資料16−2−9

「21世紀初頭における日本の海洋施策」(平成14年8月 科学技術・学術審議会答申)のフォローアップについて

【機関名】 環境省

14.8答申における『項目』 これまでの取組み状況及び成果(平成14年8月答申より現在まで) 今後の取組み予定と課題
4.1 海洋保全の基本的考え方と推進方策 4.1.2 海洋保全の具体的な推進方策 (1)海洋環境の維持・回復に向けた総合的な取り組みの推進 1)海洋における物質循環システム(場)の修復 1中・長期的な閉鎖性海域等の海洋環境問題(水質,底質,生態系等)への取り組み ●閉鎖性海域の汚濁防止のための取り組みの推進  水質汚濁防止法に基づく排水規制の徹底を図った。また。東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を対象に実施している水質総量規制については、平成16年度を目標年度とした第5次水質総量規制を着実に実施するとともに、平成19年6月からは平成21年度を目標年度とした第6次水質総量規制を開始した。  引き続き、水質汚濁防止法に基づく排水規制を徹底するとともに、第6次水質総量規制を着実に実施する。
●赤潮,貧酸素水塊予測技術の高度化  昭和54年度より、水質総量規制対象海域において実施している環境省広域総合水質調査を継続して実施している。
 また、平成16〜18年度の3カ年に渡り、東京湾において、貧酸素水塊の発生機構解明のための調査を実施した。
 環境省広域総合水質調査を継続して実施する。
 閉鎖性海域における汚濁メカニズムを解明するため、難分解性有機物に関する調査や外海水の影響に関する調査等を実施する。
2沿岸域開発による干潟・藻場・サンゴ礁等の消失と生態系への影響の解明 ●周辺海域の長期的な水質・生態系の監視の推進  平成14年3月に決定された「新・生物多様性国家戦略」において、自然環境の劣化を早期に把握し、要因を特定するため、国として全国1,000箇所程度の監視地域(モニタリングサイト)を設定し、動植物及びその生息・生育環境の長期的なモニタリングを実施することが主要テーマとして掲げられた。これに基づき、平成15年度より全国の代表的な生態系にモニタリングサイトを設定(毎年度200箇所程度)し、生態系の動態を指標する動植物やその生息・生育環境の長期的なモニタリングを開始している。
 特に海域に関しては、藻場、干潟、岩礁潮間帯、砂浜、サンゴ礁、島嶼を対象としている。
 今までに設置したモニタリングサイトを中心に、地球温暖化をはじめとする様々な人為的要因による生態系変化を迅速に把握し、予防的保全対策を進めるため、水、大気、気象など物理化学的要素を含めた総合的かつ継続的な生態系モニタリングを実施する。
 特に、温暖化による影響が顕著で緊急性が指摘されている生態系タイプについては、重点的調査を行うほか、人工衛星「だいち」が取得した画像データの利用などリモートセンシング技術を活用し、その改変状況を迅速に把握する。以上により、広域的な生態系情報の収集・解析システムを構築し、わが国の生態系の現況を定量的に把握するとともに、生態系の将来予測のための基礎的資料とする。
2)人間活動に伴う陸域・海域・大気等からの負荷の削減 1残留性有機汚染物質(POPs)等が人体及び生態系に与える影響の解明 ●有害化学物質等の環境動態の解明及び監視手法の開発  海洋環境モニタリングにより、重金属類等の分析を行い、我が国周辺海域における汚染の広がり等、海洋の状況及び経年的変化の把握の実施を行った。  引き続き、重金属等の調査を行い、海洋の状況を把握する。
 化学物質の環境中での残留実態の把握及び環境リスクの評価・管理に資するデータ取得のための調査を実施するとともに、実施した調査結果を調査物質毎に解析し公表している。  化学物質の環境中での残留実態を把握し、環境汚染の早期発見及び対策の立案・評価等に活用することを目的として、一般環境中の化学物質環境実態の調査を推進強化していく。
