海洋科学掘削委員会(第1回) 議事録

1.日時

令和4年4月19日(火曜日)9時30分~12時30分

2.場所

文部科学省16階第2会議室又はオンライン

3.議題

  1. 海洋科学掘削委員会の議事運営について
  2. 我が国におけるこれまでの海洋科学掘削の取り組みについて
  3. 国際深海科学掘削計画(IODP)の動向について(ヒアリング)
  4. 我が国における海洋科学掘削の現状について(ヒアリング)
  5. 意見交換
  6. その他

4.出席者

委員

川幡主査、石井委員、小原委員、窪川委員、阪口委員、鈴木委員、巽委員、野田委員

文部科学省

大土井海洋地球課長、戸谷深海地球探査企画官、伊藤海洋地球課長補佐 ほか

オブザーバー

【説明者】日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC) 益田 晴恵 IODP部会長、国立研究開発法人海洋研究開発機構 倉本 真一 理事 

5.議事録

【川幡主査】  ただいまより、第11期科学技術・学術審議会海洋開発分科会海洋科学掘削委員会の第1回会合を開催いたします。
 私は、海洋開発分科会の藤井分科会長から御指名いただきまして、主査を務めさせていただきます、早稲田大学理工学術院大学院の川幡と申します。委員会の開催に当たりまして、主査として一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 地球惑星科学において掘削科学は重要な1つの分野で、これまで技術開発と並行して発展してきました。さらに、掘削科学は、純粋な科学研究のみならず、防災や減災、資源などに関する安全保障ともリンクし、社会への貢献が期待されています。本委員会では、専門家による技術的及び政策的な視点から、海底掘削科学の今後に関して自主的な討議が行えればと考えております。
 本日は、御多用にもかかわらず、委員の皆様全員に御出席いただき、誠にありがとうございます。
 まずは、事務局より委員の皆様の御紹介などをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【戸谷企画官】  文部科学省研究開発局海洋地球課深海地球探査企画官の戸谷でございます。
 それでは、委員の皆様を御紹介いたします。資料1の委員名簿を御覧ください。当方がお名前を読み上げます。
 小原一成委員。
【小原委員】  小原でございます。よろしくお願いします。
【戸谷企画官】  窪川かおる委員。
【窪川委員】  おはようございます。よろしくお願いいたします。
【戸谷企画官】  阪口秀委員。
【阪口委員】  阪口です。よろしくお願いします。
【戸谷企画官】  石井美孝委員。
【石井委員】  石油資源開発の石井でございます。よろしくお願いいたします。
【戸谷企画官】  川幡穂高委員。
【川幡主査】  よろしくお願いいたします。
【戸谷企画官】  鈴木志野委員。
【鈴木委員】  よろしくお願いいたします。
【戸谷企画官】  巽好幸委員。
【巽委員】  巽です。よろしくお願いします。
【戸谷企画官】  野田博之委員。
【野田委員】  野田です。よろしくお願いします。
【戸谷企画官】  以上、8名の委員に御参画いただいております。
 続きまして、事務局を紹介いたします。
 本日は、文部科学省研究開発局海洋地球課長の大土井、私戸谷、課長補佐の伊藤のほか、海洋地球課の関係者が出席しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【川幡主査】  ありがとうございました。
 本日は、海洋科学掘削委員会の第1回会合です。本委員会の開催に当たりまして、大土井海洋地球課長より一言御挨拶をお願いしたいと思います。
【大土井課長】  おはようございます。海洋地球課長の大土井でございます。
 私のZoomの背景が「ちきゅう」でございますけれども、昔から海洋地球課の仕事の大きな一つが「ちきゅう」に関する業務、IODPその他でございました。JAMSTECの予算においても、「ちきゅう」の予算というのは結構な規模を持っております。ただ、IODPが今後どうなるか、あるいは、今後この分野の研究をどう進めていくか、その点について、改めてここで御議論いただきたいなと思いまして、この委員会を設置させていただきました。
 「ちきゅう」に期待されることは結構幅広くなってございます。建設当時の目標ではない、大きなミッションがどんどん追加されているという状況になっています。そのミッションをどうこなしていくのか、取り組んでいくのか。ぜひ、役所側の議論ではなくて、アカデミアの先生方からのニーズと、あとは実際できることできないこと、ここをはっきり評価した上で、今後の方向性を議論していただければと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 次に、事務局より、配付資料の確認をお願いいたしたいと思います。
【事務局】  事務局でございます。配付資料の確認をさせていただきます。
 本日は、議事次第にありますとおり、資料1から参考資料2-4まで御用意させていただいております。委員の皆様には、事前に議事次第を含め資料1から資料7までを一つにしたもの、参考資料1-1から2-4までを一つにしたものを送付させていただいております。また、会議室にお越しの委員の皆様には、お手元に議事次第を含め資料1から資料7までを一つにしたもの、参考資料1-1から2-1までを一つにしたもの、参考資料2-2から2-4までを一つにしたものの計3点を準備しております。本日の委員会では、議事に合わせまして、資料1から資料7までを画面共有させていただきます。傍聴者の皆様につきましては、ホームページに資料をアップさせていただいておりますので、そちらを御覧いただければと思います。御不明な点、不備等ございましたら、事務局までお知らせください。
 以上でございます。
【川幡主査】  皆さん、資料はございましたでしょうか。いいですね。では、次に行きたいと思います。ありがとうございました。
 本日の議事に入る前に、各委員の先生方から御所属や御自身の専門等、手短に自己紹介していただければと思います。その際、IODPや「ちきゅう」と関わりのあった方は、そのことも簡単に触れていただければ幸いです。まず、主査である私からお話しして、その後は資料1の名簿順にお願いできればと思います。
 私、川幡は、専門は、約半分が現在の環境、それから、あと半分は古気候・古海洋をやってきました。地球惑星連合の会長・副会長を務め、地球惑星科学の全体の発展を公平な立場から振興してきたと考えています。
 今、J-DESC会長を務めておりますが、これは任意団体であるJ-DESCが国の事業を委託しているわけではありません。よって、利益相反となることはないと、そのように考えています。
 また、掘削科学の仕事においては無給であり、IODPを推進するJAMSTECの協力研究員などのポジションに就いたことも過去一切ありません。外部評価委員のみであります。
 また、研究テーマにおきましても、掘削とは無関係のテーマに従事してきました。科研費のテーマも、IODPとは無関係であります。
 また、地球深部掘削船「ちきゅう」を含むIODPの乗船、陸上研究者になったことは一度もありません。
 また、博士22人を育てていますが、IODPのテーマで学位を取った学生もおりません。
 というわけで、本委員会に関しましては、一科学者として貢献したいと、そのように考えています。
 では、順番に自己紹介とIODPに関係したかどうかなどについてお話しいただければと思います。
 では、委員の最初、小原先生、お願いいたします。
【小原委員】  東京大学地震研究所の小原でございます。専門は観測地震学で、地震観測から得られる様々な現象について解明をするというのがメインな研究テーマになっています。その中で、特に深部低周波微動に始まるスロー地震の発見を重ねてきて、日本周辺及び世界周辺におけるスロー地震活動について研究を進めてきました。
 私は12年前に地震研に移ってきましたけれども、その前は防災科研に所属しておりまして、そこでHi-netであるとか地震観測網の整備・運用に当たってまいりました。基本的にはIODPとは、全くというわけではないですが、ほとんど関わりはございません。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 では、次、窪川先生、お願いします。
【窪川委員】  窪川と申します。私は専門は生物学なんですけれども、現在は研究というよりも、海に関わるもろもろのことに関しまして、委員等々を行っております。また、女性ということで、海の女性ネットワークという任意団体を主催しておりまして、そこにJAMSTECの掘削に関わる女性の研究者も入っていらっしゃいまして、いろいろ苦労話などもお伺いして、なかなか掘削は大変だということもお伺いしている次第です。 
 あと、Ocean Newsletterという小冊子の共同編集代表として、海に関する様々な話題を、浅く広くということですけれども、関心を持って編集を続けているところです。
 以上です。よろしくお願いいたします。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 では、次、阪口先生、お願いいたします。
【阪口委員】  笹川平和財団の阪口です。現在、笹川平和財団の常務理事をやっておりますが、同時に、海洋政策研究所の所長もやっております。ただいま窪川先生のほうから紹介ありましたように、Ocean Newsletterとか、その他もろもろ我が研究所から発行しております。
 JAMSTECには2021年3月まで勤めておりましたが、すっぱりと足を洗いましたので、全く利害関係はなく、時にはドナーとして、ファウンダーとして、時には圧力団体として、海洋政策研究所からの参加ということでございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
 では、次、石井先生、お願いいたします。
【石井委員】  石油資源開発の石井でございます。委員の中で一人だけ民間の事業会社ということと認識しています。現在は当社における電力事業の担当役員とカーボンニュートラル関連事業の統括を拝命しておりますが、バックグラウンドは掘削となります。入社して約30年間は国内外、陸上海洋問わず、掘削のエンジニア、マネージャーとしての業務を行ってきました。
 2003年(平成15年)から3年間、JAMSTECへ出向しております。「ちきゅう」の建造の最終段階のときで、当時は掘削関連機器の艤装は終了しており、自分はセメンチング機器やROV機器などといった掘削のサービス契約と機器の艤装の担当とその後行われました運用開始前の慣熟訓練の計画、訓練の管理を行っていました。
 その後は会社に戻りまして現在に至るというところですが、最近では、JAMSTECによるマントル掘削にかかる技術検証委員会の座長を拝命しております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 では、次、鈴木先生、お願いいたします。
【鈴木委員】  はじめまして、鈴木と申します。私は今JAXAのほうに所属しています。2020年11月までJAMSTECに5年ほど在籍していました。そこでというか、今もですけれども、極限環境の微生物を研究していまして、陸上海洋両方の地下圏の微生物、生命の限界や可能性、進化、地球の生命の成り立ちということを知るために、今現在、宇宙も含めた惑星全体における生命の誕生・進化の歴史というようなものを研究している。
 私は一度IODPには参加したことがありまして、ジョイデス・レゾリューション号に2か月ほど乗ったことがあります。「ちきゅう」には乗ったことはないんですけど。そういうようなこともありまして、今回、そういう意味で貢献させていただけたらと思います。
 よろしくお願いします。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 では、次、巽先生、お願いします。
【巽委員】  巽です。神戸大学です。私の専門は固体地球科学です。それで、この掘削に関しては、非常に多々これまで関わってきました。IODPが立ち上げられたときの国内外での動きの中でも役割を演じましたし、それから、国内で研究体制、例えば、J-DESCでありますとか、JAMSTECにかつて存在していた研究組織等で、IODPの研究支援というもの、研究体制の構築ということに努めてきました。
 また、国内外のIODPのインプリメンテーション及びアドミニストレーションに関する、それから、科学計画に関する委員等をやってきた経験があります。これらの経験を生かして、皆さんと議論していきたいと思います。
 よろしくお願いします。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 野田先生、お願いいたします。
【野田委員】  京都大学防災研究所の野田と申します。自分の専門は、地震に関する研究を多くやっているんですけれども、地震波形とか、そういうデータには触ったことは一切なくて、主に岩石摩擦であるとか、あと、破壊力学、そういったものに関するシミュレーションであるとか、理論的な研究、あとは、摩擦に関する実験をしたりとか、そういったことをしております。
 現職になる前に5年ほどJAMSTECにおりまして、掘削との関わりということで言いますと、JAMSTECにはいたんですけれど、一度も乗船したことは実はありませんで、ただ、実験データとか、そういったものを引用してシミュレーションをした論文がある程度でございます。
 よろしくお願いします。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
 自己紹介ですけど、特別何か質問があったら受けますけど、ありますか。
 じゃ、いいですね。どうもありがとうございました。
 なお、最初の委員会の開催に当たって、お願いがあります。
 私、先ほど申し上げましたが、J-DESCの会長を務めておりますが、本委員会ではその立場を離れ、一専門家としての主査を務めます。他の委員の皆様におかれましても、IODPや「ちきゅう」との関わりがそれぞれおありかと思いますが、本委員会では御自身の立場を離れて、今後の我が国の海洋科学掘削の在り方について、知見をお持ちの一専門家として議論に参加していただければと思っておりますが、それでよろしいでしょうか。
(委員より特段の異議なし)
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、本日の議事に入ります。
 議題1「海洋科学掘削委員会の議事運営について」、まずは事務局より説明をお願いしたいと思います。お願いします。
【戸谷企画官】  御説明いたします。資料2-1をお開きください。
 資料2-1、第65回海洋開発分科会書面開催において審議が行われ、3月15日付で本委員会が設置されたという内容のものです。
 次に、資料2-2を御覧ください。第65回海洋開発分科会において、委員会で調査・検討する項目の審議が行われ、主な調査・検討項目が資料のとおり決定いたしました。
 次に、資料2-3を御覧ください。資料2-1、2-2のとおりで決定しておりますが、書面審議過程で様々な御意見を頂き、海洋開発分科会長より、各意見を織り込んだ検討をするよう指示がございました。
 次に、参考資料1-3、海洋開発分科会運営規則がございますが、この第3条第3項に基づきまして、川幡委員が藤井分科会長から主査に指名されました。
 以上が、海洋科学掘削委員会設置の経緯でございます。
 続きまして、資料3を御覧ください。科学技術・学術審議会海洋開発分科会海洋科学掘削委員会の運営規則(案)でございます。
 第1条、科学技術・学術審議会海洋開発分科会海洋科学掘削委員会(以下「委員会」という。)の議事の手続その他委員会の運営に関し必要な事項は、科学技術・学術審議会令(平成12年政令第279号)、科学技術・学術審議会運営規則及び科学技術・学術審議会海洋開発分科会運営規則に定めるもののほか、この規則の定めるところによる。
 第2条、委員会は、当該委員会に属する委員等の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない。
 第3条、委員会の会議及び会議資料は、次に掲げる場合を除き、公開とする
 一 人事に係る案件
 二 行政処分に係る案件
 三 前二号に掲げるもののほか、個別利害に直結する事項に係る案件、または調査の円滑な実施に影響が生ずるものとして、委員会において非公開とすることが適当であると認める案件
 第4条、委員会の主査(以下単に「主査」という。)は、委員会の会議の議事録を作成し、これを公表するものとする。
 2、委員会が、前条の各号に掲げる事項について調査審議を行った場合は、主査が委員会の決定を経て当該部分の議事録を非公表とすることができる。
 第5条、主査は、必要があると認められたときは、学識経験者及び関係行政機関の職員を臨時に出席させることができる。
 第6条、主査が必要と認めるときは、委員等は、Web会議システム(映像と音声の送受信により会議に出席する委員等の間で同時かつ双方向に対話をすることができる会議システムをいう。以下同じ。)を利用して会議に出席することができる。
 2、Web会議システムを利用した委員の出席は、第2条の規定による出席に含めるものとする。
 3、Web会議システムの利用において、映像のみならず音声が送受信できなくなった場合、当該Web会議システムを利用して出席等は、音声が送受信できなくなった時刻から会議を退席したものとみなす。
 4、Web会議システムの利用は、可能な限り静寂な個室その他これに類する環境で行わなければならない。
 なお、第3条により会議が非公開で行われる場合は、委員等以外の者にWeb会議システムを利用させてはならない。
 第7条、この規則に定めるもののほか、委員会の議事の手続その他委員会の運営に関し必要な事項は、主査が委員会に諮って定める。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 基本的に、政府というか役所の大枠の中で定められた規則なので、あまりまずいところはないと思うんですけど、もし何か御意見、質問ありましたら、受け付けたいと思います。どうでしょうか。
 いいですか。その都度皆様にはお伺いを立てますので、この規則に則ってまずやるということで行きたいと思います。
 それでは、本案をもって、海洋科学掘削委員会の運営規程として決定してよろしいでしょうかというのを正式に問いたいと思います。
 
