海洋科学掘削委員会(第4回) 議事録

1.日時

令和4年7月4日(月曜日)9時30分~12時40分

2.場所

文部科学省18階研究開発局会議室1又はオンライン

3.議題

  1. 海洋科学掘削の現状と課題について(ヒアリング)
  2. 我が国における研究資源としてのコアの保管・管理・活用の現状について(ヒアリング)
  3. 意見交換
  4. その他

4.出席者

委員

川幡主査、石井委員、小原委員、窪川委員、阪口委員、鈴木委員、巽委員、野田委員

文部科学省

大土井海洋地球課長、戸谷深海地球探査企画官、伊藤海洋地球課長補佐 ほか

オブザーバー

【説明者】 国立研究開発法人海洋研究開発機構 倉本 真一 理事、高知大学海洋コア総合研究センター 池原 実 教授
【補足説明者】国立研究開発法人海洋研究開発機構 研究プラットフォーム運用開発部門 江口運用部長、猿橋船舶運用グループリーダー、東條予算グループリーダー代理、経営企画部 佐藤企画課長代理、高知コア研究所 廣瀬所長、久保科学支援グループリーダー代理、高知大学 海洋コア総合研究センター 佐野センター長

5.議事録

【川幡主査】  川幡と申します。おはようございます。元気にしています。
 ただいまより、第11期科学技術・学術審議会海洋開発分科会海洋科学掘削委員会の第4回会合を開催いたします。 本日は御多用中にもかかわらず、委員の皆様に御出席いただき、誠にありがとうございます。 まずは、事務局より定足数の確認及び配付資料の確認をお願いいたします。

【事務局】  本日は、8名全ての委員の皆様に御出席いただいておりまして、本委員会の運営規則第2条に定める定足数の過半数を満たしておりますことを御報告いたします。
 また、事務局としまして、文部科学省研究開発局海洋地球課長の大土井、深海地球探査企画官の戸谷、課長補佐の伊藤のほか、海洋地球課の関係者が出席しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。本日は、議事次第にありますとおり、資料1から資料4まで御用意させていただいております。委員の皆様には、事前に議事次第を含め、資料1から資料4を一つにしたものを送付させていただいております。会場にお越しの委員の皆様にも、お手元に同様のものを御準備しております。本日の委員会では、議事に合わせて資料を画面共有させていただきます。
 御不明な点、不備等ございましたら、事務局までお知らせください。
 また、資料1として、第3回海洋科学掘削委員会の議事録(案)を用意しております。委員の皆様に事前に御確認いただき、御意見を反映したものとなっております。万が一、追加で修正等ございましたら、明日、7月5日をめどに事務局まで御連絡をお願いいたします。
 以上でございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 議題に入る前に、第3回目までの振り返りを5分ほどでさせていただこうかと思います。
 1、2、3回の委員の議論の重点を総括し、これをベースに議論したいと思います。
 当初、議論のターゲットはマキシマム10年ということで合意しました。しかし、調べたところ、通常の観測船の運用年数を適用すると、2035年が「ちきゅう」の普通の観測船の耐用年数30年に当たるということで、議論は2035年マキシマムというのが妥当かなと思っていますが、もし問題あったら後で御指摘ください。
 本委員会、実現可能な計画を検討するということになりますが、フィージブルプランを検討するのが、この委員会の目的じゃないかと考えます。昔、科学技術庁で振興調整費という10億とか20億のプログラムがありましたが、私は、それをやりましたが、その前の1年はフィージブルスタディーといって、実際に可能かどうか、効率的にやるならどうしたらいいかという実現可能な計画をシビアに精査するということがありましたが、この委員会は実現可能なことを議論しようということになります。
 すなわち、技術や経費、また、航海の時間などを考慮した現実的な対応を求める。実際の掘削実績を重要視し、仕様、スペックとの乖離については十分に注意しましょうというのが、これまで議論のとき合意されてきた内容と思います。
 これまでの3回の委員会を通じまして、レビューを通じて、新たなミッションが増大して、期待されているというのは皆さん認識されたと思います。まず第1番目が、防災・減災でありますが、単なる掘削ではなくて、観測を伴いながら理論もやってモデリングをやってというマルチプルな研究、そのようにして掘削を生かしながら防災・減災に結びつけましょうという議論があったと思います。
 次、資源に関しましては、レアアース泥とかメタンハイドレートなどもありますが、お金に関しては、ほかの省庁のものも含めて、「ちきゅう」が活躍している。
 また、3番目として話題だけでしたけれども、CO2の地層貯留ということで、現在の環境にも直接役立つような運用も期待されているという話題が出ました。
 あと、重要なのは掘削技術が「ちきゅう」によって非常に開発されてきたということで、そのプラットフォームとしての「ちきゅう」は非常に重要だというのは皆さん共有できたと思います。
 委員会を通じて狭い意味での科学掘削のみならず、総合的な「ちきゅう」の運用を通じての学術振興という言葉を使いますが、学術研究がベースにないとやっぱり駄目ですねという話もあったと思います。
 4番目といたしまして、「ちきゅう」の実績ということに関しましては、何といっても日本唯一の科学掘削船であるということ。人材の育成も含めて、あと技術の向上も含めて、唯一の科学掘削船として、みんな、集中してきたということになります。掘削技術に関しましては、お金は、かなりの部分、これに投入されたと考えています。
 また、科学に関しましては、三陸沖のJFAST、また、下北、沖縄トラフでは非常に高いレベルの科学も達成できたと考えています。1論文当たり2億円ぐらいかかっているかもしれませんが、ほかのJAMSTECの船も、船の研究、多分、1億円以上だと思いますので、立派だと思います。
 南海トラフ掘削の経費は、ほかのプロジェクトの10倍程度かかっていますが、期待が高過ぎたのか、これに届かなかったかなということで、南海トラフになると最後、議論がいつもネガティブになってしまうところがありますので、今日も、それも含めて議論したいと思います。
 ということで、一番大事なことの一つが、マネジメントが問題であるという指摘がありました。
 あと将来の課題について述べます。掘削だけじゃなしに、他分野融合の総合研究をどうやっていくかというのが今後の課題かなと。また、実現可能な計画の事前評価、途中評価、もし、うまくいかなかったときには撤退するのをどうしましょうかというのが話題になったと思います。不十分な場合を反省しての責任体制の改革というのが、これまで議論された内容、共有できたことかと思っています。
 以上、数分でまとめましたが、もしも間違っていることがありましたら御指摘願いたいと思います。どうでしょうか。
【川幡主査】  阪口先生、どうぞ。
【阪口委員】  笹川平和財団の阪口です。皆様、おはようございます。
 今、川幡先生から、当初は向こう5年~10年の議論をしようと考えていましたが、「ちきゅう」の船齢を考えると2035年ぐらいまで
考えてはどうかというお話がありました。現実をよく眺めて、現在、「ちきゅう」の運航費は出ていますが、それに加えて掘削のオペレーションの費用はなかなか捻出することができていないということを考えると、議論をそんな先まで延ばせば、ますます話が発散してしまいます。「ちきゅう」の応援団としては、逆にJAMSTECが、「何だ、ゆっくりやればいいんじゃないか」というような受け止め方をして、現実はますます予算がつかなくなってと。
 というのは、国民も財務省も、なかなか納得するポイントを見つけにくくなればなるほど、余計いろんなことが悪循環になっていくように私は思いますので、たとえ船齢がそこまであるとしても、これまでできていなかったのに、急にできるわけがない。ですから、5年~10年、しっかり何をやるべきなのか、国民の期待にどう応えるべきなのかということを議論した方がよいと考えます。
 要するに月まで行けていない我々が、いきなり火星か木星に行くといっているような話がJAMSTECではよく起こるので、まず、眼前の5年~10年のしっかりとした行動について議論した方が実のある話になるんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
【川幡主査】  基本的には、阪口先生のおっしゃっているのと余り変わらないんですよ。なぜならば、2035年といったけど、2035年に船がもし動いているとして、あのプロジェクト、大体3年かかりますので、10年先に計画を決めて、あと3年は、それを実行に移すような感じですから、実質、10年マキシマムといっていた議論は、運用として3年ぐらい延びると。それで、現実的に、そこが船の切れ目かなというところなんで、今、2035年というのを出したので、実質的には5年~10年という議論に収束させたいと思うんですけど、どうですか。
 先生の言っているのは、2035年だとか、適当に延ばせばいいんだというような議論だと困りますよという趣旨だと思いますが、私の言っているのは、そうじゃなくて、実質、5年~10年できちっとできれば、2035年までもつんじゃないですかということなので、普通、船はといって話すときには、大体、船齢で話すことが多いので、そちらの言葉にちょっと置き換えたということで、意図するところは同じです。
【阪口委員】  了解しました。
【川幡主査】  いいですか。
【阪口委員】  はい。
【川幡主査】  もちろん、そういうふうに議論しますんで。
【川幡主査】  巽先生、お願いします。
【巽委員】  もちろん、川幡さんのまとめに異論はないんですけど、ただ一つ、我々がよく注意をしておかないといけないなと自戒の念も込めて確認したいんですけど、5年~10年の計画を立てるというのは非常に結構なんですが、決して、それが近視眼的な地球惑星科学、若しくは掘削科学の今後を見るのではなくて、長期的に日本がいかに世界の中でリードしていくかということを踏まえた上で、5年~10年の具体的な計画を立てるという理解でよろしいですよね?
【川幡主査】  そう思います。
【巽委員】  ありがとうございます。
【川幡主査】  阪口先生も同じだと思います。ですね、先生?(阪口委員:肯首)
【川幡主査】  ということで、趣旨は今述べましたので、御理解いただけたと思います。議事録にもきちっと残しますので、今の2つの点、きちっと議論して、有効に生かす道を探りましょうと。そのときに、近視眼的にならずに、10年ぐらいだと中期的というんですかね、それを踏まえて将来、ロングタームの発展も見据えた計画がフィジブルかどうかというのを議論しましょうという委員会であると、そういう位置づけにしたいと思います。よろしいでしょうか。
 じゃあ、次に行きたいと思います。それでは、議題(1)海洋科学掘削の現状と課題についてに入ります。
 まず、「ちきゅう」に関し海溝型地震発生帯掘削に関する現状と課題、マントル掘削に関する現状と課題について、続いて「かいめい」の掘削関連設備に関する現状と課題について、それぞれJAMSTECの倉本理事から御説明いただきます。
 まずは「ちきゅう」に関連の話題について、倉本理事、どうぞよろしくお願いいたします。
【倉本理事】  おはようございます。JAMSTECの倉本です。よろしくお願いいたします。それでは、画面共有させていただきます。
 それでは、海洋科学掘削に係る現状と課題ということで、今日は、まず南海掘削のことを御説明させていただきます。その後、マントル掘削に関する現状と課題、その次に、それら2つも含めて、今後の「ちきゅう」を用いた海洋掘削ということで、御説明させていただきます。
 それから、「ちきゅう」以外のファシリティーとして「かいめい」という調査船がございますけども、それの掘削関連設備に関する状況についても別途、御紹介させていただきます。
 まず、「ちきゅう」の南海掘削に関しての部分を最初に説明させていただきます。これまでの南海掘削に関しては、プロポーザルが4つのステージに分かれておりまして、それを適宜実施してまいりました。掘削航海のところにExp.314から始まって358まで、現在行われています。
 ステージが1、2、3、4と分かれておりますけれども、段階的にステージ1では、比較的浅部の付加体の研究、そして広域的な応力場等々の研究を行っております。
 その次、ステージ2では、初めてのライザー掘削も試みましたが、沈み込み帯に持ち込まれる堆積物の基盤岩までの連続コアの採取等々を行っております。それから、Cの2番、6番、10番というサイトでは長期孔内観測装置の設置も行っております。
 ステージ3においては、ここは未達成なんですが、358という最後の航海におきまして、5,200メートル付近までの巨大分岐断層、プレート境界断層部分までの掘削ということを試みましたけども、残念ながら3,262.5メートルまで掘進し、オペレーションは、その時点で断念しております。
 ステージ4というのは、そこの一番深い孔の中に観測装置を入れるということと、そのほかの孔内観測も設置するということで、これは一部、既にDONETに接続した孔内観測装置も現在運用しておりますけども、一部が着手されているという状況でございます。
 その358という航海で一番深い孔を開けるというミッションでございましたけども、それ自身は、平成26年度に海洋開発分科会深海掘削委員会で御説明いたしまして、そのときに3つの掘削案を提案いたしました。ここにA、B、Cと出ている絵のとおりなんですけども、このときには13通りの掘削案をつくって、その中で絞り込んで3提案を御紹介したということでございます。
 結局としては、ケースAという案を採択いたしまして、海洋機構として承認して実施いたしました。結果としては、ここに書いてありますけども、一言で申しますと、掘削編成を変えるたびに元の掘削孔に戻れない等の状況が発生し、目標深度への到達を断念するという結果になりました。代替サイトにおいてもあらかじめ検討しておりましたので、そのほかのライザーレスの掘削を行っております。
 このA、B、Cの違いはどういうものかというと、ケーシングの枚数が違う、それから、作業リスクとしては高いのですが、全体的に日数が少ない、つまり、コストが一番かからないという中で、リスクは高いですけども、A案でできるのではないかということを検討し、実施した次第であります。
 結果としては、どういうふうになったのかというと、何度か説明してはいると思いますけども、掘削を最終的に、その前までに作っていた孔から横にサイドトラッキングをいたしまして、孔を掘り進むという計画でございましたけども、同じ孔に戻れない、あるいは掘進速度が上がらないということが発生し、再度、また上部からもサイドトラッキングで行いましたけども、最終的には掘削編成を事故で落としてしまうということがあって、断念したという結果でございます。
 こういった状況で、今後もし行うとしたらどういうふうに技術的に克服できるのかということを検討いたしました。ここに簡単な絵で表してありますけれども、付加体の中は褶曲が非常に激しく、急傾斜の地層であり、かつ断層等もあり、非常にフラジャイルな地質構造になっていることから、これらを地層崩壊を起こさないうちに保護していくということで、ケーシングの枚数を増やしていくということを検討いたしています。
