海洋生物資源に関する研究の在り方について(概要)

海洋生物資源に関する研究の在り方について(概要)

1. 経緯

 海洋生物資源の持続可能な利用や海洋生物多様性の保全への国民の関心とニーズの高まりを踏まえ、公募型研究開発事業として「海洋生物資源確保技術高度化」を平成23年度から開始するとともに、海洋開発分科会海洋生物委員会においては、平成23年1月より、海洋生物研究に関する中長期的な方向性について検討を進めてきた。

2. 海洋生物資源に関する研究の在り方について

 海洋生物資源を持続的に利用するとともに、産業創出につなげていくためには、大学等の研究機関における研究開発が必要であることや、若手人材の積極的な育成が求められることを指摘している。重点化すべき研究課題については、以下の5項目に整理した。

 さらに研究開発を実施する際には、異なる研究分野の融合、海洋生物や海洋生態系に関する適切なデータベース整備や地球観測データとの統合に向けた連携、国際連携のより積極的な推進、及び研究成果を社会に実装させる機関との連携が必要なことを指摘している。

(1)海洋生態系に関する知見の充実

 海洋生物資源の持続的な利用には、海洋生態系の総合的な理解が進むことが必要であり、回遊経路の変化要因、産卵の成否に深く関わる藻場などの産卵場ならびに生息・生育場の状態、水を介して密接につながる森林生態系などの陸域の影響、地球規模での環境変動との関わりなどを、長期的かつ体系的に調査研究することが重要。

(2)生理機能の解明と革新的な生産技術

 海洋生物の養殖や放流の持続的な展開にあたっては、革新的な手法の導入を検討すべき課題も多く、海洋生物の生理機能に関する研究分野と生命工学分野などとの融合による新たな生産技術の研究を実施することが必要。

(3)新たな有用資源としての活用

 海洋生物は、これまで魚介類や海藻類が主に食料資源として利用されてきたが、近年では、再生可能エネルギー、医薬品やバイオテクノロジーなどの材料としても注目されている。海洋は未知の遺伝資源の宝庫であり、海洋生物の機能の利用に関する多様な技術の創出を最終的な目的として、基礎的な研究開発を着実に進めることが重要。

(4)観測、モニタリング技術の開発

 海洋に関する基盤的なデータや知見を充実させるためには、海洋生物の分布や密度とその変動を長期的かつ体系的に観測することが不可欠であり、工学や生命科学を専門とする研究者とも連携しつつ、先進的な技術を開発していく必要がある。

(5)東日本大震災への対応

 3月11日の大地震とそれに伴う巨大な津波は、東北太平洋沿岸域及び沖合域の海洋生態系に大きな打撃を与えた。海洋生態系の構造と機能の変化の実態とそのメカニズムを理解したうえで、漁場の回復を図ることが必要。また、継続的な被災地の発展を図るため、地域の特性やニーズを踏まえつつ、新たな産業につながる技術開発の実施も重要。

 このような研究開発を継続的かつ体系的に実施するため、全国の関連研究者のネットワークとして、三陸沖沿岸域を活動拠点とする大学等を中心としたマリンサイエンスの拠点を東北に形成することが必要。同拠点における活動については、海外の研究機関や民間企業とも連携することが必要であり、将来的には、国際的な海洋研究拠点として発展、継続していくことが期待される。

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研究開発局海洋地球課