火山部会(第19回) 議事要旨

1.日時

平成18年11月27日(月曜日) 13時30分~15時40分

2.場所

三田共用会議所3階 第3特別会議室

3.出席者

委員

 石田、石原、平、深尾
臨時委員
 鎌田、清水、千葉、平林、藤井(敏)、渡辺、浦塚、鵜川、加藤
専門委員
 大島、武井、巽、田中、中田、藤井(直)

文部科学省

 土橋地震・防災研究課長、本藏科学官、加藤学術調査官 他関係官

オブザーバー

 篠原(産業技術総合研究所)、今給黎(国土地理院)、山本(気象庁)

4.議事要旨

(○…委員、△…事務局、□…オブザーバー)

(1)第7次火山噴火予知計画の実施状況等のレビューについて

 第7次火山噴火予知計画の実施状況等のレビューについて、事務局よりこれまでの作業経緯について説明があった。引き続き、火山噴火予知計画実施状況等レビュー委員会の藤井敏嗣主査よりレビュー草案の内容について説明があり、審議を行った。
 主な意見は下記の通り。

「1.前書き」

委員
 1ページの第4パラグラフに三宅島の帰島の記述があるが、これについては、全島避難後の観測の継続によって、その後の島民の帰島へと結びついたということを明確に記述すべきである。

オブザーバー
 同じく第4パラグラフの冒頭についてだが、どうしてこの部分に雌阿寒岳の記述があるのか。

委員
 今次計画で噴火のあった火山について、北から南へという順番で記述しただけである。

オブザーバー
 雌阿寒岳の噴火は小規模で、火山噴火予知研究の進展といった観点から考えると記述するような成果はなかったと思うが。

委員
 雌阿寒岳のように小噴火であっても、噴火から終息までのデータが得られたということからこの部分に記述したまでで、特に画期的成果があったから記述したわけではない。噴火予知の進展に関し、データが得られたということからすれば記述しても問題ないだろう。

委員
 記憶が定かではないが、広帯域地震計により小噴火に伴う減圧が見つかったのではなかったか。

委員
 一点の広帯域観測でも、しっかり観測していれば現象がとらえられるということが分かった。雌阿寒岳の観測網は、噴火予知計画で整備されたものであり、このような観測網が無ければ現象がとらえられなかったということから考えると、主査が言うように載せておいて良いと思う。

「1.火山観測研究の強化」

委員
 8ページの下から5行目について、「機器の近代化が進まない問題を抱えている。」という部分については、言葉足らずで補足説明がないと分からないと思う。この部分の前には、センサーやデータロガーが開発されたと記述されているので、もっと分かりやすく記述すべきである。

委員
 「比抵抗」という言葉についてだが、「電気比抵抗」と記述しなければ分かりにくい。

事務局
 この会議のコンセンサスが得られれば、どちらでも良いと思う。

オブザーバー
 この部分については、レビュー委員会でも議論になった。通常は、「比抵抗」だと思うが、一般には分かりにくいので「電気比抵抗」と記述するようにした。もし、「比抵抗」という部分があれば、修正し忘れた箇所であると思う。

「2.火山噴火予知高度化のための基礎研究の推進」

委員
 11ページの下から1~2行目について、1888年の磐梯山での超長周期震動のことが今頃になって分かったのか。

委員
 最近超長周期震動が観測され、それが1888年噴火によって生じた火口の深さ5キロメートルで励起されていることが分かったということである。誤解を与えないように分かりやすく記述するようにしたい。

委員
 9ページの6行目「(1)噴火の発生機構の解明」という表題についてだが、「解明」という言葉は、非常に強い言葉であると思うが、どうしてこのような表現にしたのか。

委員
 建議の柱立てがこのようになっているためである。

委員
 「時間変化の把握」ということに関して、どれだけの成果があがったかということがきちんと記述されているか。

委員
 十分な成果としては、記述できなかった。時間変化を把握するためには構造探査を繰り返して行うことが必要だということが要因としてある。実際に繰り返して行った火山もあるが、今の構造探査の能力では、2キロメートル程の深部までしか把握できないので、それでは繰り返し実施してもなかなか成果が得られないということが分かった。もしくは活動が高まっている時期に実施できればよいが、ほとんどの火山では、活動が静穏化している時に構造探査を実施しているので目に見える成果にはなっていない。

「3.火山噴火予知体制の整備」

オブザーバー
 24ページの1行目に「火山学を志望する大学院生が少ない状況が続いており、見通しが明るくない」という表現があるが、なぜそのような状況が続いているのか、どうすれば見通しが明るくなるのかを記述すべきである。つまり、法人化によって、火山研究者の将来の展望が見えにくくなっているのであればそういったことを記述すれば良いということである。また、25ページの7行目の「観測研究に対する考え方が両協議会では大きく異なる」という部分について、どのような違いがあるのかを記述すべきである。