(委員より特段の異議なし)
【川幡主査】  オーケーですね。どうもありがとうございました。
 それでは、今後の進め方について、事務局より説明をお願いいたします。
【戸谷企画官】  それでは、資料4を御覧ください。海洋科学掘削委員会における検討の進め方について(案)でございます。
 1、検討項目について、現時点でのイメージは、以下のとおりです。
 第65回海洋開発分科会で決定した主な調査・検討項目に沿って検討を行う。
 (1)我が国における海洋科学掘削の現状及び課題について
 マル1、「ちきゅう」を用いた海洋科学掘削の現状及び課題
 (ア)現状
  (ⅰ)建造当初の目標及びこれまでの活動実績・経費
  (ⅱ)科学的視点による評価
  (ⅲ)社会的視点による評価
  (ⅳ)技術的視点による評価
 (イ)技術面等での課題
 マル2、「かいめい」等を用いた研究開発の現状及び課題
 (2)我が国の海洋科学掘削を取り巻く動向
 マル1、地球惑星科学分野の研究開発動向
 マル2、IODPの動向
 (3)今後の海洋科学掘削を利用した地球惑星科学分野の研究開発の考え方
 マル1、科学的視点:地震メカニズムの解明、地球環境変動の解明、海底下生命圏の解明、地球内部の組成・構造の解明等
 マル2、社会的視点:防災・減災への貢献、海底資源調査への貢献、カーボンニュートラルへの貢献等
 (4)国内外の研究資源を用いた今後の海洋科学掘削の方策
 マル1、今後の海洋科学掘削の方向性
 マル2、国際協力を通じた研究開発のあり方
 2、検討の進め方(現時点でのイメージ案)
 第1回(令和4年4月19日)
 ・当委員会の委員名簿の確認
 ・第65回海洋開発分科会結果の照会
 ・運営規則(案)に関する審議
 ・当委員会の検討の進め方(案)に関する確認
 ・我が国における海洋科学掘削の取り組みについて紹介
 ・国際深海科学掘削計画(IODP)の動向についてヒアリング、議論
 ・我が国における海洋科学掘削の現状についてヒアリング、議論
 第2回(令和4年5月)
 ・我が国における海洋科学掘削の実績の評価についてヒアリング、議論
  マル1、科学的視点における実績・評価
  マル2、社会的視点における実績・評価
  マル3、技術的視点における実績・評価
 ・地球惑星科学分野の研究開発動向についてヒアリング、議論
  マル1、古環境・古気候研究分野
  マル2、極限環境生命圏研究分野
  マル3、火山研究分野
 第3回(令和4年6月)
 ・地球惑星科学分野の研究開発動向についてヒアリング、議論
  マル1、海底観測研究・技術開発分野
  マル2、地震研究分野
  マル3、地球内部物質循環研究分野
 ・海洋科学掘削の現状及び課題についてヒアリング、議論
  マル1、海溝型地震発生帯掘削に関する技術開発
  マル2、マントル掘削に向けた技術開発
  マル3、「かいめい」を用いた研究開発
 第4回(令和4年6月)
 ・第3回までの議論の整理
 ・今後の海洋科学掘削を利用した地球惑星科学分野の研究開発の考え方について議論
 (科学的視点及び社会的視点について、技術開発も含めて議論)
 ・国内外の研究資源を用いた今後の海洋科学掘削の方向性について議論
 第5回(令和4年7月)
 ・報告書とりまとめに関する検討
 令和4年夏頃
 ・海洋開発分科会に検討結果(報告書案)を報告
 ・委員会の検討結果を踏まえ、海洋科学掘削について審議開始
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 今日の議題5の意見交換のところで30分取ってあります。そこでジェネラルな議論はしたいと思いますが、もしこの場で何か特別言っておきたいとか、質問とかありましたら、受け付けたいと思います。どうでしょうか。
 いいですか。最後に30分取ってありますから。というわけで、粛々と次に行きたいと思います。
 では、次の議事に移りたいと思います。
 議題2「我が国におけるこれまでの海洋科学掘削の取り組みについて」、まずは事務局より資料の御説明をお願いいたしたいと思います。
【戸谷企画官】  資料5をお開きください。事務局より、「我が国におけるこれまでの海洋科学掘削の取り組みについて」御報告いたします。
 深海科学掘削は、地殻とマントルの境界であるモホロビチッチ不連続面(モホ面)を掘り抜こうという、米国が1959年に発表したモホール計画に端を発します。その後、1961年には、実際に掘削船を用いた深海掘削が試みられ、1968年には、グローマーチャレンジャー号による深海掘削計画DSDPが開始。1975年には、DSDPが国際フェーズに移行し、日本が参画しました。1983年には、DSDP・IPODが終了し、1985年には、我が国を含む21か国が参加する国際深海掘削計画ODPが開始され、ジョイデス・レゾリューション号の運用が開始されました。
 この頃から日本の科学技術庁及び海洋科学技術センターでは、ライザー掘削機能を搭載した日本自前の科学掘削船の開発・運用を行い、科学の推進を行う深海地球ドリリング計画構想が検討されるようになりました。1990年5月には、海洋開発審議会第3号答申において、新しい深海掘削船を含む深海掘削計画の強化を答申。同年6月には、科学技術会議第17号答申、地球科学技術に関する研究開発基本計画において、地下や海洋底の観測及び試料採取を可能にする地下深部・深海底掘削システムの開発を図ることとされました。同じ年に、海洋科学技術センターにおいて、地球深部地層サンプリングシステムの研究が着手されています。翌1991年5月、科学技術庁海洋開発推進懇談会・深海掘削研究会において、ライザー掘削の科学的必要性と技術的可能性の事前評価が実施されました。その翌年、1992年には、海洋科学技術センターにおいて、深海掘削船システム要素技術開発が開始されました。
 1994年6月には、科学技術庁の海洋科学技術研究会・深海掘削研究会において、ライザー掘削の科学的必要性と技術的可能性についての中間評価を実施し、同じ月に、ODPの執行委員会において、我が国のライザー掘削船構想を支援する旨の動議が採択されました。これを受けて、海洋科学技術センターでは、1995年に、深海掘削船の要素技術の開発を終了し、全体システムの研究を開始しています。
 1997年には、ライザー掘削国際科学者会議、いわゆるCONCORD会議が開催され、1998年には、深海地球ドリリング計画評価委員会の報告により、ライザー掘削船の開発に具体的に着手し、2003年の統合国際深海掘削計画IODPには、米国のジョイデス・レゾリューション号と我が国の掘削船「ちきゅう」の2船体制で取り組む計画へと進んでいきます。
 深海地球ドリリング計画概要及び本計画に関する事前評価について御説明します。
 海洋科学技術センターが深海地球ドリリング計画を提案し、科学技術庁は、航空・電子等技術審議会地球科学技術部会に「深海地球ドリリング計画評価委員会」を設置し、同委員会において、1998年12月に事前評価を実施しました。
 当初の深海地球ドリリング計画の要素は、赤枠で囲まれた3点となります。
 すなわち、国際深海掘削計画ODPで用いられていた科学掘削船の技術的限界を超える能力を持つ、地球深部探査船(ライザー掘削船)及び関連技術を開発する。
 日本の地球深部探査船と米国の従来型掘削船等が相互補完する統合国際深海掘削計画を推進する。
 IODPによって得られたコア及び掘削孔を用いた地球科学及び生命科学の研究を総合的に推進する。
 評価の結果、深海地球ドリリング計画は、科学的・技術的及び社会的意義が大きいものであると認められ、ライザー掘削機能を有する地球深部探査船を建造し、IODPを推進することが決定されました。そのIODPは、2003年10月に、日米主導で開始されることとされていました。
 深海掘削委員会について御説明いたします。
 統合国際深海掘削計画(IODP)が2003年10月に開始されることに併せ、海洋開発分科会の下、統合国際深海掘削計画の推進に関する基本的な方針を調査・審議するため、平成15年5月22日に深海掘削委員会が設置されました。同年6月の第1回委員会から2014年7月まで、計15回開催されました。審議事項としては、主導国としての我が国のIODPに対する対処について、IODP国内推進体制等について、IODPの普及施策についてです。
 深海掘削委員会では、節目節目で重要なとりまとめを行っています。
 2005年の第6回から第7回にかけて、「ちきゅう」が完成し、間もなく本格運用されるというタイミングで、深海地球ドリリング計画中間評価報告書のとりまとめ。
 2013年の第11回から第13回にかけて、統合国際深海掘削計画が終了し、国際深海掘削計画に移行するタイミングで、深海地球ドリリング計画第2次中間評価報告書のとりまとめ。
 2014年の第14回から第15回にかけて、いよいよ南海トラフ地震発生帯の掘削に取り組むタイミングで、「南海トラフ地震発生帯掘削計画」に関する審議及び提言書のとりまとめを行いました。
 2006年の深海地球ドリリング計画中間評価について御説明します。
 平成17年7月に「ちきゅう」の完成が予定され、本格的な運用が間もないという段階において、航空・電子等技術審議会による平成10年の事前評価を踏まえて、それ以降の本計画に関する取り組みについて中間的な評価を実施することとされたものです。「ちきゅう」の性能、運用環境、IODPの意義、我が国が主導できているか、関連活動の推進体制、人材育成、普及広報といった観点から評価し、総合評価として、その時点においても科学的及び社会的に意義が高く、極めて有意義である旨、平成18年2月の海洋開発分科会において評価されました。
 続いて、2013年に行われた深海地球ドリリング計画第2次中間評価報告について御説明します。
 2003年に開始された統合国際深海掘削計画が2013年9月に終了することを受け、2013年10月に後継プログラムが開始されることが決まりました。平成18年2月に出された深海地球ドリリング計画中間評価報告書を踏まえ、それ以降の本計画に関する取り組みについて評価を行い、次期IODPの実施方針に反映するため、深海地球ドリリング計画の要素を修正の上、2013年に第2次中間評価が実施されました。深海地球ドリリング計画の3要素のうち2要素を状況に合わせて修正し、評価が行われました。
 具体的には、当初は「ちきゅう」の建造及び関連技術の開発を目標としていましたが、「ちきゅう」の安全で効率的な運用体制及び船上などの研究設備・支援体制の整備、また、関連技術の開発としました。
 統合国際深海掘削計画には、欧州海洋研究掘削コンソーシアムが目的に応じて特定任務掘削船を傭上するスキームにより、第3の掘削船プロバイダーとして参画したため、3船体制でIODPを推進するとしました。
 第2次中間評価の結果、今回の中間評価においても、深海地球ドリリング計画は我が国にとって科学的・海洋技術的及び社会的に意義が高いものであることが確認され、我が国の取り組みは科学的・社会的ニーズなどを踏まえ、関係各機関により適切に行われてきていると認められました。また、国際的な枠組みの中で引き続き重要な役割を担うことが期待されており、引き続き、我が国が深海地球ドリリング計画を世界の海で推進することは極めて有意義であると評価されました。
 この評価を受け、2013年10月からは、我が国の「ちきゅう」、米国の従来型掘削船、欧州の提供する特定任務掘削船の3船体制により、国際深海掘削計画(IODP)を推進することとされ、今日に至っております。
 もう一つ、南海トラフ地震発生帯掘削計画の進め方に関する提言について御説明します。
 新しいIODP、国際深海科学掘削計画が2013年10月に開始されて間もなく、2014年に、南海トラフ地震発生帯掘削計画ステージ3(超深度掘削)の状況を踏まえ、改めて本計画の必要性や期待される成果、経緯を明らかにした上で、今後どのように進めていくかについて提言をまとめていただいたものです。
 提言では、南海トラフ地震発生帯掘削計画に期待される科学的成果や社会的貢献に鑑み、「ちきゅう」による掘削を継続することが妥当とした上で、1、早期に巨大分岐断層/プレート境界断層接合部を掘りぬくことを目指す。
 2、そのため、超深度掘削は、連続する2会計年度内での完遂を目指す。様々な理由により、それ以上かかると見込まれる場合は一旦休止することを含め技術の進歩や社会情勢等を鑑みて決定する。
 3、掘削方法の選択に当たっては、計画案それぞれのリスクを徹底的に検証し、上記2項の方針を考慮しながら、できるだけ成功確率の高い手段が選択されるよう技術的合理性に基づいた判断を行う。
 また、地震防災の重要性から、現在浅部に設置されているものを含め、海底下の長期孔内計測装置については、可能な限りDONETにつなぎ、できるだけ速やかにリアルタイムモニタリングシステムを構築し、データの公開に努めるとされたところです。
 深海掘削委員会の開催実績については、以上です。
 次のスライドから、政策文書等における海洋科学掘削関連の記述を抜粋して収録しております。
 第3期海洋基本計画では、海洋資源開発関連産業の戦略的展開、海底資源の開発及び利用の推進、自然災害による被害軽減のための調査等、海洋エネルギー・鉱物資源の開発に関する研究開発の推進、「ちきゅう」によるIODPの推進、大水深・大深度掘削のための基盤技術開発の推進。
 科学技術・イノベーション基本計画では、海洋基本計画に基づき、海洋観測、MDA能力強化、カーボンニュートラル実現に向けた広大な海洋環境の把握能力を高めるため、氷海域、深海部、海底下を含む海洋の調査・観測技術の向上。
 防災基本計画では、地震災害及び地震防災対策に関する研究及び観測等の推進の一環として、「地震調査研究の推進について」では、海溝型地震の発生予測手法の高度化といった観点での関連の記述がございます。
 また、JAMSTEC中期目標及び中長期計画においても、海洋科学掘削関連について記述があるところです。繰り返しが多いため、読み上げは控えさせていただきます。