 例えばということで、ケーシング枚数の増により各セクションを短くして崩壊リスクを抑制する、あるいは地層の泥水の浸透を軽減させるであるとか、現在、そういった可能な技術が様々ありますので、それらを適用して、このような掘削計画で、海底からもう一度掘り直すということで可能ではないかというふうに考えております。
 一方、技術的な点ではなくて、今度はマネジメントがどうだったか。先ほど川幡主査からもありましたように、マネジメントに関しては、この航海、358次航海が終わった後に外部評価委員会を立ち上げて評価していただき、助言をいただきました。
 これは、何回か委員会を重ねる中で、職員へのアンケートや幹部へのヒアリング等々も実施し、結論としては、マネジメント体制が不備であったということ、予算構造上の制約、それから人材不足ということが指摘されております。
 その委員会報告の要約をここに書いてありますけども、まずマネジメント体制の不備に関しては、全体としてJAMSTEC内において、誰がどういった責任を持って意思決定をしているか曖昧であった。重要な決定についても、どのような事象に関して役員の判断を仰ぐ必要があったかということが明確にされていなかったという指摘を受けています。
 それから、科学目的を加味した計画立案から安全検討、財源の獲得、予算管理まで全て現場部門であるCDEX(地球深部探査センター)が行っているという点。それから、CDEX以外の部署や立場から、掘削計画に関するレビューや審査を行う体制がなかったと指摘されております。
 それから、プロジェクトの明確な定義がされていなかったということ。それから、予算規模が大きく挑戦的な掘削を実施することから、プロジェクトとしての認識、適切な体制を事前に構築して実施することが望ましかったというふうに言われております。
 それから、外部委員会からの意見等をどのように反映させるか、事前に明確になっていなかったというようなことがマネジメント体制の不備として指摘されております。
 それから、予算構造上の制約といたしましては、文科省及びJAMSTECが国際にコミットした科学掘削計画に対して、国からの十分な予算措置がされず、CDEXが財源確保を強いられる予算構造は、計画立案に当たり大きな制約であったということ。
 それから、もう一つは、中期計画をまたがっての予算繰越しが認められない制約を克服することは重要な役割であったというふうに指摘されております。
 3つ目は、人材不足でありますけれども、掘削技術者の多くを出向者に頼っており、その結果、技術や知識が限られた個人にのみ蓄積され、技術継承に支障を来す可能性があるというふうに指摘されております。
 その助言を受けて、まず対応ですけども、プロジェクトを明確に位置づけるということ、それから、プロジェクト遂行に当たり意思決定レベル、意思決定に使用するフォーマット、報告方法・時期などを明確にする。
 それから、科学目標、技術リスク、マネジメントリスク、コスト評価、スケジュール管理などを十分に事前に検討する。
 それから、JAMSTECの意思決定に外部委員会の意見をどのように用いるのかを明確にする。
 推定されるコストやリスクに対して、プロジェクトの実施が妥当か否かを現場部門以外からも客観的に評価する体制を構築する。
 それから、プロジェクト実施中はマイルストーン審査を実施し、現場部門以外の他部署の立場や意見も踏まえて、役員によるプロジェクトの中断、中止といった計画変更判断が行える体制を構築するという助言を受けております。
 上記のとおり、意思決定レベルや方法を明確にし、現場部門以外の評価体制を構築、マイルストーンごとの審査をすることにより、前のめりにならず、適切な撤退判断等も含めた客観的な意思決定が行える体制を構築することが不可欠と認識しております。
 最後、ちょっと読み上げになりましたけども、以上でございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。海溝型地震発生帯掘削に関する発表をしていただきました。ここでちょっと区切って、事実確認の質疑応答を行いたいと思います。
 今後の方向性については、委員会の検討項目で最後に意見交換していただきますので、事実確認のみの質疑応答を行いたいと思います。いかがでしょうか。
 ちょっと質問していいですか、テクニカルに。
【倉本理事】  はい。
【川幡主査】  ここの委員会の要約というところがありますね。次のページに、前述の議論に基づき、今後に向け委員会より下記の助言を受けたとありますが、主語というか、委員会が助言をしたと書いてある項目を、ここに書いたんですか。
【倉本理事】  ええ。
【川幡主査】  今日の御発言内容に関しては、まず倉本理事が責任者なんですか。
【倉本理事】  当時のレビューを行った委員会の結果は理事長に御報告をいたしております。
【川幡主査】  この委員会というのは、前の委員会の議事なんですか。
【倉本理事】  2019年にオペレーションが終わった後の2019年に評価委員会、助言委員会を行っております。
【川幡主査】  いやいや、(3)のところの委員会議論の要約と書いてあるところは、その委員会のことを言っている?
【倉本理事】  はい。
【川幡主査】  次の委員会というのは、どの委員会なんですか。次のページの委員会。
【倉本理事】  同じ委員会でございます。
【川幡主査】  あっ、同じ委員会?
【倉本理事】  ええ。
【川幡主査】  まあ、いいです。じゃあ、その委員会で述べられたことですけど、JAMSTECは、これに対してどう考えたんですかというのが質問なんですけど。
 それで、具体的にはマネジメントの不備ですねと。これ分かりやすい文章になっているので、誰がどういった責任を持って意思決定したのか曖昧であったということについては、思っているんですか、それとも思っていないのかなというのが質問です。
【倉本理事】  当時のマネジメントは、運用していた地球深部探査センターから適宜、役員への報告、理事長の判断という通常のラインで行っておりました。通常のラインといったのは、南海掘削の遂行のために新たにつくったマネジメントの組織というのはなくて、通常の機構の中の組織でやっていた。
 大きなプロジェクトの中で、そこのラインが非常に曖昧な状態になって、どういうときに報告し、どういうときに誰がどのような責任で判断するのかというのは、オペレーションは現場でやっていましたけども、大きな判断を求める段階においては非常に不明確になっていたということであります。
【川幡主査】  それに対して、どうにかしようかなとは今考えているんですか。
【倉本理事】  もちろん考えております。
【川幡主査】  それは、どんな感じにしようかなというアイデアなんでしょうか。
【倉本理事】  まだお見せできるようなものが出来上がっていないというのが事実でございますけども、まず、どういうプロジェクトを認定するのか。基本的には巨額、大きな予算をかけているものということになるだろうというふうに予想しております。その中で予算の承認、技術の承認をしていく。それは一例ですけども、そういった内部、あるいは外部の委員の先生も含めた承認をするゲートウエーを幾つか設けてやっていくべきだろうというふうに。
【川幡主査】  将来的には、そういうのをつくってというのが答えですね?
【倉本理事】  はい。
【川幡主査】  次の2番目、CDEX以外の部署や立場から、掘削計画に対するレビュー、審査を行う体制がなかったですか。それは事実関係?
【倉本理事】  掘削の技術的なレビューをしていただくのは、国内、国際を含めた委員会をつくっておりましたけども、基本的にはCDEXの中での委員会という位置づけになりますので、一言にまとめてしまえばCDEXの中というふうに。
【川幡主査】  ああ。じゃ、これに対する将来的な展望はどんな感じですか。
【倉本理事】  CDEXというのは、今、その組織は存在しませんけども、「ちきゅう」を運用していく立場の者と全体をマネジメントしていく立場の者はやっぱり違うべきであるというふうに考えておりまして、ちょっと書いてありますけど、やっている本人は当時、前のめり状態になってしまう、どうしてもできるだろうという判断の上で判断してきました。
 それに対して全体を見渡しながら、行く、あるいは行かないという判断も含めてできる立場の委員会なりが必要であるというふうに考えています。
【川幡主査】  ちょっとしつこく質問して申し訳なかったけど、先ほど5分で御紹介した3回の結果というのは期待されているものも多いというので合意しているけど、一方で、何といってもマネジメントだという主要な論点なので、ちょっと伺いました。
【川幡主査】  阪口先生、お願いします。
【阪口委員】  阪口です。予算措置のところの記載がちょっとおかしいんじゃないかと思うのは、JAMSTECも、文部科学省もしかるべき措置をしてくれなかったので、CDEXが独自に奔走しなきゃいけなかったというような記載があったんです。しかし、CDEXはJAMSTECなので、JAMSTECと文科省が予算措置をしなかったからCDEXが独自に奔走しなきゃいけなかったという記載は矛盾していると僕は思うんですけれども、CDEXがJAMSTECじゃないんだったら、その記載はオーケーかも分からないですけども、そこはどうですか。
【倉本理事】  もちろんCDEXはJAMSTECの一員でしたので、そういう意味では適切でないかもしれませんけども、ここでのレビューのときには、あえてそこを分けて、委員の先生方は理解して。別組織という意味ではなくて、CDEXという中の一部の人間で、そこを奔走していたんではないかということです。
【阪口委員】  でも、おかしいでしょう。CDEXが奔走しても、予算措置をするかしないかというのはJAMSTEC本体と文部科学省が決めることであって、別途、CDEXの個人が個人のつてで民間から予算を措置するということを期待していたということになっちゃいますよ、その記載だと。
【倉本理事】  正確に申し上げますと外部資金のことであります。
【阪口委員】  外部資金だとしても、予算の受け取り元はJAMSTECですから、ちょっとその記載は、文部科学省に対しても、それから予算措置する財務省に対しても誤解を招く記載だと僕は思いますので、修正していただきたいと思います。
【倉本理事】  はい。
【阪口委員】  それから、もう一点が、正直に申し上げますと、さっき役員等々の意思決定が云々という話も川幡先生からの質問の中にもありましたけども、当時は役員4人中2人がCDEX上がり、つまり、元CDEXのセンター長だったわけですね。今も役員のうち1名がCDEXの元センター長ですよね。
 そうすると、役員の判断というのは、著しくそこで狂うわけで、しかも、技術者ではなく地質学者ですから、そこでの役員の判断ができなくなるというのはもう目に見えていたと。つまり、役員の構成がCDEX上がりで占拠されていたということが役員の判断のミスにつながったということは明々白々の話ですから、今後の対策、先ほど今、対策を取っておりますという話がありましたけども、やっぱり「ちきゅう」の判断云々に対して元CDEXのセンター長が絡んでいるということは、判断がゆがむ可能性があったというようにきちんと捉えないと、それが通常のラインでしたと言われても、あれは異常なラインだったと私は思っていますので、ちょっと付け加えさせていただきます。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。倉本理事の方から返答をお願いします。
【倉本理事】  当時の役員の方が、そういう経歴をお持ちだったということは、そのとおりかと思います。
 それから、現在の役員、多分、私のことだと思いますけれども、地球深部探査センター長、それからMarE3の部門長を経験させていただきました。それで、今、理事を拝命しております。
 当時の方の心の中までは分かりませんけども、現在の役員の一人としての私としては、そこにバイアスがかかることなく、JAMSTEC全体を見ながらマネージしたいというふうに思っております。まだ不備なところも多々ありますけども、単に過去にとらわれるのではなくて、全体を見る、今の立場を全うしていきたいというふうに思っております。
 以上です。
【川幡主査】  本件については、また将来の方向というところで議論していきたいと思いますが、ほかに何かテクニカルな質問などありましたら受けたいと思います。
【川幡主査】  小原先生、お願いします。
【小原委員】  質問ということで、発表スライドの「委員会議論の要約」という中の2番の予算構造上の制約、それの2ポツ目が中期計画をまたがっての予算繰越しが認められない制約を克服することは重要な役割であったと、これの意味がよく分からなかったんですけれど。これは、誰の役割だったのかということと、それから、その役割を果たしたのか果たさなかったのか、何かその辺りの意味がちょっとよく分かりませんでした。
【川幡主査】  倉本理事、お願いします。
【倉本理事】  ここの意味は、2018年から2019年にかけて行ったオペレーション、実は2018年度で海洋機構の第3期中期計画が終了する年度でもありました。それから、第3期から第4期に移るに当たっての予算の繰越しということは会計法上認められていないということで、もしやるんであれば、2018年度以内に可能であった予算を投入するという制約がありました。
 それを政府から措置されている予算、それから外部資金も含めて358航海というのが実施できるだろうということで実施したわけですけども、2018年度に全てを終えないといけないというふうに制約があると思っておりまして、それは、どのように解決するのかというのはなかなか難しいところでありますけども、現在のJAMSTECの立場といたしましては、もちろん法律には触れないことが大前提ですけども、こういった長期の、あるいは大型の計画を実施するに当たっての予算の執行の方法というのは、新たに克服できる案をつくらなくてはいけないというふうに、現在の役員では情報を共有しているところでございます。
【川幡主査】  よろしいですか。
【小原委員】  重要な役割というか、その役割を果たすべきなのはJAMSTECの執行部という意味ですか。
【倉本理事】  はい。
【小原委員】  分かりました。
【川幡主査】  鈴木先生、お願いします。
【鈴木委員】  おはようございます。JAXAの鈴木です。すごく基本的なことなんですけど、今、議論に上がっていた予算、マネジメントにはある種、問題があったということなんですが、技術的には特になかったということで、予算とマネジメントがある程度うまくいけば、技術的には、そこで到達できた可能性が高いということですか。
【川幡主査】  倉本理事、お願いします。
【倉本理事】  技術的には、いろいろ事前に準備していたこともありますけども、その準備していたこと以上に急激かつやや大規模に地層の崩壊が起こっていたということがあります。それは、事前に予想していた以上でしたので、最終的に対処できなかったということですので、もう少し準備をまた違う観点から、新しい案もこうだったらできるかもしれないということを簡単に御紹介させていただきましたけども、それも含めてやれば技術的には克服できるだろうというふうに考えています。
【川幡主査】  いいですか。
【鈴木委員】  分かりました。ありがとうございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。今のJAMSTECからの発表の最後のところ、客観的な意思決定が行える体制を構築することが不可欠と認識しているというお言葉がありましたので、これについてはまた将来の方向性というところで具体的な内容について議論できたらと思います。
 
