令和5年11月22日(水曜日)15時00分~17時00分
オンライン開催
松本主査、岩崎委員、奥村委員、河野委員、小島委員、谷委員、日野委員、廣川委員、巻委員、湯浅委員
山之内海洋地球課長、伊藤海洋地球課長補佐 ほか
【事務局】ただいまより、第12期科学技術・学術審議会 海洋開発分科会 深海探査システム委員会の第1回会合を開催いたします。
本日はご多忙にもかかわらず、ご出席をいただきまして誠にありがとうございます。
初回の委員会の開催にあたり、事務局を代表して海洋地球課長の山之内よりご挨拶をさせていただきます。
【山之内海洋地球課長】 海洋地球課の山之内でございます。本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。委員会の開催にあたりまして、一言ご挨拶させていただきます。
皆さまもご存知の通り、我が国は四方を海で囲まれた海洋国家です。EEZの体積ですと世界第4位、5,000メートル以深の深海の体積ですと世界第1位です。そのために深海の観測研究は、国家戦略上欠かすことができない重要な取り組みと考えております。このような状況から、4月には第4期海洋基本計画を閣議決定しました。そこでは人類のフロンティアである深海の観測研究を推進することの重要性が指摘されております。
また、国際的に見ても、5月に仙台で開催されましたG7仙台科学技術大臣会合においても、深海をはじめとするデータ空白域における観測の強化が重要とされたところでございます。このように深海観測の重要性を踏まえて、この委員会では我が国の今後の深海探査システムの在り方や推進方策についてご検討いただければと思っております。委員の皆さまにおかれましては、ぜひ、忌憚のないご意見を賜ればと思っておりますので何卒よろしくお願いいたします。以上でございます。
【事務局】 それでは委員の皆さまのご紹介をさせていただきます。
資料1に委員名簿がございますので、お名前を読み上げさせていただきます。日野良太委員、河野健委員、廣川満哉委員、松本さゆり委員、岩崎弘倫委員、奥村知世委員、小島茂明委員、谷健一郎委員、巻俊宏委員、湯浅鉄二委員、以上10名の委員にご参画をいただいております。よろしくお願いいたします。
続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。画面にも投影させていただきますけれども、こちら議事次第に書いている資料1~5、参考資料1-1~参考資料4を事前に送付させていただいております。ご不明な点や不備等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
続きまして、主査の指名についてです。参考資料1-3をご覧ください。こちらは科学技術・学術審議会 海洋開発分科会運営規則第3条第3項におきまして「委員会の主査は当該委員会に属する委員等のうちから、分科会長の指名する者がこれに当たる」とされており、分科会長からは主査として松本委員が指名されております。以降の進行は松本主査にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【松本主査】 海洋開発分科会の藤井分科会長から、ご指名をいただきまして主査を務めさせていただきます、国立開発研究法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所港湾空港生産性向上技術センターの松本です。委員会の開催にあたりまして、主査として一言ご挨拶を申し上げます。
今回は深海探査システム委員会という、これからの日本の深海探査、探査ビークルに関わる技術開発の大きな会議の主査として大役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。実は、このようなお役目は、今回初めてでして、これから非常に大事な議論をするところでございますが、皆さまのご意見をしっかり聞いて、今後どのようにまとめていくか、どのように進めていくかということをきちんとディスカッションしていきたいと考えてございます。どうぞ、皆さまよろしくお願いいたします。
それでは本日の議題に入りたいと思います。議題1「深海探査システム委員会の議事運営について」事務局よりご説明をお願いいたします。
【事務局】 参考資料1-3をご覧ください。
今回海洋開発分科会の運営規則第3条に基づきまして、8月29日開催の第70回海洋開発分科会において、本委員会は設置されました。
また、運営規則第3条第3項に基づきまして、藤井分科会長から松本委員が主査に指名されたところです。これらに基づきまして、資料2「深海探査システム委員会の運営規則(案)」をご覧ください。
第1条は、「委員会の運営は、この規則が定めるところによる」。 第2条は、「過半数が出席しなければ会議を開くことができない」。 第3条は、「基本は公開開催とし、調査の円滑な実施に影響が生じる場合には非公開とすることが適当であると認める場合にはそうできる」としております。第4条では「議事録を作成し、これを公表すること」について書いており、第5条には、「必要があると認められたときには委員以外の方から臨時に出席させることができる」。第6条は「ウェブ会議システムを用いたオンライン会議ができる」と定められているものでございます。
事務局からのご説明は以上となります。
【松本主査】 ただいまご説明のありました運営規則案について、ご質問やご意見はございますか。
それでは、本案をもって深海探査システム委員会の運営規則として決定してよろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは次の議題に移りたいと思います。
議題2「深海探査システム委員会の設置趣旨について」事務局より資料のご説明をお願いいたします。
【事務局】 資料3を用いまして「深海探査システム委員会の設置趣旨について」をご説明させていただきます。
本資料は、今年8月に海洋開発分科会の委員の皆さまにお諮りをして、深海探査委員会の設置が認められたものでございます。
参考資料を用いまして、ご説明させていただければと思います。
深海探査システム委員会の設置趣旨でございますけれども、昨年8月の海洋開発分科会において取りまとめられた提言において、沿岸域から海洋域、極域、海面から深海といった、広くかつ深い海洋を包括的に理解するためには、海洋調査データを格段に増やす必要があり、そのための海底の係留系や探査機を用いた海洋調査の観測の拡充を図るとともに、技術の改良・高度化を進めることの重要性が指摘されたところでございます。今回はその中でも、我が国の深海探査における喫緊の課題や重要性があるということで、右側にありますAUV、ROV、HOVを用いた深海探査に着目したシステムを検討しようということで設置されたものでございます。喫緊の課題は、次のページでご説明させていただきます。
まず一つ目といたしましては、深海大国日本ということで、日本は深度別のEEZ体積では深いほど順位が上がりまして、5,000m以深は世界一となっております。そのため我が国の様々な課題にも深海域が大きく関与しているところでございます。
二つ目といたしまして、AUVやROVの大深度化・高性能化の遅れです。近年、海外では右側にございますとおり、AUVやROVの技術が大幅に進展しているところでございます。一方、日本ではAUVは4,000m級、ROVは4,500m級というところになってございます。アジア太平洋地域では6,000m以深へ到達できる探査機が特定の国に集中的に分布しており、他の海域に比べ、探査能力が弱い状況にあるというところでございます。
三つ目といたしまして、日本で最深度まで専攻できるHOVの老朽化がございます。「しんかい6500」は、我が国が所有する6,000m以深の調査・作業が可能な唯一の探査機となっておりますが、完成から30年以上が経過しており、老朽化により、近い将来は使用できなくなる懸念や、運用ができなくなった場合に我が国の探査能力が4,500mまで後退してしまいます。
以上を踏まえまして、我が国の深海域における調査・作業能力を維持・強化するためには、深海探査機(AUV、ROV、HOV)の研究開発及び整備に早急に取り組む必要があり、今後の深海探査のシステムの成り方について検討を行うため、分科会のもとに本委員会が設置されたというところでございます。
事務局からのご説明は以上となります。
【松本主査】 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明についてご質問やご意見はございますか。
もし、ないようでしたら、この後にディスカッションする時間もございますので、次に進みたいと思います。
それでは、議題3「国内外の深海探査システムの動向について」に入ります。本日は1回目の会合ということで、今後、各国の深海探査システムの現状や各論の検討を行うにあたって、念頭に置くべき事項などについて整理するために、国内外の深海探査システムの動向についてヒアリングを行いたいと思います。
