深海探査システム委員会(第5回)議事録

1.日時

令和6年6月6日(木曜日)14時00分~15時30分

2.場所

文部科学省会議室及びオンライン

3.議題

  1. 今後の深海探査システムの在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

松本主査、岩崎委員、奥村委員、河野委員、小島委員、谷委員、日野委員、廣川委員、巻委員、湯浅委員

文部科学省

山之内海洋地球課長、伊藤海洋地球課長補佐、麻田海洋地球課長補佐 ほか

5.議事録

【松本主査】 それでは、ただ今より第12期 科学技術・学術審議会 海洋開発分科会 深海探査システム委員会の第5回会合を開催いたします。
 本日は御多忙にもかかわらずご出席いただきまして誠にありがとうございます。
 まず、事務局より参加者、定足数の確認及び配布資料の確認をお願いいたします。
【事務局】 本日は10名全員の委員にご出席いただいておりますので、本委員会の運営規則第2条に掲げる定足数の過半数を満たしておりますことをご報告いたします。
 続きまして、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第をご覧ください。本日は、資料1といたしまして「深海探査システム委員会における検討の進め方について」、資料2といたしまして「今後の深海探査システムの在り方について(案)」、資料3といたしまして「今後の深海探査システムの在り方について(概要)(案)」、参考資料1といたしまして「今後の深海探査システムの在り方について 中間とりまとめ(案)」、参考資料2といたしまして「今後の深海探査システムの在り方について 中間とりまとめ(案)(概要)」を配布しております。資料についてご不明な点等ございましたら、事務局までお知らせください。
【松本主査】 それでは、本日の議題1「今後の深海探査システムの在り方について」に入りたいと思います。
 本日は報告書(案)について議論を行います。事務局には前回の委員会の後、3月25日に開催された第71回海洋開発分科会の委員からの意見を踏まえて、中間とりまとめから報告書(案)に更新していただきました。また、本委員会では事前に中間とりまとめから報告書(案)を確認いただきまして追加の意見を頂いております。
 はじめに、事務局より第71回海洋開発分科会での委員からの意見照会及び事前に本委員会の委員から頂いた意見について修正方針と修正箇所の説明をお願いいたします。
【事務局】 それでは、事務局から資料についての御説明させていただきます。
 まず、資料1の11ページ目をご覧ください。深海探査システム委員会における検討の進め方についてです。本日、本委員会は第5回となります。本委員会の方で報告書をご審議いただきまして、その後7~8月に開催されます海洋開発分科会で改めて本委員会の結果を審議いただいた上、とりまとめを進めさせていただきたいと思っております。
 続きまして、資料1の2ページ目及び資料2を併せてご覧いただければと思います。資料1の2ページ目には、第71回 海洋開発分科会及び本委員会委員からの主な意見の方をとりまとめております。この意見を基に、資料2の内容を変更・修正させていただいておりますので、まずはこちらについてご説明させていただければと思います。
 まず、「はじめに」の部分についての御意見についてです。1ポツ目「世界に遅れをとっているから何とかしよう、という動機は違うのではないか。日本周辺には、一番深いところで水深9,780 m、それ以外にも6,000 mを超える深い海域があり、これは他の国と比べると特異であるといえる。だから、そこを自分で調べる能力が必要であり、そのために何が要るか、ということではないか。」、2ポツ目といたしまして「深海探査による研究開発、特に、海洋汚染や環境影響評価の貢献先は、「地球環境保全」が適当ではないか。」ということをご意見いただいております。こちらを踏まえまして、「はじめに」の部分について修正を行いました。資料2の1ページ目、「はじめに」をご覧いただければと思います。こちらは、これまでは喫緊の課題について記載をさせていただいておりましたが、今回頂いた御意見を踏まえ、深海探査をする意義やニーズ、目的等についての記載の方を改めまして赤字の方で修正させていただいております。例えば、冒頭の部分が「また」から始まりますが、日本海溝については深い海溝があること、体積では世界1位であることなどについての記載の方を改めさせていただいております。
 また、「地球環境保全」が適当ではないかというコメントを頂いておりますので、資料2の1ページ目61行目になりますが、「深海探査は地球環境保全や社会経済活動への貢献に大きな期待が寄せられている。」という記載の方を追加させていただいております。また、その他の研究分野等において非常に深海探査は有益であるという部分を追記させていただいております。
 加えて、分科会及び委員会からの意見ではございませんが、事務局の方で内容の方を精査したところ、一部新しく修正をさせていただいておりますのでご紹介させていただきます。1ページ目の69行目、最後の行になりますが、こちらの方で「一方、我が国は、1990年代には世界初・唯一の水深 11,000 m級を調査できる探査機を所有するなど世界最高の深海探査能力を有していたが、近年では、6,000 m以深での調査・作業が可能な探査機は「しんかい6500」のみとなっている。その「しんかい6500」も老朽化が進む中、海外では深海探査能力が向上し、市販の探査機で水深6,000 m級の探査を行うことが可能となってきていることからも、かつて世界一だった我が国の深海探査能力は他国から後れを取っていることは否めない。」という記載の方を事務局で追記させていただきました。これまでは「かつて世界一だった我が国の深海探査能力は他国から後れを取っていることは否めない。」の部分だけを記載しておりましたが、そちらの方を丁寧に状況を説明する部分を追記させていただきました。
 2ページ目でございます。こちらは「現状の深海探査を担う各探査機の特徴」ということで、(1)のHOV及び(2)ROV、(3)AUVということで探査機の特徴を新たに事務局の方で追記させていただきました。こちらの方を事務局の内部で検討いたしましてHOV、ROV、AUVというものについて一般の方がなかなか理解しづらいのではないかということで、その特徴の方を記載させていただいたところです。
 参考1が最後のページになりますが、HOV、ROV、AUVというものを絵で表している形の内容を追記することによって、一般の方にどういう深海探査機があるのかということについて分かりやすく示していこうということでご提案させていただければと思います。「はじめに」についての修正箇所は以上となります。
 また、「はじめに」の中ほどに記載されておりました喫緊の課題についての記載ですが、こちらの方は3ページ目の「我が国における深海探査システムの現状と課題」の後の部分に移動しております。内容としてはそのまま記載の方をさせていただいております。
 続きまして、資料1の2ページ上から2つ目、「ローマ数字1.2.(4)探査機の運用システム等について」の変更点について説明をさせていただきます。「目標やニーズを基にしたモノづくりをする際には、あらかじめ民間企業等との連携が必要である。それでないと時間とコストが掛かり、結局は予定していたものが作れない。」という御意見。また、「「洋上風力発電の設置等へのAUVの社会実装の推進」と、「産業向け探査機等の技術を取り入れる」との関係が分かりづらい。」という、内容点の分かりづらさについて委員から御意見を頂きました。こちらについての変更点につきましては、資料2の6ページ目をご覧いただければと思います。
