令和5年12月26日(火曜日)10時00分~12時00分
オンライン開催
松本主査、岩崎委員、奥村委員、河野委員、小島委員、谷委員、廣川委員、巻委員、湯浅委員
山之内海洋地球課長、伊藤海洋地球課課長補佐 ほか
【松本主査】 ただ今より、第12期科学技術・学術審議会 海洋開発分科会 深海探査システム委員会の第2回会合を開催いたします。本日は御多忙にもかかわらずご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
まず、事務局より参加者・定足数の確認及び配付資料の確認をお願いいたします。
【事務局】 事務局でございます。本日は日野委員より御欠席の御連絡を頂いております。
現在10名中9名の委員に御出席いただいており、本委員会の運営規則第2条に定める定足数の過半数を満たしておりますことをご報告いたします。
なお、本日は情報・話題提供のため神戸大学海洋底探査センター教授の石橋純一郎様と、国立研究開発法人海洋研究開発機構技術開発部長の志村拓也様に御参加いただいておりますので、御紹介をさせていただきます。
続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第に掲載されておりますとおり、資料1-1~資料5、参考資料1、参考資料2を事前にお送りさせていただいております。
御不明な点、不備等ございましたら事務局まで随時お知らせいただければと思います。以上となります。
【松本主査】 ありがとうございました。それでは、本日の議題に入りたいと思います。
本日は、議題1において、前回の議論を踏まえた本委員会の今後のスケジュールや、今後実施予定のヒアリングの趣旨について事務局より説明があった後、議題2~3において各分野の研究開発動向について有識者よりヒアリングを行いたいと思います。
はじめに議題1「深海探査システム委員会における検討の進め方」について、事務局より御説明をお願いいたします。
【事務局】 事務局でございます。資料1-1を御覧いただければと思います。
前回の深海探査システム委員会で御指摘いただきました平成28年の提言内容のうち、現状がどうなっているのかということを端的にまとめた資料となります。
ROVにつきましては、7,000 m以深対応はケーブルの課題が大きく、未達成。
AUVにつきましては、現在8,000 m級のAUVの開発を予定しており、達成予定。
HOVにつきましては、「しんかい6500」の最大限の活用の方に重点を置いて運用継続してきたということから、それ以上の7,000 m以深の海域にアクセス可能な探査機の開発についてはまだ検討していない。
共通事項といたしまして、複数探査機の活用につきましてはSIP等において研究開発を推進しており達成という形になってございます。
次の頁は、前回の平成28年の次世代探査システム委員会における論点を参考として付けさせていただいたものでございます。
続きまして資料1-2をご覧ください。本委員会では、前回の委員会での御意見や、今後の深海探査システムの在り方について、先ほど御説明いたしました達成状況を踏まえて、以下の三つの観点でヒアリングを実施し、ヒアリングで示された各コミュニティからの御意見を踏まえて、今年度中に中間取りまとめを行うこととさせていただきたいと考えております。
論点1では、深海探査システムに求められる能力ということで、深海探査システムのユーザーである各分野の専門家の皆様から、各分野の最新の研究動向や、今後の深海探査システムに対するニーズについてヒアリングを実施します。
論点2では、深海探査システムを実現するための研究開発ということで、産学の専門家の皆様から、探査機や要素技術に関する最新の技術研究開発の動向や今後の展望についてヒアリングを行います。
論点3では、その他(運用方法・体制、人材育成、アウトリーチ等)ということで、メディア関係者の皆様から自然科学番組の制作等のアウトリーチ活動においてヒアリングを実施します。また、その他では①②のヒアリングにおいて、産学の専門家の皆様から深海探査システムを取り巻く諸課題(運用体制、人材育成、産学連携等)について意見を聴取します。
その後、皆様の御意見をまとめて中間取りまとめを行う、という流れで考えております。
今回の第2回は黄色マーカーを引かせていただいております、論点1のニーズということで海底地質学、地球生命科学、海底鉱物資源の3つ分野についてと、深海探査システムを実現するための研究開発ということで水中音響通信の技術開発動向について御発表いただく予定となっております。
今後の予定といたしまして、今回は第2回ということで先ほど御紹介させていただいたヒアリングを行い、年明け2月の第3回では資料に記載のヒアリングを行うことを予定しております。
事務局からは以上となります。
【松本主査】 次に、議題2「我が国の深海探査システムに求められる能力について」に入ります。
本日は、海底地質学、地球生命科学、海底鉱物資源の3分野の専門家から、各分野の研究開発動向や深海探査システムに対するニーズについてヒアリングを行いたいと思います。
まずは、海底地質学の分野について、谷委員から御説明を頂きたいと思います。谷委員、どうぞよろしくお願いいたします。
【谷委員】 国立科学博物館の谷です。よろしくお願いします。
私の専門の海底地質、特に海底火山のように、海底下でマグマがどのようにできて、それが噴火したり、あるいは地下で固結して地殻になっていくという過程を研究しています。
私は元々陸上の地質を研究していたのですが、初めて乗船した調査航海がたまたま「しんかい2000」の引退航海で、その最後の潜航の機会を、こういうのは若い人が体験すべきということで譲ってもらって搭乗させてもらって、それで深海研究の魅力にはまって今に至ります。私自身は主席研究員としてこれまで15回の調査航海を実施してきています。有人潜水船は「しんかい6500」と合わせると10回潜っています。ROVでの潜航調査は、自分が首席の航海で70潜航以上、その他の航海を合わせても100潜航以上関わっています。
今日は、深海探査機のユーザー側としまして、特に我々の固体地球科学分野における深海底調査とサンプリングの必要性についてご紹介したいと思います。
まず、我々の分野での水深別のニーズと現状の潜航調査インフラの調査可能水深をまとめてみました。日本近海では最近福徳岡ノ場や硫黄島等での噴火が注目されていますが、そのような海底火山噴火研究での比較的水深の浅いニーズから、後で少しお話しますが、より深い水深でのテクトニクスやマグマ活動まで幅広い水深でのニーズがあります。それは浅い部分、現状では4,500 mまでならばROV、それよりも深いところ、6,500 mまでならば「しんかい6500」がカバーするという形になっています。
私が関わった研究で深い水深の調査が決め手となったものとしましては、伊豆小笠原海溝の陸側斜面において、「しんかい6500」と、「かいこう7000II」という今引退したROVを使って島弧形成初期の地殻断面の層序を解明したというものがあります。この図は縦軸が水深になりますが、小笠原諸島沖の海溝斜面において南北に系統的に潜航調査を行いまして、水深ごとに構成岩石が異なるということを明らかにしました。特に水深6,500 m、この点線が引いてあるところなのですが、そこよりも深い海底でカンラン岩と呼ばれているような、この図で紫色になっているところなのですが、マントルを構成しているような深い岩石が発見されました。
これはどういう成果かということをもう少し詳しくお話ししますと、地球の表面はプレートと呼ばれるいくつかの岩盤で覆われていて、そのプレート同士の境界ではプレートが生まれたり、あるいは沈み込んだりしているということはプレートテクトニクスということで御存じかと思います。しかし、そもそもそのプレート境界でどうやって沈み込みが発生するのかという根本的な問いについては、地球科学の第一線級の未解決の謎として残っています。海底調査から、右の図のようにプレート沈み込みが起こる最初期には特異なマグマ活動が起こるということが、この海溝陸側斜面の調査から分かってきました。そのときのマントルに達するような地殻断面が、この海溝斜面の深部に露出しているということが潜航調査から明らかになりました。採取された岩石の分析から、このプレートが沈み込む最初期のマグマ活動について、世界をリードするような一連の研究成果が得られています。このカンラン岩は、水深6,500 mよりも少し深いところに露出していて、これは7,000 mまで潜ることができたROV 「かいこう7000II」というものを使うことで初めて達成できた発見でした。しかし、現在は母船の「かいれい」の引退とともに、この大水深用のケーブルとウインチが失われてしまいまして、この水深での調査はできなくなっています。
ここで少し先ほどの図に戻りますが、現在は水深6,500 mよりも深い水深での調査を日本で行うことはできません。そして、これがこのままだと近い将来どうなる可能性が高いかといいますと、「しんかい6500」も引退してしまって、同じく老朽化が進んでいる「ハイパードルフィン」というROVが引退すると、この同じウインチを使っている「KK-Mk4」と呼ばれているROVも使えなくなってしまう可能性が高く、そうすると、「かいめい」搭載の3,000 m級のROVしか我々として使うことができなくなります。そうすると我々の分野はほぼお手上げ状態になります。しかも、後でもう少し触れますが、「かいめい」という船舶は現在共同利用ではないので、我々のような大学あるいは外部研究機関の人間には使用する機会がありません。
この委員会では、将来の日本における深海調査の方向性や求められるスペックというのを議論するというふうに理解しているのですが、固体地球科学分野では、有人無人問わず少なくとも水深7,000 mまで潜航して海底を観察してサンプルを採集する手段を維持できたらよいなというふうに希望しています。これには、水深6,500 mまでのところに関しましては有人潜水調査船の「しんかい6500」の延命あるいは更新という可能性があるかと思いますし、7,000 m級のROVの新規導入という選択肢もあろうかと思います。あと、「かいこうMk-Ⅳ」というROVはフルデプスで設計されているというふうに伺っていますので、これのような大水深のウインチ、ケーブルを再建するということによって、更に深いフルデプスまでの調査の手段を得るということも選択肢としてはあるのかもしれません。