委員
 「見通しが明るくない」という部分については、必ずしも法人化とは直接関係はないが、学生が博士課程まで進んでもその後の研究職としての就職先がほとんど無いという事実がある。また、固体地球科学分野については、全国的に学生数が減っている。そのため、火山の分野だけでどうにかする方策がないという意味でこのような記述にした。また、地震分野と火山分野で観測研究に対する考え方が異なっている点としては、地震分野については、精度の高い基盤観測網が整備されており、それに大学は機動観測で補充して行ける状況にある。火山分野については、大学の観測点の精度が良く、気象庁の観測点の精度がそれほどでもないということがある。こういった違いがあるので、観測データへの思い入れも異なる。これらをどの程度記述していけるか、今後、レビュー委員会で議論を行っていきたい。

委員
 24ページの2(ウ)の中央防災会議の指針の箇所についてであるが、この部分については、富士山が最初の例で、今後他の火山についてもこういった指針ができてくると理想的であるということを表現したかったのか。

委員
 内閣府で火山情報に関する検討会のようなものが立ち上げられており、現実問題として進みつつあるように思う。ただ、ここではそのことを言いたかったわけではなく、ここまで防災対策として火山情報が重視されているとなると火山噴火予知をより高度化しなければ、責任が果たせなくなるということを記述したかった。

委員
 そうであるならば、この部分についてはもっと強調した表現の方が良いのではないか。

委員
 この部分で記述するよりも、むしろ総括的評価で強調している。

「3.第7次計画の総括的評価」

委員
 火山の数についてだが、「108」や「80」のように色々な数字が出てくるが、もう少し一般にも分かりやすく記述すべきである。

委員
 108というのは気象庁が定めている日本の活火山の数である。それに対して80というのは、それらのうち北方領土であるとか、海域の火山を差し引いた、現に陸上で監視している火山の数である。

委員
 海底の火山についてだが、水中音による監視というのは、行っているのか。

委員
 現在、活火山の周辺には置かれていないと思うが、海上保安庁によりある地域に、ある時期、実験的に配備されたということがあったかと思う。

委員
 58ページの6~8行目が文のつながりが悪くよく分からない。要するに、気象庁の観測網を大学並みの精度にするべきであるということだと思うが、気になるのはこの部分の少し前に大学の観測研究の弱体化が予想されると記述されていることである。この部分についてももう少し整理した方が良い。

委員
 大学の観測網と記述されているのは、かなり質の良いものについてであって、この部分はむしろ防災科学技術研究所の観測網とした方が良いのかもしれない。

委員
 第3期科学技術基本計画では、安全・安心のための科学技術が強調されている。その中には津波等の自然災害についても随分と記述されており、おそらく火山噴火についても記述されていると思うが、そういった中で火山分野について明るい兆しというものはあるのだろうか。

委員
 地震については、記述があるが、火山についてはほとんど記述がなかったと思う。それよりも、富士山が中央防災会議で取り上げられたことがむしろ画期的である。地震や津波は、中央防災会議でたびたび取り上げられてきており様々な施策が実施されているが、そもそも火山は、ローカルな災害ととらえられてきた。富士山だけは、広域に関わるという認識を内閣府も持っておりそれでこのような第一歩になった。

委員
 科学技術基本計画については、策定の際に長期間の検討が行われたと思うが、その中で火山について議論はされなかったのか。

事務局
 確かに、地震については、それなりに記述されているかと思うが、火山については、ほとんど記述されていなかったと思う。策定の段階で科学技術・学術審議会で十分な議論がされなかったのが原因かもしれない。安全・安心という分野が重要であるということになっているが、火山までは目配りがいってなかったのかもしれない。

委員
 経済的な波及効果という観点から、火山噴火はローカルな話として取り上げられなかったのかもしれないが、火山噴火については、噴煙の拡散による航空機の被災など火山灰が広範囲の多くの人を巻き込む可能性があるといった認識が日本では薄い。

委員
 58ページの9~10行目に「大学の観測はより実験的かつ開発的なものに重心を移し、基礎研究を更に強力に推進する方策を考えるべきである」という部分があるが、これをレビューに記述するということは、何をどこに対して言っていることになるのか。一般的にそうであると言っているということか。その次の文の、「政府が、新たな組織を立ち上げることが必要」という記述については良く分かるが、当該部分については大学に対して言っているのか。

