海洋科学技術委員会(第3回) 議事録

1.日時

令和4年1月24日(月曜日)15時00分~18時00分

2.場所

オンライン

3.議題

  1. 海洋科学技術による持続可能な社会への貢献について(ヒアリング)
  2. 安全・安心な社会の構築に資する海洋科学技術の在り方について(ヒアリング)
  3. 意見交換
  4. その他

4.出席者

委員

河村主査、河野健委員、河野真理子委員、川辺委員、阪口委員、須賀委員、谷委員、廣川委員、藤井委員、前川委員、見延委員

文部科学省

大土井海洋地球課長、廣瀬海洋地球課長補佐、宮原専門官 ほか

オブザーバー

小原一成 東京大学地震研究所教授、道田豊 東京大学大気海洋研究所教授

5.議事録

【河村主査】  ただ今より、第11期 科学技術・学術審議会 海洋開発分科会 海洋科学技術委員会 の第3回会合を開催いたします。 本日、皆さんお忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。本日は全員の委員の方に御出席いただいているということです。ありがとうございます。それでは、事務局から定足数の確認と配布資料の確認をお願いします。
【事務局】  事務局でございます。本日ですが、11名の委員全員の御出席をいただく予定になっております。阪口委員が遅れておりますが、本委員会の運営規則第2条に定める定足数は満たしていることを報告いたします。
 また事務局といたしまして、現在、専門官の宮原と課長補佐の私、廣瀬が出席しております。海洋地球課長の大土井は、遅れての参加予定となっております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。本日は資料1から資料5までを配付させていただいております。事前にお送りさせていただいておりますが、委員の先生におかれましては、ダウンロード等でもし不都合ございましたら事務局まで御連絡いただければと思います。
 事務局からは以上です。
【河村主査】  ありがとうございました。それでは、本日の議題に入りたいと思います。
 前回、海洋科学技術における持続可能な社会への貢献ということをテーマにして、気候変動問題の対応のために必要な取組、それから海洋生態系の理解、持続可能な利用保全のために必要な取組ということにつきましてヒアリングを行いましたが、本日はこれに引き続きまして、同じテーマのうち、海洋に関する国際的な取組、枠組みと動向ということについてヒアリングを行いたいと思います。その後、安全・安心な社会の構築に資する海洋科学技術の在り方についてをテーマにしまして、防災・減災への貢献のために必要な取組、それから海底資源探査や海底地形調査の促進等のために必要な取組についてヒアリングを行いたいと思います。
 まず、海洋に関する国際的な枠組みと動向につきまして、東京大学大気海洋研究所の道田教授から話題提供をいただきたいと思います。道田さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【道田教授】  今御紹介いただきました東京大学大気海洋研究所の道田でございます。今日はこのような機会いただきまして、ありがとうございます。
 議題といいますか、国際的な枠組みということでございますけれども、私自身もいろんなところに枠組み、関係はしていますが、今日は特に、今私のバーチャル背景映っていると思いますけど、国連海洋科学の10年の最近の動向等について皆さんと共有をさせていただくということにしたいと思います。
 資料を共有いたします。お手元の資料2ページから21ページになっているかと思いますので、適宜ご覧いただくとよろしいかと思います。
 国連海洋科学の10年、昨年から始まった大きな動きでございまして、今日はその話と最近の動向についてお話をするということでございます。
 十分御承知の方もいらっしゃるとは思いますけれども、議題にもあります持続可能な社会を目指したSDGs、全部で17ありますけれども、14番、海ですが、2015年に国連総会で決まった持続可能な開発目標SDGsのうち14番、御承知のとおりですけど、海の豊かさを守ろうとか、こういうことになっておりますが、ちょっと放っておくと、ほかの目標に比べて取組が遅れがちではないかと。我々、海の中に住んでいるわけではございませんので、このまま放っておくとSDG-14の部分だけ取り残されるんじゃないかという懸念があって、危機感に端を発した動きになっています。全体でNo one left behindと言いつつ、我々海が取り残されては困るなと、こういうことでありました。
 ユネスコ政府間海洋学委員会において、じゃあ、どうするのかという議論が始まりまして、2017年の国連総会にユネスコを通じて、国連海洋科学の10年、一種のキャンペーンですけども、これをやるということが提言されています。
 それが認められまして、これは私の和訳ですので、必ずしも定訳ではございませんけれども、2017年12月の国連総会、第72回国連総会において海洋に関する決議がなされておりますが、その中に、今赤字でありますように、「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」と宣言するということが決まりました。
 じゃあ、どのように実行するのかということについては、IOC、ユネスコ政府間海洋学委員会が中心となって計画づくりをしなさいということがこの決議に含まれておりました。
 これを受けて、現在、今右側に表紙の写真がありますけれども、国連海洋科学の10年実施計画、実行計画、Implementation Planがまとめられて、公表されています。
 その背景になるような幾つかの発言が国連あるいはユネスコ政府間海洋学委員会の幹部からなされていますが、そのうちの1つ、Peter Thomsonさん、御存じの方も多いと思いますけど、海洋に関する国連のアドバイザーですね、この方が、海は知らないことが多いんだということを発言されていますし、それから、前のIOCの議長、Peter Haugan、ノルウェーの方ですけど、この方がこのような発言をしています。国連海洋科学の10年をすることによって、目標としては、情報が共有されるシステム、しっかりとしたサイエンスに基づく情報を共有し、それに基づいて社会的な課題を解決していくんだということがうたわれているということでございます。
 国連海洋科学の10年には7つの社会的目標、ここに示しましたけども、Clean Ocean、Healthy Ocean、Predicted Ocean、Safe Ocean、Productive Ocean、Accessible Ocean、Inspiring and engaging Ocean、こういうのが定められております。
 1つだけ抜けているかなと思うのが、エネルギー資源の話は明示的な形では国連海洋科学の10年の社会的目標には含まれておりませんが、それ以外の部分については、我々が現在直面している諸課題が社会的課題7つにこのように整理されて、この課題を解決するために海洋科学をしっかりやりましょうと、こういうことになっているということでございます。
 そのうちの1つをちょっと取り上げてみますと、これ共通的な課題と言ってもいいと思いますけども、英語ではInspiring and engaging Oceanということですが、夢があって魅力的な海。次世代の方々に海をつないでいくと、健康な形でつないでいく、そういったことのために、そもそも将来の人たちにとっても魅力ある海である必要があるだろうというので、あえて実行計画の策定段階の一番最後の頃になって付け加えられたものです。
 付け加えたと言いましたけども、非常に重要なことを含まれていると思います。例えば市民参画の科学。昨今、海洋に限らずいろんなところで市民参加型の科学、あるいは次世代の科学者の参画、社会及び人々の行動様式の変容、こういったことがキーワードになっておりますが、これは次の世代の科学の姿を模索していこうと。海洋についてもそういうことをやっていこうということの表れではないかと理解できると思います。
 ということで、国際的に国連総会で認められまして、実際にスタート、昨年の1月1日からスタートしておりますが、準備段階でいろんな動きがありました。全てを取り上げてここで話をすることはいたしませんけれども、例えば、現行の第3期海洋基本計画、2018年の5月ですが、ここで国連海洋科学の10年の準備および実施に積極的に取り組むというようなことが盛り込まれておりますし、2019年の10月には日本ユネスコ国内委員会の建議にも取り上げられています。さらには、一昨年の12月に行われた持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル、当時の菅総理大臣が参画していらっしゃいますけれども、そこで海洋科学の10年の実施により海洋リテラシーを強化するんだということがリストアップされています。
 さらに、その後実際に動かすに当たって、現在、国内外で取り組みが進んでいると思いますけれども、国内的には国連海洋科学の10年研究会、さらには国内委員会が発足して、我が国全体としてこれに貢献していくための態勢が整ってきています。
 これは2019年2月に私が当時共同議長をしていたユネスコIOCの、国際海洋データ・情報交換委員会、IODE、International Oceanographic Data and Information Exchangeですけれども、この総会は、第25回総会が東京で開催されました。日本がホストをしましたが、そのときに、当時の大山真未国際統括官と、それからIOCの事務局長、ウラジミール・リャビニンが会談をして、日本がUN Decadeの準備に対して支援をするんだということを公式に表明しております。その記事をユネスコIOCのサイトに載せるというので記念撮影したものでございます。
 