●有害化学物質等が生態系や人の健康等に及ぼす影響の解明  海洋環境モニタリングにより、重金属類等の分析を行い、我が国周辺海域における汚染の広がり等、海洋の状況及び経年的変化の把握の実施を行った。  引き続き、重金属等の調査を行い、海洋の状況を把握する。
 化学物質の環境中での残留実態の把握及び環境リスクの評価・管理に資するデータ取得のための調査を実施するとともに、実施した調査結果を調査物質毎に解析し公表している。  化学物質の環境中での残留実態を把握し、環境汚染の早期発見及び対策の立案・評価等に活用することを目的として、一般環境中の化学物質環境実態の調査を推進強化していく。
2事故等による油流出汚染の対策 ●流出油防除体制等の強化  MARPOL条約附属書2に基づき、有害液体物質の排出を規制するため、海洋汚染防止法の改正、関係政省令の整備を行っており、有害液体物質について、海防法の規定に基づき、その範囲の設定及び有害性の査定を実施した。また、油汚染事故への準備及び対応のための国家的な緊急時計画に基づき、緊急時対応のため地方公共団体等のための訓練研修、脆弱マップの油流出事故に備えた体制の整備を行った。  引き続き、関係政省令の整備、未査定液体物質の有害性の評価の実施を行っていく。また、脆弱マップは、順次更新を行う予定である。
3外来生物種の侵入による在来種の絶滅や生態系の攪乱(かくらん)防止 ●バラスト水等による外来生物種侵入の防止  バラスト水中に含まれる生物による海洋環境への影響に関する基礎調査を行ってきた。  引き続き、条約の早期批准に向け法制度の検討を行う。
4発生負荷削減への取り組み ●陸域からの発生負荷の削減  ロンドン条約議定書に基づき、船舶からの廃棄物の海洋投入処分を規制するため、海洋汚染防止法及び関係政省令の整備を行い、また、海洋投入できる廃棄物の範囲について廃掃法施行令を施行した。また、海防法の規定に基づき陸上で発生する廃棄物等の海洋投入処分について許可制度を導入、運用している。  引き続き、許可制度の運用を厳格に行い、海洋投入処分量の削減に努める。
●陸域からの発生負荷の削減  「水質汚濁防止法」等に基づく総量規制については、平成16年度を目標年度とした第5次水質総量規制を着実に実施するとともに、平成19年6月からは、平成21年度を目標年度とした第6次水質総量規制を開始した。
 水質汚濁防止法に基づく排水規制の徹底を図った。
 引き続き、水質汚濁防止法に基づく排水規制を徹底するとともに、第6次水質総量規制を着実に実施する。
●陸域からの発生負荷の削減  廃棄物処理施設整備費補助金及び循環型社会形成推進交付金(平成17年度創設)により廃棄物処理・リサイクル施設の整備を推進した。  循環型社会形成推進交付金により引き続き廃棄物処理・リサイクル施設の整備を推進していく。
●船舶等からの発生負荷の削減  ロンドン条約議定書に対応するため、海洋汚染防止法の規定に基づき、陸上で発生する廃棄物等の海洋投入処分についての許可制度を導入・運用している。  引き続き、許可制度の運用を厳格に行い、海洋投入処分量の削減に努める。
5沿岸域における海洋保全の取り組み ●沿岸域の清掃活動の推進  国内の災害による漂着ごみを市町村(一部事務組合を含む)が処理する場合、補助制度により当該市町村を支援した。  これまでの取組みに加え、災害に起因しないが、海岸への大量の漂着ごみによる被害が生じた場合、その処理を行う市町村に対し、補助制度により支援する。
(2)海洋利用,沿岸防災等における海洋環境に配慮した取り組みの推進 1)海洋利用等における環境配慮の取り組み 3環境に配慮した海岸保全の取り組み ●自然と共生する海岸整備の推進  自然公園法に基づき、国立公園内における海岸保全施設の新設に当たっては、自然景観に配慮したものとなるよう事業者と調整を図ってきた。  今後も自然公園内における海岸保全施設の整備については、自然景観が損なわれることがないよう、事業者と十分調整を図っていく。
