平成18年11月16日(木曜日) 10時~12時30分
三田共用会議所 4階 第4特別会議室
石田、石原、平、長谷川(部会長) 臨時委員 入倉、大竹、笠原、久家、松浦、山下、浦塚、堀、村上、加藤 専門委員 梅田、大久保、小川、金沢、金田、西澤、野津、平田、藤井
土橋地震・防災研究課長、本藏科学官、加藤学術調査官、他関係官
小泉〔産業技術総合研究所〕、吉川〔気象庁〕
○委員 △事務局 □オブザーバー
冒頭 事務局より資料(1)の前回議事録(案)について、意見がある場合には11月23日までに事務局あてに連絡をいただくよう説明があった。
観測研究計画推進委員会の活動状況について、事務局より資料(2)、資料(3)に基づいて報告があった。
観測研究計画推進委員会にて検討されている地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の実施状況等のレビュー草案について、これまでの作業経緯を資料(4)、資料(5)、参考資料(1)-1、参考資料(1)-2、参考資料(2)、参考資料(3)-1、参考資料(3)-2に基づいて事務局より説明があった。
続いて、レビュー草案の概要について、観測研究計画推進委員会の平田主査より説明があり、審議を行った。
主な意見は下記の通り。
委員
今回のレビューの目的、その実施方法についてはここに書かれているとおりだと思うが、今後の地震予知研究の発展を考えるならば、関係機関からの報告や現在のプロジェクト研究から漏れたもの、そしてその中に存在する地震予知に関する重要な研究成果について、きちんとした目配りがぜひとも必要だと思う。
委員
最初のところで、この3つの地震を選択した理由は何か。福岡県西方沖の地震についても、今後の対応を考える上で対象になるのではないか。
委員
選択した基準としては、まず地震予知研究の中で重要な成果があったか、あるいはその研究についてその成果が今後重要であると分かったものとした。プレート境界については二つあり、一つは長期評価されている地震が実際に起きたもの、もう一つは長期評価されている地震とは違う地震が起きたもの、それから内陸の地震については被害が比較的大きかったものを一つ取り上げた。
委員
確かに成果を強調するということは必要だと思うが、現に福岡県西方沖で地震が起き、また、今後起きる可能性がある中で、特記事項に入るのと本文中での記載では、扱いの印象が違ってくる。
委員
地震の数を絞ることも重要だと思う。ただ、理解がどのように進んだかを強調するのであれば、むしろ3つの地震をまとめて、その前書きで、どういう理由で取り上げたかを書けば良いのではないか。
委員
この3つの地震を選んだ他の理由としては、この研究計画が社会にどう貢献したかを記述するにあたり、地震調査研究推進本部地震調査委員会の長期評価にこの地震予知計画がどう貢献したかを明確にしたかった。その一つとして、一番アピールできるものが十勝沖地震であり、また、長期評価した地震でないものとして宮城県沖の地震を取り上げた。
委員
最初の頃の事項に出てくるのが気になる。実施状況の最後の方か総括的評価に出てくるのであれば理解しやすい。今までの対応状況等を説明し、その成果として具体的な例を出すのであれば良いのではないか。
委員
読んだときの分かりやすさはあると思う。ただし、地震予知計画を科学技術の中での位置付けで考えてみると、地震ごとにまとめるというのはあまり良くない。むしろ重要な成果の概要として、3つの地震を例にまとめてもらうと分かりやすい。
委員
今回のレビューは、今までよりも分かりやすさや成果を強調しており、見た感じは座りが悪いようだが、強調したスタイルはいいのではないか。今までのスタイルに固執する必要はないと思う。
委員
十勝沖地震に関して、「マグニチュード6を超える前駆的滑りは発生しかなかった」という重要な指摘がされているが、言いっぱなしになっている。したがって、海底観測や地殻変動観測の重要性を強調する一言があるべきではないか。
委員
新潟県中越地震に関連し、日本海東縁部に地震空白域があるとの指摘が以前からされていることについては、できれば盛り込んでほしい。
委員
P6の削除された「ゆっくり滑りがその後の地震に影響を与えた可能性がある」ということは、重要な現象なので残してもらいたい。「加速した」は言い過ぎかもしれないが、ゆっくり滑りの存在や進行など、ゆっくり滑りが影響を与えたということは残してほしい。
委員
P8に変動地形学等から地震発生の可能性を指摘できるとの記述があるが、一般化するのは性急なので記述には注意が必要である。ここで書かれている内容は、書いている人が思っている以上に大きな波及効果がある。
委員
全体的に分りやすくまとめられているが、周辺状況についても適切な目配りをお願いしたい。例えば、この予知研究事業に参加していない機関においても重要な成果が出ているものなどがあれば、今後の計画に反映するなり反映させないなりの評価をすることが必要なのではないか。具体的な例としては、大きな地震が発生する前の地震活動への潮汐レスポンスの変化である。これの最近の成果としては、2004年のスマトラ沖巨大地震である。この超巨大地震は誰もが予測していなかったが、防災科学研究所の田中佐千子さんが後から調べてみると、その地震発生前から顕著なデータが確認された。もう一つは、八ヶ岳天文台の串田氏によるFM電波観測に基づく地震予知は当たったのか、関係資料に基づき気象庁の近藤さやさんが調べている。このような仕事は予知研究関係の誰かがやるべきだったのではないかと思っている。そのような事案についても検討し、統括的なところかその他として評価してもらいたい。ここで挙げたものは、あくまでも例示である。