また、潜航インフラだけではなくて、前回の委員会でも申し上げたのですが、これらの母船としての調査船の新造も必要不可欠ではないかと考えています。なぜならば、この「しんかい6500」の母船の「よこすか」も近い将来寿命を迎えます。現在日本にある調査船「かいめい」というのは大型で汎用性が高く乗船人数も多いのですが、「しんかい6500」の母船にはなりません。また、共同利用でもないわけですね。
「新青丸」というのは非常に使い勝手が良い船なのですが、使用できるのは沿岸域のみですし、乗船可能人数が少ないという決定的な問題があります。15名なのですが、これでROVを運用すると、ROVの要員も乗らなければいけないので、研究者が乗れるとしても最大で9名ぐらいになってしまって非常に限られた乗船数になってしまっています。ですので、汎用性が高くて、「しんかい6500」あるいは大水深ROVの母船となって、かつ乗船人数に余裕がある、これらの船の中間サイズの調査船が必要だと思っています。乗船人数を増やすということは調査の効率化に必須です。これらの要件というのはよこすかの改修では不可能だと思っています。
そういう効率的な調査航海の例を一つご紹介したいと思います。これは2012年に南太平洋で噴火したHavre海底火山という火山があるのですが、その調査をするために2015年にアメリカの調査船を使った航海が実施されました。
この航海で使ったのは、左側の写真にもありますようにアメリカのスクリプス海洋研究所の調査船で、サイズ・乗船可能人数ともに日本の先ほどの「かいめい」と「新青丸」の中間になります。これには私を含めて研究者、ROVの要員、AUVの要員を含めた計32名で3チームを作って、24時間の連続観測を実施しました。この航海では、船の右舷側からAUVを投入して海底の高精細な地図を作り、同時に船の左舷側からROVを投入して海底観察と試料採取を行うという調査を行いました。ちなみにアメリカの調査船というのはどれもほぼ同じ設計になっていまして、探査機材の載せ替えが可能になっています。
この調査で僕も初めてこういう同時運用する調査船に乗って、ものすごく衝撃を受けたのですが、AUVで取得した高精細な海底地形図を船上でAUVのチームが処理をして、それを翌日からROVの調査に使うという調査を行っていました。ROVは海底に沈めっぱなしで、サンプルをどういうふうにして回収するかといいますと、エレベーターと呼ばれるランダーを更に海底に船から投入して、このランダーの上に空のサンプルボックスとかが付いていて、海底でそのROVにサンプルが入っているボックスと積み替えるというようなことをしました。そういうふうにしてものすごく効率的な調査を行って、2週間の調査期間で計236時間の海底の調査と計194時間のAUVを使った海底調査を行いました。
日本ではROVとかHOVの運用というのは日中だけしか現状できません。あと、AUVとの同時運用というのはできません。もし同じ規模の調査を日本の調査船で行うためには、最低でも2航海、計40日以上が必要になります。日本には同等のこういうスペックの探査機器はあるのですが、効率的な調査を行うことができる設計の船がないというのと、あと運用の問題があろうかと考えています。
次に、日本の海洋研究コミュニティが直面している問題についても少し触れたいと思います。まず、調査機会が大幅に減少しています。例えばなのですが、10年前の2013年度には研究船利用公募として4船、別枠の公募の「白鳳丸」も合わせると5船がありました。これが現在は、「白鳳丸」まで合わせても3船しかありません。これによって、大学とか博物館の教員とか研究者が研究効果を立案して実施できるチャンスが減っています。
また、特に大学教育を通して後継者育成の機会が減少しています。あと、外航の調査航海を実施できるチャンスが大幅に減りました。現在「白鳳丸」以外ではMSR申請が必要な他国のEEZ内での調査を申請することができません。「白鳳丸」というのは3年ごとの公募なので、例えば火山噴火とか地震等で突発的な自然現象に対応した緊急調査を行うことは難しいという問題があります。これによって国際研究コミュニティにおいて日本のプレゼンスというのは明らかに大幅に低下していまして、ちなみに2013年というのは、「よこすか」が世界一周航海を行って各海域で多くの海外研究者が乗船をして、たくさん共同研究の成果が得られました。
その後、日本のプレゼンスが低下した結果どうなっているかというと非常に分かりやすくて、中国が代わりに台頭しています。この日本の海洋科学コミュニティを維持して国際的にプレゼンスを維持するためにも、遠洋航海を実施できて、乗船人数に余裕がある、そして共同利用としてアクセスできる調査船が必要ではないかと考えています。
最後になるのですが、有人潜水船の社会的意義についても少し触れておきたいと思います。有人・無人という議論は前回の河野委員のお話にもありましたが、どちらもメリット・デメリットがあって、水掛け論になってしまいます。ただ、有人潜水船というのは海洋研究とか深海探査のアイコン的な存在であることを、僕たち博物館で一般の方々と接している身としては日々感じています。宇宙探査も同じだと思うのですが、いつか自分がそこに行けるかもしれないという夢は、一般の方からの関心を得て、身近なものとして感じてもらう上で非常に重要ではないかと思っています。
我々の研究コミュニティも、研究者だけではなくて、運行や開発に関わる人たちを含めたコミュニティのモチベーションを維持するためにも大事な存在ではないかと思っています。問題は、そのような夢に対して一般からの支持が得られて、国からの予算が付くかということではないかと思っているのですが、仮に有人潜水船をなくして無人探査機でという方針になったとしても、我々研究者は有るものを使ってやれることをやるだけなのですが、有人潜水船をなくしてしまうと、海洋科学の関心とかモチベーションが失われて、コミュニティが急速に小さくなってしまうだろうなという強い危惧感があります。
少し時間が過ぎてしまったのでこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。
【松本主査】 ありがとうございました。ただ今の御説明につきまして、御質問等ございましたらお願いいたします。
河野委員、お願いします。
【河野委員】 海洋研究開発機構の河野です。御発表ありがとうございました。私にとっても非常に刺激になりました。
少し事実関係だけお話をしますと、「かいこう」については母船の廃船とともにウインチがなくなったから運用できなくなったわけではなくて、実は大きい方のランチャーと称するでかいものを吊る方の1次ケーブルがもはや使用に耐えるものを開発する技術がなくて、なかなか次のものができないということが大きな理由です。
また、子機の「かいこうMk-Ⅳ」の方は、主要機器は確かにフルデプス対応ですが、全体をフルデプスで運用するように設計していたわけではなさそうで、7,000 mというところに焦点が置かれています。
あと、複合運用ですが、非常に参考になりました。今「よこすか」にAUVとHOVの両方が積めるのですが、どういうふうに運用すればよいかという運用方法についての検討が少し足らない。特にAUVの例えばAIを使ってAUVで対象海域をざっととにかく計測して、それを立体図として視覚的に3Dに直すという技術が今あるのです。そういうのを使って事前に船上で十分調査してからHOVを潜らせるみたいなことをやると、いま谷委員のおっしゃったような効率的な運用ができるようになるかと刺激を受けました。どうもありがとうございました。
【谷委員】 ありがとうございます。確かに僕もこのAUVとROVを同時に使うというのはものすごく衝撃でして、御存じだと思うのですがROVやHOVというのは結局海底でも光が当たるごく僅かな数 mの範囲しか見えないのですが、同時にこのAUVで取得した例えば1 mの解像度の地図があると、その自分たちが見ている露頭が横にどうやって広がっているのかというのがものすごく分かるのですね。自分が今見ている露頭が横にどうやって広がっていくかという。それは今まで僕たちがやったことがないような視点での調査だったので、ものすごく情報量が多いですし、実際の調査を効率化するというだけではなくて、その調査から得られる成果というのはものすごく大きくなるなということを体感しました。ぜひ日本でも実現できたらよいなと思っています。
【河野委員】 はい。限られたフレームの画像から3Dを構築するAIというのが今あるので、ビジュアルでもできるかもしれないですね。
【松本主査】 貴重な御意見ありがとうございました。岩崎委員、お願いいたします。
【岩崎委員】 NHKエンタープライズの岩崎です。谷委員ありがとうございました。
このスクリプス海洋研究所の船での24時間運用というのが、3チームでというふうに書かれていたかと思うのですが、普通はオペレーターの方たちの休む時間等々を考慮すると24時間運用というのは日本ではなかなか現実的ではなく、夜の観察というのはなかなかできなかったりすると思うのですが、実際はどんなふうにこのチームを組んでオペレーションすることで24時間の観測を可能にしているのかという辺りをお聞きしたかったのですが、よろしいでしょうか。
【谷委員】 研究者は3チーム8時間交代制で調査をしたのですが、ROVをずっと沈めっぱなしというのは、彼らなりに非常に合理性がありまして、要するに着揚収のときに人員が非常に必要になるのですね。なので、常に基本的には沈めておいて、何かマシンのトラブルや海況が悪いときだけ他のチームの人たちも出てきて揚収を手伝うと。実際、船の人たちも本当に最小限にしていて、必要なときだけ出てくるということで、多分日本船と同じような少ない船員・研究者の数を実現しています。
あともう一つは、研究者の方も観測の手伝いというのは非常に積極的に関わらされました。それは航海の最初に技術スタッフの人たちから僕たちも講習を受けて、例えば綱取りとか、あるいはAUVの撤収で手伝う。僕たち研究者も、甲板員の人たちほどではないのですがそこに関わって働くというような形で少人数でもできるようにしていると。日本船の場合も、今後24時間の観測をしていくということを目指すのであれば、今までこういう深海探査機器を船上でどういうふうに運用してきたかとかいう、そういう人の使い方というところも含めて効率化を図っていかなければいけないのではないかと思っています。
【岩崎委員】 例えばパイロットとか、要するに運用する方は24時間働き続けるわけにいかないと思うので、多分交代要員等が最初から組まれていると思うのですが、その辺の運用の仕方というのはどんな感じなのでしょうか。