本議題は河野委員にご説明をお願いしたいと思います。河野委員、どうぞよろしくお願いいたします。
【河野委員】 JAMSTECの河野です。まずは深海探査機の種類について整理し、次に世界の動向、日本の現状を話した後に問題提起をさせていただきます。
まずHOV(有人潜水調査船)とは、人が搭乗し機体の操作や観測を乗船者が行う探査機です。母船とは完全に切り離され、電池により駆動し、母船とは、音響無線装置を通じて連絡を取ります。HOVの強みとしては機動性の高さ、操作性の良さやマニュピュレーターなどによる海底面での軽作業、あるいはサンプリングが可能な点が挙げられます。そして最大の特徴は、何と言っても、人がその場に行って、その目で見ることができるという空間認識性になります。弱みとしては、母船との通信速度が遅いので母船とのリアルタイム通信が制限される点、あるいはバッテリーや酸素の量の制約によって稼働時間が制限される点が挙げられます。
続いて遠隔操作型のROVです。ROVは、母船とケーブルで接続されまして、ケーブルを通じて電力供給や通信を行う探査機です。機体の操作は船上から実施されます。ROVには母船から電力が供給されるため、長時間の探査や重作業が可能です。また映像やデータが高速、大容量、リアルタイムで母船に転送される点に強みがあります。一方、ケーブルで接続されていますので、操作可能な範囲が制限されたり、あるいは深いところへ潜ろうとすると、ケーブルの重量が増して母船やケーブルへ負荷が増大するといったようなデメリットがあります。また肉眼に比べて、カメラを通じた観察となりますので、ちょっとした認識あるいは操作性は、HOVに比べると少し劣るというようなことになります。
最後に自律型探査機と言われるAUVです。AUVは、あらかじめ設定されたシナリオに基づいて観測する探査機です。母船とは完全に切り離されて電池によって駆動します。音響通信で母船とのやり取りをするということはHOVと同じです。AUVの最大の強みは、経路や海底からの高度など、設定シナリオ通りに自律で航行することになります。主に航行型とホバリング型に対別されます。航行型は早くて、海底地形などを広範囲で測ることに向いています。
一方でホバリング型は、大きさとしては小さいことが多いですが、回転や上下運動に優れ、静止したままの観測が可能となります。これらに共通する弱みとしては、揚収後でなければデータを抽出・解析することができない点、あるいはHOVやROVのように、目で見ながらの観察や観測ができない点、バッテリーの制約がある点などが挙げられると思います。また名称になっている「A」はAutonomousのAですが、自律性については課題も多く、現時点では障害物を自動で回避するなどのレベルにあるのが一般的で、高い自律性を備えたAUVは、まだ開発途上というのが一般的な認識でございます。
これを整理した表が次のページにございます。各項目について、何かをするのであればこれが最適、あるいはこれでも良い、ちょっと活用が難しいというものに印を付けています。表の一番右には、どのようなことに使われるかという例が書いてあります。ご覧になって分かりますように、それぞれの探査機には得て不得てがございます。これさえあればいいということではなく、複数の探査機を相補うように使っていくことが効率的な探査のためには重要となります。例えば、広域調査をAUVによっておこない、ある程度の目星を付けてからHOVで潜る、あるいはROVで物を取りに行く といった運用が良いのではないかと思っています。
この後は大深度観測域を切り口に世界の状況をご説明します。この図は先ほども出ていましたが、第70回海洋開発分科会資料を改編したもので、6,000m級以上のROVやHOVを所有する公的機関がプロットされています。
これを見ると、大深度の深海探査機は、西ヨーロッパ、東アジア、北アメリカ東部に分布していることが分かります。これにオセアニアを加えた4つのエリア、10カ国について動向を調査いたしましたのでご紹介いたします。なお、オープンソースですので、ものすごく深く調べた、網羅したということではございませんので、その点はお含みおきください。
最初にご紹介しますのが、アメリカとカナダです。
アメリカは2021年までの10年間をかけて、大深度HOVアルビンを改造いたしました。4,500m級から6,000m級へ耐圧殻を含めた改造です。この時にHOVの廃止も含めた検討が行われたようですが、当面の間は、この機能を維持する方向となったようです。アメリカでは個人投資家の出資を元にした観光面でのHOV利用も割と盛んで、2018年には民間企業が11,000m級のHOVを建造しています。また4,000m級のHOVなどであれば市販もされているようです。ROVやAUVについても、共に6,000m級が市販されるなど、民間企業の技術力も世界でトップクラスの位置にいます。2014年にウッズホール海洋研究所が運用するROVが圧壊する事故が発生しましたけれども、現在でも異なるものを導入し6,000m級を運用しているということで、大深度観測機能を維持するという方針は変わっていないようです。また海軍では、自律性の部分を強化していく方針も打ち出されています。
続いて、カナダですが、HOVについては今も持っていませんし、今後も建造計画の情報はございません。ROVやAUVについては、ISEという民間企業がリードしているようです。ISE社はROV、AUV共に6,000m級を市販しており、日本でも民間企業が導入したということも聞いております。
続いて、イギリスとフランスです。
イギリスは、HOVについては所有もしておりませんし、今後の建造情報もありません。ROVは公的機関で6,500m級と,6000m級を運用しており、民間企業も6,000m級を市販しています。イギリスを代表する海洋研究機関NOCでは、一度の充電で長時間走行できる、ロングレンジ型の開発にフォーカスしているようです。一方で海軍は、アメリカの民間企業が製造したリーマスシリーズを購入しているようです。またNOCのロボティクスセンターには「共創の場」的な仕組みがあり、スタートアップ企業がロボティクス開発を、NOCの研究者と気軽に話しながら進められるような場所を提供しているということです。さらに、洋上風力発電のメンテナンスあるいは安全保障に加えて、様々な分野でAUVの活躍が期待されているという状況です。
フランスの海洋研究機関Ifremerでは、西ヨーロッパでは唯一となる大深度HOV のノチールを運用中です。ROVについては、同じくIfremerで6000m級も運用されているようですが、大深度ROVは国内の民間企業では製品化されていないということです。最後にAUVですが、現在3000m級を運用しているようですけれども、国産の6000m級の製造、またはそれに向けた水中ロボティクス研究所の設置計画などを発表しています。
ドイツとノルウェーについてもご紹介します。
2カ国ともHOVについて、所有あるいは今後の建造情報はありません。ドイツのROVですが、公的機関が大深度を複数運用しているようですが、その一部については国内の民間企業と構成した連携協定を通じて開発されたもののようです。AUVについては、公的機関(アメリカの民間企業制)のものを使用しているようです。ただ、フランスのIfremerと同じく、国産化に向けた動きも活発化しているというふうに見えます。
ノルウェーは、ROVについてはArgus社、AUVについてはKongsberg Maritime社という世界トップクラスの民間企業が存在しています。Argus社が市販する7,000m級ROVは、もしカタログ値通りであるならば、現在世界で最も深くにアクセスできるROVということになります。またAUVについては、パイプラインメンテナンスを行う海蛇型など、オイルガスの需要を出資元にしたユニークな研究開発を行うスタートアップ企業も登場しているようです。
日本以外のアジアですが、まずは中国です。HOV、ROV、AUVのいずれも国内独自に開発を進めているのが大きな特徴で、11,000m級のHOV「奮闘者号」など、深度という点では、いずれも世界トップクラスの性能を誇っています。AUVについては、アメリカの海軍と一緒で、今後は自律性の向上に力を入れていくという動きがあるように見えます。
次に韓国ですが、HOVは所有していませんし、今後の建造情報もありません。ROVについても、公的機関が6,000m級を所有しているようではありますけれども、どうやら予算的な制約があるのか目立った情報は得られていません。反対にAUVについては、安全保障など背景に国産化を進める動きがあり、6,000m級を市販する民間企業も存在するなど、ROVに比べればAUVのほうが活発な印象であります。
最後にオーストラリアとニュージーランドです。
2カ国ともHOVについて、所有、今後の建造情報はありません。オーストラリアですが、ROVについては、浅海の運用から6,000m級まで、民間企業が高い技術を持っている印象を受けます。反対にAUVについては、公的機関の活動が顕著です。大学を中心に形成されたコンソーシアムにおいて、珊瑚礁などの環境モニタリングを行う浅いところのAUVを運用する動きがありますし、5,000m級の海氷観測用AUVを開発したり、海軍が6,000m級の大型AUV建造を計画したりするなど、大深度を意識した動きも活発化しているということであります。
