海洋科学掘削委員会(第3回) 議事録

1.日時

令和4年6月6日(月曜日)14時15分~17時15分

2.場所

文部科学省15階第1会議室又はオンライン

3.議題

  1. 地球惑星科学分野の研究開発動向について(ヒアリング及び意見交換)
  2. 2024年以降を見据えた国際動向について(非公開)

4.出席者

委員

川幡主査、石井委員、小原委員、窪川委員、阪口委員、鈴木委員、巽委員、野田委員

文部科学省

大土井海洋地球課長、戸谷深海地球探査企画官、伊藤海洋地球課長補佐 ほか

オブザーバー

【説明者】 金子 克哉 神戸大学大学院理学研究科教授、荒木 英一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構海域地震火山部門グループリーダー、中久喜 伴益 広島大学大学院先進理工系科学研究科助教
【補足説明者】国立研究開発法人海洋研究開発機構 倉本理事、研究プラットフォーム運用開発部門江口運用部長

5.議事録

【川幡主査】  ただいまより、第11期科学技術・学術審議会海洋開発分科会海洋科学掘削委員会の第3回会合を開催いたします。
 本日は御多用中にもかかわらず、委員の皆様に御出席いただき、誠にありがとうございます。
 まずは、事務局より定足数の確認及び配付資料の確認をお願いいたします。
【事務局】  事務局でございます。本日は、現在、阪口委員が所用で少し遅れておられますが、8名全ての委員に最終的に御出席いただきまして、本委員会の運営規則第2条に定める定足数の過半数を満たしておりますことを御報告いたします。
 また、事務局としまして、文部科学省研究開発局海洋地球課長の大土井、深海地球探査企画官の戸谷、課長補佐の伊藤のほか、海洋地球課の関係者が出席しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。本日は、議事次第にありますとおり、資料1から資料2-4まで御用意させていただいております。また、後の非公開部分の資料を机上配付資料として御用意させていただいております。委員の皆様には、事前に議事次第を含め資料を一つにしたものと、非公開の配付資料を送付させていただいております。会場にお越しの委員の皆様にも、お手元に同様のものを御準備しております。本日の委員会では、議事に合わせて画面共有させていただきます。
 御不明な点、不備等ございましたら、事務局までお知らせください。
 また、資料1として、第2回海洋科学掘削委員会の議事録(案)を用意しております。委員の皆様に事前に確認いただき、御意見を反映したものとなっております。万が一、追加で修正等ございましたら、明日7日をめどに事務局まで御連絡をお願いいたします。
 事務局から以上でございます。
【川幡主査】  ありがとうございました。
 議題に入る前に、第1回、第2回の振り返りを少しさせていただきます。
 前回は分野ごとの科学的な総括の発表がありました。この中から今後の議論に重要な点について総括したいと思います。説明を誤りなく表現するため、基本的に言葉は議事録5万5,000字からピックアップしてあります。時間数180分。何かアナウンサーがゆっくりしゃべると300秒だと5万4,000字なので、皆さんフルに御発言していただき、どうもありがとうございました。
 まず、1番目。巽先生の、反省点も含めて総括から始まりました。科学に関しましては、当初考えた科学に関して、達成できない部分も結構あったというのは事実だと思うとの御発言がありました。ただし、一方で、幾つかの分野で日本が主導して、比較的重要な貢献が行われたのも確かで、かなりの科学成果は発表できたと考えています。
 技術に関しては、開発はベストを尽くし、お金のかなりの部分は実際には技術開発に費やされています。プレート境界まで達する掘削というのも掲げましたが、南海トラフでは難しかったけれども日本海溝ではちゃんと成功しているという事実をみんなで確認できたと思います。
 次に、科学・技術と並んで重要なのはマネジメントだという指摘がありました。委員から、自分も別に「ちきゅう」自体をけなしているわけではなくて、一番の問題はやはりプロジェクトマネジメントであると。科学者のニーズ、高度なエンジニアリング、お金を含めたマネジメントがきちっとできることが重要だと。非常に重要な御指摘を受けたと思います。目標の設定に多少問題があって、マントル掘削の独り歩きみたいなところもあったとの発言がありました。
 次、2番目。現状の把握というので、スペック、仕様との乖離を私が指摘しました。米国ジョイデス・レゾリューション号の504Bで1.8km程度の掘削をしましたが、マントルまで残りのシート状ダイク0.2km、マグマだまりに相当するハンレイ岩4kmを掘りぬくことができませんでした。もしこの時掘れていたら、マントルに達しました。ジョイデス・レゾリューション号では、この岩脈1.8kmのところ、さらに、その下のハンレイ岩層も掘削した経験があり、スペック上はどんどん深くまで掘れるんだと、私も30年前に伺いました。しかし、実際には、現在も上から1.8kmのところにとどまっているというのが現状だというのは、やはり事実として重要かなと。そうしたら、鈴木先生から、「ちきゅう」はいまだに基盤岩の掘削を行った経験がないとの指摘がありました。これも事実であります。
 3番目。次の議論に向けて。「ちきゅう」は評判がよくないかなとかいう石井先生のつぶやきから始まりまして、そしたら皆さん、そんなことはないと。「ちきゅう」の掘削能力というのは非常に高いんだ、「ちきゅう」をけなしたのではない、と数人の委員からポジティブな発言がありました。それに対し御意見ありますかと聞きましたが、反対はなかった。ですから、もちろん反省は必要でありますが、今後もう少し明るい雰囲気で議論したいと考えています。
 地球深部探査船「ちきゅう」なしに実行できない事項も、幾つもこの前の委員会で明らかになっています。「ちきゅう」は、掘削技術取得のための人材開発の場になりました。それからレアアース泥、私も驚いたんですけど、コスト的にも、陸上に届くところまできているとのプレゼンがありました。資源安全保障の面からは非常に重要かと思います。
 また、大水深での開発という目標を進めてきたけれど、メキシコ湾の事故で、少し経費の観点から変わってしまったが、実際には、産業的規模でやるときには、掘削リグで対応するが、最初は「ちきゅう」でパイロット・スタディーをやったらという感じで考えていますよとありました。
 この前、あまり言及がありませんでしたが、経済産業省は2050年ゼロエミッションに向けて、二酸化炭素の地中貯留を積極的に進めましょうというふうに言っています。この間、JpGUされていました。
 今後の発展として、サイエンスに関しては、最深部も掘ったら出てくるようなエキサイティングな科学というより、ダイナミックな地球を知るために科学を進化させて、それからエボリューションさせるという手法を今後私たちは目指すべきだというのが巽先生の総括。また、反省を踏まえて今後こういうふうに実行していこうとJ-DESCがまとめた科学計画、それは非常に妥当なものだと理解しているという御発言がありました。
 また、減災などに関しましては、多点での展開が必要ですねというのが小原先生のほうから指摘がありましたが、減災するためには掘削だけじゃなしに、まず理論、掘削、モニタリング、モデリング、この4つを協力させてやっていく。これもプロジェクトマネジメントでありますが、それが問われていますよという指摘は非常に重要かなと思いました。
 その他に、資源と、あとCCSすなわち海底下地層貯留への期待もあったということを述べておきたいと思います。
 いずれにしても、今後の期待という発言も随所にあったというのは事実だったと思いますので、それを総括の中に今述べました。
 最後になりますが、前回からの確認事項で、議論の対象とする時間レンジは数年、マキシマムでも10年程度として、現実的な、地に足をついた議論をしていきましょうということであります。
 もし間違っていたら御指摘していただければと思います。これを出発点に、今日議論したいなと思います。どうでしょうか。よろしいでしょうか。
 じゃあ、先ほど申しましたが、もう少し明るい雰囲気で議論したいと思います。よろしくお願いいたします。
 では元に戻りまして、本日は火山・火成活動分野、海底観測研究分野、地震研究分野、マントルダイナミクス研究分野における研究開発動向をヒアリングいたします。最初の分野は神戸大学の金子克哉先生、次はJAMSTECの荒木英一郎先生、地震研究分野は野田委員、マントルダイナミクス研究分野は広島大学の中久喜先生、それぞれに話題を御提供いただきます。よろしくお願いいたします。
 それではまず、火山・火成活動研究分野について、神戸大学の金子克哉教授から話題提供いただきたいと思います。金子先生、10分程度でよろしくお願いいたします。
【金子教授】  神戸大学の金子と申します。私からは、自分の研究分野である火山の研究、また、火成活動に関する研究ということで、これまでの掘削の例とか、そして今後どうあるべきかということに関して、私としての意見をちょっと御紹介したいと思います。
 今まで火山学とか火成活動学、マグマの活動、マグマの動きと言うべきでしょうけど、マグマに関する海底掘削というのは行われてきました。、基本的に海底のものというのは、火山にしても、火成活動にしても、実際に物を取るという、私の場合だと、火山噴出物あるいは火成岩なんかを実際に取って分析するということを通じて研究を行います。陸上では手に入らないものなので、海底での掘削とか、あるいはピストンコア、ドレッジといったような、海底における試料採取が必要不可欠です。
 また、火山分野などでも陸上なんかでは火山の掘削が数多く行われてきて、非常に重要な成果を上げてきました。一つは、陸上であっても火山というのは上に、例えばこの図ですと、多分これ富士山ですけども、上に新しいものがかぶっていて下が見えないので、その火山発達史を知るためにはやはりやはり掘削というのは非常に大きな手段であります。また、火山の地下構造、どのように物がたまっているかどうか、そういったものを知る上でそこは非常に重要です。また、熱水の研究とか、あるいはその観測機設置のための観測井というのがこれは陸上ではこれまで行われています。それで、実際問題として、掘削というのは火山、火成活動においては、もう海底にしても陸上にしても非常に必要不可欠な方法なのだというふうに認識しております。
 海洋に限りますと、今まで重要な海洋掘削というのは、私はこの3つじゃないかなと思ってまとめてみたんですけども、一つは、皆さんは御存じだと思いますが、海洋底の拡大軸の掘削で、これは地球の火山活動の70%が大体ここで行われているわけなんですが、それに関して、割と大深度の掘削も含めて行われています。これにより、海洋の地殻の構造とか、地殻内部の過程、オフィオライトとの整合性、あるいは層状貫入岩、あるいはハンレイ岩とかというのが分かってきて、そしてマグマとマントルが反応するというようなプロセスや、地殻の変成作用なんかは分かってきました。
 また、巨大火成区といいますが、LIPsとよく言われるんですけども、これはおおむね洪水玄武岩と言われる、非常にまれな現象なんですけども、それのたびに地球の環境、生命に対しても大きな影響を与えたのではないかと考えられる、海底に広がる非常に大規模な火山帯です。これらがどのようにできたかというようなことを掘削によって噴出物を調べることによって、その成因が明らかになってきましたが、まだまだなかなか性質が多いです。現在もこれは恐らく、今後も行われるかもしれませんけども、基本的にはさらに取ったものをいろいろと考えるステージに来ているのかなというふうに思いました。
 また、我々が暮らす日本のような島弧、これは特にJAMSTECなんかで伊豆-ボニン-マリアナ弧の掘削が行われて、日本のような沈み込み帯の掘削が行われて、島弧の進化成長史などに非常に重要な理解をもたらして、今後も行っていくべきものじゃないかと私は考えております。
 ちょっと陸上の掘削として話を移すと、火山を掘削して、その上で火山の歴史を知るということは基本的にはいろいろ行われています。特に陸上でやった火山掘削として重要なのは、例えば、ハワイのマウナケアにおいて割と大深度の掘削が行われて、基本的にホットスポット火山の成長過程というのが非常によく分かるようになりました。