 以上、駆け足になりましたが、米国で提唱されたモホール計画に端を発し、我が国が海洋科学掘削に取り組むようになり、深海地球ドリリング計画が提唱され、事前評価を踏まえ、地球深部探査船「ちきゅう」建造に至った経緯、海洋開発分科会の下に設置された深海掘削委員会の振り返り、深海地球ドリリング計画の2度の中間評価と、南海トラフ地震発生帯掘削計画の進め方に関する提言、現行の政策文書等における海洋科学掘削の記述について御紹介いたしました。
 以上です。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 1990年の海洋開発審議会からずっと現在までの経過、オーソライズしながら次に進んできたというのを御説明いただいたと思います。御質問、御意見ありますでしょうか。
 あと、もし補足するところがあったらというわけで、関係しそうなお二方にちょっと聞いてみます。巽先生、何かありますか。
【巽委員】  いえ、特にございません。どうぞ。
【川幡主査】  では、あと、阪口先生、理事をやったときに、ここは違うよとか、もしあったら指摘願います。
【阪口委員】  ちょっと基本的な質問なんですけれども、途中の中間評価で、「ちきゅう」という船は深海ドリリング計画を実施することができる船になっているかという評価ポイントで、なっているという形にはなっているんですけれども、私がJAMSTECを辞める前の年の理事会では、「ちきゅう」という船は、マントルまで到達することはできない船であるということを、「ちきゅう」を持っている部署の技術者がきちんと明確に述べて、それ以降、JAMSTECは、「ちきゅう」はマントルまで掘る船であると書いている記載物を一切消去して、その技術はまだないというのが2019年の話だったんですが、この中間評価のときに、既にその能力を兼ね備えているということが認められていたということと、私が述べたというか、「ちきゅう」の技術の関係のJAMSTECの部署が述べたことと、それをJAMSTECの理事会で了承したことと、大きな矛盾があるんですけれども、そこのところはどのように解釈したらよろしいんでしょうか。
【大土井課長】  海洋地球課長、大土井でございます。
 恐らく深海地球ドリリング計画の中間評価のところだと思うんですが、これ、平成17年に「ちきゅう」が完成する直前ぐらいに、本格的運用が間もなくという段階での評価項目ですので、あくまでもこの「ちきゅう」がちゃんと掘れますかということの評価であって、マントルまで掘れます云々という話ではないという理解です。
 なので、ちゃんと「ちきゅう」という船が海底を掘れるということまでは、ちゃんとここのところで確認できたと。ただし、どこまで掘るかというところでは、ある程度は掘れるだろうけれども、マントルまで掘れるかどうかというのが恐らく評価軸に入っていないのではないかなというのが、事務局としての回答でございます。
【阪口委員】  ということは、深海ドリリング計画そのものが割といいかげんだったということですよね。本来であれば計画というからには、何をいつまで、どの程度までということを、それを裏打ちする技術とともに立てるべきと考えます。しかし、御発表ではそういったものに関する情報は一切なく、日米二船協力体制で取り組むことばかりが強調されていました。計画というよりも情緒的な感じだったということなんですね。結局、どこまで掘れるかとか、そういうことは問わないという、そういうことだったという理解でいいですね。
【大土井課長】  というか、技術が進歩したら、掘れる深さも増えるだろうし、それは技術と実際の掘削と並行して進めていきましょうということだったので、いつまで何をできるということには、R&D上もなかなかするのは難しいのではないかなというのが、この深海地球ドリリング計画の位置づけだと認識しております。
【阪口委員】  それであれば、深海ドリリング願望とか、そんな感じだったわけですね。結局は。そういう状況だと、計画とはやっぱり呼べないですよね。
 はい。それで結構です。
【川幡主査】  先ほどの阪口先生の御指摘があったマントルについても、この委員会の中で技術的な観点から議論しますので、またそのときに御発言していただければと思います。よろしいでしょうか。
【大土井課長】  はい。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
 ほかにありますか。では、次に行きたいと思います。
 それでは、議題3、国際深海科学掘削計画(IODP)の動向についてに移ります。
 日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)のIODP部会長を務めておられます大阪公立大学――4月1日から大阪市立大学と府立大学が合併いたしまして、公立大学となりました――の益田晴恵先生から御説明をお願いいたします。
【益田J-DESC・IODP部会長】  では、J-DESC・IODP部会長の益田晴恵でございます。
 日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)は、国際掘削科学プログラムであるIODP・ICDPの活動に貢献する国内研究者組織です。その責任者の一人として、IODPの動向と、それに関わる研究者の活動を御紹介いたします。
 J-DESCは、地球掘削科学の指針や関係機関の連携を目的として、2003年に大学と研究機関の連合体として組織されました。今年で設立19年目を迎え、現在、全国50の組織が正会員として運営に参加しています。J-DESCは、IODP、陸上掘削であるICDPの日本からの対応窓口の役目を担っています。さらに、J-DESCでは、会員機関の交流、国際交流の促進、そして、普及広報・教育活動などの掘削科学を推進するための活動を行っています。
 海洋科学掘削の歴史は、この年表に示すとおりです。先ほど戸谷企画官がお話をされましたので、簡単にだけ述べたいと思います。
 1985年に、21か国が参加する国際深海掘削計画、2003年からは、統合国際深海掘削計画と名前を変えながらプログラムを更新してきました。IODPでは、日本とアメリカが主導する国際プログラムとなり、日本が提供する地球深部探査船「ちきゅう」、アメリカが提供するジョイデス・レゾリューション、そして、ヨーロッパが提供する特定任務掘削船の3船体制となりました。2013年には、国際深海科学掘削計画(International Ocean Discovery Program)としてプログラムが更新され、この3船体制を維持して現在に至っています。この歴史が示すように、海洋科学掘削は、プログラムを更新しながら、半世紀以上継続してきました。これほどの長期間にわたって引き継がれてきた大型の多国間国際共同プログラムは、ほかに例がありません。
 現行のIODPの概要について御説明いたします。
 IODPは、日本・アメリカ・欧州主導の下、22か国が参画する多国間国際共同プログラムです。海洋底から得られた掘削コアの分析や孔内計測によってのみ得られる様々な地学現象に関する科学成果を創出することがIODPの目的です。IODPの掘削によって得られたデータ及びコア試料の保管・供与のサービスも、日本・アメリカ・欧州で行っています。国内では、海洋研究開発機構がIODPの総合推進機関として、「ちきゅう」の運用、コア試料の保管・管理を行っています。また、国内研究者の参加窓口であるJ-DESC事務局も、JAMSTECに設置されています。
 この図は、現行IODPの枠組みを簡素化して示したものです。赤の矢印が研究者の流れ、グレーの矢印が掘削提案や情報の流れ、緑が資金の流れを示しています。
 掘削船の提供者とは、日本が文部科学省及び海洋研究開発機構、アメリカがNational Science Foundation、欧州は欧州海洋掘削研究コンソーシアムです。IODP参加各国は、掘削船の提供者に資金提供することにより、IODP研究航海への参加や国際委員の派遣が可能となります。IODP参加各国の研究者が掘削提案書を提出し、国際委員会によって科学的な評価や安全性に関する評価がなされます。高い評価を得た掘削提案は、日米欧それぞれの掘削船提供者の運用委員会によって運航計画に組み込まれます。実施が決定した研究航海に対し、IODP参加各国から応募した研究者から乗船研究者が選抜され、研究航海が実施されます。J-DESCは、この中で科学コミュニティをまとめる役割を担っています。
 IODPの掘削公開で採取された柱状の海底堆積物・岩石のコア試料は、アメリカのテキサスA&M大学、ドイツのブレーメン大学、そして、日本の高知コアセンターの3か所で冷蔵保管・管理されています。保管するコア試料は、どの掘削船で採取したかによらず、採取した海域によって3か所に振り分けられます。
 高知コアセンターには、総延長146kmのコア試料が保管・管理されています。また、IODP参加国の研究者からの年間約150件の試料請求に対して、配付サービスを行っています。高知コアセンターに整備された物理計測・化学分析設備の利用は公開されています。また、IODP乗船研究者の乗船前トレーニングや、将来IODP航海への乗船を目指す学生を対象としたスクールの開催場所として、科学コミュニティに活用もされています。
 次に、IODPの科学成果について説明いたします。本日は、詳細な説明をする時間がございませんので、日本人研究者が重要な貢献をした例を、IODPの科学計画書において掲げられている4の科学目標に沿って、スライド2枚にまとめました。これから簡単に説明します。
 気候・海洋変動に関する1つ目の代表的な成果は、ヨーロッパの掘削船による北極域での気候変動の復元に関するものです。現在から約6000万年前までの古気候・古海洋連続記録の復元に成功し、過去に南極域と北極域がほぼ同時に寒冷化したことが実証されました。
 もう一つは、ジョイデス・レゾリューションによる掘削によって得られたアジアモンスーンの復元に関する成果です。日本海と東シナ海における40万年前から250万年前にかけて寒冷化した時期には、日本海が嫌気的な環境に変化したことが示されました。
 2つ目は、生命圏フロンティアに関する成果です。代表的なプログラムとして、下北八戸沖石炭層生命圏掘削、沖縄熱水海底下生命圏掘削、南太平洋環流域生命圏掘削、室戸沖限界生命圏掘削などがあります。これらのうち、3航海は「ちきゅう」を用いて実施され、様々な地質環境を背景とする海底下生命圏に関する知見を飛躍的に増加させました。
 3つ目は、地球活動の関連性に関して、2例を示します。
 1つ目は、ヨーロッパの掘削船による研究航海で、チチュルブクレーターの掘削です。恐竜絶滅で知られる白亜紀の終焉と時期を同じくして火山活動が活発化したことを見出し、劇的な地球環境変動イベント後の生態系の環境適応プロセスに関する多くの知見が得られました。
 もう一つは、ジョイデス・レゾリューションによる掘削によって得られた、伊豆・小笠原・マリアナ島弧掘削の成果です。この成果は、島弧進化と大陸地殻成因の総合的理解を大きく拡大することができました。
 4つ目は、「ちきゅう」を活用して日本がリーダーシップを発揮して進めてきた、変動する地球です。代表的な成果は、南海トラフ地震発生帯掘削と東北地方太平洋沖地震調査掘削で得られました。両地域で地震性断層を発見しており、孔内観測に成功し、プレート境界地震発生のメカニズムの理解に貢献しています。
 ここに述べたものを含めて、掘削プログラムの科学成果の詳細については、第2回以降に機会を頂ければ説明したいと考えております。
 このスライドでは、IODPにおいて日本が果たしてきた役割を得られた成果、波及効果について説明いたします。
 日本が果たしてきた最大の役割は、2003年以来、IODPの主要国として、地球深部探査船「ちきゅう」と高知コアセンターを国際供与することで、IODPの3極の一つを担ってきたことです。
 最大の成果の一つは、乗船機会が増えたことにより、海洋掘削科学分野での我が国の国際競争力の強化がなされたことです。アメリカと欧州に「ちきゅう」の乗船枠を提供することによる、乗船枠の交換によって、ジョイデス・レゾリューション、特定任務掘削船に乗船して活躍する多くの日本の研究者を継続的に派遣することができました。2003年以降、日本が派遣した乗船者は合計473名に上ります。世界に占める日本の乗船枠は、IODP以前の7%から25%以上へと大幅に増大しました。その結果、優先的に試料にアクセスできる研究者が増え、多くの研究成果を発信できたばかりでなく、研究チームをリードする研究者を多数輩出できました。
 IODP参加の波及効果としては、国際交流や人材育成の促進が挙げられます。IODP発足以来、世界から延べ1,850名の研究者が乗船しました。ハイレベルな研究者集団の中での国際交流や分野融合の活性化に貢献してこられたことは、IODPに積極的に関わってきた大きなメリット・波及効果でした。また、乗船枠が拡大したことによって、若手研究者や大学院生の乗船機会が増え、人材育成・科学コミュニティの底上げにつながっています。さらに、2003年以降、IODP関連の国際委員会等に延べ183名の委員を派遣してきました。これにより、国際プログラムの運営における発言力が増加し、若手研究者の国際会議への登用により、広い視野を持って研究マネジメントに携わる科学者を育成してきました。
 日本がIODPに参加したことによる効果の一例として、科学成果に対する日本の貢献度を示します。このグラフは、IODPの出版部門が2021年に集計した、これまでに出版された論文数を、IODPプロジェクトの上位45航海について示したものです。プロジェクト名の下に赤字で示す日本が主導した「ちきゅう」による航海と、青字で示す「ちきゅう」以外の航海で、日本人研究者が研究チームのリーダーを務めた航海が、出版論文数で上位を占めています。このデータからも、日本がIODP全体の成果創出に貢献してきたと言えます。