 要は、準備段階から我が国は深くコミットしてきているということであります。
 さらには2019年7月の末に、我々、太平洋に面しておりますので、ユネスコIOCの西太平洋小委員会、IOC・WESTPACとPICES(北太平洋海洋科学機構)が共同で、文部科学省の支援をいただいて、特に太平洋の実施計画をどう練っていくのか、あるいは共通課題は何なのかということについて議論するワークショップを開いております。このような多数の方々に参加をいただいて、結果については、先ほど紹介した実行計画に反映されているということでございます。
 ちょっと振り返って、どのように書かれているか。国内政策上、海洋基本計画にこのように書かれています。「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」の宣言を踏まえ、当該10年の実行計画策定及びその実施に積極的に関与する」んだと。「もって、SDGsの達成に向けて我が国として貢献する」ということが明確に書かれておりますし、ユネスコ国内委員会の建議にもこのように書かれているということで、国内の比較的高いレベルの政策の話にもしっかり盛り込まれているということでございます。
 さて、動き始めた体制でありますけれども、今お示ししているのが国連海洋科学の10年の全体の実施体制のストラクチャーになります。一番上が国連総会までありますが、実質的にはユネスコIOCが成果を取りまとめて、あるいは実施計画を取りまとめて、そのうちの重要な部分について国連総会に上げると、こういう仕組みになっていますが、いろんな調整の仕組みがありますけれども、まずは真ん中にあります、IOCの中にあります国連海洋科学の10年助言会議、これが昨年のIOCの総会でもって設置が決まっています。現在、人選が終わって、間もなく活動が始まると思います。
 一番下のほうに、参加各国は国内委員会をつくって、国内活動を取りまとめて全体として国際的に進めていきましょうという、こういうストラクチャーになっています。後ほど見ますけれども、我が国もいち早く国内委員会を設置しております。
 これ、国内委員会ですね。いきなり国内委員会という形にするのはなかなか難しかろうということで、国連海洋科学の10年研究会と比較的緩い形の集まりをまずつくって、これ2020年の8月だったんですけど、それを母体に2021年の2月に国連海洋科学の10年国内委員会というのを設置して、関係各省庁を含め、あるいは学識経験者、民間団体等の参画を得て、諸調整、諸情報交換等を行っていると、こういうことでございまして、体制が整ってきたということでございます。
 こんないろんな活動しておりますということで、詳しくはそれぞれ見ていただくといいんですけれども、左側に日本がどんな国連海洋科学の10年に関係する活動を今しているのか、今後するのかということについて取りまとめた冊子なんていうのも作っています。英語版もありまして、これをIOCの総会等に示したところ、評判よくて、各国ともこういうのを作ったらいいんじゃないかと。これを集めることによって全世界的な動きがよく見えると、こういうことになっています。
 さて、課題ですけれども、幾つか、これが全部ではありませんが、主な課題と言えるものかなというのがこういうことでございまして、一番上、そもそも、まず我が国として何をしているのかということが少なくとも関係者で共有されて見えるようにして、まとまった形で、IOCをはじめ、関係の国連機関、国際機関等にアピールしていく必要があると。こういうことで、それについては、今申し上げた国連海洋科学の10年研究会であるとか国内委員会をつくりましたので、一応そこで情報共有、あるいはどういうことが行われているかということ把握するという仕組みはできたということでございます。
 では、具体的に大きなことをちゃんと動かす必要がありますよね。それぞれの関係者が、国連海洋科学の10年、どんなことをしますかというコール・フォー・アクションというのがあって、幾つか提案を出して、日本では3つがプロジェクトを認められておりますし、日本も参画している、Seabed2030、今日谷さんがいらっしゃいますけれども、後ほどお話があるのかもしれませんが、それが国連海洋科学の10年プログラムとして認められております。さらに、日本として、ある程度まとまった形で、我々、flagship projectと言っていますけども、これを構築していく必要があるのかなということで、今現在、幾つかの議論が進んでいるところです。
 今日は詳しくは述べませんけども、そのうちの1つ、CSK2(Cooperative Study of the Kuroshio -2)というのを関係各国の参画を得て進めようということについて現在準備が進んでいるところでありまして、準備の中核をJAMSTECの安藤健太郎さんが担っていらっしゃいます。
 下の3つ目の丸、これ一つ一つ細かくは述べませんけど、幾つか共通的な課題があるんじゃないかというのでピックアップしたものがこれです。海洋データ・情報の共有であるとか、オープンサイエンス、最近のキーワードですよね。リテラシーの向上、それから市民参加の推進、それから、我々、日本、得意じゃなかった部分ですけども、local/indigenous knowledgeの活用といったことが最近キーワードとして浮上しておりますので、こういったことにどう取り組むのかというのが現在の課題かなと思います。
 海洋情報の共有については、幾つかちゃんと動きがあって、国内的にも、皆さん御承知のとおり、内閣府海本部の指導の下で、海上保安庁海洋情報部が実務を担っていますが、海洋状況表示システムの構築なんていうことが進んでおりますので、まあまあ進んでいるんですね。
 では、これをどう使うのか。科学も含めて、さらにはその先の社会課題の解決にどう使っていくのかというのが課題かなということで、1つだけ、こんなこともありますよという部分で聞いていただくといいんですけど、海洋空間計画ですね。Marine Spatial Planning。これは生態系ベースのアプローチで、生態系を保全しつつ、どう海洋を上手に利用するのか。まさに海洋基本法の理念そのものと言っていいと思いますけども、これを実現するための1つのツールとして、Marine Spatial Planningというコンセプトがあります。これ、諸外国では結構進んでいて、我が国は遅れているんですけれども、海洋空間計画の構築、例えばこういったことを通じて国連海洋科学の10年の社会課題の解決の一翼を担うというのもありかなと思います。
 そのために必要な情報共有については、我が国は既に、海洋基本法の制定以来、一連の海洋情報の共有化の動きが進んでおりますので、体制は整ってきているので、それを上手に利用してこのような目標に向かっていくべきかなと思います。
 昨年の段階で既に全世界76か国が何らかの形の海洋空間計画というのをつくっていると。こういう現状にあって、残念ながら我が国はまだないんですけれども、我が国が諸外国のまねをする必要はさらさらありませんが、諸外国がこのように動いている中で我が国だけこのようなコンセプトに知らぬ存ぜぬというわけにいかないんじゃないかと、そういう問題意識を持っているということでございまして、これ、2019年に私が出たラトビアのリガというところで開催されたヨーロッパを中心とした海洋空間計画に関する国際フォーラムですけれども、私、ここに写っておりますが、日本から私だけでしたね。アジアからもほとんど誰もいなくて、英国に留学中の中国人の方が1人いらっしゃいました。
 驚いたのは、ヨーロッパは国同士が接していますので、各国に海洋空間計画があるということ、それが前提なんですね。隣国との調整というフェーズにもう既に入っているということで、大きな課題、科学的な課題でもあり、政策的な課題でもあるので、そこには大変多くの若手の研究者たちが参画しています。数えたわけではありませんけども、恐らく半分以上、30歳代以下、40歳代以下の研究者がこのように集まっていました。
 翻って日本はどうかということを感じますと、こういう動きを通じて我が国も次世代の科学者、研究者、あるいは政策関係者を育てていく必要もあるのかなと思っております。
 ということで、これが最後のスライドですけども、今日は詳しくは述べませんけども、我々大気海洋研究所も手をこまねいているわけではなくて、河村所長、今日いらっしゃいますけれども、学内措置で、初年度だけですけれども、キックオフのための予算が若干確保されましたし、大きいのは、国連海洋科学の10年推進のために教授ポスト1つが認められておりまして、現在選考中ということですので、その方が着任した後、当研究所、大気海洋研究所も本格的に海洋科学の10年への貢献について関与していきたいと思っているところでございます。
 私からの御報告は以上でございます。ありがとうございました。
【河村主査】  道田先生、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問等お願いしたいと思います。谷先生、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。谷です。道田先生、大変詳細な御報告ありがとうございました。国連海洋科学の10年の事例集というものがございましたけれども、拝見したら、いかに日本が立派にやっているかという、諸外国に自慢するには非常にいいドキュメントだと思うんですが、そうじゃなくて、これが足りないんだぞという、やらないといけないことをまとめたものというのはないんでしょうか。
【道田教授】  ありがとうございます。端的にお答えすると、まだないんです。ないんですが、それを把握するためにも、作ったのが事例集と、そういうふうに御理解いただくといいと思うんですよね。今現在、特に細かな分析をどういう方向でということについても今議論の最中でありますけども、谷先生御指摘のことはそのとおりございまして、ここが足りないからここに特に力を入れようということについては、事例集がそのベースになると思っております。
【谷委員】  昔役人をやっていた悪い癖なんですけど、ああ、こんなにできている、もういいじゃん、予算、というふうに取られるという意味では、国内的にはネガティブだなという感じがしたものですから、お伺いしました。
【道田教授】  はい。そう取られないように、今日御出席の役所の方々にはそういうふうではない理解をしていただければと思っております。
【河村主査】  川辺先生、お願いします。
【川辺委員】  道田先生、大変分かりやすい御説明ありがとうございました。
 ちょっと本筋から外れるかもしれないですけれども、Marine Spatial Planningに関心があります。これは、今日本でも議論は進行中なんでしょうか。確かに諸外国でいろいろ進んでいて、例えば北海やバルチック海などでは、かなり前から諸外国間での調整という形で、各産業間、セクター間の調整も含めて行われているように理解しています。日本でもそういう検討が行われていて、何かパイロット的なことが行われているのか、もし御存じでしたら教えていただければと思います。
【道田教授】  御質問ありがとうございます。御指摘のとおり、日本では、どのレベルで議論しているのかということによりますけれども、例えば政府レベルで公式な形で議論というのはされていないと承知していますが、私の周辺、我々のレベルですと、研究としてやったこととしては、東京大学に海洋アライアンスというのがありますけれども、これが数年前に、海洋空間計画と明示的に銘打っているわけではないですが、海洋空間計画の構築を目指して、海域利用の合意形成に関するガイドラインというのを出版しています。それは私がリーダーを務めた研究チームでやったものです。
 さらには、つい先日、年末だったと思いますけども、海洋技術フォーラムという海洋政策関係の技術系の割といろんな高いレベルの方々も参加されるシンポジウムがありましたけども、そこでのパネルディスカッションが、まさに海洋空間計画ということで、ワシントン大学の太田義孝先生とかにも参画していただいて、議論したところです。議論が盛り上がったので、こういう議論をベースに日本型の海洋空間計画、何らかの形で、「海洋空間計画」と言わなくてもいいですけど、このようなことは要るんだと思うんですね。
 ですので、我々が行っている議論をベースに、少し役所とか政府レベルでも取り上げていただけるといいかなと思っておりまして、そのような働きかけもしておりますけども、今のところまだ公式な形で進んでいるというふうには承知しておりません。
 以上です。
【川辺委員】  分かりました。どうもありがとうございます。
【河村主査】  続いて見延先生、お願いします。
【見延委員】  北海道大学の見延です。道田先生、どうも詳しい御報告ありがとうございました。
 海洋科学の10年、私、学術会議の雑誌にちょっと書かせていただいたり、少しウオッチはしているんですが、特に国際的に協調していかないとなかなかプログラム、プロジェクト、提案するのが難しいんじゃないかなと思っているんですね。その辺はどのような取組を想定されているでしょうか。
【道田教授】  既にオンゴーイングなものが、多くが国連海洋科学の10年の目標達成に資するものであるものが多いわけですから、例えば今日も出席されている須賀さん、須賀先生の関わっていらっしゃるアルゴとかは、アクティビティーとして、国際的にまとまった形で国連海洋科学の10年のアクティビティーとなっておりますし、そのほか、先ほど申し上げましたけども、シーフロアのマッピングですね、Seabed2030、これについては、国際的な協調の下で、IOC、IHOのGEBCO等の方々を中核に国際的な調整の上でプログラムとして提案されて認められているという動きがあります。
 さらに動きがありそうなものとしては、昨今問題の海洋プラスチック、これについては、国際協調で、ヨーロッパの方々は既に一部出しているのかもしれませんけども、ヨーロッパの中でまとまった形での協力というのがされていますし、さらには、間もなく出そうなものとしては、ICES、大西洋のほうのICESですね、ICESが共同で何か提案を出すという調整がこれから行われるようですので、そういった方々、あるいはそういった動きがありますので、今始まったばかりですけど、これから次々に動いていくと思います。
 コール・フォー・アクションは、今2回目が行われて、間もなくそれが締め切られますけども、今後も、半年ないしは1年に1回のペースでコール・フォー・アクションが次々にかかりますので、それまでに間に合った国際調整ができたものについては、次々に提案されていくということが進むんだろうと思っています。
【見延委員】  ありがとうございます。今、最後に挙げられたPICESのプランニング、実は私も関わっています。そうすると、あまり日本で主体的に何かをプランニングしていくというよりも、いろいろオンゴーイングな国際的なものに乗っかっていくと。もしそういう路線だと、それこそお金要らないんじゃないと判断されるかもしれないので、その辺、ちょっと懸念するところであります。
【道田教授】  ありがとうございます。さっきちょろっとだけ言いましたけど、日本主導で、これから新しいものとしては、CSK2、JAMSTECの安藤さんが主導されていますけども、これについては、CSKって御存じかどうか分かりませんけど、50年ぐらい前ですかね。
【見延委員】  それは存じ上げません。皆さん、存じ上げないのではと思います。
【道田教授】   Cooperative Study of the Kuroshioと言って、これ、WESTPACの前身のプロジェクトで、黒潮と周辺海域の科学を進めましょうということで、日本をはじめ、後日WESTPACになった国々が参加して、アメリカも入っていましたけど、黒潮の研究を組織的に進めるということがありました。
 それから50年近くたったので、新たな枠組みとして、IOC/WESTPACの中でCSK2というのを動かそうという動きが、数年前から議論が煮詰まっていて、実施計画的なものがそろそろできるんじゃないかと思うんですね。そうすると、これから参加各国において予算の要求、プロジェクトの推進といったことにつながると思います。
 あまり御存じなかったようでしたら、そのうちプロポーザルがどこかの、科研費か何か分かりませんけど、出ていくと思いますので、それについては、まさに日本がリードしていると言って差し支えないと思います。
【見延委員】  ありがとうございます。そういう黒潮ということだと日本にも重要ですし、それから先般まで行われていました文部科学省国家基幹研究開発推進事業のSKEDという10年実施したプロジェクトがありまして、これ、AORIの方も随分活躍されたと思うんですけど、それの流れを引き継ぐという点でも、それから、今現在議論されているPICESのようなところとも連携も取れるんじゃないかと思いました。ありがとうございました。
【河村主査】  前川先生、お願いします。
【前川委員】  道田先生、包括的な御発表、大変ありがとうございました。
 先ほど御質問にもありましたMSP、海洋空間計画について、今実施中の第3期海洋基本計画の策定時に海洋政策研究所といたしましてもオブザーバーとして様子を拝見していたんですけれども、最後の最後にMSPという言葉が入って、ちょっとここにテキストがあるんですけれども、諸外国においても導入事例のある海洋空間計画については、実施の把握に努め、日本における利用の実態、既存の国内法との関係を踏まえつつ、活用可能性について検討を進めるという記述があるんですけれども、これをやはり推し進める所管官庁であるとか、具体的なプログラムとか、予算というものがないとなかなかその実施は難しいかなと感じております。
 次の第4期海洋基本計画ではさらに踏み込んだ、可能性の検討というよりも、導入を進めていくというような、そんな目標も必要なのかなと思っていますが、その辺いかがでしょうか。もし御意見あれば、教えていただければ幸いです。
【道田教授】  前川先生、どうもありがとうございます。ぜひ前川さんからもプッシュしていただきたいんですね。先ほど話では使いませんでしたけど、最後のスライドで申し上げた、次のページに、12年前にあるところで、海洋基本法フォローアップ研究会でしゃべった内容がありまして、そこにも既に海洋空間計画やるべきと書いているんですよね。その前段階の情報の共有がまだですねということで、今現在につながる、「海しる」につながっていると、こういうことなんですけど、まさに時は来ているんですよね。その先にあるのがMSPと、こういう趣旨で書いたんですけども、今御指摘のあった現行の海洋基本計画に書かれている文書、あれについて私もパブコメで出したんですけど、あれ以上なかなか踏み込んで書いていただけなかったということがあります。
 それで、折に触れてこのことをあちこちで言っていて、また道田さんがMSPと言っていると思っている方々も多いんじゃないかと思いますけども、ただ、これはやっぱり海域を適切に利用するという観点、そのことについては、どんな形であれ、何らかの形で調整とか、海洋空間計画的の考え方が必要であるということは多分確かだと思っています。信じていますので、私としても、いろんなところで、現在進行中のスタディーグループ等の議論にも参画させていただいているので、そこでも述べています。何らかの形でもう一歩進んだ形で取り上げていただければいいなと思っておりますので、繰り返しですけれども、前川先生もぜひ声を上げていただいて、プッシュしていただくといいかなと思います。よろしくお願いします。