 あるいは、これはまたちょっと話が違うんですけども、ハワイのキラウエアの溶岩湖によって、マグマが噴出した後に窪地にたまってが固まる過程を観察したんですけども、固まりつつある溶岩湖の過程というのがよく分かりました。、これはマグマだまりなんかにも応用が利きますし、実際にマグマがどのように流動し、結晶の中での結晶沈降、分化過程がどのように起こるのかということが非常によく分かった。これは古い研究ですけども、非常によく分かったというふうに認識されています。
 また、話題を日本に移しますと、小型カルデラ、3kmぐらいのいわゆる大規模カルデラとは違うんですけども、その地下構造というのが、陸上のカルデラ掘削によって明らかになってきました。このじょうごカルデラと言われるものは今までよく分かってなかったものが、噴火によって砕けたものが基本的にたまっているという内部構造なんかが明らかになって、カルデラ研究の一つのマイルストーン的なものになりました。
 また、最近ですが、ちょっと前に雲仙の掘削プロジェクトが行われて、1990年から95年の噴火があったものの、その火道を直接ここから掘削して、実際中まで入れたということがあります。この結果、この辺の火山の構造がよく分かりましたし、激しい熱水変質などが起こっている、また、それで非常に急速に冷えてるなんていうこともよく分かりました。ちょっとまだ、その成果という部分ではサンプルを取り足りない部分もありますけども、1回目の初めての掘削であり、非常に意欲的なものであったというふうに思っております。
 今後の海底掘削の話に入ります。どのようなことを行っていくべきなのかなというのを考えますと、私としては、ターゲットを厳選して、非常になるべく深い掘削によって、学術的なあるいは実用的な進展があると考えております。
 以下のものが特に重要じゃないかなと思っています。一つは、カルデラ構造のための掘削。これ、後で少し詳しく話します。一つは、海底火山堆積物理解のための掘削。また、大陸地殻形成過程の理解のための掘削。皆さんも話題にしていると思いますが、モホールです。
 火山においては、地下深くなればなるほど陸域と海域の差がなくなるので、それゆえ海域の火山掘削というのは、その海域ならではの特徴が表れる噴火解析物とか、あるいは、地下数mまでぐらいだと思うんですけども、比較的浅部の構造研究のための掘削に意味があるのだと、私は思います。また、地殻マントルとかテクトニクスに関係した火成活動の研究においては、今後も海底掘削は非常に重要だと思います。
 今4つ挙げたので、少し紹介しますと、まず、火山構造の解明なんですけども、現在、神戸大学では、海底陥没カルデラ火山である鬼界火山の研究に非常に力を入れて取り組んでおります。カルデラ火山というのは複数回の噴火があって、その結果一番最初の噴火によってカルデラの構造ができているんだと考えられているのですけども、その際に噴火がどのように起こるかというようなことは、よくまだ分かってない部分もあります。例えばリングダイクといって、落ちたところ、こういうところから全部にわたって、こういうところから全部噴出するのかとか。これ、熊野酸性岩なんかではそのような構造が解析されたカルデラでは見えています。
 また、鬼界火山ではいろんな堆積物の関係、分布から、中心噴火、こういうリングダイク噴火でなく中心噴火ではないかというようなことも言われていて、一体どのような噴火なのかというのは、やはり掘削によって分かることだろうと思います。また、こういう断層などをきちっと掘削によって理解することによって、陥没メカニズムなんかが明らかになるものと期待します。
 また、浅い部分において、海底の場合だったら、地下水や熱水構造は特に海底を特徴としてどのようになっているかというのは、海底の火山によって、海域火山の掘削によって明らかになるのだろうと思います。ここら辺のことはまだよく理解されていないところです。
 次です。海底噴火堆積物に関してなのですが、海底で大規模な噴火が起こると、浅い場合だと、海上を流れる火砕流であったり、あるいは中を流れる火砕流であったりすることは、こういうのは同時に起こると考えられます。
 この辺のことはまだやはりよく理解されてなくて、今回、数年前に鬼界カルデラで100mぐらいの掘削をした結果、この海底にたまった火砕流の堆積物のコア試料を得ました。そうすると、これ陸上のコア試料とは非常に大きく産状が異なっていて、海底において大量のマスフローがあったときにどのように広がっていって堆積するかというのは、こういった海底の噴火堆積物の掘削によってのみ、距離を変えるとどんなふうに変化するかとか、そういう例えば、今回やったのはここら辺なんですけども、これが遠ざかるについてどのように変化していくかというのは、この拡散や堆積過程を解明するのは、まさに掘削によってのみ行われることではないかと思います。
 また、大陸地殻の進化に関してですが、これまでJAMSTECを中心に伊豆-ボニン-マリアナ弧を対象にして、様々な研究が進められてきました。非常に魅力的な研究対象として、大深度の掘削も、これからトライも含めて今後も継続すべきではないかと考えます。
 要は、若い沈み込み帯の火成活動域の掘削によって、このまさに現在成長している大陸地殻の構造を解明し、その大陸地殻の発達過程を調べるという、大陸地殻の発達というのは、我々の分野で非常に基本的な問題です。堆積岩の深部構造、あるいはマグマだまり産状、また特に現在、伊豆-ボニン-マリアナ弧では、日本の陸域とは異なる非常に性質の異なっている巨大かつバイモーダルなマグマ活動というのが起こって、それがどのようなメカニズムで起こっているかを調べるというのは、非常に価値あることだと思います。これもやはり、掘削によるサンプル採取によってできていくことだと思います。
 最後にモホールなんですけども、これは私から言うこともないのかもしれませんけど、本当に2次作用を受けていない通常の海洋地殻とマントル、及びアウターライズなどで沈み込み直前のプレートの状態を調べるという、そのモホールの地殻の水の付加プロセスなんかを調べるということは重要なのだろうと思います。
 また、防災としてどのような意味があるのだろうというのをやりたいのですが、防災に関しては、割と短期的な予測というのと、長期的な危険度を評価するというのと、もし起こった場合にどのようなことが起こるかというのを評価するという、この3つが防災に関して資する情報なんだと思います。このような危険度を評価するということに対して、最初の推移予測とか割と短期的予測に関しては、掘削とはあまり関係ないのかなとは思うのです。でも、危険度を予測するということで、特に海域の噴出物の拡散、堆積過程の理解というのは、これは掘削によってその試料を解析することによってだんだんと見えるものだと考えます。どのようなことが起こってくるのか、これは要は海底火山の歴史を知るということによって、危険度の評価というのはなされると思います。
 また、海底の堆積物を掘削することによって、どのような拡散や堆積過程が進行しているのかということは、海底火山の危険度の評価、あるいは起こった場合に何が起こるかということを知るための試料であって、海域の火山の掘削というのは、この面において重要になるのではないかと思います。
 ということで、ちょっと取り留めがなかったのかもしれませんけど、まとめとしては、これまで掘削によっていろんな計画の掘削が行われて重要な成果が得られてきました。
 火山研究に対しては、掘削というのは海底堆積物、浅部構造の解析にとって重要。また、火成活動あるいはテクトニクス研究、さっき言った地殻の発達と、そういうものは海域に非常に重要な対象であり、掘削がすごくその点において有効だと思います。
 ということで、今後、ターゲットを厳選したなるべく深い掘削によって、学術的な、あるいは実用的な進展というものが期待できるのではないかと私は考えます。
 ということで、以上になります。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 全般的に全部お話しいただいてありがとうございます。巽先生、補足するところありますか。専門同じだから。
【巽委員】  補足というか、むしろ金子さんの御意見をお伺いしたいと思います。火山研究もしくは地球科学としての火山を対象とした掘削研究のターゲットというのは、まさに今おっしゃったようなことで間違っていない、もしくは正当な道だと思うんですけども、防災という観点で見た場合に、恐らくこれから荒木さんもお話しされるような観測というものと、掘削もしくは陸上の調査というものを全て合わせて、例えば30年、50年、100年程度の予測というものがすごく重要になってくると思います。この辺り何かお考えありますでしょうか。こういうふうなことをやりたいとか、こういうふうなことが重要であるとか、もしくはこういうふうなことをするために日本としてはこういうふうな努力が必要である、といったお考えありますでしょうか。
【金子教授】  なかなか難しいことなんですけども、何でも掘ればいいというものじゃなくて、掘削として重要なのは、やはり活動度の高い火山に集中した投資をして、それによって火山活動史など、どのようなことが分かるかということ、つまり掘削の有効性、重要性を評価することかと思います。やはりよい研究対象を通じ、その掘削によって、そのようなこういう長期予測に資するデータが出るかどうかということをもっと見極めるような研究が必要です。例えばそういう意味では、やはり活動度の高い鬼界火山なんかは比較的いいんじゃないかと思うんですけども、そういうところでの堆積物あるいは火山の発達史研究などにより、それが果たして評価できるかということをまず考えていくことがよいのではないかなと思います。そういうように考えます。
【巽委員】  ありがとうございます。きっと金子さんが言いたかったことをもう少し補足すると、例えば地震波とか電磁波とかいろんなものを使って火山の地下構造を調べて、それが噴火予測につなげるという努力は一つの方法としてあると思うのです。
 ただそれは、掘削という作業が伴って、その地下をつくっている実際の物質がどういうものであるかということと反映しながら、もしくはお互いのそのデータを交換しながら精度を上げていくということが必要不可欠になってきて、そういうふうなことが合わさって初めて、比較的精度のよい、確度のよい予測につながっていくんだろうと思いますので、そういうふうな総合研究が必要だということだと思います。
【金子教授】  そうですね。先ほどちょっと言い忘れたんですけれども、堆積物において掘削というのは、単純にどういうものが起こったかというよりも、今言われたような例えば反射法地震探査による層構造で、一体それが何かということを評価する上でも非常に重要なデータになって、そういう点でも総合的な研究の中で掘削というのは位置づけられて、その掘削することによって、後で、反射法地震探査などで得られた層構造で、これは何だ、あれは何だということが、より分かるわけで、そこら辺は非常に火山の掘削における非常に重要なことではないかと思います。総合研究も含めてということです。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。ちょっと時間があるので、あと1つぐらい質問とかコメント受けたいと思いますが、委員の先生、いかがでしょうか。後でまた30分ぐらいありますけど。よろしいですか。じゃあ、次に行かせてもらいます。
 どうもありがとうございました、金子先生。
【金子教授】  どうもありがとうございました。
【川幡主査】  続きまして、海底観測研究分野について、JAMSTECの荒木グループリーダーから話題提供いただきます。荒木先生、お願いします。
【荒木グループリーダー】  よろしくお願いします。では始めさせていただきます。
 まず、私の研究開発動向ということなんですけども、私は、南海トラフにおいて地震研究・観測技術研究のコンテクストで20年程度活動しています。その視点ですのでちょっと偏ったものになろうかと思いますが、その中で海底ケーブルを使った観測というものと、そういう掘削というものを融合させるということに努力をしてきました。観測ケーブルということで、非常にリアルタイム性の高いような観測ができて、つないでいる観測のパフォーマンスを上げるということで、飛躍的な発展をなすことができたというふうに認識しています。