ニュージーランドについては他の主要国と比較すると、ROV、AUVともに国内で目立った研究開発は実施されていないようです。AUVについては海外製品を利用しているというのが現状のようです。
今度は機種別にまとめてみますけれども、HOVについては所有国が限定的です。西ヨーロッパと米国ともに有人潜水探査機能は維持する見込みで、中国が一強状態だということであります。また大深度の有人潜水船については、学術調査を除いてニーズが少ないようなので、市販の事例というのは相対的に少ないと言えます。
これはHOVの潜航可能深度がどのように変遷したかを示した図です。1950年からしばらくの間は欧米を中心に、とにかく深いところへ行くために、フルデプス級(10,000m級)のものが開発されましたけれども、その後に徐々に6,000m級に収斂していく様子が分かると思います。そして30年以上経った2010年頃に、中国が有人深海調査船の開発に着手し、初建造からごく短時間で11,000m級までの建造技術を成長させたということが見て取れるかと思います。今回はあまり調べておりませんが、ロシアも6,000m級を持っているようですし、インドが将来的に6,000m級HOVを建造予定といったようなことを計画しているようです。
ROVですが、多くの公的機関が6,000m級を所有しています。またオイル&ガスなどのバックがある国々を中心に、民間企業でも6,000m級が多数、中には7,000m級というものも市販されていました。こちらも6,000mを超えて深く潜るようなものはあまり多くはなく、学術と世界のニーズの少なさが、その原因なのではないかと考えているところです。
AUVですが、世界のトレンドはロングレンジ型で巡航型のAUVということになっています。ただ、アメリカや中国などのAUV先進国では、高い自律機能を重視して研究開発を進めているということです。民間企業の製品ラインナップも諸外国では充実しており、浅いところから6,000mに至るまで、航行型についてはアメリカ、ノルウェー、カナダなどの特定の民間企業が寡占している状態にあります。これらを購入して使っている公的機関も多い一方で、フランス、ノルウェー、韓国などは国産化に力を入れ始めているということで、おそらく背景には、安全保障に対する懸念があるのではないかということが伺えます。
続いて、我が国はどうかという話です。まずはHOVについてです。日本は6,500m級の有人潜水システムを所有しています。実は安全基準に違いがあり、「しんかい6500」は中国や米国の基準では8,000m級となります。技術レベルは非常に高いものでしたが、「しんかい6500」もその母船も、就航から30年以上が経過しており、部品の劣化や消耗品が入手困難などの問題で、このまま放置すると、近い将来は使用できなくなるという懸念があります。
続いてROVです。かつては11,000m級の「かいこう」を運用して世界のトップクラスの技術力を誇っていましたが、その後は低調で、現在は4,500mまでということになっています。大深度ROVを製造する民間企業も存在せず、部品も含め、基本的には海外から輸入しているという現状でございます。
最後にAUVです。AUVもROVと同様国内で販売されているものの大部分は海外製品ですが、逆に海外の企業から受注を受けるなど、高度な技術力を有する民間企業も存在しています。またJAMSTECでは、航行型の8,000m級、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所では、ホバリング型の6,000m級AUVの開発計画を進めています。これらが開発されれば、世界に引けを取らない深度になると思います。またAUVについては、今年中に国の戦略が策定される予定であります。ただHOVやROVについては、現状では明確なビジョンというものがございませんので、本委員会では、HOVやROVについて、今後の方針もぜひ検討していければと思っております。
JAMSTECが全てとは思いませんが、ご参考までにJAMSTECの深海探査能力の変遷をお知らせいたします。まずはHOVとROVです。とにかく2,000mからスタートしようということで、1981年に母船と深海調査船からなる「しんかい2000」-「なつしま」システムが完成いたしました。1989年には「しんかい6500」-「よこすか」システムとし、6,500m級の有人深海調査システムが完成し、今日に続いているということであります。一方でROVのほうは「ドルフィン-3K」システムというものを1988年に開発いたしました。これはその後に「ハイパードルフィン」という機械に変わり、さらにその技術が「KM-ROV」へと受け継がれています。ただ技術といっても、もはやこれらは国産と言えなくなってしまいましたが、調査研究用として用いられています。途中で導入した「ハイパードルフィン」は4,500m級に改造して現在も使っています。
1990年頃には11,000級のROV「かいこう」を開発いたしました。当時としても、現在でも世界に類を見ない超大深度のROVでした。その後に子機を失うという事故以降、「かいこう」は7,000m級となり、今では「かいこうMk-Ⅳ」として4,500m級の運用となっています。従って現在は、3,000m級ROV1機、4,500m級ROV2機、6,500m級有人潜水システム1つという運用となっています。大深度において観察しながら試験できるのは6,500mまでということになります。
AUVについては資料の通りです。JAMSTECはごく早い段階から巡航型自律無人機「うらしま」を建造して共用機械としています。耐圧は3,500mです。その他AUVもいくつか開発しておりますが、まだ試験的な運用の状態で4,000m級といったところまでということになります。近年は、資源開発の研究で米国製の「NGR6000」を購入して、現在運用を始めているところになります。JAMSTECでは「うらしま」を8,000m級に改造中で、これができればAUVとしては世界一の深度ということになると思います。
次に母船についてお話しします。2010年当初には5隻の船がございました。それが今では「淡青丸」が「新青丸」となって、日本近海の学術研究とこれまで「なつしま」がやってきたROV観測を引き継いでいます。「かいめい」は、これまで「かいよう」や「かいれい」が担ってきた地震調査、ROVによる4,500m級の調査などが可能な船舶として設計されています。有人深海調査システムである「よこすか」だけは、AUVを搭載可能とするのみで、大きな改造もなく、今でも使われ続けているということで、陳腐化・老朽化が激しく、いろいろと厳しい状況になっているということです。
以上の状況を踏まえて、この後に深海探査機能はどういうものを持つべきかという議論をしていただくのですが、冒頭にもありました通り、日本は経済水域の中に、たくさんの深海を抱えているということで、大深度の観測は日本に課せられた義務であると同時に、これが海洋研究者の育成、引いては海洋産業のレベルアップにつながるというふうに考えているところです。
こちらの表は、実は深度ごとにいろいろなニーズがあるということをお示ししたものでございます。例えば、産業化ということで無人機を作る会社をたくさん作ろうとするのであれば、実はこのニーズを踏まえた産業が育成されていることが重要ではないかと思います。ただ、そういう産業創生のみを追求していってしまうと、大深度といったような学術や科学調査では強いニーズがあるものの、民間の開発という意味では、さほどニーズがないという技術は、だんだんと遅れを取っていってしまいますので、本委員会では、今後の日本が持つべき深海探査機について、いろいろな方面からバランスよく議論を進めていただきたいと考えています。我々が描いているちょっとした夢の一つを紹介します。
冒頭に述べたとおり、HOV、AUV、ROVには得手不得手がありますので、単独ではなく、それらをうまく使った総合的な観測システムを作っていくことが、将来のビジョンになるかと思います。例えば、AUVを複数台使って広域の観測をした上で、ここに潜るべきというところに有人潜水船やROVを潜らせてサンプルを取ってくるとか、あるところにROVを降ろし、その周りをAUVで探査しながら、バーチャルリアリティ技術を使って、あたかも自分たちが深海で有人船に乗っているような状況を作るというような技術開発が将来の姿なのだというふうに考えています。
最後にまとめです。日本の深海探査技術の現状は、HOV、ROV、AUVのいずれも、世界を大きくリードするというものではありません。AUVについて、産業化なども見据えた国の戦略ができますけれども、HOV、ROVについてはそういったものは現時点ではありません。特に大深度のほうは、座視すればどんどん遅れていく懸念があるというふうに考えています。