 まず、民間企業等との連携についてのことを記載してはどうかという御意見を頂いておりますので、6ページ目の228行目から230行目にかけまして赤字となっている部分になりますが、「民間企業等が行う浅海域における産業向け探査機の技術開発のノウハウを深海探査システムの開発に取り入れることも必要である。 」ということを記載させていただいております。また、洋上風力発電の関係と産業向け探査機等の技術を取り入れるが分かりづらいのではないか、という御意見につきましても、ここの表現の中で「浅海域における」のところで併せて記載させていただいているところです。
 続きまして、資料1の2ページ目の3つ目のところについてご説明させていただければと思います。「ローマ数字1ポツ3、各分野の研究開発動向と深海探査システムの求める能力について」になります。まず、「深海は、未知の研究や資源の宝庫であるため、各分野において、日本周辺の深海の研究開発を推進していくことを強調してはどうか。」という御意見を頂いております。また、「深海探査による研究開発、特に、海洋汚染や環境影響評価の貢献先は、「地球環境保全」が適当ではないか。」(再掲)ということで、先ほど申し上げました御意見の再掲となります。こちらについて資料2の6ページ目のところで修正の方をさせていただいております。こちらにつきましては、赤字の下側の部分になります。「水深5,000m以深の体積が世界1位である我が国においては、地球環境保全や社会経済活動へ貢献するためにも、これらの研究開発を推進していくことが重要である。」という記載もさせていただいております。こちらの方も社会経済活動だけではなく地球環境保全について記載する形にしております。(1)の分野というのが、体積が世界1位である我が国の未知の部分があるということについて、こちらの部分で記載をさせていただきました。
 続きまして、ローマ数字1ポツの3の部分の「「HOV・ROV・AUVをバランスよく整備していく」というのは、結局どれも成果が得られにくいのではないか。」というコメントについてです。こちらにつきましては、修文がございます。資料2の9ページ目をご覧いただければと思います。351、352行目の記載となっております。修正内容といたしましては、「HOV・ROV・AUV 各種の探査機を組み合わせて同時かつ効果的に運用できるシステムの構築が必要である。」という記載にさせていただいております。こちらは3つの探査機の種類をバランスよく整備していくというのは、結局どれも成果が得られにくいのではないかという御意見がございましたので、全てをバランスよくの部分を取らせていただいて、効果的に運用できるシステムという形に修文をさせていただいたところです。
 続きまして9ページ目のその下の部分になりますが、赤字になっております「ローマ数字1ポツ3(1)~(5)に掲げた以上のことから、各分野の研究開発動向を踏まえた深海探査システムに求められる能力を整理すると、大まかには、以下の四つに分類される。」という記載を追加しております。こちらの内容は、前回までここに記載されていた内容になっておりましたが、次のページの「ローマ数字2今後の深海探査システムの在り方について」の冒頭に記載していた内容となってなります。これまでの深海探査システムに必要な能力を総まとめにして記載するという観点から、ローマ数字1ポツ3(5)の最後に示す形で記載を移動させております。
 続きまして資料1の2ページ目、「今後の方向性」についての部分です。「「HOV・ROV・AUVをバランスよく整備していく」というのは、結局どれも成果が得られにくいのではないか。」(再掲)ということで、先ほどと同じコメントを頂いているところでございます。こちらは資料2の10ページ目にそちらの方を修文しております。赤字の部分になりますが、「HOV、ROV、AUV を効果的に運用できるよう整備するとともに、」というような記載の方を修正させていただいておりまして、こちらも「バランスよく」という表現が全ての探査機を整備するように見えてしまうため、修文させていただいております。
 続きまして資料1の2ページ目下から2つ目のポツになりますが、「目標やニーズを基にしたモノづくりをする際には、あらかじめ民間企業等との連携が必要である。それでないと時間とコストが掛かり、結局は予定していたものが作れない。」(再掲)ということで、こちらの御意見を頂いているところです。こちらは資料2の10ページ目の394・395行目に記載の方をさせていただいております。394行目「なお、新たな技術開発や深海探査システムの構築を行う際には、産学官連携による検討を行うことも重要である。」という記載の方をさせていただいております。
 続きまして、10ページ目の下から3行目の赤字の部分になります。こちらも事務局の方での修正点になります。新たな大深度無人探査機の開発をするにあたり、その大深度無人探査機がどのようなものであるのかについてもう少し具体的に書いたらよいのではないか、という事務局の方での検討がございまして、こちらに記載のとおり追記させていただきました。「海底設置型長期観察システム(ランダー)と、ランダーに搭載可能なマニピュレータを持つ小型の自律型無人探査機とを組み合わせ、母船・ランダー・小型無人探査機間の通信にケーブルではなく音響通信を活用した、試料採取を行う探査機が想定できる。また、将来的には、この試作機で培った要素技術等を応用しつつ、視認性・機動性を向上させ、現場観測・大容量サンプリング機能を保有した新たな大深度無人探査機を開発することが期待される。」という内容を追記させていただいております。
 続きまして資料1の2ページ目の最後のポツになりますが、「「技術開発が必要とされる要素技術の例」に、「サンプルエレベータを介した水中でのバッテリー交換」を入れてはどうか。それができると、探査機を電池交換のためだけに母船に回収する必要がなくなり、効率化に繋がる。」という御意見を頂きました。こちらは資料2の12ページに記載を追記させていただきました。12ページの「技術開発が必要と考えられる要素技術の例」といたしまして、「サンプルエレベータを介した水中における探査機のバッテリー交換」という内容の方を新たに記載させていただいたところです。
分科会及び委員会からの御意見、また、事務局で検討して追記の方をさせていただいた内容の説明は以上となります。
それに加えて、資料3の方についてご説明させていただければと思います。資料3につきましては、今回おこなった資料2の修文を反映させる形でのみ修正をさせていただいておりますので、説明は割愛させていただければと思います。
 事務局からの説明は以上となります。
【松本主査】 ありがとうございました。
 ただ今の御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
 河野委員、お願いいたします。
【河野委員】 海洋研究開発機構の河野です。ご説明ありがとうございました。
 特に最後のタイムスケジュールの時間の感覚について、逼迫した状況と現時点で、すでに大分世界各国から遅れている状況を踏まえると、全く逼迫感が感じられないタイムスケジュールと言わざるを得ないと思います。
 お伺いしたいのは今回の技術開発の意味ですが、(2)の母船を含めた新たな大深度探査システムの構築のうちの、着水揚収システムのFSを2030年頃にかけてやるという、少々常識では考えられない時期でございます。しかも全体を読むと、この(3)まで読むと、「よこすか」の母船まで2040年までなるべく延命するのだと読めますが、2040年には「よこすか」は50歳になります。延命と老朽化対策によって船齢を50年に伸ばすというのは調査船としていかがなものか。半世紀使えば新鋭の研究ができますとかとてもいえませんし、ここまで調査船として一流の成果を上げられるように運用し続けるということは、当事者としては保証しかねると考えています。