【河村主査】  よろしいでしょうか。次、河野真理子先生、お願いします。
【河野(真)委員】  道田先生、どうもありがとうございました。
 海洋空間計画についてですが、例えば、EUはEU指令があって、それに従って各国が海洋空間計画をつくるという構造になっていると思います。EUが指令を出すきっかけになったのは、やはり重複する海洋の利用が様々な形で出てきていて、それをうまく整理しないといけないという事情があったと理解しています。私の理解する限りでは、そうした重複する海洋の利用の整理のためのツールとして海洋空間計画があると思います。多様な海洋の利用の態様をうまく調整して、合理的に海域を使っていこうという意図があると考えます。それから、先ほど先生もおっしゃったように、EUの場合、国家間の海洋における距離が近いですから、国家間での計画の調整も必要になります。このように、海洋空間計画を策定することには具体的な用途があるんだという認識が必要です。実際問題として海洋空間計画がある国ほど海域の利用がたやすく促進されるということは、EUの実行を見ていますと明らかであろうと考えます。
 海洋空間計画というのが、理念というよりは、戦略的に海域を使っていくために必要なんだということをもっと知っていただくべきなんだろうなと、最近いろいろな資料を読んでいまして、感じるところでございます。
 日本でも例えば海洋保護区域や開発区域の設定、洋上風力発電施設を設置する海域の指定、さらに航行の自由を確保する航路の設定のように、海域に関して用途別にいろいろ区分を設定するようになっています。必要な目的で必要な海域を設定するよりも一度海洋空間計画を策定し、海域全体を見渡した計画を検討し、海域の区分ができるような基準を検討すべき時期に来ているのだろうと感じます。ありがとうございました。
【道田教授】  河野先生、ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりですね。僕、さっき理念という言葉を使いましたけども、最低限コンセプトは共有してほしいということなんですね。その上で、日本型とかちょっと書きましたけど、必ずしも諸外国のまねする必要はないですが、抱えている問題は一緒なんですよね。ただ、法制度のつくり込み方とか、例えば水産業とか、いろんな海域利用の歴史が諸外国と違っている面もあったりするので、そこはそれらをしっかり加味して海洋空間計画を実際つくっていく必要があると、こういうことだろうと思うんですよね。
 御指摘のとおり、ベルギーの例を挙げますと、最初は大体こんな感じで行きましょうかねというプロポーザルベースの話だったんですね。こんな海洋配置が、空間配置があり得ますよということだったんですけど、しばらくすると、それがどのくらいのレベルかという問題ありますけども、レギュレーションになっているんですよね。
 そういうふうにどんどん進んでいっていると。日本は、いろんな利用目的が輻輳している。これも事実ですよね。それをどう調整するのかという、長い合意形成の歴史もあるので、必ずしもヨーロッパがやっているのがそのまま日本にも適用できるかというと、そうではないかもしれないですけども、理念と申し上げたのは、少なくともそういうことが必要であって、それに向かって海洋空間計画みたいなものをつくっていくんだというふうにしてほしいなというのが私の主張なんですよね。
 その下地は整っている。情報は一応共有する仕組みができたと。そうすると、次は本当の社会課題の解決、空間利用の調整、適切な調整、あるいは、今MPAの話されましたけども、それの配置。いろんなことが輻輳するのをしっかり調整すると。今日は科学技術の話なので、Marine Spatial Planningは何となく政策論に聞こえるかもしれませんけど、それをしっかりやるための、科学に基づく海洋空間計画にするための科学は推し進める必要があると、こういうことかなと思っております。
 河野先生も関係のところでぜひ声を上げていただいて、一緒にやっていければと思いますので、よろしくお願いします。
【河村主査】  河村です。ちょっと割り込んでよろしいでしょうか。今の議論はそのとおりなんですが、先ほど道田さんが前提として言われた日本ならではという部分が、最も大きな障害というわけじゃないですけども、足かせになっていると。要するに、日本は沿岸の全てのエリアを漁業者が使っていて、かなりの既得権があって、既得権という言い方が良いかについてはいろいろな考えがありますけれども、実際にはかなり使われていると。その中で、ほかの用途にどういうふうに使っていくかというところで最も大きな問題があるわけで、道田さん、わざとそこを避けて通られたと思いますけれども、ここが最も考えるべきところじゃないかなと思います。コメントです。
【道田教授】  おっしゃるとおりですよね。そこが一番肝なんですけども、もう一つあるのは、それはそのとおりなんです。今のいろんな例えば新しいことをしようとしたときに、個別の合意形成になっているんですけど、それを少し超えるということからやるというのはあるんだと思うんですよね。共通的課題と、海域に共通の部分ありますよね。それを1個1個個別にやっているという今の現状からもう一歩進むことは可能だと思うんですよね。成功事例を共有するとか、ある意味日本型というのはそういう意味ですよね。
【河村主査】  全てに勝って漁業者との調整ということで非常に大きな精力を割いているところで、多分もっとそれを超えた大きな枠組みができないというところが問題なんじゃないかなという気がします。
【道田教授】  その枠組みをいきなりつくるのは難しいかもしれないですけど、私の感じだと、幾つかうまくいっている合意形成がありますよね。それをうまく拾い上げて、それをベースに日本なりの海洋空間計画の在り方の議論を進めるということかなと思うんですよね。
 漁業法も改正されたり、いろんな新しい動きもあるので、それを踏まえつつ、繰り返しですけど、日本型というのはそういう意味ですよね。そういう感じで進めていけるといいなと思っているということです。
【河村主査】  後ほど藤井先生のほうからもこの辺御意見いただければいいかなと思います。
 須賀先生、お願いします。
【須賀委員】  道田先生、ありがとうございました。私も、海洋空間計画、これ、関心はあったんですが、あまり深く勉強する機会がなくてずっと来ていたんですが、今日お話を伺って、あと、今の皆さんの御議論を伺って大分勉強になりました。ありがとうございます。
 これ、いろんなステークホルダーが絡んできて、法律も絡んできたりとか、産業界、いろんな人たちが絡んできますよね。地域の住民もそうかもしれないし。そういうものを動かしていくというのには、やっぱり日本なら日本のやり方というのを考えなきゃいけないとは思うんですが、うまくやっているヨーロッパというのは一体どういう、誰が主体となって、どういう枠組みで動かしているんですか。地方政府レベルだとか、国の政府なのか、どこかの省庁なのかとか、どういう人たちが中心になって動いてこれやっているんでしょうか。
【道田教授】  基本的には各国政府だと思うんですね。先ほど河野先生から御指摘ありましたけども、EUはEUという枠があるので、そこである程度共通的な何かがありますよね。そういうのがあって、それをベースに、それに各国の事情を加味してそれぞれの政府がつくっているということですね。そこに、それは政府レベルの調整ではあるんですけども、研究者がたくさん入っているんですよね。生態系を維持したい研究者、維持すべきだと思っている、みんなそう思っているんですけど、じゃあ、どうするのかとか、そういったことに全部絡んでくるので、そこにまさに、もろ複合領域ですよね。複合領域の研究を、その結果、それが結果的に進むということになっているので、ヨーロッパについては、全体の大きな枠組みがあって、さらに各国の枠組みがあって、そこに、私から見るとですけども、日本に比べると、より真の意味での学際的な研究が進むような形で研究者の参画が進んでいると思いますね。
 それを見るだけでも、日本にそのようなことをやることに意義はあると思うんですよね。学際的に進めるべきだとみんな言うんですけど、じゃあ、どこがやるんだと。そういったときに、例えば海洋空間計画を構築するめにいろんな分野の科学が必要ですよね。そこにみんなで集中することによって次のステージに行けるというふうになるといいなと思っているところです。
【須賀委員】  ありがとうございます。その仕組みというか、それが肝ですね。それを、いきなり大きなものはパンとはできないだろうからということで、何か成功事例、うまくいきそうなところから具体例をつくりながらやっていくというようなイメージでしょうか、道田先生がおっしゃったのは。
【道田教授】  はい。私はこれがいいと思うんですね。いきなり大きなものって、例えば、詳しくはどういう仕組みだったか承知していませんけど、中国もMSPをやっているんですよね。ただ、それの仕組みって日本には多分なじまないですよね。そういうわけにいかないので、日本だと、上手に漁業者との調整も済んで、信頼関係を築いてできた、進めているいろんな開発プロジェクトもあったりしますので、それを幾つかだんだん広げていく。それを参考に、新しいところでやるときには、ゼロからやるんじゃなくて、それをちゃんとうまく引き直して、それが、海洋空間計画と言っていいかどうか分かりませんけど、そういう概念、あるいは活動でもって整理がされて、次のステップにどんと進んでいくというのがいいかなと思います。
【須賀委員】  ありがとうございます。
【河村主査】  ありがとうございました。藤井さん、何か水産庁サイドからの御意見がありますか。
【藤井委員】  すいません。水産庁サイドと言われると、なお苦しいんですけれども。
【河村主査】  そうですか。本音ベースでお話しいただければ。
【藤井委員】  水産研究・教育機構の藤井です。前職は水産庁だったので、こういう水産の枠を超えたほかの省庁の方々との勉強会、意見交換会に水産庁にいた頃もたくさん出てきていたんですけど、そのたびに言われるんです。日本は漁業権というものが邪魔だと。これが開発の足かせになっていると。何かやろうとすると漁業者が出てきて、ここは自分たちの海だとか、何かするなら補償しろとかという話になるので、ロケット一発上げるのに幾らお金払わなきゃならないとか、何十回も一緒に酒飲まなきゃならないとかということをも、ずっと毎回毎回言われてきたので、まさかここでもまたそういう議論になるとは思わなかったんですけれど、諸外国に比べて日本は漁業者の権利はすごく強いです。つい先年、漁業法が改正されましたけど、前の漁業法ができる前、その前の明治の漁業法ができる前から、漁業者というのは、海に根差して生きてきて、ここは自分たちの海だと思って生きてきて、それが延々根づいているんですね、日本の文化として。
 諸外国、アメリカとかヨーロッパに行って話を聞いてびっくりするんですけど、漁業者の権利なんかあってないようなものですよね。中国にしてもそうなんですけど、政府が一言言えばみんな追い出されちゃうぐらいの、それぐらいの政府の力の差があるというところで、この前の漁業法の改正のときも、水産庁もすごく苦労して、何とか前進できるようなくさびくらいは打ったと思うんですけれど、ただ、やはりまだまだ、最初、道田先生ですかね、既得権益とおっしゃいましたけど、そういう意識が強い。
 そういう中で、やっぱり道田先生おっしゃったような成功事例ですよね。今まではこうだったかもしれないけど、これからの時代こうやっていくともっとよくなるよというようなものを一つ一つ事例を見せて説得していかないと、枠組みだけボンと示してこれでと言っても話はまとまらないというのが実際のところかなと思います。
 歯切れが悪くて申し訳ないです。
【河村主査】  ありがとうございました。申し訳ありません。言いにくいこと言っていただきまして、ありがとうございます。ただ、これ、日本がよくも悪くも、漁業が非常に盛んで、本当に余すところなく漁業が行われているというところがあるので、そのいいところを生かしながらうまく進んでいく。Marine Spatial Planningをちゃんとやらなきゃいけないというところで、なかなか議論しにくいんですけど、避けて通れないかなと思ってわざわざ発言させていただきました。ありがとうございます。
【道田教授】  最後に一言だけいいですか。漁業者を敵に回す気は全くないんですね。何かそういうふうに警戒されるんですけど、そうじゃないんですよと。ただ、人も減る、世の中変わる。その中でよりよい海域利用を考えたときに、漁業をいかに振興しつつ、新しい利用をつくっていくのかという、そこが議論なんですね。そのときに、必要なツールとして、Marine Spatial Planning的考え方、日本なりでいいんですけど、それを共有するというところをまずスタートラインにしませんかというのが当面の私の主張なんですよね。時間がかかるとよく承知している。この話はもう10年前から言われているんです。そんなに簡単にいくわけないだろうと皆さんおっしゃる。別に僕、簡単にいくなんて思ってないですよ。思ってないけど、何かしないと次進まないですよ。10年後、20年後、30年後、2050年、我々がもういなくなった頃の海域利用がよりよいものになっている必要があると僕は信じていますけど、そのためのワンステップだと御理解いただくといいかなと思っています。
【河村主査】  ありがとうございます。どうぞ。
【藤井委員】  おっしゃるとおりだと思います。こうやって環境もどんどん変わっていく中で、漁業者の人たちが今までどおりの場所に住んで今までどおりのことをやっていこうという、そういうライフプランというか、ビジネスモデルはもう成立しなくなってきていますので、将来を見据えた議論というものが必要だという点では我々も同じ認識ですので、これからもよろしくお願いいたします。
【河村主査】  どうもありがとうございました。そろそろ時間ですので、次のテーマに移りたいと思います。川辺さん、何かもし短くあれば。
【川辺委員】  すみません。日本版という話なので、ちょっと御紹介ですけれど、洋上風力発電の導入に関しては、環境省が「風力発電に関わる地域主導による適地抽出手法に関するガイド」というのを出していまして、それと「海洋再生エネルギー発電設備の整備に関わる海域利用の促進に関わる法律」、再エネ海域利用法というのが2018年にできまして、それに伴って今、洋上風力発電が特に日本海側で盛んに行われています。これが海洋空間計画の日本版に該当するのかなと思っております。
 以上です。
【道田教授】  ありがとうございます。そのとおりですね。ワンステップであるのは確かだと思いますね。うまく広げていけるといいかなと思います。
 すいません。科学技術の話にならなくて申し訳なかったですけど、皆さんの関心ある課題を提示できたかなと思いました。ありがとうございます。
【河村主査】  どうもありがとうございました。取りあえずこれで一旦この議論は終わりたいと思います。ありがとうございました。
 それでは次に、安全・安心な社会の構築に資する海洋科学技術の在り方についてというテーマに移りたいと思います。
 まず、防災・減災への貢献のために必要な取組ということで、東京大学地震研究所の小原一成教授のほうから話題提供をいただきたいと思います。小原先生、どうぞよろしくお願いします。
【小原教授】  東大地震研の小原でございます。今日、防災・減災への貢献に必要な取組についてということで話題提供を依頼されましたので、15分程度ですかね、御紹介したいと思います。
 私、必ずしも海域観測の専門家ではないので、ちょっと斜めから見た形というか、関係者からちょっと資料を取り寄せて、それでスライドを作っていますので、詳しいところが分からなかったりするかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。
 それで、今日、事務局のほうからはこのような論点をいただいています。防災・減災分野へどのような貢献があるのか。それに対して現状不足している研究開発・研究基盤・データとは何か。それらのデータをどのような時空間分解能で取得すべきか。そのデータの取得に当たって必要な研究基盤等はどのようなものがあるのか。ということについて、このような4つの流れで簡単にお話をしたいと思います。
 まず、地震防災の観点における「海洋」ということで、海、海域というのは、これはもう言わずもがなだと思いますけれども、海洋プレートが沈み込む場でありますので、そこでは巨大地震が発生するということで、日本周辺、あるいは世界の震源分布を見ても、海域に巨大地震が、大きな地震がかなり発生しているということはよく御存じだと思います。
 そのような海域に発生する地震に対して国はどのような評価をしているかということについて、まずこちらの左の図ですけれども、これは主な海溝型地震の評価ということで、千島海溝から日本海溝、それとあとは南海トラフにおける巨大地震というのは発生確率が非常に高いと評価されています。
 これに基づいて、ハザードといいますか、揺れの予測ですね。これは全国地震動予測地図で、文科省で作成しておりますけれども、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率ということで、特に南海トラフに近い地域では非常に確率が高くなっているということが分かると思います。
 そのような南海トラフの巨大地震に対しては、内閣府で揺れ、つまり震度の予測について、それから、津波波高の予測というものも当然このようにされております。南海トラフである程度の地震が起きたときには、さらに大きな地震、南海トラフの大地震が発生する可能性があるということで、これは気象庁のホームページから取ってきたものですけれども、南海トラフの地震の臨時情報というものが出される体制になっています。
 例えばつい二、三日前に日向灘で大きな地震が発生したわけですけれども、あの地震については、マグニチュード6.6あるいは6.7ということで、この臨時情報を発出する基準の以下でありましたので、このような情報を流す取組はされませんでしたけれども、マグニチュード6.8以上の地震があの地域に発生すると、判定会、検討会が開催されて、臨時情報を出す可能性があるという流れになってございます。
 それとあとは、ゆっくりすべり、スロー地震、スロースリップが発生した場合、通常とは異なるスロースリップが発生した場合について、大きな地震が発生する可能性が高くなるという判断がなされたときに臨時情報が発出されるということにもなってございます。
 ただ、実際に臨時情報が発出される基準というものについては、特にスロースリップについてはまだ定義されていませんので、今、まさにそれを、そのレベル(基準)を設定しなければいけないというところで、スロースリップに関する調査・研究というのは非常に重要であるというところを今申し上げておきたいと思います。
 それで、地震防災を考える上で海底観測が非常に重要であるということは特に説明する必要もないかとは思いますけれども、その現象が発生した場所、それから例えば津波の高さ、あとは、地面、海底面の地殻変動をより正確に把握するということが地震防災には非常に重要であるということです。
 