委員
 大学の研究者に対してと、社会に対しての両方である。社会に対しては、大学の観測研究が監視観測の一部として既に織り込まれているので、大学が監視観測の一部を削減して、機動的な観測に移したいと思ってもそれすらできない状況になっているということを言いたい。それが基盤観測網として整備されてしまえば、大学としてももっと自由に観測研究を行うことができる。大学の研究者に対しそういったことをもっとやるべきであると言っている意味と、そういった状況を作り出すことは大学だけではできなくて社会として構造を作っていかなければならないと言っている意味の両方がある。

委員
 このレビューの重要性はもちろん認識しているが、どれほど影響力のあるものなのか。もし影響力があるのであれば、この部分についてはもっと強い表現で記述しても良いと思う。

委員
 この部分については、非常に気になる部分である。意図していることがきちんと言えているかということに十分に注意を払わないと、大学は基礎研究だけを行っていれば良いと制約をかけられているようにも取れる。

委員
 問題提起のつもりでこのような記述にした。このレビューを受けて次期計画を策定することになるが、次期計画でしっかりとしたものを盛り込んで欲しいという意味を込めてあえてこのように記述している。もちろんこれらが実現するかどうかということは分からないが、火山噴火というものがローカルな災害ではないという認識をしたのであれば、もっと国として手当をすべきであってそのためにはこの部分で何かを記述した上で、次期計画で実行してもらわなければならないというのがレビュー委員会の判断である。記述したからといって変わるかどうかは分からないが、ここで記述しなければ何も変わらないだろう。この部会で、もっと別の記述が良いというのであれば、次回のレビュー委員会に持ち帰って検討し直すことになる。

事務局
 この部分については、注意深く扱うべきである。議論の中で地震と火山の違いの話が何度か出てきたが、地震も火山とそれほど違っているわけではない。ただ、地震については、1995年の兵庫県南部地震後に法律に基づき地震調査研究推進本部が設置され調査研究を推進しているが、火山についてはそういったものがないというのが大きな違いである。地震についても、それ以前には、大学がモニタリングなどについて大きなウェイトを占めていた。基盤観測網ができたことによって大学は防災という観点のモニタリングについては比重が少し軽くなり、研究の方にシフトしているように見えるけれども、現在でも基盤観測網の一部に協力している。データ流通についても、大学はその中に入って、気象庁、防災科学技術研究所、大学と三者間で流通体制を形成している。火山については基盤観測網が無く、気象庁が基本的に防災について担当するということになっているが、基礎となる観測体制については気象庁だけで必ずしも良いものができているわけではなく、防災科学技術研究所が一部を担当し、また大学が果たしている役割というものは非常に大きい。基盤観測網が無く将来の見通しが立っていない現状において、大学は基礎研究だけをやっていくというので本当に良いのだろうか。そういった状況で大学が基礎研究だけをやっていくということを言ってしまうと、火山防災についてはどこがどうすれば良いかということが曖昧になってしまう。基盤観測網の必要性は訴え続ける必要があるが、現状では大学の役割は非常に大きく、研究が主たる目的ではあるが、その成果は相当程度現実問題として活かせるという視点が必要だと思う。そこで訴え続けることによって、地震とはまた違うモニターつまり定常観測するところができて、大学と役割分担するという長期的展望が必要であると思う。

委員
 この部分については、基礎研究に専念するというようなことを言っているわけではなく、むしろ今の噴火予知研究のレベルが実用化まで到達していないので、基礎研究のレベルを上げなければ火山情報の高度化ということは図れないということである。別に定常的な観測を放棄するということではない。前にも出てきたが、中央防災会議の「富士山火山広域防災対策基本指針」で火山情報を明確に位置付けたということは非常に重要な意味があり、火山情報を高度化せよと国が言っていることと等しい。現状のまま火山情報を出していたら本当に使い物になるかどうか疑わしいと思う。そういった現実のもと、中央防災会議に応えるとしたら今すぐにでもやらなければならないという意味である。火山噴火予知のレベルアップのためには、大学の基礎研究のレベルが上がらなければならない。それを保証するためには何らかの体制的なものが必要であるということである。その部分は誤解がないように今後検討していきたい。

オブザーバー
 地震調査研究推進本部に当たるものが記述されていることは極めて大事である。研究者側からこういった必要性を訴えていくことは非常に重要であると思う。この部分についてはもう少し強く記述しても良いと思う。

 続いて、事務局より「資料(3)第7次火山噴火予知計画の実施状況等のレビュー(参考資料)」について説明があった。時間の関係で本日は議論を行わず、意見等があれば後日、事務局まで連絡することとなった。
 また、引き続き事務局より、「資料(5)次回火山部会までの作業予定」について説明があり、本日のレビュー草案を持ち帰り再読の上、意見等があれば「資料(4)第7次火山噴火予知計画の実施状況等のレビュー草案への意見フォーマット」を使用し、12月1日(金曜日)18時までに事務局まで連絡することとなった。

(2)その他

 特になし。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)