海外の研究開発動向なども踏まえますと、産業、科学技術、経済安全保障など様々な側面から今後どのようなものを持つべきか、それを実現するためにはどのようなシステムが必要かというような議論をすべきだと思っています。また、すでに寡占が進んでいるようなものについては追随するのではなく、先端的な要素技術を養っていくのが得策なのではないかと考えています。さらに、大きなビジョンを示した上で、必要となる技術をピックアップしていくことも必要だと思っています。そして最後は、HOV、ROV、AUV単体による深海調査ではなくて、組み合わせた深海調査のビジョンが必要になってくるだろうと思っています。
以上です。ありがとうございました。
【松本主査】 河野委員ありがとうございました。
ただいまのご説明につきまして、ご質問等ございましたらお願いいたします。
小島委員、どうぞ。
【小島委員】 どうもありがとうございました。
参考資料のほうにも書いてありましたが、日本の耐圧殻の安全基準はアメリカ等と比べても厳しいということですが、例えば安全基準をアメリカ並みにすることはどれくらい現実性があるのでしょうか。
【河野委員】 基準を緩める以前に、現状を放置してしまうと耐圧殻の限界を超えてしまうので、それよりもどうやって機能を失わずに済ませることのほうが大事だと思っています。ちなみに安全基準に関する法改正のハードルはものすごく高いと思います。
【松本主査】 岩崎委員、お願いいたします。
【岩崎委員】 分かりやすくまとめていただきまして、よく分かりました。ありがとうございます。
今の安全系数にも関係しますが、確か、日本の潜水艇というのは鋼鉄製でなければダメということを以前に聞いたことがあります。海外ではアクリル製の耐圧殻であったり、いろいろなケースがあると思いますが、そのあたりは変わる可能性はあるのでしょうか。
【河野委員】 ちゃんと調べてはいませんが、一度JAMSTECで導入を計画したものすごく浅いところのものは、全体がアクリル製だったと思います。法律的には、安全基準等を守れば鋼鉄製でなければいけないという話にはならないと思います。正確なところは確認したいと思います。
【岩崎委員】 ありがとうございます。
【松本主査】 巻委員、お願いいたします。
【巻委員】 非常にまとまった内容をありがとうございます。
二点気になったところがあります。アメリカの「Nereus」というビークルは、一つ参考として挙げてもいいのではないかと思いました。これはフルデプスのROVとAUVのハイブリッドで、セラミックの耐圧殻という非常に技術的なチャレンジをしており、結果的には事故で失ってしまったわけですが、確かその背景には、彼らも予算が限られた中でどうするかということで、ハイブリッドでどちらもできるようにしようという思想があったと記憶しています。現在は当初よりも技術も進化していると思いますし、そういう方向はあるのではないかと思いました。
もう一点は先ほどの規定のところです。日本は安全基準が厳しいというお話がありましたが、日本は安全上の基準がかなり高い気がしています。ですから、そこを変えることが大変なのは分かりますが、そのあたりを議論していくことが、この委員会の役割なのではないかと思います。したがって、外からそういう意見を言っていくことは重要だと思いました。以上です。
【松本主査】 ありがとうございます。
次に廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】 まとまったご説明をありがとうございました。私からは気になった点を申し上げます。
これは海洋開発分科会でも申し上げたのですが、一つは探査能力をその国が持っていることと、その国で企業が開発したものは違うと思っています。先ほど、JAMSTECの探査深度の変遷についてご説明がありましたが、SIPで「NGR6000」をアメリカから購入されています。その意味では6,000mまでの探査能力はあるというふうに整理しています。JAMSTECの探査能力の変遷というのは、国内で作られたということで、メンテナンスのしやすさ、オペレーションのしやすさがあると思いますが、そのあたりの違いは論点としてちゃんと明確にしたほうがいいと思います。海外の事例では、その国が作っているということでありますので、日本国内で作れる能力をどこまで持たせるのかということは、一つの論点であります。
もう一つ申し上げたいのは、ROVに関しては、相当のマーケットが世界中にあって、量産化の体制ができています。それは需要があって、ニーズがあるからで、少なくとも5,000~6,000ぐらいまでは、相当の台数が出ており、逆に言うと、それぐらいまでは、物を買ってくればできるのではないかと思います。一方でAUVというのは台数も少なく、あまり量産化ができていない分野なので、ここを日本の技術として製造し、国産化していくというのは、一つの考え方として整理できるのではないかと思います。
「しんかい6500」の件に関しては、数年前からいろいろと議論されているので、どのように維持していくか、あるいは日本の国内で実際に作れるのはどこかというところにフォーカスしていかないと議論が収束していかないのではないかと思いました。以上です。
【河野委員】 ありがとうございました。少し補足させていただくと、この表にあるのはROVとHOVだけです。
「ハイパードルフィン」と「KM-ROV」と言っているものは、外から買ったものです。その他で現在残っているものだと「かいこう」と「しんかい」は国内製造ということになります。
SIPで買った「NGR6000」ですが、それなりの観測機材が動いて意味のあるデータが取れるところまで到達しましたので、もうすぐ運用できるところまできています。これは特定目的なので、一般の探査に使えるような状況にはありませんが、おっしゃるとおり、買い物で良ければここまで来ている現状にあることは、私も認識しています。これを国内にしなければいけないかどうかというのはまた別の観点が必要で、経済安全保障やMDAの強化を自前でどこまでやるのかといった議論が必要だと思います。科学者としては、買ってきたものでも一向に構いませんが、ここはそういうことを言う場ではないと思っています。ありがとうございました。
【松本主査】 谷委員、よろしくお願いします。
【谷委員】 国立科学博物館の谷です。ご説明ありがとうございました。
今のご議論に関連することだと思いますが、ご説明いただいた資料の16ページで、AUVというのは、安全保障で重要だったり、安全保障関係の用途で使われており、若干ブラックボックス化しているような用途でいつも説明がなされていて、実際に安全保障においてAUVというのはどういう重要性があるのかということを、いまいち理解できていないのですが、具体的に安全保障でAUVというのは、どういう用途を想定しているのでしょうか。
【河野委員】 経済安全保障やデュアルユース等で使われているようです。必ずしも私がそちらの重要を詳細に知っているわけではありません。
【谷委員】 我々のようなサイエンスをやっている人間からすると、特に大水深のAUVがサイエンスにどのように使えるのかというところが、いまいちよく分かっていません。
【河野委員】 サイエンス面では海底地形の探査や、うまく使うと普通の物理探査にも使い道があります。
「うらしま」には採水機も搭載しているので、海水サンプリングもできるということで、通常の観測機器としても使用可能だと思います。例えば航海に出たときに、いろいろなマルチディスプリナリーの研究者が乗ってくるわけですが、その場に留まってたくさん水を汲みたい人もいれば、海底地形を測りたい人もいれば、広い範囲で何かを引っ張りたい人等々がいたときに、センサーで測れるものであればAUVに積んで、ある点でAUVを降ろして、船でなければできない観測をした後に次の側点でAUVを回収することができると、おそらく1つのフリートで2隻分ぐらいの観測ができるようになっているので、高度なAUVができることは海洋研究者にとってはありがたいことだと思います。それに深さの制限がなくなると好きなことができるようになりますから、科学的価値は高いと思います。あとは氷の下の観測ですね。
【山之内海洋地球課長】 事務局でございます。
経済安全保障についてどういったものがあるのかというご質問だったと思います。文部科学省としても、正確にそれをやっているわけではありませんが、例えば資源開発として、海底にどのような資源があるか調べることも経済安全保障ですし、海底地形図についてもいろいろなことに使われるという理由から経済安全保障に関わることだと思います。こういった全体取りまとめというのは、実は内閣府のほうでやっており、そこと連携しながら、こういった開発も必要ではないかとフィードバックしていきたいと思います。以上でございます。
【谷委員】 そのあたりの背景はなんとなく理解しているのですが、海底資源というと、海溝域ではなく、比較的浅いところがメインの主戦場だと思います。また海底地形図が安全保障上重要なことも重々承知しているのですが、それは船でも十分に取れるデータですから、AUVが安全保障重要ということが、どういう背景があるのかということをお伺いしたくてした質問でした。大体理解いたしました。ありがとうございます。