【川幡主査】  巽先生、どうぞ。
【巽委員】  サイエンスとの関連で1つ質問させてください。掘削の計画は、技術的なことも含めて変わっていく中で、全体のサイエンスとしての科学の目的、目標、それから、それを達成するための方策などの議論というのは、どれぐらいのコミュニティーと組んでなされていたでしょう。
 もちろん、これ、プロジェクトマネジメントチームでしたっけ、プロポーネントの間でつくられていたのは知っていますけども、それを超えて、例えばほかの地震学の専門家、それからJAMSTEC内外の専門家との連携ということはあったんでしょうか、検討というものはあったんでしょうか。
【川幡主査】  倉本理事、お願いします。
【倉本理事】  プロポーザルができる前からですから、あるいは「ちきゅう」が建造される前から巨大地震発生帯に関する議論は行われておりまして、最終的に南海トラフでの掘削が世界で一番科学的に意味のある場所だというふうに集約されました。
 プロポーザルが提出されて、それは国際プロポーザルですけども、何度も国際会議をやりながら、最終的に実装する段階になってからは、プロジェクトコーディネーションチームといいますけども、プロポーネントの研究者の方々、それから実際に運用するCDEX、それから民間の方々も含めたチームをつくって、実装するようにしてまいりました。
 研究者としては、国内では様々な地震学、それまで掘削に余り関わらなかった方々にも御相談させていただきまして、当時の東大地震研究所の平田所長等々にも何回も御相談させていただいておりました。
【川幡主査】  巽先生、それでいいですか。
【巽委員】  事実は分かりました。
【川幡主査】  ここはテクニカルな質疑応答ということになっていますが、小原先生、この分野でレビューしていただきましたけれども、マルチプルな研究という意味で、今までやってきた南海トラフと将来的な南海トラフに期待する内容、その方向性というのは今後少し変わっていくような感じでしょうか。どうでしょうか、ちょっと。
【小原委員】  防災・減災の観点ですか?それとも地震学の観点でしょうか?
【川幡主査】  地震学もそうだし、防災も含めて、もしうまく言えたらお願いします。
【小原委員】  ちょっと今すぐには難しいですけど、掘削に伴う様々なサンプルの取得であるとか、それから、特に私の方で強調させていただいたのは、掘削を用いた長期孔内観測、それは地震の発生予測等を含めて重要なデータの源泉になるので、そういった意味で南海トラフにおける掘削というのは今後も必要であるというふうには考えています。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。また将来の方向性のところで議論したいと思います。どうもありがとうございました。
【川幡主査】  巽先生、お願いします。
【巽委員】  すみません、今の小原さんの答えも含めてなんですが、恐らくこれ、川幡さんがおっしゃったように今後議論されるんでしょうけども、今の小原さんの非常に一般的な答えの先にある、実際、掘削として何が必要であって、何が欠落したら、今後の地震学、もしくは防災・減災の手だてが遅れるのかというところまで含めて議論しないといけないというふうに思います。
 私、先ほど倉本さんに御質問したのは、途中で変更されているときに、そういうサイエンスのバックグラウンドが十分に議論されたかということであったんです。ですから、今後の議論で、ぜひ、その辺りを議論できればというふうに思いますので、川幡さん、よろしくお願いします。
【川幡主査】  今、巽先生の言われたことは、マネジメントも含めて、今までのやり方のほかに委員会をつくるとか、そういうのも含めて検討した方がいいですよとかいうのも含んでいるんですか。
【巽委員】  まあ、そういうことも含んでいますけど、要するに、これから南海トラフの掘削を行うときに、何がどこまで必要なのかということをきちっと明らかにすることが一番です。それをするためには、どういうふうな委員会組織が必要なのかということは出てくると思います。
 以上です。
【川幡主査】  巽先生の指摘は、学問の部分と、もう一つはどこが責任持つか、責任を持って、そういうデシジョンしたりとか、検討したりするかというのをしますかということと関連していると思うんですけれど、ちょっと話がそちらに行きましたので、倉本理事からコメントがあったらお願いします。
【倉本理事】  南海掘削自身は、非常に長い時間をかけてやってまいりました。当時の最初のプロポーザル以降、掘削をして初めて分かってきたこと。それに加えて、東北の巨大地震が起こったことを含めて、巨大津波に関しては、東北の地震、それから南海の地震、過去の履歴がありますので、沈み込み帯近くでの挙動が非常に大切であるということが指摘され、国の中央防災会議にも報告され、大きなインパクトがあったと思います。
 それは一例ですけども、科学が同じ目的であるものもあるし、どんどん変わっていく部分もある。それをコミュニティーの皆さんと議論、国内、国際の皆さんと議論し、何が先端的で何が重要なのかということをいろいろ御議論いただき、それを受けて技術的な可能性、そして、予算も含めてですけども、実行可能であると。科学的、社会的要請として重要であるということを最終的に判断させていただきまして、実施していくということになるかと思っております。
 議論のリーダーシップは、もちろん海洋機構も貢献させていただきますけども、コミュニティーの皆様、あるいは文部科学省の皆様とのこれからの御相談というふうに思っております。
【川幡主査】  阪口先生、お願いします。
【阪口委員】  今の議論でちょっと小原先生に質問なんですけども、ここにいる誰もが掘らない方がいいとか、掘らない方が科学は進むなんていうことは絶対誰も考えていない、これは100%正しいことだと思う。
 でも、例えばプレート境界断層まで掘らなければならないのか、それともそこまで掘らなくても、掘れる範囲のところで多数の長期孔内観測機を設置して、地下の動きを把握していく方が──方がというのはおかしいんですけども、掘れるか掘れないかというときに掘れないということを加味すると、一本掘れないことを徹底的に追求していく方が地震の研究にとってよいのか。それとも、ある程度掘れるところまで掘って、そこに長期孔内観測機をきっちりつけて調べていく方がよいのか。
 今のところ、5年~10年というスケールで考えたときにはどっちが有利なのかをちょっと教えていただきたいです。
【川幡主査】  小原先生、お願いします。
【小原委員】  基本的に目的次第ですね。長期孔内観測装置を設置して、それでモニタリングをきちっと行うという意味でいえば、阪口委員がおっしゃるように、程々のところでとどめて、そこで安定した観測を長期間行う方が目的にかなりかなうかと思います。
 一方では、JFASTで行っているように、プレート境界まで掘削してコアサンプルを取って、それで摩擦特性を解明するという場合については、当然、そこまで掘る必要はあります。ですので目的次第ですね。
【阪口委員】  ありがとうございました。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
【阪口委員】  なので、巽先生は、科学的な目的を明確にせいとおっしゃっているわけですよね。
【川幡主査】  巽先生、いかがですか。
【巽委員】  そうです。
【阪口委員】  議論が成立したと思います。ありがとうございました。
【川幡主査】  最後に、倉本理事、そういうのはどこで議論すればいいんですかね。というか、今まで議論する場はあったんですか。それとも、将来的には、今の議論を踏まえて、新たにきちっとする委員会を設置するとかということでしょうか。ちょっとその辺、一言でいいので御説明ください。
【倉本理事】  きっかけはIODPという提案に基づいておりますので、国際的に議論されています。それは仮説検証型のものであるので、プレート境界、特に巨大地震発生領域がどこにあって、そこがどういうプロパティを持っているのか、それが日々どういう動きをしているのかというようなことが仮説が述べられて、それを検証するための掘削だと。
 それが国際的になされていたわけですけども、同時にJ-DESCの中では、国内の防災・減災の問題意識もあり、議論されていたと。それが多角的にワークショップやシンポジウムが開かれて、プロポーザルがポリッシュアップされていったという経緯がありました。
 今後に関しては、やはり国内・国際のコミュニティーの中での議論、まさに、何がこれから大切なのか、目的は何なのかというのは、巽委員や小原委員に指摘されたとおりだというふうに思います。
【川幡主査】  聞きたかったのは、どうやって決めるんですかという。それなんですけど。
【倉本理事】  議論自体は様々な場があると思います。1つに限る必要は全然ないと思っています。それが、改めてプロポーザルとして提案されれば、それをIODPとして受け止めていくということであります。
【川幡主査】  デシジョンはどこでされるのかというのが、前回かその前のときに阪口委員が、責任はどこが持つんですかとかいう質問を具体的な例として今、したんですけど、どこで決めるんですか。
【倉本理事】  そこに実際に掘削をするかしないかというところは、最終的にはJAMSTEC理事長となります。「ちきゅう」に関してはですね。
【川幡主査】  阪口先生、それでいいですか。
【阪口委員】  ですから私はさっき、通常のラインで決められていたとかって言っていましたけども、JAMSTECの判断ポイントがずれると、最終的にこの結果に至るというか、別にそれでとがめて逮捕しろとか言っているわけじゃないですけども、でも、そこに責任があったんですよ。それはもう確かだったので、なのでCDEX担当理事も、それからその上の理事長も全部、CDEXのラインにそのまま乗っていた人がいると判断を誤ったという、それはもう一つ大きなことなので、今、倉本さんが自らおっしゃられた、掘るか掘らないかを決めるのは理事長だったということが、それを物語っていると思います。
【倉本理事】  はい。じゃあ、また将来のところで議論することにしたいと思います。
 野田先生、お願いします。
【野田委員】  京大防災研の野田です。資料の49ページ目の客観的な意思決定というところで、これの内容は後で議論するとおっしゃったんですけれども、事実確認として、これはどういう意味でここに使われているのかを教えていただきたいと思います。
 というのは、意思決定が客観的というのはちょっとよく分からなくて、例えば客観的な事実とかであると、判断の責任者はいないという様な事ですけれども、ここでいう客観的意思決定というのはそういう意味で使われているのか、ちょっと分からなかったので教えていただきたいなと。よろしくお願いします。
【川幡主査】  倉本理事、短くお願いします。
【倉本理事】  ちょっと今よく聞こえなかったんですけど。申し訳ない。
【川幡主査】  もう1回言ってもらえますか。何ページ目かということも併せてお願いします。
【野田委員】  49ページ目に、「客観的な意思決定が行える体制を構築することが不可欠と認識している」と書いてありまして、この「客観的な意思決定」という言葉の意味を、どういう意味でここで使われておられるのかお教えください。
【倉本理事】  実行者だけではなくて内部、JAMSTEC内部もそうですし、外部の委員会みたいな形で外部から客観的な御意見をいただくということも重要だというふうに考えています。
【野田委員】  分かりました。ありがとうございます。
【川幡主査】  外部も入れるということですね。
 石井先生、お願いします。
【石井委員】  ありがとうございます。おはようございます。コメントを1つだけ。
 プロジェクトの目的等に関し、ご議論されているところはまさにそのとおりかと思います。
 一方で、目を向けなきゃいけないのは現場の事を忘れてはいけないと考えます。現場に、しっかりと伝えることが重要です。いわゆるプロジェクトマネジメントチームは、本社にいる、陸上にいる人たちであり、そのチームの意見が確実にかつ正確に現場の責任者に伝わり、かつ掘削する人たち、掘削を支援するサービスカンパニーの人たちにしっかりと伝わっていかないと、いろんなトラブルの原因にもつながっていきますので、その橋渡しをする現場の長の方は必ずこのマネジメントの会議に出て、できる、できないといったことも含め現場レベルの声を言えるような組織立てが必要と考えます。
 以上です。
【川幡主査】  有益なコメント、どうもありがとうございます。
 アクティブマージンのこの掘削は一番大きな話題でもありますので、時間を費やしてしまいましたが、有意義な議論ありがとうございます。
 では、次に進みたいと思います。では、その次のところをお願いします。マントルですね。マントル掘削に関する現状と課題、お願いします。
【倉本理事】  それでは、マントル掘削に関する現状と課題について、引き続き倉本のほうから御報告させていただきます。
 それでは、マントル掘削の現状について御報告させていただきます。
 まず出だしとしては、深海地球ドリリング計画評価報告書というのが平成10年12月に出されています。これは「ちきゅう」の建造をする前に、地球深部探査船を開発して、中略ですけども、ここに人類未踏のマントルに到達し、地殻深部ダイナミクスを解明すると。そのためにこういう能力を持った船が必要であるというような報告がなされています。
 そこから、平成18年には中間報告書というものが出ておりまして、モホロビチッチ不連続面を貫く「ちきゅう」の試験運用及び国際運用を通じて、機器開発・運用技術の検討をしていくことで、水深4,000メートル級での大水深の掘削が実現できるように取り組むべきであるというふうに言われています。
 御存じのように「ちきゅう」は、現在もそうですけれども、水深2,500メートルまでの対応のライザー掘削、それから7,000メートル級まで、後でまた御紹介しますけども、掘削が可能というような技術の現状になっておりまして、4,000メートル水深での二重管によるライザー掘削というようなものは現在できない状況であります。
 サイエンス面といたしましては、例えば令和3年の9月にJ-DESCから提案されている要望書には、ここに書いてある5つの大きな大項目として挙げられております。
 このうち丸4のところで、海洋近くを貫通し、マントルまでサンプルリターンを実現し、人類と生命と地球の共生社会の創造に貢献することというふうに触れられております。
 マントル掘削に関しては、IODPにパイロット掘削孔をまず実施すべきということで、2,500メートルまでのライザーレス掘削のプロポーザルがIODPに提出されております。これも、リードプロポーネントは日本人の研究者の方がやられています。
 一方、技術面は今どうなっているのかというと、マントル掘削を将来的に目指す目標として、現在の状況に関して、第三者、外部の委員の方にレビューをしていただくということを実施いたしました。
 レビューに当たっては、この4つの項目、まず水深が深いということ。それから掘削深度も深い。それから、モホ面付近は高温であるということが予想されますので、高温対応。それから、掘削候補地点、特に地質の物性が不明であるということにどういうふうに対応していくのかというような観点でレビューを行っていただきました。
 技術的なレビューでありますので、その指標としてTRL、Technology Resilience Levelというのを導入いたしまして、これは今回、我々は環境省で出されている指標を基にレビューを行っていただきました。
 大水深・大深度、それから高温、それから詳細が不明な地質、その4つに対してどういうアプローチがあって、それが今どういう状態にあるのかというのを一枚にまとめさせていただきました。
 大水深に当たっては3つに絞り込まれておりまして、軽量ライザーの中でCFRPを使ったもの、それから違う素材としてチタン合金・アルミ合金を使ったもの、2つあります。それから小口径のライザーというものもあります。
 CFRPライザーは、2019年まで技術開発を続けてまいりましたけども、CFRP自身を扱うメーカーが撤退ということで、2019年度で、今、中止しております。
 それから真ん中の軽量ライザーのチタン合金・アルミ合金ですけども、非常に技術的に高難易度で、材料費が高いということで2012年度で中止しております。
 小径ライザーに関しては、今、市場にアベイラブルな状態になっておりまして、現在SIP第2期のほうで実証試験中というふうに伺っております。今後の動向次第では、こういったものも実際に4,000メートル級の大水深でも使える可能性があるというふうに考えております。
 それから大深度掘削に関しては、東北沖の地震のときに使った8,000メートル級までのドリルパイプというのは「ちきゅう」でも実際に使用いたしましたので、その8,000メートル分までのドリルパイプは実証されているというふうに考えております。
 しかし、1万2,000メートルまでのドリルパイプという意味では、まだTRL6レベルというふうに考えておりますけども、近年、非常にいい製品が確認されてきていますので、また実装をするに当たっては非常に近いレベルまで来ているのではないかというふうに考えております。
 それから高温対応として、一つは泥水の問題がありますけども、これは泥水会社に確認し、市場でアベイラブルであるというふうに考えております。
 それからコアリングに関してですけども、タービン方式というものが現在もまだ開発途中でありまして、方法としては、幾つかプロトタイプをつくって実験を行っております。TRLレベルとしては5レベルということで、もう少し、まだ時間がかかるかもしれませんけども、引き続き実験・検証を行っていくというレベルにあるというふうに考えております。
 技術レビューをしていただいた委員会の提言の総括でありますけども、基本的には大水深、4,000メートル対応のライザーシステムと、1万2,000メートル級のドリルパイプの2つが大きな課題であり、それを優先的に検討する必要があるというふうに指摘されております。