 現行のIODPは2024年9月で区切りを迎えるため、後継プログラムに向けた長期ビジョンの策定作業が2019年から開始されました。参加各国が国内や国際でワークショップを開催し、国際ワーキンググループによって話し合いを重ね、最終的に各国から推薦された国際執筆チームにより、「2050 Science Framework, Exploring Earth by Scientific Ocean Drilling」という計画書が完成しました。この計画書策定には、日本人研究者が主要メンバーとして大きく貢献したことが高く評価されています。124ページからなるScience Frameworkの内容については、ここでは詳しく説明することはできませんが、7つの科学戦略目標、5つのフラッグシップ・イニシアティブ、4つの実現可能要素によって構成されております。策定に積極的に関わってきた日本は、2050 Science Frameworkとして集約された科学目標を実現する責任を負っていると考えています。また、J-DESCがこれに貢献するということを国際の場で表明しています。
 J-DESCでは、2050 Science Frameworkを日本の科学コミュニティに広く浸透させるために、国内向けに3種類の出版物を作成し、2021年3月に出版しました。J-DESCのホームページからダウンロード可能です。
 こちらが最後のスライドになります。Post-2024に向けた国際動向と、国内コミュニティの意向について説明させていただきます。
 国際動向としては、以下の5点が要点となります。
 現行IODPは当初終了予定であった2023年9月から1年延長して、2024年9月をもって終了する予定です。
 アメリカは、ジョイデス・レゾリューションの運航終了を見据えて、後継船の構想について検討中です。
 中国は、post-2024に掘削プラットホームを提供する意向を表明しています。
 日本側関係者と欧州海洋掘削研究コンソーシアムは、Post-2024に向けた共同プログラムの構築と、他国のプログラムと連携する“アライアンス構想”の検討を進めています。
 先々週に開催されたIODP Forumという国際連携・将来計画の調整会合において、2050サイエンスフレームワークに基づいて複数のプログラムが連携する“アライアンス構想”について、議論を継続していくことになりました。
 こうした国際動向を受けて、国内コミュニティの意向をまとめた要望書を、2021年10月に文部科学省、海洋研究開発機構、高知大学に提出いたしました。日本が推進する掘削科学の重点項目は、2050 Science Framework日本版の中で、1、プレート沈み込みの研究(地震・津波に対する防災・減災)、2、火山噴火の研究(超巨大噴火への防災)、3、気候変動の研究(現在の脱炭素社会への貢献)、4、夢のある海底下生命・物質科学の研究(人類・生命と地球の共生社会創造)、そして、5、船舶運用・掘削関係技術の硬度化(孔内観測を通じての防災)の5項目です。これらの科学目標達成のために、今後も日本の研究者が国際科学掘削プログラムの中で活躍できる環境が必須です。そのために、地球深部探査船「ちきゅう」と高知コアセンターを継続的に運用することが必要であることを、要望として表明いたしました。
 以上で説明を終わります。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 途中で一部音声が途切れることがありましたが、トラブルの部分はもう一度説明していただいて、多分委員の先生方にはお声が全部届いたと思うんですが。まず、何か不都合があって聞こえなかったら、もう一回説明してくれというのがありましたらお願いします。そこから行きましょう。
 いいですか。ありがとうございました。
 1つ、この委員会に関わることで、少しお願いしておきたいことがあります。先ほど国際動向をはじめ、本委員会での議論ありましたが、これから議論する中に、未公開であったり、機微であったりする情報があり得るかと思います。本日の質疑応答では、一部回答しにくい部分、そういう限られた部分ですけれども、回答しにくい部分もあろうかと思いますので、委員の先生におかれましても、御理解いただければと思います。
 では、質疑応答したいと思いますが。まず、なぜJ-DESCが説明したかというのを、一言言っておきたいと思います。
 J-DESCは、掘削科学を推進するためにコンソーシアムで運営されていますが、自腹で研究者がお金を払ってというか、インスティテュートごとに10万円払って、受け皿として研究者コミュニティをつくっているということで、非常に稀有な存在だと思います。もともとはアメリカとかヨーロッパのコピーでありますが、このような体制でやっている地球惑星科学のプログラムは、私の知る限り、ほとんどないと思っています。
 特に、今日述べられませんでしたが、人材育成、それに関してもよくやっているかなと。それで、類似のものとしたら、私の知る限りは、宇宙にありまして、お金は取っていませんが、もう30年ぐらいにわたってコンソーシアムもどきをつくって、夏の学校とかをやって、大学院生、この研究室をやりたいんだったら進学したらいいよとかいうのをやっているというコミュニティがありますが、ほかは研究者の私的集団がグループをつくって対応しているというような感じですが、掘削の場合にはIODPが対応しておりますので、今日、J-DESCの益田先生に御説明いただいたということになります。
 では、質疑応答に入りたいと思います。質問及びコメントありましたら、お願いいたしたいと思います。どうでしょうか。あと、補足でもいいですよ。今、47分です。
 では、鈴木先生、何かコメントありましたら。ドキッとしたような感じがしていますが。
【鈴木委員】  人材育成、科学成果とも非常にたくさん出ているのではないかなと思いました。国際協力という中で、私も実際リグに乗せていただいたんですけれども、やっぱり「ちきゅう」があるから、そして、それをもとに大きな国際コミュニティの中で人材育成ができてきた。そういうところは非常に大きい成果ではないかなと思っていますし、JFASTのような、日本で例えば有事があったときにも、こういう成果が出せたということは、これは非常に大きいというか、これまで国際コミュニティの中で、世界的に日本人研究者を含めて育てていただいた、こういうコミュニティがあったからこそ、そういうことがすぐに実現できたのではないかなと思っています。
 質問としては、今後どういうところを目指していくのかというのは、非常にこれから重要になってくる、これまでの成果以上に、これから何をしていくのかというのが重要になってくると思っていまして、その説明は少しシンプルだったかなと思っています。これから国際動向の中で日本の役割、そして、何を目指していくのか、掘削科学で何を明らかにしようと、そこは何を目指していくのか。それはもちろん技術的、もちろん資金的、いろいろな理由でそれが実現できそうかというところについて、これから話していかれると思うんですけど、もう少し今後目指すものについて話していただけると、ちょっと分かりやすかったかなと思います。
【川幡主査】  この委員会で、技術的側面も含めて、今後現実的に可能なことを何ができるかというのをまとめるのがミッションと思っておりますので、またその節はお願いします。
【益田J-DESC・IODP部会長】  今のことに関して、十分に答えられるかどうかは分からないんですが。おっしゃった御指摘は大変に重要な指摘だというふうに私たちも認識しております。
 特に1つは、2024年以降の国際枠組みがどうなるかということについて、今現在、先ほどちょっと簡単に説明しましたが、欧州のグループと話し合いを重ねております。それで、できましたら今までと同じようなというか、類似の体制でやっていきたいなとは考えているんですが、まだちょっと不透明なところがあって、鋭意努力中ということしか、連携に関してはお答えできないような状況ではあります。国際枠組みを守るためには頑張っているということは、ちょっと分かっていただいたほうがいいかなと思います。
 もう一つは、何を目指すのかということなんですが、これに関しては、やはり2050 Science Frameworkの中にきちんと書き込んであるんですけれども、その中に書かれてある、先ほど成果の中で4つの大きな枠組みの中での成果をお示ししましたけれども、ああいう尖った分野の中で、やはり新しいサイエンスを見出していくということは、常に心がけて活動を続けていきたいなとは思っております。御支援を頂ければと思います。
【川幡主査】  ほかに質問ありますでしょうか。
【石井委員】  石井ですけれども、よろしいでしょうか。
【川幡主査】  お願いします。どうぞ。
【石井委員】  この発表のスライドで10番目、資料通しのページいうと43ページの「出版された査読論文数」のスライドに関しての質問です。私は民間にいますので、棒グラフの意味がピンとこないのですが、スライドでは研究航海における査読論文数という形で比較をしておりますが、この研究航海というのを、我々民間でいうプロジェクトと考えれば、査読論文数が多いほど成果があったと考えました。この棒グラフを見ますと、一番左の「ちきゅう」の研究航海であるNanTroSEIZEというのは、最終的には目的深度まで到達できなかったと聞いてはいますが、他の研究航海と比べると倍以上の査読論文数が出たということは、この研究航海は科学者の方は大きく評価していると捉えていいものなのかを教えていただきたいのですが。
【益田J-DESC・IODP部会長】  評価しているというふうに考えていいかと思っております。
 というのは、確かに「ちきゅう」の最終目的である地震発生断層まで到達しなかったということは事実ではありますけれども、科学掘削としては、世界で最深の海底に掘削をする、コアを採るということを実際に実現できておりますし、そのプロセスの中で多数の論文が公表されてきたものだというふうに判断をしております。
 それなので、こういう時間をかけて掘削するものの場合というのは、もちろん最終的な目的が達成されることが何より重要ではあるんですけれども、目標に到達するまでの過程の中でも、非常に多くの研究成果が出るということを示していると考えております。
【川幡主査】  お答え、これでよろしいでしょうか。
【石井委員】  ありがとうございました。
【川幡主査】  もうちょっと言うと、このグラフ、南海トラフは、幾つかの航海が集まって、この棒グラフになっているんですよ。だから、1航海当たりにすると、もうちょっと下がるかもしれませんけど、ほか、右側のほうは少ないように見えるかもしれないけど、それは1航海なので、見方はちょっと注意しなければいけないのを一応言っておきます。
 ただ、実際にたくさん成果が論文として出ているというのは、このグラフからよく分かるかなと思います。
 最後にまた30分ぐらい時間を取ってありますので、野田先生までお話を伺ったら、休憩したいと思います。
【野田委員】  今おっしゃったことをお聞きしたかったんですけれども。まず1点は、この棒グラフが、プロジェクトごとの、棒グラフになったら、1番、2番と順番がつくのであれなんですけれど、使った時間とか非常に多いと思うので、NanTroSEIZEとか。なので、日数で割った数字とか、そういうのを見たいなとちょっと思ったのが1件。
 もう1件、お聞きしたかったのは、その次のスライドの、資料のページ数で44ページ目、ここで、この2050 Science Framework、自分は読んでいないんですけれども、すみません。ここで説明の中で、これを達成する責任があるというふうにおっしゃったと思うんですね。その責任という言葉がちょっと重い言葉だなと思ったんですけれども、その責任というのは、どのレベルで認識されているものなんでしょうか。
 例えば、ここにおられる委員の方、皆様、それを責任だと思っていらっしゃるのであれば、それに照らして、今後どうすべきかという議論をすることになると思うんですけれども、その責任とおっしゃった意味をちょっと説明していただけますでしょうか。
【益田J-DESC・IODP部会長】  J-DESCの立場として、それから、私はJ-DESCの中でIODPに対して研究者の代表として参画しているんですけれども、私の認識の中では、積極的にこの計画立案に関わってきた。これは若手の研究者たちが多いんですけれども、そういう方たちも含めて、研究者としての責任というふうに第一義的には考えております。
 その次に、自分の年齢とか、そういうことも考えて、組織の問題も考えてということですけれども。もちろん研究に参加するのが、個人の資格でもって参加することも当然できるわけなんですけれども、可能であれば、やはり日本がグループとして。今まで日本全体で、例えば、「ちきゅう」を持って、それを提供する形でもって世界に貢献したというのと同等のレベルでできることがさらに望ましい。そうやって責任を取っていくことができれば、非常にありがたいことであるというふうには考えております。
【川幡主査】  野田先生。
【野田委員】  分かりました。ありがとうございます。
【川幡主査】  いい御質問いただいたので、ここでちょっとお話ししておきたいのは、混乱するかもしれないので、少し整理したいと思います。
 まず2050年の云々というのは、すごいロングタームのことであって、これは目標だねという感じですね。と思います。それで、この委員会では、後で皆さんと、この報告書を書く前に議論したいと思いますが、5年から10年あたりがターゲットかなと思います。現実的に、2040年、50年は、技術もどうなっているか、本当の予測も難しいですし、5年ぐらいだったらみんな見えるかなと思いますので、5年から10年あたりをターゲットに議論を収束していくというところがいいかなと思いますが、これは私の私見なので、後日皆さんと議論して、どの辺をターゲットにしますかという議論に発展させたいなと思います。それでよろしいでしょうか、野田先生。
 では、時間が、今59分でありますが、もともと休憩の時間を取っておりましたので、11時10分まで休憩させていただければと思います。では、また11時10分にお会いしたいと思います。お願いします。
( 休憩 )
【川幡主査】  次の議題に行く前に、今の説明での質問、コメント、もしありましたら受け付けます。最後に25分ぐらい時間はありますけど、今もしありましたら、手を挙げてもらえますか。画面でみんな見えているから、手を挙げたら分かりますので。
 いいですか。じゃ、次に行ってから、また全体の議論に行きたいと思います。
 では、続いて、2番目のヒアリングに移りたいと思います。
 「我が国における海洋科学掘削の現状」について、JAMSTEC倉本理事から御説明をお願いいたします。
