海洋開発分科会(第72回) 議事録

1.日時

令和6年8月1日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 令和6年度の海洋開発分科会における評価について
  2. 今後の深海探査システムの在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

藤井輝夫分科会長、日野分科会長代理、榎本委員、川合委員、河野健委員、河野真理子委員、川辺委員、後藤委員、谷委員、中川委員、兵藤委員、廣川委員、藤井徹生委員、前川委員、松本委員、見延委員、山本委員

文部科学省

堀内研究開発局長、中川海洋地球課長、山口極域科学企画官、後藤海洋地球課課長補佐、麻田海洋地球課課長補佐、 ほか

5.議事録

【藤井(輝)分科会長】 皆様、ご多用中お集まりをいただきありがとうございます。ただいまより、第72回科学技術・学術審議会 海洋開発分科会を開催いたします。
 最初に委員の交代でございますが、吉田臨時委員がご退任されまして、今回から山本泰先生に臨時委員としてご参画いただくことになりましたので、一言ご挨拶をお願いしたいと思います。
【山本委員】 日本郵船の執行役員で工務グループ長をやっております山本泰でございます。今回はこのような委員を授かりましてありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【藤井(輝)分科会長】 どうぞよろしくお願いいたします。それから、7月に文科省に人事異動がございました。研究開発局長が千原局長から堀内局長、大臣官房審議官が永井審議官から橋爪審議官、海洋地球課長が山内課長から中川課長へ交代されたということでございます。本日、堀内局長は業務のために途中からご出席、橋爪審議官はご欠席と聞いております。
 まずは、中川課長から一言ご挨拶いただければと思います。
【中川海洋地球課長】 中川です。ご紹介いただきまして、ありがとうございます。私は海洋地球課に本日着任しましたが、かれこれ15年くらい前になるのですけれども、IODPのリエゾンということで、当時はNSFのところにあるIODPの計画のところで仕事をやっていたことがあります。私の役人人生を振り返ると、当時は本当にいろいろな方に助けていただきながら、一番研究コミュニティと近いところで仕事をさせていただいたと思っております。国際プロジェクトの進め方であるとか、研究コミュニティをどうやって盛り上げていくのかとか、非常に勉強になった時期でございました。十何年ぶりに、海の仕事がまたできることを非常に光栄に感じております。当時にお世話になった方も、まだいろいろなところでご活躍されておりまして、またお力を借りながらになるのかなと思いながらも、私も海洋地球課長として、できるだけジオサイエンス・マリンサイエンスを盛り上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、事務局から参加者、そして定足数の確認、配付資料の確認をお願いいたします。
【事務局】 議事次第をご覧いただければと思います。本日は阪口委員から欠席のご連絡をいただいておりますが、科学技術学術審議会令第8条に基づきまして、定足数の過半数を満たしていることをご報告させていただきます。また、事務局からは海洋地球課の関係者が出席しております。
 次に、配付資料の確認を行います。本日は議題を3件準備しております。議題1としまして「令和6年度海洋開発分科会における評価について」、議題2といたしまして「今後の深海探査システムの在り方について」、議題3として「その他」となっております。
 続きまして、資料の確認となります。資料1-1「令和6年度海洋開発分科会における評価の実施について(案)」、資料1-2から資料1-4につきましては、次期北極域研究プロジェクトについての資料です。資料2-1から資料2-3までにつきまして「今後の深海探査システムの在り方について(案)」の資料となってございます。資料等についてご不明な点、不備等ございましたら、事務局までご連絡いただければと思います。以上となります。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございました。それでは早速、本日の議事に入らせていただきます。
 先ほどありましたように、3つの議題を予定しております。議題1と2が審議案件、議題3は報告ということで、まず議題1ですが、「令和6年度の海洋開発分科会における評価について」、事務局からご説明をお願いいたします。
【事務局】 資料1-1をご覧ください。「令和6年度海洋開発分科会における評価の実施について」、本分科会におきましては、毎年度研究開発課題の評価にあたり、こちらをご審議いただいているところでございます。
 1ポツ目、評価の区分につきまして、全部で3つの評価をさせていただいております。(1)事前評価、(2)中間評価、(3)事後評価として、3つの評価をこの分科会で行っているところです。
 2ポツ目、本年度の評価対象課題として予定されているものが、(1)事前評価に係るものは1件あり、記載している「次期北極域研究プロジェクト」に関する評価のみを予定しているところです。
 3ポツ目、評価方法につきまして、中身の紹介は割愛させていただきますが、例年通り、別添の評価様式に基づきまして、評価を実施させていただければと思っています。
 4ポツ目、留意事項につきましては、利益相反に関する留意事項を定めておりまして、以下の1から4の内容に係るものについては、審議に入らないでいただくことを予定しております。資料1の説明は以上です。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。「評価の実施について」ということで、評価をこのような形でやってよろしいかということでございます。ただいまの事務局のご説明につきまして、委員の皆さまからご質問などはございますか。よろしければ、この案をもって当分科会として決定とさせていただければと思います。
  (「異議なし」の声あり)
【藤井(輝)分科会長】ありがとうございました。
 それでは次に参りまして、「次期北極域研究プロジェクトの検討状況及び事前評価について」の審議に移らせていただきます。河野健委員と榎本委員につきましては、資料1-1の利益相反の3「利害環境を有すると自ら判断するもの」という事由に該当するとして事前にご申告をいただきましたので、審議には加わらないようお願いいたします。その他には、この利益相反事由に該当する委員はいらっしゃらないという認識でございますが、よろしいでしょうか。
 それでは河野健委員、榎本委員におかれましては本件の審議には参画しないということでお願いいたします。ただし、事実関係などについてご発言いただくことは問題ございません。
 それでは事務局から、資料1-2、1-3、1-4に基づいて、次期北極域研究プロジェクトの検討状況及び事前評価結果(案)についてご説明をお願いいたします。
【山口極域科学企画官】 海洋地球課の山口と申します。よろしくお願いいたします。
 資料1-2をご覧いただけますでしょうか。次期北極域研究プロジェクトにつきましては、前回3月25日開催の本分科会でご議論いただきました結果を踏まえ、6月5日開催の北極域研究推進プロジェクト推進委員会で、その方向性の意見の取りまとめについてご議論いただき、それを踏まえたプロジェクト案を、本日の分科会で事前評価をいただくこととなっております。
 資料1-3をご覧いただけますでしょうか。1ページ目は、前回の本分科会でいただいた主なご意見となっております。国際連携の中での観測の重要性、現業の人にも役立つ情報提供、外交の場でも期待されるなどのご意見をいただいたところです。
 次のページですが、これは6月5日開催の北極域研究推進プロジェクト推進委員会でいただいた主なご意見となっております。継続的な観測の重要性、人文社会科学の視点を入れたプロジェクトの実施、関係機関との連携が重要などのご意見をいただいたところです。
 3ページ以降が、これまでのご意見を踏まえた次期プロジェクト案です。プロジェクト案の内容につきましては、資料1-4の事前評価案の説明と重複するところがありますので、資料1-4の中で説明させていただきます。
資料1-4をご覧いただけますでしょうか。まずは、プロジェクトの概要、課題実施期間及び評価時期についてですが、令和7年度から令和11年度の5年間を予定しております。中間評価は、事業開始から3年目の令和9年度、事後評価は令和12年度を予定しております。
 2ポツの課題の概要・目的ですが、地球温暖化の影響が最も顕著かつ、これまで観測されたことがない環境変化が現れている北極域について、これまでの観測研究の成果や課題を基盤として、先端的な技術を積極的に活用した観測研究を、さらに戦略的かつ強力に推進するもの、としております。これによりまして、気候や北極域の変動が人間社会に与える影響などの解明を目指すとともに、観測研究成果を国内外のステークホルダーに提供することにより、北極域の利用に関する国際的ルール形成に資するなど、我が国が強みを有する科学力に基づいた国内外社会への貢献を行い、我が国のプレゼンス向上を図ることを目的としております。3ポツの予算額は現在、概算要求作業中ですので、調整中としております。