 この課題を乗り越えるためには、相応の準備や開発のための期間と費用が必要であるということで、5年から10年ぐらいを超える期間で、少なくとも60億円程度の開発費が必要なのではないかというふうに試算されております。
 さらに、個々の技術課題への対応に加えて、大規模プロジェクトを推進するためにはマイルストーンを設定し、ステップ・バイ・ステップで進める適切なプロジェクトマネジメントが重要であるというふうに、ここでもプロジェクトマネジメントの重要性が指摘されております。
 また、これまで誰も到達したことのない大深度掘削孔の状態が不明でありますので、代表的な海洋地殻のパイロットホールを掘削することにより、掘削地点の地質や物性、掘削パフォーマンス等を確認しながら進める必要があるというふうに指摘されています。
 こうした結果を踏まえて、「ちきゅう」の船齢、世界的な情勢、JAMSTECをはじめとした国立研究開発法人及び政府全体の科学技術予算の関連などを総合的に勘案し、しっかりと検討していきたいというふうに考えております。
 以上でございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 次のスライドも続けてお願いします。
【倉本理事】  それでは、今後の「ちきゅう」を用いた海洋掘削についてということでありますけども、これまでの掘削に要した経費ということで、運営費交付金のレベルとしてどのぐらいの経費をかけたのかということをひとまとめに表示させていただいております。
 下北半島東方沖掘削、これはライザーで掘削をしておりますけども、おおよそ21億円。東北沖地震のところで約9億円。室戸沖限界生命圏掘削調査で、ライザーレスですけども12億円。南海掘削に関してはライザーレス、全部で16地点行って120億円。それから地震発生帯、ライザー2地点で140億円。それからゆっくりすべりに関しては、まだこれからの部分もありますけども、1地点当たりで11億円程度というふうに考えております。
 それから、これまで行ってきた掘削に必要だった技術開発費、様々な技術開発を行ってまいりましたけども、強潮流下で運用するためのライザーフェアリング、大水深・大深度での掘削技術(特殊環境に対応する技術開発や運用技術、軽量ライザーシステム等)、長期孔内観測システムの開発等々で、全部で約75億円程度、ここまでに国費を費やしてまいりました。
 これから必要な、一つ議論が既に今日されていますけども、防災・減災への貢献ということで、本委員会の第2回、第3回も含めて、様々重要性を御指摘いただいているところでございます。
 JAMSTECでは、既に実績のある南海トラフ、及び比較的浅部の掘削、及び孔内観測装置の設置・観測点の面的展開を令和7年度まで計画をしておりまして、予算要求も含めて、かつ中に観測装置の開発も含めて、現在実施中であります。これは引き続き継続させていただいて、7年度までに実施できればというふうに考えております。
 それから、資源に関する貢献ですけども、主にSIPという予算を使いながらやらせていただいておりますけれども、レアアース泥の回収、それから、今FSが始まって、来年度、予定ですけども新たなSIPの中ではCCSの提案がなされているところでございます。
 レアアースの回収は6,000メートル級の水深からの泥の回収ですけども、基本的には小口径のライザーを使った二重管方式を計画されているというふうに、SIPの石井PDのほうからも報告があったというふうに記憶しております。引き続き、大水深での掘削技術の向上も含めて、貢献させていただきたいというふうに思っております。
 それからメタンハイドレートに関しては、経済産業省からの受託ということで、2010年には世界で初めての海洋生産試験、洋上での生産試験に成功しております。産出試験に成功しておりますので、それも含めて引き続き貢献させていただきたいというふうに思っております。
 我が国の経済安全保障にとって重要である海洋資源の開発に関し、我が国のファシリティーや人材をもって貢献することを求められているというふうに理解しております。
 これは最後のスライドになります。この施策に当たって、科学的・社会的意義と「ちきゅう」の船齢、予算などの状況を総合的に勘案し、実現可能性を考えていかなければならない。
 これは本委員会で、今日の冒頭にも主査からの御指摘がありましたとおり、現実的なことを考えていきたいというふうに考えております。
 本委員会での、5年10年、あるいはもう少し長い、「ちきゅう」の船齢も含めた中で、我が国の海洋科学掘削における今後の方針の議論を踏まえ、行政・科学コミュニティー・産業界などのステークホルダーと対話を重ね、科学的・社会的要請を受け、行うべき掘削を現実的に検討させていただきたいというふうに考えております。
 計画された掘削については、プロジェクトマネジメント、これがこれまで不備であったことをもちろん反省し、新たなプロジェクトマネジメントを合理的に行い、途中の撤退判断等も含めて、責任を持って適切に実施していくという所存でございます。
 また、これまでの教訓を反映し、必要な体制を整備してまいります。
 以上でございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。事実確認の質疑応答をしますが、その前に、私もこの委員会が始まるまでちょっと誤解していたので確認しておきます。
 1回目と2回目の委員会のときに、マントルまで掘り抜く掘削船というイメージが先行していましたが、マントルまで掘る技術を建造時に有していたわけでは、まず、ないと。
 また、運用していく中で段階的に技術開発していくということが分かったということを述べたいと思います。
 過剰な期待を抑える努力が不十分だったというのも指摘されました。
 では、今の10分間のプレゼンテーションに対して、技術確認の質疑応答をしたいと思います。質問ある方、お願いします。
 巽先生、お願いします。
【巽委員】  倉本さん、ありがとうございます。一つ、マントル掘削について、一つまず質問したいと思います。今、JAMSTECの中に、マントル掘削のプロジェクトチームがあると思うんですけど、コミュニティーの中でのマントル掘削のサイエンスのテーマの議論も含めて、例えばマントル掘削をこれから進めていくとき、どういうキャッチフレーズで――キャッチフレーズという言葉はよくないかな、どういうサイエンスを狙ってやろうと思われているんでしょう。簡単にお答えいただければ助かります。
【倉本理事】  ありがとうございます。私がサイエンスのキャッチフレーズを言うのはちょっとあれですけども、これまで巽先生にも、たくさんいろんなところでシンポジウム等々やっていただいた中で、一つのキーワードは、炭素と水の大循環、それがマントルという地球の8割以上の体積を占める中で行われている部分、それが非常に重要であるというふうに考えています。それは生命の問題、それからカーボンニュートラルの問題も含めて、いろんな方面に波及効果があるということと、大前提として、そういった物性を持ったものが地球全体の原動力になっているという意味では、大きな問題だというふうに認識しております。
 それをうまくキャッチフレーズで表したりだとかいうと、なかなか全部を表せないかなと思っていますけども、依然として、古くて新しいか、新しくて古いのか分かりませんけども、炭素と水の問題は大きな問題というふうに考えております。
【川幡主査】  巽先生、どうですか。
【巽委員】  ありがとうございます。それで、もう1点いいですか。
【川幡主査】  どうぞ。
【巽委員】  次、今後の掘削について検討結果をいただいたんですけど、2番目のところで、貢献が期待されている掘削というところで、防災の交付金がいろいろ指摘されていて、結果的に今、例えば令和7年度までは東南海トラフ周辺あたりでこういう計画をしているというふうに書かれているんですけど、これって要するに、これはIODPではないですよね。JAMSTECとしてやられるという意味ですよね。
【倉本理事】  はい。
【巽委員】  それで、これは令和7年ですから2、3年先ですけど、結局、ここの時点で、今後JAMSTECとしてはもう少し、5年10年でどういうところに力点を、もしくは重要だとお考えになっているのかというのが聞きたかったんですよ。
 こういうのを、例えばJAMSTECの中でどういうふうに議論されているのか。いろんなとこから指摘があったり、いろんな委員会からの要望があったりしていると思うんですけど、それを当然真摯に受け止められていると思うんですけど、その中で、コミュニティーと一緒になってどういうふうに目標を設定していくかというところが、今後すごく重要だと思うんですが、いかがでしょう。
【倉本理事】  一つは次の中長期計画に関わるところでございまして、不明な点はまだ多いんですけども、一つはJ-DESCからの要望も出ております。受け止めております。それから、IODPとしての掘削提案も受け止めております。
 それらをこれからどうしたらいいのかというのは、理事長を含めた3理事で、今まさに「ちきゅう」の運用の仕方というのは、科学、技術、それから予算も含めた中でどのようにやっていくのかというのを、不定期でありますけども、実際議論を始めております。
 なかなか委員会とかそういう形にはまだなっておりませんけども、提案がそういった多方面からあるということ。それから、そこにはやっぱり科学的ニーズがあるということも理解しております。
 ちょっと、ちゃんとしたお答えになってないかもしれませんけど。
【川幡主査】  巽先生。
【巽委員】  今後のことは、今、鋭意検討中ということで、またいろんな場で、そういう検討途中の議論を紹介していただければと思います。よろしくお願いします。
【川幡主査】  窪川先生、お願いします。
【窪川委員】  ありがとうございます。次のところの将来のところの――すみません、また素人質問で恐縮ですけど、58ページです。
 これまでの掘削に要した経費というところで運営費交付金のみの費用というところですけれども、これが結局、防災に関する掘削に運営費交付金が使われていたという理解でよろしいんでしょうか。
 というのは、マントル掘削に関してはまだ技術開発というところで、SIPも含めるかもしれませんけれども、マントル掘削に関する技術開発を並行して進め、掘削に関しては運営費交付金だけですけれども、防災のほうもやってきたという理解でよろしいでしょうか。
【倉本理事】  まず交付金の使い道ですけども、南海掘削に関しては防災・減災の部分の意味合いは強いところです。
 下北半島東方沖、それから室戸沖限界生命圏掘削、これは生命は地下生命圏の問題がメインの目的になっておりまして、それに交付金が使われております。
 それから、マントルの技術開発に関して今まで行ってきた部分は、例えばCFRPライザーの開発、それからコアリングですね、タービンモーターのコアリングですけども、それらは、これまで国家基幹技術という交付金の一部を使ってさせていただいておりました。
【窪川委員】  分かりました。そうすると、費用に関して、補完させられるものがあれば技術開発が進むと。予算との関係で、技術開発としては可能であるということでよろしいのでしょうか。
【倉本理事】  はい。もちろん、予算を用意するということが、まず大前提として一つありますけども、もう一つは、例えば今、SIPという形で開発されている部分がありまして、それの応用として使えないかということもありますので、直接、我々が今、交付金として予算できない部分も、そういった他の予算を使った技術開発の結果を応用させていただくということで、広く情報収集していきたいと思っております。
【窪川委員】  マントル掘削は、「マントル」というタイトルがついていますけれども、掘削技術の進展ということに関しては非常に重要だと思いますので、技術開発が加速されることをすごく望むことですけれども――もう1ついいですか、すみません。
【川幡主査】  はい、どうぞ。
【窪川委員】  61ページの、今後ですけれども、この最後の丸の「計画された掘削については」というところですけど、その前の南海トラフのところの、44ページの計画で3つの計画の御説明をいただいて、結果的にはリスクが高いところを選んでいらっしゃいまして、ケーシングデザインの自由度が低いところは選ばれていない。計画された掘削というよりも、その前段階でいろいろなところで判断するマネジメントも、今後について入れていただきたい課題ではないかと思いました。
【倉本理事】  ありがとうございます。まさにその部分も全体のプロジェクトマネジメントの中の一部だと思います。
 44ページのAという案をもちろん提案したときにも、リスクが高いということはここに書いたとおりでありまして、そのリスクをミチゲーションできると。技術によってできると思って、実際にやったわけですけども、そこはまだ十分でなかったという反省であります。
 それを十分にするためには、もちろん予算との兼ね合いもあるんですけども、多方面の御意見を聞きながら、かつ最終的にそれを決定する役割とか、そういうものも含めて新たにマネジメント体制を構築したいと思っています。
【窪川委員】  先ほどの議論でかなり出ていましたので、それもこういうところに反映させていただければと思います。ありがとうございます。
【倉本理事】  ありがとうございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 石井先生、お願いします。
【石井委員】  ありがとうございます。私は、マントル掘削技術検証委員会の座長をしていましたので、補足をさせてください。
 そもそも、マントル掘削に向けての技術開発は、JAMSTECの主たる技術開発のタスクであり、技術検証委員会はこの技術開発に対しての検証であり、これまでのオペレーションに関しての検証は委員会のタスク外ではありましたが、技術開発の進捗という観点で考えた場合、委員会としても、実際のオペレーションの成果は重要であることから、オペレーションの話もしながら進めてきております。
 委員会の初回での議論ですが、マントルまで掘削したということを、どうやって確認、把握するかという、そもそも論的なところから議論が始まっています。つまりコアを採取の必要性や、検層による確認はどうやってなど、マントル掘削に向けての何をもって技術開発の完了なのかも考えつつ委員会はスタートしています。
 本日倉本さんが報告された委員会の抜粋として挙げられてた点は、委員会としての意見であります。ただし、委員会の中では、4,000メートルのライザー、12,000メートルのドリルパイプの当初の技術開発の目的は目的として、どのロケーションでもマントルに到達するライザーパイプ及びドリルパイプの仕様はそうであっても、マントルに到達するという観点での目標からは、ロケーションにより、例えば水深が浅く4,000mのライザーパイプを必要としないロケーション(現在の石油天然ガスでの最大水深の技術利用を考えたもの)、深度に関しても浅いケース例えば、12,000メートルまでは必要なく、10,000メートルで良いロケーションも存在するかもしれない、よって、技術開発の目的はあるものの、実際のロケーションでの必要な能力を考えつつ、今後進めていく必要性があるのではといった議論もしております。
 技術開発という点ではやはり一番の問題は4,000mのライザーです。これに尽きます。はっきり言って、現段階では石油・天然ガスの掘削に期待するのは難しいのではと考えます。現在の業界のモチベーションを考えると、本員会でお話しされている5年10年のスパンの中では非常に難しい。ただこの業界はある時、潮目が変わって技術開発に対するモチベーションが突然変わる時もあります。
 ライザーパイプ本体の軽量化に関しては、非常に困難であることは明らかです。よって視点を変えた軽量化、つまり今あるライザーパイプの重量をいかに、そぎ落とすという言い方が正しいかどうか分からないですけど、ライザーパイプには、小径の補助パイプが数本ついています。その補助パイプだけを軽量化できないか、どの程度の軽量化ができて、ライザーシステムとして機能を果たせるのかの検証。また、小径のライザーの案もありますが、SIPの使用されているライザーパイプは、掘削ということから考えるとそのままでは使えません。ひとつは、ガスや油の噴出防止機能を有する補助パイプがないこと、また必要なケーシングパイプが降下できる内径が確保されていないことです。具体的には現有は21インチのライザーですが、SIPで使用しているライザーパイプは14インチと聞いていますので、必要なケーシングを降下できる内径は確保できていません。よって、小径のライザーを考える場合は、少なくとも13-3/8インチのケーシングが降下できる内径を確保できるサイズのライザーを考えるべきと思っております。いずれにしろ。最終的にはライザーパイプが大きな課題であると認識しております。
 加えて、先に述べましたようにオペレーションからのアプローチということは非常に大切だと考えております。
 以上、補足でした。
【川幡主査】  重要なインフォメーション、どうもありがとうございました。
 では、時間も押していますので、最後に、「かいめい」の掘削関連設備に関する現状と課題について、倉本理事、お願いします。
【倉本理事】  「かいめい」の掘削関連技術設備に関する状況ということで御説明させていただきます。
 「かいめい」には、「かいめい」自身はマルチパーパスな科学調査船でございまして、その中にBMSと呼ばれる掘削、ここに書いてありますけど海底設置型掘削装置、最大3,000メートル水深で海底から60メートルまで掘削できるものがあります。
 それからもう1つ、GPCと呼んでいるジャイアント・ピストン・コアラー、これはパイプの長さが40メートルある大口径のものであります。いわゆる掘削ということでは、この2つの装置が「かいめい」に装備されております。
 これまでの実績ですけども、2017年度から2021年度まで、このぐらいいろいろ使ってきた経験がございます。
 その中で特筆すべき一例として御紹介いたしますのが、令和3年度にIODPの386次航海といたしまして、ヨーロッパのオペレーターから受託をいたしまして、「かいめい」のGPCを使った航海を行いました。
