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閉鎖性海域等の海洋環境問題対策
閉鎖性水域における水質汚濁に関する調査、閉鎖性海域の環境修復・創造技術の開発と効果検証に関する研究、閉鎖性内湾の環境管理技術に関する研究及び瀬戸内海水域の特性を踏まえた有機汚濁機構の解明に関する研究を引続き行う。
海域環境の保全を図るため、海面に浮遊するごみや油の回収を計画的に実施する。また、閉鎖性水域の総合的な水質保全対策の検討を進める。
赤潮や青潮が発生し、環境改善が芳しくない東京湾の環境を改善するため、湾内の生態系を含めた自然環境メカニズムを解明し、環境変動のシミュレーションモデルを整備するため、湾口部における環境観測施設を整備するとともに、環境モニタリング調査結果等の共有や汚染源に対する環境改善対策を推進する。
平成13年12月に都市再生プロジェクト(第3次決定)の「海の再生」として先行的に東京湾について取組みが決定され、それを受けて平成14年2月に設置された七都県市及び関係省庁からなる東京湾再生推進会議により、「快適に水遊びができ、多くの生物が生息する、親しみやすく美しい『海』を取り戻し、首都圏にふさわしい『東京湾』を創出する」ことを目標に、東京湾再生のための行動計画が平成15年3月に策定された。平成15年度よりこの行動計画に従って、七都県市及び関係省庁が連携して干潟・藻場・浅場等の再生・創出、合流式下水道の改善、河川の直接浄化、人工衛星による赤潮の常時監視等、東京湾再生への取組みを引き続き推進する。
また、大阪湾についても、平成15年7月に九府県市及び関係省庁からなる大阪湾再生推進会議が設置され、大阪湾再生のための行動計画の策定に着手している。
水質総量規制の対象となっている東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海について、水質、底質及びプランクトンについて統一的な手法による調査を行い、汚濁状況の把握を行う。
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干潟・藻場・サンゴ礁の保全
開発による干潟・浅場の消失は、内湾・沿岸域の水質悪化や生物多様性の劣化等をまねいていると考えられている。このため、残された干潟等を適切に保全するとともに、失われた干潟等の再生・修復の検討が必要である。新たな干潟の創出や劣化した干潟の環境修復技術の確立を目指し、干潟の観測による浄化機能をはじめとした干潟の基礎的な機能や干潟をコントロールしている環境条件等の解明、干潟実験施設や人工干潟のモニタリングによる環境修復技術の開発を行うとともに、人工干潟の造成に欠かせない干潟の地形変化特性について観測を行う。
また、干潟等の水質浄化機能をはじめとする多様な機能を適切に把握し、簡易に評価するための指針の策定を行う。
国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターを拠点として、サンゴ礁モニタリングの推進、サンゴ礁に関する情報の収集・提供を行う。
また、サンゴ礁生態系の保全手法に関する研究、亜熱帯地域での農地からの細粒赤土流出による海洋生態系への影響解明に関する研究及び海中公園地区指定のための調査を行う。
我が国の自然環境の基礎的資料の収集を目的とした調査(自然環境保全基礎調査)の一環として浅海域の生態系の状況を把握するための調査を引続き行う。
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有害化学物質対策
「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書(MARPOL73/78条約)」の附属書 に基づく未査定液体物質の適正な査定、残留性有機汚染物質(POPs)による海洋汚染防止対策の検討、廃棄物投入処分環境影響評価調査及び日本周辺の海洋環境の状況の評価・把握を目的とした生態系の保全を含めた総合的、系統的な海洋環境モニタリング等を引続き実施する。POPsモニタリング検討会で定めたモニタリング調査手法に基づき、POPs汚染の実態調査を全国で行う。
日本周辺海域、主要湾及び廃棄物排出海域における海洋汚染の調査及び西太平洋、日本周辺海域における海洋バックグランド汚染の観測を引続き行う。