 まず、南海トラフの地震発生帯では、2006年以前では非常に少ない観測体制だったんですけれども、巨大地震の発生が危惧されるという中で、実態把握とリアルタイムの防災対応を兼ねるという目標で、観測網の開発と展開を10年程度かけて実施しました。その結果として、DONETは、DONET-2というのが今現在稼動しておりまして、その中では、観測点を増やすというだけではなくて、観測装置の広帯域化ということで、高い能力にするということ、質を上げるということをやった結果、これまでには解析できなかったようなゆっくり地震のメカニズムを非常に詳細に解析できるようになるという、観測網によって新しい窓を広げるということを実現しています。
 その中で、DONETは、地震と津波というものの観測を目標にしていますが、海底地殻変動というものを把握するためにはちょっと足らないということで、IODPの南海掘削計画において、長期孔内観測システムの開発と展開を行いました。さらにその観測システムをDONETに接続するということで、長期的な観測を実現しています。
 現在、3点の観測装置が入って稼動しているということは、小原先生のほうからも前回お話あったと思いますけれども、観測を長期的に行うためには、やはりネットワークにつながるということで非常に確実な観測が行えるようになったということを、ここでは繰り返し述べたいと思います。
 観測装置の電力をもらって、さらにデータを送り返すということをやるだけでなくて、そのデータの時刻づけを正確にできるということがあります。それによって得られるデータの数を飛躍的に高めるということが期待されています。
 そういう観測を実施した結果によって、南海トラフの浅部では、これまで知られていなかったゆっくり滑りが繰り返し発生しているということを見いだすことができました。その詳細についてはここに書いてあるとおりですけれども、DONETではゆっくり地震というものが見えておりましたけれども、掘削孔で初めて、ゆっくり滑るような、さらにゆっくりとした現象を知るということができました。
 この結果は、現在ではモニタリングのフェーズになっておりまして、国に定期的に報告をしておりますし、この図を見ますと、時折大きな滑りがある場合がありますけど、特にそのような場合には詳細な解析をして報告するようにしております。
 一方で、この熊野灘では3点入りまして、モニタリングということができているんですけれども、南海トラフ全体を見ますと非常に広い海域であります。ですので、例えばプレート間カップリングが地域によって異なっている様であるとか、巨大地震も連動性があるということは古くから知られているところですけれども、現在のプレート境界がどのような状態にあるかというのは全く把握できない領域が広がっているというのが現状でございます。
 そこで、私たちはより広域、リアルタイムに地殻変動を把握しようということで、技術開発とそれから海域実装に現在取り組んでおりまして、一つはDONETで展開されている津波計が50点程度ありますけれども、これを使って海底の上下変動を把握できるような技術開発を行っています。
 これは、地震サイクル間でプレート間カップリング、GNSS/Aという方式で把握した結果、地域的に差異があるのですけれども、これがリアルタイムにどう変化していくかというのを見ていくことを目指しています。
 それから、ゆっくり滑りの現象を海底でも捉えようという取組でありまして、一つは光ファイバーひずみ計、この右にあるような観測装置を展開しまして、海底のひずみ変化を見るというように取り組んでいますし、こういうふうなボーリングマシンで浅い穴を掘って、そこに傾斜計入れまして、そこでのゆっくり滑りを捉えるということにも取り組んでいるところです。
 もう一つ、技術的に今後有用かなと考えている技術に関しましては、光ファイバーセンシングというものがあります。光ファイバーセンシングはこのポンチ絵にありますように、海底に展開した光ファイバーのケーブル自体をひずみ・温度のセンサーとして用いる技術であります。
 特徴は、非常に稠密、1m間隔ぐらいでその変動を捉えられるということで、非常に多点の観測ができます。また、比較的長距離、最大120km程度の観測ができるのが特徴でありまして、機構では、DONETの整備が行われました関係で運営停止しています室戸沖のケーブルなどを使って、光ファイバーセンシングの研究開発を進めております。
 ここに示しておりますように、地震の良好な観測が行えるほか、例えばこの右にありますような、ひずみの長期間の変動などの観測も行えそうだというところまできています。また、光ファイバーは温度にも応答していますので、例えば海底の温度場の把握手法としても非常に有効だというふうに考えています。これは、海底の、土佐バエという海底面のちょっと浅いところがありますけど、そこの海洋変動を温度を通じて捉えているものと考えられます。
 そういうふうな、海底でいろいろな努力をしています現状ですけれども、掘削孔による観測は決定的に重要だと私は考えています。現在、長期孔内観測では、堆積層の下部とか付加体上部の深度が大体海底下500mから1kmの深さで観測を行っています。私たちはゆっくり滑りというものを特に注目して観測していますけれども、そのような断層の多くは深さ数kmで起こっていると考えられますので、実は、海底下で観測しているといっても、海底での変形と孔内での観測ではあまり変わらないということが期待されるところです。
 しかし、なぜ孔内の観測が必要かといいますと、例えばこのゆっくり滑りを孔内で観測した事例からしますと、観測されているゆっくり滑りの多くは非常に小さな現象でありまして、大体0.1μstrainぐらいの変化量しかないと。それに対して今、努力をして海底で観測をしようとしていますけど、海底で観測した場合も0.2μひずみが何とか検出できるかということで、この孔内で見えている現象の多くは見えないということになります。ですので、海底で広域でやったとしても、規模の大きいものは捉えられるんですけど、全体を把握しているということは言えないんじゃないかということを考えています。
 また、海底面は泥で御存じのとおり覆われておりますので、例えば大きな地震が発生したときには、海底の泥はめちゃめちゃに壊れてしまうというふうに考えられます。そこでの観測は、決して地下の断層温度を正確に把握できない可能性が高いと思っています。しかし、海底などでもいろいろ努力をしているんですけれども、やはり掘削孔の環境というのは、地震の正体を知るという意味では非常に重要な観測だと言えます。
 また、超深部掘削に関しては、南海トラフで目標として実施されてきていますけれども、その再掲ですが、プレート境界は、地震はプレート境界とか地下の断層で起こっているということは常識的な考え方になって、長い年月がたっていますけれども、実際に断層が動く様子を実測しているわけでは当然ないわけです。
 ですので、地震がどのように準備され、どのように進行し、終わるのかということに関しては、科学的に非常に解き明かす必要あるというようなことだと、問題意識だと思いますけれども、非常に仮説に基づいて、非常に弱い基盤の上で議論しているというのが現状だと思います。
 ですので、南海トラフの超深部掘削では、断層帯を掘り抜いてサンプルを得るとともに、地震発生の場の環境条件はまずピン留めされておりません。それを明らかにするということ。それからそれがどのように振る舞うのか。断層帯が地震の準備に関してどう振る舞うのかというのを実測するというのが目標だったと思います。これらの目標、どれも達成はされていないというふうに私は考えています。ですので、その達成に向けて再検討して、ぜひ実施できればというふうに私は思っています。
 現在の掘削孔の観測は非常に有用なものでありますけれども、この2番の場の発生条件というのは全然届いておりませんので、できないと。それからこの振る舞いについても、ゆっくり滑りの観測はできておりますけれども、かなり離れた場所からぼんやりとしたイメージで捉えているというのが現状かと思います。
 掘削科学は、掘ってサンプルを浅いところで得たことによって、仮説が進化して、それを実装するというようなこと、サイクルを半分ぐらい回したところだと私は思います。ですので、南海トラフで当初目指した目標達成の重要性というのはますます高まっているのではないかと思います。ですので、技術革新を行って、実現のロードマップを再び設定すべきではないかというふうに私個人は考えているところです。
 将来展望としましては……。
【川幡主査】  すみませんが、10分越えたので、急いでもらえますか。
【荒木グループリーダー】  はい。将来展望としても南海トラフに3点のゆっくり滑りを観測するという目標の観測網を提案していまして、一部、予算措置されておりますので、これを進めているところです。また、現在DONETの開発から10年経過しまして、通信技術の発展とか半導体の世代交代という世の中の変化がありまして、当時の技術をそのままつくることはできなくなっています。このため私たちは、DONETでの開発に加えて、近年の技術発展を反映させた新しい装置の開発を構想しまして、その中には光ファイバーセンシングという先ほどお伝えしたような技術を導入するということを考えています。非常に高いポテンシャルがありますので、これを構想しているということです。
 それから、超深部掘削に関しては、これまでの観測方面の困難は高温環境でも長期間安定して動作するという機器の製造が困難だったことが大きいんですけれども、これに関しても光ファイバーセンシングの活用が考えられます。現在で高温の対応は十分されているような開発が行われておりまして、生産井などでの観測も実用化されているというところです。
 ですので、物理パラメーターの観測に関しては、掘削がされれば、このような観測を実施することは十分可能だというふうに考えられます。また、光ファイバーは、このような地球科学的な生物的な観測のデータを光で送るというようなことも研究されておりますので、こういうふうな活用を超深部掘削で行っていくことは非常に有用かと思います。
 最後に、もう一つの点ですけれども、海底のデータの利用というのは現在、研究のためだけではなくて、民間の利用、自治体の防災対応の利用なんかも進められております。例えば、この左に書いたものは、DONETの津波データを使って、ローカルな津波警報の利用を自治体との間で共同開発したような成果でありますけれども、このようなものは掘削孔での観測は信頼性が高いということが期待されますので、防災利用のポテンシャルに非常につながるものと考えています。
 ですので、IODPなど科学掘削計画で培ったいろんな技術を使って、民間主体の観測網構築も可能性としては考えられると考えています。CCSなど、海底下環境の産業利用が進められる中、科学ベースの技術を民間のそういうふうなものに使っていくというのは非常に重要だと思っています。
 それから、海底観測のデータはリアルタイムに得られるということで、科学研究だけではなくて様々な応用が広がりますので、融合したものに考えていくというのが非常に重要かなと思っています。
 ちょっと駆け足ですが、以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。質問、コメントありますでしょうか。
 小原先生、お願いします。
【小原委員】  荒木さん、どうも御説明ありがとうございました。
 紀伊半島南東沖では、長期孔内観測装置が3点設置されたおかげで、スロースリップの動き、その発生する場所であるとか、移動もかなり正確に捉えられたと思います。そういった観点では今後、南海トラフに展開する計画では、長期孔内観測装置の設置は各3つのエリアそれぞれ1か所ですね。かなり少ないなという気はしているんですけれども、それ以外に、浅い傾斜計とかひずみ計とかを設置もされているということですが、それでカバーできますか?
【荒木グループリーダー】  正直なところを言いますと、なかなか厳しいというのが実感です。ですので、やはり現状では、予算の規模などの問題がありますので、やはりこの紀伊半島のパイロットケースをてこに、広域展開をするという辺りを掘削孔に関しては考えています。当然その光ファイバーのセンシングはじめ海底での技術も並行して進めていますので、それらを合わせて何とかというようなところが正直なところです。