 また、(2)のマル1は「2030年」とあって、例えば「2025年頃」という大分早い時期に前倒しをするべきだろうと思います。それから大深度無人探査システムの構築も、これは2040年を目標としているのは結構ですが、「可能な限り速やかに」としていただければと思います。
 それから、(3)の「よこすか」の老朽化対策をすれば2040年まで最新鋭として使えるのだという錯覚を感じさせない文章にする。2040年まで使うのは到底無理です。ご覧になっていただければ分かると思いますが、よく使っていますねと造船業界の方から褒めていただいているという状況です。これで一流の機械を載せたから一流の深海研究をしてくださいというのは、いくらなんでも研究者にとっても酷だと思います。以上です。
【松本主査】 数字と今おっしゃった部分の確認をさせてください。今2025年までというようにおっしゃったのは、10ページ目ですか。
【河野委員】 具体的に申しますと12ページの(2)のマル1、483行目です。
【松本主査】 マル1の「2030年」が「2025年頃」に修正ということですね。
【河野委員】 今2024年ですね。ごめんなさい。「2026年頃」です。失礼いたしました。それからその下のマル2が「可能な限り速やかに」です。(3)は年号が入っていませんし、「しんかい6500」の年号が2040年までというのは、「しんかい6500」の耐圧殻が耐え得る年齢です。全体を読むと、「しんかい6500」と「よこすか」の両方セットで「2040年までに」というふうに読めますが、そこは「よこすか」の方が早く限界が来ますということです。
【松本主査】 「しんかい6500」をメンテナンスしながら使うという話と、「よこすか」をもう少し頑張って使おうという話が同じ軸の上に乗っているのはどうなのかという、そういうことでしょうか。
【河野委員】 同じ期間まで延ばせることは自信がありません。
【松本主査】 そうすると、「よこすか」の方が先ほどおっしゃった2040年にはもう50歳という話ですね。だから母船の方が同じだけもちますよという調子で書くのは、そういうふうに読めてしまうから書きぶりを直してほしいということですね。具体的にこの部分がというのはありますか。
【河野委員】 全体的に直さないと分からないので、この場でこことここをこう直してと言いづらいのですが。
【松本主査】 事務局の方で、後でご確認をお願いしてもよろしいですか。
【事務局】 はい。事務局の方でご確認させていただければと思います。
【松本主査】 河野委員、ありがとうございました。
 他はいかがでしょうか。
【谷委員】 国立科学博物館の谷です。先ほど河野委員がおっしゃってくださったのですが、僕は先月「よこすか」、「しんかい6500」の調査航海に行っておりました。その具体的なことは申し上げられないのですが、かなり「しんかい6500」の安全な運航に関わるところに老朽化が進んでいるというのは、現場の人間としてひしひしと感じておりまして、実際そういう調査航海が実施できるかどうかが本当に危ぶまれる状態です。もちろん現状でもかなりまずい状態ですので早期の老朽化対策が必要なのですが、先ほど河野委員がおっしゃったように、これは延命工事をしてあと十何年と使えるような状態ではないというのは、多分現場の人間の共通した意見だと思います。ですので、やはりその危機感が伝わるような書き方が必要だなと思います。
 別の視点なのですが、10ページの下のところに試作機という、ランダーとそこにROVをつなげるようなシステムというものが現在新しく加えられておりますが、これはどういった経緯で加えられたのですか。これまで議論になったことがないと思うのですけれども。確かにこういう技術開発は必要なのですが、この報告書に盛り込むほどのものなのかが分かりかねます。
【松本主査】 事務局の方でご説明いただいてもよろしいですか。
【事務局】 事務局から説明させていただきます。資料3の2ページ目をご覧いただくことはできますでしょうか。
 こちらは「新たな大深度無人探査機の開発」という内容を記載させていただいている部分になりますが、こちらは今までのROV、AUVとは異なっておりまして、小型の無人機が出て行って調査をしてくるという形がどうもイメージしにくいのではないか、という事務局内で意見がありました。今資料3の2ページ目のちょうど真ん中ら辺にあります、図が小さくて大変申し訳ありませんが、真ん中にランダーがありまして、周りに3台の無人機が横を調査している図になりますが、このような部分の表現というのを足さないと今までのROVやAUVと何が違うのかというところが分かりづらいのではないかと思いますので、こちらの方に絵は付けておりますが文字でも説明した方がよろしいのではないかということで、追記の方をさせていただいたところでございます。
【谷委員】 分かりました。個人的な意見なのですが、実際に今開発とかをやっている人たちは、こういう目的で何かを具体的な試作機とかをイメージされている状態ではないと思いますので、もちろんこういうリモートでサンプリングをするシステムというのは重要だと思うのですが、それは多分、いくつかの技術を開発していく中の一つの可能性だと思うので、本文中にあると、むしろこれをやるのだということになってしまうことを若干危惧しています。例えばこの12ページの最後の「要素技術の例」というところでいくつか挙げていらっしゃいますが、むしろこういうところに入れるべきなのではないかと思いました。
 それから、前回の委員会の最後に、この報告書のとりまとめを議論している最中に確か奥村委員から同様の指摘があったと思うのですが、結局前回の報告書から今回に至るまで、どういうことができてどういうことができなかったのかというところが重要だというお話があって、それは非常に良い視点だなと思ったのですが、実際のところあまり前回の報告書で提言されていることができていないと思うのです。やはりその危機感。だからこそ今やらないと、次の報告書を書く時には本当に危機的な状況というかかなりのところが壊滅的な状況になってしまうのだというところを、できれば今回足していただいた「はじめに」の最後のところでもいいと思いますので、今やらないと本当に後れを取るどころか、この分野は消滅してしまう可能性が高いのだというような感じで書いてもいいのかなと思いました。
 以上です。
【松本主査】 ありがとうございます。最初の御意見は河野委員の御意見と同意見ということをおっしゃっています。
2つ目の話は10ページの406行目から追記されているランダーの話ですね。書き方として、確かに目標とする形としてまだ確固たる具体的な事例になっていないのではないか、書いたらやらなければいけなくなるのでというところに対して、ちゃんと担保されていますかというふうに疑問がおありということですね。もしこれを移動するのであれば要素技術の例のところに並べる、例えばこういう方向性があります、というところの中に書いた方が、将来絶対やらなければいけないというところからも外れるし、だけどこれはやったほうが良いという位置付けになりますねという、そういう御意見だというふうに理解しました。
【谷委員】 はい。
【松本主査】 それから、前回の報告書と今回の状況をきちんと見比べて、意外と進んでいないのだということで、もうかなり喫緊の状態であるという説明のところに対比させるような形で「はじめに」のところに文章化してきちんと入れた方がよいと。