 3ページをご覧いただきたいと思います。事前評価票となっております。課題名は「北極域研究強化プロジェクト(仮称)」としております。本年度まで実施しております北極域研究加速プロジェクト(ArCSⅡ)を引き継ぐ形のプロジェクトと考えております。3番目、課題概要、研究開発計画との関係です。平成31年1月に定められた研究開発計画の大目標の中に北極域をテーマとした内容が記載されており、我が国の国益に資する国際協力の推進等の観点を踏まえ、研究開発、国際協力、持続的な利用の3点を重点的に推進するとされております。中目標では、北極域は北極海航路の利活用も相まって国際的な関心が高まっており、その取組を強化する、とされております。重点取組としましては、海洋の現状、将来の状況、気候変動への影響等を解明するため、北極を巡る諸課題について、国際共同研究の推進、最先端の北極域観測技術の開発、科学技術を生かした貢献というものです。指標のところでアウトカムとアウトプットを記載しています。アウトカムについては記載のとおりですが、アウトプットにつきましては、国際共同研究の実施状況について、課題数、研究参画数、拠点数、研究成果発表数、査読付き論文発表数、得られたデータや科学的知見の集積状況、国際的な枠組みへの日本人研究者の参画状況、このような形の評価をいただこうというところでございます。
 次のページは課題の概要です。冒頭からは先ほどご説明させていただいた北極域研究の重要性が記載されておりますので省略させていただきますが、中ほど4段落目以降に、これまでの政府の取組などを記載しております。2015年の我が国の北極政策、2021年の北極域研究船「みらいⅡ」の建造開始や、日本で開催した第3回北極科学大臣会合、2023年・2024年のG7科学技術大臣会合における北極観測への言及、2023年4月に閣議決定された第4期海洋基本計画において北極政策が主要政策の一つに位置づけられたこと、2024年4月に総合海洋政策本部で取りまとめられた海洋開発等重点戦略では北極域研究の実施、国際的な貢献などが明記されたことが記載されております。また、2011年に開始した事業以降、文科省でも継続して北極域研究プロジェクトを実施し、北極域の環境変化の実態や、海氷融解メカニズムを一定程度解明するなどの成果を上げてきたところですが、未だに観測の空白域や観測の乏しい領域が存在し、気象気候予測を大きく制約していることから、「みらいⅡ」などを活用した高精度の観測研究の継続的な推進、地球規模課題に対処するための国際貢献、人材育成の観点からの国際連携の強化、日本への影響を含む災害の防止など積極的な社会課題解決型研究の実施等が必要であることから、出口を見据えた課題を横断した一体的な取組や、これまで実施してきた北極域の観測研究を継続的に進めるとともに、北極域の脆弱性や持続可能性等を踏まえつつ、先端的な技術等も積極的に取り組んだ観測研究を戦略的かつ強力に進めるため北極域研究強化プロジェクトを実施することとしております。
 5ページが各観点からの評価です。文章で記載してありますが、ここは資料1-3の5ページ以降を使用して、次期プロジェクトの内容についてご説明させていただきたいと思います。4ポツの赤色をつけているところですが、次期プロジェクトは、北極域の気候変動メカニズムの解明などの北極域の観測研究を継続的に進めるとともに、北極域の脆弱性や持続可能性等を踏まえつつ、先端的な技術を積極的に活用した観測研究を、さらに戦略的かつ強力に進めていくため、次の3つの柱で取り組んでいこうと考えております。
 1つ目は、観測データの空白域や空白時期の解消に向けた観測の着実な継続強化です。具体的には、国際連携拠点などにおける継続的な観測データ取得の着実な実施、「みらいⅡ」などによる北極海観測空白域・空白時期の観測の実施、氷床融解、森林火災、永久凍土融解など、環境変動の解明に資する多様な観測の実施等を考えております。これらによりまして、気象変動予測の高度化、未解明の事象に関するデータの取得・発信による国内外への貢献が期待されると考えております。
 2つ目ですが、社会課題の解決に資する研究の実施、情報の創出です。北極域の環境変動が中緯度地域などに及ぼす影響の研究、災害等の早期警戒に繋がる情報の創出、氷床融解や永久凍土融解など環境変動が地域住民やグローバルにもたらす影響の研究、自然科学のみならず人文社会科学との分野横断的な研究による社会課題の解決に資する情報創出、海氷分布予想など北極海航路利用や海洋資源利用など利活用の対象が明快な研究などにも資する基礎的な観測の実施・研究結果の提供及び関係機関等との連携を考えております。これらによって、北極域の気候変動などが日本に与える影響の解明など、我が国社会が裨益する課題の解決に資する情報の創出が期待されると考えております。
 3つ目が、「みらいⅡ」の国際研究プラットフォームとしての活用や人材育成等による研究基盤の強化です。「みらいⅡ」を国際研究プラットフォームとして、若手研究者、技術者、船員、学生など、多様な人材の乗船機会を確保し共同研究などを実施するほか、国際連携拠点の整備などによる観測網の強化、国際的な人的交流の強化、首脳会談などを踏まえた戦略的な国際連携の促進、北極域の利用などに関する国際的ルール形成への貢献、社会に向けた積極的な情報発信などによって科学力に基づいた国内外社会への貢献、我が国のプレゼンスの向上、首脳会談等で言及される政府間の連携に対する貢献が期待されると考えております。
 効率性の観点についてですが、本プロジェクトは、ArCSⅡなど、これまで整備された観測拠点の研究基盤を活用して国際共同研究などを実施することとしております。また、プロジェクトの運営体制としては運営委員会を設置し、プロジェクトディレクター等のプロジェクト中核メンバーと同数程度の外部有識者に参画いただく予定としております。この運営委員会において、計画・体制・手法の妥当性や費用対効果などの点検評価、プロジェクト推進に対する助言・承認を行うこととしております。また、政府や産業界との意見交換、国際会議等において課題などを効率的に把握し、成果に役立てることなどを効率的に進めていくこととしております。
 本事業につきましてはこのような仕組みで実施することを検討しております。本日は先生方の視点からご評価いただければと考えております。簡単ですが、以上でございます。よろしくお願いいたします。
【藤井(輝)分科会長】 ご説明ありがとうございます。それでは、先生方からご質問等お願いしたいと思います。
 先に1点だけいいでしょうか。海洋開発計画というのは、どこかで出てきましたけれども、これは海洋基本計画の間違いではないかと思うのですが、ご確認ください。資料1-4の4ページですね。
【事務局】 確認いたします。
【藤井(輝)分科会長】 川合委員、お願いします。
【川合委員】 私も単なるミスの発見ですけれども、文書の3ページ目の中目標のところの3行目、「南極域の継続的な観測を実施する」ということになっておりますが、これは北極ですよね。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。谷委員、お願いします。
【谷委員】 谷でございます。まとまった説明をしていただきまして、ありがとうございました。
 今回のご提案というのは、ArCSⅡの引き続きのプロジェクトであると理解しました。それで質問ですけれども、ArCSⅡから今回に移るときにどういう差分があるのかとを教えていただきたいと思います。ArCSⅡを設計した時代と状況が変わっている部分や、ArCSⅡを実施していてうまくいかなかったというようなことから、改善したいというようなことがあるのだろうと思いますが、どういう問題点あるいはどういう新しい課題に対して、何をしようとしているのかということについて教えていただきたいと思います。「みらいⅡ」が登場することによっていろいろ変わることはわかりますけれども、そうではない部分について教えていただければと思います。
【山口極域科学企画官】 「みらいⅡ」ができることにより、今まで観測できなかったところの観測が可能となり、新たなデータを取ることができるということとは、別の視点でというところでございますが、ArCSⅡでは観測を進めてデータを取ってきましたが、今までのところは各課題といいますか、海洋なら海洋、気象なら気象など、そういう縦の分野によってのデータ収積は進んできたと思います。
 それを今、我々が解決しなければいけない課題、例えば気候の変動が人々の暮らしにどういう影響を与えるのかなど、そういう横の軸を使って多分野を横断的に見ながら研究を進めていくということを、ArCSⅡの後継プロジェクトの中で力を入れてやっていく必要があると考えております。そのためには、今までと同じように観測の重要性があると思いますので、ここの差分というところは、「みらいⅡ」や新たな観測技術ができることによって、観測のデータが増えるというところがありますが、分野横断的に出口を見据えた観測研究に取り組んでいきたいと考えているところでございます。
【藤井(輝)分科会長】 谷委員いかがでしょうか。
【谷委員】 今のご説明はわかりやすくて、大変結構でございました。
 一つ追加の質問なのですけれども、私は北極の状況を把握することを継続すべきで、ArCSⅡが後継のプロジェクトとして継続して実施されることは大変大事なことだと思います。今、北極のいろいろなことが大きく変わりつつある時ですので、できるだけどういうふうに変化しているのかということを把握して科学的な解析にも役立ててほしいのですが、他にも将来の人たちに対して「こんなふうに変わったのだ」という証拠を変動の世界にいる我々が残すことが、我々の責務みたいなものだと思いますので、充実した観測は行われるようにしていただきたいと思います。
 その観点からの質問ですけれども、ArCSⅡに比べて予算額はどうなるのでしょうか。調整中とは書いてありましたけれども、ざっくり同じくらいなのか、目が覚めるほど大きくなるのか、そのあたりを教えていただけますでしょうか。