委員
潮汐レスポンスについては、地震学会でも賞を出しており重要性はあると認識している。それを地震予知計画としてどう位置付けるかが一番難しいところである。そういうものについても検討したい。
委員
P62「想定東海地震は一定の条件が満たされているときに可能」というように具体的に言えることが地震予知の到達点を示すことになると思う。一定の条件とは何か。
委員
一定の条件とは気象庁で想定されているシナリオに従って地震が起きる場合には予知可能であるとしている。
オブザーバー
これは3条件であり、まずプレート境界において前駆的スリップあるいは前兆的な滑りが発生して物理的な説明ができること、それからその滑りを捕捉する観測体制が敷かれていること、そして3つめはそのような前兆滑りが起こる時間的スケール、それから大きさが観測可能な程度に発生した場合である。
委員
アンケート調査のときとは、状況が変わってきているものがあると思う。例えば、P57の低周波地震について、ごく最近の研究では低周波地震と呼ばれるものはここに書いてあるようなものでなく、短期的ゆっくり滑りに伴って起こるという研究成果も出ている。表現ぶりも検討する必要があるだろう。
オブザーバー
P62の予知の実用化について、ここでは一般には困難であると書いているのであり、東海地震は例外であるということをニュアンスとして残しておくべきではないか。
委員
一次のレビューや二次の建議には、かなり予知の実用化は困難であると前面に出ていたので、それを意識して表現を変えていったつもりだったが、委員の皆さんの意見を伺いたいと思う。
オブザーバー
気象庁で、東海地震の新しい情報体系になったのが2004年1月だったと思う。そこでは予知できる場合と予知できない場合の条件が明示されていることからも、前回レビューから5年経ってここに書くのは問題ないと思う。また、今後の展望にいきなり書いてあるのもおかしい。今後の展望のところで、一般には困難であると言い切ってしまうのはどうか。
委員
「成果の社会への貢献」のところだが、この建議の総括的評価をするという観点で社会貢献を書くとすると、もう少しこの他にもあるのではないか。ひとつは、この地震予知計画が日本の科学技術への波及効果としてどういうものがあったのか。地球惑星科学など他分野に対する波及効果があるなど、社会的貢献があったと説明できないか。また、人材養成や教育、例えば防災教育という観点から成果があったなど、もう少し広がりのある社会貢献を意識してもらえるとありがたい。
事務局
東海地震についてだが、一定の条件が整えば、予知が可能だということは気象庁でも示してもらっているし、データを細かく調べた上での結論だろう。こういうことが出来たのも「新たな地震予知研究計画」の一つの成果だと思う。つまり、どんな現象が予想されるのか、どのような物理モデルがあって、その物理モデルから期待されるものは何なのか、それを検出できるのか、できるためにはどのような観測点分布が必要なのかなど、総体的に考えて気象庁が結論を出している。それが現在の体制であり、「新たな地震予知研究計画」の前の経験的地震予知に頼っていたころとは違い、物理的な地震現象の前兆的滑り・プレスリップに基づいた科学的な体制になってきた。検出可能な場合が出現したならば、確かに検出できるようなシステムになっていることが大事である。東海地震は今の計画に全く沿っている形である。そうではなくて、予知は非常に難しくわけが分からないのであれば、取ってしまえばよいと思うが、今の予知計画に沿ったものになっているのであれば、前回の第一次レビューのときに、いろいろな議論があったと思うが、そこは慎重に取り扱わないといけないのではないか。
オブザーバー
今議論されているのは、「予知の実用化」のあり方だと思うが、最後の文節に「地震発生に至る直前過程や断層破壊の規模依存性の理解が不十分である」と否定的なトーンで終わることに問題があるのではないか。むしろ、逆に、観測体制を十分にする、観測精度を上げる、直前過程や断層破壊の規模依存性などの理解をより深めることが地震予知の実用化に繋がるという書きぶりにしてはどうか。
委員
予知の実用化が、先ほどの「新たな地震予知研究計画」の成果という魅力的な考え方もあるが、その後の地震予知に必ずしも成功していないというのは、ある意味致命的ではないか。なぜ致命的なものになってしまったのか、致命的なものとしてその原因が何なのか、実用化のためにはどうすれば良いのか、などを検討する必要があるのではないか。
事務局より資料(6)、資料(7)に基づき、各委員に対してレビュー草案及び参考資料にかかる意見の提出依頼がなされるとともに、今後の作業予定について説明があった。
事務局より参考資料(4)に基づき、7月18日に地震調査研究推進本部政策委員会総合的かつ基本的な施策の評価に関する小委員会がまとめた評価書について報告がなされた。また、今後の議事録の承認手続きについて、確認がなされた。
以上
研究開発局地震・防災研究課