【小原委員】  なるほど、分かりました。ありがとうございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
 私から阪口先生に質問してもよろしいでしょうか。いいですか、阪口先生。
【阪口委員】  はい、荒木さんではなくて?
【川幡主査】  荒木さんではなくて。いやいや、なぜかというと、この南海トラフの件は結構要で、実際掘削と理論とモニタリングとモデリング、これを合体させて、防災減災に生かしていこうということで、マネジメントの力というのがすごく問われているかなと思います。阪口先生は、JAMSTECの色々な部門を統括する研究担当理事をされていたので、何が問題で、どういうところが改善するといいかなというのがもしあれば教えていただければと思いまして。
【阪口委員】  そこのところは正直に申しますと、荒木さんが言われたことが実は正しいなと私は思っていて、計画の半分か半分ちょい以下ぐらいしか進んでないと。そこで投げ出すのではなく、例えば、前回の委員会で石井さんが話されたように、南海掘削では掘削技術そのものというよりは、縦に断層が並んでやっているところをどうやって孔壁を保ちながら掘るかとか、そういう準備が必要ですよね。しかし、準備と戦略というものがあまりなされずに突き進んだために、所定の予算を使い果たして時間も使い果たして、できなかったと。それが敗因ですが、物理的に不可能だったわけではないということが、いろんなところで反省点として指摘されていますね。
 だとすると、私は今、「ちきゅう」を使っていろんなことをてんでばらばらに計画するのではなくて、この南海トラフを中心とした地震研究をやるんだったら、そこは1点集中できちんとやると。それから、先ほどの小原さんの質問にもありましたように、何点あれば非常に確かな情報が得られるのかということを、これはやはり理論と数値シミュレーションの部隊とが一致団結して、観測点の最適化問題という、そっちにきちんと落とし込んでやるべきであって、やはり体制ですね。一致協力して一つのことをやるということをきちんと目標設定をして、その上で体制を組んで、理論的な部分と技術的な部分と資金的な部分をしっかりと固めてやるべきだと。
 というのは、この南海トラフ掘削に取り組まないでいいという国民はほぼいないと思うんです。そうすると、国民からの支援をある程度得られるという状況があるんだったら私は、今言った3つの体制をしっかり組んでやるべきだと。それでとことんやるべきだというのが私の意見で、夢物語で云々とか、何かで予測ができるから云々という話ではなく、一つ一つが分かっていく、ここを押さえればこれが分かるということが、かなり近い話なので、それをちゃんとやれば、南海トラフ、それから地震研究、ここについての掘削というのは、むやみにその大深度、いきなり7,800m行くとかそういうことではなく、着実な計画と、理論、それからシミュレーション、そこを組み合わせてやる体制さえ整えれば、かなり可能性はあると私は考えています。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。ポジティブな意見ありがとうございます。
 では今日、荒木先生は15分しゃべられましたが、今の質問も含めて、1分で答えを全部まとめて言ってもらえませんか。ファクター1分ぐらいで何かみんなに分かるように。
【荒木グループリーダー】  やはり10年の中で変わってきています。ですので、これをやはりちゃんと反映させて、前に狙ったことができなかったということは今度はやるんだということをしっかり考えて、なおかつ民間の力もしっかり入れて実現できればと思っています。
【川幡主査】  また後で、委員から質問があるかもしれませんけど、荒木先生いったんどうもありがとうございました。
 じゃあ次に行きたいと思います。
 次は、地震研究分野について、野田委員から話題提供いただきたいと思います。10分程度でお願いいたします。
【野田委員】  野田です。地震研究分野ということでレビューさせていただきます。自分は地震研究の中でも非常にマイナーな分野にいる人間でして、摩擦実験、シミュレーションなどを通じて地震がどういうふうに起こりそうか、そういうことが分かったらいいなという研究に取り組んでいます。ですので、地震研究といったときに、メインの観測研究とかのほうはあまりカバーできないので御容赦ください。
 門外漢ではありますが、学会などで聞いていて感じる雰囲気、そういったものからちょっと言っておきますと、最近は特にデータの利用・活用の仕方が質的に変わってきているなと思っております。特に最近数年、ぐぐっと出てきましたのは、こういうAIの活用による過去のデータから、地震のカタログ等を膨大な数に増やして、それでいろんなものが見えてくるという研究です。
 左の例は、アメリカのスタンフォード大学のグループの論文ですけれども、通常のカタログ、デイリーカタログみたいなもので、マシンラーニングをやると濃度は全然違うと。それでプロットしたらいろいろ見えてくるであるとか、日本でも内出さんなんかが、JMAのイベントデータなどを使いまして、このメカニズム解というんですけれども、地震がどういう断層で割れたかみたいなやつを桁違いにデータを増やしてプロットすれば、日本がどっち向きに押されていてどっち向きに引っ張られているかというのがぱっと見えるということで、これまで人海戦術で波形の読み取りとかがなされてたんですけども、それが非常に効率化、自動化して、これまでの蓄積データの実力をより引き出せるような、そういう時代になっているんだなと、すごいなと思っております。
 データ自体に関しましても、これまでに、前回の小原先生の発表でありますとか、先ほどの荒木さんの発表でいろいろありましたが、データの量であるとか質的な充実がどんどんなされております。もともと日本は非常に密な観測点がありましたが、それが、こういう面的な、光ファイバーだったら線的な分布に、あと領域に関しましても、陸域から海域へというふうにどんどん広がっていっているという状況です。
 それで、最近、非常に注目を浴びておりますスロー地震、ゆっくり地震に関しましても、発見当初は非常に限られた沈み込み帯でしかないんじゃないかという話だったんですけれども、今やもういろんなところで見つかりまして、ほぼ全てのところであるんじゃないかぐらいの、そういう認識に変わりつつあると思います。
 これ、真ん中の図は京大の西川先生の論文なんですけれども、S-net、日本海溝のところにあるステーションですけれども、それを使ったTremorであるとかVLFの検出でして、見つかっただけではなくて、こういう東北地震の大きく滑ったところでは実際抜けていると、これはステーションがここにありますので、多分ほんまなんやと思うんですけれども、そういうことまで見えてきているとか。
 右の例では、これメキシコですけれども、この地図の範囲の右のほうでM8の地震が起こったんですが、その後にこのゆっくりした滑りがこういうところで起こって、それでローディングされるところで次にM7.2が起こった。その後、それのアフタースリップであるとか、他のSSCが起こったり、そういうスロー地震と大地震の相互作用が見えてき出しているんじゃないかなと、そういう時代に差しかかっているというふうに思っております。
 その中で、これは自分も分担研究者として声かけていただいた案件です。学術変革領域Slow-to-Fast地震学というものがスタートしておりまして、今後いろいろ出てくるんじゃないかなと楽しみにしているところです。
 分野全体的なメインのほうの話は以上です。結構マニアックな自分の専門のほうですが、地震発生物理学というんですか、どんなふうにして地震破壊が起こるのかというところを説明していこうと思います。まず、ちょっと基本的な事項から説明させていただこうと思います。
 地震で断層が割れるときに、破壊エネルギーという量がよく重要視されます。これは破壊面を健全な状態から破壊した状態、滑っている状態、そこに遷移させるのに必要なエネルギーということで、表面エネルギーみたいなものです。もしくは、ジッパーですね、ファスナーを閉じたり開いたりするときに、それの摩擦抵抗みたいなものです。大きいほうがタフな断層面であるというものなんですけれども、これは幾つか仮定を置きますと、地震学的に求めることができまして、これ2015年の論文ですが、横軸が地震の平均滑り量、縦軸が破壊エネルギーということで、こういうスケーリング則みたいなのが見えると。大きな地震ほど強靱な領域が割れたように見えるということになっています。
 この知識自体は大分前からあったんですけど、もし本当にそうなっていますと、破壊力学的には大きい地震は大きい震源核というか破壊核が必要ということで、それはひょっとしたら観測にかかるかもしれないということでうれしいわけなんですけれども、必ずしもそうはなってないと。これ右、パークフィールドの地震のプロットなんですけれども、大きい地震も小さい地震も同じように始まっているように見えると。そういうことがあって、これをどう説明しようかというふうなところはちょっと大きいかなと思います。
 複数の、主に2つのアプローチがあるんですけれども、一つは断層面の不均質で説明しようと。かつてアスペリティーモデルと言われる、こういう地震が繰り返すモデルがあったんですけれども、それが連動するかもしれんというような話から、もっと複雑化した階層アスペリティーという考え方があります。断層面は、凸凹はこういうふうにセルフアフィンな形をしていまして、ラフネスみたいなものがあると。そういったものからモチベートされまして、支配的な素過程はあまり気にしないんですけれども、こんな形に大きなタフなパッチと小さなパッチが混在していると、こういうふうになっているんじゃないかというのが、Ide and Aochiで提唱されまして、これはつまり、もろい小さなパッチが割れたのは小さな地震で、大きいタフなパッチが割れたのが大きな地震であると。こうなりますと、不均質が重要ということで、なかなか断層1点の情報から物事言うのは厳しいということになります。
 このモデルでいろいろ地震を説明する試みがなされておりまして、例えば、左は東北地震に関するIde and Aochi2013ですけれども、本震が始まったところのパッチ、それが1つ割れただけではそれで終わってしまうのだけど、その前震、それが割れたときのこの応力集中みたいなものを使えば、大きい地震に成長できるという準備が重要であったと。前震が重要であった、そういうモデルでありますとか、これは自分の話ですけれども、地震が割れるときだけじゃなくて、ゆっくり滑っているときなんかも記述できるような断層の構成則がありまして、それを使って、もろいパッチと大きいタフなパッチみたいなことをしますと、地震のサイクルのシミュレーションですけれども、一つの歴史の中で、小さいところから始まって小さいだけで終わる地震とか、同じところから始まるけれども、周りが十分に剥がれている状態、そういうときには大きい地震になると。というわけで準備が大事だということが分かってきております。
 最近は、今の階層性を増やすには非常にマシンパワーが必要でして、Slow-to-Fast地震学のモデル予測班というところでは、HPCの力を使ってより多階層をシミュレーションしようと、そういう計画もあります。
 一方で、先ほどは摩擦に関しましてはかなり抽象的といいますか、素過程はあまり気にしないモデルだったんですけれども、一方で、断層、岩石の摩擦の比較的普遍的な性質でそれらを説明しようというアプローチがあります。断層の摩擦発熱とか温度が上がったとか、そういう話を気にするにはこっちの話のほうが親和性がいいと思うんですけれども、これ左上の図は横軸、滑り速度、縦軸、摩擦係数でして、非常に速く、地震時のように速く滑らせると、摩擦係数ががくんと落ちると。そういった話は、もう25年ぐらい前から分かっておりました。
 これ、いろんなメカニズムが考えられているんですけれども、例えば、摩擦発熱で温度が上がって、そこの間隙水圧が上がって、それで摩擦抵抗が低下すると、サーマルプレシャライゼーションと呼ばれるプロセスがあるんですけれども、それを仮定しますと、滑れば滑るほど、だらだらだらだら摩擦抵抗が落ちていって、それでどこかで止まったときには、見かけ上この破壊エネルギーみたいのが増大していきますよというふうな話があります。
