海洋開発分科会(第60回) 議事要旨

1.日時

令和元年6月6日(木曜日)14時00分~15時30分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 分科会長の選任及び分科会長代理の指名について(非公開)
  2. 海洋開発分科会の議事運営及び委員会の設置について
  3. 海洋開発分科会(第10期)における主な審議予定について
  4. 第6期科学技術基本計画に向けた海洋開発分科会における検討の方向性について(論点整理)
  5. その他

4.出席者

委員

石田委員、榎本委員、沖野委員、川辺委員、河村委員、窪川委員、藤井輝夫委員、中田委員、阪口委員、谷委員、中川委員、廣川委員、見延委員

文部科学省

佐伯研究開発局長、岡村大臣官房審議官、福井海洋地球課長、河野極域科学企画官 ほか

5.議事要旨


【事務局】
第60回科学技術・学術審議会海洋開発分科会を開会いたします。本日は御多忙の中御出席いただきまして誠にありがとうございます。
今回は第10期として初めての海洋開発分科会です。最初に分科会長を互選にてお決めいただくことになっておりますが、それまでの間は事務局にて議事を進めさせていただきます。

(1)分科会長の選任及び分科会長代理の指名について(非公開)
はじめに分科会長の選任及び分科会長代理の指名が海洋開発分科会運営規則第5条に従い非公開で行われ、分科会長に藤井輝夫委員が選出されるとともに、分科会長代理に中田薫委員が指名された。

【藤井分科会長】  これより会議を公開したいと思いますので、傍聴者の入場を許可したいと思います。


(傍聴者入場)


