第6章 まとめ

南海トラフ地震発生帯掘削計画は、世界の科学者が認める科学的意義の高い研究活動であり、これまでの国際共同研究活動によって画期的な成果が生み出されてきた。また、我が国の地震防災の観点からも重要な位置付けにあり、とくに超深度掘削(ステージ3)において巨大分岐断層/プレート境界断層接合部を掘り抜くことで、世界初の海溝型巨大地震発生メカニズムの解明につながる重要な成果が上げられることが期待される。
一方、前人未踏の領域での掘削作業は多くの技術的困難に直面し、その度に最先端の技術を駆使して克服してきている。これらは新たなイノベーションにつながる重要な挑戦であるが、今後さらに難しい掘削環境が想定される中でそれらを克服して超深度掘削を完遂するには相当の技術、時間及び費用が必要である。
本委員会としては、南海トラフ地震発生帯掘削計画に期待される科学的成果や社会的貢献に鑑み、「ちきゅう」による掘削を継続することが妥当であると考える。
ただし、「ちきゅう」という先端科学計画の実施に貴重なプラットフォームを占有する時間等に鑑み、次の考え方に基づき計画案を選定し実施すべきと考える。

  1. 早期に巨大分岐断層/プレート境界断層接合部を掘り抜くことを目指す。
  2. そのため、超深度掘削(ステージ3)は、連続する2会計年度内での完遂を目指す。様々な理由によりそれ以上かかると見込まれる場合には一旦休止することを含め技術の進歩や社会情勢等を鑑みて決定する。
  3. 掘削方法の選択に当たっては、計画案それぞれのリスクを徹底的に検証し、上記第2項の方針を考慮しながら、できるだけ成功確率の高い手段が選択されるよう技術合理性に基づいた判断を行う。

また、地震防災の重要性から、現在浅部に設置されているものを含め、海底下の長期孔内観測装置については可能な限りDONETにつなぎ、できるだけ速やかにリアルタイムモニタリングシステムを構築し、データの公開に努める。

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