【谷委員】 今回ROVの人たちは10人の要員の人たちが乗っていたので、3人で1チームを作っていて、各ワッチは3人で回しています。1人余りますが、その人が指令のような形の人で、その人は何か問題があると出てくるという感じです。AUVの人たちも5人いますが、基本的には1ワッチ1人ないしは2人で回しているというような形です。それで3チームで回すと。そこはやはり日本は関わっている要員が多過ぎるので、多分効率化できるところなのではないかと思います。
【岩崎委員】 そうすると3チームが8時間交代という感じで回しているということなのでしょうかね。
【谷委員】 そうですね。はい。
【岩崎委員】 AUVもずっと沈みっぱなしで走らせているのですか。
【谷委員】 12時間なので、逆にいうと揚がってくる時間が見込まれるので、そこで着揚収のときに人が集まれるようにワッチを組んでいるというような形です。
【岩崎委員】 ROVは24時間ずっと沈みっぱなしなのですか。途中で一回揚げたりはしないのですか。
【谷委員】 この航海の時は最大で3日半ぐらい沈めっぱなしでした。サンプルは先ほどご紹介したエレベーターというランダーを使って船上に揚げます。なので、船からは実際はもうこのAUVとROVとランダーという3つを同時に運用していて、こんなやり方があるのかと僕はすごく衝撃を受けました。
【岩崎委員】 運用中にAUVとROVがニアミスしたり、そういうリスクみたいなのも航海中は考えないといけないと思うのですが、その辺はどんなふうにやっているのでしょうか。
【谷委員】 例えばですが、エレベーターを下ろすときはさすがに海底にいると危ないので、ROVを少し海底から揚げて、エレベーターもトランスポンダーが付いていてどこを下りていくかというのが分かるので、かち合わないようにずらすとか。そこはやはり運用経験を積み重ねていけばいくほどより安全にできるようになってくるのではないかと思います。
【岩崎委員】 大変参考になりました。ありがとうございます。
【松本主査】 そうしましたら、小島委員、お願いいたします。
【小島委員】 ありがとうございます。少し確認したいのですが、近い将来3,000mしか手が届かなくなるというところで、「ハイパードルフィン」はあとどのくらいの寿命があるのかというのと、かいこう 「かいこうMk-IV」に関してはどういう見通しになっているかというのを教えていただきたいのですが。
【谷委員】 それは河野委員からお願いできますでしょうか。僕は何ともお答えしがたいので。
【河野委員】 はい。「ハイパードルフィン」については寿命というのを算定したことはありません。
「かいこう」もありますので、いずれ予算その他によっては1機体制になることはあり得ますが、今機体として喫緊の危機にある状況ではないです。ただ、古いのは確かなので、いずれはそういうことになるでしょうね。
もう一つが、「かいこうMk-IV」は今4,500 m級の単独運用というふうにしています。「かいこうMk-IV」はランチャー付きでは運用していなくて、1次ケーブルができないので、ランチャーを使わずに単体で運用という形にしています。それはケーブルの制約があってこの深度ということになります。
【小島委員】 分かりました。ありがとうございました。
【松本主査】 ありがとうございました。巻委員、お願いします。
【巻委員】 AUV「Sentry」の同時運用のところなのですが、AUVの運用が12時間ということは、ROVの運用中にAUVの投入・回収と全部やっていると思うのですが、そうすると船はROVを下ろし切っているので、多分動きが拘束されるので余りAUVを追い駆けたりということはできないと思うのですが、AUVでどのくらいの範囲で動かしていたのかということと、運用中に音響によるモニタリングはどのくらい行っていたのか。それから、細かいですが回収のときはAUVを遠隔操縦してクレーンに近付けるのか、それとも船から行くのかみたいな、その辺り何かあれば教えてください。
【谷委員】 AUVを入れているときは、基本的には大体母船から10km以内で運用していたと思います。
御存じだと思うのですが実際いろんなトラブルがあるので、AUVがコントロール不能によって揚がってしまうようなこともあったのですが、その際もROVを海中に入れた状態で母船と一緒に走ってAUVを回収しに行くみたいなことをやっていました。ですので、基本的には母船の方がROVを海中に上げた状態、それでも揚収はせずにAUVの近付いていって揚収をする。それが揚収できたらまた元に戻ってROVを海底に下ろして調査をするという形で、徹底的に人をとにかく甲板に出さないで調査をできるような形でやっています。AUVの回収も基本的には甲板部のウインチの人と、テクニシャンの人が1名と、あと研究者の人が3名ぐらい出て持つのを手伝ったりするぐらいで、それで実際AUVの揚収もやっていました。
【巻委員】 分かりました。音響によるモニタリングは常時行っているのですか。
【谷委員】 はい。常時やっていました。
【巻委員】 なので最大10kmまでいけるという。
【谷委員】 そうですね。谷を越えて向こう側に行ってしまったときは、船を動かしてたまにちゃんと生きているかどうかというのを確認していましたが、そういう意味では確かに常時ではないのかもしれないですね。
【巻委員】 分かりました。ありがとうございます。
【松本主査】 ありがとうございました。それでは、次の内容に行きたいと思います。議題2の「地球生命科学分野における深海探査」に入ります。それでは、奥村委員、お願いいたします。
【奥村委員】 高知大学の奥村です。よろしくお願いします。
私の研究の専門は地球生命科学といいまして、魚とかイカとかではないのですが、写真のように微生物がその形成に関わる炭酸カルシウムであったり、若しくは生物自体が作り出す炭酸カルシウムであったりというものを研究対象として、その対象に対して地質学や生物学や化学といった様々な手法を用いながら、分野横断的に研究を展開して、鉱物の中に閉じ込められている生物活動であったり環境の情報を抽出するというような研究を進めています。
最初に私の方の深海調査歴について紹介させていただきたいのですが、私も学生時代は陸上の炭酸塩堆積物に関して研究を行ってきたのですが、陸だけでは駄目だということでポスドク時代に研究の幅を広げるという意味で海の炭酸塩を研究したいと思い、海洋研究開発機構でポスドクを3.5年ほどさせていただきました。その間に運良く深海の炭酸塩堆積物である深海湧水域のチムニーを研究する機会を得まして、これまでにROVやHOVを使った調査を進めてきています。また、高知大学に着任してからは、高知の特産品である宝石サンゴについて、水産庁の調査に乗船させていただきながら研究を進めているような形になっています。
ということで、先ほどの谷委員と比べると研究歴としては非常に浅いのですが、今年1月と3月に今後の深海探査機能を考えるシンポジウムが2件開かれまして、そちらで意見を述べさせていただく機会を頂きまして、そういった経緯から今回こちらの委員会でもお声掛けいただいたかというふうに思っています。以降は、自身の経験であったり、こういったシンポジウムでの意見を交えながら意見を述べさせていただきたいと思います。
では、私がポスドク時代から研究をしている研究対象について紹介させていただきたいのですが、どういったところをやっているかといいますと、蛇紋岩化作用に関連した低温アルカリ性湧水域というサイトを研究してきました。この湧水域なのですが、1970年頃から多数見つかっている左の写真にありますような高温で酸性、還元物質や重金属に富むブラックスモーカーのような典型的な海底熱水噴出孔とは異なっていて、湧水の成分がアルカリ性で比較的低温で、水素やメタンに富んで、重金属に乏しいといった特徴を持つことが分かって、新しいタイプの深海の化学合成生態系として2000年に発見されて以降着目されてきました。
こういったサイトというのは、ただ新しいタイプというだけではなくて、この湧水ができるときに、先ほどの谷委員の御発表でもありましたが、マントルを構成する深い場所に位置する岩石のカンラン岩と水が反応して蛇紋岩になるといった変成作用に関連してできるといわれています。こうした蛇紋岩化作用というのは、初期の地球でより活発であったり、後はその材料物質であるカンラン岩や水があったとされる初期の火星、そして、現在でもあると考えられているエンセラダスのような天体でも起こり得るので、こうしたところの生命圏というのは、初期生命であったり、後は地球外生命圏の理解につながるのではないかということで、ここ20年ほど地球生命科学のフロンティアトピックスとして研究が進められてきました。
ただ、こうしたサイトというのは海底ではなかなか見つかっていません。というのも、濁度異常とか温度異常とかで検出できないので、たまたま探査の過程で見つかったようなところがほとんどになっています。特に④⑤⑥のような北大西洋湧域のサイトでは、先ほど谷委員の発表でもありましたが、沈み込み帯の島弧の前弧側のマントルが露出している割と深い場所でこういった湧水域であったり、湧水の証拠といったようなものが検出されているので、今後6,500 mから調査可能水深が縮退してしまうような事態に陥りますと、ここ最近の地球生命科学のホットトピックスであるこうしたサイトが調査できなくなってしまうという事態に陥ってしまいます。
こういった場所を調査する際に、特徴的な試料採取方法について一つ紹介させていただきたいのが、私のように分野横断的に研究するには多彩な積載物が必要となります。こちらは実際に深海湧水域を調査する時に持っていった積載物の要素です。上が「しんかい6500」、下が「かいこう Mk-IV」のROVの積載物の写真を載せているのですが、現場で水、岩石、泥等の堆積物、そして動物を含めた生物・微生物を採るために、この右側の上にあるような採水装置から生物サンプリング装置から、多種多様な、もうこれ以上ないのではないかというような装備を持って行ったのですが、これが可能になっているのが現在の「しんかい6500」であったりROVのシステムであるので、こういった分野の研究を可能にしているのがこの現在の調査システムなのではないかというふうには思います。
さらに、「しんかい6500」の素晴らしい点としては、この積載物を詰めるところが割と広くて、かつ左右に可動するので、現場での作業性を担保しながらたくさんの物を持っていけるという点で非常に優れていると感じています。
今後は、以上の調査経験プラスアルファ調査対象に加えて、シンポジウムで出た生物分野のコミュニティの意見を交えながら、今後維持強化が望まれる探査技術について3点ほど御意見を述べたいと思います。