【藤井分科会長】  それでは、議題2であります。本分科会の議事運営及び委員会の設置について、これは事務局から説明をお願いします。
【近藤補佐】  ご説明させていただきます。海洋開発分科会の運営規則についてご説明させていただきます。資料2-1、2-2、2-3をご確認ください。
 2-1の運営規則案におきましては今回一部改正がございます。これは、科学技術・学術審議会運営規則、親会議のほうの規則が3月13日に改定されたことを受けまして、本分科会の規則につきましても、書面による議決の規定を追記したものでございます。資料2-1の変更点につきましては、以上でございます。
 資料2-2、分科会の公開の手続の詳細につきましては従前どおりで変更はございません。
 次に、本分科会における委員会の設置についてご説明させていただきます。資料2-3、委員会の設置について(案)をごらんください。今期は本分科会のもとに海洋生物委員会を設置したいと考えております。こちらにつきましては、海洋生物に関する基礎的な研究開発のあり方に関する調査・検討を行うことを目的としておりまして、特に、東北マリンサイエンス拠点形成事業及び海洋生物資源確保技術高度化の両プロジェクトが2020年度で終了することを踏まえまして、2021年度からの後継事業に関する検討を行うための委員会を設置させていただくものでございます。 以上になります。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ただいまのご説明について、ご質問等はございませんか。
 これが今現在案でございまして、これで決めさせていただくという形で、よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井分科会長】  では、この案をもって、この分科会としての決定とさせていただきます。
 続きまして、議題3であります。本日は第10期の初回ということですので、まずこの10期の間にどういった審議予定になっているかということについて説明をいただきたいと思います。議題3につきまして、これも事務局から説明をお願いします。
【近藤補佐】  それでは、資料3、横置きの表裏がございます、こちらを用いて説明させていただきます。
 今回、4名の方が新しく委員に就任いただいておりますので、まず第9期の開催実績について簡単におさらいさせていただきます。第9期におきましては、ごらんのとおり9回の委員会を開催していただきました。主に、第55回のところにございますように、海洋基本計画の改定のタイミングでございましたので、このタイミングに合わせて当分科会としての意見を取りまとめていただきました。55回、56回とご議論いただいております。
 平成30年度におきましては、この基本計画を踏まえた研究開発計画の改定、あるいは個別プロジェクトの評価などについてご議論いただきました。全部で8回の開催となっております。
 めくっていただきまして裏面では、今期第10期の主な審議事項についてご説明させていただきます。本日は第60回ということで、この後、科学技術基本計画に向けた海洋開発分科会における検討の方向性、論点整理ということをメーンの議題としてご議論いただきたいと思っております。科学技術基本計画につきましては、2021年度から新たなものになりますので、今年中にこの海洋開発技術の重要事項について取りまとめていただくことを念頭に置いております。60回、61回、62回と3回にわたって、論点整理、骨子案、案の取りまとめといったところをご議論いただければと思っております。
 令和2年度におきましても、例年どおり3回程度の開催ということで、全部で6回程度の開催にご協力いただければと考えております。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。質問等ございますでしょうか。
 よろしければ、続きまして議題4ということで、今お話がありました第6期科学技術基本計画に向けた検討の方向性について、事務局からご説明をお願いします。
【近藤補佐】  駆け足で申しわけございません。資料4-1、4-2をごらんください。
 資料4-1が、第25回の科学技術・学術審議会総合政策特別委員会において配付された資料でございます。先ほど申し上げましたように、2021年度、令和3年度からの次期科学技術基本計画について議論が始まっております。2020年6月ごろに中間取りまとめということで内閣府において議論が行われているところでございます。この内閣府の議論と平行して、文部科学省におきましても総合政策特別委員会で議論が始まっているところでございます。
 矢印に下のほうにございますように、本年10月を目途に、個別分野についての関係部会等における検討結果を、この総合政策特別委員会においてご議論いただくことになっております。ここに向けて、本分科会においても3回程度の時間をかけて、海洋分野における検討の方向性というものを取りまとめていただければと思っております。
 続きまして、資料4-2をごらんください。今回、事務局において、分科会長などともご相談しながら、一つの論点整理ということでまとめさせていただいたペーパーになっております。本日は1時間程度の時間を用意してございますので、皆さんにこれに対して幅広にご意見をいただければと思っております。
 まず、1ポツ、背景でございます。既に申し上げているとおり、第6期の科学技術基本計画に向けた検討の取りまとめを総合政策特別委員会で行っているところでございます。2パラグラフ目にございますように、このため、海洋開発分科会においても本年9月ごろを目途に、海洋科学技術分野の今後の研究のあり方、そしてそれを支える研究基盤、研究システムについて、現状の課題、今後の改革の方向性をご検討いただきまして、次期基本計画に盛り込むべき事項をまとめていただきたいと考えております。
 本取りまとめ結果につきましては、先ほど申し上げたとおり、本年10月中の総合政策特別委員会に提示するとともに、基本計画策定後の海洋科学技術に係る研究開発計画の改定にも反映していきたいと考えております。
 2ポツ、現状と課題でございます。社会の変化ということで申し上げれば、Society5.0の深化、あるいは人口減少・少子高齢化、一方で、世界的には人口増加・高齢化、地球規模課題への対応、あるいは近隣諸国の海洋進出といった社会の変化がございます。
 科学技術分野の状況におきましても、GAFA支配など台頭する技術系ベンチャー、あるいは研究成果創出から社会実装へ至るまでの知の移転サイクルの加速化、日本国内におきましては伸び悩む科学技術予算、減少する博士課程入学者数、あるいは論文数、国際共著論文等の相対的な低下といったような科学技術分野を取り巻く状況がございます。
 これらを踏まえまして、3ポツ以降ですが、検討の方向性として、あくまで事務局として論点案を整理させてもらいました。2ページ目でございますけれども、一つはSDGsの達成に向けて、海洋科学の10年、あるいはGoal 14の達成に向けて、今後海洋分野として何を強化していくべきなのか、そういったところをご議論いただければと思っております。