【山口極域科学企画官】 現在、概算要求作業中というところで非常に難しいところですが、我々としては、できるだけ研究を進めていけるように確保していきたいと考えているところです。
【藤井(輝)分科会長】 ここではスケール感は言えないという感じなのでしょうかね。
【山口極域科学企画官】 ほぼ同じような額を基本としつつも、それからどれだけ伸ばしていけるかということを考えております。
【藤井(輝)分科会長】 山本委員、お願いします。
【山本委員】 山本です。ありがとうございます。「みらいⅡ」になって、かなり航行可能海域が広がるということがよくわかったのですが、これは多分季節にもよると思うので、具体的にどれぐらいの季節で、どれぐらいの頻度で、今まで行けなかったところに行けそうかなという情報がありましたら教えていただければと思います。
【山口極域科学企画官】 「みらい」は、砕氷船ではなく耐氷船でございました。今度は砕氷船になりますので、今までは沿岸に近い北極海だとすれば、より深い北極海の海域に入って観測することができると考えております。今まで観測できなかったところを観測できるようになるということが、次のプロジェクトの一つの大きなところかと考えております。
【山本委員】 ありがとうございます。季節や頻度はどういったふうになるのでしょうか。
【山口極域科学企画官】 当然耐氷船から砕氷船になりますので、氷海に入っていける期間も延びると考えております。それが一度の航海なのか、複数回の航海なのかはわかりませんが、観測できる日数などは今のものに比べると伸びていくことになるのではないかと考えております。
【山本委員】 わかりました。計画の自由度とエリアの広がりが出てくるということを理解しました。ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】 それでは、川辺委員お願いします。
【川辺委員】 東京海洋大学の川辺でございます。ご説明ありがとうございます。
 お伺いしたいのは、資料1-3の4ページ目にあります、社会課題解決型研究が必要である、ということです。これは資料1-4のほうにもあったと思うのですけれども、この社会課題というのは地理的にどこの社会課題を想定しておられるのかがよく分かりませんでした。気候変動が関わる災害というのは、世界中のどこでも起きている話だと思うのですけれども、北極域研究においてこの社会課題解決というのが、具体的にどこの社会を指しているのかというのを教えていただければと思います。
【山口極域科学企画官】 基本的には我が国、日本における社会課題解決を考えております。例えば、北極域の変動が日本においてどういう影響を及ぼすのか、それによって災害が起こるとどのような対応が可能であるのか、というようなことがあるかと思います。
 一方で、北極域の中でいろいろなことが変動してきますと、当然、北極域の中にも社会・生活がございますので、そこの人々が直面する課題もあると思います。それらの課題の解決が当該地域だけに閉じるものではなくて、将来的には我が国や全世界的にも裨益し得るものもあるかと思いますので、そういうものも含めた意味で社会課題を実施するということを考えております。
【川辺委員】 ありがとうございます。北極域内での地域が、いろいろな影響を受けてということだと、すごくわかりやすいのですけれども、例えば日本で起きている気候変動に伴う影響というのは、北極の変化というのとダイレクトにどう関わるかというのが、どういうふうに見つけていくのかなというところがよく分かりませんで、それは難しいのではないかなというふうに思いました。以上です。
【山口極域科学企画官】 北極域の変動によって、中緯度における豪雨とか台風の発生頻度が多くなるという話も聞いておりますし、先生のご指摘の通り、それがわかりにくいということもあろうかと思いますので、北極域の研究によって、我が国を含む中緯度でどのようなことが起こるのか、それをどう解決していかなければいけないのか、といったことのわかりやすい説明については工夫したいと考えております。
【藤井(輝)分科会長】 要するに、北極域での観測の変動と、そういった気象現象との相関を見ていくというイメージなのでしょうか。
【山口極域科学企画官】 そういうことと考えております。
【藤井(輝)分科会長】 そういう意味では、多分に気象学的な解析と併せてやっていくということでしょうね。
 日野委員、お願いします。
【日野分科会長代理】 東北大学の日野でございます。資料1-3の最後のページについて質問させてください。人材育成等による研究基盤の強化というところで、これは非常に重要なポイントなのだろうと思いますが、その中で1点教えていただきたいのですが、「国際条理で活躍できる多様な人材の育成」というキーワードがございます。研究がメインですから、研究者はもちろん育成できると思うのですけれども、研究ではないほうの人材ですね。具体的に、このプログラムを通してどのような人材の育成が期待できると考えておられるか。多様な、とありますから、1つ2つの事例で結構ですけれども、何かご紹介いただけるとありがたいです。
【山口極域科学企画官】 「みらいⅡ」などの国際研究プラットフォームを利用して、若いときから自然科学の研究者だけでなく芸術や経済を専門とする学生などの多様な人々が触れ合い、場を共有しながら北極域での観測などに従事し、北極域で身につけたものを生かして社会に出て活動していく。例えば、外交官となって国際的な場で活躍するとか、経済人となって活躍するような人材の育成が期待できると考えているところでございます。
【日野分科会長代理】 どうもありがとうございます。そうすると「みらいⅡ」が研究プラットフォームだけではなくて、幅広い分野の若い人たちを育てる教室として活用するということをイメージされていると理解しました。ありがとうございます。
【山口極域科学企画官】 国際研究プラットフォームの役割の一つとして、そういう教室的なものもあると考えておりますが、そこはどう説明してご理解いただくかというところかと思いますので、検討していきたいと考えております。
【藤井(輝)分科会長】 今の件で行くと、比較的幅広い人たちが乗船できるような仕組みを考えていくということになるのだろうと思います。
 兵藤委員、お願いします。
【兵藤委員】 兵藤です。今の件とも関係すると思いますが、最後に審査や評価に関してご説明いただいたと思うのですが、実際に効果的な航海を組むための仕組みを何か考えておられるのかということが書かれていないので、そういうことを書いてもいいのではないかと思いました。
 あとは、「先端的な技術等も積極的に活用」というふうに何度か書かれていて、そういった技術を実際に開発するとかそういうところまで考えておられるのか、単純に先端的な技術も活用するということで書かれているのか、そのあたりについて具体的な考えがあれば教えていただきたいと思いました。よろしくお願いします。
【山口極域科学企画官】 最初のご質問ですが、ArCSⅡでは、北海道大学の「おしょろ丸」という船に、いろいろなバックグラウンドを持った学部の学生さんに乗ってもらって、多分野を融合した活動に取り組んでもらった実績や、「みらい」に外国の若手研究者に乗ってもらって共同研究を実施したという実績もございます。そういったこれまでに実施した良いところを生かしながら、次のプログラムでの具体的な中身を検討していきたいと考えております。
 2つ目のご質問ですが、観測していく中で、観測手段を少しずつでも改善していき、新たな手法を導入していくことも起こってくると思いますので、できるだけ新しいものに取り組んで作っていただければと考えております。
【兵藤委員】 ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】 中川委員、お願いします。
【中川委員】 私も今の質問に関わることについてです。資料1-3の4というところに、観測の強化のポイントが書かれていると思います。4ポツ目のところに「汎用ドローンを活用した」と明確に書かれているのですが、ここにちょっと疑問を持っております。「みらい」などの母船にはAUVなどの特殊なドローンも使われていたと思います。それを使って、海の中や観測域を広げるということをされていたと思うので、ここで「汎用ドローン」というふうに限定している意味がわからなかったので、そこだけ解説をお願いいたします。5年の長いプロジェクトですし、あまり限定せずに「先端技術を使って観測網を強化」くらいのほうがいいのかなと思いましたので、一言述べさせていただきました。よろしくお願いします。
【山口極域科学企画官】 ここはArCSⅡで、気象観測で汎用ドローンを用いた観測を始めたということがありましたので、それを意識したところですが、先生のご指摘の通り、その他にもいろいろなツールを使った観測はありますので、汎用ドローンだけに限定せず、いろいろなものを使いながら観測を強化していくということをわかりやすく書いていくようにしたいと思います。
【中川委員】 よろしくお願いします。
【藤井(輝)分科会長】 今の気象観測というのは陸上のドローンということですか。
【山口極域科学企画官】 はい。陸上観測で使ったドローンでございます。
【藤井(輝)分科会長】 わかりました。要するに「多様なプラットフォームを活用して観測を行います」というような書き方にしたほうがいいということですね。ありがとうございます。
 次に前川委員、お願いします。
【前川委員】 ありがとうございます。笹川平和財団の前川でございます。