【河野委員】 ちなみに8,000m級に改造するメインのターゲットは、日本海溝での巨大地震震源域調査です。これは上からは撮れないぐらいの詳細な海底地形が必要なので、AUVみたいなもので近づいて撮るというのが最善の手法になります。
【松本主査】 湯浅委員、お願いいたします。
【湯浅委員】 湯浅です。私は潜水艦もやっていますので、先ほどの安全保障面について申し上げますと、アメリカなどは完全に無人の潜水艦というイメージの大型の無人機(防衛の場合はUUVと称している)を作ったり、例えば海底地形について詳細な地形図を作ることにもUUVを使っています。また、よくネット等には、今後の潜水艦はUUVの発進揚収の基地になるのではないかと書かれています。要するに、有人の潜水艦は領海や制海権のあるところまで行って、そこから小型のUUVを発出して何らかの処置をするというところになるのではないかと言われております。それがAUVの安全保障の使い方になるのではないかと思っています。
メーカーの立場から言いますと、HOVが出ていましたけれども、我々も防衛省向けに深海救難艇という潜水艇を作っています。やはり技術伝承のためには、20年に1隻は作らないと、なかなか技術伝承できません。そういう意味でも「しんかい6500」がかなり古くなっています。これは三菱重工さんが作られましたので、技術伝承がどうされているのかは分かりませんが、我々の経験からすると、20年に1隻はHOVを作り続けていかないと技術者は育たないということです。特に工作サイドの細かいところの技術、昔は職人芸であったこともあるところをどうしていったかということも、20年も経ってしまえば分からなくなるというのが現実でございます。以上です。
【松本主査】 日野委員、お願いいたします。
【日野委員】 日野でございます。ご説明どうもありがとうございました。3つほど質問がございます。
まず1つ目ですが、特に6,000mを超えるような深海はなかなかニーズがなく、そういうところに民間の投資や技術開発は難しいところがありつつも、海外では深いところに行けるビークルの開発がずっと進んでいるわけですが、それにはどういう背景があると考えておられますか。
【河野委員】 一つは研究所が必要だということが大きいのと、やはり行ける国があるのに行けない国があるということはうまくないと考えるようなところもあるのではないでしょうか。
【日野委員】 ありがとうございます。だから、世の中は完全な採算だけで動いているわけではなくて・・・。
【河野委員】 持っているところが研究機関なので、何かで採算を取ろうという考えではない。
【日野委員】 だからcuriosity drivenで、こういうものが作れている国がたくさんあるという理解だと思いました。ありがとうございます。
2つ目ですが、最初のスライドで、3つのタイプのビークルにそれぞれ得意不得意があるという話がありました。それを踏まえて23枚目では、別種のビークルを同時投入することで視野が広がってくるのではないかと説明されていましたが、私も同じようなことを考えており、素晴らしいアイデアだと思ったのですが、現実にそういうオペレーションをやっているところはあるのでしょうか。
【河野委員】 非常にプリミティブですが、試みはしています。実際にAUVで潜らせて、海底地形上の得意な点で潜るというようなことをしたことはあります。その時はハズレだったと聞きましたので、もうちょっと洗練しないといけません。
【日野委員】 JAMSTECに限らず、国外でそういうことをやっている話をお聞きしたことはありますか。
【河野委員】 国外では異種のAUVだったら、種類の違うものを組み合わせて全体で制御して観測をするというような方向に進んでいます。ここに書いてある図とは少し違いますが、そういう方向の開発は進めることができます。
【日野委員】 ありがとうございます。
3つ目になりますが、最後のまとめのところで、他国を追従してしまうというところは全くその通りだと思いました。そうであるがゆえに、今からキャッチアップして、日本ならではの技術を活かして戦えば勝っていけるのではないかという感触を、もしお持ちであれば、お聞かせいただきたいと思います。
【河野委員】 技術的なことで言うと、まだ勝負がついてないのは、Autonomousの部分だと思います。だから自律性を高めるような研究あるいは要素技術です。現時点で水中の深さ方向の音響通信だと、日本の技術が世界で一位ですから、世界で一番の要素技術をうまく使ったような何かを作ったり、あるいはAutonomousというサイエンスの部分で技術的に頑張っていくことが将来としては大事ではないかと思います。
【日野委員】 ありがとうございます。
私自身も固体地球をやっていて、水深7,000mを超えるようなところが、これからの日本の主戦場だと思っています。深いところでまともな調査ができるところは、これからの日本が頑張れば勝っていけるところだと思うので、こういう委員会での議論を通してそういう提言ができれば嬉しく思います。
以上です。どうもありがとうございました。
【河野委員】 ありがとうございます。例えば地震などでも、たくさん海底地震計を入れていましたが、結局今は回収してデータを取っていますけれども、そういったものがAUVを使って自動でデータを回収できるようになると、もっとたくさんデータが取れて地震学のほうにも貢献できるのではないかと思います。
【日野委員】 その通りだと思います。
【松本主査】 ありがとうございました。
奥村委員、お願いします。
【奥村委員】 高知大学の奥村です。幅広いご情報をいただいてありがとうございます。
資料の20~23ページに関わるご質問になります。先ほどの日野委員のご発言でもありましたけれども、23ページにまとめられた将来展望は、まさしくこうしたシステムをいかに構築していくかということを、今後この委員会でいろいろな観点から話し合っていけるといいのではないかと思います。
先ほど日野委員の質問へのご返答で、AUVとHOVを組み合わせた取組みがなされていることを伺いました。おそらく「よこすか」の母船にHOV「しんかい6500」とAUV「うらしま」を同時搭載して探査されたことをお話されていたと思います。20ページの母船を見る限り、現在、AUVとROVもしくはHOVを組み合わせて回航できる母船というのは「よこすか」一つという理解でよろしいでしょうか。
【河野委員】 HOVを乗せられる母船は「よこすか」のみです。
【奥村委員】 AUVとROVを組み合わせた取組は行なっておられますか。
【河野委員】 例えば「NGR6000」とAUVは「かいれい」に同時に積めると思いますので、そこは不可能ではありません。それを強調して観測するためのことは何も考えられていないので、ただ2台が別々に入るという話になるかと思います。
【奥村委員】 分かりました。
【河野委員】 実際の資源探査のときで、例えばレアアース泥は6,000m級にあり、そこでAUVでの探査が求められていたため「NGR6000」を買ったわけですが、調査した上で試掘するときには、ROVを下ろしてカメラで見ながらやるという運用は念頭にあるはずです。
【奥村委員】 ありがとうございます。
実際に23ページの将来展望を描く上では、やはり海底調査船だけでなく、母船も含めた統合的な議論をしていく必要があるという理解でよろしいでしょうか。
【河野委員】 その通りです。
【奥村委員】 ありがとうございます。
【松本主査】 私からも一つよろしいでしょうか。よくまとまったご説明をしていただきまして、非常に分かりやすかったです。ありがとうございます。
最終的なイメージとしては、今お示しになっている複数の種類の探査機で深海を効率的に調査する方向を向いているのだと認識しています。そのためには、現状の「しんかい6500」や「よこすか」も、だいぶ老朽化をしているというご説明があったかと思います。ただ、湯浅さんからは、20年に1回は作ったほうがいいというお話もありましたが、実際に作るチャンスはあるのでしょうか。また、もし作らないのであれば、メンテナンスしながら使うというようなお話だったと理解をしているのですが、そのあたりが気になりました。いかがでしょうか。
【河野委員】 まず「しんかい6500」のほうですが、全体システムであり、どちらも船齢が30歳以上ということを考えると、何らかの措置が必要なのは間違いありません。また「しんかい6500」の耐圧殻には耐えられる目安があります。これまでの頻度で考えると、一番肝心な耐圧殻の部分は、あと10年は保ちそうです。周辺の救難装置等の部品調達ができなくなっているので、そこを解決すればもう少し使える可能性はあります。
母船のほうは、流石に時代遅れすぎという感じはします。現状を申し上げますと「よこすか」はダイナミックポジショニングシステムが非常に脆弱なため、「しんかい6500」を降ろす運用はキャプテンの神業に頼る他ない状態です。また、海が少しでも荒れると潜れないという話につながっていくので、こちらは長く延命することは難しいと思っています。