まず1点目は、ぜひ母船のHOVの運用を含めて維持していただきたいというふうに思います。HOVの肉眼で確認できるという視認性、そしてケーブルに依存しない運行の機動性や安定性、そして現場で肉眼で確認しながら繊細な作業ができるという作業性は、生物分野の研究にとっては非常に不可欠だということが、微生物、底生生物、大型動物の研究者からも共通して寄せられている意見です。先ほどの谷委員の発表でもありましたし、第1回の河野委員の発表でもありましたとおり、そのHOVを乗せる母船が老朽化しているという面がありますので、その面を含めてぜひ今後HOV運用を維持していただきたいというふうに思いますし、あと、こういったシンポジウムに参加したり研究を進めたりする上で、外国人の「しんかい6500」乗船者からの意見を頂くことがありました。その際に「「しんかい6500」のシステムはまるでベテランの運転手さんが運転するリムジンに乗って深海に探査に行くようだ」というような、非常に安全性、研究者にとって安心できる運用システム、ソフト面でも非常に整えられているというようなお声を多数聞くことがありました。そうした素晴らしい長年培ってきた調査システム、ハード面・ソフト面含めて、ぜひ次世代につなげていけるとよいなというふうに思っております。
もう一つは、唯一無二の技術創出ということで、コミュニティからも、ドレッジ、HOV、ROV、AUVを組み合わせた調査がぜひ実現できるとよいというような意見が出ていました。河野委員の発表からまたスライドを引用させていただいたのですが、このような未来を描きながら今後、HOV、ROV、AUVそれぞれ、もし開発できるのであれば、表でまとめられた二重丸のところを、得意分野を先鋭化するような唯一無二の技術開発をすることで、例えば外国からも使いたいというようなニーズが高まったり、国際的プレゼンスも上げられるようなシステムの構築につながるのではないかと思いますし、例えばHOVのようなオールドファッションなマニピュレーターから、手の形のようなマニピュレーターで研究者自身がサンプリングできるようなシステムができるとよいなというふうに、ユーザーの意見としてはそういった得意分野を先鋭化した技術開発ができるとよいなというふうに思っております。
あと最後にもう一点としては、既に実証実験も含められているそうなのですが、陸からの調査・参画が可能になるような通信技術や通信システムの構築ということをぜひ強化していただきたいというふうに思います。右の方に載せた円グラフは、「しんかい6500」のみなのですが、公開されているデータベースから乗船者の性別を名前で判断して独自に集計したものなのですけれども、女性の研究者の乗船者がコミュニティよりも半数ほどと少なくなっている状況で、私自身も子育てをしながら研究活動をしている中で、調査航海に参加するというのが、いろんな調整が必要になるため、なかなか難しいハードルになっているところがあります。そうした中で、陸から調査航海に参加できるとなると、そうした乗船困難な方の参画につながるということで裾野も広がると思いますし、航海実習等の機会が少なくなっている学生の学びの場の拡充にもなると思いますし、異分野からの参画も可能になるのではないかというふうに思います。
以上3点ほど地球生命科学分野で求められるもの、そしてHOV、ROV、AUVを組み合わせた調査ということを実現することを踏まえて、今後その問題点といったことを議論できるとよいなというふうに思います。
9頁と10頁は補足資料として、それぞれのシンポジウムでの要点を私的に要約させていただきました。本文はそれぞれURLで公開されていますので、また何か議論の際とかで参照していただけるとよいなというふうに思います。以上で終わります。
【松本主査】 ありがとうございました。ただ今の御説明につきまして御質問等ございましたらお願いいたします。
湯浅委員、お願いします。
【湯浅委員】 奥村委員ありがとうございました。
御質問をしたいのですが、「しんかい6500」の老朽化というふうに言われていますが、具体的にどういう面が老朽化しているというのが何かあれば教えていただきたいと思います。例えば今出てきましたにマニピュレーターであれば、単に「しんかい6500」の部品を交換するということで対応できるわけなのですが、それ以外で本当にもうこれは老朽化していると思われるところがあればというイメージでご質問させていただいています。
もう一つ、参考までになのですが、かなり多彩な搭載物を載せることができるというふうに伺いましたが、この場合かなり重量バランスが変わってくるのですけれども、例えば何かを外してある程度艇体を軽くして載せているのかどうかというのを教えていただきたいというふうに思います。以上です。
【奥村委員】 ありがとうございます。
まず1点目の老朽化の点に関してなのですが、5頁を説明する際に私は老朽化という言葉を使ってしまったのですが、老朽化に関しては母船の「よこすか」の方が進んでいるというふうに伺っております。例えばウインチの老朽化というような言葉が第1回の河野委員の発表でもあったと思います。「しんかい6500」の方はオーバーホールで結構部品を入れ替えたりしているので、例えるならば母船の「よこすか」の方が梁等を残した古民家だとすると、「しんかい6500」の方はリノベーションしたアパートみたいな形で、こちらの方は老朽化という言葉を使ったのはふさわしくないなというふうに思います。河野委員から挙手いただいたので、ぜひ補足をお願いします。
【松本主査】 河野委員、お願いします。
【河野委員】 海洋研究開発機構の河野です。
「しんかい6500」の方の老朽化も全く間違えていなくて、例えば緊急脱出装置であるとか、そういう主要部品のうちのいくつかは既に製造がなされておりませんので、これを交換するというのはオーバーホールではなくて、一部新規開発をして代替品を作って搭載するということが必要なので、それなりの大改造になります。母船の方はおっしゃるとおりで、諸々老朽化しているのでというのがありますが、一番大きいのはやはりDPSの機能が非常に低いということで、船長さんの神業によって操船しているパターン。したがって、操船している人によって潜航できる・できないの基準がかなり低めに設定されているというようなところが大きな問題かと思います。また、女性が乗ることを想定していない時代に作られていますので、なかなかこういったところについて行けないというのが現状かと思います。
【奥村委員】 補足ありがとうございます。
あと、質問の2点目にありました多彩な積載物の点なのですが、船側で削ぎ落とす部分はないのですが、この多彩な物を持っていくために、例えばコアリングの本数を必要最低限にしたり、生物サンプリング装置は4頁の左上の写真の掃除機のようなホースが伸びたものが、例えばポンプで大型生物を吸い取るようなものなのですが、このサンプラーの大きさを一番小さい物にしたりということで、この積載物を調整することでなるべくぎりぎりの範囲で多彩な物を持っていくというところを、チームと相談しながらこの装備を整えているという形になっています。
【湯浅委員】 ありがとうございました。
【松本主査】 ありがとうございました。他に御質問はありますでしょうか。
今は挙手がないようですので、最後に全体としての御意見、御質問の時間を取りますので、またその時にご質問いただければと思います。
それでは、奥村委員、ありがとうございました。
【奥村委員】 ありがとうございました。
【松本主査】 続きまして、鉱物資源分野につきまして神戸大学海洋底探査センターの石橋教授からご説明いただきたいと思います。
石橋教授、どうぞよろしくお願いいたします。
【石橋教授】 神戸大学の石橋です。本日はヒアリングの機会を頂き誠にありがとうございます。
自己紹介を皆さんされているので簡単にしますが、私は海底熱水系の研究で、日本で最初に学位を取った人ということになっておりまして、その後も有人潜水艇、無人潜水艇の調査で海洋研究開発機構の皆さんには大変お世話になりました。それで、鉱物資源の関連科学分野の意見ということで今日はまとめさせていただきました。この表紙に示しましたように4種類の鉱物が我が国では鉱物資源の対象となっております。私の専門は海底熱水鉱床ですので、一応各分野の方から御意見を聞いて本日の資料を作っております。
主な研究対象、海域深度ということですが、これはJOGMECのホームページに非常によくまとまった資料がありましたので、そのまま使わせていただいております。4種類の対象鉱物がありますが、それぞれ水深や分布する地域に違いがあります。なお、この表を使いましたが、この表は鉱床の存在が期待できる。鉱床というのは採掘して採算が取れるほど目的とする元素や鉱物が濃集した地質帯でありますが、そうした鉱物が大量に存在が期待できる海域をまとめたものであります。一方、私どもは科学研究者でありますので、豊富にあるところばかり研究していればよいというわけではなくて、あるところとないところを比較することが大事になります。後ほど詳しく説明したいと思います。
特徴的な試料採取、観測手法、実験方法でありますが、対象鉱物を採取するというのがもちろん第一義でありますが、網羅的に採るといったように目的を定めて採るためにいろんな手法を使ってみたというのが左の写真です。右の写真は熱水鉱床の研究には鉱物だけではなくて熱水そのものを採ることが必要になりますので、いろんな装備を開発して有人潜水艇に取り付けて使わせていただいた時の例です。
それから、マッピングも最近は重要になってきました。左上は熱水域のマッピングで、左上の下に茶色い写真にあるように熱水プルームを見つけるようなマッピングをこういった空間スケールで行っているという例です。右側は、生産研が開発されたAUVですが、マンガンクラストの厚さを連続的に観測していってマッピングするような技術の例です。左下と右下は実験研究の例です。左下は最近話題になりました熱水に溶存している金をラン藻シートで吸着する実験、右側はマンガンクラストの成因を解明するためにプラスチック板とかいろんな板を沈めて、実際にそこに鉱物が付いていることを確認するために15年間の長きにわたり設置した、という画期的な実験の例であります。
今後研究開発が求められる海域や深度でありますが、私たちは科学的研究をしている立場から今日は発表していますが、その主な動機はやはり鉱床探査に資するような科学的知見を獲得することであると考えます。そのために考えられる研究と、その海域深度ですが、一つ目は鉱床が存在する地域の地質学的環境・海洋学的環境を総合的に詳細に把握することであると考えます。ということで、鉱物を採ってきて分析するだけではなくて、その背景となっている地質や環境の調査を併せた総合的な研究の実施が求められます。