 論点例としましては、人類史・地質史の上では人新世に当たる現在、人類、社会、海との関係がどのように変化してきているのか、あるいは今後どのような人類社会が想定され、どのような課題への対応が必要となってくるのか。人間活動の地球環境への影響、温暖化、海洋酸性化、生体系変動などがさまざまな形で表面化しております。これらの地球環境変化と人間活動との相互関連性を把握し、政策立案へと貢献するためにはどのような取り組みを強化すべきか。あるいは、SDGs貢献に向けては、人文社会科学系を含めた異分野との連携強化、海外も含めた多様な機関との連携が必要となってくると考えられるが、それらのために必要とされること、考慮すべきことについて、ご議論いただければと思っております。
 (2)ですが、先ほど分科会長からのご挨拶にもございましたように、膨大な海洋情報からの新たな価値創造というところもの一つの論点になろうかと思います。第3期海洋基本計画におきましても、MDA体制の確立等に係る項目が新たに追加されましたし、海洋の調査、観測により収集される膨大な海洋情報から、AI、ビッグデータ解析技術を活用して新たな価値を創造し、経済発展や社会的課題の解決につなげていくことの重要性というのが盛り込まれております。これらのデータ取得、データ統合のあり方について、どのように考えるべきか。
 具体的な論点例としましては、解決すべき経済的・社会的課題をまず特定し、そのために必要とされるデータ情報とはどのようなものなのか、これらのデータ情報をどのような手段で収集・蓄積し、利活用していくのが適切なのか。海洋分野において、そもそも多種多様な機関がどのようなデータ、学術的なものも含まれますけれども、どのようなデータが、どのような場所に存在しているのかということを特定する必要があるのではないか。あるいは、データ取得に当たっての品質確保、信頼性維持のための管理のあり方、各所でばらばらに収集されているデータの連結・統合、これは組織内、あるいは組織を越えてというところがあるかと思います。そのためのプラットフォームのあり方についてもご議論いただければと思います。課題解決に向けた新たな価値創造のためには、さまざまな利用者、ステークホルダーによるデータ共有が不可欠ですが、その際の留意点は何かといったようなことが二つ目の大きな論点としてあろうかと思います。
 三つ目の、それらの研究開発を支える基盤、研究システムの改革といったところも論点の一つとして挙げさせていただいております。各種データを取得するための観測網、船舶等のプラットフォームというのは活動の基盤として不可欠なものでありますが、これらを活用して得られるデータ・情報をどのように入手して、産学官の機関で活用していくのか。そのためには、論点例に挙げさせていただいておりますように、共有・有効利用の進め方、あるいは、大学・国立研発で得られた研究成果の社会実装のための産業との連携強化。また、国際競争力強化のための他国との国際協調、連携についてご議論いただければと思っております。
 上記項目以外でも、参考資料の総政委の論点とりまとめにございますものも広くご議論いただければと思っております。
 審議スケジュールとしましては、冒頭申し上げましたとおり、本日はこの論点整理について幅広くご議論いただいて、次回、8月に予定されております61回の海洋開発分科会において、骨子案を事務局から提示させていただきたいと思っております。そして、9月に重要事項案の取りまとめをさせていただいて、10月の総合政策特別委員会で結果をご報告させていただければと考えております。以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 ここで、佐伯局長がいらっしゃいましたので、一言ご挨拶をいただければと思います。
【佐伯局長】  研究開発局長の佐伯でございます。今期の委員会の最初ということで一言ご挨拶申し上げます。
 まず、ご多忙中にもかかわらず、先生方におかれましては、第10期の海洋開発分科会にご就任いただきましてまことにありがとうございます。また、本日は大変暑い中、文部科学省までお運びいただきまして、心より御礼を申し上げます。 既にご説明があったかと思いますが、この委員会では、文部科学省が進める施策の強化とともに、国の政策に反映すべき施策についてご議論いただきたく存じます。前の期では、第3期海洋基本計画に対しての打ち込みといいますか、必要な部分についてご議論いただき、それを反映してまいりました。
 海洋は大変重要な領域でございまして、地球環境変動、あるいは防災の観点からも、海洋に関連したさまざまな研究開発の推進、先ほど説明を事務方が申し上げましたとおり、大量のデータをいかにして蓄積し提供していくかといった重要な課題がございます。まさに、科学技術全般の観点からは第6期の海洋技術基本計画の策定が本格化してきているところでございまして、この期も大変重要な節目のご議論をいただくこととなっております。
 この分科会におきまして、文科省として提言していくべき事項について、しっかりとご議論いただければありがたく存じます。今後とも忌憚のないご議論を賜りまして、今後の海洋科学技術の振興に向けたご助言をいただきますようお願い申し上げて、私のご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、ここからは委員の皆さんにご意見を頂戴できればと思います。
 まず、資料4-2、これは論点整理のたたき台みたいなものですけれども、今ご説明いただきましたので、全体にわたって、例えば見落としている項目がないかといったことなどについて、まずは全体としてご意見を頂戴できればと思います。どなたからでも結構ですので、お願いいたします。
 では、見延委員、お願いします。
【見延委員】  北海道大学の見延です。2点ご提案したいと思います。
 一つは、2ページ目にあります論点例の丸の二つ目、人間活動の地球環境への影響というところで、地球温暖化、海洋酸性化、生態系変動等とありますけれど、先日のサイエンス20での提言において、安倍首相に手交された共同声明の中には、地球温暖化関係としてもう一つ、海洋貧酸素化も含まれておりました。この海洋貧酸素化は非常に注目を集めている現象ですので、ここに入れてはどうかと思います。
 また、もう一つ、海洋プラスチックごみについても、この分科会でも何か提言する必要があるのではないかと思います。もう一つよろしいですか。
【藤井分科会長】  どうぞ。
【見延委員】  もう一つは、(2)の丸の三つ目にありますデータについてですが、私もビッグデータの解析を主に行っておりますが、最近非常にビッグになっておりまして、現実的にダウンロードができないというような大きさになっております。このビッグデータは主に数値計算で作成されおり、例えば地球温暖化が将来どうなっていくのかが全部数値計算で出されます。そのダウンロードできないデータに対して、最近海外ではどのようにアプローチをしているかというと、大きな研究センターで集約的に集めて、その研究センターに研究者がログインすると。