【谷委員】 はい。前回の報告書とかまで具体的に書かなくていいのかもしれないですが、後れを取っているだけではなくて、次に同じことをやってしまったら本当におしまいなのだというところはちゃんと書いた方がよいかなと思います。
【松本主査】 分かりました。もう少し急を要するのだという書きぶりが欲しいと。そこの強さは確かに、少しのっぺりとしているというか、そんなことが書いてあるのだけどもう少し前面に押し出してもよいという御意見ということですね。
【谷委員】 はい。
【松本主査】 ありがとうございました。
【河野委員】 JAMSTECの河野です。ちょっと補足させていただいていいですか。
 今の谷委員の御意見の中のランダーシステムについてですが、おっしゃるとおりワン・オブ・ゼムですので、もう少しジェネラルな形で書くことに賛成いたしますが、今そういう開発をしていないということはなく、そういうところの開発はJAMSTECでワン・オブ・ゼムにしてやってはいますので、書いたらやらなければいけなくなってつらいのではないかということではないです。
【松本主査】 なるほど。でも一つの方向性であって、全体の方向がこれ一つですというふうに書いていると見えるので。
【河野委員】 はい。ジェネラルに書くことには賛成です。その方がよいと思います。
【松本主査】 分かりました。補足ありがとうございます。
 岩崎委員、どうぞ。
【岩崎委員】 NHKエンタープライズの岩崎です。私も今の谷委員のランダーのマニピュレータを持つシステムというのは本文にないほうがいいだろうなと感じています。といいますのは、全体として、この前の海洋開発分科会の論調もあったのですが、古いものはもう捨てて、例えばAUVとか新しいものを開発していくということが大事ではないかという論調をすごく感じたのです。傍聴していたのですが、HOVは古い技術だとかコストばかり掛かって見直すべきだとか、AUVみたいな新しいものをどんどんやるべきだとか、新しい技術を言うのですが、実際、谷委員がおっしゃったように「しんかい6500」がいつ運用できなくなるかという切羽詰まった状況だと思うのです。この報告書に「2040年ごろまで「しんかい6500」が運用できる」という表現が所々に出てきます。2040年まで本当に運用できるのか。これまでこの委員会で議論されてきましたが、緊急脱出装置のパーツが更新できないとか、母船の老朽化が進み着揚収は船長の超人的な操船に頼っているなど、いくら耐圧殻が40年までもったとしてもそこまで長く運用できないわけですよね。それが2040年と書かれてしまうと、まだ運用できると誤解を与えるのではと思ってしまうのです。今できることが本当にできなくなる瀬戸際なのだということを、もっともっと強調すべきだと思っています。
 例えば、今「はじめに」のところに自国のEEZの半分を占める深海の探査能力というような話があるわけなのですが、もし「しんかい6500」が動かなくなったら5,000 m以深を調査する能力はゼロになってしまうわけですよね。4,500 mまでは、かろうじてケーブルが短くなった「かいこう」ができるわけですが、それもケーブルが3,000 mに短くなってしまう可能性がある。つまり、自国のEEZの半分以上を調べられなくなるという事実が、1年先か2年先か分かりませんが、もうそこまで切羽詰まっているのだということを明確にして、何を優先すべきか、ということを強調するべきだと思うのです。AUVの新しい技術を開発したりマニピュレータを搭載したランダーシステムを開発したりするのは大いに結構ですけれども、まずは今できることを維持しましょうということを相当書かないと、前回議論されて何も変わらなかったことの繰り返しになるという危機感を覚えています。
 具体的に言いますと、「はじめに」のところで、「5,000 mの探査能力をあと数年で失う可能性が高い」まで書いてもいいのではないかと思います。3ページ目のローマ数字1の1(1)ですが、EEZの深海探査の重要性とかを書いてありますけれども、例えばここに追記して、「しんかい6500」が失われると、EEZの半分以上はどの探査機を使っても調べられなくなるのだと。そういう状態があと数年先に迫っていますとか書いて、明示した方がよいと思っております。
 あとは、この2040年というのが所々に出てくるのですが、例えば4ページの124行目に「2040年代まで使用可能」というのが出てまいりますし、466行目「設計限界は2040年ごろと推定されている」、519行も「設計限界である2040年頃」というふうに所々出てきて、2040年ごろまで運用できるという誤解を招くため、「2040年」という数字は使うべきではないと感じました。
 今の話から離れるかもしれないのですが、海洋開発分科会で民間企業との連携もよく考えないと、どこも作れないという状況になるという声がありました。私個人的には、海外で売っているものがあるのだったら、それを導入すればよいのではないかと思うのです。今から開発して、何年先にできる、ということになってしまうので、実在するものを導入すれば、時間も開発費も節約できるのではないかと思います。6ページ目の228~230行目に民間企業等が行う開発に取り入れるということが書いてありますが、もっとはっきり民間に存在するものの導入も含め盛り込んでもいいのではないかと感じました。
 つまり全体としては、もうあと数年で調べられなくなる状況があります。なので、もう民間にあるものはどんどん導入するし、今あるものはなんとか延命するということを全面に打ち出して書いた方がよいのではないでしょうかということです。
 以上です。
【松本主査】 どうもありがとうございます。まず、今あるものがきちんと継続できるようにという、ここの部分をもっと全面に出していきましょうと。
【岩崎委員】 今あるものもいつ駄目になるのか分からない。「しんかい6500」だけではなくて、「かいこう Mk-IV」も4,500 mまで潜れますが、それは元々フルデプス、11,000 mまで潜れていたものが今4,500mまでに後退しているわけです。あとどれくらい現状の探査能力を維持できるのかというのも未知数であるとか、これを読む方の心にも響くのではないかなと思いました。
【松本主査】 確かにおっしゃるとおりで、2040年まで稼働という書き方はご指摘どおり、まだ大丈夫なのかという少し余計な安心感を与えるといいますか、余裕を見てしまうような書きぶりではあるなというふうに思います。なので、そうではなくて、1、2年先にもしかしたら使えなくなるのかもしれないというような、ちゃんと今あるものを継続するためにはどうするのかという部分をもう少し分かるようなことを具体的にここに書き込んだ方がよくて、なお且つその期限は2040年がぎりぎりなのですということで。もうそこは2040年という数字を出さない方がいいかもしれないですね。
【岩崎委員】 出さない方がいいのではないですかね。それは設計上の話であって、では本当にそれが使えるのですかという。そこは船のことが一番ですので。
【松本主査】 いろんな場所に2040年と書いてあって強調されているように見えると。
【岩崎委員】 そこまで強調されていると、まだ大丈夫なのかと最初に読んだ時は思ってしまったのですが、谷委員が直近で乗船した状況なども踏まえても、やはり現状を反映していないと感じたものです。
【松本主査】 状況を踏まえて、2040年まで大丈夫というようなニュアンスが読み取れるのはよろしくないと。
【岩崎委員】 逆効果だと思います。
【松本主査】 だからそれまでには刷新していなければいけないのだというような、すぐ取り組まなければいけないのだというようなことが分かる書きぶりにすべきだという御意見ですね。
【岩崎委員】 はい。