【川幡主査】  10分過ぎたので、急いでお願いいたします。
【野田委員】  分かりました。
 それを取り入れたサイクルのモデルとかいろいろあるんですけれども、そういったところにコア試料の物性値を使うことはできますが、1点だけの情報であるということと、不均質性が分からないということで、これで何か将来が予測できるとかではなくて、定性的な、そういった計算モデルにはなるかなと思います。
 ちょっとここら辺は省かせていただきますが、室内実験には課題がありまして、多くの摩擦試験では、細粒部を抽出したりしますが、構造が失われてしまうと。実際に露頭から切り出した擾乱の少ない試料だとすごく弱いという構造をちゃんと残すことが大事であるという話もありますし、あと、人間が室内実験でやりますので、せいぜい1ミクロンパーセカンド程度の実験で、これは天然の断層の滑り速度では非常にまれな領域で、外挿しなければいけないという話です。長い実験も不可能。微物理モデルを構築している一連の研究もあります。まだあるということは、つまりまだ式の形も固まってないということです。そういう現状があります。
 最近はどこまでそういう細かいのをやらないといけないのかということから、摩擦則のスケール依存性が重要であるということで、それをターゲットにした実験等も実施されておりまして、例えばこれは防災科研の山下さんの実験ですけれども、1.5mの断層を使うと、実際にこの摩擦強度がぐっと下がるが、大分低い滑り速度でもそれが起こるであるとか、この面の不均質の状態によってスティックスリップのときの滑る前の状況が大分違うといった話もあります。
 また、最近では、実際の断層を摩擦実験してしまおうという試みもありまして、これ唯一かもしれないと思っているんですが、フランスのグループですが、断層に水を注入して滑らせると。この滑らせるときの滑りなどを測って、そのデータがあって、一方でここの摩擦実験をしたやつから実際に合うかどうかみたいなこともやられています。このケースは、地震に至らない、ゆっくり滑っているケースですけれども、定量的に合うという報告が論文には書いてあるというわけで、非常に限られた状況ですけれども答え合わせも一部されているのですが、地震がサイクルで起こるようなところに関して、果たしてどういう摩擦実験結果をどう使っていいのかというところは、まだまだ全然枯れていない研究トピックだというふうに個人的には認識しています。
 長くなりましたが、以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。有意義な御講演ありがとうございます。
 では、専門が似ている小原先生、何かコメントありましたらお願いいたします。
【小原委員】  似ているというか。ありがとうございました。
 やはり、断層破壊運動を調べるためには、その不均質が非常に重要だということだと思いますけれども、その際にその摩擦構成則については、やはり現場のサンプルを取ってきて摩擦実験するということも非常に重要なことかなと思うんですけれども、その際にやはり岩石摩擦の普遍的な性質を明らかにする上では、どういうサンプリングで断層物質を採取すればいいのかというところがなかなか難しいと思います。どういうふうにお考えでしょうかね。
【野田委員】  それは非常に難しいと思いますね。というのは、未擾乱のサンプルを取ってきて、それがしかも面的に取れればいいんですけども、そんなの恐らく不可能ですし、取れる分しか取れないだろうなというふうには思います。
 それで、サンプルは取ってきて、それがどういうものであるのかというのを詳細に調べるのも非常に大事だと思います。石の性質からアプローチする上では、絶対にそこは避けては通れない、構造を見るというところ。コアサンプルはやはり量が限られて、追試ができないんです。できるのかもしれないですけど、難しいと個人的には思っておりまして、やはりその構造の似たサンプルをいろいろ実験して、その構造と式の形であるとか、パラメーターがどういうふうになってそうかとか、そっちのほうをもっと充実させる事が重要。構造に関してはもう、粒一つ一つまでの勢いで頑張って記載するみたいな、そういうアプローチのほうが個人的にはいいのではないかなと。答え合わせのために少数のコアサンプルを摩擦実験してみるというのはありだと思うんですけれども、個人的にはそういうイメージを持っております。
【小原委員】  そうすると、その粒一つ一つというところでは、そのシミュレーションも非常に活躍できるということですね。
【野田委員】  どうなんでしょう。それが、やはりいろんな素過程があるんです。前半のこのラフネスの話は素過程を気にしてないんですけれども、実際にはその断層滑りだけではなくて、ちょっと説明を飛ばしてしまった部分ですけれども、母岩が塑性変形とか割れるとか、断層が枝分かれしてしまうとか、断層の形状自体は粗いとか、そういったものも重要であるというシミュレーション等も出てきておりまして、ですので、必ずしもその点での摩擦挙動が完全に分かれば、断層全体の挙動が完全に分かるのかというところも含めて、実は仮説かなというふうに個人的には考えております。
【小原委員】  ありがとうございます。
【野田委員】  ありがとうございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。また、後で、皆さんとディスカッションするときに戻ってくるかもしれません。どうもありがとうございました、野田先生。
 では次に、最後になりますが、マントルダイナミクス研究分野について、広島大学の中久喜先生から話題提供をお願いしたいと思います。中久喜先生、どうぞよろしくお願いいたします。
【中久喜助教】  よろしくお願いします。中久喜です。では、ちょっと画面の共有をさせていただきます。これで、スライドが出たかと思います。
 私は、マントルダイナミクスという分野を研究しております。今ひとつ、何でこの場に呼ばれたのかちょっと不思議に思っているんですけど、まず、マントルダイナミクスをなぜ研究するのかなんですが、マントル対流というのは地球の長期変動の原動力でして、プレート運動・地震・火山など、ほとんどの地学現象を力学的・熱的に駆動しています。
 また、その環境に影響を与えると思われる岩石・水・炭素の循環といったものを駆動していて、非常にゆっくりとした影響ではあるんですけども、環境とか生命の進化に影響を与えているだろうと思われます。また、長期の未来、こういうのを予測しても悲しくなるだけかもしれませんけれども、長期の未来への予測もまた一つの課題であると思います。
 もう一つは、重要な地球の特徴として沈み込み帯というものがあるんですけども、日本列島というのは沈み込み帯でして、沈み込み帯のダイナミクスを調べるということは、我々その日本の自然というのを理解するにも重要であろうと思われます。
 それで、こういうのはちょっと余計かもしれないんですけど、マントル対流の研究分野というのはどんな分野で研究されてきたかというのを大きく分けると3つあると思います。1つはマントル対流の構造です。対流の層構造とか、マントル深部の化学的不均質、あるいは物質の循環もまあそうですけども、ちょっと今のところは置いておいて、化学的不均質なんていうのもあります。
 2番目としては、マントル対流による熱と物質の輸送です。例えばマグマによる物質の分化とか混合、揮発成分の輸送といった問題、また、地球が45億年にわたってどうやって冷えてきたのかというのもこの分野の課題になっています。
 最後の1つは、マントル対流とプレートテクトニクスの関係です。これは、プレートテクトニクスというのは、数ある地球型惑星の中で、現在唯一プレートテクトニクスが起こっているのが地球でして、そういったプレートテクトニクスの成因を調べていくというのは、我々にとって非常に重要な課題であります。もう一つは、沈み込み帯のテクトニクスとかマグマ生成を再現するといった課題もあると思います。
 それで、マントルダイナミクスの研究方法ですけども、地球の内部というのは直接見ることができませんので、いろんな間接的な方法を組み合わせて、いろんな視点から検討していくわけです。これは大きく分けると、観測と、その物質の性質を調べる物質のモデリングと、あと、我々はこの力学的モデリングというのをやっているわけです。モデルをつくって、それが力学的にどういう意味があるのか、また、ある解釈が正しいのか。もう一つは、熱と物質の輸送。これは長い時間をかけて行われるものが、物理法則を満たした上でどんなふうに行われているのかというのを調べていくことです。
 掘削の科学と関係あることは2つあると思います。地球物理的には、トモグラフィーといって、地球の内部の構造を調べることと、化学成分の解析です。特にマントル対流の問題では、同位体とか揮発性成分の分析といったことが重要になるかと思います。ただし、掘削、海洋ですので、1億6,000万年分ぐらいなので、もしかしたら、マントルの進化の効果はあまり表れないので、要するに、現在の地球の変動を知るといったことで重要になるのかもしれません。
 ちょっとこの辺の説明はもう要らないかもしれませんが、我々はマントル対流のモデリングというのをやっています。モデルのつくり方は二通りあります。一つは皆さんよく御存じのとおり、気象の予報に当たるような、とにかく現実にあるものを全てモデルになるべく入れ込んで、天気とか降雨量といったものを現実的に予測することです。
 これは、いろんな既知の情報です、方程式とか物理パラメーターとか分かっている場合には可能なんですけども、マントル対流の場合は、物理パラメーターとかレオロジーの法則といったもの自体があんまり分からないので、結局物理モデルといって、単純だけども一つ一つの過程を精密に取り込んで、対流の構造とか変動の様式といったものがどういうふうに変わってくるのかというのを調べるようなモデリングを行っています。
 それで、幾つかの例を見ていこうと思うんですけども、少しずつ、こちらの現実の予測のほうにも近づいていっているかなと思います。この辺はもう時間もないことですし飛ばしますが、マントル対流で重要なのは流動則と密度がパラメーターとして非常に重要になります。
 それで、世界でどんな研究が行われているのかというのをざっと概観しておきますと、まず、マントル対流コードの開発です。二次元の箱型のものから地球を模した、ちゃんと三次元の球殻のものまでいろいろ行われているとか、粘性の変化に対して、二次元の場合比較的安定に解けるけども、三次元だと粘性変化が小さい場合のみ高速かつ安定に解けますよとか、そういったことが今のところ分かっています。一つ、この技術を応用するとしたら、例えば氷河の流動なんていう、氷河とか南極の氷床、そういう流動の問題に応用できる可能性はあるかもしれません。
 あとは具体的にどんな問題が行われているかなんですけど、この後ろにつけた丸は、さっき3つの分野に分けましたけども、そのどの分野と関連しているかというのを示しています。一つは地球深部の大規模構造とマントルプルームに関する研究。もう一つはプレートテクトニクスの発生とプレート運動に関する研究です。3番目はプレート沈み込みに関する研究です。世界ではこういった分野が行われていますけども、日本でマントル対流研究している研究者というのは、こちらの最後の部分、私もここ20年ぐらいは沈み込みに関する研究を行ってきました。
 それで、具体的な例として、このプレートテクトニクスの発生とプルームの問題と、最後、私たちの研究をちょっと紹介しようかと思います。
 これは、プレートテクトニクスがマントル対流の中でどうやったらなるべく過程の少ないモデルで発生できるのかというのをシミュレーションしたものです。動画で紹介しておきますと、この青く塗ってあるところが大陸のある場所です。こちらのほうは、海のところは水深を表していまして、茶色っぽいところが新しくできた海です。これ、大陸と大陸がぶつかって超大陸を形成していくというプロセスのところを映しているんですけども、これ、この辺からよく見ていただくと分かるんですけども、比較的結構うまくいっていると思います。ここに中央海嶺があって、三重会合点があって、ちゃんとこのプレートが大陸の下に沈み込んでいるというプレートテクトニクスの特徴は、ある程度うまく再現できると思われています。どういうことを研究しているのかというと、どういうふうなレオロジーを与えたらこういう運動ができるのかというようなことを研究しています。
 