【松本主査】 直近では、それぞれメンテナンスしながら使うやり方もあるけれども、母船のほうは難しいかもしれないというニュアンスですね。現状は分かりました。
素人の質問で申し訳ないのですが、ROVでの調査の範囲が6000mあたりに収斂されているというご説明がありました。これは世の中的には一般的なのでしょうか。
【河野委員】 おそらく6,000mまで測れると、世界の海洋の98%ぐらいを調査できるからではないかと思います。10,000mは、さらに深いところで未知のものが見つかるのではないかという挑戦的な意味合いや、技術的なチャレンジの意味合いが強いのではないかと思います。
実際にチタンでこのような玉を作るときは、まん丸のチタンを作ったり、2つに合わさったチタンを綺麗に溶接する総合力があって初めてできるものなので、技術力の高さをデモンストレートしていることになるのだと思います。特に中国のほうは、そのような気がします。
【松本主査】 ありがとうございます。
巻委員、お願いします。
【巻委員】 母船を含めて運用ということで、最近のトレンドとして一つ挙げておきたいのは、無人化していく方向だと思います。名前は出てきませんが、大型のASVを作って港から発進させて、それにROVをつけて海底の探査をするという事例が出てきています。ROVのオペレーションというのは、非常にスキルが要求されます。当たり前のことですが、例えば一つの船に乗って行ってしまうと、その間、他の船がオペレーションできません。それがインターネットで船と繋いで、オペレーターは陸上からオペレーションできるようにすると、ネットの中継を切り替えて、今日は「かいれい」、今日は「よこすか」みたいな感じで、日々スキルを持ったオペレーターが運用できるようになるわけです。そうすると船に乗って出ていく人の数も減らせて、船が小型になったり、コストを下げる方向に行くのではないかと思います。ですから、今後の探査システムを考えていくときは、そういったトレンドを入れていくことも大事なのではないかと思いました。
もう一点、なぜ6,000mに収斂していくかという原因ですが、市販の機器類が最大6,000mまでしか対応していないことが挙げられると思います。6,000mを超えると特注品になってしまい、倍の値段がかかってしまう場合、そのコストを払ってまで作るのは、なかなか経済的な説明がつかない場合があるのではないかと思います。もちろん「しんかい」は重要だし、技術的なチャレンジがありますが、6,000mを超えると費用的な壁が急に厚くなるということも一つ留意するべき点だと思います。以上です。
【河野委員】 ありがとうございます。時間がなかったので参考のほうに入れましたが、オーシャンヒンティのアルマダですよね。法制度のことを考えないとすると、技術を結集するとROVぐらいまではできるのかもしれません。AUVになってしまうと、無人船で持っていくのは簡単だけれども、水中との通信ができないので、何をやっているのか分からない話になると思います。
6,000mの収斂の話ですが、耐圧6,000mの機材が多いことは知っていますが、6,000mに収斂していったから6,000mにラインナップしているのか、最初から6,000m耐圧が多かったから6,000mに集約しているのかは分かりません。
【巻委員】 そうですね。現状そうなってしまっているので、予算的な壁があることは確かです。
【河野委員】 その通りです。
【巻委員】 ありがとうございます。
【河野委員】 冒頭にご質問があった「鋼船でなければいけないのか」という件について確認したところ、鋼船が想定されていることは確かですが「耐圧殻が鉄ではなくガラスの場合は、」という記述もあるので、絶対ではないようです。もし、導入するとしたら、authorityとの協議からスタートになりそうです。
【松本主査】 河野委員、ありがとうございました。
それでは次の議題に移りたいと思います。
先ほどの河野委員のヒアリングを踏まえまして、本委員会における検討の方向性についてご議論いただきたいと思います。
まずは議題4「深海探査システム委員会における検討の進め方について」事務局より資料のご説明をお願いいたします。
【事務局】 事務局でございます。資料5をご覧ください。
当分科会においては、平成28年に「今後の深海探査システムの在り方について」というものが取りまとめられまして、我が国が目指すべき次世代深海探査システムの在り方について「H28年の提言内容」と書いてある1から4の方向性が示されたところでございます。
現状の状況を右側にまとめており、現状としてAUVの大深度化、複数探査機の同時活用など、提言内容の一部は進められていますが、ROVの大深度化など達成されていないものもございまして、最新の探査機の技術の進展や海外動向の変化を踏まえた見直しが必要と考えているところでございます。
1はROVの大深度化です。こちらについては、現時点では4500mまでしか対応できておらず、ケーブルのところに技術的課題があります。
2はAUVの大深度化です。先ほど河野委員からのご説明にもありましたが、現在JAMSTECのほうでAUVも8,000mまで潜航可能となるように開発を進めているというところでございます。
3はHOVである「しんかい6500」について、飛躍的に性能を向上させることや7,500m以深について継続的に検討とされております。現状としては「しんかい6500」を活用しており、平成28年以降定期検査以外での更新は行われておらず、老朽化・陳腐化が進行している状態です。
また共通的なところとして、複数探査機を活用する技術について提言いただいており、先ほどのご議論にもございましたけれども「よこすか」には「しんかい6500」と「うらしま」の同時搭載が可能になったり、SIPにおいて複数機のAUVの同時運用のための要素技術の開発などが行われているところでございます。
これらの現状や河野委員からのご発表を踏まえまして、現在は深海探査システム委員会における検討の論点についてというものを、案としてこちらにお示しさせていただいております。本日はこちらについて、委員の先生方からのご意見を賜りたいと考えているところでございます。今年4月に閣議決定された第4期海洋基本計画や、昨年8月に取りまとめられた提言を踏まえて、本委員会で我が国の深海探査システムを取り巻く状況を踏まえまして、今後5年から10年で取組むべき深海探査システムの研究開発および整備の方向性について、以下の1~3に主軸をおいて検討を進めてはどうかという案になってございます。
一つ目が「深海探査システムに求められる能力」というところでございまして、深海探査によってどのような科学的知見の充実や社会的課題の解決が見込まれるか、状況を踏まえましてROV、AUV、HOVにどのような能力が必要かというものが一つ目でございます。
二つ目は「深海探査システムを実現するための研究開発」というところでございまして、①でお示ししました能力を必要とするROV、AUV、HOVのそれぞれについて、今後5年から10年を見据えてどのような研究開発が必要かというところで、個別の論点の例でございますけれども、全体といたしましては「しんかい6500」しか6,000m以深を探査できないという現状を踏まえまして、どのような能力を持つ探査機を維持・強化すべきか、探査機の民生活用も見据えた研究開発を進めるべきではないか、ROVで言いますと、大深度化のボトルネックとなっているケーブルの開発や操作性の向上、先進技術の高度化、母船を選ばないシステムの設計などの研究開発を進めるべきではないか、AUVでは「うらしま」大深度化が進められておりますけれども、それ以外にも小型化、先進技術の高度化、AIの活用等の研究開発も進めるべきではないか、HOVにつきましては老朽化の状況を踏まえまして、今後の維持・活用方策、将来的にはROV等への代替の可能性についてどのように考えるか、といったところが論点として挙げられるかと考えているところでございます。
三つ目は「その他」ということで、運用方法・体制、人材育成、アウトリーチ等についても論点として掲げさせていただいたらどうかと考えております。探査機の開発・運用、探査機を用いた研究開発について、体制や人材の育成にどのような課題があるか、探査機の開発にあたって産学間連携や他分野との融合をどのように進めるべきか、また深海探査の意義について広く理解を得るためにどのようなアウトリーチ活動を進めるべきか、こういったことが論点として掲げられるかというふうに事務局として考えております。
次のページをご覧ください。昨年8月の提言でも、先ほどの1から3に対応するような提言をしていただいておりますので、関連部分の項目や文章を抜粋したものになってございます。
今後のスケジュールでございますけれども、本日は第1回ということで、論点について委員の先生方にご議論いただいた後、第2回、第3回ではヒアリングというところで、論点の1にあたるようなシステムに求められることについてのヒアリングや、国内外の探査システムの動向について、人材育成やアウトリーチ、我が国が将来備えるべき深海探査システムについてヒアリングしてご意見をいただいた後、年明けの2月ぐらいに中間取りまとめをしていただき、それを分科会に報告するというスケジュールで現在考えているところでございます。3ページ目に記載の論点について集中的にご議論いただけますと幸いでございます。