それからもう一つの大きな柱は、鉱床の形成過程を議論することです。ある場所に行くとなぜ対象となる元素が非常にたくさん集まっているのかを研究の目的とするのですから、鉱物が有るところばかり調べても駄目で、有るところと無いところの比較、それから例えば島弧と中央海嶺の比較、それから、もう一つは幅広い水深範囲の比較、といった比較研究が必要になります。右下に図が載っておりますが、これはある海山の水深1,000 m~5,000 mの斜面にわたってマンガンクラスト、マンガン団塊がどのような形態で分布しているかの違いを調べたという例です。このように、資源として鉱物が濃集しているところと濃集していないところを比較するというような研究が重要です。これまでの研究調査はどうしても資源探査を念頭に置くため3,000 m以浅の浅い海域で行われてきましたが、深いところの分布や産状等を比較することが非常に科学的研究として意味があると考えております。
スライドの左下に各論として調査が求められる海域をまとめました。熱水流化物鉱床では今までどうしても熱水活動が現在の熱水活動があるところに調査が集中しておりましたが、潜頭鉱床といって海底下にもう埋もれてしまった鉱床が期待される海域が今後は研究の対象になります。それからコバルトリッチクラストではその形成には何億年という時間が掛かりますので、海底年齢が古い北西太平洋の海山を対象とした調査を、先に示したような大水深も含めて行うことが必要です。マンガン団塊、レアアース泥についても同じように大水深海域の調査が必要であり、今後研究開発が求められると考えております。
維持・強化が望まれる探査機の技術でありますが、資源科学は一つの目的に向かって多様な手法を駆使して多角的に取り組む点に特色がありますので、幅広い空間スケール、空間分解能の視点を組み合わせることが重要であります。鉱物というミクロな存在と地球の活動というマクロの存在を関連付けることを考えるためです。このため、AUV、ROV、HOV各種の探査機をバランスよくそろえて活用することが重要であるということになります。
特に強化が望まれる技術を考えてみますと、一つ目は簡便な掘削装置付きのROVです。資源となる鉱物は海底下にありますので、海底下にアクセスできる装置が有用でありまして、右の写真はROVに海底岩コアリング装置を装着した試験運用の写真でありまして、これは国内で開発されたと聞いておりますが、試験運用した後はあまり使われていないと聞いております。こういうものがもう少し使いやすくなるとありがたいと思います。
それからもう一つは、鉱物試料を採取する際には一定間隔で2次元的に採取するということが中心になりますので、そういうことが、迅速・正確な位置決めを含んでより簡単にできるようになるとよいなと考えています。
当該分野の促進のために現状不足している深海域の資料・データについてということですが、海底資源の開発を促進しようという立場からは、そもそも人類が有する深海域のデータの質・量が決定的に不足しております。それは資源開発に向けての課題、探査手法や環境影響評価、採掘技術等を解決する上での知見不足につながっているということは当たり前なのですが、それにもまして、深海域の科学データが不足しているということが、海底資源開発に保留を表明する上での重要な根拠となっている、ということがあります。右側にESSACが最近表明した報告書を示しました。
ESSACというのはヨーロッパの学術会議の連合みたいなところですが、この報告書に、深海域は科学的に分かっていないことが多いから海底資源の開発を始めるのは時期尚早であるとはっきり書かれています。リサイクル資源の利用をもっと進めるべきだということです。こういう文書が出ることに加えて、一般の市民が反対に回る心理的背景、よく分からないものはとにかく怖いのだということの原因ともなっております。我々科学者は、科学の進歩が社会の発展に寄与すると何となく思っているわけですが、この深海底の分野にとっては、科学の遅れが社会の発展を阻害しているということになっているというのが現状ではないかと思っております。
この現状を少しでも改善するために、効率的なデータ取得や活用方法を考えることが重要であると考えております。まずデータについては共有化を前提として取得した深海データをデータベース化することが必要ではないかと考えます。これから資源開発に向けた探査がどんどん行われていきます。国際海底機構(ISA)の探査規則では多項目にわたる海洋環境ベースライン調査が義務付けられておりまして、科学研究だけではなくて資源開発の立場からもデータがこれから生み出されることになります。こうしたデータを科学的研究に活用できるような体制を作ることが必要ではないかということであります。というのは、私が大学におりました時に宇宙や惑星や大気等を対象にした観測データが原則公開されていて、それを解析する研究が大学院で行われていて、これらの分野に携わる学生さん、研究者がすごく多いという現状を見てきたからであります。これに比べて海洋研究は、海洋の研究をするためにはとにかく船に乗るのだという発想が未だ残っていることもあって、研究分野の裾野が広がっていかないのではないかと思うわけです。自分がやってきたことを棚に上げて今言っていますが、そういう新しい時代になっているのだということは考えてもよいのではないかと思います。
それからもう一つは、ROV潜航調査の24時間運用であります。これは谷委員からも提言がありましたが、私は20年ぐらい前にカナダの「ROPOS」というROVを使った潜航調査で10日ぐらい24時間運用した航海で、共同首席としてその運用を提案する科学者側の責任者として携わった経験があります。いろいろな面でショックでしたが、とにかく毎日の潜航時間に制限を付けないということで、毎回の潜航を単純なミッションにすることが可能になることを強く感じました。非常に大きな効率化になります。
先ほどの奥村委員の御発表で有人潜水艇にてんこ盛りにして持っていく話がありましたが、有人潜水艇ではいいと思うのですが、無人潜水艇の調査であれば効率化するために各回の潜航のミッションを単純化して、ミッションが達成されたら揚収し、次から次に潜航を進めていく方が、話が簡単で効率的に行えるということです。私はその運用提案の責任者だったのでよく分かるのですが、実際我々が行う潜航調査航海においては、そうした調査項目の擦り合わせに相当な労力が割かれていることがあります。多様な観測機器を狭いペイロードに載せるためには、物理的な調整はもちろんですが、研究者間の調整もありますので、非常に面倒です。24時間運用して、毎回の潜航を単純なミッションにすれば、もろもろの制限を考える必要がなく、ミッションの順番だけ決めて後は粛々とそれをやっていけばよいということになります。
また私がかかわった航海でも谷委員が言われたように、「ROVは一度沈めたらなるべく揚げるな」と言われました。現在の日本のROVの運用は、有人潜水艇の運用をそのまま少し変えて使っているようなところがありますが、やはり根本的な思想を変えないといけないのではないかと思います。
最後は少し脱線しましたが、以上で終わりたいと思います。ありがとうございます。
【松本主査】 ありがとうございました。ただ今の御説明につきまして、御質問等ございましたらお願いいたします。小島委員、お願いいたします。
【小島委員】 小島です。ありがとうございました。
このスライドのISAのところですが、調査は義務化されたとして、民間企業がやるのでなかなかデータを公開したがらないのではないかという気もしますが、開発が終わった後それが環境にどのくらい影響があったかというのを客観的に評価するためには、やはり最終的にデータの公開をしてもらわないとまずいという状況もあると思うのですが、その公開に関しての義務付けみたいな議論というのはどのくらい行われているのでしょうか。
【石橋教授】 それは私もよく分からないですが、でも普通は資源の開発というのは情報を出さないと、その資源開発に対する資金が集まらなくなる傾向が最近顕著でありまして、要するに秘密にやっていることには資金が集まらないという傾向が資源分野では顕著なので、多分データを秘匿するという方向には行かないのではないかと思います。秘匿していると要するに環境団体が嗅ぎつけて妨害に入るみたいなことがあり得ると個人的には思います。もし廣川さんの方で何かあれば補足いただきたいと思いますが。
【松本主査】 廣川委員、補足がありましたらお願いいたします。
【廣川委員】 石橋先生、資源開発・海洋鉱物資源に関する非常に広範な取りまとめをありがとうございます。
我々JOGMECとしても、こういった科学研究が非常に進むことが、一方で資源開発に貢献するということは確かでありますし、ここに上げておられますいろんな結果は、我々としても有効に活用させていただいているところで、例えばAUVにおけるマンガンクラストの厚み径とかも実際の調査に使わせていただいているところであります。
先ほどのデータの共有のお話ですが、ISAの方では、いわゆる環境データに関しては全てのコントラクターにデータの提供が義務付けられておりまして、最終的にはデータベースは、これは環境データベースに関しては公開するというところが議論されていると私は理解しております。ただ、いわゆる探査データはそれぞれの国あるいは会社の思惑というのがございますので、データそのものの公開というのは多分行われないのではないかと思います。石橋先生が言われたように、むしろ資金集めのためにある程度の、ここでこれだけの資源量があるとか、そういったトータルでの公開というのはそれぞれの各企業あるいは政府がやると思いますが、データベースそのものに必要な生データに関しての公開情報に関してはなかなかないかというのが私の印象です。以上です。
【松本主査】 廣川委員ありがとうございました。他に御質問等ございますでしょうか。
廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】 石橋先生に一つ質問があるのですが、先生の御意見を総括しますと、有人潜水艇もROVによる機能強化といいますか、例えば6,000 mぐらいまでのROVで着実にたくさんのサンプリングをすることができればよいなというような印象を受けたのですが、その辺はROVと、AUV、HOVとの関係はどのように組み合わせていくのが一番効率的な研究につながると思われるか、御意見いただけますか。
【石橋教授】 有人潜水艇ですが、潜水艇はやはり人間が行って周りを見ることができるという非常に大きな利点がありまして、現状ROVはビデオの画もよいし、組み合わせれば面的な情報は得られるのですが、やはり3D映像というわけにいかないわけですね。言い換えるとGoogleのストリートビューで地質調査ができるかという話であります。私も何回か有人潜水艇で潜らせていただきましたが、チムニーの立体的な構造とか熱水鉱床の広さのスケール感というのは、やはり潜っていかないと分からないのだなというのは非常に強く実感しました。ですので、やはりHOVが要らないというわけではなくて、資源開発というところだと探査量が問題になりますが、ここでは資源開発関連科学ですので、サイエンスをやるためにはやはりHOVは非常に重要であると考えています。