【川幡主査】  10分経過したので、すみませんけど、急いでください。
【中久喜助教】  あとスライドを2枚だけ出します。
 これはマントルプルームのシミュレーションです。ホットスポットというのはマントルプルームからできていると言われていて、そのホットスポットが移動しない理由とか、ホットスポットがどのくらいの継続時間可能なのかというのをシミュレーションした問題です。
 マントルプルームの形状や安定性を調べているんですけども、その継続、こういうものを観測と比べようと思ったら、トモグラフィーの解像度、大体100kmぐらいに上げないといけないんだということを知っていただきたいと思います。
 少し先に進みますと、私のこれまでの研究のうち、沈み込み帯の研究を紹介します。それで、水の輸送を研究していて、大体二次元のモデルを使うと今どのくらいのことができるかというと、大体地球全体のスケールぐらい1万km掛ける2,000kmとか3,000kmの領域を大体2kmぐらいのレゾリューションで解けるようになっていて、沈み込み帯に水が沈み込んでいく様子なんですけども、水が沈み込んでいくような、こういった非常に沈み込み帯の細かいスケールがマントル全体の構造の中で再現できるようになっています。こっちは、東北地方にスラブの形と年代を合わせたモデルですけども、このとおり、水が出てきたところと震源の重なりがあるというのが再現できるようになっていて、こうしたことから地域毎の特徴も再現が可能になってきています。
 全体のまとめがあまりないんですけども、現状ではこういうことが再現できるようになってきています。
 2分半過ぎてしまいました。すみません。これで終わります。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。最後の図も非常に印象深いと思うので、ありがとうございます。
 では、コメント及び質問等、お願いいたします。
【巽委員】  巽です。よろしいですか。
【川幡主査】  どうぞ。
【巽委員】  中久喜さんがここでお話しいただいた最大の理由はきっと、マントルのダイナミクスというのと、地表とのいろんな現象との間にはリンクがきっとあると多くの方が思っていて、地表の変動というものが掘削によってレコードを知ることができて、それからマントルダイナミクスまでは理解できるのではないかという意味を持っているからだと思います。
 それで、その観点で2つ質問があります。一つは、一番最後のほうにおっしゃっていた、その水の話ですけども、地球がだんだん冷えてくると、水というのはもう結局、沈み込み帯で放出されることなくて、その含水鉱物としてマントルの中へずっと入っていくようになりますよね、いずれ。そうするといずれ、海水はなくなる可能性はありますよね。
 そういうふうな時期というのは、マントルダイナミクスの研究からある程度予測できますか?というのはどれぐらいの温度構造になったときに、含水鉱物がマントルの中へ水を持ち込んでいるということは分かっているんですけど、その温度構造に今達しているのか達してないのかというのは分かるものですか?
【中久喜助教】  現在、もしマントルの中が空っぽだ、水が入ってないとすると、現在の温度でも十分沈み込んでいくと思います。ただ、10億年以上の時間はかかると私は思っています。それは、沈み込む海洋プレートのところで、地殻だけに水が入るのか、マントル側まで水が入るのかで変わってきます。
【巽委員】  そうですね。
【中久喜助教】  だから、それを掘削で調べるということは、非常に重要なことです。私の計算、今ちょっとムービーをお見せしましたけども、この計算だと12億年ぐらいはかかりますね。これは、ちゃんと沈み込み帯の形とか沈み込む速さとかそういうのをちゃんとスケーリングしてつくったモデルです。
【巽委員】  ありがとうございます。見事に誘導尋問に引っかかっていただいてありがとうございます。
 それからもう一つは、例えば白亜紀のようにマントルのアクティビティーが非常に高かった時期、その高くなったトリガーというのは、地球表層という観点からすると表層にあるとお思いですか、それとも内部にあるとお思いですか。
【中久喜助教】  それは、まず内部の変動が、確かに1億年とかのスケールでは多分プルームの変動とかあるかとは思うんですけども、私は一番大きな原因というのは、プルームと中央海嶺が非常に密接に相互作用をしたのが一番の理由じゃないかなと思っています。
【巽委員】  ありがとうございます。また、そういうふうな表層とのリンクということで今後ともまた、いろいろ御助言いただければと思います。ありがとうございます。
【中久喜助教】  どうもありがとうございました。
【川幡主査】  ほかにコメントありますでしょうか。
 今の最後の巽先生の質問に答えられた白亜紀ですけども、現在私たちが困っている二酸化炭素の問題の石油も、ある説によれば白亜紀に大体50から70%石油がつくられている。石油はいつもつくられているんじゃないので。
【中久喜助教】  それはそうですね。
【川幡主査】  そういうのがマントルの対流と非常にいろんな意味で密接に結びついているからであると。あと、海業の人にはショックかもしれないけど、この星から海がなくなるよというのもきちっと説明いただきました。学問というのは非常にロングターム、面白いよというのをきちっと言ってもらったかなと、そのように思います。
 直接掘削には関係ないかもしれないけど、その背後にこういう学問がありますよというので、皆さん興味持ったと思います。どうもありがとうございました。
【中久喜助教】  どうもありがとうございました。
【川幡主査】  では、ありがとうございました。前回含めこの議題で計6分野の先生から御発表いただきました。ちょっとせかしてしまってすみません。時間取りますので、ここから全体を通じて意見交換を行いたいと思います。
 ちょっと残り時間が短くなっていますけれども、もし質問や議論が多かったら、休憩の時間をちょっと後ろにずらしたいと思います。もし先ほど時間なくて、ちょっと言い足りなかった御説明とか、あと質問とかありましたら、自由に発言していただければと思います。
 ちょっと今日の話題だと質問しにくいかもしれないけど、鈴木先生、どうですか。
【鈴木委員】  ありがとうございました。私、今日の場合はちょっと質問しにくい部分はあるんですが、先ほど南海掘削やDONETの話がありました。私も高知にいたので、地震が来るかもしれないということを早期に感知できるということがどれだけ人命を救うかということを日々感じていました。現在その掘削孔にいろいろな機器を入れて、データを取っているというお話でした。地震予測などもそうですが、実際の物質と、掘削孔のセンサーで得られる環境のデータと理論とというのを誰かがきっちりと合わせて統合していかないといけないと思うんですが、そういったコーディネーションというのは、今のところどういう感じでなされているんでしょうか。これから拡大というか、こういった穴をどんどん掘っていく予定があるのかないのかよく分からないんですが、そういうふうにしていき、より効果的に地震予測を行うには、どういったところが大きく進むステップになるのかなと思っています。
【川幡主査】  地震関係の委員の先生、もしくは荒木先生、お願いします。
【小原委員】  じゃあ、小原ですけれども、私から。
【川幡主査】  お願いします。
【小原委員】  全体のコーディネートというか、地震研究に関するかなり基本的な戦略については、科学技術・学術審議会の測地学分科会のほうで扱っており、私はその分科会長をやっています。その分科会の下に地震火山観測計画部会というものがございまして、災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画というものを立案しています。
 また、地震調査研究推進本部におきましては、地震研究に関する基本的な戦略を立案していて、そこで、総合的な基本施策というものをまとめており、その中で地震観測や地震研究、シミュレーション等も含めた研究の全体的なプランニングを行っています。
 その中でやはり重要になってくるのは、海域におけるモニタリング研究ということで、海域のケーブルを使ったリアルタイム地震観測であるとか、それからまさに掘削孔による長期孔内観測、やはりそれらも非常に重要な観測手法であるということで、それらは推進したいということを立案しているというふうに理解しています。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。鈴木先生、ほかにも何かありますか。
【鈴木委員】  いえ、ありがとうございます。大丈夫です。
【川幡主査】  ほかにコメントありましたら、お願いします。
【大土井課長】  海洋地球課の大土井でございます。さっき、鈴木先生と小原先生の質疑に加えまして、役所サイドとしましては、先ほどのプレゼンにありますとおりで、一番初めは先生方の理学的なアプローチから始められるんです。大水深での観測をでき、なおかつ地中での観測もでき、それをできるかどうかというのをやってみる、それは理学的だと思うんです。測地学分科会とかで、それを広角的なアプローチに変えて、実際に観測を行おうというところまで転換している。それは役所サイドの話なんですが、恐らくそこはJAMSTECの現場の中でも、あるいはJ-DESCの中でも、きっと橋渡しをされておられる方がいらっしゃるんだろうと思っております。すみません。本当に補足でございます。
【川幡主査】  これに関してコメントありますでしょうか。 じゃあ、ちょっと別の話題か何かで、窪川先生、どうでしょうか。
【窪川委員】  今のご質問と少し似ていますが、2点あります。まず一点目、今の流れと関係しますが、私は今日、専門外なのですが、お話をお聞きしていて、どんどん解っていくということがすごく楽しかったです。例えば一般市民として、地震の、南海トラフに関する東海・南海地震の検討会の発表で、ゆっくり滑りに関する調査結果がこうでしたと必ず入ってきています。要するに、非常に新しい理論だと思っていました。それがすごい重要な理論で、それをそのまま掘削によっていろいろ調べていく方向性は、どんどん進めるべきといつも気にしていました。
 今日、JAMSTECのお話の中に、例えば光ファイバーセンシングという新しい技術を使って、よりよい観測技術をできる、やらなくてはいけない、そういった話はもうぜひ急いでやっていただきたい。DONETと、多分、掘削孔を使っていくというところと密接に関係してくるんですけども、そういった進め方もです。もう一つ、日本の中の話だけではなくて、この観測の現場は世界中の研究者にとっても注目されるべきことだと思います。日本でこういうことをやっていくことに対して、世界的な支持はどのくらいあるのか併せてお伺いしたいと思いました。
【荒木グループリーダー】  荒木ですが、よろしいですか。
【川幡主査】  お願いします。
【荒木グループリーダー】  最後の国際的なところに関しては、日本国外でもやはり海底ケーブルの観測網であるとか、こういうふうな高度な掘削の観測を、今のところ海外では、やはりネットワークと融合してないんですけれども、どんどんやって、科学研究もそうですし、防災にも役に立てていこうという話はあります。