どの研究者がログインできるかは、ある程度スクリーニングをして、特に海外からは優秀な人だけをログインしてもらえるようにしております。日本でも結構優秀な方がそういうセンターにアカウントを持って、そこで集めたデータを解析しているという現状があります。私もアメリカとイギリスにアカウントを持っています。そうすると、そういった研究者が日本のデータを解析せずに、海外のデータを主に解析するということも出てくるという現状がございます。
 従いまして、ここのデータ連結・統合のためのプラットフォームに加えて、データ解析のプラットフォームということをこの分科会で議論してはいかがかと思います。わが国ではDIASというデータ収集サーバがありますけれど、あれはその上で解析をするようには設計されておらず、ユーザーはそこからダウンロードをするだけです。世界の流れはもう一歩先に進んでいるかと思います。以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。重要なご指摘をいただいたと思います。海洋プラスチックごみ関係は内局予算で進められていることだと思いますし、今の最後のご指摘もDIASがございますが、使うためのインフラがまた追いついていないのではないかというご指摘でした。ありがとうございます。
 では、ほかにございますか。中田委員、どうぞ。
【中田委員】  今のお話に関連して、地球温暖化、海洋酸性化、海洋貧酸素化というのは結構同時に起こっていて、その影響が複合的に出てくるという現象があると思います。それを一気に監視する技術とか評価する技術は、今のところないというか、ほとんど確立されてないと思うのです。そういう部分の研究を強化していくのはいかがかと思いました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これは、解析的な意味で取り組むと。
【中田委員】  そうです。手法開発と解析です。
【藤井分科会長】  ほかにございますか。窪川委員、お願いします。
【窪川委員】  これは多分が入るかもしれませんけれども、今BBNJ(国家管轄権外区域の海洋生物多様性)の海洋遺伝資源が問題になっておりますので、特に海洋生物学にとって問題になる可能性が非常に大きくなることから、科学技術のほうからも取り挙げていただけると良いかなと思います。
【藤井分科会長】  いわゆる海洋生物資源のデータベースというところになります。
 ほかにございますか。
【榎本委員】  極地研究所の榎本です。データのお話、観測の技術や解析の話が出たのですが、この辺は大変重要で、2ページの下のほうの論点例のところで、データ取得に当たっての品質確保やデータの信頼性維持のための管理のあり方とあるのですが、まずデータを集めないといけなくて、それが研究者はとってくるところに大体集中しているので、観測はしているもののまだ集められてないデータ、まだまだビッグなデータがあるはずなのですが、それが見えない問題として残っているのではないかと思います。
【藤井分科会長】  わかりました。つまり、データとしてとられているけど、利用可能な……。
【榎本委員】  そのところまで持ってこられてないものを取り上げるということです。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 ほかにございますか。沖野委員。
【沖野委員】  データ管理ですけれども、データの公開性みたいなものも非常に大事かと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これは、データの公開とか利用の取り扱いということになるでしょうか。そのほかございますか。
【榎本委員】  データ以外のところでもよろしいですか。
【藤井分科会長】  はい。どうぞ。
【榎本委員】  背景のところの3行目に、特に「研究力向上に向けたシステム改革」ということで、研究力向上とあるのですが、研究力をどのようにして測るかというところで、一つの指標としては、現状と課題の(2)の中に、「我が国の研究力(論文数、国際共著論文等)の相対的低下」とありまして、最近これを見に行くと、論文は増えていて、優秀な論文も増えてきているのですが、国際的に比較すると相対的に低下というのが確かにあるようです。逆に、相対的に圧倒的に上に上がってきているのが中国でして、分野によるとは思いますが、ほかの国と全然違う上がり方をしています。そこで、中国に何が起きているのかなと、私もよくわかっておりませんので、中国で起きていること、国際的な研究力の上昇はどういったものがあるのかというのをぜひ、この提言ではないですが、知りたいと思います。
【藤井分科会長】  わかりました。このあたりは少し現状把握ということがあればいいというところでしょうか。ほかにございませんか。谷委員お願いします。
【谷委員】  谷でございます。私はGEBCOという海底地形図をつくるプロジェクトの委員長をやっています。世界の海底がほとんど測られておらず、また海洋のほかのパラメーターについても実は海はほとんど測られてないということは皆さんご存じかと思います。そこで、日本でデータを充実しましょうというときに何を言うかというと、おそらくは日本のEEZの中をという話になるのですが、世界で外洋の調査ができる国がどれだけあるか、測られていない外洋がどれだけあるか、そこで日本の責任は何なのかというところは今まで議論されたことがないと私は思っています。