【松本主査】 ごめんなさい、今全部拾えていないので、この場所に書いてあったよというところを事務局の方から後でお問い合わせさせていただいてもよろしいでしょうか。
【岩崎委員】 はい。
【事務局】 かしこまりました。
【松本主査】 では、そこのところはお願いいたします。
 あともう一つ、民間との連携の話がございましたが、民間としてあるものは国内外を問わずあるものはどんどん導入すればよいのではないかという御意見かと。
【岩崎委員】 個時間を節約できることもありますし、それを更に改良してより良いものに変えていくという考え方の方が現実的なのではないかと考えております。
【松本主査】 分かりました。御意見としては伺いましたということで、ありがとうございました。それをもしお書きになるとしますとどの辺がよろしいでしょうか。
【岩崎委員】 6ページ目の探査機を構成する要素技術のところの215、216行目のところに書くのか、若しくはこの229・230行目に書くのか、どちらかなのかなというふうに思いました。
【松本主査】 ありがとうございます。御意見は以上でよろしいですか。岩崎委員、ありがとうございました。
湯浅委員、お願いします。
【湯浅委員】 川崎重工の湯浅です。「2040年」について補足をしますと、今ここで書かれているのは耐圧殻に特に着目して書かれているということですね。耐圧殻がこれまでの運用実績から深度のストレスを何回掛ければ駄目になるというところから、現状の使用の頻度であれば大体2040年で限界ということなのですが、当然「しんかい6500」は耐圧殻だけで潜っていっているわけではないのですね。機器が簡単に直る保証があれば多分数週間かそこらで直るのでしょうけれども、完全に壊れてしまって作り直しだといった途端に多分年オーダーでしんかいが止まるという可能性はあると思うのです。なので、ここで着目している耐圧殻は2040年ということでしょうけれども、今でも数年オーダーで止まる可能性は多分あるというのを委員の方々はやはり非常に危惧されているのではないかというふうに思いますので、そこら辺はそういうことをにおわせるような書き方にすべきかと私も思います。
 先ほど岩崎委員が言われた6ページの民間企業の話は、多分これはAUVということだったのではないかなと思います。AUVの自律制御のところを浅海域のAUVの技術開発の実績でかなり確立し、それをブラッシュアップしてそれを深海に、というイメージではなかったかなと思います。裏にはそういうお話があったかなと私は思っています。
 意見なのですが、12ページ目に「サンプルエレベータを介した水中における探査機のバッテリー交換」のことが追加されているのですが、サンプルエレベータというものがどういうものか分からないのですけれども、バッテリー交換するくらいだったら海底で充電した方が余程簡単に行けるのではないかと思うのです。水中での充電、若しくは交換にするかというふうに思います。水中での充電を最初に書いた方がよいと思います。
 以上です。
【松本主査】 ありがとうございます。少し確認させてください。2040年までの話というのは「しんかい65000」の耐圧容器の話でしょうか。
【河野委員】 JAMSTECの河野です。今おっしゃったように、2040年まで強度的にはもちそうだと言ったのは、耐圧殻のことです。人が乗る球体のところです。
【湯浅委員】 耐圧容器というのは通常は耐圧殻の外に置くのですが、例えば電子機器を入れる小さい容器を耐圧容器に入れますので、そういう小さいものであれば作り替える技術は持っていますので、それが例えば駄目になったとしても、それは作り替えられます。ところが耐圧殻という一番大きなチタン品はなかなかそういうわけにはいかないということです。多分「しんかい6500」を初めに作った時にこの耐圧殻の球殻が何回ぐらいストレスを掛けてももつだろう、要するに何回以上ストレスを掛けたら危なくなってきますよというのが明晰に出ていたはずなので、それを今のJAMSTECさんがこれまでの潜航回数でずっとグラフを書いていて大体2040年ぐらいにそれに到達するだろうということになります。
【松本主査】 なるほど。耐圧殻に関してのみであれば、2040年という話はあるにはあるということですか。
【湯浅委員】 それも本当は現状の真球度が正常だということを確認してやるというのが絶対に必要になりますが、今の2040年というのは新造時にこの耐圧殻が技術的・理論的にどれくらいストレスを与えても、何回潜航しても大丈夫だろうというところをJAMSTECさんと三菱重工さんで出されたと思うので、それを踏まえて河野委員が資料を出しておっしゃったということですね。
【松本主査】 新造時に技術・理論的な数値として出てきたものであって、目安であって絶対かどうかというところはありますよね。
【湯浅委員】 そうですね。もしかしたら大分ひずみが増えているような状態になるかも分からないというのはあります。
【河野委員】 JAMSTECの河野です。検査はしておりますので。あと、なぜ耐圧殻のことばかり言うのかというと、そこだけは容易に新しいものと交換ということができないのでクリティカルな部分ということです。その他の耐圧殻、先ほどの話にあった緊急離脱ボルトみたいなものはJAMSTECで何らかの形で代替品を作ることができるのではないかという検討をした結果、鍵になるのは耐圧殻。これは今ちょっと作ってくれといっても気軽にそう作ってくれるものでもないので、この部分の寿命がすべてを決めるという観点から2040年というのがアピールされているのだと思います。これが駄目になると何もできなくなるので。
【松本主査】 分かりました。ありがとうございます。
 民間との連携の話で、先ほど岩崎委員からコメントがあったところは、AUVの話のみではないかという御指摘でしょうか。
【湯浅委員】 これまでの委員会でも議論があったように、浅海域のAUVの技術開発の考え方を深海に応用する。深海にあって浅海域にないことはまずないですから、浅海域の方のAUVの、自律制御の部分を深海のAUVに移植というか、やってあげたらよいのではないかというふうな論調で確か言われたはずです。例えばROVはそういうイメージとは少し違うかと。
【松本主査】 違いますね。ここのパラグラフは、確かにおっしゃるとおりAUVについてですね。分かりました。ありがとうございます。
 それから、先ほど少しバッテリー交換の話がありましたが、巻委員からご意見いただければと思います。巻委員、お願いします。
【巻委員】 このサンプルエレベータは私が確か発表した時の資料に少し書いていたものなのですが、そのバッテリー交換ができると充電よりは短時間で行けるだろうというふうに考えています。つまり、ワーククラスの深海探査機になるとおそらく「しんかい6500」並みの100 kWとかの電力容量が必要になるのですが、もちろん充電でもよいと思うのですけれども、充電にするとそれを深海でやろうとすると結構何時間という時間が掛かりますよね。ただ、交換だと1時間とかでできるのではないかと。そうすると、早く次の探査に行けるという点でよいかとは思っていたのですが、もちろん充電もよいと思いますので、「充電若しくはバッテリー交換」みたいな形で修正いただくのに賛成です。
【松本主査】 ありがとうございます。そうすると、サンプルエレベータを介したとなるとバッテリー交換で、充電の話は先ほど湯浅委員がおっしゃったようなドッキングステーションみたいなイメージなのだと思うのですが、どちらも将来的な技術開発としてあったらよいなというものかなというふうに認識したのですけれども、それで間違いないでしょうか。
【湯浅委員】 私はそれでよいと思います。
【巻委員】 問題ありません。
【松本主査】 では、このバッテリー交換の記載のところにバッテリーの充電も含めた形で両方とも併記するというような修正の案としたいと思います。ありがとうございます。