 例えば、ニュージーランドとかでは実際に掘削の観測も始まっているところです。今後はやはり日本と同様に、ネットワークにつないでいくということをニュージーランドの国の研究者の人もやっていますし、それにいろんな国際的な研究者集団が一緒に議論して進めているというところで、当然日本のところでこういう実施した例なんかの経験は広く共有して、海外での適用をやるとか、そういうふうな相互のフィードバックをかけて進んでいくものだと思います。
 ですので、やはり研究者の純粋な興味というのもあるんですけれども、その中での交流と意見の交換みたいなことで、やはりより効率よく進められるものではないかというふうに私は考えています。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
【窪川委員】  もっと強く、日本でぜひやってもらいたいとか、そういったような要望というのは地震、防災も含めて地震火山研究、特に海底火山は日本の領域海内に多いので、すごく強くあるのでしょうか。学会全体のことはよく分からないのですけれども。
【荒木グループリーダー】  まず、日本はやはり、その南海トラフの地震等でもすごく、現実的なニーズもありますから、まず、先導実験、新しい、先ほどの光ファイバーの技術に関しても適用していこうというふうなことを提案する立場にあると思っています。
 ですので、そういう形でまず先導的にやるというところを積極的にやりつつ、海外の人たちも一緒に入ってやっていくというのが非常に重要かなと思います。
【窪川委員】  ありがとうございました。
【川幡主査】  ありがとうございました。
 御意見ありますでしょうか。阪口先生、お願いします。
【阪口委員】  鈴木先生、さっき手挙げていたけど、大丈夫ですか。
【川幡主査】  この後、お願いしますので。
【阪口委員】  野田さんと小原さんにお伺いしたいんですけれども、荒木さんもですが、その昔、天気予報って、大昔は占いの世界で、それから財宝運ぶ船が海を行き来するようになったときによく沈没して財宝なくなるから、各国の王様が絶対に当たる天気予報をつくれということで、そこからいわゆる物理というものが発達したという背景があります。それでとどのつまりは、気圧配置図が書けて、それがどう変化するかということを予測することができると天気は予測できるという物理に最終的に落ちていって、そこに今は数値計算が入って、かなり高精度な天気予報ができるようになりましたというストーリーは有名な話だと思うんですけども、理論されている方と観測されている方が両方おられると思うんですけども、地震の場合は、何と何と何が分かれば、地震はいつどこでどんなものがおおよそ起こるようになるのかということが分かるんでしょうかという質問にはまだまだ答えにくいと思うんですけれども、およその方向性というのはどの辺にあるのかというのをちらっと皆さんに解説していただくと、今後、地震の予測精度を上げるとか理解を深めるために、掘削データがどれぐらい必要なのかということの重要性というか必要性がよりクリアになると思うんですが、何かお答えできるところの範囲まででいいので、ちょっと答えていただくと私はうれしいんですが、いかがでしょうか。
【川幡主査】  面白い質問ありがとうございます。3人の先生、それぞれ答えてください。
【野田委員】  じゃあ自分から。個人的見解になるんですけれども、結局解くべき式が分かれば、それは例えばパラメーターの分布とかも含めて、データ同化であるとかそういう方法であり得るかなと。
 その解くべき式というのが、今のままの弾性論でいいのか、もっと複雑なことを考えないといけないのか。摩擦は、境界条件で必要ですから、摩擦の何か式が要ると思うんですけれども、その式の形が結構適当でも、データ同化の精度というか能力が出るのか、かなりそこをつくり込まないといけないのかとか、もっといくと、地震って大きいのもありますけれども小さいのもいっぱいあって、じゃあどれだけ小さいのまで気にしないといけないのか、どこら辺まで構成則として丸め込めるか、そこら辺の話になると、もう連続体でいいのかどうかという、どこで粗視化するかとか、そういう個人的には難しいと思っている話になってきて、ですので、なかなか難しそうだなと。
 やってみたら、多少粗いやつでもぽっとできるのが現実なのかもしれないんですけれども、いずれにせよ、構成則も適当なものからつくり込んだものまで、かなりいろんなバージョンありますから、それもいろいろ比べて、結局最終的にはデータ同化みたいな方法でどれが一番精度が出るのか、性能が出るのかということを評価するのが本来かなというふうに思っております。
【川幡主査】  ありがとうございます。じゃあ次、小原先生、お願いします。
【小原委員】  じゃあ私。基本的に地震というのは断層破壊現象で、応力が加わって断層面での摩擦を超えて、それで最終的に破壊に至るわけですけれども、その応力がどういうふうに蓄えられていくかという状況をモニタリングすることができれば、切迫度みたいなものは、ある程度分かるんじゃないかなと。
 いつ壊れるかというのは、絶対的な応力というのはなかなか測定することが難しいし、強度そのものも分からないので、本当にいつ壊れるかというところについての予測は非常に難しいですけれども、ある時間の中でどれだけの応力が蓄積されてきているかということについては、測地測量であるとか、それから地震発生の状況である程度分かると。
 観測については、例えばスロー地震が発生することによって、その部分ではある程度応力が開放されて、ですけれども、その周辺に対しては応力がより加わる性質になってきますので、そういう相互作用を明らかにするうえでも非常に重要になってくると。
 その際に、物理モデルをきちっと立てて、それで予測をするということが非常に重要で、ただ、先ほど野田委員のお話では、摩擦の構成則というか解くべき式そのものもまだ十分に分かっていないということもございますので、そういう意味で、いつ予測が実現するかというところについてはなかなか難しいところはありますけれども、でもある程度、確率論的な予測という面では大分できてきているのではないかなと。そのインプットとして、観測データが非常に重要になるということです。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。荒木先生、お願いします。
【荒木グループリーダー】  荒木です。例えばゆっくり地震の成因とかで、すぐに研究者の人たちは、地下の間隙水圧がちょっと高まっていてというようなことを、見てもいないのに言うのです。でも、断層の構成則とかを使って理解しようとすると、そういうことを言わざるを得ないというのが現状だと思うんです。
 ですから、やはり、うそかもしれないけどというのが今の現状の理解だと思うんで、振幅スタックで狙っていた断層、ここがひずみがためていると思われるところの物理状態を測るというのは、やはりピン留めを1か所でもいいからしなきゃいけないということで、非常に重要だと思います。
 一方で、そのピン留めする場所が実際はどういうふうに振る舞っているのかというのは、これもまたやはり、現状ではぼやっとしか見えてなくて、様々な過程で議論しているというのが現状です。それを何とかしたいということで、南海掘削計画では複数点の孔内観測点で把握しようということをやったり、あとは今、光ファイバーの海底での観測網なんかも、その場所というのは実際はどう振る舞っているのかというのをちゃんと理解しなければ、議論に乗っからないよねというつもりでやっています。
 それぞれ、結構実施するものと金のかけ方としては、かなり対極にあるように見えるんですけれども、バランス取って両方とも押さえていかないとやはり、統合的な理解ということはできませんし、それに基づかない科学原理とか、その実際のデータに基づかない予測というのはやはり砂上の楼閣だろうなと思う次第なので、やはりバランスを取ってやっていく必要があるのではないかと思います。
【川幡主査】  阪口先生、今の3人の先生の答えを聞いて、何かコメント、またありましたらお願いします。
【阪口委員】  いや、そんなこと言ったら身も蓋もなくなりますけど、天気予報みたいに流体の方程式と、それから気体の状態方程式と連立させて解けば、かなりの精度で、あと観測値ですよね、逐次アップデートするための気象観測のデータをアップデートすることによってかなり高精度にできるという状況からはまだ程遠いということを今、お三方には言っていただきましたが、最後荒木さんが言われたように、とはいえ全部が仮説だから、1個ぐらいちゃんとピン留めして一つを仮説を仮説でなくしていくために掘削のデータは必要であるという、非常に重要なこと、それから小原さんも言われたように、やはり観測、それから測地学データから追い詰めていくというその努力がなくしては何も前に進まないので、ぜひそういうところをくみ上げて応援していくべきだなというのがよく分かりました。ありがとうございました。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 では鈴木先生。
【鈴木委員】  今日いろんな方がお話しされている中でも、やはり理論だったり物質だったり、さらには資金的なもの、国際協力的なものってすごく多角的なものが必要だなと思います。JAXAでは、「はやぶさ2」などのプロジェクトに都度都度プロマネみたいな方がいて、おのおのサイエンス、技術でリーダーがいて、それを運用していくシステムがしっかりできているんです。この掘削のこういった地震に関してはそういった、例えばこういった次世代リーダーがいるとかそういうリーダー的なもの、存在というのは、すごく重要なんじゃないかと。統合的に考えていく及び物事を真っ当に動かしていくのに重要なんじゃないかというふうに思っているんですけれども、その辺りいかがでしょうか。
【川幡主査】  JAMSTECの倉本理事、お願いします。
【倉本理事】  JAMSTECの倉本です。今日はオブザーバー参加させていただいております。
 南海掘削のマネジメントは、JAMSTEC、J-DESCという国内の研究者の方々とのすり合わせに加えて、IODPという国際計画の中で進めてまいりました。IODPは、ボトムアップの提案をいただいて、それを掘削計画に落とし込んで実施するということをしております。その間、全体のマネジメントとしては、若干いろんな反省はもちろんございますけども、プロジェクトチームをつくりまして、研究成果を最大にするための掘削計画の改定等々しながらやっていくという方法でやってまいりました。
 それで、まさに、どこまで掘ったり、どういうサンプルを取ったり、あるいは途中にどういう観測を入れていくか。最終的にオブザーバトリーでしたら、オブザーバトリーの中で重要な観測項目を入れる、それを入れやすいような形にし、つくり込むというところまで国際計画の中でやってまいりました。
 荒木さんに説明していただいたオブザーバトリーもその中での一つでありまして、実際には荒木さんを中心に設計していただき、一部は海外の研究者が持ち込んだ観測機も含まれて、それを最終的にJAMSTECからDONETにつなぎ込むというところをして、データ配信にするというところまで行っております。そうした国内と国際の融合をしながらやってきたという計画であります。