【廣川委員】 ありがとうございます。
【松本主査】 ありがとうございました。谷委員、お願いいたします。
【谷委員】 ありがとうございます。
簡便な掘削装置付きのROVというのが必要だというふうにご提案されて、僕はマンガンの下のむしろ岩石がどういうものかという、普段マンガンに覆われて採れないので、そういう掘削装置があったら非常によいということを常々思っているのですが、一方で海底設置型の掘削装置BMSというのがありますよね。それと今ご提案されている簡便な掘削装置付きのROVというのは何かすみ分けがあるのでしょうか。何かメリット・デメリットみたいなところがあったら教えていただきたいのですが。
【石橋教授】 私もこの簡便な掘削装置は使ったことがないのでよく分からないところがありますが、見ながら自分の好きなところを掘れるということは大きいのではないですかね。BMSはなかなかピンポイントを狙って下ろすことが難しいので、こうした利点は非常に大きいと思います。
【谷委員】 ありがとうございます。
【松本主査】 今この簡便な掘削装置というお話がありましたが、この調査航海に私はSIP1期の時にこれをJAMSTECの研究者の方が開発されていて、一緒に調査航海に乗ったもので、少し横で見ながら程度ですが知っていて、いま石橋先生がおっしゃったとおり、やはり見ながらここでといってサンプルが採れる。確か表層50 cmとか1 mとか非常に浅い部分の鉱サンプルを採ってくるというのが得意なシステムだったというふうに思います。すみません、補足でした。
岩崎委員、お願いします。
【岩崎委員】 NHKエンタープライズの岩崎です。
今のこのスキッドの掘削装置に関連するのですが、やはり航海の目的によって持っていく観測装置というのは結構それぞれいろんな違うものになると思うのですね。こういうふうにスキッドを付けることによって、もう少しその持っていけるものを広げるというのは非常に有効なのだなと思ったのですが、先ほどの石橋先生のお話ですと、その後余り使われていないというふうなことをおっしゃっていたのですが、今こういうスキッド装置というのはどのような現状なのかというのを、もし御存じの方がいらっしゃったら教えていただきたいと思います。
【松本主査】 どなたか状況が分かる方はいらっしゃいますでしょうか。河野委員は何か御存じですか。
【河野委員】 すみません、私もSIP関連だとよく知らなくて。調べて何らかの形でご報告します。
【松本主査】 よろしくお願いいたします。
【岩崎委員】 ありがとうございます。
【松本主査】 他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、議題3に移りまして、「深海探査システムを実現するための研究開発について」に入ります。
本日は、音響通信技術の開発動向についてヒアリングを行いたいと思います。国立研究開発法人海洋研究開発機構の志村技術開発部長から御説明を頂きたいと思います。
志村部長、どうぞよろしくお願いいたします。
【志村部長】 よろしくお願いします。海洋研究開発機構の技術開発部の志村です。
私はこれまで水中の音響通信を自身のテーマとして研究してきていまして、我々のグループではここにお示ししているような、例えば水平方向の難しい環境でどういうふうに通信するかという研究を進めています。
今日は、深海探査における潜水船とかAUVとの通信について、他国・他機関の事例も併せてご紹介していきたいというふうに思います。御存じのように、海中では電波が使えませんので通信には音波が使われるのですが、信号処理手法については空中の電波通信の手法が適用されるということが非常に多いのですが、水中音響通信特有の問題というものもありますので、そういったものに対応する必要が出てくるというところがあります。
その中の影響としてまず一つ大きな問題がドップラーシフトで、時間変動とか移動の影響が大きいという問題があります。空中の電波の伝搬速度は3×108 m/s、毎秒30万kmであるのに対して、水中の音波の伝播速度は1,500 m/sしかないので、移動の影響、例えばビークルが移動したり船が動揺したりという、それによる影響で信号が伸びたり縮んだりして通信の性能に影響を与えるのですが、その影響というのは実は水中の音波の音響通信の方が20万倍影響が大きいということになります。波が伝播する速度に対するビークルなりが移動する速度の比で決まるので、こちらの方が20万倍大きいということになります。なので、AUVと音響通信をするというのは、実は電波通信に換算するとロケットよりも速いものと通信しようとしているというようなことになります。
あと、水平方向の通信に関してなのですが、反射や屈折によるマルチパス波が多数受信されるような問題があります。それと、伝播速度が遅いのでやりとりにどうしても時間が掛かってしまうということと、あと、そもそも使える周波数帯域幅が非常に狭いという物理的な制約があるといったような問題があります。
こういったような問題に対してどうやって高速化あるいはロバストな通信を実現するかというのが研究の課題ということになります。送信した信号がそのまま伝われば何もしなくてもいいのですが、今お話しましたようにマルチパス波だったり時間変動、ドップラーの影響で波形がひずんでしまうというのですが、伝播路特性の影響、伝播のひずみを受けてしまいます。
この影響をどうやって補正するか、取り除くかというのがポイントになるのですが、その処理のことを、チャネルを等化するのでチャネル等化というのですが、その方法として、周波数領域で処理する方法、時間領域で処理する方法、それをしない方法といったようなものがあるのですが、後で少し簡単に触れたいと思います。
現状その水中音響通信装置がどのような性能かというのをお話ししておこうと思うのですが、これは海外のメーカーが発売している通信装置のカタログ値を、距離に対してその通信速度をプロットしたものです。近い距離であれば通信速度を速くすることはできるのですが、遠い距離にしようとすると通信速度を落とさざるを得なくなるということを表しています。なので、距離と通信速度というのは大体反比例するということが知られています。
こういったような装置に対して我々は、「しんかい6500」とかFF11Kというランダーシステムに搭載するための通信装置をインハウスで開発しまして、6,500 mで約80 kbps、9,000 mで約70 kbpsというような通信速度を達成しています。距離×速度、その反比例の指標でいうと10倍以上の性能を達成したということになります。
なぜこういう高速化ができたかということなのですが、その説明をするのは非常に難しいのですが、なるべく手短にお話しすると、冒頭にお話しした信号処理の方法として我々は時間領域で処理する方法(DFE)を採用しています。これはその送信するデータの単位をシンボルというのですが、そのデータの1シンボルごとに適用信号処理で処理をするというような方法になっています。伝播路の特性を受けて波形がひずんでしまうのを、この1シンボルごとに追い掛けて補正をするというような処理になっています。
なので、時間変化があっても対応できるということになるのですが、一方、電波通信の分野ではOFDMという手法がほとんどの場面で使われていまして、これが水中の音響通信においても適用されるという事例が非常に多いのですが、この方法がどういうものかというのを一言でお話しすると、送信しようとするデータ列を周波数領域でひとまとめにして処理してしまうというような方法になっています。ひとまとめにして処理するので非常に計算負荷が軽く計算速度が速いのですが、まとめてしまっているので、そのまとめた信号の時間長の間にもし伝播路の特性が時間変化したとすると、そういうものには対応できないということになります。
なので、時間変化に弱いということになるのですが、そういった結果が実験結果でも得られていまして、これは「しんかい6500」に搭載する時に行った実証試験の結果なのですが、左にそのOFDMの試験結果、右に我々が採用しているDFE(時間領域で等化する方法)について示してあります。横軸にドップラーシフト(どのくらい移動したかというもの)を表していて、縦軸のアウトプットSNRというのは復調した処理の結果がどのくらい良いか悪いかというのを表しています。それとあとはビット誤り率(どのくらいの誤りが発生したか)というのをプロットしてあります。OFDMの方はドップラーシフト(移動の影響)に対してこのように低下してしまっている。ほとんどのパケットでエラーが発生してしまっているのに対して、DFEの場合はそういったような低下がなくて、ドップラーシフトに対しても安定して通信ができていて、ほとんどのパケットでエラーが発生していないというような結果が得られます。こういったようなところが先ほどの性能の差の一つの要因かというふうにいえるかと思います。
この装置は今「しんかい6500」に搭載されていて、今お示ししているような映像を転送したり、あるいは観測データを転送するための装置として使われています。水中はそういうわけでパイロットと交信・会話はできるのですが、6,000 mだと往復8秒掛かってしまうのでスムーズにパパッと話ができるわけではないですし、そもそも口頭で例えばこんな生物を見つけましたとか、こんな岩石がありますとか、作業の詳細というのも説明するのが難しいと思うのですが、こういうふうに映像で見せることができれば、そういったような説明をしなくていいので、調査観測そのものだけではなくてオペレーション自体においてその効率化に貢献できているのではないかというふうに思います。
同じ装置をFF11Kという11,000 mまで探査することが可能なランダーにも搭載していまして、同様に9,000 mでの調査潜航で画像伝送あるいはデータ伝送に使われています。