(3)社会経済的側面からの海洋環境の保全に向けた取り組みの推進 ●自然保護を推進するための手法の検討  自然環境保全法第4条に基づき、概ね5年ごとに、海域を含む自然環境全般を対象とした自然環境保全基礎調査を実施し、海域における生物多様性保全施策の策定・実施のための基礎資料として活用するとともに一般に広く提供している。また、平成14年3月に決定された「新・生物多様性国家戦略」に基づき、平成15年度より、全国の重要な生態系を含む地域をモニタリングサイトとして設定(毎年度200箇所程度)し、動植物やその生息・生育環境の長期的なモニタリングを開始している。これらにより得られるデータや知見は、自然保護の推進をするための手法を検討する上で、重要な基礎資料となる。
 また、汽水湖、干潟、マングローブ林、サンゴ礁等を含む湿地10ヶ所をラムサール条約湿地に登録、渡り鳥の集団渡来地等として重要な干潟等6ヶ所を鳥獣保護区に指定した。
 現行の「新・生物多様性国家戦略」を見直し、第3次生物多様性国家戦略を平成19年度中に策定する予定。また、わが国における海洋生物多様性の保全施策を推進するため、過去に実施した保全施策の現状把握、既に劣化した海洋生態系の再生技術についての事例などについて広く情報収集。データベース化を行う。また、平成18年度にとりまとめた「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言」を受け、海域を初めとしたすぐれた自然景観の評価方法について検討を行い、国立・国定公園の指定の見直しを進める。
 今後も、国際的に重要な湿地の保全を推進するため、ラムサール条約湿地の登録に向けた取組み等を行う。また、鳥獣の保護上重要な区域について、鳥獣保護区の指定等及び管理を行う。
●総合的な環境配慮を行うための環境影響評価  平成18年4月に閣議決定された第3次環境基本計画に基づき、学識経験者による戦略的環境アセスメント総合研究会において、平成19年3月、上位計画のうち位置・規模等の検討段階のものについて、事業に先立つ早い段階で、著しい環境影響を把握し、複数案の環境的側面の比較評価及び環境配慮事項の整理を行い、計画の検討に反映させることにより、事業の実施による重大な環境影響の回避又は低減を図るための共通的な手続・評価方法等を示す戦略的環境アセスメント導入ガイドラインを取りまとめた。  戦略的環境アセスメントについては、事業の位置・規模等の検討段階において、戦略的環境アセスメント総合研究会報告書(平成19年3月)を受け、事業の特性や戦略的環境アセスメント導入ガイドライン等を踏まえて実施事例を積み重ねる。また、それら取組の状況等を踏まえてガイドラインを不断に見直す。
 さらに、環境省において、より上位の計画や政策の決定に当たっての戦略的環境アセスメントに関する検討を進める。
4.2 海洋利用の基本的考え方と推進方策 4.2.2 海洋利用の具体的な推進方策 (1)持続可能な海洋生物資源の利用 2)海洋生物資源の開発・研究 ●海洋バイオマス利用技術開発  有害重金属を多量に含むホタテ貝軟体部、イカの内臓などの海産物廃棄物について、天然物を利用して低コストで有害重金属の除去・回収を行なう「天然物による有害天然物の浄化法」の研究を実施した結果、有害金属の除去・回収に成功し、再資源化への可能性を見いだした。  平成19年度から、海岸流木を有効利用するために、発生源・発生量の推定、流木の性状・処理技術の把握、リサイクル技術の精査などの研究を実施し、リサイクルフローの形成をめざす。
(4)多機能で調和のとれた沿岸空間利用 1)環境配慮型の空間利用のための施策 ●より高い信頼性を有する廃棄物海面埋立処分場の技術開発 (答申以前から)
 維持管理、災害、跡地利用、環境管理等を考慮しながら、陸上処分場と海面処分場の違いや意義を定量的に判断し、より安全・安心な施設作りを進めるための調査研究を実施。
 安全・安心な海面埋立処分場作りを進めるため、
  • 1陸上処分場と海面処分場のLCA等の比較
  • 2臨海部における土地利用計画に関わる将来予測
  • 3処分場の特性と土地利用に応じた護岸・遮水要件の整理