【倉本理事】  御紹介ありがとうございました。
 それでは、資料7に基づきまして、「我が国における海洋科学掘削の現状」ということで、海洋研究開発機構、今理事を拝命しております倉本より御紹介させていただきます。
 本日頂いている時間、短いかと思いますけれども、今日御紹介したいのは、現状ということで、まず「ちきゅう」関係として、「ちきゅう」の概要、それから、運用実績、そして、成果及び目標達成の状況、それに関しては、主な科学成果、社会的成果、技術的成果、オペレーションマネジメント体制、技術者の育成、アウトリーチについてお話しさせていただきたいと思います。それから、予算、これまでの予算の経緯、そして、「ちきゅう」以外のところで、「かいめい」という船がありますけれども、「かいめい」及び高知コアセンター、先ほど益田先生からもありましたようなコア保管のセンターですけれども、の御紹介もさせていただきたいと思います。「かいめい」に関しては、「かいめい」の概要と「かいめい」の成果、それから、高知コアセンターは、その概要とその実績について御紹介させていただきます。
 まず「ちきゅう」の概要でございますけれども、「ちきゅう」は2005年に就航いたしております。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が保有する船でありまして、日米欧が主導する国際深海科学掘削計画(IODP 2013-2024)の枠組みの中で現在運用しております。先ほどの全体的な御紹介の中でもありましたように、IODP第1期自身は2003年から13年、統合国際深海掘削計画と申しますけれども、でスタートして、第2期のIODP、名前が少々変わっておりますけれども、24年まで継続中ということであります。
 「ちきゅう」の特徴は、大きな船であるということもありますけれども、真ん中に、右の写真でもありますように、高いやぐらが立っておりまして、この下に掘削装置が付いているわけですけれども、一番の特徴は、ライザー掘削ということができる船であります。現在のライザーパイプ自身は2,500mございまして、ドリルパイプ自身は7,000mまで掘れるような能力を現在保有しております。
 ライザー掘削というのは、2重管構造になっておりまして、左下にポンチ絵が描いてありますけれども、ちょっと小さいので分かりにくいので、言葉で御紹介いたしますと、ライザーパイプの中にドリルパイプを通して、その中を密度を調整した泥の水を循環させて、掘削をしている海底下の孔内が圧力的に安定になるように調整しております。それで深く深く掘れると。この技術自身は、石油・天然ガスの業界で培われた技術ですけれども、それを科学掘削として初めて導入した船であります。
 スペックといたしましては、全長210m、幅が38m、総トン数としては5万7,000トン弱という船であります。定員が200名であります。この船は、水深の深いところで掘削を行うということですので、アンカーでとめずに、浮いたままで定点保持をすることが可能になっております。それを支えている動力として、アジマススラスタというのが左端にありますけれども、内径で大体4mぐらいの直径のプロペラを6基装備しておりまして、それは360度方向に回転し、かつ、推力を変えることによって、船に働く外力、風、波、潮、様々な外力に対しての抵抗、応力を発生し、船を定点に固定するという技術であります。それから、ヘリデッキや装備、そして、研究室を装備するということで、科学研究がその場でできるような装備となっております。
 研究室を持っていることはもちろん特徴の一つでありまして、船の前部、デリック(やぐら)よりも前のほうにありますが、そこには4階建ての研究室がつくられておりまして、デリック(やぐら)の下で掘削した試料がすぐさま研究室に運ばれて、非破壊の検査、あるいは、微生物の採取等々を行った後に、それから物性調査・計測、それから、試料を化学的な分析をする機械等々が装備されております。基本的には、研究室の上から下に試料が流れるような形で設計されております。大型の船でありますので、特徴としては、右上に写真が出ていますけれども、X線CTスキャナーというようなものも装備しております。これは医療用に使っているものと全く同じものですけれども、こういった大型機器を使って、即座に総合的な試料の解析、そして、船が非常に安定であるということも生かして、高精度の分析、例えば、質量分析等々が真ん中に文字として書かれていますが、そういうものも装備して、船上で多目種で高精度な分析ができるようになっております。
 「ちきゅう」の運用実績について御紹介させていただきます。平成17年7月29日に「ちきゅう」は海洋機構に引き渡されました。その後、すぐさま試験航海、一般公開等々も行いながら、次の年度18年度には、7月半ばからですけれども、下北半島八戸沖というところで初めての国内の試験掘削を行いました。「ちきゅう」は、その後、海外資源掘削と言いますけれども、科学掘削以外の目的にも使い、1つは技術を磨くということで、海外の場で実際の石油・天然ガスの会社と契約をし、行ってまいりました。ケニア沖、オーストラリア沖で行いまして、そして、平成19年(2007年)の8月から、南海掘削、これはIODPとしての科学掘削になりますけれども、を初めて連続3航海、エクスペーションの番号が314、15、16と書いてありますけれども、を連続的に行いました。
 南海トラフの掘削自身は、その前、世界の研究者が集まって、巨大地震のメカニズムを理解するために最適な場所ということで、世界中の巨大地震の発生する場をレビューし、最終的に南海トラフ、紀伊半島の沖合いになりますけれども、が最適な場所であるということで、ここが選ばれて航海が組まれています。
 その後、中間検査ありましたけれども、残念ながら、ここで大きなトラブルに見舞われまして、アジマススラスタ、先ほど御紹介した4m直径のあるプロペラと申しましたけれども、それが動力の方向を変えるギアがあるわけですけれども、そのギアに損傷があるということが中間検査の段階で発見されましたので、新しくギアを作り直して交換するという、1年近くの時間がかかりましたけれども、行い、そして、2009年に再び南海掘削2航海を行いました。
 2010年には、南海掘削のほかに、沖縄の沖縄トラフでの掘削、331という番号がついていますけれども、行いました。と同時に、その年の年度の終わりには、JOGMECの国内での初めての資源掘削も行っております。平成23年度には、船底のへこみがあるということで工事を行いましたけれども、へこみと、その前の3.11の震災によって、スラスタが1基破損したということで、その修復工事を行いまして、そのまま海外の資源掘削、スリランカ沖に行き、そして、JOGMECの資源掘削を行っております。
 平成24年度には、JFAST、これは震災から約1年後になりますけれども、東北沖での掘削を行っております。これは国内の地震断層コミュニティが、地震が起こる前から、地震の直後に掘削をすることに非常に大きな科学的意義があるというレポートが作り上げられていて、それがたまたまというか、地震が起こったので、急いで準備をして、この東北沖の地震掘削を実現しています。
 その後、下北掘削、これもIODPの掘削ですけれども、これはこれまでの地震帯の掘削ではなくて、地下生命圏をターゲットとした掘削であります。それから、南海掘削C2というのが、これが巨大地震の発生帯そのものの断層域まで掘削するというプロジェクトですけれども、その一部を行っております。そして、平成25年度には、JXの基礎試錘、これも資源掘削でありますけれども、行い、そしてまたC2の掘削をその年度にも行っております。
 26年度に行きますと、資源掘削、日本原燃のお仕事をし、そして、初めてここでSIPというのが出てきますけれども、SIPで沖縄トラフでの黒鉱鉱床が形成されつつある場所での掘削を行っております。その後、海外に出まして、インドONGC社のメタンハイドレートを掘削、これは日印の科学技術協力の下に行われた資源掘削でもあります。27年度は、その仕事を終えて帰ってきて、そして、SIPの2回目の沖縄トラフでの掘削を行っております。
 28年度は、南海掘削、それから、JOGMEC、それから、室戸沖掘削というのがまた新しく科学掘削として行っておりますけれども、これは室戸半島の沖合いのT-Limitというのは、微生物の温度の限界はどこまであるのかというのをターゲットにした掘削であります。それをIODPとして行っております。それから、その次には、SIP沖縄の3回目を行っております。
 平成29年度は、JOGMEC、それから、船上分析という紫色のところ、ICDPコアと書いていますけれども、これも初めて出てくるものですけれども、オマーンで陸上掘削した試料を「ちきゅう」に運び入れて、「ちきゅう」のコア、先ほど御紹介した4階建てのラボラトリーで連続的に分析するということを行っております。その後、一般公開の後、SCOREというのが書いてあります。SCOREというのは、これは国内の若手研究者向けにトレーニングとして、「ちきゅう」がどこかに移動する途中に科学的ターゲット、特に海底下100m以内の、いわゆるピストンコアで採れる、ただし、通常の研究船では採れない深さ、100mまで採れませんので、そういうものをターゲットとしたときに、どういうサイエンスができるかということで、若手を中心に、英語でのプロポーザル、提案書を書かせ、審議、ピアレビューされ、そこはJ-DESCの皆さんにお願いし、そのレビューした結果をもって実施をしたものです。その後、南海掘削も行い、平成30年度には、資源掘削、それから、ICDPの船上分析、そして、長いC2、約半年にわたるC2の掘削を行っております。
 平成31年は、海洋機構としては、新たな中長期計画のスタートの年でありますけれども、船上分析も行いつつ、この年は保守整備と定期検査ということで、平成31年度の終わりから次の年度の7月まで、15年目の定期検査を行っています。その後、保守整備として、長い停泊の期間がありますけれども、21年(令和3年度)、昨年度は、SCORE、それから、新しいSIPの2期の掘削、それから、JMH、船上分析というようなことをやっております。
 今御紹介した運用実績で、トータル17年間の運航の中で、科学掘削が1,229日、資源掘削が1,180日、SIPが103日、船上分析が162日、一般公開が23回というような実績となっております。
 最近の傾向といたしましては、平成30年度南海トラフの掘削以降、政府予算及び外部資金双方の予算的制約の中で、大規模な科学掘削をできていないというのが現状であります。一方、令和3年度は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)や、船上ラボを利用したコア分析など、様々な形で「ちきゅう」を活用しているということが実際であります。
 また、令和3年度の補正予算において、南海トラフゆっくりすべり断層監視のための長期孔内計測装置の開発費、並びに、令和4年度の予算において、その設置のための掘削費用の一部が措置されておりまして、現在、当該掘削の実施に向けて準備を進めているところであります。
 一方、資源掘削に関しましては、現在油価はおおよそ100ドル/バレルと高値に戻りつつも、まだ主なマーケティン地域であるアジア地域の地政学的な影響、あるいは、商業目的の掘削船と比較して、「ちきゅう」の装備・性能が十分に要件を満たさない部分があるなどに加え、かつ、COVID-19の影響も重なり、海外資源掘削を現在は受託できていないのが現状であります。
 この状況も踏まえ、国内の資源掘削案件受注に向けて努力した結果、令和3年度は国内の資源掘削を受託し、令和4年度も引き続き受注に向けて取り組んでいる最中でございます。
 深海ドリリング計画に基づく「ちきゅう」の使命ということで、現在、この深海地球ドリリング計画というのを行っているわけです。海洋機構は、海洋科学最大の国際共同プロジェクトIODPにおける主導的立場を担っておりまして、海洋開発分科会より平成25年度に第2次中間評価を受け、この計画を現在も進行している最中であります。
 分かりやすく、大きく4つの科学的なテーマを掲げておりまして、左上から言いますと、変動する地球、右上が生命圏フロンティア、そして、右下が気候・海洋変動、左下が地球活動の関連性ということであります。様々な切り口で、トータルな地球システムを理解するという中で、国際的には科学計画、Initial Science Planというのが作られ、それにのっとり、国内でも深海地球ドリリング計画として再定義して進めている最中であります。
 その中での達成状況でありますけれども、変動する地球というテーマの中では、主に南海トラフや東北地方太平洋沖地震の掘削に代表される、地震メカニズムそのもの、あるいは、津波、そして、防災といったところが大きなくくりになりますけれども、前部で14航海、今までに発出されている論文、ほとんどが国際論文誌になりますけれども、431編ということになります。
 それから、南海トラフに関しては、初期から「ちきゅう」はそこの掘削を行っているわけですけれども、最後の358航海、平成31年度に行いましたところでは、世界最深部まで、海底下3,200mを超える、水深が2,000mぐらいですから、5,000mを超える掘削を終了しております。
 残念ながら、一番深いところの地震発生帯と考えていた深さまでの到達はできなかったということで、前回の海洋開発分科会においても報告をさせていただきまして、引き続き検討するようにというふうな助言を頂いております。
 生命圏フロンティアに関しては、3航海行っておりまして、論文が81編発出されております。生命圏に関しては、沖縄トラフ、それから、下北半島沖、それから、室戸沖と3つの場所、それぞれターゲットが違いまして、沖縄トラフは生命が発生している、あるいは、発生していた状況と同じような環境、つまり、熱水噴出孔付近での掘削ということを行っております。下北半島八戸沖におきましては、非常に深いいいところ、かつて石炭層、あるいは、褐炭層と言われるような地層があるところに生命がどのぐらいまでいるのか、あるいは、その生命が何をして海底下で生きているのかということが理解が進みました。室戸半島沖では、先ほどちょっと御紹介しましたけれども、T-Limitということで、温度の限界がどこまであるのかということを明らかにしてまいりました。