他の機関の潜水船の音響通信装置についてもご紹介したいと思うのですが、最近だと「Limiting Factor」、これは「Bakunawa」というふうに名前が変わったそうなのですが、民間の潜水調査船でフルデプスまで潜れる潜水調査船が非常に注目を集めていると思うのですが、この潜水船にはL3Harrisという会社の通信装置が使われています。これはDSSSという方法を使っているのですが、これがどういうのかというのを簡単にお話しすると、スペクトラム拡散というのですが、元々送ろうと思っていた信号の単位(シンボル)を、例えばその10倍の長さの符号別の信号で表現して送信するということをします。それで受信したときに、途中の伝播路の影響を受けて、伝播のひずみを受けてしまって波形がひずんでしまうのですが、それを何とか補正をしようとするのではなくて、相関を取ってピークを取るという処理をします。この図でいうと、要はプラスかマイナスか、1かマイナス1かだけを判定すればよいと。そういう簡単な処理になるので計算負荷が軽く、確実に通信ができるということになるのですが、通信速度はその分遅くなってしまうということになります。先ほどのL3Harrisの通信装置も実効通信速度は0.8 kbpsとか1.6 kbpsとかそのくらいの通信速度になっています。
あと、中国も7,000 m、11,000 mの潜水船を建造して運用していますが、それ用に開発した通信装置についても論文等で発表されていまして、それの情報によると、これらの潜水船でもJAMSTECと同じDFEという方法が採用されています。ただ、カバーエリアを広く取るという思想のようでして、多分指向性の広い送波器を使っていて、そのために通信速度は15 kbpsとか10 kbpsというような通信速度になっています。
最後に、新しいステップの開発事業としてご紹介したいと思うのですが、我々は通信と測位を統合した装置というものを開発しました。従来ですと、通信装置と測位装置というのは別の装置としてばらばらに使われていたのですが、そうなると通信と測位がバッティングしないように重ならないように、かなり長いインターバルを取って使われていたのですが、そうすると、10秒に1回とか非常に低い頻度で、確実性も落ちてしまうと。その問題を解決するために、通信と測位を統合化することで、高頻度で確実な通信を実現するという装置を開発しました。これを使って4期のAUVの同時運用にも成功していまして、この後「うらしま8000」とか「しんかい6500」にも搭載していって活用していくという予定です。以上です。
【松本主査】 ありがとうございました。
ただ今の御説明につきまして、御質問等ございましたらお願いいたします。
岩崎委員、お願いいたします。
【岩崎委員】 NHKエンタープライズの岩崎です。
以前私も「しんかい6500」に乗船して撮影した時に、本当にこの静止画で伝送できるということにすごく驚いたのですが、かなり初期からこの装備はあったと思うのですが、今はもう少し例えば伝送の速度が上がって、今は2.5秒に1枚というお話でしたが、もう少し動画性能が上がるとか、何かそういう方向に進化していたりしないのでしょうか。
【志村部長】 今おっしゃったのは、前に使われていた通信装置との比較ということでしょうか。
今左にお見せしているのが、建造当初ぐらいからの使われていた通信装置で転送した画像なのですが、今回我々が作ったのが今おっしゃっていたように2.5秒に1枚ぐらいで右のような映像を転送するように今開発したということです。今後の話としては、もう少し通信速度を上げられると思うので、もう少し画像の転送レートは上げられると思います。
【岩崎委員】 この新しい装置になったのはいつ頃からなのでしょうか。
【志村部長】 2018年です。
【岩崎委員】 海外でこういう技術はなかなかないと思うのですが、これは日本独自といってもよろしいのでしょうか。
【志村部長】 音響通信で画像とか映像を転送するというのは別にないわけではないです。
もちろん研究レベルでしたらそういう研究発表が時々されてはいます。あと、多分潜水船とかに搭載して実運用されているというのは今ないかもしれないですね。潜水船が少ないというのもあると思うのですが。中国の先ほどご紹介した潜水船の通信装置でも画像を転送するのに使っていますが、10秒に1枚とか10数秒に1枚というような更新レートだったと思います。
【岩崎委員】 ありがとうございました。
【松本主査】 ありがとうございました。石橋先生、どうぞ。
【石橋教授】 今の画像伝送装置ですが、私はユーザー側なのでコメントいたしますが、先日新しくなってから初めて乗ったのですが、本当に驚愕の進歩です。
昔はやはり絵だけ来ても何かよく分からなくて質問したりしていましたが、今は2秒に1回来るともうほとんど質問しなくてよくて、もう上で誰も会話しないみたいな感じで、もう十分動画を見ている感じがします。私はもちろん何回か潜航しているからだと思うのですが、潜航した経験がある人であれば下で何が起こっているかほとんど確実に推定できて、本当に若い人に次は潜ってもらいたいと心から言えるような、研究の効率的には非常に良くなっていると思います。コメントです。
【志村部長】 ありがとうございます。
【松本主査】 ありがとうございます。谷委員、お願いします。
【谷委員】 僕も石橋先生と同じで、1世代前のものと現在のものと両方使っていて、僕もすごく衝撃を受けて、本当に有り難いなと思っているのですが、僕たちは分野横断型の調査で、例えばなのですが岩石の地質の研究者がHOVで潜っているときに、船上の生物の研究者から生物も採取してほしいというようなことが年々増えてきていて、これまでの音響通信はどちらかというと下から上に、より速く、より高解像度のものを送っていくという発想で作られていると思うのですが、逆に船上で送られてきた画像の、例えばこの画像の中のこの部分をより詳しく見てほしいみたいな要望があるのですが、逆に船上から海底の「しんかい6500」に送られてきた映像に対して例えば印を付けたものを逆に送るみたいなことというのは将来的に可能になったりするのでしょうか。
【志村部長】 今おっしゃったように今の音響通信は潜水船から船へのアップリンク通信だけなのですが、この後ダウンリンク通信、船から潜水船に通信する装置の機能を追加することを今計画しています。ただ、そちらはそんなに高速化を追求していないので、画像を送るところまでは考えてはいないのですが、テキストメッセージを送って何か指示を出したり、そういったことを今検討しています。
【谷委員】 僕も9月に「よこすか」の航海をやらせていただいたばかりなのですが、やはり船上から「しんかい6500」に研究者同士でコミュニケーションを取りたいという要望が年々やはり増えてきているので、それで水中電話を使ってしまうとパイロットの人たちも多分煩わしい部分もあると思うので、例えば今おっしゃったようにテキストで研究者同士、船上と「しんかい6500」の中の研究者が議論できるようなったりするとより良いなと思っています。ありがとうございます。
【志村部長】 ありがとうございます。
【松本主査】 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。
巻委員、お願いします。
【巻委員】 御発表ありがとうございます。
従来に比べて非常に高速化しているということで素晴らしい技術だというふうに思ったのですが、現状の通信できる範囲とか、後は船からどのくらい離れてもいけるのかというところと、後はこれが将来的にもっと速くなっていくと、例えばROVの無線化とか、あるいはAUVでサンプリングをできるようにするとか、そういった応用も考えられるかと思うのですが、その辺りの感触をお聞かせいただけないでしょうか。
【志村部長】 今使っているのは±20度ぐらいのコーンの形をした指向性のある送波器を使っています。
狭いといえば狭いのですが、ただ、6,000 mまでの距離だと確か半径2 kmの円内に入っていれば受信できることになるので、別にその範囲内に母船がいるのは難しくないと思うので、カバーエリアとしては十分だと思います。
あと、ROVとかAUVとかを無線で操縦するということなのですが、伝播速度は変えようがないので、伝播の遅れはどうしようもないので、リアルタイムで細かい操作をするというのは難しいかと思います。例えば右に行けといっても、その命令が届くのに例えば6,000 mだったら4秒掛かって、そのとおり動いたのが分かるのが早くて4秒後、トータルで8秒になってしまうので、やはり大まかな指示を出すというところまでかというふうに思います。その辺をカバーするために今我々が進めているのは、AIを使って画像認識をして、ある程度の判断をAUVができるようにするという研究開発を進めようというふうに着手しています。
【巻委員】 ありがとうございます。
例えば火星探査機に近いかと思うのですが、あれも通信の伝播はかなり遅いですけれども、やはり自律性をある程度持たせて大まかな指示をして、でもそういうところでも映像が少し遅れてでも来ると、AUVの運用方法も大分変わってくるのではないかというふうに思いました。
最後にもう1個なのですが、これは何か民間への技術移転とか製品化という可能性はありますか。例えば大学でも使えるようになるのでしょうか。
【志村部長】 最後にご紹介した通信測位統合装置というものですが、これはメーカーさんに発注して作ってもらいました。これが今の製品化されることが計画されているので、買っていただければ使えると思います。
【巻委員】 ありがとうございます。
【松本主査】 ありがとうございました。
私から一つ聞かせていただきたいことがあるのですが、今通信の話は大変素晴らしい成果が上がっているということで、非常に有用なシステムだなと思って伺っていました。ちなみに、通信と測位も一緒にしますとおっしゃっていたのですが、測位はどのくらいの精度まで実現できているのでしょうか。
【志村部長】 「よこすか」のような母船で受波する場合には、2次元の16chとか25chの受波アレイを使っているので、かなり精度良く、スラントトレンジの0.2%とかそういう精度でできます。ASVでもこの装置を使って運用しているのですが、そのときに受波アレイのサイズが小さいのと、そんなにチャンネル数がないので、1~2%とかそのくらいにはなってしまいますが、母船であれば普段皆さんが使われている精度で測位ができます。
【松本主査】 なるほど。ありがとうございます。
他にいかがでしょうか。挙手が今はないようですので、志村部長ありがとうございました。
【志村部長】 ありがとうございました。
【松本主査】 それでは、全体を通しまして御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。
小島委員、お願いいたします。
【小島委員】 ROVの大深度化というのが研究者サイド等からかなり強く出されていると思うのですが、一方で前回の議論でもそれは技術的に難しいとか、国内メーカーは撤退したが外国だったらケーブル等は輸入できるような議論もあったと思うのですが、その技術的な問題点の一番困難なところというのは、前回のビークルランチャーシステムの安定性みたいなところにあって、何か別のシステムを考えないといけないとか、何かそういうような面というのがあるのでしょうか。少し教えていただきたいです。