 それで、具体的にどういう観点で地震防災に必要であるかということについて、3つ取り上げて説明したいと思います。
 まず1つは、地震発生予測。つまり、地震が発生する前に、切迫度、地震の発生確率などを長期的、数十年のスケールで評価するというもの。
 それから、即時予測。これは地震が発生した直後、すぐ数秒後あるいは数分後にやってくる地震動や津波の波高を即時的に予測し伝達する。具体的には気象庁で行われている緊急地震速報がその1つになりますけれども、こういったもの。
 それとあとは、ハザード評価。地震が発生した場合に、その地震によってどれだけの揺れ、あるいは津波波高が発生するかというハザードをあらかじめ評価すること。
 このような予測評価に対して、海域の観測というのは重要な情報を与えるということになります。
 具体的な調査観測の項目についていうと、地震発生予測の観点からすると、地震活動や地殻変動が今どういう状況にあるのかという現状把握、それに基づいてプレート間の固着、くっつき具合が時空間的にどのように変化しているか。そういったものを用いてシミュレーション等を駆使して今後の地震発生予測につなげるという研究が今まさにされている。その際には、過去に発生した地震や津波の発生履歴なども非常に重要な情報となります。
 即時予測を行う際には、もちろんですけれども、海陸のリアルタイム、海でいうと、ケーブルでつないだ観測網が非常に重要な役割を果たすということ。
 それからあとハザード評価という観点でいうと、強震動や津波の生成域をきちっと評価するということと、あとは、あらかじめハザード評価を行う際には、海底下を含めた3次元的な地下構造を正しく把握するということも重要になってきます。
 そういう観点で、今、海域においてどのような調査観測が行われていて、それらがどういった課題を有しているかということについて簡単に御紹介したいと思います。
 海域における観測というのは、ここにざっと6つほど挙げておりますけれども、今日御紹介するのは赤丸で示した4つの項目になります。
 まず1つは、ケーブル式の地震・津波観測網についてですけれども、これは特に東日本大震災以降、S-netを含めてかなり海域に展開されるようになってまいりました。
 このリアルタイムのケーブル式観測網については、当然ながら地震活動の現状評価、それと地震発生予測の基礎データとして非常に重要な役割を果たします。もちろん地震・津波が発生した場合の即時的な把握、それから、即時予測に非常に重要な貢献を果たします。
 このケーブル式の観測システムについては、もともとアナログ伝送で始まったものが、デジタル伝送。それが今は、新しい技術としてIP伝送という形で進化しているところでありますけれども、今、日本海周辺に展開されているケーブル式のシステムについては、第2世代の技術で展開されているということになります。
 このような観測網ができたことによって、例えばS-netの貢献という意味でいうと、海域においてスロー地震というものがかなり広範囲に発生しているということが分かったということと、それから、S-netの導入後に海域における震源決定精度が非常に高く、日本列島下に沈み込むこのプレートの形状というものが非常にクリアに分かるようになってまいりました。
 今、南海トラフの西部域においてN-netという新しいケーブルシステムが今まさに構築されようとしているところでございます。
 こういったケーブル式の観測網については、今、トータルすると約300台以上展開されております。設置間隔については、20キロから100キロ程度。一方、陸域の観測網については20キロから30キロ。こういった観測網というのは、基本的には評価対象の地震の発生の深さに大体整合するような間隔で整備することが望ましいということが文科省の地震本部の調査観測計画に記載されております。
 そういう観点からすると、特に海域については、非常に浅い地震、プレート沈み込み直後の地震については深さ数キロで発生するということですので、まだまだ今のケーブル式の観測網では観測点が少な過ぎる、まだ不十分であるということが言えます。
 それとあとは、自己浮上式の地震計につきましては、これまで日本海域でかなり密な観測を行ってまいりました。
 ただ、ちょっと注目していただきたいのは、日本海溝の深海部においてはほとんど観測がされていない。ケーブル式のシステムについてもその部分を避けるようにして展開されている。これは主に耐圧の問題からそのような場所では観測点が設置されていないということですので、特にプレートの沈み込みを開始した場所というのは、やはり巨大地震の発生や津波のことを考慮すると、そこでの調査観測というのは非常に重要なポイントですので、深海部といった耐圧が必要な部分について、高圧下における観測機器の開発というのは非常に重要になってきます。
 続いて、音響GNSS観測についてですけれども、これは海底における地殻変動観測ということで、海中の中は音響で、それから、あとはGPSで海底の変動を調べるということになりますけれども、こちらについては、今は船でほぼ毎月、調査観測するような頻度で観測を行っております。
 これについては、さらに高頻度化する、あるいは長期的に連続観測を行うということが非常に重要な課題となってございます。
 例えばこのような観測に基づいて、海域におけるスロースリップというものの把握ができるようになってきておりますけれども、そういった現象の把握をより高精度に行うという意味でいうと、もっと高頻度で観測を行う必要があります。
 それとあとは、海底局では電池が内蔵されていますけれども、電池の寿命が10年から15年ということもございますので、それもより長期間連続観測するというためにはケーブルでつないで観測を行うことが将来的には必要になってくると思います。
 より自動化して高頻度観測を行うという取組が、今、ウェーブグライダーを使って行われていますけれども、こちらもまだ、例えば航行能力の限界、電力不足であるとか、それから強い海流によって離脱してしまう等の問題がありますので、そういった課題も今後解決する必要がございます。
 それとあとは、海底下における地殻変動観測、特に傾斜、ひずみ、それを表すような間隙水圧の観測というのがJAMSTECによって紀伊半島南東沖でなされております。それによってこの海域でスロースリップが発生しているということも準リアルタイムで把握することができるようになってまいりまして、そのようなモニタリングの結果は国の委員会等に提供されて、評価検討を行う際にも非常に重要な情報となっております。
 このような観測網ができてきたわけですけれども、ただ、まだまだ設置点数というか、設置密度は空間的にはまだまだ足りておりませんので、スロースリップの時空間変化をより正確に把握するためにはさらに多点の観測が必要になってくるということが言えるかと思います。
 今後に向けた期待ということで何枚かスライドを用意していますけれども、大分時間が過ぎていますので、ちょっとかいつまんで御紹介しますと、今、海底下に存在しているケーブルの中の光ファイバーを用いることによって、より高密度な地震観測、あるいは地殻変動観測が実現できそうだということで、そういった取組が進められているところでございます。
 こちらに示したのは東大地震研が三陸沖に展開しているケーブルシステムを用いた非常に高密度な地震観測で、より高分解能な観測が今やられつつあります。
 このようなケーブルを用いることによって、海底の構造探査であるとか、それから、地殻変動についてもより有効なデータが得られそうだということで、今そういった取組がなされているところでございます。
 ただ、まだ、機器の安定性であるとか、それから、非常に膨大なデータが生成されますので、それをどうやって効率的に処理するかというところについては、今課題となっているところです。
 あとは、深海域における調査観測が必要であるということは先ほども申し上げたとおりですので、ここはちょっと飛ばしまして、最後ですね。それぞれの論点に対するまとめとして書かせていただいたのは、海域観測によって、特に巨大地震の震源域の近傍において地殻の状態を正確に把握するということができますので、それは地震発生の予測、ハザード評価、即時予測に大きな貢献を果たすということです。
 それと、時空間的に高分解能なサンプリングを行うということが、そういった防災を考える上では非常に重要になってくると。
 それとあとは、深海底における耐圧観測ですね。
 あとは、先ほどの議論にもちょっと関係するかとは思うんですけれども、陸域と遠洋部を連続的につなぐような、特に沿岸部においてはなかなか調査観測が難しいということもあるので、その辺りも今後の課題ということかもしれません。
 時空間的な分解能については、とにかくリアルタイム・オンラインでデータを取得するということが非常に重要でございますけれども、あとは、現象の深度に合わせた分解能で調査観測するということが重要であるということが言えるかと思います。
 ちょっと時間超過して申し訳ございませんけれども、私からの話題提供は以上です。御清聴ありがとうございました。
【河村主査】  小原先生、どうもありがとうございました。ただいまのお話に御質問等お願いいたします。
 谷先生、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。谷です。小原先生の今の御講演で飛ばされたスライドなんですけれども、最後のほうですね、ケーブルが敷設されているところに長期観測型自己浮上式測器を用いた集中観測という。それですね、23番かな。これはどういう目論見なんでしょうか。というか、ケーブルはそれなりに稠密に観測していると思うんですけど、さらに置かないといけないということがあるんでしょうか。
【小原教授】  そうですね。ケーブルも、今まさに設置されたばかりではございますが、その間隔については、例えば紀伊半島沖のDONETであれば、20キロ間隔ということでかなり稠密な観測網でございます。
 ですけれども、S-netについては、密な部分は確かに二、三十キロのところもありますけれども、基本的にはもっと間隔が粗いんですね。そうすると、その間に起きる現象であるとか、特に浅い現象、プレート沈み込みが開始した直後辺りの現象を把握する上では、まだまだ分解能として足りないので、そういった意味で、ケーブルシステムをベースとして、さらにその間を補完するような自己浮上式の集中モニタリング観測というのはどうしても必要になってくるということでございます。
【谷委員】  ニーズは分かりましたけど、やはり自己浮上式を使うというのは妥協ではないかなと思うんですね。
【小原教授】  そうですね。そういう意味ではまさにおっしゃるとおりで、最終的には全てケーブルで結んでオンラインで観測することが本当に理想だと思います。
【谷委員】  時計の管理なんかができなくなっちゃうので。クオーツですよね。
【小原教授】  そうですね。
【谷委員】  ですから、マイナス6乗か7乗ぐらいでしか精度がないので、だんだん長期だとずれちゃうでしょうから。
【小原教授】  そうですね、自己浮上だと。
【谷委員】  最初から分岐して地震計をほかに置くんだ、みたいなほうがいいんじゃないかなと思ったんですけど。
【小原教授】  そうですね。そういう意味では、例えば、DONETもそうですし、今、整備中のN-netについても、分岐して、後から地震計をノードにつないで新たに設置できるようなことも備わっていると思います。そういったものも活用してより効果的な集中的な観測ができればと思います。
【谷委員】  ありがとうございます。
【河村主査】  ほかにはいかがでしょうか。じゃあ、阪口先生、お願いします。
【阪口委員】  海洋政策研究所の阪口です。どうもありがとうございました。
 大昔、天気予報から天気は予測できないので、気圧を測るようになったのと同じで、地震も、1つは、起こった地震から確実にある場所までの到達の予測を行う緊急地震速報の概念、これはよく理解できるんですけども、ひずみとか、それから、今ちょうど出ているGNSSでの地殻変動だとか、それから間隙水圧とか、それから傾斜とか、いろんな地震以外の量を測定する科学技術というか、観測がずっと行われているんですけども、そのような観測は恐らく、小原さんが見せられた1、2、3の1に該当する切迫度だとか、地震が発生する前の予測に恐らく使われる情報量だと思いますけれども、その情報量の時間分解能というか、空間分解能というのは、今現在、どれぐらいが最大の解像度の時間分解能であり空間分解能になるんでしょうか。
【小原教授】  例えばGNSSアコースティックについては、今ここに示したような観測点分布ということになって、空間的には数十キロ間隔ですね。それで、時間分解能としては、海上保安庁が調査観測を行っているところについては、船でほぼ毎月、月に1回ですね。例えば海域における固着、プレート間固着の評価という意味でいうと、このサンプリングでも足りないといえば足りないんですけど、ある程度それでもいいかもしれないんですが、もっと細かい、例えばスロースリップが発生するであるとか、そのような現象を正確に把握しようという場合については、月に1回のサンプルではやっぱり非常に少な過ぎる。それは例えば陸域においては、国土地理院のGPS観測が、大体研究に使うサンプリングとしては、1日、デイリーなデータですね、1日1サンプル、少なくともその辺りはどうしても必要だなと思います。
【阪口委員】  ありがとうございます。私が聞きたかったのは、緊急地震速報的な、地震が発生してから地震のデータを用いてある別の場所の揺れを予測するのはかなり今高解像度で、高解像度というか、かなり正確にできるんですけれども、地震以外の観測値から地震を予測するということになると、突然10年とか30年という範囲でしか出てこないんですけども、地殻活動を例えば1日1回、例えば5キロ間隔とかで書かれるようになると、地震の発生の予測というものの1ステップが10年とか30年ではなく、1か月とか1週間というスケールまで落とし込むことができるかなという質問です。
【小原教授】  ありがとうございます。おっしゃるとおり、モニタリングの時空間的な分解能を上げることによって、高密度なデータに基づくシミュレーションというものも可能になってきますので、そうすると、将来予測についても、数十年後ではなくて、もっと近い将来の予測が可能になってくるかとは思いますが、ただ、もちろんそのためには、さらにまた地下構造であるとか、様々なパラメータの分解能も上げていかなければいけないということなので、すぐにできるというわけではございませんけれども、当然ながらサンプリングを上げていくことが将来予測の高精度化につながってくるのは確かでございます。
【阪口委員】  ありがとうございました。
【河村主査】  ほかにはいかがでしょうか。
 減災・防災に関して海洋でやるべき取組ということについて、御意見、小原先生のお話以外、直接関係しなくても、もし御意見があれば、お願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 じゃあ、阪口さん、もう1回。
【阪口委員】  別の人だと思って。週刊誌的な質問でとっても申し訳ないんですけども、地震と津波のセットで、この間、火山と津波が、しかも火山の山体崩壊による波の誘起ではなく、衝撃波というものが誘起されましたと。衝撃波による津波、これが今まで誰も知らなかったということなんですけども、火山防災の人たちと地震防災の人たちというのはどれぐらい連携があるのか。別に空振が起こらなくても、火山噴火、それからあと山体崩壊、それから土砂崩れでも津波は十分に励起されることだと思うんですけども、地震以外の発生源による津波の研究者との連携というのはどんなように進んでいるんでしょうか。
【小原教授】  なかなか難しいですね。ただ、今回の現象については、かなり早い段階から空振が津波を引き起した可能性があるということは指摘されていて、実際に空振を日本だけではなくて世界中のセンサーで確認して、それがどのように伝播していったか。それがどのように津波とカップルしていったかということについては、実は結構早い段階から解析というか情報交換がなされていたと思いますので。ただ、なかなかそれを実際の津波の防災に役に立てるというところ、その辺りはまだできていなかったということはあり得るかと思います。
 ただ、あと、S-netとか、稠密な津波の観測網があれば、それこそソースが何であろうが、実態がつかめなくても、実際に津波の波高がそれぞれの観測点で確認できて、それがどのように伝播していって、あと、沿岸部にどのように伝播していくかということについては、データ同化という形でできるような研究開発というのがまさに今行われていると思いますので、それは近い将来に、気象庁に取り込まれて、津波警報という形で達成できるのではないかとは期待しています。
【阪口委員】  ありがとうございました。
【河村主査】  どうもありがとうございました。ほかに御質問なければ、いいですかね。
 小原先生、どうもありがとうございました。
【小原教授】  ありがとうございました。
【河村主査】  次の話題提起に移る前に1回ここで休憩を入れたいと思います。5分ほど遅れているけど、半まででいいですかね。次、16時半から再開したいと思います。
( 休  憩 )
【河村主査】  それでは、4時半になりましたので、会議を再開したいと思います。
 続いてのヒアリングは、海底資源探査や海底地形調査等のために必要な取組について、今日は谷委員から話題提供をお願いしたいと思います。
 谷先生、よろしくお願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。今、海底資源探査や海底地形調査の促進等のために必要な取組ということでお題をいただきましたけれども、実際お話していくと、中身は若干、先ほどの道田先生がお話になった国際的な枠組みと関係する部分が発生してしまいますけれども、そこのところはお許しください。