事務局からは以上でございます。
【松本主査】 ありがとうございました。
ただいまの事務局からの説明および河野委員からのヒアリングを踏まえまして、意見交換を行いたいと思います。
今後の論点も含め、全体を通してご意見等ございましたら、お願いいたします。
日野委員、どうぞお願いいたします。
【日野委員】 東北大学の日野でございます。
今回の論点整理の前に、平成28年の提言の内容というところで整理をいただいており、いずれも現時点で照らし合わせても、非常に有用な提言がなされていると思いますが、残念ながら現状として達成できていないものがたくさんあります。ですから、今回新たな提言をしてもどうなるのかという不安が、無きにしもあらずです。
とりあえずそれは置いておいて、平成28年の提言がまとめられた時にどういう論点を設定して議論されたのでしょうか。今回の議論でも参考にできるのではないかと思ったので、そこを事務局にお伺いしたいです。
【事務局】 ありがとうございます。事務局でございます。
平成28年の論点ですが、平成28年の時に関係のニーズやヒアリングを踏まえて、このような提言をさせていただいたと思いますが、論点としてこのようにまとまっていたものがあったかどうかは、改めて確認させてください。
【日野委員】 ありがとうございます。
きっと、今回も同じようなことになるのではないかと思いますが、逆に言うと、前回の議論である程度詰まっている部分があるのであれば、今回の議論では継続して重要だよねということでスキップして、さらに議論を深めることも可能なのではないかと思ったので、その辺の情報をいただけるとよろしいのではないかと思いました。以上です。
【事務局】 承知いたしました。
【松本主査】 廣川委員、お願いします。
【廣川委員】 日野委員のコメントもその通りだと思います。
併せて、平成28年の提言から現在に至っているわけですが、一部はケーブルの対応に課題があったということが掲げられておりますが、なぜそれができなかったかというところを総括していただくのが、一番良いと思います。そのあたりがないと、提言をしても、結局同じことを繰り返すだけですので、なぜ提言の内容が今に至っていないかというところをフォーカスして調べていただければありがたいと思います。以上です。
【事務局】 事務局でございます。ご意見ありがとうございます。
今いただいた論点も、次回までに調べておきたいと思います。
【松本主査】 ありがとうございました。湯浅委員、お願いいたします。
【湯浅委員】 メーカーの立場から言わせていただきますと、ROVで一番肝となるのは、昔に住友電工さんやフジクラさんが作られたケーブルでしょうが、そんなに台数も出るものではないということもあり、既に製造からは撤退されていると思います。その他の技術として、例えば、深海での油圧ポンプが非常に肝となるのでしょうけれども、どちらかと言ったら、既に海外のROVでは技術的に成熟しているのではないかと思っていますので、日本でこれを国産として開発するのが本当に得策なのかなということは、メーカーの立場として思うところがあります。今からケーブルを国産のメーカーが作りますと言ってくれるとは、とても思えません。
もう一点ケーブルについてですが、まだ動力ラインをケーブルで送るのかというところがあります。例えば、電池を積んで信号ラインだけでケーブルを繋ぐということもできますので、そういう方向や過去になかったような方策を考えたほうが現実的ではないかと思います。
AUVについては、河野委員もおっしゃられましたけれども、やはりAの部分にまだまだ伸び代がありますので、ぜひ自律部分にAIを使うところ等を国産として研究を進めるべきではないかと思います。
HOVのほうは、これは当然台数が出るものではないので、国として必要だということを表明していただいて、ある程度お金をつけていただき、国産メーカーで作るということしか言えないのではないかというふうに思います。以上でございます。
【松本主査】 ありがとうございます。他にコメント等ある方はいらっしゃいませんか。
河野委員、湯浅委員に対して何かございますか。
【河野委員】 ROVについて、外国のほうが成熟しているのは、そのとおりだと思います。
なぜROVが出遅れているのに、我々が離れられないかというと、結構重たいものを持って帰るときは太いケーブルで揚げられてくるほうがいいので、どうしても太い一次ケーブルを使ったROVから抜け出せないでいます。今でも重量物を持って帰ってこられるのはROVですから、そこがケーブルを細くして少しだけ通信をやってという方向に進みづらい理由ではあります。
【松本主査】 谷委員、お願いいたします。
【谷委員】 事務局でまとめていただいた論点で、ROV、AUV、HOVにどのような能力が必要かというところを出していただきましたが、日々海洋調査をしている身として一番危機的な状況だと思っているのは、それらを運用する母船が非常にまずい状態になっていることだと思います。
先ほど河野委員からもご説明がありましたが、10年ぐらい前までは5隻あった研究船が、今は3隻になってしまい、その3隻のうちの1隻は非常にまずい状況にあります。仮に「しんかい6500」を延命できたとしても、それを運用する船がないとどうにもなりません。
僕らは、JAMSTECに所属している研究者の方々と違って外部機関にいますので、そういうインフラを使って調査をするために共同利用という仕組みで調査をさせていただいておりますが、共同利用で使えるような形で深海探査システムを利用できないと、日本の海洋科学コミュニティの裾野がどんどん細くなっていくのではないかという危機感があります。この論点の中には書いていませんが、今後、深海を調査するためのインフラを運用するための母船をどういうふうにしていくかというところも、ぜひ盛り込めたらいいのではないかと思っています。以上です。
【松本主査】 母船のほうも論点の中に加えるというご発言ですね。ありがとうございます。
巻委員、お願いいたします。
【巻委員】 論点の大筋は、これでいいのではないかと思いますが、先ほど谷委員が言われた母船との絡みで、例えば全体のところに追加していただけるといいのではないかと、私も思いました。
あとは1の「深海探査システムに求められる能力」というところで、この委員会での主なニーズとしては、科学的知見や学術調査だと思うのですが、それ以外の用途についてどれくらい踏み込むのかということは、少し気になっています。防衛上重要だということも大切ですが、例えば産業面などをどのくらい盛り込めばいいのかというところは、少しモヤっとしているところです。以上です。
【松本主査】 ありがとうございます。
今の巻委員のご質問に対して、何か事務局からとコメントをしていただけないでしょうか。
【山之内海洋地球課長】 おっしゃるとおりだと思います。
これは文部科学省の委員会なので、当然文部科学省の範囲内でというところはあるのかもしれませんが、主な観点は学術的な知見などになるのではないかと予測しております。ただ委員の先生のご意見も踏まえて、内閣府と相談しながら提言などをまとめられればと思っておりますので、ご自由に意見をいただければと思います。以上でございます。
【巻委員】 ありがとうございました。
【松本主査】 ありがとうございます。他にございませんか。
廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】 論点について、深海をどこまでの範囲に入れるかというところで、世界的には5,000~6,000mが海洋の一番底になっていて、海洋底からさらに深いところは大体海溝だと思います。水深6,000mというのは、ターゲットとしては一番広いエリアで、例えば今改造されている「うらしま」で6,000~8,000m、8,000m以降、フルデプスという3つに大きく分けられるのではないかと思いますが、それぞれで科学的知見に何が必要なのか、社会的課題、産業面と分けて考えるほうが、頭の整理にもなるのではないかと思います。2つに分けるのであれば6,000mまでと6,000mより深いところになるのではないかと思いますが、そのあたりについて事務局としてはどうでしょうか。
【事務局】 事務局でございます、ありがとうございます。
廣川委員のおっしゃるとおり、どの深さで何が分かるかというのは、いろいろな研究や場面によって異なってくるものだと思いますので、今後のヒアリングのところでも、どの深さで何が調査できるとどういうことが分かるといったようなことを、先生方からご意見をお伺いしてまとめていきたいと考えているところです。以上でございます。
【廣川委員】 よろしくお願いします。
【松本主査】 ありがとうございました。
まだご発言されていない方はいらっしゃいますか。
【小島委員】 小島です。私も母船のことは非常に気になっていて、直近で急ぐところはそこだと思っています。