 3ポツの取組の具体例として「北極域の利用等に関する国際的ルール形成への貢献」とありますが、具体的にどのようなルール形成をイメージしておられるのか教えていただければと思います。例えばBBNJ条約、まだ発効しておりませんけれども、こういったものが発効すると北極域を含む公海上で科学的なデータに基づいて海洋保護区の設置の提案などが出てくる可能性もあります。その際に、きちんとデータに基づいて持続可能な利用と保全のバランスをどう考えていくかという観点からも非常に大事な取組になると思います。よろしくお願いいたします。
【山口極域科学企画官】 先生がおっしゃいました、BBNJの科学的なデータによる貢献ということも一つだと思いますし、北極評議会などいろいろな活動への科学的な知見の提供によるルール形成への貢献というものが考えられると思っております。これは中央漁業の条約とかいろいろなものがあると思いますので、この特定のルール作りに限定することはないと思うのですが、日本の科学的知見の提供による貢献ということがわかってもらえるようなものを作り出していけるようにしたいと考えているところでございます。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。大体このようなところでよろしいでしょうか。
【山口極域科学企画官】 会長から最初にご指摘いただいた部分は海洋基本計画でございました。失礼いたしました。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。では、審議に入りたいと思います。資料1-4のテキストの「次期北極域研究プロジェクトの事前評価結果(案)」について、当分科会として、この案の通りに次期プロジェクトを進めるということにしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 谷委員、お願いします。
【谷委員】 結構だと思いますが、「海洋開発計画」と「南極」についての修正を行わないといけないと思います。
【藤井(輝)分科会長】 今日ご指摘いただいたところについて修正を加えるという形で決めさせていただきたいと思っております。
 榎本委員、お願いします。
【榎本委員】 5ページの海洋基本計画という表記で、令和6年になっている部分は令和5年だと思います。
【藤井(輝)分科会長】 そうですね、令和5年ですね。ありがとうございます。
 それでは、基本的には、この形で決めさせていただくことにしたいと思います。もし、委員の皆さまから軽微な修正がありましたら、お知らせいただければ と思います。
 最終的には、私もさっとチェックをさせていただきますので、この形で進めさせていただきます。それから、事前評価結果(案)の5ポツの総合評価というところですけれども、ここにつきましては、本日いただきました意見を踏まえて事務局にて記入し、分科会長が確認させていただく形にさせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
  (「異議なし」の声あり)
【藤井(輝)分科会長】それでは、このような形で進めさせていただきます。
【事務局】 事務局でございます。局長の堀内が参加されましたので、御挨拶させていただきたいと思います。
【藤井(輝)分科会長】 それでは堀内局長、ここで一言ご挨拶をお願いできればと思います。
【堀内研究開発局長】 ありがとうございます。次期北極域研究プロジェクトについてご審議いただきまして、いろいろとご意見を賜り、ありがとうございました。
 7月11日付で局長に着任しました、堀内でございます。よろしくお願いいたします。本日は、公務の関係で遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
 本日、委員の皆さまにおかれましては、お忙しい中、また暑い中お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。海洋開発分科会では、海洋科学技術に関する大規模事業の評価の実施や政策提言などを取りまとめていただきまして、これまで非常に精力的にご議論いただいているということで、文部科学省では頂いた評価や提言をもとに、次の時代に向けたいろいろなニーズなども踏まえつつ、各施策を着実に進めていきたいというふうに思っております。本日は北極関係のプロジェクトなどをご議論いただくことになっておりますが、私はこの北極域研究プロジェクトを立ち上げた時に海洋地球課長をしており、非常に思い出深いプロジェクトでありまして、いろいろなところに説明をしたのですけれども、思ったよりも理解が良かったと思うのですね。この北極域と、それに伴う気象の状況に関して、関係者はとても関心が高く期待をしておりました。そのプロジェクトが、こういった形で広がりを見せているということについては、個人的にもとても嬉しく思います。
 文部科学省として今日の議論をもとに取組を着実に進め、概算要求を準備していきたいと思います。特に、今の議論にもありましたように、「みらいⅡ」は期待が高いということで、この関係の予算をしっかり取っていかないといけないと気持ちを新たにさせていただいたところです。
 今後とも関係省庁と連携しながら、政策の基礎基盤となる海洋科学技術をしっかり発展させていければと思っておりますので、引き続き、ご支援、ご指導などを賜れればと思っております。また、新たな政策についての方向性などのご意見を賜れればと思っております。どうもありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございました。ぜひ、よろしくお願いいたします。
 それでは、2番目の議題に入りたいと思います。議題2は「今後の深海探査システムの在り方について」であります。
 この議題については、本分科会のもとに設置をいたしました、深海探査システム委員会で検討していただいております。検討の状況については、前回3月の分科会で中間報告をいただいておりました。その際の議論を踏まえまして、改めて、この委員会で議論を進めていただきましたので、その結果について、ご報告をいただいた上で審議を行いたいというふうに思います。
 まずは深海探査システム委員会の主査でもあります松本委員から、委員会での検討状況についてご説明をいただきます。その後、事務局から報告書の案について説明をいただいてから、審議を行いたいと思います。それでは、松本委員からご説明をお願いいたします。
【松本委員】 深海探査システム委員会主査の松本でございます。深海探査システム委員会の報告書について報告をいたします。
 本委員会では、前回の海洋開発分科会でいただきましたご意見をもとに、第5回深海探査システム委員会を開催いたしまして、さらなる検討を重ねました。検討の詳細は次のページの通りでございます。
 大きな変更点は2つとなります。1つ目は、自国の深海調査をする能力は、当然有している必要があるということを強調し、そのために何が必要であるかということを記載いたしました。2つ目に「しんかい6500」が、耐圧殻の限界が想定する2040年代よりも前に訪れ、運用停止になる可能性があるという危機感を追記するとともに、現在の深海探査能力を維持するという観点から、記載順を変更いたしました。初めに「しんかい6500」及び母船「よこすか」の老朽化対策・機能強化をするべきだというふうに述べまして、次に、新たな大深度無人探査機の開発、3番目に、母船を含めた新たな大深度探査システムの構築という形で変更するとともに、開発スケジュールを「可能な限り早く」といたしました。
 本委員会におきましては、本分科会で以前に提言された内容に立ち返りまして、実は大きく前進していないという現実を再認識するところから開始いたしまして、我が国の深海探査能力を維持強化する必要性や、その具体的な内容について、非常に活発なご議論をいただきました。その結果、本報告書案は、研究者や関係者が、今よりも効率的に深海にアクセスできる環境を整えることが、我が国の海洋科学技術の発展に大きく貢献できること、そのために直ちに取り組むべき事項について、強く提言できる内容になっていると考えております。
 本日は、前回の分科会でのご意見をもとに、本委員会で議論し修正した報告書について、ご説明させていただきます。他の修正内容及び報告書の修正箇所については、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【事務局】 松本委員、ありがとうございました。それでは、事務局から説明を行いたいと思います。
 資料2-3をご覧いただけますでしょうか。先ほど松本委員からお話いただきました、順番の変更について目次に示しております。また、順番の変更に伴いまして、文書も見直しをいたしましたので、後ほどご覧いただければと思います。
 続きまして、1ページ目をご覧いただけますでしょうか。1ページ目には、もともと<はじめに>の文章を書いてございましたが、そちらの内容につきましては、ローマ数字の1の冒頭の部分に記載させていただきまして、委員からいただいたご意見を踏まえ、自国の深海能力を有している必要性があるということについて、まず状況の報告を記載しております。また、黄色くラインマーカーを引かせていただきましたが、我が国における状況として、世界有数の深海フィールドを有しているという、我が国の状況をお示しさせていただいた上で、第4期海洋基本計画に掲げるという内容から、日本政府としましても、様々な視点から深海探査の必要性と重要性について指摘されており、政府としても非常に重要視しているという部分を書かせていただいた次第です。