さらに、内分泌かく乱物質による水産資源への影響の状況把握のための調査等、ダイオキシン等の有害物質の蓄積状況の把握、魚介類への蓄積メカニズムの解明に資する調査を引続き行う。
船底塗料用防汚物質の海水中における物理的・化学的挙動の解明に関する研究及び水産生物に対する有毒性の解明及び環境保全目標に関する研究を引続き行う。
港湾内の堆積物に蓄積する有害化学物質は、人への影響が懸念されており、合理的な底質管理手法の提案を目指し、化学物質汚染の実態調査、微細粒子の挙動解明等を行い、堆積物中の化学物質の分布予測モデルを構築する。また、港湾の底に堆積する高度濃度のダイオキシン類を含む底質を除去するための事業を行うとともに、この浚渫土砂を大量に処理するための技術開発を行う。
ダイオキシンの鳥類、海生哺乳類等の野生生物の蓄積状況や、人への暴露実態を調査する。
人の健康や生態系に潜在的に有害な影響を及ぼす可能性のある化学物質が、大気、水質、土壌等を経由して環境の保全上の支障を生じさせるおそれ(環境リスク)の定量的な評価を行う。
環境に影響を与える恐れがある未規制物質について、問題が具現化した際の速やかな対応に資するため、標準的な分析方法を開発する。
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砂浜の消失防止
防災上の機能と併せ、環境や利用の観点から良好な空間としての機能を有する砂浜の消失を効果的に防止するため、沿岸漂砂の特性の長期的な観測を行う。また、都道府県が沿岸ごとに海岸保全基本計画を策定する際の参考となるよう、広域土砂収支図の作成方法を開発する。
さらに、土砂収支の不均衡を是正するために有効な手法として、漁港、港湾やその周辺等に堆積した砂を海岸侵食箇所へ効果的、効率的に輸送・排砂するサンドバイパス工法を引き続き実施する。
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油流出汚染対策
流出油防除体制を強化するため、大型浚渫兼油回収船の整備や排出油防除資機材の更新等を行う。
特に、極東地域における油汚染対応体制の強化を図るため、情報収集体制の確立、関係省庁間における連携の強化、韓国等近隣諸国との国際協力を引続き進めるとともに、より精度の高い漂流予測を行うため、リアルタイムデータの充実と漂流予測手法の高度化の推進及び波浪海域、氷海域での油回収技術の研究、荒天下における航行不能船舶の漂流防止等に関する研究を引き続きを行う。
また、大規模な油防除活動を的確に行うために必要な沿岸海域環境保全情報及び自然環境保全、生物の保護の観点から油流出事故の際に活用する脆弱沿岸海域図の整備等を進める。
さらに、油処理剤が環境に及ぼす影響についての調査、流出油等の海洋汚染物質を迅速に把握するためのライダー技術の研究、微生物による流出油漂着海岸の環境修復技術に関する研究を引続き行う。
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放置座礁船対策
一定の船舶に保険加入を義務付ける等の制度を導入するとともに、地方公共団体が行った油等防除措置や船舶撤去に関し国の支援措置を創設・拡充することにより、被害者の保護と良好な海洋環境の保全・形成を図る。
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発生負荷削減の取組み
汚染物質の除去等の海域浄化対策事業、流域別下水道整備総合計画に関する基本方針策定調査や海洋等への汚濁負荷削減を目的とする下水道事業等を引続き行う。
巡視船艇・航空機を用い船舶等からの油等の不法排出の監視取締りを行う。また、工場廃水の不法排出や廃棄物、廃船の不法投棄の監視取締りを行うとともに指導等によりこれら適正処理を促進する。
船舶用公害防止機器の研究開発及び海洋汚染防止のための船舶の構造等の改善に関する技術基準の作成及び調査研究、船舶からの大気汚染物質及び温室効果ガス排出削減技術に関する研究、船舶からの油流出防止に関する研究、損傷船舶等の曳航技術に関する研究、有害排出物低減のための研究を引続き行う。
陸域由来の環境負荷変動に対する東シナ海の物質循環応答に関する研究、亜熱帯地域での農地からの細粒赤土流出防止技術の確立に関する研究を行う。
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海洋浄化