 そして、気候・海洋変動に関しましては、これは過去の環境を復元するということで、堆積物に刻まれた、あるいは、プランクトンに刻まれた昔の古気候を理解する部分ですので、全部の航海で試料さえ手に入ればできるということで、特に何航海とか論文数としては表現しておりませんけれども、これまでやった航海の中でも、気候・海洋変動に関する研究が進められています。
 それに加えて、地中海であるとか、豪州、オーストラリアの東方沖、ロードハウライズという場所での提案もする。実施を待たれるというところまで今持っていかれています。また、鬼界カルデラ、これはSCOREというプログラムでも試料を採ることに成功しておりますけれども、巨大な火山噴火による気候・海洋変動及び防災といった観点からの研究も進められております。
 左下に地球活動の関連性ということで、ここは上部マントルに到達するような3か所の掘削候補地点として、新しいモホール計画(M2M)という提案がIODPに提案されております。令和2年には、ハワイ沖の海洋地殻掘削をM2Mパイロット掘削孔として位置づけることが国際科学コミュニティで合意されております。詳細の計画に関しては、現在はIODPで評価が進められているという現状であります。
 「ちきゅう」による主な科学成果でございますけれども、左上は地震研究、これは東北地方太平洋沖地震の後に掘削したものであります。プレート境界の一番海溝側のところで掘削をし、プレート境界断層を掘削、試料を採取することに成功しております。その結果、大津波が発生した原因として、いわゆるthermal pressurizationという、やや学術的な言葉になりますけれども、メカニズムが働いて、地震時にこの部分が水平方向に50m、垂直方向に7~10mぐらい隆起したというメカニズムを世界で初めて明らかにすることができました。
 南海トラフにおきましては、複数の掘削は行ってまいりましたけれども、最深部は3,262.5m、1,939mの水深のところで行っております。1944年の東南海地震断層というものを同定する試料を得まして、恐らくそのときの津波を起こした断層であるということが判明しています。それから、長期孔内観測装置は3か所に設置しておりまして、それがそれぞれDONETに接続されて、リアルタイムの地殻変動観測が現在も行われています。その観測の結果、ゆっくりすべり、スロースリップの地震の観測に成功しています。
 左下、海底下生命圏掘削に関しては、下北八戸沖ですけれども、海底下2,500m弱のところで試料を採取し、その試料を培養した結果、メタン生成菌が現在も培養できる、生きているということが分かりました。温度にすると60℃程度といったところで、そういった環境でも生命が生きており、かつ、メタンを生成し、その上にメタンハイドレートがあるわけですけれども、その根源的な生物が同定できたということが成果として上がっております。
 右下、沖縄トラフにおきましては、300℃になるような高温の場所で試料を採取し、人工的に噴き出す熱水を硬化させて、鉱物を生成するというようなことも実施いたしまして、成功いたしました。
 「ちきゅう」による主な科学成果の一つとして、先ほどの地震断層掘削、南海トラフ及び東北沖ですけれども、その中で1つフィーチャーしたいのは、ゆっくりすべり運動がリアルタイムに観測できたということが挙げられます。これ、右下の図は、小原先生のところの図を頂いて使わせていただいておりますけれども、これが海側のゆっくりすべりが起こっている場所というのはなかなか同定できなかったわけですけれども、それができるようになり、それと、やや陸の下側、固着領域を挟んだ浅いほうと深いほうの両方でゆっくりすべりの観測がリアルタイムでできるようになっていて、それが将来の巨大地震にどういう影響を及ぼすのかというような、新たな局面を迎えるに至っております。
 社会的成果としては、SIPを1つ挙げさせていただきたいと思います。戦略的イノベーション創造プログラムということで、沖縄、あるいは、現在は南鳥島沖で掘削を行っております。沖縄のほうは、高温の熱水を噴き出すところで人工的に鉱物を作るということの実験に成功していたり、あるいは、南鳥島では、ライザー管、これは「ちきゅう」が初期から持っている21インチ径のライザーパイプではなくて、それよりも細いパイプを使って、3,000m、計画では6,000mまで伸ばして、海底下から泥を揚泥するということを、ライザーの2重管システムを使ってやるということが今求められています。レアアース自身は、現在、経済安全保障の立場からも注目されている鉱物でありまして、将来の産業化・商業化に向けて、今、技術開発が進んでいるところでございます。
 メタンハイドレートに関しては、これは経済産業省及びJOGMEC、それから、日本メタンハイドレート株式会社といったところと連携いたしまして、作業を行っております。第1回の平成25年ですけれども、メタンハイドレート海洋産出試験に成功しております。「ちきゅう」を使っているわけですけれども、これは世界で初めて海洋でのメタンハイドレートの産出試験ということで、右下の写真には、「ちきゅう」の船尾から炎が出ているのが分かると思いますけれども、産出したガスを燃焼して実験しているということであります。これは世界で初めて達成した技術、業績であります。
 技術的成果といたしましては、これまで様々な技術の開発を行ってまいりましたけれども、下に1、2、3と書いてある強海流下における運用とか、大水深・大深度での掘削、超高温環境での掘削ということに特化してやってまいりました。
 様々な技術開発がありますけれども、まず強海流下における運用ですけれども、南海掘削は、南海トラフ、黒潮の流れ、4ノットから最大5ノットを超えるぐらいまでの流れがあるところですけれども、そこではライザーパイプ、あるいは、ドリルパイプを下げると、ここに書いてあるVIV、渦励振、パイプ自身が震えて疲労破壊を起こすということが知られています。そのために、それを抑えるために、ライザーに関しては、フェアリングという、いわゆる整流化させる羽根を設計し、装着、そして、VIVを起こさないでライザーパイプを降下できるということを実証いたしました。ドリルパイプに関しては、ロープを巻くという非常に簡易で、かつ有効な方法を編み出しまして、それによってVIVを抑えるようにしています。
 大水深・大深度での掘削に関しては、吊り下げる機械、非常に重量物になりますので、そのパイプの疲労やそれを支える道具類を新しく設計・製造いたしております。それから、港湾掘削対応としては、新しいビットの開発、最終的には、メーカーのものを今使っていますけれども、ということも試みました。それから、右下の写真、ちょっと小さくて分かりづらいですけれども、高速度回転をさせるタービン、掘削のビットの付近で回転をさせるものなんですけれども、こういうものも開発をして、将来的に大水深・大深度での掘削、1つのターゲットとしては、マントル掘削というのももちろんありますけれども、それに向けての準備を予算の許す範囲で今現在行っていると。マントル掘削の技術に関しては、次回以降に、マントル掘削に関する技術検証委員会というものを、外部の先生方にお願いして行っていますので、その成果を御紹介できると思います。
 高温環境下での掘削ですけれども、沖縄トラフでやった例ですが、300℃の環境下でやるわけですけれども、泥水で冷却をずっとし続けないと全ての機械が壊れてしまうということで、細かい説明になるので省きますけれども、連続冷却システムを導入し、そして、実際300℃環境下で掘削、それから、計測を行っていると。同時に、そこに海底下にウェルヘッドを設置して、人工的な鉱物の生成という実験も成功させております。
 それから、やや技術ではなくて、今度は人を含めたオペレーションマネジメント体制といたしましては、新たな試みですけれども、いわゆる石油業界で培われたような、カンパニー側の、いわゆるJAMSTECがその役を担い、そして、運用体制はコントラクター側のマントル・クエスト・ジャパンという会社に今操業をお願いしていますけれども、JAMSTEC側で企画や設計を行い、それに基づいた運航管理、掘削管理を実施するという体制をつくり上げました。
 オペレーション、一例ですけれども、実際に掘削を開始するまでには、4年ぐらいの時間をかけて準備をしていくという標準工程を作りまして、これをJAMSTEC、研究提案者、そして、オペレーター側のマントル・クエスト・ジャパンという人たちが集まって、プロジェクトコーディネーションチームというのを作り上げて、科学目的を達成するために実現可能な掘削として、予算との調整も含めた総合的なチーム体制でこの掘削を行うというようなマネジメント体制も構築してまいりました。
 技術者の育成といたしましては、平成19年度以降、掘削部門は50%を超えるぐらい、操船部門は100%ぐらいまでが上級職の船員になるように配慮してまいりました。特に掘削の監督をするOIM(Offshore Installation Manager)というのは、現在100%日本人化しております。それから、操船部分も、船長、一等航海士、航海士は100%日本人化ということで、日本にこの「ちきゅう」という船を使って技術を残していく、あるいは、伝承していくということにも配慮しながら運用してまいりました。
 アウトリーチでありますけれども、様々なアウトリーチをやってまいりまして、直近6年間だけの実績でありますけれども、一般公開8件、4万5,000人以上の方々に一般公開に実際に来て、乗船していただいています。それから、様々なイベント類、制作物、メディアは、どれぐらいリーチングしているか分かりませんけれども、メディアにはテレビ、ラジオ、ウェブ、雑誌、本とか、新聞ももちろんありますけれども、そういったところに積極的に広報しております。それから、SNSのアカウントも設けて、適宜情報発信をしておりまして、現在2万8,000人弱というフォロワーがいらっしゃいます。
 予算に関してですけれども、「ちきゅう」の建造、運航にかかる予算として、政府予算に計上された額は以下のとおりでございます。平成11年(1999年)、建造前の設計のあたりから始まりますけれども、令和4年度の24か年の総額といたしまして、2,748億円は措置されております。その間、平成19年~25年は、IODPからの分担金、Science Operation Cost、SOCと言っていますけれども、66億円が措置されていまして、これはIODP国際メンバーからのお金を頂いています。それから、東北地方太平洋沖地震のときには、復興特別会計として、10億円を別途頂いているということです。
 内訳といたしまして、建造費が600億弱、594億、「ちきゅう」運航費が1,884億、それから、高知コアの運営費が39億、「ちきゅう」の性能向上・修繕費として231億という予算が措置されております。
 外部資金も獲得いたしておりまして、様々な資源掘削を海外・国内やってまいりましたことは御紹介いたしましたけれども、それを合算しますと、総収入といたしましては267億円、それに費やした日数が1,180日というふうになります。そのほか、IODPのメンバーとして、ヨーロッパのコンソーシアム及びオーストラリア・ニュージーランドのコンソーシアムから拠出金といたしまして、4.8億円頂いております。そのほか、SIPとして、第1期、第2期、252億、119億の内数として頂いております。
 「ちきゅう」以外の掘削ということで、「かいめい」にもある程度の装備がございまして、1つは、ジャイアントピストンコアラーというものと、それから、海底設置型掘削装置(BMS)というものを装備しております。「かいめい」自身は、主要目にありますように、100mの長さの船で、5mm案7,000トンということでありますけれども、この後部デッキのところにその大きな2つの装置がありまして、BMSは水深3,000mのところから30m程度、ジャイアントピストンコアラーは水深8,000mのところから、ピストンコアラー自身が40mのバレル長がありますので、試料を採ることができます。
 「かいめい」は、様々な研究航海をやっておりますけれども、IODPとしても運用した経験がございまして、IODP368航海、日本海溝の地震履歴の調査ということで、いわゆる日本海溝にたまっている地震発生に伴う堆積物、タービライトと呼ばれているようなものですけれども、を採取し、どのぐらいの時間間隔で巨大地震が起こっているかというような調査を50日間にわたって行いました。その試料は「ちきゅう」に運び込まれまして、「ちきゅう」のラボを使ってコアの記載、サンプリング、分析も行っている。これはヨーロッパのコンソーシアムとの共同で、受託航海というような形になっております。機構、それから、SIP等々でも利用しているという実績がございます。
 最後になりますけれども、高知コアセンター、現在IODPのコアとして、西太平洋からインド洋、オセアニアといったところを、世界で3分割して、そのうちの西太平洋・インド洋・オセアニアの部分の試料を、歴代のDSDP/ODPの時代から保管して、保管するだけではなくて、その試料の世界中からのリクエストに対して、吟味してその試料を配付するというサービスも行っています。現在、146km分の長さに及ぶ試料を保管しておりまして、年間150件程度のサンプルリクエストがあります。また、J-DESCと共同で、コア試料の活用ということで、それを用いた新たな研究、バーチャルな航海だとか、あるいは、独自の新たな研究を行うということを行っております。
 サンプルリクエストは、今ありましたとおりで、実際に高知コアセンターに来訪される方もいらっしゃいまして、COVID-19の影響で、2020年以降はありませんけれども、日本だけではなく、国際の研究の場としても公開されています。IODPに関連して、年間30~40人程度の来訪者をこれまで受け入れてきたということもあるので、アジアにおけるコア研究の拠点としても活動しているというふうに考えております。