 少し下のほうに移動していただきまして、「そもそも深海は」のところからになりますが、こちらは様々な研究開発の可能性について記載させていただいているところです。海底地質、生態系や海洋プラスチックの汚染問題、環境モニタリング、地震発生や海底火山の活動メカニズムなど、様々な研究開発の要素が深海には集まっていて、これからいろいろな発見がある分野であるということを記載させていただいております。
 その次のパラグラフになりますが、深海には資源が豊富でございますので、そういう可能性も秘めており、期待していることを記載させていただきました。次に、「さらに」の部分は、生物的な進化の過程や未知の生物の発見など、そういう分野に対しても様々なものがある可能性、また化学や工学や医療などの発展にも貢献できる期待があるということ、自国の深海探査能力を有するとどのような効果があるかについて記載させていただいたところです。
 最後に「そのほかに」の文章のところまでいきますが、深海は未知の領域であることから、様々なポテンシャルを秘めているという可能性について、記載させていただいているところです。
 続きまして、2ページ目をご覧ください。先ほど松本委員からご説明いただいた部分になりますが、「しんかい6500」への危機感という部分について記載しております。冒頭の「我が国は」からのパラグラフですが、これまでの深海探査の歴史について書いている部分にございます。過去には、世界有数の深海探査能力を有しておりました。かつて、世界一だった我が国の深海探査能力は他国から遅れをとっていることは否めないということで、現在はなかなか難しい状況にあるということを、現状認識として書かせていただいております。その上で「特に」からのパラグラフになりますが、こちらから「しんかい6500」の危機感の状況について書かせていただいております。「しんかい6500」につきまして、運用が停止してしまうと、6,500メートルから大きく後退した深海の調査しかできなくなってしまうという旨を書かせていただいた上で、次の「また」のパラグラフになりますが、「しんかい6500」に相当するHOVの新規開発や、「しんかい6500」と同等の大圧殻の施策というのは容易ではないという現状認識のもと、在り方について見直しを検討する必要があるということで、可能な限り速やかに対策を行う必要があるとともに、タイムリミットが間近に迫ってきているという危機感について、書かせていただきました。
 また、「しんかい6500」の老朽化対策スケジュール等につきまして、さまざまなページにおいて、類似の文章を書かせていただくことによって、「しんかい6500」の現状認識及び老朽化対策の必要性というものについて記載させていただいておりますので、併せてご覧いただければと思います。
 続きまして、それ以外の修正箇所について、委員の先生方からいくつかご意見をいただいておりますので、こちらについて簡単に事務局から説明させていただきます。資料2-3に基づいてご説明をさせていただきますが、併せて、資料2-1をご覧いただければと思います。
 資料2-3の7ページ目をご覧ください。目的に基づいたものづくりをするには、民間企業との連携が必要不可欠ではないかと、委員からご指摘をいただいているところです。「民間企業等のノウハウはしっかり活用しましょう」ということで、ノウハウを活用する旨を記載させていただいております。
 続きまして、12ページをご覧ください。青色のところになりますけども、「産学官連携による検討や市販品の活用など効率的な開発を行うことが重要である」と書かせていただいておりまして、民間企業との連携は、ただ単に産学官連携だけではなく、センサーやカメラなど使えるものを使いながら、なるべく早く開発していくことも含めて「市販品の活用」という形で記載しているところです。
 続きまして、11ページをご覧ください。青色のところで、元々の内容としては、「HOVあるいはAUVをバランスよく整備していく」という文書を記載させていただいておりましたが、「バランスよく整備する」という部分に関しまして、どれもこれも開発していくと成果が出にくいのではないかというご意見がございましたので、記載を見直しました。ここは、HOV、ROV、AUV各種の探査機を単体で運用することではなく、「探査機を組み合わせて同時かつ効果的に運用できるシステムの構築」という形で、バランスよくということが、効果的に運用するための連携の仕方を考えるもの、何でもかんでも開発するものではなく、上手い具合に効果的に使えるシステム開発という趣旨ということで、記載の見直しをさせていただいたというものになります。
 最後の16ページをご覧ください。こちらは委員の先生から「しんかい6500」の老朽化対策などの危機感ばかりを煽ると良くないのではないか、将来に対しての明るい取組についても記載したほうがいいのではないかというご意見いただきましたので、これまで様々な人材育成、アウトリーチ、様々な取組の成果普及等をさせていただいております。海洋生物の紹介であったり、船上からの生中継、文部科学省において実施した小学生を対象にしたイベントであったり、これまでにも海洋・深海の魅力をお伝えしてきましたので、ただ深海探査ができなくなってしまう危機感だけではなく、深海は魅力的な分野であるということを、引き続き、しっかりとアウトプットしていきたいという趣旨から、これまでの取組のほうを書かせていただいたところです。
 委員の先生のほうから、「新たな大深度探査システムの開発」というのはどのようなシステムを開発するのかわかりづらいのではないかとご意見いただいておりました。イメージ図になってしまいますが、一つの可能性として、先ほど申し上げましたように、HOV、ROV、AUVと今後開発検討している新たな深海探査機を様々に連携・連動をさせて、効果的にうまく活用していくということを想定したような絵を、参考2として一枚付けさせていただきました。
可能な限り早い時期に開発する部分のご紹介をさせていただければと思います。こちらは黄色字になってございますので、後でお時間があるときにご覧いただければと思いますが、各開発要素におきまして、今までは「2030年代」、「2040年代」と記載させていただいたところでございますが、「2040年までの可能な限り早い時期に」ということで、ギリギリまで開発していいということではなく、そこをお尻として、それよりも早い時期に開発をするということを、さまざまな開発要素のところに記載させていただいておりますので、その一つとしてご紹介させていただければと思っております。事務局からの説明は以上となります。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。それでは、ここから質疑応答・意見交換にさせていただきたいと思います。
 見延委員、どうぞ。
【見延委員】 北海道大学の見延です。前に事前レクでいただいたときに見逃していたのですが、資料2-3の64行目からのパラグラフを出していただけますか。「海面上昇や海洋酸性化、貧酸素化に伴う云々を深海の堆積物でモニタリングすることができる」というふうに書いておりますが、実際は出来ないと思います。この後の話ともあまり繋がらないですから、この部分は削除なり、大幅に修正したらよろしいのではないかと思います。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 「生態系モニタリングを行うことができるため」、というところですか。
【見延委員】 そうです。気候変動で通常考えられているタイムスケールでは、堆積物の量が少なくて、また生物擾乱もあるので、堆積物からモニタリングすることは不可能だと思います。後の話ともあまり関係しないので、この段落はなくてもよろしいのではないかと思います。
【事務局】 事務局でございます。ありがとうございます。確認の上、検討させていただきたいと思います。
【見延委員】 ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】 その他にございますか。榎本委員、お願いします。
【榎本委員】 ありがとうございます。私は、この分野に関しては門外漢なので、読ませていただいて気がついたところなのですけれども、「2040年までにできるだけ早く」というところが、かなりの頻度でこの文書に出てきて目立っていたわけですが、2040年までだったら16年あるけれども、その時間の使い方というところでは、先ほどフィジビリティスタディということでは「2026年」という2年後のタイムマークを1個入れていただいたので、それは一つはっきりしたのですけれども、それ1点だけで16年間の開発計画みたいなものは、こういった分野では調査から具体的に開発していくのに時間がかかるのかもしれないですけれども、2040年までをつなぐ間のロードマップが気になりました。
もう一つは深さのほうで、「しんかい6500」が使えなくなるということの危機感がたくさん書かれているのですが、「しんかい6500」が使えなくなって調査可能な水深が4,500メートルまでになったらどこが困るのかというところが、しっかり読んでいかないと見つけられませんでした。どの深さに何があるかというところを、見つけるとそれが分かるのですけれども。最初に「しんかい6500」がなくなると困ることはしっかりと書かれているのですが、なぜそこの深さが6,500メートルか、あるいは6,000メートルまで続くことが必要なのかというところが、ちょっと読み取りにくいものでした。コメントです。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。タイムラインの話と、「しんかい6500」が使えなくなるとなぜ困るのか、という話ですね。