 では、お話を始めたいと思います。海底地形調査の取組ということでお話をいたしますが、まず海底地形とはどんなものかということで、御承知かもしれませんけれども、非常にダイナミックであるということで、世界の最高点、日本の最高点の標高とか深さがこれなんですけれども、世界の最深部はさらに深くて、日本の最深部というのは、御存じかどうか、9,780メートル。これは小笠原群島の北東方ですね、小笠原海溝の中にあります。
 それから、海嶺というんですが、海底山脈。一番長いのは6万5,000キロメートルあります。陸はアンデス山脈の7,500キロメートル。これはちょっとそうじゃないじゃないかという意見があると思います。アラスカの山脈とか、ロッキーとか、シエラ・マドレとか、それから南極につながっている南極横断山脈とか、みんなつなげばもっと長いでしょうというお話があると思いますけど、それでも1万9,000キロですので、海のほうが圧倒的に長いというわけです。
 それから、海底地形に関しては、国連海洋法条約、UNCLOSにも名前が出ていまして、もっとあるかもしれませんけど、例えば低潮高地だとか大陸棚の定義のところに出てくるいろんな名前ですね。低潮高地は、領海基線として領海の主張に関係するし、大陸棚は200海里よりも外側に沿岸国の海底の探査とか開発の権利を与えるところなんですけれども、それに関係するところでいろんな地形の名前が出てまいります。
 実際に海底地形を見てやりますと、こんな感じになっていまして、この膨らんだところ、これが海嶺といいます。海の山脈ですね。それから、ここのへこんだところ、これが海溝ですね。それから、僅かに窪んだところ、細長く窪んだところをトラフと呼びます。それから、ここに見えている、これは海山ですね。日本の周りにいっぱいありますけれども。それから、ここに崖があります。海底崖といいます。この崖、しょぼそうに見えますけど、これでも深さというか、崖の比高が1,300メートルあって、長さが400キロつながっています。それから深海平原があると。こういうのが海底地形のざーっとしたところです。
 実際に海山がどんなふうに見えるか。日本の周りの海山について見ていただきたいと思います。フィリピンの上空からフライバイで、小笠原の上を通りまして、太平洋プレートの上にある海山を見ています。ここから先、ちょっとレゾリューションが上がりますが、平頂海山、平らな頂上の海山というのがいっぱいあります。左側にある大きな崖崩れがあるのが、これ須田海山ですね。大体頂上の高さが1,100メーターから1,300メーターぐらいです。昔はこれは海面にひたひたと波が打ち寄せるサンゴ礁だったものが自分の重さで沈んでこうなったんです。今目の前に映っていますのが拓洋第五海山といいまして、これは山腹にコバルトリッチクラストが非常に豊富にへばりついている。しかも質のいいコバルトリッチクラストがへばりついているということで、最近注目を浴びています。また、周りはレアアース泥があるということでも知られております。
 これはどのぐらい大きいかということで富士山と比べてやりたいと思いますが、向こうにあるのが南鳥島ですね。富士山がどのぐらい大きいかというと、こんな形していますけども、海底地形は若干上下方向を拡張表示していますので、こんなふうになりますけども、圧倒的に富士山より大きい、というようなものが海底にぼこぼこあるということを御理解いただければと思います。
 日本の周り、海溝が並んでいまして、千島海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、それから日本から外れますけど、マリアナ海溝とあって、それから南海トラフがあって、というようなことで、南西諸島海溝ですね。これが地震を起こし、温泉も作ってくれるということであります。
 これはそれぞれプレートを形づくっているものですので、プレート境界を示していると思っていただければいいと思います。フィリピン海プレートは5センチとか2センチとか北のほうは速度が遅いんですけど、で、日本に押し寄せているんですけれども、これが押し寄せることで何が起きているかということです。もちろん地震があるということを皆さんお聞き及びと思いますけれども、載っている堆積物が日本に削り取られて、しゃぶしゃぶのあくを掬うような感じですかね、しわしわができています。このしわしわ、アクリーショナリープリズムといいますけども、こういうふうなものが見えるというのはプレートが沈み込んでいるという証左です。
 ここのところ変なものがありますね。これ、谷があるんですけど、これ不思議でして、こんなところになぜあるんだ。アクリーショナリープリズムを切っていますからね。それから上が大台ヶ原で、これ400メーターの標高ですから、どのぐらい海底の地形がダイナミックかというのを見ていただけると思います。
 この上流に行きますと、海底に蛇行したS字状の川みたいなのが見えます。これは一体どこから来ているんでしょうかね、ということなんですけども、これ、上流を辿っていってやりますと、富士山が見えてきました。先ほどのS蛇行のところの底質を調べた方がおられまして、富士川と同じ成分だということが分かっていまして、富士川から流れ込んで川がずっと延々下流に伸びているということです。
 先ほど変な谷が見えますねと申し上げたのはこれですが、ほかにもこんな変な地形というのはここにあって、これ何かなと思うわけですけれども、東海地震、東南海地震、南海地震の震源域の境目のところにあって、ずれる時期が違うからそこが弱くなってこんなになっているのかなと邪推したくもなりますね。これはここだけじゃなくて、ほかにも何だろうなと思うような地形があるわけです。
 防災という観点から、こういった詳細な海底地形というのは非常にいろんな参考になるし、好奇心をかき立てるもとになります。
 先ほど海嶺のお話いたしまして、6万5,000キロの一部をお目にかけますけども、今、星型が動いていますけども、これずるずる、これだけで5万キロぐらいでございます。この海嶺のような形をしたものが、国連海洋法条約がいうには、これが海洋海嶺であれば大陸棚というものをつくらない。海底海嶺であれば、その海嶺で350海里まで大陸棚としていい。それから、これは自然の高まりと言われるものであれば、2,500メーター等深線が続く限り、沿岸国の大陸棚として伸ばしていい、350海里を超えてもいい、こんなことが決まっています。
 ですので、海底地形情報は何のために要るか。まず国家主権、領海の基線であるとか、あるいは延長大陸棚であるとか、こんなものにお役に立ちます。
 それから、もちろん船が座礁しないようにするために、航海。特に最近船が大型化していますので、浅いところの精密な水深というのが非常に大事であります。
 それから海底電線。ケーブルですね。通信ケーブルとか、そういったものを敷設するときに海底の地形というのは非常に大事です。下手をすると切れちゃいますから。
 それから資源。石油とか、炭化水素資源、それから海底鉱物資源、さらに水産資源についても、地形が影響を与える。それから、地形を参考にして資源を取りに行けるという点で地形情報が重要であります。
 それから、防災ですね。これは先ほどちょっとありましたけれども、地震とか、海底火山とか、そういった災害、津波もそうですけども、海底地形情報というのは非常に有効であります。
 それから、気候変動、どんな関係があるんだいと思われるかもしれませんけれども、冷たい深層流というのが深海には流れていますけども、それが突然沸き上がってくる、ミキシングを起こすということがありますけれども、その引き金になっているのは海底の地形のラフネスであると言われております。そういった意味で、詳細な長期な気候モデルをつくるときに海底地形情報というのは重要であると言われております。
 それから、潜水艦がどこに潜っているんだいとか、あるいは変なところに機雷を置いているんじゃないかという意味で、安全保障の観点からもお役に立つ。
 もちろん海洋科学にもお役に立つというものであります。
 誰が調べているかということですけれども、国家主権とか航海については世界的に海図作成機関が主なプレーヤー、それから資源系に関しては、大体は資源に関係する人たちが海底調査会社に頼んでやってもらっている。
 それから、防災とか気候変動とかというと、これは海洋関係の研究所とか大学ということになろうかと思います。そういうところにデータがあるということです。
 国際的な枠組みとしましては、GEBCO(General Bathymetric Chart of the Oceans)というのが1903年から動いていまして、これはIHO、国際水路機関と、それからIOC、ユネスコの政府間海洋学委員会がペアレントオーガニゼーションということになっております。IHOもIOCも海底地形を扱っていると言いますけど、実際はGEBCOがやっているということであります。
 これ以外に国際的な枠組みとしましては、DOALOSです。国連法務局。ここは大陸棚申請に関係する地形情報をアーカイブしているのと、それから、ISA、国際海底機構は申請のあった海底地形情報を持っているということであります。
 今どれだけ分かっているかということなんですけども、Seabed2030というのが2017年に始まりましたけど、その前はGEBCOでは18%が分かっていると言っていました。今どう言っているかというと、Seabed2030は、もともと始めたときに6%であったものが20%になったと言っています。
 これはどういうことでしょうか。大体6とか20というのはどういうことなんでしょうか。これ、今右下に出てきていますのはGEBCOの海底地形ですけど、見たところ100%分かっているように見えます。何で6とか20という数字が出てくるんだという辺りを御説明したいと思います。
 これGEBCOの地形図ですけども、実際は30秒グリッドに切った四角の中の1点ずつの水深値の塊でできています。今のGEBCOは15秒ですけれども、Seabed2030が始まる前は30秒、大体900メートルのグリッドであったわけです。
 じゃあ、これ、20%ってどういうことかというと、これがGEBCOの図ですが、これを支えている水深値というのは、今色が出ている、黒とか緑とかオレンジとか青とか、これが水深値を測ったところです。白いところは何にもない、データがないところですね。これを穴埋めをしてこれをつくっているわけです。
 これ、ブラジル沖の例ですけども、ブラジル沖でも、紫色みたいな色に見えますかね、これが水深が実はないところで、こういう山とかというのは、データがないのに山の絵が描いていますけれども、何となく丸くぼやんとしている。ちゃんとデータがあるところはきっちりした形で地形が描かれていますけれども、何らかの方法でこういうのを推定しているということです。
 一体どうやって推定できるんだということでございますけれども、人工衛星を使っています。人工衛星で電波を発射して、海面の高さを測ることで、そこから推定をするということをやっています。海面が盛り上がっているところはどうなっているかということですけども、細かい説明を省略しちゃいますが、下に重たいものがあると盛り上がるということになっています。重たいものがあれば盛り上がるんですけども、そうすると、じゃあ、盛り上がっていれば必ず海山があるかというと、そんなことはなくて、地下に何か重たいものがあるから盛り上がっているということもあるかもしれません。
 それから、海底が実際に盛り上がっているんだけれども、その地下に例えば石油みたいな軽いものがあると、海底が盛り上がっていても海面がへこむということもありますので、海面高度を基に完璧に海底地形を把握するということは無理なんです。ただ、大分当たっています。
 これはオーストラリアの西側ですけれども、まあまあ割ときれいに地形図があります。この緑の枠は何かといいますと、MH370、マレーシア航空機が行方不明になったときに、この辺にあるんじゃないかと推定された場所です。GEBCOはここの地形データを出すように要請されて出したんですが、実は元のデータは赤とか黒のデータしかなくて、あとは人工衛星のデータで補完したり作ったりしたものです。レゾリューションが悪いので、実はお役に立たなかった。これを信用して持っていったら、実は行ったところはもっと深くて、全然調査測機がそこまで下ろせなかったみたいなことがありますので。
 そんなものなので、Satellite Altimetryというのを使うのは、大体推定はできるんですけども、アサンプションがあるので、絶対値は誤差があるということと、レゾリューションがよくないということと、見栄えをよくするとか、あるいは何もないところに何とかして推定したいときには役に立ちますが、シリアスな目的には使えません。ここが問題なんですね。
 逆に、地形が完璧に分かっているところでSatellite Altimetryがあると地下が重いか軽いかということが分かるというお役には立つということがございます。
 さっき6%、20%のお話いたしましたけども、これは海の中で、レッドと言って、ワイヤーに鉛をつけて海底の深さを直接測った時代の水深データです。これもまだ生きています。
 それから、これは音響測深という方法で測った水深点で、アナログ時代はこんなふうに適当な間隔、ある程度間隔を空けたう水深点が手に入ります。
 それから、今はマルチビームといって、これはデジタルでデータが取れるので、かなり面的にデータが取れます。これに30秒の枠をかぶせます。そうすると、枠の中にデータが1個でもあるところは色をつけるとこうなりますが、ここを称して、ここはデータがありますよというと、18%あるということであったんですね、2017年。
 ただ、実際Seabed2030では100メーターグリッドというのを考えています。900メーターの枠じゃなくて100メーターグリッドというのをかぶせてやってみますと、こうなります。こうすると、データがあるグリッドというのは全体の6%しかありませんということで、18%が6%になったのは詐欺でも何もなくて、グリッドの大きさ次第で理解の量が変わるということであります。
 6%なんか本当にひどい話だったので、どうしようかということで、日本財団の発意でもって、日本財団・GEBCOのSeabed2030というのが始まりました。目標は2030年で100メーターグリッド、沖合はそうはいかないので、400とかになりますけども、これはUN Decade of Ocean Science for Sustainable Development、先ほど道田先生から御紹介ございましたけども、そのアクションプログラムになっています。
 で、20%まで増えたということですね。4年で14%しか増えてないので、あとの6年でどうするんだいという話があるかもしれませんけども、今まで1903年にGEBCO始めてから2017年まで114年間で6%しか増えなかったものが、4年で14%増えていますから、そういう意味ではよく頑張っているかなと思います。
 既存データがいっぱいあります。出さなかったよとか、ちょっといろんな事情で出せなかったというのを掘り起こすということをやってきたわけです。今後は新たな技術とか新たなプラットフォームを使ってデータ量を飛躍的に増やすということが必要です。
 1つの問題は、これはSeabed2030を離れますけども、地形データの空間的な、必要なレゾリューションは何かということですね。これは非常に分からない。私がいろんな人に聞いたんですけど、みんな、レゾという話になると、考えたこともなくて、返事ができないというのが現状ではないかと思います。今までつくられたプロダクトのグリッドサイズを考えてみますと、1985年のETOPO5が10キロだった。実際には5分ですから9キロですか。それからGEBCOが、2キロ、1キロ、500メーターと下がって、2030年の最終成果が出たやつで、GEBCO2031というのが出るときには100メーターになっているということになっています。
 一方で、沿岸部の津波の挙動を把握するためには50メーターグリッドが欲しいと津波の先生からは伺っています。火星の表面は10メーターから50メーターのレゾリューションで分かっています。地球の陸地の表面は、SRTM、シャトルレーダートポグラフィーミッション、グローバル1というやつですね、これで30メーターグリッドで地形が分かっています。XPRIZE、シェル・オーシャンXPRIZEというコンペティッションの課題では、分解能5メーターで2,000メーターから4,000メーターの深さのところを測れというのがあって、5メーターグリッドをつくるということを日本財団GEBCOチームが達成しています。
 一方で津波の先生、湾内とか防波堤越えの挙動を予測するためには2メーターグリッドが必要だとおっしゃいます。月は50センチから1.5メーターで分かっているそうです。ハビタットの研究やっている先生は5ミリで欲しいとおっしゃる。
 地形は変わらんと思われているかもしれませんけど、時間的なレゾの問題でして、海底地滑りというのが起きると津波が起きたり海底電線が切れたりしますが、これは時間的に周期的に測ってあると見える部分もございます。活断層も同じです。
 それから海底に密漁の道具を置くとか、あるいは機雷を置くとかということを、定期的に地形を調査することによって検出できるということがございます。これ実際にアメリカがやっています。
 それからサンドウェーブというのがあります。海の中の砂の波なんですけれども、マラッカ海峡なんか十数メーターの高さのサンドウェーブができるんですが、2日も経つとなくなるということなので、場所を動くということなので、時間的なレゾをどうするかということも考えないといけないことであります。