【松本主査】 河野委員、お願いします。
【河野委員】 JAMSTECで一番困って運用ができなくなったのは1次ケーブルです。
ものすごく長くて太い1次ケーブルを作って、そのランチャーシステムをするということができなかったということです。一時期うまくいっていた時期もあったのですが、同じ品質のケーブルを作ることができなくて、どうしてもすぐによりが入ってしまって使えなくなるという事態になっています。打開できなかったし、費用と時間のフレームの中に入らなかったという感じの出来なかったという意味ですが。
【小島委員】 ありがとうございます。
【松本主査】 廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】 ありがとうございます。
今回のテーマとは違うのかもしれませんけど、前回の平成28年の提言でできなかった、今話題になりましたようなケーブルがなぜできないのかというところが解決しないと、3,000m以上の深いROVの開発で結構そこがボトルネックになるのではないかという点があるので、そこを今後の委員会で掘り下げないといけないかと思いました。
あと、「しんかい6500」に関しても、三菱重工さんが実際その代替あるいは部品の供給を今後されないというようなことも聞いていますので、結局その「しんかい6500」の代替機の開発をどうするのか、その辺も掘り下げないといけないのではないかと思います。
AUVに関しては、平成28年の提言の方向性で今予定が進んでいるので、そこはそれでよいかというふうに思います。その辺の整理はこの委員会でやるのかどうかは議論した方がよいのではないかというふうに思います。
【松本主査】 廣川委員、御意見ありがとうございました。
この委員会でやるかどうかについては分からないけれども、どこかでそういうことをきちんと整理しておく必要があるということでよろしいでしょうか。
【山之内海洋地球課長】 事務局でございますが、正に前回できなかったところもこのとおり提示させていただいておりまして、これについてどうしていくのかということはこの委員会で議論したいと思っています。その上で、報告書にまとめていくということになると思います。
【松本主査】 ありがとうございました。
谷委員、お願いいたします。
【谷委員】 僕も廣川委員と全く同意見で、今出ているスライドにもありますが、8,000 m級のAUVが完成して実際8,000 mの海底を調査して、海底地形とかをAUVで撮って何か面白いものが見つかったとして、結局そこに潜ってものを観察してものを採らないとやはり科学にはならないので、このAUVとROVあるいはHOVも基本的には両輪でやっていかなければいけないものなので、AUVを8,000 m級にするのであればやはりROVも7,000 m、さらにやはり同じ水深まで行けるようにしなければいけない。その課題がケーブルであるならば、やはりその議論は避けて通れないのではないかと思っています。以上です。
【松本主査】 ありがとうございました。
湯浅委員、お願いいたします。
【湯浅委員】 メーカー側からですが、要するに国産にこだわるかどうかというのは非常に大きなところになってくるのではないかと思っています。ケーブルメーカーとしてもやはりヨーロッパ系であればもうメーカーがあるわけですので、今7,000 mまでのケーブルがカタログ化されているかは今分からないのですが、メーカーとして存在するわけですので、そこを使うことによってある程度ROVの大深度化というのはいけないことないのではないかと。あくまでも国産にこだわるとやはりどこのメーカーで開発してくれるのだというお話がどうしても出てくる。これは多分HOVでも同じと思いますが、過去には建造できたわけですので、できないということはないのですが、それに関して費用と期間をどれだけ頂けるかということになっていくかというふうに思っています。それがクリアできれば当然民間企業としても製造をするのはやぶさかではないのではないかと思っています。以上です。
【松本主査】 ありがとうございました。海外製はあるのですね。なるほど。
それでは、巻委員、お願いいたします。
【巻委員】 皆さんの御意見に近いのですが、やはり大深度の少なくともROVは必要だなというふうな考えを私も今日の議論で持ちました。
それでケーブルですが、ぜひケーブルの開発もできればよいと思うのですが、それがもしできなかった場合の次善の策として考えられるのが、例えば3,000 mまでであれば今のケーブルでいけるのだったら、そのクラスのものを1台作って、7,000 m使用に関しては例えば細径ケーブルの採用ですね。それの場合だと電力を送る必要がないので細いケーブルでいけます。技術的にそれができるのかどうかというのは私も今分からないところはありますが、多分大電力のケーブルよりは簡単にできると思います。その代わり、エネルギーを内蔵しないといけないので、例えば電池を多めに持たせるとか、最近ワーククラスでもフルエレクトリックのROVとか出ていますので、そういう新しいコンセプトを入れていって、できれば24時間ぐらい動けるものができるとよいかというふうに思います。
あとは、今日出てきたROVの運用方法で複数日運用、それから高速リンクでつないで陸上から操作できたり観測できたりというのができると、いろいろと人がいっぱい船に乗れない問題が解決して、今後多分世界的にもそういう方向に行くと思いますので、これから作るのだったらそういうシステムがよいかというふうに思います。
最後ですが、コスト面の比較というのがどこかで必要なのではないかと思います。やはりHOVがとても良いというのは私も同意なのですが、費用面でどうかというところも含めた議論が必要ではないかというふうに思いました。以上です。
【松本主査】 新しいコンセプトを入れてという話と、今研究者の皆さんから上がってきたようなことをできるようにするという話と、それから、コストの比較も重要だという御意見ですね。ありがとうございます。
河野委員、お願いいたします。
【河野委員】 ケーブルについてですが、仮にできたとして、ケーブルは消耗品だということなので、1本できればよいわけではなく、数年間に1本ずつ新替えしなければいけないという。運用する側のコストについても一応掛かるということですね。一方、数年に1本であっても定期的に注文が入るのであれば民間で作ってくれるところも出るかもしれないですね。
あと、次善の策で細径ケーブルなのですが、ROVにこだわる人の多くはやはりサンプルを比較的多く持って帰って来られるというところにあるので、光ファイバーケーブルでつなげば確かに動力とか自由に動ける時間が長いのですが、やはりサンプルを持って帰ってくる能力という意味ではどうしても少し劣ってしまうので、先ほどの費用面も含めてですがコストの考えが重要ではありますが、できることが違うもののコストを単純に比較できるのかという面も少し考慮した方がよいかもしれないですね。以上です。
【松本主査】 ありがとうございます。ケーブルはかなり消耗品でこまめに替えてくものなのですね。
【河野委員】 駄目になったところを少しずつ切って使っていくので、徐々に短くなっていって、それで最後は新替えしないと次がいけないという、そういう感じになります。あと途中で断線する可能性もゼロではないので、1本だけをというわけには必ずしもいきません。
【松本主査】 分かりました。ありがとうございます。
奥村委員、お願いいたします。
【奥村委員】 高知大学の奥村です。
谷委員と石橋先生の本日のお話で両方出てきたと思うのですが、ROVの24時間運営プラス数日運用というところに非常にコミュニティからニーズが高いというような意見が複数寄せられているという状況なのですが、乗れる人員も少ない母船側の問題というのもあると思いますし、運用面での就業規則等の面でもあると思うのですが、実際どこが一番ネックで、どう解決すれば、例えば何カ月後、何年後、何年度経ったらこの24時間運用というのが可能になるのかというところを少し教えていただきたいというふうに思います。船がないとどうしようもないのかとか、そういう背景です。
【松本主査】 奥村委員からの御質問で、谷委員から何かご回答になるようなことはありますでしょうか。
【谷委員】 僕も運用面の方は多分JAMSTECの方にお伺いしなければいけないと思うのですが、多分アメリカのこの船を使った経験からいうと、現状の日本の調査船はそういう24時間オペレーションできるような設計になっていないので、まずは多分船からかえていかないといけないだろうというのが僕の個人的な印象です。なので、なかなかすぐには実現しないのではないかとは正直残念ながら思っています。
【奥村委員】 ありがとうございます。
【松本主査】 河野委員はいかがでしょうか。
【河野委員】 観測項目にもよるのですが、機構が運用している船の中でも「白鳳丸」や「みらい」は24時間の観測は可能です。
主な要因は、現在の船員法を遵守しつつ24時間体制で観測をするチームを作るには、乗組員数を大幅に増やさないと対応できないというのが一番大きな問題だと思います。あと、現実的な問題として、今こちらにあるROV、AUV、それらを複数台同時に搭載して運用できる設計にはなっていませんので、HOVとAUVはできるようになっていますが、それは1隻だけですので、そういう意味ではデザインから替えたものが必要だということになります。直近の理由は船員数、それからもう少し高度なことをやろうと思ったら船そのものからということになると思います。
【松本主査】 奥村委員は解決したでしょうか。
【奥村委員】 はい。母船の面が非常に大きいということですね。ありがとうございます。
【松本主査】 ありがとうございます。もう時間が過ぎてしまっていますので、ここで締めたいと思いますが、よろしいでしょうか。
では、皆様ありがとうございました。以上をもちまして本日の議事は終了いたしました。
最後に、事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。
【事務局】 本日は長時間にわたりありがとうございました。議事録につきましては事務局にて案を作成しまして、後日委員の皆様にメールにて確認させていただきます。
次回の委員会は2月5日の開催を予定しております。事務局からは以上でございます。
【松本主査】 ありがとうございます。これをもちまして本日の深海探査システム委員会を終了いたします。
本日はお忙しいところありがとうございました。
―― 了 ――
研究開発局海洋地球課