

【委員】
 少し検討してみるが、レーザー式の絶対歪計という用語がないので、文章まで修正しないと用語集に入れることができないのではないか。

【オブザーバー】
 41ページ「ボアホールによる地下深部計測技術の開発と高度化」の6行目くらいに記述がある。おそらく「レーザー計測」のことかと思う。

【委員】
 どのように対処するかは、事務局と相談の上検討させて頂きたい。

【委員】
 66ページの一番最後の部分に「データ同化」という用語があるが、あまりにも「データ同化」という用語の解説として適切でないと思う。今この場で、代案を申し上げることはできないが、これは余りにもどうかと思うので是非ご検討頂ければと思う。

【オブザーバー】
 関係各委員と相談の上、代案を検討することとしたい。

【委員】
 なお、このレビューについては今後、測地学分科会、及び科学技術・学術審議会総会の審議を受けて最終決定と言うことになる。なお、最終決定に先だってレビューの概要等を作成したいと思うが、これについは部会長一任とさせていただきたいと思うがよろしいか。(意見なし)
 また、本日の検討事項となっていた箇所については、事務局及び関係委員で検討の上、後日、各委員にお示しするということにしたいと思う。

以上

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)