 ちょっと長くなりましたけれども、我が国における海洋科学掘削の現状ということで御紹介させていただきました。ありがとうございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 最後に30分ぐらい全体討議を用意していますが、それまで数分ありますので、倉本理事の御説明に対して、御質問、コメントありましたら、お願いします。
 ゆっくりすべりなどの発見者である小原先生、どうですかね。
【小原委員】  そうですね。その件について、ちょっと質問させていただこうと思ったんですけれども。57ページ、「ちきゅう」の運用の実績のところで、最近の動向として、今後の補正予算等を用いた長期孔内観測装置の開発・設置というところがあったんですけれども。これ、大変すばらしい計画だなと思っておりまして、これまで紀伊半島南東沖では、ほかのスロー地震に伴ってゆっくりすべりも発生するということが明らかになったわけですけれども、これはほかの海域において、そのような計測を行うということだと思います。
 その際に、予算の関係も当然あろうかと思うんですけれども、それぞれの海域において1か所の孔内観測だけではなくて、やっぱり複数箇所で計測をすることによって、その現象の把握精度を向上させるということが非常に重要かなと思っておりますけれども、そのあたり、どのような計画になっているかということを教えていただければありがたいんですが。
【倉本理事】  御質問ありがとうございます。
 観測に関しては、初期は紀伊半島沖のDONET1と言われているところでのみやってまいりましたけれども、現在の計画は、そこから西に展開したDONET2及びN-netという海底ケーブルを敷設する計画がございますけれども、そこにも付けていくということで、最初DONET1だけでやっていた時期には、過去の44年、46年の地震の発生地点に近いところという結果に基づいて計画しておりましたけれども、現在は、九州沖合い、そして、東海のほうも含めて、どこから発生するのか分からない、あるいは、どこでも発生する可能性がある。それから、海側、海溝近くでのゆっくり地震がどのように現在起こっているのかも分からないということで、なるべく広範囲に観測をしたいという希望がございますけれども、現在要求しているのは、2孔プラス1ぐらい、3孔ぐらい、予算の制約もあります。予算の制約をなくせば、さらに西あるいは東へも展開ということが必要だというふうには認識しております。
 以上です。
【小原委員】  ありがとうございます。
 それぞれの海域で、少なくとも、もちろん1か所、非常に高精度な長期孔内観測ができると思いますけれども、それと同時に、もうちょっと簡易型でも構いませんので、それぞれの海域において、より稠密な観測を行うような形で検討していただければ非常にありがたいと思います。
 私からは以上です。
【川幡主査】  また専門的に議論する場がありますので、そのときに深くまた広く御指摘いただければと、そのように思います。どうもありがとうございました。
 この説明の中で、技術的な側面も非常に詳しく説明されましたので、もし可能なら、石井先生、何かコメントか質問ありましたら、お願いします。
【石井委員】  最初に阪口先生からの「ちきゅう」はマントル掘削ができないというようなご発言があったと思いますが、「ちきゅう」の建造時のスペックは資料通し番号で54ページにあるように、水深が2,500mで、海底面下7,000mです。この能力だとマントルには到達できないのは事実かと思います。当初はまずこのスペックより始めて、産業界の技術の発展を見ながらアップグレードしていくという方針であったかと私は理解しています。石油・天然ガス開発の産業界においても水深3,000m程度が最大だったはずですので、まだ世界中を見ても、水深4,000mの掘削実績はなかったのが当時の現状だったと理解しております。
 一点質問というか、もう少し詳しく説明して頂きたいのですが、資料通し番号の65ページの定点保持のVIVのところですが、このロープによるVIVの振動減というのは、絵が小さくて分かりづらかったのですが、もう少し詳しく説明していただけますか。
【倉本理事】  ありがとうございます。
 ロープによるVIVの抑制というのは、ドリルパイプなんですけれども、本当に親指の太さぐらいのナイロンロープを縦にドリルパイプにくくりつけていくというだけなんです。それによってVIVが抑えられるということが分かりました。
 それは、まず水槽実験を何度も行ってきたわけですけれども、それでまず実証して、そして、海域でのテストでも実証できたということで、この方式を、ライザーレスの掘削の海底より上の部分に取りつけて、特に黒潮ですと、数百m程度上の部分しか流れていないので、をくくりつけることによってVIVが抑えられるということです。非常に簡単な方法です。
【石井委員】  ありがとうございます。よく分かりました。
 ライザーパイプのフェアリングと同じような考えをすごく簡単にできたというふうに考えればよろしいでしょうか。
【倉本理事】  そうですね。整流化するために、ライザーは太いのでフェアリングというのを作りましたが、ドリルパイプは細いし、かつ、何かそういう装置をくっつけるとなると時間もかかるということなので、非常に安価で簡易的にできる手法を編み出したというか、発見したというか、という方法でしっかりVIVを抑えられるようになりました。
【石井委員】  あと、もう一つ教えてください。高潮流下環境において、ライザーパイプ、ドリルパイプのVIVを抑えたことは分かりました。実際に定点保持するのは、先ほど説明がありましたアジマススラスタで船体の定点を維持しているわけですが、このオペレーションの前に、スラスタ自体の補強や能力改造をされたのでしょうか。
【倉本理事】  スラスタ自身は変えておりません。ただし、能力自身は、定常流として黒潮が流れてきていれば十分できるんですけれども、風の方向が急に変わったりとかするという、前線通過時というときに、一度定点保持ができなかったことがありまして、その反省点として、風上側というか、流れの上側にサプライボートとかウォッチングボートみたいなのを付けて、今流れと風がどのようになっているのかというのを上流側で確認して、連絡を取りながら、そして、早め早めに船のほうの操船をするというようなことをやりまして、それがうまくできるようになってきたということです。
【石井委員】  どうもありがとうございます。よく分かりました。ありがとうございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 先ほどありますかと言ったときに、手を挙げたけど、Zoomの先生を優先したので、発言の機会を奪ってしまって申し訳ございません。窪川先生、お願いします。
【窪川委員】  ありがとうございます。すみません、では、お先に。益田さんのときに手を挙げていたんですけど。こちらでも質問させていただきます。
 私は多分ざっくりした質問になってしまうんですけれども。2つあるんですが、多分同じことになるかもしれないんですが。一つ一つの航海の成果に関し、トピック的に今まで存じ上げていまして、17年間のまとめをここで一目で見ることができて、大変よく分かりましたが。
 例えば、56、57ページの科学掘削と資源掘削に分けていらっしゃるんですけれども、もともと深海地球ドリリング計画等々の「ちきゅう」の使命が科学掘削ということなので、恐らくそれとオーバーラップする「ちきゅう」の使用をすることによって、結果的には資源掘削になっていると、そういう理解と思ったんですけれども。
 というのは、資源掘削となりますと、またその次の成果のところでも、例えば、沖縄トラフ、熱水噴出孔の掘削で新たなレアメタル、いろんなところでやっていらっしゃいますけれども、そうすると、その後の産業利用というようなところまで結びついているのか、JAMSTECがそれをどのように手渡して、研究としての科学的な成果はあるんですけれども、そういったところまでケアを見ているのかというところが気になりまして。
 それと同時に、船上分析も、科学者としては貴重な場と考えられるところで、例えばX線STスキャナーは、恐らくこれ使いたいという人はたくさんいらっしゃると思うんですけれども、もともとそういう船上ラボとしての役割を考えられたかどうか。その要望といいますか、今「かいめい」等の利用とありましたが、「かいめい」はその後できた船で、そういう「かいめい」との連携も含めて、今後船上分析というのも進めるということをお考えなのかと、そのことをお願いします。
【倉本理事】  まず1点目の資源掘削とその先の産業化というところですけれども。一件一件の資源掘削に関しては、産業化というところまではなくて、単発の掘削作業となっています。
 ただ、違うのが、SIPとして冠についているやつは、SIP自身がその出口としての産業化・商業化といったところを目指しているので、その中の一部として貢献しているというふうに考えています。実際、具体的に何か産業を起こしたというところまではまだ至ってはないと思いますけれども、その手前にいるのかなと思っております。
 それから、もう一つ、船上分析に関しては、もちろん「ちきゅう」で掘削した試料を科学的にシームレスに、かつ、時間が経っては変質してしまうような試料も、あるいは分析項目もありますので、それを速やかにできるようにということと、掘削自体は長期にわたるので、研究者にストレスがない程度の装備をそのまま備えていくというようなことで設計いたしました。
 ただ、「ちきゅう」が365日洋上で掘削をしているわけではないという現実はあって、港にいるときにも、ラボはクオリティを維持するために、常に整備をしています。その整備されたラボは、一台一台だけではなくて、トータルのシステムとして海洋のコアを分析できるように設計されていますので、ほかの船で採った試料であるとか、あるいは、陸上の試料であっても、分析できる機会を提供したい。
 かつ、船ですので、泊まれるんですね。なので、寝て起きて歩いて1分で研究室に行って御飯を食べる、食堂も食事も用意されていますので。という、ある意味、虎の穴とかよく称しているんですけど、昭和世代しか分からないかもしれませんけれども、そういう根を詰めた研究をできる。
 そして、国際的にやっている場合が多いので、研究者間でのコミュニケーション、議論しながら分析・計測作業を進めていくという場にもなっているということで、それを提供しています。それを国内だけではなくて、ICDPのような国際、もちろんIODPもですけれども、国際のコミュニティにも提供している、利活用しているというふうに今変更しています。
【窪川委員】  ありがとうございました。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 では、阪口先生、お願いします。
【阪口委員】  はい。このままネグられるのかなと、ちょっとびっくりしました。
 17年間で論文510本ぐらい出ていると、さっき40何ページかにあったと思うんですけれども。あんまり論文の数を言うのはナンセンスだというのは私もよく分かっているんですが、いわゆる大ヒット論文、これが一番大事で、お金がかかろうが何しようが、本当に大ヒットの科学論文が書ける成果が出るということが一番大事だと私は思っているんですけれども。この510本は、これ、Top10とかではなくて、きっと延べですよね。
【倉本理事】  はい。
【阪口委員】  例えば、Top3とか、そういう論文は、このうち何本ぐらい出たのかというのをちょっと教えていただきたいなというのが私の質問です。それがやっぱり一番大事なことだと私は思いますので。
【倉本理事】  まず1つは、地震研究でScienceの論文、それから、Nature、それと、Geologyも含めてなんですけれども。実は、南海トラフの研究から、3.11の東北地震にかけての2010年から11年、12年、論文が出ている時間。そのあたりに集中して、いわゆる地震研究としては大きく進みました。それは、南海でゆっくり地震みたいなものが、あるいは、これまで予想されていなかった部分も地震発生になったすべりを起こしているというのが、過去の資料に記録されているということが分かって、それが受理した瞬間に東北沖の地震が起こり、そして、そこで残留熱を測ることに成功した結果、摩擦係数がどのくらいであったかという、地震時の動的状態が理解されるという、Science、Natureを含めた論文が、そこでトータルで5~6だと思いますけれども、出たのがまず1つのトップ。
 それから、生命科学に関しては、T-Limit、これはScienceだと思う。それから、下北半島の沖合いでも、地下2,500mのところに生きている微生物がいて、そして、メタンをつくっているという大発見、アーキアですけれども、大発見があったと。それもトップに入る研究成果だと思います。
 大きくはその辺かなというふうに思っていますけど。
【阪口委員】  そうすると、10本ぐらいですね。今のお答えだと。
 CSTIのデータだと、いわゆるTop10、それから、Top3とかの論文1本当たりの予算というのは大体データでも公表されているんですけれども、Top10で言うと、大体1,300万~1,400万ぐらいで1本出ているんですよね。
 今のでいくと、2,700億を6で割った数字だと、とんでもない数字になっているんですけれども、それは納税者に対して十分説明ができる数字だとお考えなんでしょうか。
【倉本理事】  私自身としては、科学の成果、技術開発、それから、アウトリーチ、それから、次世代の育成という様々な視点でこのプロジェクトを捉える必要があると思っています。前回の中間評価のときにも、こういった議論がございまして、なかなかそれを数字で評価するというのは難しいというふうな判断がされておりますけれども。
 大きなプロジェクトでもありますので、科学プロジェクトであるので、科学成果自身が評価されるということはもちろん当然でありますけれども、それに附随したことも非常に大きな貢献をしているというふうに理解しています。それを全体の予算でどういうふうに割るかというのは、ちょっと私には考えがつかないので、数字になかなか表しにくいかなとは思っております。
