第5章 南海トラフ地震発生帯掘削計画の今後の進め方案

JAMSTECでは、ステージ3のこれまでの掘削作業結果を踏まえ、国際的な技術者グループや国内の掘削専門家による評価や外部コンサルタントによる調査を行い、問題点の洗い出しを行うと共に、対応策を検討した。それらの結果に基づいて深部掘削の計画案を複数作成し、それぞれの実行可能性を検討した。

(1)技術検討委員会(TAT:Technical Advisory Team) による評価

Technical Advisory Team(TAT)は国際的な海洋掘削技術者から構成され、石油掘削業界における最新技術情報などを基にこれまでの作業結果を評価した。外部コンサルタントによる追加的な調査を含め、通常は使われることのない揚管作業中のLWDデータなどを用いて詳細に孔内状況を再現し、主な現象として以下の事項を指摘している。

  • 掘削後、時間経過とともに急速に孔壁崩壊が進んでいる。
  • 地層の傾斜が急であり、泥水の浸潤とともに孔壁が剥離破壊して崩壊していると想像される。
  • 泥水による圧力、泥水による循環が弱まると、剥離した石片がドリルビットの上にたまり、致命的な抑留状態に陥る。

(2)科学掘削安全検討委員会掘削専門部会による指摘

科学掘削安全検討委員会掘削専門部会は国内の有識者から構成され、TATの評価に基づき今後の掘削の進め方について以下のような具体的な指摘を行っている。

  • エクスパンダブルケーシング(孔内挿入後に径を拡張させることのできる孔壁保全筒)などを活用し、ケーシング枚数に余裕を持たせ、短い距離でケーシングを重ねることができるようにする。
  • 孔壁に浸潤しにくい泥水を採用する。
  • 泥水の圧力が最適となる詳細な泥水管理、孔内管理計画を策定する。
  • 泥水の循環を止めずにドリル管の継ぎ足しが出来るシステムを導入する。
  • リアルタイムにロギングデータが把握できるシステムや最新の掘削シミュレータソフトを導入する。
  • リスクアセスメントを含めポリシーを持ったマネジメント体制を構築する。

(3)今後の掘削計画案

上記の検討結果を受けてJAMSTECでは15通り以上の掘削案を作成・検討し、現段階で以下に示す3通りの掘削計画案に絞り込んでいる。
(ア)これまで到達した最深地点から掘削を継続
(イ)海底下2,010m地点まで戻り、側方に枝分かれさせて掘削を再開
(ウ)新たに海底面から別の孔を掘削

表 各掘削計画案の得失

 

(ア) 

(イ) 

 (ウ)

 掘削始点

 現在の最深到達点

 13インチケーシングの末端

 海底面(新規掘削)

 最終孔径

 6インチ

 6インチ

 8.5インチ

 最大ケーシング枚数

 4枚

 5枚

 8枚

 ケーシングデザインの

自由度

 作業リスク

 必要作業日数

(連続航海の場合)

 230日

 260日

 319日

 解説

エクスパンダブルケーシングを用いても、ケーシングの残りは4枚のみであり、限られた選択肢の中での掘削となる。 

 ケーシングの残り枚数が1枚増えるほか、ケーシングの径が大きくなることにより掘削作業の選択肢が増える。

これまでの地層等の情報により掘削時間を節約でき、掘削作業の選択肢が大幅に増え、余裕を持って掘削できる。

 

目標である巨大分岐断層に到達する孔の大きさは、(ア)案と(イ)案では6インチとなるが、(ウ)案では8.5インチとなり、断層帯での研究活動内容の選択肢が大幅に増える。一方、掘削作業にかかる時間及び資金は(ア)案から(ウ)案にかけて増加し、(ウ)案では3年程度の作業期間になることが予想される。

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研究開発局海洋地球課

-- 登録:平成26年09月 --