 やはり、それなりの海洋調査大国で、能力は一応あって、お金がないだけですが、世界に対しての責務みたいなのがあるのではないかという気がしないでもないのです。その辺も議論しておかないと、ここではデータがさらに必要だと言われていますが、世界における日本の立場という観点からも見て、どうすべきなのかというところも議論されていいのかなと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。おそらく、これは3ページの(3)の最後の丸に近いお話かと思います。国際協調か、国際的な責任をいかに果たすか、そういったところでしょうか。いずれにしても、そういう国際的な視点は必要だということがあろうかと思います。大変重要なご指摘だと思います。
 阪口委員。
【阪口委員】  今の谷委員のお話に関連するのですが、無人省力化観測技術の向上というものは今後外洋等の海洋調査を行うときに必要で、それにはイリジウム等の高価な通信ではなくて、廉価な大容量の海洋通信という技術も必要になってきますので、入れてはどうかと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。そうですね、まさに洋上でのデータの通信、可能であれば現場とリアルタイムでつなぐというのはまだなかなかできていないところですので、先駆けてここで議論しておくというのが大変重要だと思います。
【阪口委員】  特に無人化ですよね。通信ができないから完全無人化ができない、完全無人化ができないから通信技術が必要とされてないのです。要するにマーケットとニーズの問題が重く立ちはだかっておりますので、進めるとしたときにはまずは無人化がいいと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
【中川委員】  日立の中川です。今のお話しに関連して、こういった海洋上、どちらかというと海面の通信技術に関して、今まではブイ等を海上に浮かべて、そこからpeer to peer(P2P)の通信で船まで持ってくるというのが主流だったと思うのですが、今後、ドローンや5Gとかが出て、無線通信が出てまいりますので、どちらかというと今までそういった技術は確立されたものを海洋に持ってくるというスタイルが多かったかなと思うのですが、だんだん基地局とかではなくて、peer to peer(P2P)の通信が中心になってくることを考えると、むしろ海洋のそういった通信といったもの、特に沿岸が中心になるのかもしれませんけれども、そういった先端的なものを取り入れていくというのがいいのではないかなというふうに思います。特に防災等の観点ですね。今、津波とかも統計に入ってはおりますけれども、なかなかリアルで入ってこないし、予測までというところに持っていくのは難しいと思いますし、5Gが普及してくるのが2021年ですので、そういった観点からも重要なことかなと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これも大変重要な技術的な今後の方向性だと思いますので、ぜひ検討させていただければと思います。
 そのほかございませんか。廣川委員お願いします。
【廣川委員】  EEZ内の海洋の情報利用について、私共も海洋資源を中心にやっておりますが、民間企業が海洋で産業化するというような視点から申し上げますと、非常に陸に比べて海洋というのは情報が少ない。我々は海洋資源を調べるに当たって、まずは海底地形から調べます。そのような、基礎的な海洋の情報というか、それもまだ十分ではないという認識でおります。
 また、いろいろ開発するに当たっては、環境を重視して開発していかないといけない。しかし、そこにどういう生物がいるか全くわからない。海洋の環境に関する情報インフラの整備は非常に重要で、そういうところから始めていかないと、なかなか民間が注目して産業化するという方向には行かないと思います。こういった情報を整備するに当たっては、それなりの制度や技術精度をもってやっていかないといけないと思います。その測定データとかそういったものもきちっと取っていくのも重要なことではないかと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ちょっと一つ確認させていただきたいのですが、今情報インフラとおっしゃったのは、いわゆる情報そのものということでしょうか。
【廣川委員】  そうです。
 あと一点、地形情報にしても、安全保障上の問題がございますので、どこまで公開すべきなのかというのも考えておかないといけないと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。確かに……。
 どうぞ、石田委員。