【日野委員】 日野です。今のところですが、要素技術の書きぶりにという話になっているのですが、そもそもは海底での長期イベント運用が必要だから、バッテリーの充電や交換が必要ということですよね。今の話だとこのマル2の「要素技術の例」に書くということですが、そのマル2の本文のところで、長期運用が必要なのだということが書かれていないと少し唐突感があります。11ページ目のマル2のところですね。
【松本主査】 確かに長期運用の話は書かれていないですね。
【日野委員】 マル1の方では少し書いてあるのですが、マル2の方は抜けている。
【松本主査】 なるほど。おっしゃるとおりですね。
【廣川委員】 マル1の方でしょうか。
【日野委員】 ああ、レジデント技術とありますね。
【廣川委員】 長期運用、広域調査の必要性がマル1に書いてあります。最初に電力供給に代わる大容量バッテリーということが書いてありますので、バッテリーの話はここに集約した方がよろしいかと思います。
【松本主査】 なるほど。ありがとうございます。
 バッテリーに関してご意見いただいた委員の皆さん、その方向でよろしいでしょうか。分かりました。
 廣川委員、どうぞ。
【廣川委員】 各委員の皆さんから出ていますように、「しんかい6500」運用停止ということがこの委員会の大きな論点だと思います。定期点検で毎年検査はされているのでしょうけれども、もしそういうところで異常が出てきたら翌年からはもう使えないという状況というのがあるということをちゃんと明記した方がよいと思います。
 その上で、それに代わる代替機として大深度無人探査機というものを開発する、という位置付けだと思いますので、そうするとこれからこのタイムスパンで2040年頃造るのか、その本筋から相当離れているのではないかと思います。
また、要素技術のところはたくさんありますが、多分これはいろいろトレードオフのところがたくさんあって、バッテリーとか機能をたくさん持たせると非常に大きくなって、それでまたバッテリーが大きくなって、躯体が大きくなってという、どこかで機能を削いでいかないと最終的にこれができないのではないかと思っています。迅速性が要求されるこの状況下では、2040年ごろではなくてもっと早く、例えば2030年代前半とかそれぐらいにはやはり立ち上がらないといけないというのと、少しゆっくり要素技術開発からやっていると多分仕上がらないのではないかというふうに思うのです。
 岩崎委員からも指摘がありましたが、やはり国内外で既に類似の技術があるものは、既存技術をうまく活用していくことで、それをシステム化してインテグレートすることでこういうものが早く作れないかというところです。足らないところを技術開発するというような視点を入れて、もっと早くできるところに注力する。今だと何かすごく先送りしている感じがあるので、5年後こういうことをやったとしてもあまり何か前回と同じだよねというふうにならないかというのは少し気になります。具体的ではないのですが全体的な印象としてそういう印象を持ちました。
【松本主査】 ありがとうございます。では、2040年のところに引っ張られすぎているという。
【廣川委員】 そうです。2040年のところをターゲットに最初に置いたものだからこういう結果になっているのではないかというところは、このタイムスケジュールを見て改めて思いました。
【松本主査】 具体的には2030年代前半くらいでしょうか。
【廣川委員】 2030年前半ぐらいには出来上がっていないといけないのではないかと思うのですが。10年ぐらいのスパンで、5年間は要素技術、5年後には実際にシステムを組んで10年後には運用開始。2040年とか悠長なことはいっていられないのではないかと思います。10年でも、世の中にないものを作るわけですので、簡単には作れないと思います。何回もやはりトライ・アンド・エラーして失敗しなければいけない部分はあると思いますので。しかもフルデプスを目指すわけですよね。簡単にはいかないというふうに考えると、5年ぐらいの要素技術の開発を経て、5年後からは実際に試作機ができて、それでもやはりうまくいかないところがたくさん出てくると思うので、それをトライ・アンド・エラーで改善して、10年後には運用という、それくらいのスケジュール感で行かないといけないのではないかというのが私の印象です。
【松本主査】 そうですね。2030年代前半ということで具体的に10年という数字が出てきて、10年というと今廣川委員がおっしゃったとおり、ざっくり前半5年で要素技術、基礎技術、要素技術で使えそうなものを、こちらもトライ・アンド・エラーで具体的なものをお買い物も含めて検討して、5年後から試作機を作って実機になるように何か調整しながら運用を目指すというようなざっくり10年の設計を引かないと、ということですね。
【廣川委員】 実際は浅部から少しずつ試していって、フルデプスまで持っていくというところまでには、やはり改良が途中で必要になるかと思います。
【松本主査】 時間が掛かると思いますね。おっしゃるとおりだと思います。そういう線表を勝手に引いていいかどうかというのは私にはわからないので、だから説得力があるなと思って今伺っていました。
 線表を直すとかそういう話まで及んでしまってよいのでしょうか、事務局に質問です。
【事務局】 事務局でございます。委員の先生方ありがとうございます。時間軸については技術的な部分もございますので改めて確認しながら、この記載が報告書の方に記載すべきかどうかについて検討させていただきたいと思います。御意見として承りましたので、持ち帰り検討させていただければと思いますのでよろしくお願いいたします。
【松本主査】 廣川委員、ありがとうございました。
【日野委員】 東北大の日野です。今持ち帰り検討いただくという話だったのですが、線表というのは資料に付いているポンチ絵のことですよね。
【松本主査】 資料3の中に含まれている線表です。
【日野委員】 今本文の文面の中で数字を拾ってスケジュールとかを整理されているのですが、資料3の2ページ目のところで、今これはいろんな数字がくっついている。これを本当にまず技術的に可能なのかというのが一つと、それからもう一つは、谷委員などから発言されているように、深海探査能力の喪失の危機に我々はいるのだと。今度はそこから見たときの線表になっているか。いつまでに次世代が生きていないと日本は終わりますよということ。その二つをもって線表の擦り合わせをするのが最終的にこの絵だと思っています。
 先日の海洋開発分科会には私も出ていましたが、やはりこの最初のところが非常に重要で、要するに、後れを取っているから何とかしようではなくて、日本も国として深海探査能力を持っていなければいけないのだというのは前提で、そのために今回いっぱいこれを書き込んでいただいたのですね。でもそれがもう失われますという、やはりそこまで踏まえた危機感をしっかり入れて、失わないためにいつまでに何ができていなければいけない。それをまず目指して最優先にやらなくてはいけないものはどれか。その後も継続して世界一であり続けるためにはどれを継続して技術開発を進めていかなければいけないか。本当に目の前の危機を脱するためのプランと、その後の中期的に継続して努力するプランと、それが今ごっちゃになっているような気がするので、そこを整理した方がよいのかなと思います。そういう議論をしようと思うとやはり、この絵を皆さんで議論されるのがよいのかなと思っております。
 以上です。