 サイエンスパーティーは10か国の参加者が参加しているんですけども、コロナの影響がありまして、日本に在住していた研究者のみが乗船することに、最終的になりました。
 掘削地点は東北の沖合の日本海溝沿いに15サイト、コアリングの回数として29回、水深8,000メートル級のところでのオペレーションでありましたけども、830メートルを超える試料を回収することに成功しております。
 目的自身は、過去の地震履歴を海溝沿いに北から南まで計測するというのが大きな目的でありました。
 その後、この試料は「ちきゅう」に送られて、「ちきゅう」の船上で、いわゆるサンプリングパーティーと呼んでいますけども、中身を開けたりとか、非破壊の検査も含めて実施いたしまして、今年度に再び、コロナの状況が許せば、「ちきゅう」にて、またサイエンスパーティーを開くということを行っております。
 非常にうまくオペレーションできまして、研究者も満足というふうに聞いております。
 BMSは、これからも「ちきゅう」の知見も生かして、これから軟質、軟らかい海底の対応や、掘削のくずの影響が軽減するような改良もしてほしいというふうな要望を受けております。
 GPCに関しましては、当初、貫入深度が40メートルまで及ばなかったということがあったり、引抜きができなくなったりという事故がございましたけども、そこを改良いたしまして、現在は乗船研究者からも非常に好評を受けております。
 「かいめい」は、海洋科学掘削でも国内外で利用が期待されている一方、今後の運航スケジュールが詰まっておりますけども、引き続き、技術開発、運用の技術の向上を含めて、浅部ではありますけども、こういった機械、BMS、GPCを使った貢献もしていきたいというふうに考えております。
 簡単ですが、以上でございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 ただいまの御説明について御質問をお願いします。
 どうでしょうか。ないようでしたら、時間も押していますから、次に進みたいと思います。
 倉本理事、どうもありがとうございました。
【倉本理事】  ありがとうございました。
【川幡主査】  それでは議題2、我が国における研究資源としてのコアの保管・管理・活用の現状についてに移りたいと思います。
 既存コアの保管・管理・活用について、高知大学の池原実先生より御説明いただきます。
 池原先生、よろしくお願いいたします。
【池原教授】  高知大学の池原です。よろしくお願いします。こちら、高知コアセンターで保管しているコアの状況について報告いたします。
 ここでは、日本の船舶等で採取したピストンコア等も保管していますけれども、今日は深海掘削で得られたコア試料について、主に報告いたします。私が代表して報告しますけれども、こちら、現場には高知大学の佐野センター長、JAMSTECの廣瀬所長、久保IODPキュレーターが同席しています。
 高知コアセンターの概要ですけれども、高知大学の物部キャンパスに建物がありまして、我々大学側としては共同利用・共同研究拠点に認定されていますので、地球掘削科学の研究・教育活動を支援するということで、建物・設備を提供しています。
 それから、JAMSTEC側は高知コア研究所という研究所が同居していて、建物・施設等々を包括連携協定の下で共同運営している体制を取っています。
 主要な構成メンバーは、大学・JAMSTEC合わせて大体30名程度の規模です。あと、ポスドク、学生、パート支援員等々を含めて、大体100名くらいの研究センターです。
 ここでは、DSDP以来50年以上にわたって西太平洋、インド洋で掘削された146キロ程度の掘削コア試料が保管されています。
 これは、これまでもありましたように、アメリカ、ブレーメン、高知という3つの拠点で地理的に分担して保管をしている。保管している試料を使った研究について、年間150件程度のサンプルリクエストが提案されていて、利用されている状況です。
 深海掘削コア以外にも、日本の船舶等で採ったコア試料、それから深海掘削、IODPについては「ちきゅう」で掘削されたときのカッティングス、それから凍結保管している試料等も併せて保管しています。
 活動実績ですけれども、左上のグラフ、2008年からのサンプルリクエストの件数です。オレンジ色がいわゆるレガシーコアと呼んでいるもので、DSDP・ODP時代に掘削されたコア試料。それ以外が、緑・青が、それ以降、新しく掘削されて保管されている試料になります。
 こういう試料について、サンプルリクエストに対応して試料を提供して、研究に使ってもらう、いわゆるキュレーション。
 それからサンプル対応だけではなくて、実際ここで保管されているコア試料を使った科学計測、非破壊計測にも対応しています。例えばアーカイブコア、手つかずで保管されています。それらを非破壊計測できるX線CTとか、蛍光X線コアロガー等を使ってデータを提供するというような解析拠点の機能も持っています。
 それから、幾つかのサンプリングパーティーを開催する科学支援。
 さらには、IODPに関してですけれども、左下のグラフ、2012年以降の来訪者数の実績です。大体年間30から40人程度の来訪者が、国内外からこちらに実際に来てコアを観察すること、それから観察した結果を還元させて実際のサンプリングをするという、そういうことが行われています。
 これはやっぱり、コアがここにあって、現物を見たいというやっぱりニーズがありますので、サンプルを取って渡してあげるだけではなくて、コアの実物を観察するという重要性を物語っています。
 そのほか、コアスクールとか、プレ・ポストクルーズ会議等を行うことによって、若手の研究者・技術者の実践的な育成にもコアセンター及びコアが活用されている状況です。
 保管しているコアの内訳ですけれども、右上に一覧表があります。これはキロメートル、長さではなく本数、1.5メートルないし1メートルに切断したときの本数で表しています。
 左側のパイグラフですけども、赤で示したように、アメリカの掘削船「グローマー・チャレンジャー」「ジョイデス・レゾリューション」で掘削されたコアが85%。それからMSP、ECORD、先ほどの「かいめい」で掘られたコア試料。それから「ちきゅう」で掘削された南海トラフ等のコア試料。それ以外の日本の船舶等で採取されているピストンコア。それぞれ、これくらいの割合でコアが保管されています。
 特徴としては、深海掘削コアに限って言うと、約94%がアメリカの持ち物であるという、そういう特徴を持っています。
 リクエストと成果について簡単に紹介します。左上の図、リクエストの件数を2種類、KCCと「ちきゅう」船上で分けて表示しています。「ちきゅう」船上というのは、「ちきゅう」が掘削航海をしたときに船上で提出されたリクエストの実数です。
 一番多いのはアメリカ、2番目、日本、3番目UKという順番で、総計2,000件程度のリクエストが実際提出されています。
 過去3年間の傾向でいくと、内訳が4分の3程度が古環境ですね、左下。それから10数%が火山とか火成活動に関係するようなリクエストが多いという特徴を持っています。
 こういったリクエストですけれども、航海乗船者に優先的にサンプルにアクセスする権利が、モラトリアム期間が1年間設定されています。その1年以降は、コアは全世界にオープンにされていて、IODP参加国以外の研究者・学生からもリクエストが提出できる、アクセスできるという、そういう状態です。もちろん研究だけではなくて、教育、アウトリーチにも公開されています。
 こちらで保管しているIODP関係のコアを使って出版された論文について、情報をまとめると1,500本以上の論文が出版されているというふうになっています。
 それからTop1%・10%補正論文の調査をしたところ、ここで保管されているコアを使った論文がTop1%30件、Top10%で200件超で、分母、実際論文数を使って単純に割合を計算すると2%以上、Top10%が25%程度ということで、単純に考えるとTop1%で1%ぐらいになるというものですので、それよりも大きな、高いインパクトを持つ論文を、ここのコア試料を使って世界中の研究者が報告をしている、そういう実態が見えてきます。
 幾つか実例を紹介します。特に、分野とか地点を横断する、海域を横断することによって得られる成果ということで、例えばこれは白亜紀の海水温の変化を調べた論文です。2017年に出版されていますけれども、比較的新しいプロキシ分析手法、TEX86という手法、これを使って世界中の海洋の試料を使って、白亜紀の海水温変化を復元した論文であります。
 右上は、中新世に一時的に水温がぐっと低下するようなイベントが、グローバルスケールで起こっていたことを明らかにした論文。
 それから火山・火成活動に関しては、例えばこれは、氷期・間氷期スケール、ちょっと図が小さいですけれども、気候変動がありますけれども、氷期から間氷期に氷床が融解するタイミングで、火成活動・火山活動が活発化するのではないかと、そういう仮説があります。それをレガシーコア等を使って検証した成果。
 右下は、凍結保管をしている深海掘削コア試料を使って、海底下の微生物の多様性を解き明かした論文です。
 それから、掘削当時にはなかったいろんな解析技術・装置を活用することで、新しい成果が生まれているという実例です。
 例えば2014年に、こちらにITRAXという非破壊計測・科学分析ができる装置が導入されましたけれども、左下で紹介しているのは、コアを使って、非破壊ですのでアーカイブコア試料を取り出してきて連続非破壊分析ができるという利点があります。細かい時間スケールでいろんな化学組成を明らかにして、これは乾燥・湿潤の変化を明らかにしたという例です。
 それからX線CTスキャナーも、2001年に最初の装置は導入されましたけれども、2017年に更新しています。更新によって解像度がよくなったり、撮影時間が大幅に減少されますので、たくさんのコア試料のデジタルイメージングができるようになってきています。
 今後さらに、保管しているコア試料のデジタル化を進めることで、さらにコア試料の利用促進につなげたいというふうに考えております。
 役割について3点、例を挙げています。例えば、先ほどもあったように海溝型巨大地震の履歴研究。それから防災につながるような研究。
 日本海溝であるとか千島海溝、南海トラフ、そのセグメントごとに履歴を明らかにする、特徴を明らかにするということで、掘削試料が重要性を増します。
 それから古文書、陸上地震履歴からは追えないような長期スケールの地震発生履歴を探ることができます。
 それから、古くから保管されているコア試料を使って、基礎的な研究、海底鉱物資源の分布・量についての研究例がありました。それが現在行われているSIP資源掘削へ発展している。その基になった情報を提供しています。
 さらには、例えばJ-FASTのように、地震が起こった後、緊急掘削をすると。東北沖で、それまで掘削されたコア試料、こちらで保管されているものがありますので、それをもう一回見直して、どんなものが採れるか、どういう戦略で掘削を行ったらいいか、そういう航海立案にも活用されています。そういう重要性があります。
 それから、ここで保管されているコア試料は、まだまだ使える試料がたくさんありますので、それらを活用してサイエンスを進めるというアイデア、バーチャル研究航海、バーチャルエクスペディションというのが、国内外で検討が始まっている段階です。
 例えば我々高知コアセンターとしては、J-DESCと密接に連携しつつ、取りあえず日本版のバーチャルエクスペディションをやり始めようということを検討しています。
 テーマ設定であるとかチーム編成を国際公募した上で、既存データを収集して、ここで保管されているコア試料、どれが使えるのかというのを検討します。
 短期間、研究者に高知に集まってもらって、集中的にコアの観察をしたり、非破壊計測をしたり、サンプリングをしたりして、航海と同じようなチームをつくってプロジェクト研究を進めるという。その成果をさらに新しい掘削提案に発展させる、その土台をつくるようなサイエンスを、コアを使って行いたいというふうに考えております。
 その過程で、例えば若手の研究者・技術者がそれぞれの役割を果たすことで、技術者・若手育成につながります。
 さらには、サンプリングとかいろんな計測を、「ちきゅう」のファシリティーを活用することも検討されますので、集中的にやる場合には「ちきゅう」を活用する一つの方策になるかと思います。
 最後まとめます。高知コアセンターは、掘削コア等の保管・解析拠点として、我が国と国際的な地球掘削科学の研究活動を支援してきています。
 コアのデジタルアーカイブ化を今後促進することで、コアのさらなる利用と研究の利便性を向上させたいと考えています。
 未来のサイエンスに備えて、コア試料を的確に保管することは非常に大切だと考えます。かつ、それらのコアを活用して、持続的に地球惑星科学研究を支援していきたいと考えております。
 以上で終わります。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。資料93ページのオープンサイエンスのところも今後の学術の動向にとっては重要なので、説明してもらえますか。
【池原教授】  学術会議で委員会が立ち上がって、ここで示した検討委員会が3つの提言をまとめております。
 重要な点はこれです。3ポツ目です。一次試料・資料の永久保存の必要性。さらには、研究に使わなかった、ここでは「0次試料」という表現をされていますけども、それも同等の扱いが必要で、きちんと保管して管理する、キュレーションをするという必要性が提言書としてまとめられているようです。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 現在、論文でデータとか発表するときに、例えば実験ノートをきちっと管理しなさいとかいうのが話題になっていますが、それ以前の問題として、試料はどんなのを、どこに行くとありますよとか、どの試料をちゃんと分析したんですかとかいうのをきちっと、0次試料と今申しましたけど、それを管理するというのが特にヨーロッパ・アメリカでは求められるということになっておりますので、高知コアの価値はそういうところにもあるかなと思っています。
 じゃあ、テクニカルな質疑応答に入りたいと思います。質問ありましたらお願いします。
 じゃあ、私からテクニカルな質問ですけど、アメリカのサンプルはアメリカの所有物、プロパティであるというふうに伺っています。アメリカのサンプルは、少なくともいつまでちゃんと保管しますよと言って契約されているのでしょうか。将来はだんだんと更新するんだと思いますが、取りあえず何年ごととか、何かあるんでしょうか。聞いたことなかったので、ちょっと伺う次第です。
【池原教授】  具体的な年数は取決めがなくて……。
【川幡主査】  ないんですか。
【池原教授】  基本的には半永久的に保管するということだと思います。
 久保さんにちょっと回答してもらいます。
【久保グループリーダー代理】  JAMSTEC高知コア研究所の久保です。今、池原さんがおっしゃったとおり、明確に期限は決めていないんですけども、IODPの取決めとしてコアの保管を行っていますので、IODPが終わるタイミングで何らかの対応が生じる可能性があります。
【川幡主査】  そうですよね。IODPというプログラムが今後、リフォームが、いろんなことが起こりそうだというのが伝えられていますので。
 ほかに質問ありますでしょうか。
 じゃあ、どうもありがとうございました。ないようなので、次に行きたいと思います。
 池原先生、ありがとうございました。
 続いて意見交換となりますが、その前に、短いですが5分程度、休憩を取りたいと思います。今11時20分なので、25分あたりから始めたいと思います。よろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【川幡主査】  時間になりましたので、再開したいと思います。よろしくお願いします。
 それでは、まとめに向けた意見交換を行いたいと思います。まずは事務局より、取りまとめに向けたこれまでの整理と論点整理をお願いいたします。
【戸谷企画官】  深海地球探査企画官の戸谷でございます。取りまとめに向けたこれまでの整理と論点整理について御説明いたします。
 資料4を御覧ください。本委員会の設置に際し、海洋開発分科会より、海洋科学掘削委員会での議論における調査検討項目が示されております。それに基づき、報告書取りまとめ方向性(案)として、これまでのヒアリングや意見交換で取り上げた部分、未了の部分を示しました。
 まず、大きな1ポツ、我が国における海洋科学掘削の現状及び課題について。「ちきゅう」の建造当初の目標及びこれまでの活動実績・経費について、第1回委員会で、J-DESC益田IODP部会長、及びJAMSTEC倉本理事から御発表いただきました。
 続いて、(イ)の科学的視点による評価については、第2回委員会において巽委員から御発表いただきました。
 (ウ)の社会的視点に関する評価につきましては、第2回委員会で、小原委員から地震防災の観点から、資源の観点からはSIPの石井プログラムディレクターから御発表いただきました。
 (エ)の技術的視点による評価についても第2回委員会で、石井委員から御発表いただきました。
 そして、「ちきゅう」の技術面での課題について調査検討することとされていたところ、これまでの委員会での御指摘も踏まえ、本日のJAMSTECの倉本理事からの御発表では、技術面のみならず、マネジメント面について御発表いただきました。
 (2)として、「ちきゅう」以外、「かいめい」等を用いた研究開発の現状及び課題については、第1回委員会でJAMSTEC倉本理事から御発表いただいたほか、本日もJAMSTEC倉本理事から「かいめい」の掘削関連設備について、また、高知大学池原教授より、高知コアセンターに保管するコア試料の現状と、その研究への活用状況について御発表いただきました。
 次に、我が国の海洋科学掘削を取り巻く動向として、地球惑星科学分野の研究開発動向について、第2回及び第3回委員会で、鈴木委員、小原委員、野田委員のほか、東大AORI黒田准教授、神戸大学金子教授、JAMSTEC荒木グループリーダー、広島大学中久喜教授といった各分野の専門家から御発表いただきました。