 地形の最大の問題と言っていいのは、公開とか共有に関する問題で、高いお金をかけて取ったから共有したくないとか、あるいはそれを公開してもらうとセキュリティーの関係で問題だという御意見があるので、これはレゾリューションの問題なんですけども、どうするかというレゾリューションとの関係でここを議論しないといけないと思います。
 データを手に入れる方法というのはいろいろとあったわけですけれども、今新しく出てきているのは、ライダーとか、あるいは色ですね。航空写真、衛星写真で撮ったマルチカラー、マルチスペクトラムの色から水深を推定することで、浅海部の地形を押さえるという方法が出ております。さらに日本財団のDeSETのような新しい技術を開発しようという動きがあることは非常にありがたいことです。
 プラットフォームにつきましては、従来は調査船とか潜水艦というのがあったんですけど、今は、AUV、ROV、ASVというのがあって、例えば、これはASV、シェル・オーシャン・ディスカバリーXPRIZEと書いていますけれども、黄色いASVが後ろにオレンジ色のAUVを引っ張っていますけど、これで4,000メーターの深さまで水深を測りに行ったわけです。
 それからセイルドローンというのがあります。これ、ASVなんですけども、こんなのがあって、アメリカではサンフランシスコからハワイまでセイルドローンで海底地形を測ったということをやっています。
 それから、漂流ブイとか、あるいはアルゴフロートで水深データを得るというようなことも今始まっているようです。
 それと、Crowd Sourced Bathymetryというのがあります。これは何かというと、タンカーとか、クルーズ船とか、従来関係なかった人たちが測深機を持っている場合、そのデータを自動的にログしてもらって後で送ってもらう、あるいはリアルタイムで衛星経由で送ってもらうというようなことで、これで随分データが増えています。
 それから、どこか行くときに、今まで誰も測っていなかったところを寄り道して測ってくださいというので、これもなかなか有力な方法だと言われています。ほかにも方法はあるのかと思います。
 最後ですが、検討すべき事項というのがございます。まず、レゾリューションを特定する。そのためにはどういう人がどういうデータが欲しいと言っているかということをきちんと整理しないといけません。これは相変わらず答が出てないですね。GEBCOは取りあえず100メーターをつくる。だから、Seabed2030でそう言っていますが、それでいいのか悪いのかという話がございます。
 それから、どのデータを出せるのかということについても、これはいろんな人と相談をしないといけないんですが、これも全然されていません。
 我が国の守備範囲です。往々にして領海の中だけとか、EEZの中だけとなっちゃうんですけれども、実際、世界の海はほとんどが測られていませんので、日本がEEZだけ100点を取ってもしようがないところがございます。特に津波とか海底火山の噴火とかで日本が影響を受けることがありますので、だったらば測られてないところ測るべきではないかということがございます。
 それから、日本では、先ほど申し上げたDeSETのようなニューテクノロジーについて日本財団がリードをされていますけども、政府として一体どういう担い手があるのかということ、これよく分からないんですね。
 それから測深のゲームプレーヤーと、それから測深全体をまとめるリーダーが誰かというのもよく分からないです。海軍がリードを取っている国が多いんですけど、日本はそうじゃないので、これがどうなるのか。
 それと最後の問題は、アージェンシー。どのぐらい急いでやらないといけないのというところについてきちんとした答えがないと、いつまでたったって予算は来ないという問題があります。
 以上で発表を終わります。ありがとうございました。
【河村主査】  谷先生、どうもありがとうございました。ただいまのお話に御質問等ありましたらお願いします。
 廣川先生、お願いします。
【廣川委員】  いろんな問題提起、谷委員、ありがとうございました。
 先ほど空間利用というところと関係がありますけど、海域をどういうふうに利用するかによって全然レゾリューションなり調査方法なり変わってくると思います公海上に関しては、米軍だとか、ロシア軍とか、そういった軍の利用では相当精密に調べられているというふうなことも漏れ聞きますので、ただ、そういった情報というのは、国際的にそれを共有するというものにはならないわけでして、公海上に関してはどうするかという課題はあります。日本のEEZは非常に広いわけでございますので、例えば陸上でありますと、国土地理院が2万5,000分の1地形図は日本国内はそろっているわけですから、日本のEEZぐらいはそれぐらいの解像度基本マップとしてあっていいと思います
 それともう一つ、我々、資源を扱っている者としては、海底の地質の状況、岩盤なのか、砂なのか、土なのか、それぐらいのことは日本のEEZぐらいはそろっていてもいいと思います
 例えば、今マルチナロービームで測深するのが当たり前でございますので、その音圧を利用すれば、ある程度の予測できる地質マッピングも、我々もやっていますし、それから、コバルトリッチクラストの海山の情報にしても、船からのマルチナロービームの音圧情報で堆積物の有無を判断して、堆積物がないところがどこなのかというカバー率を出して、かなりこれは高精度に出ますし、それをもとに資源の推定をやるというような取組もやっています。
 そういった意味で、ここで何をするのかというところはあるにしても、日本のEEZぐらいは、そういった解像度の地形図及び海底の大まかな地質図があると、海域利用もいろんな形で進むのではないかと私は思っています。
 以上です。
【谷委員】  ありがとうございます。御指摘のとおりであります。日本の場合、海上保安庁は大昔、大陸棚の海の基本図みたいなのを作っていたんですね、縮尺50万分の1とかで。それで日本のEEZをカバーしたわけですけれども、当時のやり方なので、隙間を広く測って、その間は人間の知恵で、コンターで埋めるというやり方をしていました。
 今はそんなやり方はあまりよろしくないと思いますので、きちんと測らないといけません。大陸棚調査でもってきちっと測りましたから、8割ぐらいは、全部じゃないですけど、太平洋側の8割ぐらいは測られていると言っていいんですけれども、測り残しがあったり、エラーが多い海域があったりします。そういったところを測り直さないといけないんですけども、そういったミッションを与えないと海上保安庁は多分やれない。大陸棚というデッドラインが決まったミッションがあったのでやりましたけど、誰かが日本の国内のEEZはこのレゾリューションでちゃんと把握しましょうねと言ってくれないと海上保安庁も乗り出さないだろうと私は思います。
 それから、地形データについては、これは地質調査所はその昔、大量の地質図を作っておりました。あれも驚異的なんですけども、よくあれだけのデータでこんな立派な図が作れるなというような、いい仕事をされていたんですけれども、御指摘のように音圧で相当なところは分かります。音圧データをちゃんと解析できる形で今までのデータがアーカイブされていればいいんですけど、そうでもないので、残念ながら、一からでもないですけど、やり直す部分はあるかと思いますけども、そういったミッションが必要だということであれば、それが合意されれば仕事は動くのかなと思います。
 御指摘のように、国内、取りあえず日本の持っているEEZの中、あるいは大陸棚の中の基盤的な情報、深さだとか表面の地質というのを、ある一定のレゾリューション、これ、ある一定のというのが問題なんですけど、ある一定のレゾリューションで測るということは、国が持っている土地ですから、国が測るというのは当然じゃないかなという気がいたします。
 あと、何でしたっけ。それだけでしたね。お答えしたことになりますか。
【廣川委員】  ありがとうございました。やはり陸上であれば、地形図は国土地理院、それから地質図に関しては、産総研がやっていますので、国の基本的なマップとして、海底地形あるいは海底地質図というのは国がやるべきじゃないかと私は思います。
【河村主査】  ありがとうございました。川辺先生、お願いします。
【川辺委員】  谷先生、非常に面白い御発表を、ありがとうございました。基本的な質問ですけれども、こういった海底の地形のデータというのは日本国内ではどちらが取りまとめをされておられるんでしょうか。その辺がよく分からなかったので、教えていただければと思いました。
【谷委員】  私もよく分かってないんです。こんなこと言っちゃいけないんですけれども、海上保安庁の海洋情報部がデータを持っていまして、そこに海の相談室というところがあって、そこの窓口がなっていて、データをくれというとデータが出てくるんですけど、どのレゾリューションのデータを出しているのかということについては承知をしておりません。
 今、パブリックフリーというか、誰でも手に入るのは、変な話ですけども、日本水路協会というところが昔作った、何だっけな、J-EGG500とかいう、500メーターグリッドのデータがあります。これが有料だと思うんですけど、アベイラブルですね。
 それから、有料じゃないデータとしては、GEBCOのデータは、今は15秒グリットですから、450メーターグリッドで手に入ります。これは無料です。
 ですから、日本の中に詳細な地形データがあるところあるんじゃないかということなんすけども、実際、恐らくですが、例えば海上保安庁にここのもっと詳細なデータというと、氏素性がちゃんと分かっている人であれば、目的をきちっと制限かけて、よそに配らないという条件が入ってデータが出てくるんじゃないかと思いますが、すいません、ちょっとそこはオーソリティでも返事はできないです。
【川辺委員】  分かりました。どうもありがとうございます。
【河村主査】  じゃあ、阪口さん、お願いします。
【阪口委員】  谷さん、御無沙汰はしてないですけど、どうもありがとうございます。
 さっき廣川さんの質問に対して、国が整備するべきだという答がありましたけども、地上だと、グーグルとかが、家とか、のレベルのやつを、航空写真、衛星写真等、それからあと、自分で車くるくる走らせて、人の家の、私の家の庭が荒れているとか何か、そんなことまで公開してくれているんですけども、必ずしも本当に有益な情報を、公益な情報をまとめるのは国とは限らないかも分からないので、まずそこを谷さんがどうお考えかということが1つと、それからもう一つ全然違う質問なんですけども、海底を走るビークルとかって、いつも深さとか、それから位置情報を必死で出しながら、ぎりぎりの世界で走っていて、どこか行くとロストしてしまいますよね。
 逆に、タクシーの運転手さん、最近はカーナビ見ちゃっていますけども、ベテランの昔のタクシーの運転手は景色とか全部覚えているから、何も見ないで、あそこ行ってと言ったらしゃーっと行ってくれたじゃないですか。そうすると、海底近辺を走るアンダーウォータービークルが、自分の位置とかを把握しないで、目的のとこまで行って帰ってくるという、海底の景色とか、サンドウェーブとかが変わるのはあるということはよく分かっていますけども、どれぐらいの解像度があればビークルは自分の位置なんか一々調べないで、景色だけ見ながらシャカシャカ行ってくれるようになるかという2つの質問です。
【谷委員】  ありがとうございました。1個目の質問ですけど、グーグルはどこからお金を取っているかという話ですよね。お金が入らんのに、グーグル、ストリートビューをつくらない。いろんな下心はいっぱいあってやっていると思うんですけども、海でそういう話があり得るのかと。いや逆に、ああいうグーグルのストリートビューみたいなやつを誰か民間の人がやって、これ止める方法がないので、誰かがやったときに、むしろ恐ろしい気がするんですけどね。セキュリティーという点ではね。できなくないんです。できなくなくて、特に水路業務法という法律があって、国とか地方公共団体にお金が入っていると、一定のブレーキがかかっていて、精度をこうしなさいとか、何だかんだというのがあるんですけども、民間の人が海の調査をするということに関しては全然ブレーキがかかっていませんので、好き放題できちゃいます。ですから、そういうイニシアチブがどこかにあったらできるということです。
 それから、アンダーウォータービークルが自分の位置をというのは、やっぱり何か目印がないと駄目なので、そうすると、特にのっぺりした海底なんかだと、かなり詳細な画像的な情報がないと多分駄目だと思うんですね。画像的な情報を誰かが、例えば政府がつくってあげて、5センチとか2センチとかという大きさの全ての模様が分かるような情報をつくって、そいつをAUVが体の中に持っていて、パターンマッチングでここだということを認識すれば、よくなると思いますけど、これはかなりのデータ量になるんじゃないでしょうかね。と思います。その方法はあると思います。
 ドップラーログを使ってある程度の場所が決まりますから、だから最初の投入点とドップラーログとそれから今おっしゃったようなやり方でビジュアルなマッチングをかけることでナビゲーションができるんだと思います。誰もやっていませんけど。
【阪口委員】  ありがとうございます。
【河村主査】  須賀さん、お願いします。
【須賀委員】  須賀です。谷さん、どうも非常に興味深いお話ありがとうございました。
 これ、質問ではなくて、コメントといいますか、情報なんですけども、アルゴフロートで水深を測るというお話がありましたが、あれにつきまして、IHOの事務局長が昨年9月に実施したBGCアルゴとディープアルゴのミーティングといいますか、広くいろんなコミュニティーに呼びかけて利用・活用を広げるということもテーマの1つだったミーティングを開いた際に、IHOの事務局長が発表してくれまして、それで実はオーストラリアのグループと、オーストラリアのアルゴと話をして、着底したときのデータですね、着底データ、アルゴフロートが着底したという情報、それを使ってみるという試みを始めたという紹介だったんですね。これ非常に、今ディープアルゴということで。普通のアルゴフロートは、2,000メートル漂流で、あまり浅いところに行かないのが本当のセッティングなので、着底はほとんどしないんですけども、時々は着底します。2,000メートルの通常のフロートも。でも、これからやろうと、広げようとしているディープアルゴは海底ぎりぎりまで測りますので、ほとんどが、海底のセンサーをつけて、本当海底のぎりぎりまで測るというフロートが多いんですね。
 そうすると、その情報は非常に測深のデータとしては鉛直解像度がすばらしいと。ただ、水平解像度はフロートが浮上したときに衛星で位置決めをしますので、浮上してくる間に動いた分だけは誤差になるんですね。だから、水平解像度はチャレンジングだけど、鉛直解像度がすばらしいので、ぜひこれを利用したいという、そういう申入れといいますか、そういう提案があって、それでアルゴとしても、やはりアルゴの利活用ということを考えたときに、そういう使い方もあったのかとみんな驚いたんですけども、アルゴとしてもタスクチームをつくって、ディープアルゴのグループにタスクチームをつくって、水深の情報を利用するためにどういうデータをアルゴのミッションの中に組み入れていけばいいか、どういう情報を取るような、そういうプロトコルを整えればいいかというようなことを今相談を始めているところです。
 ということで、そういう協力といいますか、全く今まで関係ないと思っていたようなところでそういう連携ができるというのが、これが1つには海洋科学の10年のような、ああいう動きの中でそういうことを広げていこう、アルゴも利活用を広げていこうということを積極的にやり始めていますので、これは比較的軽いコスト、ほとんど追加の費用なしでできることということで取り組んでいるところであります。
 ということで、ちょっと情報でした。
【谷委員】  ありがとうございます。アルゴのアクシデンタルランディングで水深が分かるよというのは数年前からGEBCOの世界の中で共有されていまして、だんだんその話が広がっていって、今、アルゴと直接IHOがお話しするようなことになって、大変ありがたいことだと思います。
 場所も、沈み始めと上がってくるところの間の真ん中だったら、まあまあそんなに悪くないかなみたいなことで、あと、数も4,000個あって、20日に1回だと思っちゃえば、1日に200個はランディングしてくれるので、全部やってくれれば、そうすると、それは非常にありがたいなと思います。特に人が行かないところで上がったり下がったりしてくれています。ありがとうございます。
【須賀委員】  確実にランディングに近いことするのはディープアルゴだけです。ですから、1,200台ぐらいということになります。アクシデンタルのほうは、分かりません、予測できませんけども。という数になります。
【河村主査】  じゃあ、次、河野健さん、お願いします。
【河野(健)委員】  海洋研究開発機構の河野です。谷さん、発表ありがとうございました。ちょっと質問ではなくて、感想というか、自己批判かもしれません。
 最後のスライドがやっぱり印象的で、何のために何をしなければいけなくてということをきちんと決めないと、今、海底地形は、オーシャンディケイドの中でも言われているので測らなきゃいけない。むやみやたらに測ったりとか、もっと測らなきゃいけないと言って、目標のはっきりしない機器開発をしたりとかどうしてもしがちなので、やはり国としてでも、先ほど御発言があった資源開発でもいいので、はっきりした裨益者とはっきりしたターゲットを決めた上で、海底地形をいつまでにこういうことしなきゃいけないんだというビジョンを、大きく言えば、国としても持たないと、周辺でいろんなことがばらばらに起こるだけで、これ以上まとまったことにならないんじゃないのかなと。で、それはちょっと不幸なんだなという気がいたしました。感想でした。