【事務局】 まず、1点目のほうのタイムラインにつきまして、先生のおっしゃる通り、2026年頃までが、今回で記載している報告書上、一番早いスケジュールになっております。こちらは第5回の深海探査システム委員会でも、2026年までには最初のフィジビリティスタディをしたほうがいいのではないかというご議論をいただいているところでございます。
 続きまして、その後のタイムスケジュールですが、「しんかい6500」の耐圧殻の設計限界というのがございますので、お尻はある程度見通しが立ってございますが、そこまでの開発という部分につきましては、まだまだ見通しが不透明なところがございます。詳細なタイムスケジュールは、なかなかお示ししづらいところだとは思っておりますが、いずれにせよ、可能な限り早い時期に実施することが必要だということを記載させていただいております。2つ目の話の回答にも繋がる部分ですが、「しんかい6500」が壊れてしまうと調査可能な水深が4,500メートルになってしまい、何が起こるかというと、各学術分野の研究等において「しんかい6500」を使用して、多くの研究等がなされているところでございます。調査可能な水深が4,500メートルになってしまうと、研究の継続が困難になってしまいます。やはり、継続性をもって研究していくことも、一つの重要な部分だと思っております。また、こちらは書いてありますが、経済安全保障の観点からしても、より深い部分を把握しておくという必要性から、常に「しんかい6500」が調査を行ってきた水深6,500メートル、またはそれ以上深い海域の調査をなるべく早い時期にできるようにしておく必要がある、ということを記載させていただいているところでございます。もし、松本委員から委員会の議論で補足等がございましたら幸いです。
【松本委員】 松本です。繰り返しになってしまうかもしれないですけれど、事務局のほうでご説明いただいたとおり、ロードマップに関しては、2026年のところは明示したものの、2040年までにやるべきこと、実際に「しんかい6500」を作った技術者で現役の方はいらっしゃらないので、同等のものを作ろうとすると、まずは要素検討から始めて実機を造るまでに何回かトライアンドエラーをしていかないとできないだろうという議論もありました。簡単に線を引くことが、なかなか難しいという状況でございます。それに関わる人をどうやって集めるかという話や時間の問題、材料をどのぐらい必要とするかなど、細かい話を全部積み上げていかないとタイムスケジュールもなかなか作りづらいというところもございますので、今、この書面に明確な計画を書くのは難しいのではないかということで、委員会にご参加いただいた皆さんの合意で、「2040年までの可能な限り早い時期」という文言が妥当ではないか、という話でまとまったと記憶してございます。「しんかい6500」は運用できなくなったらどうなるのかという話は、事務局のご説明のとおりの認識でございます。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 水深6,500メートルまで潜れると、全海域の90%を超える範囲までカバーできるという話だった気がします。
 次に谷委員、お願いいたします。
【谷委員】 谷です。先ほどの榎本委員のご質問に対して、1つコメントを申し上げた後に、私のコメントを申し上げます。現状は水深4,500メートルまでしか行けなくて、水深6,500メートルまでなぜ行かないといけないのかについて、科学的な理由を事務局がご説明なされましたけれども、私が思うには、日本国が自分の敷地の中を知る能力失うということになると思っています。最近、水深5,000メートルのあたりに航空機が落ちて探しに行くという話がありました。航行型のAUVで水深8,000メートルまで行けるようになるそうですが、航行型では現場をちゃんと見られないので、そうじゃないもの、いわゆるホバリング型のAUVで、現場にどういうものが落ちていて、どういう状況になっているかということを、政府として見に行く能力を持っていないといけないと思うのです。そういう機能を持つものを外国から買えばいいのかもしれませんけれども、いずれにしても、我が国が水域の97%をカバーする水深6,500メートルまで行くものを失ったときに、4,500メートルだと水域の半分ぐらいしか見られませんので、4,500メートルよりも深いところを、ホバリングなどで止まって見られる能力を、政府として持っていないといけないと思うのです。海洋開発分科会は海洋科学だけの話ではありませんので、ナショナルセキュリティとして、そういった能力が必要であるという指摘が重要だと思っています。
 まずは、松本主査、それから事務局が非常に尽力されて、文書が非常に締まってきたことに感謝を申し上げたいと思います。特に、課題の抽出というのが、明確になった点が非常にわかりやすくてよろしいと思います。
 私のコメントでございますけれども、具体的に文書を直そうということではございませんけれども、将来を見据えた考え方が必要だろうと思います。その意味で「システムとしての深海探査」という方向を打ち出されているのは、非常に適切だと思います。その中で私が気になっておりますのは、人が乗る潜水船、HOVがそれなりに考慮されているところです。これは、将来ますます変わっていくと思いますけれども、現状でHOVがなぜ要るのか、将来にわたっても本当に必要なのかということは、もうちょっと詰めたほうがいいと思います。例えば、ROVだとケーブルの問題があるから深いところに持っていくのが大変だ、AUVはリアルタイムで画像を船上まで送れないから大変だという話があると思いますけれども、技術が解決できる問題は、技術で解決することによって、人が行かなくても海底の状況が把握できるようなものを造るというのが、将来に対する我々のあるべきスタンスではないかと思います。昨日までは、これを使っていたから、明日からもこれでいいという話だと進展がないと思いますので、将来を見据えた方向性というのを打ち出していただければと思います。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。今のコメントに応えて修正するのは、なかなか難しいかもしれませんが、ご意見は承ったということで、この後に検討できればと思います。
 廣川委員、お願いします。
【廣川委員】 私は、この深海探査システム委員会の委員として参加しておりますので、言いたいところは言い尽くして盛り込まれていると思います。「しんかい6500」が停止してしまうと、調査可能な範囲が水深4,000メートルまで後退してしまいます。そうすると、いわゆる深海であります5,000メートルなどのかなり広いエリアは、全く調査できなくなるというところで、その危機感がすごくあるというふうに思っています。
 事務局からご説明はありませんでしたが、13ページのところに、今後の大深度無人探査機の開発の大まかなシナリオみたいなことが書いております。その中では、2030年までに基本的な基盤技術・要素技術開発をやることになっています。それを見据えた上で、試作機を2030年までの可能な早い段階までに造ることが、第一ステップでございまして、このマイルストーンを踏まえた上で、2040年までの可能な限り早い時期に、大深度の探査システムを造るということで、15~16年までにフルデプスまでの大深度探査システムを造るというのは、技術的にも非常にチャレンジングな印象を持っているところであります。もちろん、有人潜水船というのは、別途議論すべきところでありますけども、耐圧殻自体の製造がかなり困難だという状況もありますので、大深度無人探査機の新たなシステムの開発を、このタイムスケジュールで作っていくことが、「しんかい6500」の後継機になるという、現実的なところを狙っていたということでご理解いただければと思います。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。一応、基盤技術、要素技術開発については、既に記載があって、2030年までに試作機を開発するというようなことが書かれているということです。
 河野真理子委員、お願いします。
【河野(真)委員】 ありがとうございます。門外漢なご質問で申し訳ないですけれども、5ページの(2)の冒頭で「7,000メートルを超える水深にアクセスできる大深度ROVは製品化されていない」と記載があります。ただ、中央を拝見すると、いくつか既に例が見られるという記述がなされていまして、この記述と「しんかい6500」という後継機を造ることが、技術的にどのように関係するのでしょうか。先ほど谷委員がおっしゃった「将来に向けて」ということであれば、日本としても、例えば7,000メートルを超えるような水深にアクセスするものを造るときに、次期の6,000メートル級の機器が、どの程度こういう技術に貢献できるのか、あるいはもし、具体的に期待できる要素を何らかの形で記載できるのであれば、私としてはすごく知りたいというふうに思いました。
【事務局】 可能であれば、河野健委員からコメントいただければと思うのですが、いかがでしょうか。
【河野(健)委員】 まず7,000メートル級のものを販売しているという欄外の記述ですが、これは細かく言いますと、ケーブルを運用する際の安全基準の違いというのがあって、日本ではこの販売されているケーブルを使って水深7,000メートルまで降ろすことはしません。したがって「市販されていない」という記述とは矛盾しません。
 先ほどの谷委員からのご質問にも関係しますけれども、現時点でJAMSTECは、比較的近くない将来には、有人ではないけれども有人潜水船と同じことができるような時代が来ると思っていて、そのための基礎的な開発として、この中に記述しています。