 同じく、取り巻く動向のもう一つの要素、IODPについては、第1回委員会でJ-DESC益田IODP部会長から御発表いただいたほか、第2回、第3回の非公開議事において事務局から御報告いたしました。
 ここまで、これまでに発表、意見交換いただいた内容を基に、海洋開発分科会から示された調査検討事項がほぼ埋められていることを確認いたしました。現時点ではざっくりとしたまとめのため、表現に至らないところがあるかと存じますが、報告書ドラフトの際に改善し、充実を図ってまいります。御容赦ください。
 次に3ポツ、今後の海洋科学掘削を利用した地球惑星科学分野の研究開発の考え方について、4ポツ、国内外の研究資源を用いた今後の海洋科学掘削の方策につきましては、本日これからの委員の意見交換を基に記載することとしております。
 意見交換の際の視点の御参考を赤字で記載しております。3ポツにつきましては、科学的視点、社会的視点から、海洋科学掘削の活用の優先度が高い分野や課題、海洋科学掘削の活用の優先度が低い分野・課題はそれぞれどのようなものか、見込まれる成果の重要性や、掘削以外の手法との比較、フィージビリティー等を総合的に勘案して意見交換いただくことを想定しております。
 4ポツにつきましては、この委員会開始の際に川幡主査から御提案いただいたように、5年から10年というタイムレンジで優先して行うべき掘削や技術開発は何か、「ちきゅう」以外の研究資源はどのように活用すべきか、将来の「ちきゅう」の退役も念頭に、これまで海洋科学掘削で進められてきた科学はどのように進められるのか。また、国際協力を通じた研究開発の在り方について、IODP終了後の我が国の国際協力を通じた研究開発としてどのような形があり得るか、IODP終了後の国際協力を具体的に検討する上で考慮すべきことは何かといった点について意見交換いただくことを考えております。
 以上です。
【川幡主査】  ありがとうございました。これまでの第1回から第3回のまとめの部分については次回以降も議論する機会があると思いますので、本日の意見交換では、3及び4を中心に行いたいと思います。
 それでは、まず3番の、今後の海洋科学掘削を利用した地球惑星科学分野の研究開発の考え方について、論点に沿って御意見いただければと思います。お願いいたします。
 この3番のところは、科学的視点、また一方で社会的視点、どんな分野がありますかという感じです。
 窪川先生、お願いします。
【窪川委員】  ありがとうございます。私は、ここに書いてある大きな話ではなくて大変恐縮なんですけれども、1つには掘削、地球科学としての、科学的使命があるわけです。掘削孔の利用で、より研究分野が広がってくることになりますが、掘削孔の利用は現状ではどうなっているのか。どなたに聞いたらいいのか。JAMSTECの方に聞いてもよろしいでしょうか。
【川幡主査】  委員で誰か御発言ありましたら。でなかったら、JAMSTECさんから、まず言って。
 じゃあ倉本理事、お願いします。掘削孔の活用。
【倉本理事】  利用というのは、孔内観測も含めてでしょうか。
【窪川委員】  はい。ということも含めて。
【倉本理事】  今一番使われているのは、掘削した孔に様々な地殻変動観測のできるような装置を入れて、連続観測をしているというところがあります。それは日本だけではなくて、海外の掘削孔でもあります。それがまず1点。
 それから、まだあまり現実化していないですけども、地下環境での培養実験等の提案があります。それから将来的に、まだできませんが、提案だけですけれども、ミューオンの観測もあります。そういったものが現在利用されて、あるいは利用しようとしている提案かと思います。
【窪川委員】  いいですか、ちょっと続けて。今のことですけど、それは掘削するときからの計画として入っているという理解でしょうか。
【倉本理事】  はい。もともと提案として出されているものが多いです。
【窪川委員】  分かりました。ありがとうございます。
【川幡主査】  ほかにありますか。
 じゃあ、J-DESCで、以前というか、昨年まとめたのを少し話しておきたいと思います。科学者のコミュニティーとしたら、科学掘削で優先順位というのでもないですけど、重要なので、5つ挙げています。1つが、やっぱり何といっても地震。減災防災ありますけど、科学としても、日本の置かれたアクティブマージン、その特性を生かせる、その理解を深めるということは非常に地球惑星科学にとって意義があるということで、地震。
2番目は、火山。火山の噴出というのは、トンガでも話題になりましたけども、日本は何といっても、富士山を含めてたくさん火山がありまして、特に海底火山がもし噴火したら大変なことになるし、どうして火山ができるのかといった素朴な疑問、そういうのも興味あるなということになります。
3番目が、もちろん気候変動。現在のカーボンニュートラルに相当するのは、長期的なトレンドも重要ですけど、イベント、よく中生代と新生代の境界に隕石が衝突しましたよとかいう、そういうタイム時間レンジで、2、3年とか10年、100年、そのくらいで起こること、それを調べることは現代にも通ずる、急激な気候変動を解明する上で重要だと。
 4番目がバイオ。バイオのグループは、下北も、それから沖縄トラフも非常に高いレベルで、日本から科学的な情報発信をしています。そういうバイオ。それから、マントルも含めてですけども、この2つは小学生に未来の科学をイメージしてもらうのに非常にいいかなと思っています。
 最後、5番目ですけど、科学というのは、必ず技術の進歩と、実はすごく強い相関で発展してきました。というわけで、技術開発。
 この5つが、やるべき、非常に優先度の高いものかなと考えています。もちろん、この会議で出ましたように、掘削というキーワードでいくと、資源関連とか、そういうのも物すごく重要だというのは認識しております。
 というわけで、窪川先生と私がキックオフみたいなので発言しましたので、委員の先生、お願いします。
 鈴木先生、発言お願いします。
【鈴木委員】  ありがとうございます。本当に、先ほど川幡先生がおっしゃられたように、科学的課題、今挙げられたようなものというのは、もちろん科学の先鋭性があって、我々日本は、もちろんそれぞれの分野、科学をリードしていくポテンシャルがあるというふうに思っているんですが、同時に、そこには予算及び技術がどうしてもついてくると。マントルの石を掘りたいといったら、それがすぐ取ってこられる技術があるのかというところに関しても、まだクエスチョナブルなところがあるというようなことかなというふうに思っているんですけれども、でも、例えば技術的な実証、科学と技術を1つのプロジェクトで必ず両方成功させるというのが難しい場合、一旦、技術実証的な掘削をして、それに基づいて、あるいは技術的に確立したときに、次にサイエンス、科学実証というふうな感じで、若干、技術実証と科学実証を必ずしも一体化させて、全て一発で成功させようとせずに、そういう方法もあるのかなというふうに、聞きながら少し思っていたんですけれども、そういう観点というのはいかがでしょうか。
【川幡主査】  倉本理事、何かありますか。1行ぐらいでお願いします。
【倉本理事】  ありがとうございます。様々な科学テーマを絵空事で終わらせないためには、それを支える技術が重要だと思っています。マントル掘削のところにもちょっと出てきましたけども、大水深・大深度の掘削技術というのが、まだもう少し先の目標になっているという段階で、いきなり行き当たりばったりのことをするのではなくて、パイロットホールをまずすべしであるという御指摘をいただいております。まさに、まずは相手をよく知らないと、どういう技術を開発したらいいのかということも不明確になってしまうところもあるので、まずはそういったアプローチが必要だというのはごもっともな御意見だというふうに理解しております。
 それから、南海掘削に関しての新たな提案として、新しい掘削方法の可能性のあるものを御提示させていただきましたけども、エクスパンダブルケーシングというのが技術的には1つ入っています。これは358の前回の掘削でも、非常に短い区間でありますけども、日本の中で、あるいは科学掘削の中で初めて使った技術であります。そういうものが運用上使えるということが、完璧ではないかもしれませんけども、一つの実証として行われたというのは我々の一つの大きなステップだったというふうに理解しています。そういったもので実証されて、今日御提示したような案の確実性が増すんだというふうに思っております。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。今、技術の話が出ましたし、さっきのマントルの検討会でも御検討いただいた石井先生、コメントありますでしょうか。
【石井委員】  ピントが外れちゃうのかもしれませんけども、まず自分が掘る側の立場だったらとして、ちょっとお話をさせてください。
【川幡主査】  はい。すごく重要です。
【石井委員】  冒頭、多分、巽先生からお話があったのかなと思いますけど、まず長期的に、サイエンスとして何をするのだというところ、何が目的で、何を目指して、例えば10年後にはどういう姿になっているか、なりたいかということがすごく重要で、今ほど議長からも優先度の話がありましたけれども、目指している姿からバックキャストして、ここ5年、10年、では一体何をすべきか、どのような技術開発なりマネージメント体制の構築をすべきかは技術サイドとしても非常に重要と考えます。よって、そこをしっかり固めること、今後目指しているものが何なのかが決めることが大切であると思います。
 正直に申し上げて、この委員会の議論に参加して、マントル掘削にあまりこだわる必要性が現時点であるのかと思い始めています。自分がJAMSTECに出向していたときは迷いもなくマントル掘削という目標に向かって業務していましたが、今今は産業界での動向を踏まえるとマントルに掘削に拘ることが「ちきゅう」にとって本当に良いのかという疑問もあります。マントル掘削の目標達成を目指すことは非常に大変であると感じています。また、南海トラフでは完掘できなかったこともあり、「ちきゅう」にとって逆風かもしれませんが、海洋科学掘削のツールとしては、現時点ではマントル掘削は厳しいけれど、他の科学目的や防災等であれば、掘削可能なツールとしての機能は既に十分に揃っております。よって、その範囲の中で活用するという選択肢も当然あるのではと考えます。ただしそれは、科学者の皆様が、科学コミュニティーと称していますが、一体何を長期的な目的とさだめるのか、ありたい姿何なのかを定め、そこからバックキャストして5年、10年で「ちきゅう」に何をやらせたいのか、それにはどのような技術開発が必要なのかを検討してことが大切ではないかと考えます。
 ちょっとピント外れたかもしれませんけど、以上です。
【川幡主査】  いやいや、重要な点を指摘していただき、ありがとうございます。特に現実的なというところでは、航海がどのくらい組めるかとかいうのがもう一つすごい課題になってきますが、この点については今日後半でまた議論できればと思います。ターゲットを絞るときには実際にどのくらい時間掘れるかというのも重要なので。
 阪口先生、まず何かありますか。二、三回聞こうと思っていますが。
【阪口委員】  2点あります。1点目は、今、石井委員がおっしゃられた話なんですけども、ただし、国民100人に、「ちきゅう」は何のための船でしょうかと聞いたら、「ちきゅう」を知っている人は、マントルまで行く船ですよねって答えちゃうんですよね。それぐらい今までのプロパガンダが強烈であるということは間違いないんです。うちの財団の人間は科学者ほとんどいないんですけども、何人かに聞いてみると、マントルまで行く船ですよねと、普通に答えます。見学に行ったときにそう説明されたと、うちの財団職員全員、「ちきゅう」を見学しているんです。
 そのときに非常に明瞭に説明されて、資料も渡されたと言っているんですが、まずその問題、ちゃんと払拭して、国民に、「ごめんなさい、マントルに行く技術は実はありませんでした」ということをどうやって説明するのかということが1点と、それからもう1点は、全く逆の考えで、やっぱり科学って、未知なることとか、それから真理の探求というか、どういう仕組みでこんなことが起こっているのかということを純粋に科学者が知りたいと、それを基にやるべきであって、あんまり国民のためとか、何かの役に立つとか、論文が100本書けるとか、そんなことを目標にする人はほとんどいないと思うんですね。そういう制約条件は最近の、外からの、いいか悪いかは全く別として、何か評価をするときとか、そういうときの尺度に使われるために言われているわけですから、純粋に、やっぱり科学者はあることを突き止めたいということが最も重要で、その心をへし折るようなことはあんまりしないほうがいいと思うんです。
 でも問題は、掘ったら何か見えるから重要ですとか、今まで到達していないから重要ですって、ああいう説明はすごくよくなくて、あの手の説明は科学者の心も揺さぶらないんですよね。掘る技術も実はありませんというような説明というのはやっぱりよくなくて、JAMSTECのやっていることって、非常にそればっかりなんです。夢を追うとかいう、いい単語を使うんですけども、その夢って何ですかと聞いたら、よくよく突き詰めると、いや、掘ってみないと分からないんですよって、そういう答えなんです。
 だから先ほど巽先生も、石井委員も言われたように、科学者の揺さぶられた心をちゃんと正しく表現して、それを目的に、それがあほなことであろうと、社会的にどうこうなんていうこと関係なく、その真理を探究するんだということをもうちょっと明確に言わないと、予算もつかないし、理論武装もできないので、そこをやっぱり明確にするということは、この委員会でも今朝から何度も、前回も何度も話し合われていましたけど、そこをやっぱりシャープに、明確にするということが、すごく私は大事じゃないかなと思います。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。また戻ってきますけど。
 巽先生。
【巽委員】  ありがとうございます。今、阪口さんがおっしゃったことに、私も完全にほぼ同意なんですけど、その上で、少しこれから、前回も少し言ったんですけど、我々が考えておくべきことの一つは、言葉で言うと海洋立国であり、技術立国であるというふうに思います。海洋立国という言葉は、海の日の前後に総理がテレビで言われるとき以外はあんまり世の中に広まっていないような気もします。それから技術立国も、最近は多くのプライドがへし折られてきて、だんだん伸びてなくて、みんな元気が出ない状況にある。この中で、やっぱり海洋掘削というのは、海洋立国であり、技術立国であり、科学立国である日本として、ある意味、本当の意味で世界をリードして、プライドを取り戻して、プライドを持ってやっていけることの分野だというふうに私は確信しています。
 それで、そのときに恐らく、何をしないといけないかというときに、我々が住んでいる日本列島というのは、もうまごうことなく世界で一番の変動帯、地震、火山が密集しているところにあるわけです。ということは当然、海洋由来災害にも度々見舞われてきた、これからも見舞われてくるわけです。こういう状況は日本のみならず、最近はトンガはじめ、インドネシアはじめ、いろんな世界で起きていて、そういうときに、恐らく日本がこういうことをリードして、こういう海洋由来災害並びに海洋由来のいろんな変動現象の理解に貢献していけたら、何となく非常にいいなと私は思っています。さっきの阪口さんの言っている科学者の夢という言葉でも結構かと思いますけど、ですから、そういうふうなところ、そういう海洋由来災害の理解と軽減による社会――社会というよりは、むしろ世界をリードして貢献していくというようなところを考えていけるようになればいいなというふうに先ほどから思っていました。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。前回、荒木先生が地震について述べられたときに、予報にしても、いろんなデータ解析にしても、やっぱり理論も含めて砂上の楼閣とならないように、学術の上に立たなきゃいけないと指摘したのとリンクすると思います、今の発言。
 小原先生、お願いします。まず1回目、皆さんにコメントをいただきます。
【小原委員】  今、巽委員、それから阪口委員からも、サイエンティストの夢ということがありましたけれども、それは全くそのとおりだと思っているんですが、もちろん夢を持たなければサイエンスではないということにもなりますけれども、ただその一方、どれだけの科学者が同じ夢に向かっているか。1人、2人だけではもちろんないと思いますけど、ある程度反対する人もいながらも、でもマジョリティーとしてそういった夢を目指すんだというところを、もう少しサイエンスコミュニティーとしてオーソライズしていく必要もあるのかなというふうに思いました。
 まず1回目は、以上です1。
【川幡主査】  はい。一人一人の個人ベースの好奇心というのも、まず発想という意味では大事だけど、それをコミュニティーレベルでやろうとすると、多方面から同じ対象を解析することによって、より普遍的なというんですか、そういう概念にも到達できるというのが今の指摘だったと思います。
【小原委員】  はい。
【川幡主査】  非常に重要です。私も基本的には好奇心でやってきた人だから分かるけど、お金というのは税金だから、皆さんが払ってもらった税金を基にというのが、今の科学者は大体、自腹で研究する人ってほとんどいないので、そういう面では、結果として社会にも貢献できるようなことがあればうれしいなと、そういうふうに思うような科学者も必要かなと思っています。
 野田先生、1回目、まず。
【野田委員】  野田です。科学的視点ということで、総論としては当然、非常に重要と思います。ここで3ポツとして、1、科学的視点、2、社会的視点とあるんですが、あと技術的な視点ですね、それも恐らく重要じゃないかなと思っています。して、というのは、今日主に議論されたのは、科学的なモチベーションありきで、それを達成するための技術という話だと思うんですが、ただ、その技術って、もうちょっと対象としては広くあるべきというか、種類によるとも思うんですけれども、ここで培われた技術がどういうふうに世の中の役に立つかということをもっと補強するほうがいいかなと個人的には思いました。