【阪口委員】  あと、もう一つだけ質問あるんですけれども。最後の3年、ほとんど動いていないじゃないですか。その次の計画というのをちらっとお話がありましたけれども、この3年、全然動かなかった理由の一つは、定期検査があったという、これは仕方がないことだと思うんですけれども。それにしても、3年間定期検査をやっていたわけではないので、これは何が敗因だったんでしょうか。きちんと分析して、説明していただけないでしょうか。
【倉本理事】  1つは定期検査にお金も使って、予算的な制約もあるというのが1つ。
 それから、COVID-19が蔓延しておりまして、他のアメリカ・ヨーロッパの船もそうなんですけれども、航海を実施するというのが非常に難しい時期であったというのが重なっております。
【阪口委員】  ありがとうございます。
【川幡主査】  またこの件に関しては、後日というか、4回ありますので、コストパフォーマンスも含めて議論していけたらと思います。
 今日は傍聴されている方もおられますので、今の数字に関して誤解があるといけないから、私のほうから第三者として述べておきたいと思います。
 1本当たりの論文に関しましては、JAMSTECさんのほうで計算がありまして、船のCostも含めると、1本当たり5,000万円というのが出ています。それなので、この大きい、例えば、「ちきゅう」とか、すごくお金がかかる。例えば、宇宙船、宇宙に行くともっとお金がかかりますので、その1本当たりとかいうのと、普通の実験室だけで行える論文のコストとはまた違った面がありますよというのを一応指摘しておきたいと思います。
 本件に関しましては、阪口先生の今の質問も大事なので、後日また議論したいと思いますが、聴衆の人が数字を間違えてどこかに記録したりすると困るので、この場を借りて正式な数字を挙げておきたいと思います。
 では、あと25分ぐらい、13分になっちゃいましたが、議論したいと思いますが、2つのことを言います。1つは、資料2-3に、上部の委員会の委員の先生からコメントいただいています。それで、コメントいただいた部分に関しては、なるべく答えていったほうがいいかなと、そのように思います。
 それから、もう一つ、資料4というのがありまして、今後の委員会の検討の進め方ということで、先ほど文科省のほうから整理した項目などを頂きましたが、この2つに関して意見ありましたら、自由に言っていただければと思います。手を挙げて、それで言っていただけますかね。もっとこれを入れたほうがいい……。
 巽先生、お願いします。
【巽委員】  先ほどからの御説明、どうもありがとうございました。それで、その中で少し感じたことで、この委員会というのは、そもそも今後掘削をどういうふうにしてやっていくべきかということの方策を、これまでの成果並びに反省に基づいてやるということだというふうに私は理解しています。
 そういう意味の中で、先ほどアドミニストレーションとインプリメンテーションとサイエンスに関してお話を伺ったんですが、この点は改善すべきであるということが私にはあまり聞こえないような気がしました。
 私、これまで携わってきた中で、私個人的には非常に多くの反省点があるというふうな認識があるんですけど、そのあたりを十分に反映するということが、この資料2-3の委員の先生方からもあったように思います。ですから、ぜひ、こういうふうなことを述べていただきたい。
 例えば、もし今可能でしたら、サイエンスとして、J-DESCの活動の中でどこが今後反省すべき、もしくは、今後改善して、さらにこの掘削という科学を進めていくかということがあればいいなと思うんですが、いかがでしょう。
【川幡主査】  益田先生、ありますでしょうか。
【益田J-DESC・IODP部会長】  一番重要なことは、やはり日本の研究者が計画立案できることかなというふうには思っております。それで、やはり魅力のある計画を国内から発信できるような方策といいますか、そういうものを積極的に作っていく。
 これは定期的に今もワークショップを開くとか、話し合いをするようなことを重ねてやっていっているんですけど、そういう中で、国内からの掘削提案を数多く出していけるような仕組みと、それから、みんなの力をつけるというんですか、底上げというのが重要なのかなというふうには思っております。
【川幡主査】  ほかにありますでしょうか。質問など。
 ちょっと補足すると、私は、先ほど阪口先生言われたように、巨額のお金を使うということに関したら、第一番の優先順位は、もちろん科学も大事でありますが、納税者に対してと言うんだったら、防災・減災、僕はそう思います。
 よく3.11のときに科学者が想定外とか言いましたけど、想定外などというのを科学者が大手を振って言うというのは、僕はよくないと思っていまして、きちっとサイエンティストは専門の知識を駆使して、予想できる範囲を知的な範囲で予想して、どのようにそれならば対処していくかというのをきちっと考えるのがサイエンティストだと思っていますので、想定外をなくすというのは僕はキーワードだと、そのように思います。
 いずれにしても、科学的知見をもとにして人命を救うというのは、僕はすごく重要ではないかと思っています。でも、これは個人的見解ですから、あとまたみんなで議論したいと思います。
 ほかにありますでしょうか。改まって聞かれても困るかもしれないので。私の委員会は、みんなに発言してもらって、一応今日はみんなに発言していただきましたが、さらに。
 野田先生、お願いします。日本人って指されると結構いい発言されるので、野田先生、お願いします。
【野田委員】  指されちゃいましたけれども。全体の枠組みの話を今話すんですかね。あんまり頭は回っていないんですけど。
【川幡主査】  何でもいいですよ。自由討議ですから。
【野田委員】  そうですか。それなら、先ほどからPost-2024という言葉がちょっと出ていまして、自分、ちょっと掘削の業界に疎いので、どの程度の大きな変化がそこであるのかよく分からないんですが。
 それで気になったのは、最後の説明いただいていたときに、プロポーザルのアクセプトから掘るまで4年かかるという話が出てきていまして、その2024年ってもう4年ないので、そこを2024年で何かが変わるとして、今その4年のプロセスというのは、どういうふうに、どういうことを想定してやっておられるのかなと。ちょっとそこをお聞きしたいなと思ったんですけれども、よろしいでしょうか。
【川幡主査】  倉本理事、お願いします。
【倉本理事】  御質問ありがとうございます。
 4年というのは1つの指標でありまして、ライザー掘削をする場合に、場所の選定、そして絞り込み、そして、それに伴う掘削計画の立案、それから、資材の購入等々というもので時間がかかるので、おおよそ4年ぐらいかけて準備をしますという例で御紹介いたしました。
 実際に、じゃ、次の科学掘削計画として4年かけてやっていくものはあるのかというと、現在あるプロポーザルは、まだ準備段階の途中のものもありますので、その状況を見ながら準備を始めていく。予算等にらみながらですけれども、していくと。
 2024年まで時間があまりないですけれども、現在2025年の我々のJAMSTECの中長期計画のエンドまでは、どのぐらいの予算が投入できるかというのは、今おおよそ見積もっておりまして、それでできる範囲の掘削計画というものには今着手しようとしているところです。
 ということで、24年まで、あるいは、25年までの計画は、今準備段階にあると。そして、次の中長期計画に入る26年以降ですけれども、そこはまだちょっと手が着けられていません。ただ、現在あるプロポーザル、あるいは、現在制作中のプロポーザル、途中段階のものもありますので、それの動向を見ながら、これから計画に組み入れるか入れていかないかという選択をしていくことになります。
【川幡主査】  いいですか。
【野田委員】  ありがとうございました。
【川幡主査】  ほかに。阪口先生、何かありますか。
【阪口委員】  いや、もうこれ以上嫌われるとあれなんですけど。
 いや、僕も実は今、野田さんと同じことを考えていて、さっき過去2年COVIDで動かなかったとしゃらっと言っていましたけど、それはうそで、予算がないからどないもならんかったというのが、COVIDがなくても実は動かなかったわけですよ。
 だとすると、今後のその計画というのが、フィージビリティも含めて、それから、予算的バックグラウンドと、それから、何よりもかによりも、きちんとした目的というものが一体どこにあるのかということを知りたくて、さっきの途中の話で、ロードハウライズはこれからやれるとか、それから、マントル掘削の地底を選定しているとかという話がありましたけれども、ロードハウライズの話は、もうオーストラリア側から立ち消えにされているわけで、そんなことを今追求するよりは、さっき巽先生がおっしゃったように、きちんとしたアドミニストレーションの下で、きちんとした計画を立てるということが大事で、これまでそれがなく、夢と現実の境目ぐらいをずっと追い求めて、そのゴールはどんどん後ろに下がっていくから、もうすぐシュートやと思ったら、ゴールが実はまだ遠かったと。ゴールが遠いから入らないんですよと言っているだけだったんですよね。
 なので、そこのところはやっぱりきちんと、もっと示して、今後3年とか、それぐらいまでのきちんとした計画を立てて、ゴールを動かさないで定めて、それにどう準備していくかということを示してくれないと、応援のしようがないと思うので、その辺、もうちょっときちんと説明してほしいなと、私も野田先生と同じことをさっき考えていました。
【川幡主査】  どうもありがとうございます。
 話は元に戻りますけど、ターゲットとするタイムレンジというんですか、それは数年から10年というか、3年でもいいんだけど、数年あたりを目途に云々ですという議論の方向で議論を進めるということに関して、どうでしょうね。2040年とか、2050年とか、長いのは、今言ったゴールポストの話が動いちゃうよというんだったら困るので、みんなのコンセンサスとして、数年、マキシマムで10年ぐらい、本当にできることは、どんなことが今技術的にも可能ですかというのをきちっと詰めましょうとかいうのが、今の阪口先生のお話、また、巽先生の最初のコメントでもあろうかなと思うんですけど、どうですかね。
 そうすると、結構議論がきちっとかみ合ってくるかなと思うんですけど。よろしいですか。
 じゃ、基本的に、今日の会議、1回目の会議で一番重要な合意事項としたら、ターゲットを数年から10年で、いろいろなことを議論しましょうということを結論としたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 じゃ、それを結論として議事録に書かせていただこうと思います。
 それで、先ほど申し上げましたが、上部の委員会からのコメント、そういうのにもなるべく応えるという。
 窪川先生どうぞ。
【窪川委員】  ちょっと変なことを申し上げて申し訳ないんですけど。結局、今の資料2-3のところには、マントル掘削という言葉がありまして、今回のJAMSTECの御説明の中に、マントル掘削がどこに出てくるかと思ったんですけど、業績としてお話がありまして。今後の予定のところで、技術的なところが6月になっているんですけれども、これは無理かもしれないんですけど、「ちきゅう」が持っている技術に対して、実施できる内容に関して知識を持っていたほうが、今日のお話を全部聞いて、この第2回の地球惑星科学に関しての説明も理解が進むのかなというような気がちょっとしました。別に実現しなくてもいい。すみません、勝手な意見で。
 というのは、益田先生の最後のところに、要望書も、防災関係が中心になっていらっしゃいますので、技術的な、私なんかは理解できるかはともかくとして、大変大事なのではないかなと。
 このままの2回、3回で進めるのだったら、2回のところに技術的なところも若干入れていただけるといいのではないかなと思いました。
【川幡主査】  もちろん、掘削は、これ、科学掘削ですけど、科学は技術と共に歩むというのがこれまでの人類の歴史でありますので、技術に対してはもちろん考慮していこうと思いますが、タイムレンジは数年。
【窪川委員】  このレンジで。
【川幡主査】  では、最後の言葉を述べておしまいにしようと思います。
 先ほどもお願いしましたが、本委員会で扱う情報は、今まさに議論中である国際動向や本分野に関わる企業活動が含まれるものと思っています。自由闊達かつ核心的な議論を行うため、次回以降、国際動向に関して公開した場合に相手国との関係などに支障を来すおそれのある情報や、民間企業の技術的競争力の観点などから公開された場合に支障を来すおそれのある情報については、運営規則第3条第三項に基づき非公開としたいと考えます。特に、次回は国際動向を扱うため、当該部分に関しては非公開として委員会を開催するということを考えていますが、いかがでしょうか。
 もちろん公開を原則としますが、常識的な範囲内で、秘密の部分については御理解いただきたいということです。よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございます。
 では、次回、国際動向に関する部分は非公開として扱うことにします。また、今後も適宜委員の皆様に確認の上、非公開とする場合には、委員の皆様に確認しますので、その節はよろしくお願いいたします。
 これをもちまして、本日の海洋科学掘削委員会を終了します。本日はどうもありがとうございました。
 この後、事務局から連絡がありますので、お待ちください。
 以上です。
【事務局】  事務局でございます。本日は、お忙しいところ、長時間にわたり、ありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、案を作成しましたら、委員の皆様にメールにて御確認をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、次回の日程につきましては、5月12日木曜日の13時30分から16時30分を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【川幡主査】  どうもありがとうございました。
 

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