海洋環境を改善するため、汚泥浚渫(しゅんせつ)や汚泥上への覆砂等を行う海域環境創造事業や海域浄化対策事業を推進するほか、海面に浮遊するゴミ・油の回収事業を引続き行うとともに、水域環境の改善のため漁港水域環境保全対策事業を引続き行う。加えて、漁業集落排水施設整備のため漁業集落環境整備事業等を引続き実施する。
漁場環境の状態を把握するための漁場の長期的な環境監視調査等を実施する漁場環境モニタリング調査事業を引続き行う。
海水交換型防波堤等の海水浄化技術の開発、付着生物及び底生生物の有機的除去能力及び潮汐作用等を利用した海域浄化技術の開発を引続き行う。
ヘテロカプサ等の有害プランクトンにより引き起こされる赤潮被害防止のための、技術開発等を引続き行う。
衛星データ等を活用したアジア・太平洋地域における統合的モニタリング、評価体制を構築するとともに、北西太平洋行動計画(NOWPAP)に基づき、富山に衛星データ受信局を設置し、海洋環境のリモートセンシング手法の開発を実施する。
沿岸環境の水質悪化のメカニズムの解明及び浄化手法の研究開発を実施する。
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海洋環境影響評価技術開発研究
生態系の定量的評価の確立に向けた取組み、生物の多様性や景観、ふれあいの場についての環境影響評価の検討、環境影響の回避・低減・代償措置を含む環境保全措置(ミティゲーション)の技術的・制度的手法の向上に関する取組みを行う。
浅海域の底質、生物、干潟等を含む総体について、生物生産性及び物理化学的な観点からの物質収支やその循環、相互バランス等から、定量的に海域の健全度や疲弊度等を評価する手法の開発を行う。
原子力発電所等周辺の主要漁場等における海洋環境放射能総合評価等を引続き行う。海域の放射能調査等に資するための海洋モニタリングシステムの開発、原子力発電所周辺の環境モニタリングの充実を図るための海洋モニタリングシステムの整備調査、人間活動による海洋への影響を解明するため船舶による海洋汚染モニタリングを引続き行う。
広域の海洋汚染の海洋生態系への影響評価手法として、海棲ほ乳類等の長寿命動物を用いたモニタリング手法に関する研究を引続き行う。
海洋環境の生物学的側面からの評価、診断を充実させるため、微生物群集を対象とした解析技術の開発を行う。
海砂利採取等に伴う地形・底質・生態系変化等の影響評価手法に関する研究を実施する。
さらに、広域及び長期の海洋環境の変動を観測・予測するために、航空機、海洋観測衛星、開口合成レーダ、海洋レーダ、ライダー及びブイを用いた海洋環境評価手法の開発研究を引続き行う。
海水、海底土等の海洋の放射能調査を引続き行う。
遺伝毒性を指標としたバイオセンサー系の開発に関する研究を引続き行う。
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沿岸域の海洋保全の取組み
海岸における生態等の環境情報を収集・整理するためのマニュアルづくりの検討を進める。海浜生物の生息環境について、ボランティア等と連携した定点調査の活動支援に努める。一般市民等への海洋環境保全思想の普及啓発のため、海岸清掃・漂着ゴミ調査等のイベントを実施し、漂着ゴミ調査の結果は「ゴミマップ」として集計、公表している。また、地方公共団体・NPO等が行う海洋環境保全推進活動等に協力する。
また、海浜の美化、漁場におけるゴミ等の廃棄物の回収・処理、漁業操業時に入網したゴミの持ち帰り処理等を引続き推進するとともに、ボランティア等が行う海浜美化活動、生態系保護・育成活動等を支援する。
さらに、ボランティアの清掃活動等で他の規範となる個人・団体への表彰を引続き行う。
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バラスト水による外来生物種侵入防止対策
船舶のバラスト水中に混入するプランクトンなどの各種生物が本来の生息地でない場所に移動させられることによる生態系や人間の健康への被害防止等を目的として国際海事機関で採択された新条約に対応し、バラスト水中に含まれる生物による海洋環境への影響に関する調査を行う。また、低環境負荷型外航船の開発において、ノンバラスト船型の開発等を実施しているところである。
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