【松本主査】 御意見としては非常に貴重な御意見だと受け止めました。今回最終なので、御意見だけ事務局と私の方で預からせていただいて、その後いろいろお話して決めていくのは少し厳しいので、せっかく先生方がいらっしゃるので、技術的な進捗の話と、研究が継続できなくなってしまうという話と、両方擦り合わせてこの線表をもう少し見直した方がよいのではないかという部分で、具体的にこの何年後と書かれている数値がこうあるべきだとか、その辺りのもう少し具体的なところをお伺いしてもよろしいですか。
【日野委員】 技術の方は分からないのですが、例えば今のこの表だと(3)が取って付けた感じになっているのですけれども、深海探査能力喪失の危機という点ではこれが多分一番大事だと思います。これが全てのスケジュールに効いていて、そこまでにできることは、新しい機械を作るとか、それでできることは何ですかというのがその次に来てというふうに少しこれは順番を並び替えてもらった方がよいのかなと思います。
 具体的な数字は、例えば先ほど河野委員がおっしゃったように、今これは「2040年」という数字が出ているのですが、それは本当の最後で、それよりもっと手前にできていなければいけない。少なくとも今の探査技術が2040年まで維持できるかは、本当はグレーですよね。谷委員がおっしゃっていたけれども、ある年突然検査でもう駄目になってしまうかもしれないわけですから、そういう意味では一番待てても2040年かもしれないけれども、それよりもっと手前でデッドラインがあるのか。
 一方で、そのスコープに間に合う開発がどれなのかというのを拾ってもらって、それを受けるような線表が作れるとよいのかなと思ったのです。私は(3)を(1)の上に入れてくれということぐらいしか具体的な提案ができないですが。
【松本主査】 分かりました。日野委員の御意見として、この老朽化対策というのが今の深海研究とか深海探査技術の技術的な肝なのではなくて、時間的な制限として肝になってくるのだから、これを一番先にもっていく。そして、これを考えるにあたって技術の継続のための話と、それから、積み上げていく新しいものができるという、そういう見え方をした方がよいという御意見ということですよね。
【日野委員】 そうですね。だからそれぞれ例えばHOV、ROV、AUVとそれぞれの技術があるのだけれども、その中でもショートタームでできるのと、その先に更なる機能向上であるとか、本当は望ましいのだけれども、どうしてもリードタイムが要るのだということを前提に線表を書いてもらって、だけどそのショートタームでできるものを全部生かすとかろうじて間に合うというような線表の作り方ができないかというふうに私は考えています。
【松本主査】 ありがとうございます。この部分は本当に大事だというところの認識はしたのですが、十分な議論の時間を取るにはそろそろ時間が不足してまいりましたが、もう少し大丈夫です。
 まだ発言されていない方はいらっしゃいますか。
 小島委員、お願いします。
【小島委員】 今の何年後というところで、例えば5年後10年後にすると2040年というのは15年後だからまあ5年遅れてもぎりぎりなんとかという、そういうタイムスケジュールかなと思ったのですが。
 事前のコメントをしそこなって細かい点で申し訳ないのですが、二つほどコメントさせていただきます。資料2の51行目のところで、金属資源で「熱水鉱床」というのを入れられているのですが、熱水鉱床の後ろに「コバルトリッチクラスト」なども入れておいてもよいかなというふうに思いました。
 あと、144行目で救難活動の話が出ていて、ここに必要だというふうに書いてしまうと、もしかすると現在は必要が満たされていないというふうに曲解されてしまうと少し心配かなと思いました。下の方に注釈があって現状でも大丈夫だという感じに全体としてはなっているのですが、今危険なことをやっているように取られるとよくないかなと少し心配になりました。
【松本主査】 これは言葉としてどんな言葉を選んだらよいか、今の時点で何かございますか。
【小島委員】 人命の懸かっている安全対策なので、一つだけではなくて複数のものがやはりあるべきであってというような論点かなとは思うのですが。ちょっと良い文章が思い浮かばないのですが、「必要」ではなく、「望ましい」でしょうか。
【松本主査】 まだ挙手されている方がいらっしゃいまして、すみません、後ほどまた事務局の方からメールをさせていただく形にしたいと思いますが、小島委員よろしいでしょうか。
【小島委員】 はい。結構です。
【松本主査】 ありがとうございます。
 奥村委員、お願いします。
【奥村委員】 高知大の奥村です。お時間を頂きましてすみません。
 一点少し議論に出ていなかったところをお願いしたいなと思うのですが、資料2の15ページには参考図というものが付けられていたので、もし図のようなものがこちらの在り方についての案の方の書類に付けられるのであれば、初回の第1回で河野委員の御発表資料、資料4の23ページにありました総合的な深海探査システムのイメージ図をぜひ入れていただければと思います。海洋開発分科会で寄せられた意見、この資料1の2ページ目でありました「「HOV・ROV・AUVをバランスよく整備していく」というのは、結局どれも成果が得られにくいのではないか。」というような御意見に対しまして、今回9ページの下の方でご対応いただけたと思うのですが、この「組み合わせて効果的に運用していく」というようなビジョンというのは、この委員会で何回も委員会を重ねる上で出てきた皆様から複数回賛同が寄せられているビジョンだと思いますし、実際に世界でもAUVとかROVの同時運用が進められているという流れにありますので、この同時運用をしていくというようなビジョンというのは非常に重要だと思います。
 ですので、具体的には資料3のタイムスケジュールが書かれたページの真ん中の右側、複数・同時運用の実現というところで小さいイメージ図としてここには入っているのですが、ぜひこの案の中の参考資料のもう一つの図としてそちらの図を付属していただけると、先ほどの分科会で寄せられた意見への対応にもなると思いますし、この委員会で議論した重要な一つの意見を示すことができると思いますし、更には、先ほど意見交換の中で河野委員や谷委員からも出てきましたとおり、今後の母船の在り方を考えていく上でも非常に重要な要素にいなってくると思いますので、ぜひこちらの図を検討していただければと思います。
 以上です。
【松本主査】 奥村委員、ありがとうございます。
 最初の御意見が、参考1のところに初回の河野委員の総合的な深海探査システムの絵を入れると。
【奥村委員】 参考1というものが付けられていたので、この文書に参考2のようなものを付けられるのであれば、9ページの351、352行目に追記していただいた「HOV・ROV・AUV 各種の探査機を組み合わせて同時かつ効果的に運用できるシステムの構築が必要である。」のところに参考2みたいなものを付けていただければという希望です。
【松本主査】 分かりました。確かに言葉だけで書いてあって初めて聞いた方はイメージが湧かないので絵だと非常に分かりやすいという、そういう御指摘ですね。
【奥村委員】 はい。そうです。
【松本主査】 ご意見ありがとうございました。
 それでは、巻委員、お願いします。
【巻委員】 ありがとうございます。線表の部分で少し気になったのが、2030年頃にまずはケーブルに依存しない無人探査機を造るとあります。そこで下のところにはフルデプス対応のROVは存在せずと書いてあるのですが、私が思うには「しんかい6500」の代替をするような機体はケーブルなしというのはほぼ不可能だと思っています。高速無線通信は、長距離のものはかなり厳しいのではないかと。なので、少なくとも光ファイバーケーブルはつなげておかないと「しんかい6500」の代替は務まらないと思っています。そうすると、もう早急に光ファイバーケーブルベースのフルデプスROVを作るべきではないかというふうに思います。フルデプス対応のROVは存在せずと書いてありますが、例えば2010年ぐらいにアメリカの「Nereus」が既にフルデプスに行っていますし、中国の「海竜」というROVでありAUVであるというものも光ファイバーケーブルでフルデプスへ行っています。ですからもう技術はあるわけで、それを早急に勉強して導入していくべきではないかというふうに思います。