 谷委員からはアピールが足りないと言われていますが、もう一つ出ている案で、2ページ目中央の絵の右のほうに、無人機で深海の探査する例が出ていますが、そのようなイメージを持っています。その開発の過程では、例えば高速の通信であるとか、海底にあるものが、必ずしも全部を人間の目によらなくても、ある程度生物かそうでないものと判別できるようなAIの機能を実装していく予定ですので、そういった技術は今後の海洋開発の中で十分に活かされていくものだと考えています。これで答えになっておりますでしょうか。
【河野(真)委員】 よくわかりました。ただ、次世代機はそうしたことを可能にすることに貢献するということなのですね。ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】 失礼しました。そういうニュアンスがわかるように文言を加えることができるといいのかもしれませんね。ありがとうございます。
 それでは山本委員、お願いします。
【山本委員】 山本です。2040年までにハードとして対応が必要というのは書かれているとおりだと思いましたが、結構大事になっているのは、乗組員やオペレータの方だと思います。ここには書かれていないのは、人材が潤沢にいらっしゃって心配ないから書かれていないのかなというところで、そういった人のところをどういうふうに対応されているのか、どう考えていらっしゃるのかというのを伺いたいと思いました。
 先ほど河野健委員からもご発言があって、将来的にはROVの世界になるということはわかるのですが、それまでオペレータとしてうまく続いていくのかなというところを質問したいと思います。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 いかがでしょう。これも河野健委員、ご回答いただけますでしょうか。
【河野(健)委員】 お答えします。「しんかい6500」のパイロットや整備士は、「しんかい6500」の老朽度に比べれば十分に若いので、さほど深刻に捉えてはおらず、この委員会の中でJAMSTECから問題であると提示することはいたしませんでした。そのため議論されていないというのが現実です。
 ただ、おっしゃるとおりで、一般に海洋関係は人材不足が進んでいるということは言われておりますし、何しろ「しんかい6500」は日本には一台しかございませんので、これを使わない限り教育もできないわけですから、オペレーションの技術が続いていくということを考えていくべきだということは、ご指摘を受けて痛感いたしましたので、これについては所内のほうでも、きちんと議論していきたいと思っています。
 なお「しんかい6500」そのもののオペレータではなくて、「しんかい6500」を海に投入するときの操船技術というほうが問題です。そちらの現状は、やや深刻ではあります。職人芸に頼っているところがあるので、その意味でも近代化した母船を使って、比較的容易にできるような方策を考えていくことは重要だと思っていますが、こちらは人材というよりも技術的な発展が必要だという解釈をしております。以上です。
【山本委員】 ありがとうございました。海周りの人材の懸念というのは我々も同じなので、よく事情はわかりしました。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。海関係全体としての人材育成、それから技術の継承も含めて、その観点はもう少し述べてもいいのかと思いました。
 次に川辺委員、お願いします。
【川辺委員】 ありがとうございます。海洋大の川辺でございます。
 門外漢として読んでいて、2つ気になったところがございます。1つは細かいことですが、目次で「深海探査システムにおける国内外の状況と課題」というのがあるのですけれども、その後にHOV、ROV、AUVと3つ並んでいるので、この後のほうで、例えば2ページ目にHOVというのはどういうものかという説明があるので、例えばHOVだったら、有人潜水調査船と一言書いてくれたほうが、初めて見る方には親切ではないかと思いました。
 もう1つが、今後の深海探査システムの在り方というところで、408行以降なのですけれども、これからいろいろ開発していかなくてはならない中で、技術開発が必要と考えられる要素技術の例がいくつも出てくるのですね。要素技術として必要なのか、それとも応用していく上で必要なのかが、文章を拝見していてよくわかりませんでした。例えば「国内外の市販品などの活用も含めて」ということが書いてあったりするので、もしかしたら、これらは全て要素技術として開発しなければいけないことなのかもしれませんが、整理していただけるとありがたいと思いました。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。今のお話は、要素技術として、開発が必要と考えられるものと、市販品を活用すればいいものとで整理が必要というご趣旨でしょうか。
【川辺委員】 そうですね。例えば、476行目に「緊急離脱ボルト等の生産終了品の代替品」というのは、これは既に技術開発されているものではないかと、素人なりに思った次第です。本当にオリジナルで、新しい開発をしなくちゃいけないものと、既にある技術を活用して効率的に開発していけるものが混ざっておられるのかなというふうに思った次第です。
【藤井(輝)分科会長】 わかりました。そのあたりの整理はいかがでしょうか?
【事務局】 ありがとうございます。事務局でございます。おっしゃっていることはごもっともだと思いつつ聞いておりました。
 今回は「要素技術の例」として書かせていただいているものなのですけれども、おっしゃるとおり、様々な可能性があると思っておりまして、全て開発しなければいけないもの、例えば買えばいいものとか、既にあるものとか、いろいろなフェーズに分かれているものがあるかと思っております。ただ、今回開発する全体の新しい探査機能開発、システムの開発、老朽化対策等、3つのコンテンツに分かれていますけれども、その中で必要になっていくものというのを、これから整理していく必要があると考えております。そのため今回は「要素技術の例」として、例えばこういうものが必要だと思われますよということで、今回書かせていただいている内容となります。もちろん、買えば済むようなものは市販品を活用すると、本文中に書かせていただいておりますので、そういうものもあるかもしれませんし、市販品を買ったけれども、それだけでは使えないので、そこからまた開発しなければいけないという、ステップバイステップで開発していくものもあるかもしれません。
 今回、どういうものが必要になっていくかというのが、具体的に細かく一つひとつ記載されているというより、あくまで一例として書かせていただいているものになります。今回の議論の中では、これがどういうフェーズにあるかということより、あくまで最終的な目標に向かって必要とされるものということで、整理して書かせていただいているというご理解でございます。以上でございます。
【川辺委員】 ご説明いただきありがとうございました。わかりました。
【藤井(輝)分科会長】 概ねよろしいでしょうか。私自身も、この議論に直接参加していなかったものですから、一つ気になったことがあります。谷委員もおっしゃっていましたが、今の方針として、HOVについては「しんかい6500」を老朽化対策し機能強化して、何とか維持するということで、それよりも深いところについては、どちらかというと、無人をベースに進めるべきである、ということでしょうか。
【事務局】 ありがとうございます。資料の11ページの428行目あたりになりますが、これは委員会でもさまざまなご議論をいただいたところです。おっしゃるとおり、水深6,500メートルまでは「しんかい6500」を使えるところまで使っていきたいと思っております。ただ、技術的に開発が難しいというふうにお伺いしているところでございますので、HOVをただちに開発することが困難であるため、今は水深6,500メートルより深いところにつきましては、無人機を活用した開発というのが現実的ではないかというご議論をいただいたと理解しており、「ただちに開発することが困難である」という記載をさせていただいているところでございます。以上でございます。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。そうした時に、2つポイントがあると思っております。
 何度か出ましたけれども、一つは技術の継承をどうするのかという点です。これは河野真理子委員もおっしゃいましたが、大深度の技術自体は、無人機であっても、有人の部分の耐圧殻の開発などを除けば、かなりの部分は継承されるということだと思います。一方で、同時に新しい産業を掘り起こしていくことに繋がるような、少し前向きな視点もあってもいいと思ったのですが、その辺りの議論はありましたでしょうか。
 それから「HOV、ROV、AUVなどを組み合わせて効果的に」という話がありましたけれども、国民的理解を得るためにも、複数の種類のビークルがちゃんとコーディネートして動けているか、つまり深い海の底で何をしているかが、他者の目線から見えるという状況を作ることも非常に重要だと思います。以上、2点について何かご議論があったとすれば教えていただけますか。