【谷委員】  ありがとうございます。全く同感でございます。私、何かこんな手探りなこと、勝手なこと言って申し訳ないんですけれども、海上保安庁にしても何かのミッションを与えられなきゃやれないということがありますし、ところが、ミッションを与えるためには、一体いつまでにやるんだ、それからレゾどうなんだという、それが明確じゃないと、アージェンシーが見えないですね。
 ですから、そういったところ、誰が考えるかというと、このグループじゃないかと思うところはあります。御指摘のとおりでございます。ありがとうございます。
【河村主査】  見延さん、お願いします。
【見延委員】  ありがとうございました。谷委員、どうも貴重なお話ありがとうございました。これも質問というより皆さんへのコメントになるかと思いますが。
 谷先生のお話の中でセイルドローンというのが出てまいりまして、セイルドローンは、大気・海洋の観測ではしばらく前から使われて、海底地形の測定にも使えるということを初めて知ったんですけれど、セイルドローンの前にあったのが、その1つ前の話にございました、小原先生の話にありましたウェーブグライダー。この2つは、自動観測装置、海面を移動する自動観測装置ですね。どちらも日本は自前の技術を持っていないんですけれど、これから明らかにこういう自動観測装置がゲームチェンジャーとなっていくと思います。
 船舶観測、衛星観測、そしてケーブルネットワーク観測に次ぐ、こういう自動観測装置の時代になると思います。特に海洋の表面で観測できるということですと、海の中にはアルゴとかシーグライダーというのもあるんですけど、表面で観測できるということになりますと、今度は大気、例えば水蒸気観測、そういうことにも重要になってきますので、利用は一気に広がるんじゃないかと思います。
 そういうところで、日本として、こういうような自動観測のプラットフォームを、海外が造ったものだけを使わせてもらうということでいいのか、あるいは自分たちでもやはり開発しなきゃならないのかということを考えなきゃいけないんじゃないかなと思いました。
 つい先日、ノルウェーのほうではセイルドローンに相当する機械をもう既に造ったという、そういう情報が参りまして、ちゃんと確認していないんですけれど、ノルウェーで造れるんだったら日本でも造れるんじゃないかと思いました。
 こういうことも皆さんと今後考えていけれたらよろしいんじゃないかと思って発言させていただきました。以上です。
【谷委員】  ありがとうございます。私、最後のスライドでニューテクノロジーの担い手と申し上げましたけど、まさにそんなことで、こういったことを考えないと日本に明日はないのかなと、ちょっと偉そうなこと言いますけど、思っております。
 残念ながら、本当に残念ながら、シーグライダーにしても、アルゴフロートみたいなフロートにしても、セイルドローンもそうですけども、みんなアイデアは向こうから来ていて、日本は、じゃあといって、似たようなものを造ることあるかもしれませんけれども、全然追っついていなくて、まず発想のところを何とかしないと。そこら辺がないと、リード取りようがないのかなと思います。
 セイルドローンは、アメリカの海底地形を測っているボスみたいな大学と手を組んで、サンフランシスコからホノルルまでマルチビームをつけて測るということをやりました。それはお金がどこから出たか聞いてないんです。恐らくNSFだと思いますけれども。そのミッションのためにセイルドローン社がでかいやつを造ったんですね。マルチビームがつくような、すごくでかいやつを造ったんですけども、きちんと成功したということです。ウェーブグライダーは結構不安定で、ひっくり返ってケーブルが切れちゃったりなんかするんですけども、セイルドローンはそんなことはなかったようです。
 ですので、そういう本当の使い勝手のよさも含めたものを日本発でアイデアを出していければなと思います。ありがとうございます。
【見延委員】  ありがとうございます。今、谷先生がおっしゃったアルゴ、セイルドローン、ウェーブグライダー、シーグライダーの中で日本で造っているのは確かディープアルゴだけですね。ほかは全部輸入で、あるいは運航も含めて向こうにお願いしているぐらいだったと思います。非常に日本の技術が難しい時代になっている。もうちょっと頑張らなきゃいけないんじゃないかなと思います。
 以上です。
【河村主査】  阪口さん、お願いします。
【阪口委員】  今、セイルドローンの話出て、河野健さんが説明すればいいのかなとは思うんですけども、ちょっと前に道田先生が会長をされている海洋科学技術学会ですか。学会ですよね。
【道田教授】  海洋調査技術学会。
【阪口委員】  そのとき、谷さんも聞いていただいたんですが、JAMSTECでは2019年、2020年にセイルドローンを使った観測を実際に行ったんですが、大半がグアムからしか出せないと。日本の事情で無人船を沿岸から出すということは絶対に許さないということで、なぜか日本の観測をするためにグアムから出すという。途中、台風やら黒潮でセイルドローンさんは4機中3機がお亡くなりになったという、いろいろな事件がありまして、あとバンダリズムもアジアではかなり怪しいんじゃないかということで、結局セイルドローン社から見放されて、今、どれだけお金出すと言ってもアメリカのセイルドローン社は日本で使うことを、別に許さないというわけじゃないんですけども、商売にならないからやりませんよという状況です。
 JAMSTECは、今、オーストラリアの、セイルドローンを少し改良した、台風でひっくり返っても立ち直るタイプの、もう少し沿岸に近いものしか使えないという状況もあるんですが、そういうやつに切り替えているんですが、どのみち、やっぱり見延先生がおっしゃられたように、とっとと造れよと。2011年ぐらいから何度も、JAMSTECに私在籍していたときから、AUV買ってくるんじゃなくて、セイルドローンみたいなものを造れと一生懸命言ったんですが、どこも、文部科学省もあまりそこにお金を投じなかった。それから、その重要性に気づいてなかったということもありましたので、ぜひこの場でその重要性を皆さんが共有していただいて、およそのやり方というのは、ノウハウとかも分かっているわけなので、1台買ってきて、分解して、もう1回組み立てて返すぐらいの勢いでやっぱり日本もやっていかないと、とてもじゃないですけども追いつかないので、ぜひこの場で、声を束ねて推進するようにお願いいたします。
【河村主査】  河野さん、さっき1回手挙がっていましたけど、いいですか。
【河野(健)委員】  私の前任の理事が全てをおっしゃってくださったので結構よいと思いますけど、実は水中グライダーもJAMSTECの中で試作したことはあります。それからウェーブグライダーについては、物は買ってきていますけど、運用は全部こちらでやらなければいけないので、そういった開発はあり得ます。違うセンサーを載せるとか。
 ということで、あと、道田先生は御存じかもしれませんが、セイルドローン類似の装置で日本発のものが実はあって、かんちゃんという名前ですけども、東海大学がやったやつがあって、それまだ動いているそうですので、可能性はあるんだろうなとは思います。
 ただ、無人探査船、無人船を動かすためには何キロ以内でずっとついてないといけないみたいなルールのほうがむしろ難しい、クリアするのが難しいかもしれません。技術の萌芽はあるんですけど、産業化なり商業化に結びついていかないとなかなか先が続かないというのがこれまでの風潮でしたので、JAMSTECとしての難点はそこにあります。ディープアルゴも開発していますけど、商業化、類似のことまで行きましたけど、そこから先の伸びかないと、やっぱり資金的に続かなくて、それがデファクトスタンダードになるとかグローバルな展開を示すということになかなかならないというところがちょっと問題かもしれません。
 以上です。
【河村主査】  ありがとうございました。海底地形調査についての問題点が見えてきたと思いますけれども、谷さん、何かまたありますか。
【谷委員】  先ほど見延先生がおっしゃっていただいたことで、コメントし忘れましたけれども、無人というのはすごく大事だと思うんですね。もちろん貨物船とか何とかでも無人化というのは言われていますけども、私自身も何十年前に観測船に乗っていた時代がありまして、このデータ調査だけのために35人が働かないといけないというのは、うーんというところがありました。大体のところはできるわけですから、そこを、海洋科学の観点からいうと、海洋科学の観測密度を上げるために、無人船、無人のプラットフォーム、私、さっきプラットフォームの話をちょっといたしましたけど、無人のプラットフォーム、どんな形であるにせよ、そういったものについて方向性をつくっていくということが大事なんだろうなと思います。役人やっていましたので、規制側の論理というのも理解しているつもりですけども、それを含めて押しやるだけの理屈をつくっていけば、それは乗り越えられるのかなと思っています。ありがとうございます。
【河村主査】  どうもありがとうございました。海底調査の話題についてはちょっとここで一旦終わりにしまして、この後、海洋科学技術の今後の在り方について意見交換を行いたいと思います。今回は、第1回の委員会でヒアリング及び意見交換を行いました総合知、それから市民参加について、事務局のほうで議論をおまとめとなる骨子案というのを作成していただいているということですので、まずそちらについてお示しいただいて、御意見いただきたいと思います。事務局、お願いいたします。
【事務局】  事務局です。河村主査、ありがとうございます。資料4の説明をこれからしたいと思っているんですが、その前に今後の議論の進め方について簡単に御説明をさせていただきたいと思います。資料5が今後の議論の前提になりますので、先に資料5について御説明させていただきます。その後、資料4で総合知、市民参加型に関しまして、第1回の議論を踏まえた資料を御用意させていただきましたので、簡単に説明いたします。
 まず資料5を御覧いただければと思います。海洋科学技術委員会の検討の進め方について、これ毎回出させていただいている資料になっておりまして、今、2ポツのところで「検討の進め方」というので現時点でのイメージ、記載させていただいております。
 おめくりいただきまして2枚目になります。第4回以降の議論の進め方ですが、これまで、年度末までに議論をまとめて、3月に開催を今調整させていただいております海洋開発分科会で審議結果を報告するという形を考えておりました。ただ、これまでの議論において先生方から多くの御意見いただいたり、事務局の準備不足等もあり、変更させていただきたいと思っております。
 第4回ですが、2月に、本日、安全・安心な社会の構築のためのヒアリングとして実施できませんでした海底資源探査、海底地形に関してヒアリングをぜひ行いたいと思っております。それと同時に、第1回から第3回の議論のまとめとしまして、議論のまとめのイメージとしてこれから資料4で御説明させていただくようなことを議論させていただきたいと思っています。
 この議論の結果を踏まえまして、3月に今開催を検討しております海洋開発分科会で検討経過を報告するとともに、今後検討が必要な事項について親委員会である分科会のほうからも意見聴取をしたいと思っております。
 この結果を踏まえまして、令和4年度に、第5回以降として、本来実施予定でした海洋に関するデータの共有・収集・整理、あとは他のデータとの連携の在り方についてのヒアリングを実施するとともに、海洋開発分科会や今回の委員会、次回委員会の議論のまとめを踏まえて、不足していると考えられる論点についてヒアリング等の検討をしていくといった形で今後議論を進めさせていただければと考えております。
その上で資料4について御説明させていただきます。こちらの資料、今、題名としては「検討の論点に対する議論のまとめ イメージ案」ということで記載させていただいております。
 Ⅰのところは、検討の背景とか、そういったものを議論のまとめとして書きたいなというところで書かせていただいておりまして、Ⅱの「今後の海洋科学技術の在り方について」については、先ほど説明させていただきました資料5の3ポツの検討の論点の重要事項の部分を現在羅列させていただいております。
 今回は、この中で第1回で議論していただきました海洋分野における総合知及び市民参加型の取組の在り方、こういうところを例にしまして、こういった形で取りまとめの骨子を作成してはどうかということで御説明をさせていただきます。
 海洋分野における総合知及び市民参加型の取組の在り方については、今画面共有させていただいているとおり、論点の例としては1から4のものを挙げさせていただいておりました。これに関しまして、川辺先生、あと、AORIの牧野先生からヒアリングを、話題提供していただきまして、委員の先生の皆様方と意見交換をしていただきました。その結果を取りまとめの骨子としてのイメージとして事務局のほうで簡単にまとめさせていただきましたので、簡単に御紹介します。
 1として、まず、海洋の関係者の多様化の必要性として、まず総合知が、科学の知のほかに地域の知であったり経験知などの幅広い分野の知見というものが統合されたものである。文理融合というだけではなく、より幅広い分野での協働が必要不可欠だということを定義しました。
 また、海洋の持続可能な保全や利用に係る問題解決のため、多様な人々の対話とそれを踏まえた知の創出と定義することが可能と記載しました。
 また、国連海洋科学の10年おいても、多種多様なステークホルダーの参加による変革的海洋科学を実現するということが規定されていて、我が国もこういった取組を促進する必要性があると記載しました。
 2.の総合知の創出・活用や市民参加型の取組で期待される効果として考えられるものとしては、まず、期待される領域は今後拡大していくと予想される一方、特に持続可能に関わる問題に対して有効な解決手段としての期待が大きいのではないか。
 また、多様なステークホルダーが参画することによって、プロジェクトの適切な問題定義やゴール設定、そこに至るまでの適切な道筋の提示というものが期待されると記載しました。
 さらに、市民の当事者意識の醸成や、海洋に関するデータ・情報収集等に関する取組の持続性や裾野拡大というところにも市民参加型であったり総合知というのが期待できるということが示されているのかなと思っております。
 また、これ、牧野先生だと思うんですけど、現場の人々からの学びも期待することによって新しいイノベーションの種につながる可能性というのも指摘があったと承知しております。
 また、3として、総合知の創出・活用や市民参加型の取組を推進するために必要な方策としては、多様なステークホルダーが参加するミッション志向型の取組が必要であるとまずは記載しました。
 また、多様なステークホルダー間でのサイエンスコミュニケーション、ファシリテーション等を実施して、取組を適切にマネジメントできるような人材など、多様な人材というのがこの取組を推進するためには必要であるという指摘があったと考えております。さらに、委員の先生方の御議論を踏まえ、メソドロジーの研究、手法の開発というキーワードがあったと思うんですけれども、こういった活動を持続的かつ自律的に広めていくための手法の体系化、継承や合意形成に関わる研究というのが必要だということも記載しました。
 このような形で、一例として市民参加型、総合知のところの取りまとめの骨子を作成させていただきました。
 本日はこの取りまとめの骨子、こういった形で取りまとめることの方向性について御意見いただくとともに、あと、総合知の部分について、事務局の今まとめました取りまとめの骨子に関して不足している点等ありましたら委員の先生から御意見いただければと考えております。
 事務局からは以上です。
【河村主査】  廣瀬さん、ありがとうございました。ただいまの御説明いただいた資料について御意見いただけたらと思います。どなたからでも結構です。いかがでしょうか。
 廣瀬さん、これはあれですかね、今の取りまとめ方についての御意見、それから、総合知、あるいは市民参加ということについての内容的なこと、両方いいですかね。
【事務局】  はい。初めに取りまとめ方に関してもし御意見があればいただいて、それでよろしければ、骨子案に関して御意見いただけるといいかなとは思っているんですけども、どちらから開始しても構いません。
【河村主査】  取りまとめの方向性というのは、今、総合知とか市民参加ということでまとめていただいていますけども、それぞれこのテーマごとにまとめていくということですよね。
【事務局】  はい。次回は恐らくここにプラスアルファをして気候変動と海洋性物、あと、安全・安心の部分に関して3回までで議論できたところを事務局としては追記をするということを考えております。
【河村主査】  分かりました。いかがでしょうか。川辺先生、お願いします。
【川辺委員】  まとめ方自体はこれでよろしいのかなと思っております。ただ、今、さっと見せていただいて、1つだけ気になったところがございます。総合知とか、多様な人たちの参加とかというふうにあるわけなんですけれども、これは確かにそうなんだけれども、なぜそれが必要なのかというところを自然科学者の方たちはどれぐらい納得されるのかなというのが私自身知りたいところです。お話しさせていただきましたが、理系の研究者の方たちは、うん? というふうに思われたところ多いんじゃないかなという気もしていまして、その辺りをもし御意見いただければと思います。
 なぜ総合知というものが必要なのかというところと、もう一つ、じゃあ、どのようにして総合知というものを科学の追求において実現していくのかというところ、その2点でございます。
 