【石田委員】  環境総合テクノスの石田です。大変ベーシックなことを言わせていただきたいと思います。私どもは15年前と思いますが、一時期JODC(日本海洋データセンター)さんのデータベースセンターで、化学データのクオリティ・コントロールができてなくて使えないということで、当社でクオリティ・コントロールチェックをやらせていただいたことがありました。昨今ではデータが膨大な量であればクオリティが少々悪くても解析に耐えうるというような考え方もありますが、化学データについてはやはりクオリティを高めないと解析しても意味がないことを強く感じました。
 今、AUVとかで、採水してデータをとるということではなくて、センサーによって広範囲に測るというふうになっておりますけれども、そのセンサーのキャリブレーションもできてないまま測っているというところがあるので、そういうキャリブレーションシステムを作り上げるということが大切だと思います。
 我々は長いこと、栄養塩の標準物質をつくったり、CCSに関しての状況を見るためにpHセンサーのキャリブレーションのために比色のpH測定方法と比較したりとか、そういうことをやってきたのですが、やはり特に炭酸系の場合、ちょっとデータが変わると大きくpCO2などが変わってきますので、その辺のことを考えていっていただきたいなと思っております。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これも大変重要なご指摘で、データそのものも大事なのですが、そのデータの入り口になる測定のところがどれぐらい品質管理できているか、これは実はセンサーもそうなのですが、AUVやビークルでも、そもそもビークルのポジションがどれくらいの精度で制御できているかというところから考えると。いろいろな意味でハードウェアのパフォーマンスがどれぐらい保証されているとか、あるいは保証されていないデータがどの程度信用できる値なのか、そういうことがわかった上でデータを扱うということは確かに重要な視点だと思います。
 川辺委員、お願いします。
【川辺委員】  2番目の、膨大な海洋情報から新たな価値創造に向けてというところに、新たな価値を創造して、経済発展や社会的課題の解決につなげていくという話があるのですが、これは、膨大な海洋情報を使って、どのような海洋産業を発展させていくことができるのか、今よく言われるブルーエコノミーの展開へつなげることかと思います。
 同時に、新たな海洋産業だけでなく、昔からある海洋産業、その代表的なものが漁業やレクリエーションなどですが、そういうものとの関わりもぜひご検討いただきたいと思っております。例えば今、情報インフラのお話が出ていますけれども、水産庁の方でとられているようなデータとどういうふうに関わるのか、そのあたりもご教示いただきたいと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 中田委員。
【中田委員】  昨年、漁業法というのが70年ぶりに改正されて、これまでに比べて資源開発を非常に厳格化する、それから、その規則が資源評価の対象としても、これまでの4倍ぐらいの目安という中で、漁業者からの漁獲データをその場から吸い出すといった技術、仕組み、それからそれを維持していく仕組み、いろいろな仕組みを合わせて急速に整えなければいけない状況になっています。そういう今までとは少々違った質のデータをこれから大きく意味を持ってくる可能性が出てきます。そういったデータはおそらく、温暖化の影響や生物多様性がどのようになっていくのかということを調べるために非常に重要なデータになってくると思います。私は中にいながらも、やっぱりうまく出せるものは出していく、守るものは守るというところをしっかりとつくる必要があると思っています。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 河村先生、お願いします。
【河村委員】  今のお話に関連するのですが、やはり漁業との関連をどうするかというのはかなり重要な問題で、避けて通れないと思います。漁業も変わり、これから水産をどう考えていくかということが変わっていく中で、国策も含めて、これから日本の漁村であったり、地域振興も含めて漁業をどのように考えていくのか、やはりそれを抜きにして海洋モデルは語れないと思います。なかなかこの中で話すのは難しいと思うのですが、やはり視点としては重要だと思いますので、考える必要はあるかなと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 今のお話はつまり、海洋のいろいろなデータをとって、情報のレベルに応じた活用形態を整えていこうとしたときに、ホスト機関といいましょうか、国がベースを持っていて、国が支えていくという部分と、それから民間で利用していく、あるいは、今のお話でいうと漁業の観点もあって、そのあたりをどういうふうにしていくのかというのが一つの観点になるのかなと。地域振興もまさにそれにかかってくるのかなというふうに。これは感想ですが。 ほかにございますか。谷委員、お願いします。
【谷委員】  済みません、2度目の発言をさせていただきます。