  • 4跡地利用と災害対策を考慮した保有水管理
  • 5海面処分場が海洋に及ぼす環境影響評価手法
について調査を行う。
2)効率的な空間利用のための施策    
(6)市民の親しめる海洋に向けて ●海洋性レクリエーション空間の整備・普及促進  平成16年6月にエコツーリズム推進会議(議長:環境大臣)が取りまとめた5つの推進方策に基づき、地域におけるエコツーリズムの推進に取り組んできたところ。モデル事業では、地域ごとに行政や事業者、NPO等が参画する協議会が設けられ、この協議会主導でガイドの育成や資源の保全ルール策定などの取組が行われた。  エコツーリズム推進法施行を踏まえ、地域の自然環境の保全に配慮しつつ、地域の創意工夫を生かしたエコツーリズムの取り組みを支援することで、海洋の適正な利用と保全の両立を図る。
4.3 海洋研究の基本的考え方と推進方策 4.3.2 海洋研究の具体的な推進方策 (5)研究開発体制・インフラストラクチャーの整備 1)研究・観測を組織的・戦略的に行うための方策 ●研究推進のための連携・協力の推進  公害防止等試験研究費及び環境技術開発等推進費において、海洋環境問題に対応した研究資金を確保した。  引き続き、公害防止等試験研究費及び環境技術開発等推進費において、海洋環境問題に対応した研究資金の確保を図る。
4.4 海洋政策全体の基盤整備の基本的考え方と推進方策 4.4.2 海洋政策全体の基盤整備の具体的な推進方策 (1)人材の育成及び理解増進 2)市民の海洋に対する関心を高めるための施策 ●市民と海洋とのふれあいの促進  平成16年6月にエコツーリズム推進会議(議長:環境大臣)が取りまとめた5つの推進方策に基づき、地域におけるエコツーリズムの推進に取り組んできたところ。モデル事業では、地域ごとに行政や事業者、NPO等が参画する協議会が設けられ、この協議会主導でガイドの育成や資源の保全ルール策定などの取組が行われた。
 また、自然とふれあう行事の実施と情報の提供、国立公園内の保護管理業務を行うボランティア活動の支援を行っている。
 エコツーリズム推進法施行を踏まえ、地域の自然環境の保全に配慮しつつ、地域の創意工夫を生かしたエコツーリズムの取り組みを支援するとともに、引き続き子どもを始めとした自然体験活動の推進やボランティア等の人材育成、各種情報の提供を図る。
(3)情報の流通 ●海洋保全に関する情報の集積・提供  平成14年3月に決定された「新・生物多様性国家戦略」において、自然環境の劣化を早期に把握し、要因を特定するため、国として全国1,000箇所程度の監視地域(モニタリングサイト)を設定し、動植物及びその生息・生育環境の長期的なモニタリングを実施することが主要テーマとして掲げられた。これに基づき、平成15年度より全国の代表的な生態系にモニタリングサイトを設定(毎年度200箇所程度)し、生態系の動態を指標する動植物やその生息・生育環境の長期的なモニタリングを開始している。
 特に海域に関しては、藻場、干潟、岩礁潮間帯、砂浜、サンゴ礁、島嶼を対象としている。
 今までに設置したモニタリングサイトを中心に、地球温暖化をはじめとする様々な人為的要因による生態系変化を迅速に把握し、予防的保全対策を進めるため、水、大気、気象など物理化学的要素を含めた総合的かつ継続的な生態系モニタリングを実施する。
 特に、温暖化による影響が顕著で緊急性が指摘されている生態系タイプについては、重点的調査を行うほか、人工衛星「だいち」が取得した画像データの利用などリモートセンシング技術を活用し、その改変状況を迅速に把握する。以上により、広域的な生態系情報の収集・解析システムを構築し、わが国の生態系の現況を定量的に把握するとともに、生態系の将来予測のための基礎的資料とする。
(4)国際的な問題への対応 ●アジア大陸の環境負荷の増大による海洋環境への影響の解明  海洋環境モニタリングにより、我が国周辺海域の海洋汚染の発生状況、環境濃度推移等を継続的に把握してきた。  引き続き、我が国周辺海域の海洋環境の状況及び経年的経過を把握する。