【事務局】 ありがとうございます。14ページをご覧ください。「しんかい6500」は、3名乗りということになってございまして、多くの研究者が一緒に研究できないということについて、なかなか研究の順番が回ってこないというご指摘をいただいているところでございます。その上で、新しい探査機のシステムの開発をする中で、無人機を用いた時に中に乗らないわけですけども、遠隔から深海を探査するにあたり、高精度なカメラの技術や、多くの人が一緒に深海を見ることができるような技術開発、高度可視化システムのための全方位カメラや、3D仮想表示技術といった、多くの方が一緒にできるような研究開発のシステムについて、多分野との連携も含めて非常に重要ではないかというご議論がございました。今後は、多くの人が一緒に研究できるシステム開発というのも、今回併せて検討していくというご議論をいただいたというふうに認識しております。
 人材育成については、今回メインの議論ではいただいておりませんが、最後にその他の部分にございますが、人材育成について重要なところを記載させていただいております。
 松本委員のほうから、補足いただければと思います。
【藤井(輝)分科会長】 日野委員、松本委員の順番でお願いします。
【日野分科会長代理】 東北大学の日野です。先ほど藤井分科会長から指摘のあった、船を造るというところの先、他の産業発展みたいなところですが、ちょうど事務局のほうで示していただいていたページの(4)のところです。船を探査する場所に持っていくだけではなくて、船に乗っていない人も含めて大勢で探査をする。探査システムですので、そういう面でAIを使った自律協調制御技術であるとか、船を造ること以外にも、非常に広い情報産業などが発展しつつありますけれども、そういうものの力を得ながら進めるし、あるいは、そういうフィードバックをかけて、新しい産業にフィードバックするというようなことは、確か議論をしていたと思います。その結果として、ここに載っていると理解しています。
 それから人についての補足ですが、2ポツの最初の段落のところも藤井分科会長がおっしゃったとおりで、深海探査システムだけに限ったことではありませんけれども、海の技術開発やサイエンスに関わる人が、将来的には先細りになることを呼び止める、あるいは伸ばしていく機軸の一つとして、深海探査システムも貢献できるというようなことで、ここに書いてあると記憶しております。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。松本委員、お願いします。
【松本委員】 2つ目の、新しくビークルを造るにあたって、いろいろなところを巻き込んでうまく広がっていくのかというご質問のところの回答で、事務局がお話ししたことに対しての補足です。
 7ページの264行目に「民間企業の技術開発のノウハウを活用も検討することが重要」という記載、それから、12ページの445行目の「産学連携による検討」というところがございまして、より多くの関係者を巻き込んで、先ほどまでの説明は研究者や、研究した成果の部分ですけれど、そうではなくて、無人探査機を造るにあたって、産学間連携で民間を巻き込んでというような、多くの人を動かしてビジネスが回っていくような話もあるよね、ということが、委員会の中で話題になったと記憶してございます。
【藤井(輝)分科会長】 お答えいただきありがとうございました。理解いたしました。
 谷委員、お願いします。
【谷委員】 谷です。先ほど、藤井分科会長がHOV、ROV、AUVの組み合わせでアウトリーチの視点とおっしゃいました。これは非常に良いご指摘だと思います。システムとして、複数機運用にすることで、アウトリーチに役に立つのではないかと思います。思いつきではありますが、ROVを降ろしていく時に一定距離でAUVが撮影していく、このROVを映しているということは、ちょっとした技術開発で簡単にできるようになると思うのですが、ROVが何をしているかということをリアルタイムで、AUVが見て画像を撮って帰ってきてくれるということは、お金がかかるからなかなか難しいのですけど、アウトリーチするという点では非常に効果的だと思いますので、今後はシステムとして、そういったことも頭に入れて開発をしていただければと思います。ありがとうございます。
 【藤井(輝)分科会長】 私も質問させていただいて、だいぶ時間が押してしまいましたが、今日いただきましたご意見を反映できるところは反映し、修正を加えまして決めさせていただきたいと思います。主査である松本委員、それから事務局とも相談の上、今日委員の皆さんからいただいたご意見あるいはご質問などに、可能な範囲で答えるような修正を施して最終版としたいと思います。最終的には分科会長一任とさせていただければと思いますが、いかがでございましょうか。
  (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございました。それでは、そういった形で進めさせていただきます。松本委員とも少しご相談させていただくことになるかと思いますが、よろしくお願いいたします。議題2は以上でございます。
 続きまして、議題3に参りたいと思います。議題3は報告事項ですが「その他」ということで、事務局よりお願いいたします。
【事務局】 本日付で海洋地球課の課長補佐に着任いたしました、後藤と申します。昨日まで留学制度を活用して、ドイツのミュンヘン工科大学でSTSと呼ばれる科学技術社会学という分野を勉強しておりました。これからよろしくお願いいたします。
 早速でございますが、参考資料1から5につきまして説明させていただきます。こちらは前回の3月の分科会から今日までの間で、国全体として海洋政策がどのような動向だったかについて、簡潔に述べさせていただく資料となっております。
 参考資料1につきましては、海洋開発等重点戦略でございます。こちらは昨年度に策定されました、第4期海洋基本計画に基づきまして、さらに国益の観点から重要で府省横断で取り組むべき重要ミッションを6つほど、総合海洋政策本部のほうでまとめております。具体的には、次のページをご覧ください。
 こちらの6つでございます。特に文部科学省が関係しておりますのが、1、2、6でございまして、1つ目が、AUVの開発利用の推進です。こちらは、AUVの利用や開発につきまして、例えば5年前のチームKUROSHIOの国際コンペにおける準優勝ですとか、非常に世界に伍するところでございますけれども、一方で、AUVの産業化につきまして、欧米に少し遅れを取っているところがございます。ですので、日本といたしましても、府省横断でAUVの産業化や利用開発を推進していくことを、重要戦略においております。
 2つ目は、谷委員からもご説明がありましたが、海洋状況把握(MDA)についてです。こちらは、海上・海面・海中・海底といった、全ての海洋状況を府省横断でまとめて、さらに産学官で連携しながら研究・利用開発を進めていくことが重要でございます。文部科学省としても、研究開発や研究開発に関する情報の取得や利用開発といったところで、積極的に関与していくといったところでございます。
 最後の6つ目は、北極政策における国際連携の推進等です。こちらは本日最初のトピックでも説明させていただいたところでございますが、北極域研究船「みらいⅡ」の国際研究プラットフォーム化等に取り組むことを、さらに推進していくというところでございます。具体的には、次のページから原文が載っておりますが、黄色マーカーを塗っているところが文部科学省に関連するところです。後ほど、各自で参照いただけると幸いです。参考資料1につきましては以上になります。
 参考資料2から4につきましては、6月に策定されました統合イノベーション戦略、経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針と呼ばれるものです。最後に新しい資本主義のブランドデザイン及び実行計画ですが、こちらも昔は成長戦略と呼ばれていたものです。こちらにつきましても、先ほど述べたような内容が、重要な政策文書に載っております。こちらの政策文書に基づきながら、例えば来年度の概算要求や予算編成などを行うとともに、実際に研究開発等を進めていくところでございます。
 最後に参考資料5でございます。こちらも昨月に行われました、G7イタリア科学技術大臣会合で、実際に海洋が非常に重要だというところで、(1)にございますが、全球海洋観測と海洋デジタルツインの構築。中でも研究船やアルゴフロート、係留系等のプラットフォームを活用するといったところが、実際に共同声明でも述べられておりますし、(3)のFSOI(海洋の未来イニシアティブ)でも、G7の下のワーキンググループで各国横断的に研究開発に取り組んでいくということが示されております。参考資料につきまして、以上になります。
【藤井(輝)分科会長】 ご説明ありがとうございました。委員の皆さんから、ご質問はございますか。これは国の政策関係の文書ということになろうかと思います。
 それでは、本日準備した議事は以上でございます。最後に事務局から、連絡事項等がありましたらお願いいたします。
【事務局】 事務局でございます。本日は長時間にわたりご議論いただき、ありがとうございました。
 議事録につきましては、事務局にて案を作成し、後日委員の皆さまにメールにて確認いただければと思います。次回以降の開催日程につきましては、来年3月頃を予定しているところでございます。日程調整につきましては事務局より、後日改めて、ご連絡をさせていただきますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。事務局からは以上となります。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございました。それでは、これをもちまして第72回海洋開発分科会を終了いたします。本日は、皆さま、お忙しいところありがとうございました。
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局海洋地球課