 「2040年」をもっと前倒しにするべきだというのは私も非常に同意で、そのためにはフルデプス対応のROVをまず作るべきではないかと。機能は限られていてもいいのですが、要素技術開発は並行して進めて、順次アップデートしていけばいいのではないかというふうに思います。
  最後は意見なのですが、深海探査というのは宇宙開発と並ぶ国民にとっても非常に夢を与えるものだと思いますので、サイエンスと密接に連携して、これができればこんなことができるという明るいニュースを国民に発信していただければというふうに思います。
 以上です。
【松本主査】 ありがとうございます。
【河野委員】 JAMSTECの河野です。今の件で一つだけ。先ほど「あまりこういうものと限定しない方がよい」という視点から、今巻委員がおっしゃったことには一理も二理もあるのですが、そういう意味ではもう光ファイバーケーブルを使ったROVを次のものとして開発しなければならないと限定されると皆さんの開発の可能性が狭まりますので、少し言い方をジェネラルにするのには賛成しますが、こちらではなくてこちらにしなさいという書きぶりをすることは方針としてはあまりふさわしくないというふうに思っています。
【松本主査】 ありがとうございます。そうすると、巻委員の御指摘としては6,500 m以深でケーブルに依存しないというのは難しいということでしょうか。
【巻委員】 難しくはないですが、「しんかい6500」並みのことをやろうとするのは難しいと考えています。なので、これは作るべきではないと言っているわけではなくて、これは非常にその技術は生かされると思うのですが、最終的なフルデプスROVはケーブル式になるだろうというふうに思っています。光ファイバーに限定するものではないのですが。
【河野委員】 それだけではなくて、太いケーブルに依存しない開発を進めるべき、くらいの言い方がよいのではないですか。
【巻委員】 よいと思います。
【河野委員】 大口径ケーブルに依存しないシステムを作る必要がある。「無線の」と書いてあるところを「ケーブルに頼らない」という言い方にすると。
【湯浅委員】 川崎重工の湯浅です。420行目にも同じようなことが書いてあります。ケーブルというのが、電力供給ケーブルか、光ファイバー通信ケーブルの二通り混在してしまっているのではないかなと。420行目には「6,000 m以深対応のROVを太径ケーブル(電力供給を行うケーブル)に依存せずに運用できるシステムは」と書いてありますが、別に太径ケーブルだけではなくて、細径のものでもなかなか世界に例は少ないと思います。だから、この太径ケーブルと通信ケーブルが混在してしまってややこしくなっているのではないかなと。あと420行目であれば、例えば6,000 m以深対応のROV自体が世界に例はないので、あまり細かいことを書かなくてもこれはいいのかなと思います。資料3の方に載せている方は河野委員が言われた電力ケーブル、これに依存しないという書き方の方がよいのではないかと思います。
【松本主査】 ありがとうございます。ケーブルに関しては、「ケーブルに依存しない」ではなくて、「太径ケーブルに依存しない」ということでしょうか。
【湯浅委員】 「電力ケーブルに依存しない」が分かりやすいですね。
【松本主査】 確かに。そういう方向でこの線表自体の書きぶりを少し見直した方がよいのではないのかということで御意見を頂戴いたしました。
 あと、巻委員の方からフルデプス対応のROVは存在せずというところ、海外製品も世の中にデビューしていますという御指摘がありました。
【河野委員】 JAMSTECの河野です。まずそれもROVが何かという話なのですが、その光ファイバーケーブルを使って研究機関がそこの深さまで達したという実例はあると思います。この間の巻委員の御発表にもありました。実際にサンプリングができたとか、運用フェーズに入っているとか、あるいは売っているという実績があるのですか。
【巻委員】 サンプリングかは分からないですが海底の観測です。光ファイバーで詳細観測をしているというのは論文に書いてありました。
【河野委員】 そうですよね。なので「存在せず」は強すぎるかもしれませんが、今ここでいっている代替として既に運用フェーズに入っているのではないです。
【巻委員】 どうでしょう、でも中国のものは大分使われているみたいですよ。
【河野委員】 サンプリングに、ですか。
【巻委員】 サンプリングかは分からないですがROVとして運用されています。市販は多分されていないと思うのですが、存在せずというのは強過ぎるかなと思います。
【松本主査】 存在するかしないかということとしては、いますという言い方ですかね。
河野委員の御指摘は、運用フェーズに入っているかどうかということでしたが。
【河野委員】 容易に手に入るかどうかです。先ほどの意見ではないですが、ではそれを使ったらいいではないかという話にはちょっと向かないという話かと思います。
【松本主査】 すぐに吸収して次の開発の中に組み込んでということができますかという話ではなさそうだという、そういう御指摘なのですね。
【河野委員】 はい。なので、「存在せず」の前に何か付けるか。
【松本主査】 書きぶりのところで誤解がないものにしたいと思います。
【河野委員】 「実用化されているとは言い難く」とか、そういった言い方がよいかと思います。
【松本主査】 承知いたしました。それでは、もう時間になってしまいました。まだまだ話したいことがあるかも分かりませんが、今回大変皆さん活発にディスカッションしていただきましてありがとうございました。
 以上をもちまして本日の議事は終了いたしました。重ねてのことになりますが、いろいろと貴重な御意見を頂きましてありがとうございました。
 今後、海洋開発分科会で審議して報告書のとりまとめとなる予定でございます。本日頂きました御意見や修正内容につきましては、事務局で修正いたしまして、多種多様な意見が出ましたので、委員の皆様にもう一度ご確認を頂く機会を持ちたいと思っていますので、御協力をお願いいたします。そして、その後のとりまとめにつきましては主査の一任にさせていただきたいのですが、この点についてはよろしいでしょうか。
(「はい。」との声有り)
【松本主査】 それでは、そのようにいたします。最後に事務局から連絡がございましたらお願いいたします。
【事務局】 事務局でございます。本日は長時間にわたりご議論いただき、ありがとうございました。本委員会のとりまとめを議論いただきます次回の海洋開発分科会につきましては8月ごろの開催を予定しているところでございます。海洋開発分科会の日程等が正式に決まりましたら委員の皆様には改めて御連絡を差し上げたいと思っております。
 また、本日の議事録につきましては事務局側で案を作成の後、後日委員の皆様にメールにて確認をさせていただきますのでよろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。
【松本主査】 これをもちまして本日の深海探査システム委員会を終了いたします。本日はお忙しいところありがとうございました。
 ―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局海洋地球課