 あと、例えばマントル掘削に関して、今技術的にここまで行っているという話も説明がありましたが、そういう情報がどの程度、それにどっぷりコミットしているサイエンティスト以外の方が、どの程度その状況を把握しているのかと。それでないと、なかなか具体的に、ここやったらできそうやから、こういうことがと、具体的な提案みたいなのになりにくいかなと思いますので、実際にここまではできるということを、もうちょっと発信することも重要かなというふうに思います。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
 まず一巡しましたが、その上で、今度、2周目。より深い、もしくは普遍的なコメントをお願いします。
【窪川委員】  深くなくてもいいですか。
【川幡主査】  どうぞ。窪川先生、お願いします。
【窪川委員】  2周目なので、全然深くないですけど、今の掘削のことに関して深い話ができないので、生命科学の専門家として例を出させていただいてよろしいでしょうか。
【川幡主査】  はい。
【窪川委員】  今の科学のサイエンティスト、あるいはサイエンスの夢ということに関しては、ヒトゲノムの解読があります。あれは日本の研究者が先鞭をつけていたのですけれども、結果的にはアメリカの企業が先に出してしまった。要するにそこで予算がつかないことによって、研究者のほうの進展が遅れたというところがあったわけです。それはサイエンティストの夢で、ヒトゲノムがなぜ役に立つのか分からないというところがあったのですが、結果的にはそれが巨大なブレークスルーになったということがありました。
 それから技術に関しては、そのゲノム解析時に遺伝子解析の装置の開発を日立がやっていたのですけれども、特許を渡してしまったという歴史があります。それも、やはりその装置の重要さに関してのバックアップがなかったというところが重要なことでした。
 あともう一つ、最後に、宝酒造ってありますけど、タカラバイオが非常によい遺伝子解析の試薬を開発しました。それは継承と発展で、それまでの歴史ですね。歴史を基に新しい分野に参入してきたということで、成功を収めている。
 私が知っている、この夢と技術と、それから継承・発展というのが、まさにこの「ちきゅう」の在り方に合致するような、そういう思いで見ておりました。
 すみません、違う側面からの意見です。以上です。
【川幡主査】  いや、違った側面じゃなくて、どの分野にも通ずる普遍的なものを言っていただいたと思って、感謝しております。何事も価値が分からないと、さっきみたいに売っちゃったり、お金つけなかったり、いろんなことで遅れちゃったと、そういうのが1個目だったと思いますが、具体的に、個人及びコミュニティーレベルでの科学の振興というのがベースとして重要ですよと。あと、やっぱり国としたら、海洋立国、技術立国という方針をきちんと示して、政策として実行していく、これもみんなの幸せに通ずる一番ベーシックな部分だと、そういう指摘がありました。
 その上で、掘削に関しては、ここに書いてあるような科学的視点、あと社会的な視点、この委員会で述べられた、主にSIPの関連ですけど、そういうものを推進していくということに関しては、皆さん合意していただけるんじゃないかと思いますけど、合意しないとか、そういう考え方はよくないとかいうのがありましたら、指摘していただければと思います。
 思いのほかポジティブな意見もすごい多かった。ベーシックなところが多かったので、いいですか。
 じゃあ、3番のところは、また関連で戻ってきますが、4番の議論も始めて、それでまた3番との関連でというのも重要だと思いますので、4番の議論もしたいと思います。
 国内外の研究資源を用いた今後の海洋科学掘削の方策、今後の海洋科学掘削の方向性、また、国際協力を通じた研究開発の在り方というのがここに書かれていますが、これに関しましては、まだほとんど議論していないところもありますので、次回でも深めるということにしたいと思いますが、懸案となっているマネジメント、実際に実行するに当たってやっぱりマネジメントがというのが、もう1回目から4回目までずっと出てきていますので、これについて具体的な要望とか、そういうのがあったら、ここにきちんと、もし必要なら書いておくのもいいかなと思いますので、議論をお願いしたいと思うんですけど、いかがでしょうか。
 阪口先生、何かありますか。全体通じて。やっぱりマネジメントのところがこの委員会のメインテーマになっているというのは皆さん共通認識だと思いますので、具体的に、こういう点に絞って改革してくださいとかいうのがあるといいと。
【阪口委員】  たしか2回前の委員会か何かの機会に、そんなことはとっくに考えているよと、巽先生と議長からくぎを刺されたことですが、何のことかといいますと、IODPの要望と、それから国内の現実的な予算のつき方、それからJAMSTECの運営、運用に乖離があるから、例として、JAMSTECの人は、何だかんだと立場が弱くなると、いや、それはIODPから要望されていることなのでと、今日も何かそういう発言がちょっとあったと思うんですけども、そういうふうに逃げるんですよね。でも現実、さっきの議論で、前半の議論で突き詰めると、最後やるかやらないかはJAMSTECの理事長が決めるという、そういう話がちゃんと暴かれたというか、今日きちんと明らかになりましたよね。
 となると、IODPに責任をなすりつけつつ、問題から目をそらすというやり方はやっぱりよくなくて、両者に乖離があるなら、乖離があるということを明確にした上で、誰が何をやるのかということの決定プロセスと決定者の責任というものを、やっぱりちゃんと明文化しておいておかないと、いつも議論が、何というか、ゴールしたと思ったら、そのゴールが動いているということが続いているので、得点が全然入らないと。そういうことが今後起こらないように、今僕が言いましたように、決定プロセスと決定者と決定者の責任というものを、さっき野田先生がいみじくも客観的な決定、責任ってどういうことだと、そこは最後主観じゃないかと、多分野田先生は言いたかったんだと思うんですけども、そういう矛盾した表現が今も出てくるということ自体に、何か逃げの理論が入っているので、やっぱりきちんと。
 一般の民間会社だったら、絶対にそんな変な理屈はないと思うんですよね。なので、3回目言いますけども、決定プロセスと決定者と決定者の責任というものをやっぱり明確にすべきだと僕は思います。そうすると、話がぶれにくくなり、かつ暴走する――暴走したんですよ、JAMSTECでは。暴走するということがかなり防げるのではないかというふうに思います。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。今のお話で、例えばJFASTとか下北とか、あと沖縄トラフかな、そういうところはすごくうまくいっていたと思うんですけど、そちらの、今の決定してきたプロセスは及第ですよというのでいいですか、阪口先生。要するに、PIの責任者、実質的に、何というか、航海の科学者の代表、そういうのも見えているし、きちんとその人を中心にコーディネートされていたなというのは、私、詳しくは知らないですけど、コミュニティーから見ているとそんな感じだったという感じですけど、それに関してはマネジメントはよかったなというふうに私は思いますけど、先生はどうですか。それはいいですか。
【阪口委員】  僕は、南海トラフの話と、それからマントル掘削の準備状況がどうだということを述べています。
【川幡主査】  分かりました。クリアになりました。
 石井先生、お願いします。
【石井委員】  まず最初に、さっき自分はマントル掘削は諦めたらどうかというようなことを言ったつもりではありません。科学コミュニティーがマントル掘削をやるんだという旗を立てるのであれば、必要なお金をつけて、かつスタッフをそろえて、そこに向かって進むということは、私はできると思っていますので、何が目的かというのをしっかり定めなくなくてはいけないという意味で話したということを皆さんご理解してください。
 そして、プロジェクトマネジメントですけれども、いろいろレビュアーがいて、委員会みたいな箱ばかりつくっても全く多分意味はないと思います。最初の段階で、会社で言えば、目的、取り組む意義を示し腹落ちする事が重要です。何でこの事業をやるのですかということです。当然ながら利益貢献を目指しますが、将来の利益貢献に資するための出資もあります。目的、取り組む意義しっかりすべきということがひとつ。レビュアーの中に、いろんなタイプの人、テクニカルの人もいればコマーシャルの人もいれば、科学掘削であればサイエンスの人たちも入れて議論しなければならないと考えます。議論するには、目的、取り組む意義の他に基準をつくる必要があると考えます。多分トラブルのときにそういうレビュアーの人たちの議論が開始されるでしょうから、こうなったら、こうやるといった基準です。前回も話したエグジット戦略にも通じます。こういう状況になったらやめる、こういう状況に改善されたらゴーする、ゴーとノーゴーが分かるような、最初の段階、リスク分析の段階でぼやっとしたものでもいいのかもしれませんけれども、直面したときには、それを提示して、どうするんだということを諮っていかないと、多分ずるずると時間が経過します。井戸は時間とともに孔内の状況は悪くなっていくし、それを止めることはできないので、まず基準をつくることで迅速な判断ができる土台をつくることが大切であると考えます。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。今のお話、私はよく知らなかったけど、「CHIKYU+10」というのか、何か会議があったらしくて、そのときに実際に具体的な航海プランというんですか、どういうテーマをやりますか、どのぐらいの時間だとできるけど、どのくらい時間ないとできませんよとかいうのも含めて、具体的に年間どのぐらい航海あるんですかと聞いたら、JAMSTEC側の方が、そういうことは考えないで、プランだけポッシブルかどうか考えなさいと。そうすると、そこに出席した委員の人は、そうだと具体的にプランも考えられないということがあったと思うので、今の基準というのと、もう一つは、前提となる重要な因子、束縛因子という、航海どのぐらいですよとか、そういうのが与えられると、実際にできるかどうかというのも。例えば3航海でとか、4航海でとかいったら、こっちのプランをやったほうがいいんじゃないか、このターゲットのほうが妥当じゃないかとかいう判断もできますけど、そうじゃないとできないから、前提と基準を明確化したデシジョンする委員会というのか、グループというのか分かりませんけど、そういうのに必要だということですね。
 航海の数については、実際にお金云々というのとリンクしていますので、明快には言えないと思いますが、一方で、この委員会で、例えばの話ですけれども、「ちきゅう」の期待、実際に科学掘削の部分と、それから社会の要請で始まったと思われるSIPとか、そういう資源関連といったらいいですかね、資源関連と地層貯留かな、そういうのも含めてニーズがあるから、また上のほうに、理解してお金をつけてもらえませんかとかいう話という方向と、実際にお金がないからできないとか、その部分については後で議論しましょうとかいうことになりましたが、言いにくい部分もあるかと思いますけど、もしもこの件に関して御発言いただけたらありがたいと思うんですけど、大土井課長、いかがでしょうか。
【大土井課長】  ありがとうございます。幾つかあります。
 まず一番初め、窪川先生も言っていらっしゃった件なんですけれども、「ちきゅう」は確かに科学の要請を受けて造った船ではあります。一方で、やっぱり途中から、石井先生おっしゃったとおりで、科学を追求するために高額が必要になって、現実的なところが何なのかという議論が出てきた。だからそこが多分、境界条件と限界になっている、その限界をちゃんと判断しなきゃいけないというのが、多分、阪口先生が言っていらっしゃるような言葉だと思います。
 一方で、さっき阪口先生と巽先生がおっしゃっていたことは、確かにそうなんです。IODPって枠はあるんですけれども、そのプロポーザルを出す側は、比較的、チームはつくりますけど、個人ベースの申請が非常に多い。それがIODPで審査されて、アクセプトされた計画は、IODPの計画にはなるんですけれども、それは必ずしも日本全体の計画ではない。日本の研究者の計画であって、それを実際にやるかどうかの判断というのは、さっき阪口先生の質問に倉本理事が答えられたように、JAMSTECの理事長が判断する。そこには、JAMSTECの理事長がどう判断するか、そこの仕組みがやっぱり本当は必要だと思うんですね。数多あるであろう「ちきゅう」を使った掘削の中で、この掘削計画が一番であろうということをJAMSTECの理事長が判断することになるんですけれども、そのときには現実的に工学的な実現可能性もあり、ほかのアカデミアとの優先順位の議論もありなんていうことを本当はやらなきゃいけないんだろうと思っています。
 その点、今日の資料の61ページ目ですか、倉本理事の資料の、今後の「ちきゅう」を用いた海洋掘削についてというところは、そこに対して責任持って我々ちゃんと判断を今後していきますという話をされておられるので、ここの仕組みづくりというか、そこは、今ここで先生方が議論されておられます国のほうの審議会の土俵でやるのもいいでしょうし、JAMSTECを中心としたアカデミアとの会議体をJAMSTEC主体でつくられてもいいかもしれないし、そこは最後の最後、JAMSTECの理事長が判断するときにバックボーンになるものというのが必要になってくるんだろうなという気はしています。
 今日の議論でもありました、国のほうがしっかり予算つけていないと、確かにおっしゃるとおりです。本当に申し訳ないなと思っています。予算が足りていないのは重々承知をしています。そうは言いつつも、僕らは、つけられるものなら、本当につけたいんです。そこの理屈に、例えば今回の議論、あるいは今までの議論にあったとおりで、地震防災である、資源である、なんていうものが出てくれば、僕らはそれをより一層、応援団のカードとして使いやすくなりますので、非常にありがたい方向性かなと思っています。マントルを掘りたいというだけのカードからプラスアルファになるのであれば、当然僕らは切れるカードが増えますので、それは財政当局、あるいは省内でも予算を取っていく理屈にはなってくる。そこは、ただ単に科学者がやりたい、科学者のニーズは大変必要なんですけれども、科学者だけじゃないニーズがあるよということをさらに入れるようになるならば、これは我々としては非常にありがたいことだなと思って、今日の議論を聞いておったところでございます。
 すみません、ちょっと私が思ったことをばっとしゃべってしまいましたが、ほか、もっとこんなことを言っておけということが、あればぜひ教えてください。お願いします。
【川幡主査】  何かもう少しありますか。いいですか。
 お金のことは実際に、今までちょっと不十分だったから効果が少なかったという部分もあるかもしれませんけど、一方で、こんなニーズあるから、今後頑張って取ってきてくださいというのをここに書き込んでおくのが。しかもそれがリーズナブル、やっぱり相手から見てつけたいなと思うような、きちんとした内容があることが前提となりますので、そういうのは委員会の中で、「ちきゅう」が期待されているというのは、みんなの共有できた概念かと思っていますので、書いていければと思っています。
 ほかにありますでしょうか。
 阪口先生、お願いします。
【阪口委員】  川幡先生、委員長に質問なんですけど、今、「ちきゅう」が期待されているとおっしゃいましたが、誰に期待されているんでしょうか。
【川幡主査】  それはね、納税者でいいと思います。
【阪口委員】  でも、私、さっき言いましたように、「ちきゅう」はマントルに到達してくれる船だという期待じゃないんですか、納税者の一般的な。もちろん専門的な、我々も納税者だから、巽先生とかが違うことを期待しているかも分からないんだけど、一般論として納税者が期待しているというのは、「ちきゅう」に対する期待というのはそこじゃないんですか。
【川幡主査】  僕はあんまりそうは思っていなくて、なぜそう言うかというと、理由があって、J-DESCで、コミュニティーで結構議論しました。そのときにマントルに対しては、もちろんニーズとかいうのはありましたけど、それ以上に、さっき言った5項目、アクティブマージンに関連した海溝型地震と、それから火山、気候変動は毎日の生活に関わる、あと技術開発というのは物すごく理解があったと思いますし、みんなに夢を与えるというので、特に実績でいったらバイオという感じで、あとプラスのマントルという感じだったので、少なくともコミュニティーのほうからは、マントルが90%という今の御発言みたいなのはなかったと思います。だから言っているんです。だからそれで……。
【阪口委員】  私、別に否定しているわけじゃなくて、だとすると、海洋地球課にも、それから財務省にも、その声があんまり響いていないと思うんですよね。例えばアメリカがアポロ計画とかを実行するときに、あの周辺の本を読むと、やっぱり相当レジスタンスもあったけども、決定されて、人類初、月に到達したじゃないですか。そうすると、ああいうアメリカの財務を突き動かす理屈というか、そういうものをやっぱりもうちょっと立てないと、何かの役に立っていないとか、防災の観点でとかいう、そういう冠がつかないと科学は動かないという方向に向かってしまっているというのは、私は結構悲劇的だと思っているんですよ。