【河村主査】  今の川辺先生の御提議について、どなたか御意見ある方お願いいたします。じゃあ、見延先生、お願いします。
【見延委員】  川辺先生、御意見、御質問ありがとうございました。私、この中ではかなり、外洋と地球全体とか太平洋全体とかいう言葉でやっている、総合知から少し遠いほうじゃないかと思うので、そういう者がどういうふうに感じるかということをご参考までにお伝えしようと思いました。
 総合知、特に市民参加ということになると、どうしても市民がステークホルダーであると自分たちが認識して、そこに参加してくれるようなトピックじゃないと難しいと思います。例えば黒潮が気候変動でどういうふうに太平洋全体で変わってきますかみたいな話だと、なかなか市民の人が、それって俺たち、何で時間使ってその議論に参加しなきゃいけないのみたいなことになっちゃうんじゃないかと思いますね。
 一方で、黒潮とか親潮が影響して、例えば北海道では最近ブリがすごい捕れるようになっているんですけど、このような話になると、じゃあ、気候変動がこの地域社会にどういう影響をもたらすかということで大変関心を持ってもらえるのかなと思います。
 したがって、市民の参加、あるいは総合知に関わっていく、そういう方々が関わってくれるトピックというのが、理系側の海洋全体の研究の中だと、かなり濃淡、グラデーションがあって存在しているように感じます。
 ですから、全部というのは無理なんですけれど、適切な話題については、総合知を育み、そういう方と議論していくというのは非常に重要だろうと考えております。
 以上です。
【川辺委員】  ありがとうございます。
【河村主査】  じゃあ、阪口さん、お願いします。
【阪口委員】  私は理系に40年ぐらいいて、今、文系の組織にいるんですけども、海はやっぱり広過ぎるので、科学者だけが全部を理解するというのは到底無理なことで、先ほどちょうど谷先生が、Crowd Sourced Bathymetryという単語で説明されたんですけども、今見延先生が言われたことのちょっと真逆の方向で考えたときに、別に科学者でない方が、例えば、これは谷さんの話の受け売りですけども、魚探を使っている漁業者は、魚探のデータを時々刻々捨てていってしまうんだけども、あの魚探のデータを記録してくれると、少なくとも最後港に入るときに、魚探というか、水深の測定装置のスイッチ入れたまま港に入ってくれて、そのデータを残してくれれば、浅場の海底地形は物すごい数の船がどんどん取ってくれるとか、要するに、市民はそんなものは全く価値がないと思っているものを、ちょっとしたインセンティブを与えるなり何なりすることで、データとして残してもらうだけで、実はすごい価値のあるデータになるということは海に関しては結構たくさんあると思うんですね。
 なので、本当にヴァイスヴァーサで、市民は全然そんなことに価値を求めていなかったことに価値がある。それをデータとしてちょっと送信してくれるだけで、何かインセンティブを出す価値のあるデータが取れるということもあるので、やっぱり海に関しては、科学者だけでのタックルでは到底、先ほどの谷さんの説明どおり、あと100年ぐらいたったってなかなか、例えば海底地形でもそれぐらいのことがあるので、ステークホルダーが価値を感じていないことにも価値をつくって集めていく、協力してもらうというのは僕はすごく大事なことかなと思っているので、うまく提言をまとめていくことはすごく、実はそれをやることが科学で求めていることをより広く早く知ることにつながるのではないかと私は思います。
【川辺委員】  ありがとうございます。今のお話だと、科学の知というところに市民の科学というものを入れていくという、そういう感じでございますね。多分経験知とかというのとはちょっと違う、新たな科学というものをまたつくっていくということなんだろうなと思って伺いました。
【河村主査】  須賀先生、お願いします。
【須賀委員】  川辺先生、御質問ありがとうございます。私も見延委員と同じように、総合知とか市民参加から遠いところの外洋のアルゴフロートみたいなのをやっていると、そういうことだと思うんですが、見延委員がおっしゃったようなことも日頃感じていました。つまり、例えばアルゴなんかに関して市民講演とかすると、いろいろ聞かれるんですね。それについて答えようとすると、どうしても私のやっていることだけでは答えられなくて、多分そこは、それをもう一つほかのものと組み合せた総合知というか、そういう形にして提示していかないと、ある意味興味を持ってもらえない、あるいは役に立たないというか、そういうことかなと思います。
 ですから、そういう意味で、実際に市民の人が、あるいはいろんな産業に関わる人とかが関心を持っていることに答えようと思ったときには、総合知というのは非常に重要だというか、そっちのテーマに寄せていくというか、実際の課題とか何かの解決につながるように寄せていくという分野ももちろんあると思います。それはまさにそのとおりだと。
 という意味で、私は総合知というのは重要だと思いますし、もう一つ、これは全く逆といいますか、海の真ん中の水温の部分がこうなっているなんていうことは普通の人には全く何の関係もないと思っていると思うんですが、多くの人は、だけど、実はそれは我々の環境といいますか、これの維持と物すごく関係しているんだということを分かるというか、市民一人一人がもしそういうことを納得して、地球環境の成り立ちというのはこうなっていて、なるほどそうなのかと。今朝起きたらこういう気温だったのは、あそこの海がこういう温度であることと関係があるのかと。そういうふうにみんながもし思うような世界になったとしたら全然違うと思うんですね。
 それも、経験と科学の知識を組み合わせるというか、総合知ということで、人間が生きていく上の基本的な認識というか、そのレベルを変えていくという意味と捉えると、総合知というのは非常に広がりがあるというか、我々のやっていることを純粋科学と言うにはちょっと純粋でもないと思うんですが、地球科学でやっているような、海洋科学でやっているようなことというのは、市民の認識の土台を変えていくという、そういうことを総合知ということで目指していくというのがあるかなと感じています。
 ですから、私はどちらかというと、年取ったせいかもしれませんけど、総合知というものに対して非常にポジティブな印象を持っています。
【川辺委員】  ありがとうございます。
【河村主査】  ありがとうございます。広い意味で海洋リテラシーの向上ということですよね。河野健先生、引き続きお願いします。
【河野(健)委員】  ありがとうございます。海洋研究開発機構の河野です。川辺先生からの質問に答える形になるかどうかちょっと分からないんですけれども、この取りまとめの骨子を見ると、皆さんの意見も反映すると、総合知とはいえ、それは科学の知であって、例えば経験であるとか地域の知などは科学の知のためのプローブとして使うというような方向に聞こえていて、恐らく、よく言われるindigenous knowledgeとか、そういったのとはちょっと違う趣の取りまとめの方向にこれだとなっていくのかなと思います。
 例えば阪口所長がおっしゃったやつも、我々が必要としているデータ、実は市民の方々がちょっとのことで取れて、それには価値があるんですよということを分かっていただければ市民が参加できるということなんですけど、その結果得られるものは科学の知であって、恐らく地域の方の納得は得られるような気がしますけども、伝統的な知であったり経験の知であったり、そういうこととはちょっと離れますよね。
 なので、ここ、海洋科学なので、恐らく総合知とはいえ科学を軸にまとめていくという方向なのかなという感じを得ました。それは非常に理系の科学者にとって受け入れやすいことではあります。
 ただ、例えば北極とか行くと、現地の方には受け入れられにくい方向でもありますけども、ここから出す、発信する日本の総合知の考え方や推進の方法としては受け入れやすいものになると思います。
【川辺委員】  ありがとうございます。
【河村主査】  じゃあ、引き続いて谷先生、お願いします。
【谷委員】  先ほど阪口委員から御紹介いただいたので、よろしければこういうことがあるよということを御紹介したいと思います。これ、何かというと、漁船が測った海底地形データですね。漁船が出漁したときのデータを集めてもらう民間会社があって、そのデータで海底地形図を作った。それを漁船にフィードバックしますよという話なんですけども、レゾリューションを落としたやつをGEBCOがもらっています。こんなふうにふだん測量に行けないところで非常に密にデータが取れるので、既存のGEBCOに比べてもこれははるかにレゾリューションが高いんですね。たかが漁船の魚探なんです。たかがと言ってはいかんけど、漁船の魚探なんですが、例えばここの部分なんかですと、元のデータがこれだったところに漁船のデータを足してやると、こんなふうに非常に詳細になる。海底の流れを物語るようなのが見える。このレゾリューションが取れるんですね。
 これはこういうデータをつくって売ろうというか、漁民とのやり取りをして漁業用の地形図を作ろうという会社のイニシアチブにすぎないんですけれども、実際に漁業者がこれをやるとこんなことが分かるよということをサイエンスの世界から理解してもらって興味を抱いてもらえれば、参加してもらえる。それは科学に参加するんじゃなくて、データ取得に参加するということなんですけども、非常にパワーになるんじゃないかなと思います。これ、無限にあるんですけど、どんどんレゾが高まっていくということ、水路業界とか、あるいは海洋関係の研究者、学者じゃここまでは全然できなかったことができるということはございます。
 以上です。
【河村主査】  ありがとうございました。道田さん、お願いします。
【道田教授】  ありがとうございます。私、委員じゃないんですけど、発言してもいいということだったので一言発言をいたします。
 先ほどから議論になっている総合知とか市民参加型の活動とかいう話がありまして、それをうまく科学に取り入れて、科学を進める。そうすることによって市民の参加意識を高める。それはそれで1つの方向なので、大変結構なんですけど、河野さんとかもお気づきでしょうが、国連海洋科学の10年の推進において言われている総合知であるとかindigenous knowledgeの活用ということについては、今申し上げていることももちろんありますけれども、同時に、社会課題の解決には、そうすること、すなわち市民参加であるとか、それを今以上に本当にやらないと社会課題の解決にはならないという問題意識なわけですよね。
 それで、もちろん誤解がないように言っておきますけど、純粋なサイエンスあるいは先端の科学を進めることが大事。これは大前提です。それに加えて、国連海洋科学の10年は、せっかくの科学を我々の目の前にある海洋に関する社会課題の解決に本当の意味でつなげていこうと、こういうことなんですよね。
 そうすると、そこに社会課題の問題のありかに近いところにいらっしゃる、市民に限らないですけども、サイエンティストでない人たちにいかに社会課題の解決の土俵に乗っていただくか。乗っていただいて議論するときに、ちゃんと科学に基づいてやりましょうと、こういうセンスですので。今回のこの取りまとめでそういうふうにしていただく必要があるかどうかというのは委員の先生方の間で議論していただければいいんですけど、今私が申し上げたような視点というのも併せて大事だということを強調しておきます。
 もう1点だけ。先ほど私の講演で申し上げましたけれど、その議論で申し上げましたけど、総合知を創出、いろんな分野を交えた総合知の創出ということだと思うんですけど、どう考えても簡単じゃないんですね。どうするのかということになるわけですけど、1つ、さっきの私の我田引水でMSPの話をするわけじゃないですが、例えばそういう課題を解決するために皆さんの参加が必要ですよと、そういう練習問題があるといいと思うんですよね。そこに必要な専門家、あるいは市民も含めて参加していただく一種のプロジェクトみたいなのを仕掛けるということによって、これ、さっき私のこの中でヨーロッパのMSPのワークショップにいっぱい若手が来ているという話をしましたけど、要はそれを通じて今までできていなかった人材の育成をしているわけですよね。両方を語れる人ってそんなにいないですよ、正直言って。サイエンスを語る人はいる。それから社会制度を設計する人はいる。だけど両方分かる人ってそんなにいないですよね。
 だけど、これからの海洋に関する社会課題の解決にそういうことが不可欠だと、そういう共通認識になっているわけですね。それが海洋科学の10年推進のバックグラウンドにあるということを申し上げておきます。
 そのために、例えば防災でもいいですね。防災も複合知、総合知が必要ですから、そういった練習問題を幾つか仕立てて、そこで10年、20年先の本当に総合知を束ねることを担えるような人材の育成も併せて考えるということが大事なんじゃないかなと思います。
 すいません。発言させてもらってありがとうございました。以上でございます。
【河村主査】  ありがとうございました。うまくまとめてもらったと思います。河野真理子先生、お願いします。
【河野(真)委員】  おまとめをいただいた後で発言して、申し訳ありません。市民の方々の教育とか、それから市民の参加することの重要性を知らしめるということがすごく大事なんだろうと思います。
 ヨーロッパのEIA、すなわち環境アセスメントのページを見ますと、一、二ページずつで問いをつくって、その問いに答える形で、少しづつ見ていくと、EIAの重要性を勉強できるようなサイトがあります。これはすごく面白いと思います。結構専門的な情報まで入っているのですが一、二ページの頁の閲覧を繰り返していって、一つひとつの問いに答えていく感じです。このような教育のツールを設けると、市民に親しみを持ってもらいながら、教育することが可能ではないかと思います。そういう工夫は、小学生もタブレットを持つようになっている今のデジタル社会で、有効なのではないかと感じます。
 すみません、失礼しました。
【河村主査】  ありがとうございます。川辺先生、お願いします。
【川辺委員】  いろいろありがとうございます。私も、海に関わる問題の解決のために科学に市民が参加するというよりも、科学とそれから普通の方たち、あるいは産業として関わっている方たちの知識を統合していくというニュアンスで、総合知を活用していくということかなと思いました。ですので、この点を検討させていただきたいと思います。
 以上です。どうもありがとうございました。
【河村主査】  ありがとうございます。ほかにはよろしいですか。事務局、何か。
【事務局】  ありがとうございます。先生方、御意見ありがとうございました。川辺先生からもこの後また御検討いただけるということでしたので、また第4回に向けて追加の意見、特にこのキーワードが抜けているのではないのかというところを中心に、ぜひ先生方からもこの委員会後も事務局のほうへメール等でも御意見いただければと思っております。
 また期日等については、主査及び事務局の中でも検討させていただいて、委員の先生方のほうに御連絡させていただきたいと思っております。
 また、本日いただいた意見も、我々のほうでもう一度イメージの骨子案の作成、章立ても含めてしっかりと検討していきたいと思っております。本日はありがとうございました。
【河村主査】  ありがとうございます。そうしたら、今日皆さんに資料を送っていただいているので、そこに適宜不足しているものなど書き加えていただいて、事務局にお送りいただくということをしたらどうかと思いますけど、それでよろしいですか。
【事務局】  はい。問題ございません。そうしましたら、事務局のほうから編集可能な媒体でもお送りさせていただきます。ワードへの書き込みのほか、メールでこういった形がいいんじゃないかというコメントなど、体裁不問でいいかなと思っております。先生方の御意見出しやすい形でいただけると大変ありがたく存じます。
【河村主査】  じゃあ、皆さん、そのようにお願いいたします。
 それ以外のまだ幾つか項目立てがあるので、それについては今後検討して、同じように進めていくということでよろしいですかね。
【事務局】  はい。もしこの方向で1回まとめて第4回にお示しするということでよろしければ、事務局のほうで作業を進めさせていただきたいと思っております。
【河村主査】  分かりました。阪口さん、何か。
【阪口委員】  ちょっと確認なんですけども、「3.安全・安心な社会の構築に資する海洋科学技術の在り方」「(海洋科学掘削を除く)」というところがあるんですけども、安全・安心な社会の構築に資する海洋科学技術って、地震・津波防災以外にも、海難事故だとか、それから船の転覆、これも海難事故だけど、環境汚染だとか、そういう問題も海洋の問題ではすごく重要な問題だと私は思うんですが、ここは、地震防災、それから、海底資源、海底地形となっているんですけど、そういう観点の安全・安心というのは要らないというか、入らないというか、あと、軍事とかはここの場ではふさわしくないから多分ないというのは理解できるんですけども、それ以外に、安全・安心というのはいろいろあると思うんですけど、どうなんでしょうかというのが私の素朴な疑問です。
【河村主査】  これ、事務局、何か御意見ありますか。
【大土井海洋地球課長】  すいません。大土井でございます。せっかく出席しているので、しゃべらせてもらっていいですか。
【河村主査】  ぜひお願いします。
【大土井海洋地球課長】  あくまでもこれ、議論のための例示でつくったものであって、この委員会の中で出てきた意見で、先生方が重要だと思う意見があれば、書き込んでいきたいというのが基本的な話です。
 ただ、その際には、例えば海難事故に対して、我々文部科学省と関係機関がどういうことができるのか。あるいは、そうじゃなければ、例えば国交省さんに対して物を言うということになります。我々、この報告書のエッセンスは海本部に突っ込もうと思っていますので、そういったところで拾っていただくというやり方があるかなと思っています。
 いずれにしても、繰り返しになりますが、文部科学省の持っている海洋開発分科会での議論が、一番初めに谷先生がおっしゃったとおりで、ほかの役所の部分もカバーしております。その中で、これはぜひ政策論として重要だというもので先生方の合意が得られるのであれば、書き方はお任せいただきたいと思いつつも、報告書に書いていきたいなと思っております。
【河村主査】  ありがとうございます。今日は総合知・市民参加について具体的な文言を示していただいたんですけども、次回からほかの部分、防災・減災も含めて、意見をまとめたものを提示していただいて、それに皆さん、これはいいとか悪いとか、あるいは追加があるとかいう意見をいただいて、どの部分が文科省として重点的にやるべきなのか、サイエンスの部分でやるべきなのか、みんなでやるべきなのかということを書き込んでいくというような手順になろうかと思います。
 それでよろしいですかね、事務局も。
【事務局】  ありがとうございます。それで問題ございません。
【河村主査】  河野先生、手挙がっています。お願いします。河野真理子先生。
【河野(真)委員】  時間がないところ、申し訳ありません。船舶の航行の安全に関するデータとして、例えば国交省あるいは海上保安庁が持っているAISのデータはやはり意味があるデータだと思います。民間の人たちの協力だけではなくて、日本のそれぞれ分かれた省庁が持っているデータを統合することももしかしたら検討すべきことの範囲に入るのかもしれません。少なくともAISのデータというのは航行の安全を考えるときに、大変意味があると理解をしております。
【河村主査】  ありがとうございました。特にどの省庁が持っているということ関係なく、必要なものは使って、全体として海洋の研究開発をどう進めていくかという議論をまとめられればと思いますので、その中で特に文科省でどこを重点的にやるのかというようなことをまた議論すればいいと思います。
 ほかに何か御意見ありますでしょうか。
 そうしますと、これで大体今日議論すべきことは全部終わったかなと思いますが、事務局、よろしいでしょうか。
 よろしければ、本日の議事、これで終了ということで、1回事務局にお返ししたいと思います。お願いします。
【事務局】  事務局でございます。本日も長時間にわたり、どうもありがとうございました。
 本日の議事録案につきましては、後ほど委員の皆様にメールでお送りさせていただきますので、御確認をお願いできればと思います。
 次回の日程につきましては、本日、資料5でも御説明いたしましたとおり、2月で調整させていただきたいと考えてございます。この後、御連絡差し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【河村主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、これをもちまして、本日の海洋科学技術委員会、終了といたしたいと思います。
 今日プレゼンしていただきました道田さん、谷さん、それから小原先生、どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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