 今の(2)のところで、バラバラに収集されたデータの連結・統合と書いてありますが、誰がというところは議論されていませんね。特に、いろいろなデータをとって、専門の方がその研究をするという意味で使われますが、そうではなくて、ルーティン的にデータをじっと見つつ、そこに起きる変化を見抜くことが本当のMDAだと思うのですが、その気付くための仕組みをどこかにつくらないと、データだけがあってもそのデータを活用するのは外国人ということになってしまいかねません。向こうがデータをとって公開するとなったら、まず日本が仕掛けをつくって、政府の中なのか外なのかは分かりませんが、能力のある母体がきちんとデータを読み取れるようにするということを考えないといけない、その仕掛けの議論も要るのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。確かにそのあたりの議論はまだ十分でないところがあると思いますので、ぜひ今後の議論にさせていただければと思います。
 (1)については、今のところご意見を頂戴していないと思うのですが、このあたりについてはいかがでございましょうか。石田委員。
【石田委員】  済みません、私も2回目になってしまいますが、私共環境アセスメントということを40年にわたってやってきているのですが、SDGsもそうですけれども、開発があった場合の影響を予測して、悪影響が無いように開発をしていこうという考え方です。だから、前に進めることばかりをやっているわけですけれども、実際に事業者が予測して対応したことが果たしてうまくいったのかどうかとか、その検証があまりなされてないと思います。開発の中でやはり予測とは異なったということもあるわけです。だから、環境を保全するという技術の開発というものが必要ですし、その保全、回復をどのように監視していくかという方法を検討し必要なものは技術開発することも大切ではないかと思います。ただし、保全や長期に亘る監視を誰がやるのか、どこがやるのかということについては非常に大きな社会的問題になってくるので、そういった社会的な仕組みも考えながらやっていく必要があるのではないかと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。そのあたり、まさに、ここでいう人文社会科学系の知見が必要なだけなのか、社会制度的なという意味でも議論が必要という理解でよろしいですか。
【石田委員】  はい。
【藤井分科会長】  そのほかに、この1番目の視点でございますか。いわゆるサスティナビリティーを含めてですが。窪川委員。
【窪川委員】  先ほどの海洋プラスチックごみの話がありましたけれども、これもそれに関係していると思います。今度G20がありますけれども、先日サイエンス20で、日本学術会議のほうから、海洋生態系への脅威と海洋環境の保全という声明を立てておりますけれども、そういった環境に関することも考慮しながら進めていただくと良いと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。そうですね、ここはプラスチックごみのことは直接的には書かれていなかったので、これはまず入れてもいいかなと思います。
 川辺委員。
【川辺委員】  海洋環境の保全には社会制度の改革も必要になりますので、海洋管理、沿岸域管理をどうおこなうかという話だと思うのです。実際に、SDGの到達度を見るときには、管理がどのように行われているかも問われるかと思います。先ほど石田委員がおっしゃられたことも、今、窪川委員もおっしゃられたことにもかかわるのですけれども、例えば海洋プラスチックごみに対応するときに、沿岸管理の枠組みというものをどういうふうに考えるのか、そういうところまで視点を広げていただくとよいと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ぜひそのあたりもプラスチックごみの関係では非常に重要になってくると思います。そのほかございますでしょうか。特に1番目の話についてございましたらお願いします。阪口委員。
【阪口委員】  済みません、私も2回目です。1番目の論点例の三つ目の丸に、人文社会科学系も含めたとありますが、漁業に関する国際会議に出席しますと、我が国だけが日本固有の文化と歴史を有しているということで、他国の海洋に関する文化とかなり異なっているということを強く指摘されるわけですね。他方、例えば無人観測船を昨年度JAMSTECで使ったのですが、アジア地域だと無人観測船は泥棒の標的になるのです。ところが、アメリカ沿岸で無人観測船を使う場合には、無人観測船を見つければ写真に撮ってコンテストに応募しようかとか、そういう文化をポジティブに使っています。まさかアメリカの海洋に進出しているような人が、その無人観測船を壊して部品を持っていくということは絶対にあり得ない。要するに、海洋リテラシーというものを強く認識して、海洋文化というものを向上させる試みをポジティブにやっているのです。我が国の固有の歴史と文化ということを守ることも大事なのですが、リテラシー向上のための取り組みというものも、ぜひ海洋に関してはやっていかないと、ほんとうの意味での国際連携というのから取り残されていくと思いますので、そのご検討をいただければと思います。