 以上です。
【鈴木委員】  分かりました。何となく、宇宙だと割とリーダーの顔が見えるところが、よくよく考えれば掘削ではあまり見えてなかったかなという気がちょっとしたので。でも、なかなか合議制では難しい部分もあるかなというふうに思っておりましたので、意見として言わせていただきました。
【川幡主査】  この件は、次回か何かに、結構重要だと思いますので、マネジメントに関わるところで何かまた議論できればと、そのように思いますので、取っておきます。それでよろしいでしょうか、鈴木先生。
【鈴木委員】  ありがとうございます。
【川幡主査】  今日せっかく火山のお話もしていただいたんですけど、トンガで噴火して、あの後、研究分野の中で雰囲気が変わったとか何かありますか、金子先生。
【金子教授】  あまりないんじゃないですかね。
 インパクトがあったのは、トンガは遠かったんですけど、やはり福徳岡ノ場は非常にインパクトがありますね。トンガに関して言うと、恐らくはピナツボぐらいの噴火な感じがしたんですけど、雰囲気としては、最近、海域の噴火というのが非常に多くなって、我々、そのことについて、陸上の噴火に比べるとあまりまだ知らないので、そういうことを一つ、やはり今後やっていかなきゃならないというような雰囲気は出てきているのかなというのは思いますけど。
【川幡主査】  日本で起こったらやはり大変なことになっちゃうからね。
【金子教授】  そうですね。それでまた、津波なんかの問題もあるので、なおかつ、海底の噴火で何が起こるかというのはやはりかなりまだ未知数な部分があるので、ぜひそういう研究というのは続けていかなきゃならないと思っています。
【川幡主査】  窪川先生。
【窪川委員】  私、まさに委員長と同じことを聞きたかったのです。今回火山のお話、また前回の巽先生のお話があって、日本は地震大国ですけれども、海底火山大国でもあるんですよね。
【金子教授】  そうですね。
【窪川委員】  結構それは見過ごされていて、やはり身近ではないというところがあるので、トンガの場合にも津波のおそれとか、あるいは軽石で着目されましたけれども、やはり遠い存在になる。火山研究で掘削はやはり、なかなか大変というか、できない場合というか、やりたいのだけれどもというところはあるのでしょうか。
【金子教授】  そうですね。恐らく海域の火山ですごく甚大な被害が出る場合というのは、相当でかい場合になりますよね。相当大きな噴火の場合になって、そうすると非常にやはり頻度としては下がるので、やはりそこだけ見ていると、ついつい後回しになってしまう傾向あるかもしれませんけど、いざ起こったときは非常に大変な甚大な被害が出るというのは間違いないので、それは恐らく巽さんなんかよく言われていることだと思いますけど。
 そういう点で、割とある程度定期的に起こる地震なんかに比べると、ちょっと後回しにされるのかなというふうに思いますが。しかしながら、非常に大きな噴火を起こす、例えば今私たちがやっている鬼界なんかは、ほんの縄文人のいた時代に大変な噴火を起こして被害を出したと考えられますので、やはりそういう、海底の噴火が何が起こるかというのは、今後、ちゃんと腰を据えて研究していかなきゃならないと思っております。
【窪川委員】  多分1つの海底火山だけではなく、やはり連続しているところも調べなくてはいけないという研究の方向も当然、先生方の重要なところでしょうか。
【金子教授】  連続してというのはどういう。
【窪川委員】  火山が連なっているといいますか。一火山だけを掘削して調べるというよりも、幾つかの火山を掘削して、比較研究をするということです。
【金子教授】  それはそうなんでしょうね。だから、限られたバジェットの中で最も重要なのは何かということが非常に選ぶのが難しいところですね。とはいえ、やはり火山は幾つかタイプがあると思いますので、そういうところで非常に代表的な部分を選んで調査研究を進めていくということだと思います。
【窪川委員】  ありがとうございました。
【川幡主査】  巽先生、コメントお願いします。
【巽委員】  巽です。よろしいでしょうか。今の御質問に少し答えたいと思うんですが、もちろん海底の火山ということに注目する最大の理由は、陸上の火山よりも海底の火山のほうがいろんな意味で地下を見やすいということがあります。例えば地震波を使って、地下のマグマだまりが存在しているのかどうかということを調べようとした場合、陸上ではほとんど、人口が稠密なので、それは不可能なわけです。そういうところで総合的に地震のデータ、電磁気のデータ、それから掘削のデータと全てを合わせて研究できるのは、海域の火山のほうがずっと優れているという利点があります。
 もう一つ重要なことは、皆さん恐らく、大きな噴火が起こるときには、地下にあるマグマだまりからマグマがいっぱい出てきてどかんと噴くと思っていらっしゃると思うんですが、そのマグマだまりが実際地下に存在しているかどうかということを可視化した例は世界中に存在しません。いまだにまだそういう科学的な状況です。ですから、今我々が本当にしないといけないのは、そういうものをきちっと可視化して、それを連続的にモニタリングして、いろんな噴出物の調査と併せて総合的な火山像をつくっていくことだと思います。
 ですから、先ほど窪川先生がおっしゃった、幾つか連続している火山にはもちろん注目したいわけですけども、最も重要かつ、これからの防災・減災ということに関して重要であるのは、大きな噴火、明らかに日本全体に影響を及ぼすような、もしくは世界全体に影響を及ぼすような巨大噴火に対して、火山のイメージを我々がまずきちっと持てて、それに対してどういうふうな観測をすれば予兆を捉えることができるかということを明らかにすることだと思います。そういう意味で、海域火山に対する掘削を含めた総合研究は非常に重要である、かつ、これは世界的に見て日本がやるべき仕事だというふうに思います。
 以上です。
【窪川委員】  ありがとうございました。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 ほかに質問、コメントありますか。では、阪口先生、お願いします。
【阪口委員】  巽さんに質問なんですけども、今の三段論法の理屈は割と通るとは思うんですけども、それをいろんな人が言って、資源が細分化されて、どれも前に進まなくなるということも一つの現状だと思うんです。さっきの南海トラフ大事だぜって言って、海域火山大事だぜって言って、別の人は、SIPでちゅちゅっと吸い上げるのが大事なはずって、いろんな人がいろんなことを言うわけじゃないですか。
 その状況をどうやって打破して、きちんと国家プロジェクトとして、掘削をしたことによって科学が進み、国民に還元するという状況をつくるためには我々というか関係者が何をしなきゃいけないとお考えでしょうか。質問の意味は分かりますよね。
【巽委員】  もちろん分かりますよ。それはお答えするのはどれほど難しいかということもお気づきになった上での質問だと思いますけど。
【阪口委員】  でも本質的じゃないですか。
【巽委員】  でも3つのうちの1つ選ぶという問題ではきっとないと私は思います。まず、我々がしないといけないのは、我々が暮らしているこの日本列島というところがどういうふうな世界的な中で特異なところにあるのかということを理解することであって、そのことの中に、幾つかの要素、今おっしゃったような、地震が起こったり、火山の巨大噴火が起きたり、資源があったりというようなものがあって、それぞれはお互いに関連した事象に伴って起きていることであるという認識を多くの方はまず持つことだと思います。
 その中で、できるだけ、例えばその3つに関して共通するような事項について、まず戦略的に物事を進めていくということが必要なんだろうなと思います。その3つでけんかしても意味がありませんので。その辺りを例えば国として、もしくはJAMSTECが、国の中の海の研究機関として、この辺りを重点項目と設定して、それを3つを包括的に理解する策を講じていくということを宣言することだと思います。
 以上です。
【川幡主査】  阪口先生、どうでしょうか。
【阪口委員】  絶句はしてないんですけども、うまいこと言い逃れたなって感じはするものの、果たして解になっているのかというのもちょっと疑問です。これはみんなで考えることだと思いますので、ぜひぜひまた最後のほうでも、総括の総括をやるようなところでも扱っていただければと思います。
【川幡主査】  SIPのほうも地層貯留のほうも、科学掘削とちょっとまた別の側面もありますので、全体として資金を確保しながらできる限りやると、そんな感じの議論も含めて、次回かその次ですか、そのときにもうちょっと深く議論できたらと思います。それでいいですか。議事録にちゃんと書いておきますので、やります。
【阪口委員】  よろしくお願いします。
【川幡主査】  では、ちょっと時間延びていますけれども、この辺でちょっと休憩に入りたいと思います。その休憩の前にちょっとアナウンスがありますので。
 それでは、次の議題に入る前に10分間の休憩を取りたいと思います。
 次の議題は、2024年以降を見据えた国際動向についてとしまして、前回非公開部分で事務局から国際動向を御説明いただいたものの続きとなります。先日、米国出張してこられた事務局から、国際動向についてアップデート情報を御説明いただき、前回の報告も併せて意見交換を行いたいと思います。前回確認したとおり、国際動向については、今まさに議論中で、相手国との関係に支障を来さぬよう、今回も非公開といたします。ただし、補足説明者として、一緒に出張されていたJAMSTECの関係者には同席いただければと思っています。
 では、委員の皆様は休憩していただき、事務局は非公開とする準備をお願いします。
 今、16時15分なので16時25分開始としたいと思います。よろしくお願いいたします。
【事務局】  事務局でございます。
 次の議事より非公開となりますため、傍聴者の皆様はここで御退出いただきますようお願いいたします。少し時間を置いた後にまだ接続されている方がおられた場合、こちらから強制的に退出させていただきますので、あらかじめ御了承ください。
 事務局からは以上でございます。
【川幡主査】  では、10分休憩、お願いします。
 
<議題2:非公開>
 
【川幡主査】 というわけで、今日はどうもありがとうございました。
【事務局】  最後に事務局からでございます。本日はお忙しいところ長時間にわたりまして、ありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、これまでと同様、案を作成しましたら、委員の皆様にメールで御確認をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、次回日程につきましては、7月4日の9時半から12時半を予定しております。どうぞよろしくお願いします。
 以上でございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。では、次回まで元気に暮らしてください。今日はありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課