ROVに関しても、7,000mまで能力があるけれども、母船がないためにスペックが活かせていないという部分があるので、この先の10年くらいは、母船を作ることによって時間稼ぎをするのではないかという気がしております。この委員会の検討の主なところは、10年より先のところだと思いますが、直近の課題をどうして、将来像をどうして、その将来像を実現する上で直近のほうに戻ってきて、どういうものをこの10年でやっておくと、10年以降のビジョンにスムーズにつながるかという二段構えの議論をしてもいいのではないかと思いました。
【松本主査】 ありがとうございます。
母船の話と、5年や10年で終わりではなく、そこから先を見越して、どのように目標やターゲットを示して、そこに向けてどのようなやり方で進めていけば良いかというストーリーがあるといいのではないかというご意見だと思います。ありがとうございます。
岩崎委員から何かご意見等ございませんか。
【岩崎委員】 皆さんからもご発言がありましたが、私も母船の問題が一番大きいように思います。
私は普段、科学番組や自然番組を作っておりますので、皆さんのように専門でやっていらっしゃる方と少し違う観点ではありますが、やはり船ありきだと思っています。いくら優秀な潜水機器があっても動かないと意味がないので、そこが最優先の課題なのではないかと思います。
平成28年の提言というのが、かなりよくまとまっておりますし、論点はほぼ同じなのではないかと思うのですが、それほど進んでいないのは何故かということは、少し気になっております。やはり予算があっての話ですから、結局はそこなのではないかと思うわけです。そうすると、今回私たちが提言することも大きな予算がかかるものばかりなので、その前に水泡に帰すのではないかという危機感を覚えてしまいます。そのあたりをどのように攻めていくかみたいなアイデアはあるのでしょうか。
【山之内海洋地球課長】 どうもありがとうございます。
予算の話が出ましたが、今我々がこれをやっているのは、予算要求につなげていくためです。その為にも皆さんに議論していただき、その提言内容を実現できるように頑張りたいと思います。水泡に帰してしまうかどうかということは考えず、一生懸命やらせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
【岩崎委員】 ありがとうございます。
今日の河野委員の話にもあったように、どこまで崖っぷちになっているかという危機感みたいなものを、今回の提言として全面に出していくべきなのではないかと感じました。以上です。
【松本主査】 実に貴重なご意見だと思って拝聴いたしました。ありがとうございます。
参考資料として配られている、平成28年の資料には皆さん目を通されていますでしょうか。パワーポイントになっている概要版の資料がイメージしやすいのではないかと思っています。先ほど事務局のほうで、もう一度調査して次回までに整理するというお話でしたが、皆さんもこちらを見ていただくとよろしいのではないかと思います。同じような話を辿るのではなく、今後本当にやらなければいけないことや、危機感が迫っているところを皆さんでしっかりと認識して、良い提言としてまとめていきたいというイメージを持ちました。これは私のコメントです。
奥村委員、お願いいたします。
【奥村委員】 高知大学の奥村です、ありがとうございます。
重複する意見だったので差し替えてさせていただきましたが、一点だけ疑問点を述べさせていただきます。
資料5の3ページのマル2の全体のところで、探査機の民生活用を見据えた研究開発を進めるべきではないかという論点を挙げていただきました。委員についても、学術面や技術面の構成になっているのではないかと思うのですが、民生利用の面について意見を言うには、委員以外の専門家のお話を聞く伺う機会が必要なのではないかと思います。事務局や委員の方で、何か民生利用に関する意見を持たれている方がいらっしゃいましたらご意見をいただければと思います。
【松本主査】 ありがとうございました。どなたか奥村委員の質問にコメントできそうな方はいらっしゃいますか。
湯浅委員、お願いいたします。
【湯浅委員】 湯浅です。ちゃんとした回答になるかどうかは分かりませんが、この前の官民プラットフォームでも言われていたのは、日本として民生分野にAUVが出ていけないのは、例えば海底油田などの産業がないというところだと言われておりました。民生分野での活用というのは、やはりそういう方向に行かないと無理なのではないかということが、官民プラットフォームでの皆さんのお考えでした。
我々はそういう意味もあって、海洋分野で北海のほうAUVを収めつつあるというところになりますので、民生活用を見据えたほうが良いことは分かっているのですが、なかなか難しいのが実状ではないかというふうに思います。日本であれば洋上風力などの海洋の民生活動が進んでいくところに引っ掛けないとしんどいのではないかと思います。以上です。
【松本主査】 ありがとうございます。
自分の専門は港湾ですから、皆さんが主戦場とされている深海とは違って、水深20mから深くても40mくらいの浅いところなので、私もあまり詳しく知っているわけではありませんが、湯浅委員がおっしゃったような洋上風力や水産関係など、今まで使っていない新しくできた産業に対して何らかのアクションを起こすことを、この提言の中に含めるというやり方もあるのではないかと思いました。
先日のテクノオーシャンでも、巻委員や湯浅委員がパネラーとしてお話しされていましたが、洋上風力や水産業で使ってはどうかという話題が出ておりました。既にあるものに新しい道具を入れるということは、非常にハードルが高いところなので、そう簡単ではないと思いますが、新しい出先を考えてみるということは必要なことではないかと感じております。
廣川委員、お願いいたします。
【廣川委員】 私は洋上風力の調査にも関わっているので、現状を申し上げますと、ほとんどは水深50m以下のいわゆる着床式と言われる洋上風力であり、現在進んでいる状況です。その先50m深いところは浮体式になると思いますが、当面は水深500mくらいのところで、EEZに出ていったとしても、10年~20年後でも1,000mくらいがターゲットになってくると思います。何mくらいから対象にするのかによって違うと思いますが、先ほど申し上げた5,000~6,000mというのは、遠い将来でもありえないですし、日本近海で1,000mまでやると、ほぼ2050年のカーボンニュートラルが達成できるくらいの発電量が出てくるという試算もありますから、5,000mより深いところというのはあり得ないのではないかと思っています。以上です。
【松本主査】 ありがとうございます。
廣川委員がおっしゃった、水深6,000m以深の技術を民生活用することは、私もなかなか難しいのではないかというふうに感じます。比較的浅い海で民間の方が何かアクションを起こしているようなところに一緒に絡むというスタイルが、民生利用の形になるのではないかというふうに感じます。だからといって、今おっしゃった民生利用を将来的に広めること全てができないというわけではなくて、できるところから進めていく考え方でもいいのではないかというふうに考えます。この委員会でもできないではなく、できることを考えるスタンスをしていくほうがいいのではないかと思います。
【廣川委員】 遠い将来は深いところにも可能性はあると思いますから、そこは別に排除するわけではありませんが、現状の認識を申し上げました。以上です。
【松本主査】 ありがとうございます。
日野委員、お願いいたします。
【日野委員】 日野です。今の議論について質問させてください。
探査システムではなく、深海そのものについて、現状は民生活用の場として具体的なものを見出せないということはおっしゃるとおりだと思いました。深いところは別にして、浅いところでも構わないのですが、民生活用を見据えた開発をしたときに、学術向きに開発をしたものとコンフリクトが起こるようなことがあるのかというところが、要するに民生活用を全く無視した結果、遠い将来の話かもしれませんが、民生活用しようとしたときに足枷になるようなことがあり得るのかというところには、少なくとも目配せをしておく必要があるかもしれません。今日でなくてもいいので、実際の議論の中でそういう話が出てくればよろしいのではないかと思いました。以上です。
【松本主査】 大事な点だと思います。ありがとうございます。
それでは以上をもちまして、本日の議事は終了いたしました。最後に事務局から連絡事項等ございましたら、お願いいたします。
【事務局】 本日は長時間に渡りまして本当にありがとうございました。
議事録につきましては、事務局にて案を作成し、後日、委員会の皆さまにメールにて確認をさせていただければと思います。
次回の委員会は12月26日の開催を予定しております。
事務局からは以上でございます。
【松本主査】 これを持ちまして、本日の深海探査システム委員会を終了いたします。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
―― 了 ――
研究開発局海洋地球課