 なので、過去、歴史にきちんと学んで、国の財務を突き動かす科学者の要望の理論武装は何なんだということを、やっぱりもう少しブラッシュアップして、そういう活動もしていかないと、本当に科学者が必要で、かつ大きな予算を伴って動かす船を使う研究というのが進まなくなっちゃうと思うんですよね。なので、その部分――その部分というのは、過去ヨーロッパにおけるITERだとか、それ系の、すぐに役に立つなんてとても思えないけども突き進んだ例はどうやって達成されたのかということも考えた上で、例えば、大土井課長の心を突き動かさないと、まず動かないわけですから、誰かの役に立つとか、防災にという冠をつけない限り大土井課長が動かないという状況をまず打破していかないといけないと僕は思いますね。
【川幡主査】  有益な御発言ありがとうございます。私が反論するのも変だけど、科学者が。とはいえ使っているのは税金だから、だから納税者が大事という論理です。
 課長、お願いします。
【大土井課長】  すみません、もう十分に響いてはいるんですけど、一方で、今日の議論にもちょっと出てきましたけれど、やっぱり、ある一定の予算をつける、あるいは一定の研究をしていただくときに、それで裨益する研究者の規模感とか、あるいは主語が人類になったときに、人類がまだ知らないことを知ることができるなんていうキーワードは、それこそ文科省がしっかりサポートしていかなきゃいけないところだと思っています。ただ、お金さえかければ何でもできるというわけでは当然ないので、それに対して、やっぱり費用対効果というか……、費用対効果という言葉は変ですね。それによって研究がより一層進むことができるであろう研究者の方々の規模感というのは、やっぱり僕らは一つ大きなキーワードとしては常々意識しているところではあります。
 これは、すみません、雑感ではありますが。
【川幡主査】  重要な根幹に関するところを今議論しています。ほかにコメントお願いします。
 巽先生、お願いします。
【巽委員】  今まさに議論されているところというのは、第2回委員会でしたか、私がサイエンスのところのレビューをしたときに申し上げたことに通ずるところがあると思います。あのときのことをもう一度申し上げると、我々はあの当時何をしたかったかというと、世界をリードするような研究を日本から発信して、世界をリードするような科学をやりたかったわけです。そのためにIODPの科学テーマも我々が中心となってつくって、それを実行することはJAMSTECの理事長は当然オーケーしていたからこそ、ああいう計画を立てていて、結果的には今皆さん見ておられるようなことになったわけで、その点は反省しないといけないわけですけど、そういうことを考えると、やはり我々が今やるべきことは、いかに世界を取るかということをもう一度考えることだというふうに私は強く思います。
 世界を取るというのは、いろんな考え方あると思いますが、先ほど、納税者の方が何を望んでいるのって阪口さんが聞いて、川幡さんがマントルとおっしゃったんだっけ。
【川幡主査】  逆のことを言いました。
【巽委員】  だけど、決して具体的に納税者の方が、一般の方がこれを期待しているということはなかなか思うんですけど、とにかく我々が日本の技術なり知恵を使って世界をリードしている姿を望んでおられると思うし、私自身も望んでいるし、それは多くの方が望んでいると思うんです。だからそれをやることができるのが、今「ちきゅう」というものがあるということの現実を使うことだというふうに思います。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 先ほどの納税者とかいうのを、もうちょっと、学生にいつも言っているので言いますと、お金自体は、皆さん科研費も含めて、納税者なんですよ。なんだけども、一方で、みんな好奇心がありますよね、それで科学者は動いている、学術といって。なんだけど、基本的には委託されていると僕は思っているんですよ。例えばこの前、小惑星に行って、帰ってきましたけど、みんな応援していたじゃないですか。自分ができないことを、もっと専門の人が、より遠くの小惑星に行って物を取ってきて調べてくれる、そういう、この人なら委託してもいいよという、そんなお金を出して。
 投資と言ってもいいけど、委託というんですかね、自分はできないけど、その代わりに頑張ってやってくださいよという意味の納税者の支持というのがベースにやっぱりあるかなと思っていて、学生にはそう言っていて、そういうテーマというんですか、もともとは個人でもいいけど、それがもうちょっとコミュニティーだったりするまで普遍化したような内容が還元して、最終的に皆さんに、ああ、面白いことをやっていますねというのに還元できたらいいかなというのがありますが、一方で、防災とか減災とか命を守ってくれるのも大事なので、委託されて僕たちはやっているという認識が必要かなというのが納税者の支持という意味だと理解してもらえればと思います。
 ほかにありますでしょうか。
 窪川先生、お願いします。
【窪川委員】  今少し「ちきゅう」から離れそうな、普遍的な議論になっているところもあるんですけれども、技術としてマントル掘削、マントルまで到達、数センチでも到達すれば、技術を開発することが可能であると、荒唐無稽であるということではなく、そういう最初のスタートがあったと思うんですね。予算等々という話が出ていますけれども、その可能であるということが継続している限り、それはやはり実現するのが世界で日本が初めてであるということになるし、その応用、要するに一番難しいところができれば、さっきの遺伝子解析装置もそうなんですけど、1つ突破するといろんなところに派生していくという技術、そういったような見方、そういうふうに見ることもできると思いました。ただ、予算とか、そういうのを全然度外視した、理想的な話なんですけど。
 以上です。
【川幡主査】  はい。
【窪川委員】  実際にマントル掘削まで技術が開発できれば、例えば今の地震の掘削とか、そういったようなことにも、開発として、段階として、次段、発展できるという、そういう見解でよろしいでしょうか。
【川幡主査】  もう一回、言ってもらえますか。
【窪川委員】  すみません。マントルという大きな目標が、掘削という目標があって、その技術開発をすることにより、地震、火山、その他の掘削に関しての技術発展、よりよい技術、よりよい成果を得られるという、そういう解釈をしてよろしいということでしょうか。
【川幡主査】  多分そうじゃなくて、違う技術ですよといっているんだと。
【窪川委員】  違う技術、そうですか。全然違う技術。
【川幡主査】  ターゲットに応じて技術開発が違いますよというのがお話しされたことだと。
【窪川委員】  すみませんでした。そこを確認させていただきました。
【川幡主査】  あとまだ触れていない内容で、国際協力を通じた研究開発の在り方については次回また議論することにして、何かコメントありましたら、今回少し議論しておきたいなと思います。何かありますでしょうか。
 言いにくいかもしれない、取っかかりがないとコメントしづらいかもしれないので、私がちょこっと言ってから皆さんに聞くのがいいかなと思います。
 もともとは、掘削はアメリカが始めたもので、それにヨーロッパと日本が加わってといってやってきましたが、この掘削に関しまして、特にヨーロッパについては、2回前に言いましたけど、非常にコストパフォーマンス高い研究やっているなと、そのように感心しています。今回も「かいめい」の研究はミッションスペシフィックだったと思いますが、日本海溝にわざわざ来て、それで地震がどのくらいの頻度で起こるかというのを堆積物なんかを調べると。痕跡が残っているはずだからといって調べるみたいですけれども、多分驚くような結果がきっといろいろ出るんじゃないかと思いますが、非常に一般の人も興味あるし、社会的要請の減災とか、将来的にそういうのにも役立つしといって、非常に面白いテーマだけど、それにJAMSTECの船の「かいめい」が御指名で使用されたというのは非常にいいことだなと、そのように思っています。
 というところで、コメントお願いします。ほかでもいいです。まず取っかかりをちょっとと思って私が言いましたが、国際協力。
 鈴木委員、何かありませんか。すみません、困ったときの鈴木委員という感じで。
【鈴木委員】  いつもありがとうございます。国際協力、状況が不透明ということがすごくずっと言われ続けているので、なかなかコメントしづらいなというふうには思っています。以前もお話ししましたように、やっぱり日本はJAMSTECを中心として、これだけの掘削のコミュニティーをつくり上げて、国際的掘削コミュニティーを日本ではJAMSTECで、世界的にはJRのようなところでつくり上げたということは、すごいことなんだと思います。これはやっぱりなかなかそう簡単に、今から新たに何かコミュニティーをつくろうとしても、これだけの国際的なコミュニティーというのは簡単にはできないだろうというふうに思っているので、維持していく。JRが動かない間に「ちきゅう」がそれを担うという発想、「ちきゅう」もしくは「かいめい」が担うという発想は非常に重要なことではないかなというふうに思ってはいます。それはなぜかというと、我々日本のコミュニティーがJRに育てていただいた部分も大きくあるということから、そう思ったりしています。すみません。
【川幡主査】  いえ。どうもありがとうございます。
 先ほど高知コアセンターのときにオープンサイエンスについて言及しましたけど、もう50年ぐらい前から、IODPの前身であるDSDPの頃から、コアのアーカイブはきちんと残して、それで国際的に試料をシェアするというのは、ほかの分野でもやっていない、非常に画期的なことだと思っています。最近、某国では論文を出さないと出世できないとかいうのがあって、すばらしい数の論文が出ているんだけど、その基となるデータとか、基となる試料とかいうのは、出版されてから確認しようとすると、ありませんというのが幾つか言われていまして、こういうふうにサンプルをきちんと残しておく、もし必要なら再分析できるシステムを全世界共通で持っているというコミュニティーはすごく偉大だと思っておりますので、今後とも、ちょっとアメリカどうなるか分かりませんけど、少なくとも50年前からこれを確立していたという、この掘削のコミュニティー自体はこれからも維持されるといいなと、そのように思っています。
 国際協力について何かありますでしょうか。
 地震の分野はどのような協力されているんでしょうか。小原先生、お願いします。
【小原委員】  地震の分野で?
【川幡主査】  国際協力で何かあるんですか。そういうのは。
【小原委員】  国際協力はいろんな形で、国際共同研究とかが行われているので、そういった枠組みの中で、この「ちきゅう」というのは、日本の存在感を示す意味では非常に重要なファシリティーじゃないかなというふうに思いますので、これは十分に活用していただけるといいと思います。
【川幡主査】  実際には、そこから得られた地震波とかそういうのも、国際共同研究という下に解析されたりとかしているんでしょうね、多分。
【小原委員】  コアサンプルの解析は、まさに国際共同研究で実施されていることが多いですね。
【川幡主査】  あと地震計の中に入れる地震波とか、そういう。
【小原委員】  地震計の開発のところで国際協力はあるかと思いますけれども、あとは、取れたデータについては、まさにオープンサイエンスというか、オープンデータなので、世界中の人が利用できるような環境になっています。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
 阪口先生、お願いします。
【阪口委員】  国際協力は、僕、2通りあると思っていて、例えばアメリカに、そうじゃないとは思うんですけども、ここはおまえのところの国で保管しとけと言われてやるような国際協力と、自発的に行うことで、他国の研究者及びいろんな方から尊敬され、感謝される国際協力というのがあると思うので、当然、言わずもがな後者が大事で、そこに何か自国に役に立つとかということをあまり追求もせず、やはり国際的なリーダー国として国際協力を進めていき、その結果、他国からしっかりと尊敬される国になるための国際協力というのが非常に重要だと思います。
 その意味で、高知コアセンターの活動というのは僕はすごく重要だと思っています。あれが、アメリカからの金が切れるとか、何か金の切れ目が縁の切れ目みたいにならないようにしていくにはどうしたらいいかということを考えなくてはならない。今後IODPがどうなっていくかということの、さっき石井委員がいみじくも言われたように、分岐点というのがいろいろ出てくると思うので、その分岐点に対して対応していく策というのをやっぱりしっかり持って、より長期的に、よりたくさんのコアを我が国が保管して、世界中の研究者の役に立つ、そして尊敬される。単に使われて役に立つんじゃなくて、尊敬されて感謝される役の立ち方という、その方法をやっぱりしっかりつくっていくことが最も大事かなと私は思っております。
 以上です。
【川幡主査】  はい。同意します。一番最初のところがちょっと分からなかったんですけど、もともとコアは高知、ブレーメンもそうですけど、日本が誘致したいといって誘致してきたんだと思っていたんですけど、違うんですか。強制されてやったんじゃないと思うんですけど、あれ。
【阪口委員】  強制ではないですけども、そこは「ちきゅう」の活動実績が少ないということをパイチャートが物語っているように、1回預かったらずっと預からなければいけないので、誘致したという話は私も聞いていますけども……。
【川幡主査】  そうそう。
【阪口委員】  その誘致に対してアメリカがどう思ったかということは私は知らないので、その時点では絶対感謝するとは言っているけども、本音はどうなのかというのはよく分かりません、今のところ。でも、1回スタートした以上は、我が国が責任を持って国際貢献するという、その状況は大事かなというので発言した。
【川幡主査】  もともと私、アメリカかな、その委員会か何か――委員会というか、SPCの委員会に出たときにいましたけど、あれは日本から自発的に、預かりたいと。2つ理由がありまして、1つは、日本の研究者がサンプルにアクセスするときに、アメリカまで行かなきゃいけない。私もカナダにいたときにスクリップスまでわざわざ行って、サンプル自分で取りに行ったんですよ。やっぱり自分のところであるとすごく、追加サンプルもできるしという利便性があるので、せっかく日本で船も造るんだから、日本にも置かせてくださいというのかな、誘致してというので始まったと思います。それが継続して、うまく機能しているから、今後、今日の池原先生のお話にもあったバーチャルエクスペディションも含めて、あれは日本発なので、外国を巻き込みながら国際協力、共同研究か何かに発展したらなと、そのように思う次第です。
 鈴木先生、お願いします。
【鈴木委員】  せっかく高知コア研の話が出てきたので、少し補足、私もコメントしたいなと思ったんですけれども、高知コア研、今非常にいい活動をされているというふうに思っています。IODPの中でも重要な活動をされていると思っていて、一方で、今後のことを考えると、施設の老朽化などもありますので、どういう形で日本が支えていくのかということはしっかり議論すべきことかなというふうに思っています。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
 巽先生、国際共同研究を一番最初に始めたのは巽先生なので、コメントお願いします。
【巽委員】  国際共同研究をどうしようかというような考え方で私は今まで動いてこずに、さっきからよく言っている、世界をリードするにはどうしたらいいのかという観点でずっとやってきました。その中で、私の経験で、すごくいい経験をしたなと思っているのは、例えばサイエンステーマをつくっていくときに、大陸地殻の形成というのが、日本から主に言って、全体のテーマに入りました。そんなのは、例えばヨーロッパの人にとってみれば、彼らは大陸の上に住んでいるので、その形成過程はどうでもええわけですよね。どうでもええというのは変な言い方ですけど、そうだったんですけど、やっぱりサイエンスって、面白いサイエンスをつくっていくということは、みんな面白いので、例えば大陸地殻の形成プロセスと、地中海のような内海のところの形成プロセスというのが、これがリンクしたら一体どうなるんだろうというのが第2期のときのサイエンステーマで相当議論されたところで、そういうふうに真剣にサイエンスのテーマで世界をリードしようと思っていると国際共同研究というのは発展するもんだなという実感はあります。ただ、もちろんそのためには相当頑張ってやらなきゃいけないのは確かだと思います。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。いろいろ意見を伺って面白いなと思っていたら、時間過ぎていたというのに今気がつきまして、12時37分になっていました。どうもすみませんでした。最後の議論のところも多岐にわたりましたが、非常に有益なコメントだと正直思っています。どうもありがとうございます。
 ということで、最後の国際協力のところも済みました。じゃあ最後になります。
 ありがとうございました。本日いただいた御意見を踏まえて、報告書の素案を事務局で作成していただき、それを基に今後また議論を深めていければと、そのように思っています。
 本日の議題はこれで終了となりますが、何か最後にお言葉述べたい人いますか。意見とか、強烈にこれはとか。いいですか。
 では最後に、事務局から連絡事項などありましたらお願いいたします。
【事務局】  事務局でございます。本日は、お忙しいところ長時間にわたり、ありがとうございました。本日の議事録につきましては、前回同様、案を作成しましたら、委員の皆様にメールで御確認をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、次回の日程につきましては、7月26日の午前中を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。時間超過して申し訳ございません。今日もすばらしい意見、コメントありがとうございました。
 以上です。
 
―― 了 ――

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研究開発局海洋地球課