【藤井分科会長】  ありがとうございます。これも、先ほどの一般の方がデータを利用する話にも通ずるもので、つまり私の理解ですと、そもそも海に関わっていた人だけが海のことを考えているというのではないということですね。とても重要なご指摘だと思います。ありがとうございます。そのほかございますか。どうぞ。
【見延委員】  人文社会科学系との連携ということは、明確に書いてないですけど、理系と人文系との連携というところかなと思います。うちの大学でもそういうことを議論していて、それがなかなか難しいと。なぜ難しいかというと、人文系と理系という、かなり文化が違う人が話すためにまずコミュニケーションのコストが高い。そして理系にとってはベネフィットが少ない。アウトプットは人文系の方に行ってしまうので、理系は下働きになって、しかも研究費も人文系の基準ではかられるから安くて、スズメの涙であると。結局、コストが高くて、ベネフィットが少ないから、これではやってはいけない、特に若い人たちには危ないと、私はうちの大学では言っています。これを本当にやろうとしたら、そこに研究者のエコシステムができるような仕組みがないと、やれやれと言っても、とても動かないですね。
【藤井分科会長】  またそのあたりは少し議論の対象にさせていただければと思います。
 概ね委員の先生方からご意見出ましたでしょうか。時間は余裕があるのですが、このあたりでよろしいですか。では、窪川委員。
【窪川委員】  全体的なことで申しわけないですけど、第3期の海洋基本計画の中に、海洋人材の育成と国民の理解の増進という項目がありまして、今拝見した論点整理のところで、人材育成というところが具体的に書かれていなくて、ただ、先ほど河村委員にお伺いしたら、やはり研究所でも育ち盛りの学生さんが減っているという状況もあるということと、最近の女性活躍ということで、ここにも女性が委員として入っておりますけれども、多分日本は海外の先進国と比べると、女性が海洋分野で働いている率が低い、あるいは理系、システム分野のほうですけど、理系工学系の比率が低いという状況もありますので、そういったことも少し議論できたらいいのかなと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。大体このようなことでよろしいですかね。
 どうぞ、川辺委員。
【川辺委員】  先ほど海洋リテラシーの向上の取り組みの話がありましたが、ESD──Education for sustainable development(持続可能な開発のための教育)というものの海洋版が、さまざまな組織でおこなわれています。こういう「海のESD」も議論の対象に含めていただけたらと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。先ほどの窪川委員の御意見も含めて、人材育成のところの視点も少し加えるということにさせていただければと思います。
 よろしいでしょうか。よろしければ、本日いただいたご意見をもとに、また骨子案を取りまとめて、次回にご議論いただければと。次回は8月の予定ですかね。後ほどお知らせいただければと思います。ご意見ありがとうございました。
 続きまして、次の議題5ですが、その他ということで、こちらは事務局からご説明お願いいたします。
【福井課長】  その他でございますけど、既に皆さんのお耳には入っているかと思いますが、Team KUROSHIOの話でございます。改めてご説明するまでもございませんが、XPRIZEのShell Ocean Discoveryというもので、海底のマッピングのコンテストということで32チーム参加していたわけですが、5月31日に発表がありまして、見事、Team KUROSHIOが準優勝ということでございました。これは一つの日本の海洋に関する開発技術が、特に若手研究者が参加したということもあって評価されたということではないかと思っています。以上、簡単ですがご紹介させていただきました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。大変すばらしい結果でございました。谷委員、何か。
【谷委員】  ちょっと一言だけ申し上げたいと思います。
 GEBCOという、先ほど少々申し上げましたように、私委員をしておりますけれども、海底の様子があまりにもわかってない。どのぐらいわかってないかというと、今、1キロメッシュで海底地形の情報を出しているのですが、そのうち82%はイマジメントというか、計算で出しています。有力な値から計算して出しているのです。しっかりとしたデータがあるのは18%しかないのです。海洋の色々な利用を考えると、1キロの大きさのグリッドでは全然足りないので、100メーターにしようといっている最中だったのですが、そこにShell Ocean Discoveryがやってきて、5メーターで、しかも無人ではかるという。とても大変ですが、我々の会合で提案されて、それがそのままXPRIZEの舞台になったのです。私どものチームも出て、そちらは日本財団からご支援いただき、優勝しました。そっちは全然新聞に載らないのですけども。優勝も準優勝も日本なのです。ただ、それは誰が優勝したかということではなくて、世界の海が5メーターグリッドでわかるようになる、しかも無人でというところがすごいところなのだと思います。何かそういうふうには言われなくて、準優勝できた日本はすごいねって言われますけども、そうではないと申し上げたくて発言しました。とにかく世界で良いことが起こったことと、両方とも日本が絡んでいて、私のチームも日本人が1人入っていますし、データ解析は彼が1人でやりましたから、なかなか日本も悪くはないと思いました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。私も一言。要するに、これをどうスケールアップして、今お話が出ました5メーターメッシュで、どこまで広くできるか、これはまた次のステップにつながっていくという理解でよろしいのではないかと思います。なかなかこれを広くカバーするのはそう簡単ではないということかと。
【谷委員】  あの技術をこのまま殺すのはすごくもったいないなと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。本日ご議論いただく議題はこれで終了ということでございます。
 次回の分科会は、8月9日木曜日の14時から16時ということになってございます。こちらは追って事務局からご連絡を差し上げます。お盆の直前でありますが、よろしくお願いいたします。では、本日の分科会はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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