資料1 第4回北極研究戦略議事録(案)

科学技術・学術審議会 海洋開発分科会 第4回北極研究戦略委員会 議事録(案)

日時:平成28年7月5日(火曜日)10時~12時
場所:文化庁特別会議室 文部省旧庁舎2階

出席者:
(委員)
池島 大策     早稲田大学国際学術院教授
浦辺 徹郎     東京大学名誉教授・一般財団法人国際資源開発研修センター顧問
榎本 浩之     国立極地研究所教授・副所長
三枝 信子     国立環境研究所地球環境研究センター副研究センター長
杉山 慎       北海道大学低温科学研究所准教授
高倉 浩樹     国立大学法人東北大学東北アジア研究センター教授
瀧澤 美奈子   科学ジャーナリスト
藤井 良広     上智大学地球環境学研究科客員教授・一般社団法人環境金融研究機構代表理事
藤井 良一     大学共同利用機関法人情報・システム研究機構理事
山口 一       東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
横山 広美     国立大学法人東京大学大学院理学研究科准教授

(事務局)
田中 正朗     文部科学省研究開発局長
林 孝浩       文部科学省研究開発局海洋地球課長
小酒井 克也    文部科学省研究開発局海洋地球課極域科学企画官
山口 茂       文部科学省研究開発局海洋地球課長補佐

(オブザーバー)
河野 健          海洋研究開発機構研究担当理事補佐
齊藤 誠一        北海道大学 北極域研究センター長

議事:
(1)事務局より、当日の議題・配付資料について確認。
(2)以下の議題について、各担当者より説明及び報告があった。
1.今後の北極研究のあり方について
(1)研究観測の現状
・海底地形について
・北極域研究共同推進拠点について
・北極で活動する主な観測船等について
(2)北極研究のあり方
2.その他
 
科学技術・学術審議会 海洋開発分科会 北極研究戦略委員会(第4回)
平成28年7月5日


【藤井主査】  それでは、第4回の北極研究戦略委員会を開始します。最初に事務局から、本日の出欠と配付資料の確認をお願いします。
【山口海洋地球課長補佐】  本日は、13名中11名の委員に御出席いただいており、会議の定足数を満たしております。また、本日は杉山委員と瀧澤委員が御欠席となっております。
本日の配付資料ですが、議事次第に記載してありますとおり、配付資料1から9、及び参考資料でございます。不足等があればお申し出願います。
なお資料1は前回、第3回の議事録案です。委員の方々には既にメールで御覧いただいているところですが、追加修正等ございましたら、今週中に事務局までお申し出願います。
以上です。
【藤井主査】  それでは、議事録についてはそのようにさせていただきたいと思います。それでは、本日の議事に入ります。
議題の1、(1)研究観測の現状として、前回に引き続き特定分野における研究観測の状況等について、御報告いただきたいと思います。
後半では、(2)北極研究のあり方として、前回に引き続き、議論に当たっての論点の中で、これまで十分に議論されていない点について、御議論いただければと考えております。
では、(1)研究観測の現状ですが、本日は3点御報告いただき、御議論いただきたいと思っております。各10分程度で御説明いただきまして、その後、各5分ずつ、ディスカッションし、足りない場合は、後半の時間でお願いしたいと思います。
それでは、海底地形について、谷委員からお願いいたします。
【谷委員】  本日は、北極の海底地形について、説明したいと思います。これは、GEBCOの2014年版から取ったデータをもとに作成したもので、白いところはグリーンランド、左側の海峡はベーリング海峡で、北極の下の海底地形はこのような形になっております。
海底地形は一体何の役に立つのかということですが、もちろんプライマリーには航行安全とか、漁業に使うとかがあります。あとは北極の場合、特に話題になっているのが、200海里を越えた大陸棚という法的な概念がありますが、200海里を越えた大陸の設定をする際に地形データが要るとか、海洋物理のモデルとか、大気海洋モデルの中で、地形が果たす役割があります。それから氷床がいろいろなことで動きますが、特に氷床が沿岸部でどう動くかというところで、海底地形とのインタラクションがある。それから浮いている海氷の挙動がどうなるかというところについても、海底地形は結構関係します。あるいは生態系とか、津波とかストームサージに関する問題、影響とか、それから固体地球科学そのものに関して、海底地形は重要な情報源になっています。
北極の海底地形ですが、誰が作ってきたかといいますと、最初はフラムが作ったものがあって、それからナンセンの作ったもの、これは後でお目にかけますが、それからGEBCOの5.17というのが1980年代に作られています。今はIBCAO、International Bathymetric Chart of Arctic Oceanと言いますが、GEBCOの下の地域マッピングでバージョン3というのが出ています。まもなくバージョン4が出ようとしています。
これはGEBCOの2014というもので、全球を30秒グリッドですから、赤道で1キロぐらいの大きさのグリッドで作っているものですが、これには両極があり、北極の図があります。この北極の図というのは先ほど申し上げたIBCAOというものと全く同じものです。
割ときちんとした形で最初に出てきたのは、フリチョフ・ナンセンが1907年に発行した、北極の海底地形です。これを見ていただくと、一応ある程度データに基づいていますが、非常にデータが限られていたということと、当時のナイーブな理解で、沖合に行くほど深くなっているということがあり、沖合ほど深くなっているため、データがなかった。特にアイスカバー、氷がかぶっているところの地形データというのは非常に取りにくいですから、測れたところのデータから推定されて、このようなものができたわけです。
今のものと何が違うかというと、次にGEBCOをお目にかけますが、このような形になっていまして、北極の真ん中、ちょうど北極点のところに浅いところがありますが、この絵はとにかくお盆のように、奥ほど深くなっているという
感じになっています。北極点は、丸が書いてありますが、あれが緯度のサークルで、その中央が北極点です。
これがGEBCOで、これはいろいろなデータを駆使して、学者が苦心惨憺して作成したものですが、この後さらに、原子力潜水艦のデータ等も使って作成したのがこれで、今のところ一番新しいものです。先ほど申し上げたように、北極点のあたりに、右上から左下に斜めに浅いところがあります。少し色が薄くなっているところですが、ロモノソフリッジと言いまして、200海里から先に自国の大陸棚を申請するときの材料に使っているものです。もちろんデンマークも同じことを言っていて、北極点がどちらの方になるかというのは、これから騒ぎになると思われます。
この細長いものは、もともとはここにくっついていたものと考えられています。ここに溝がありますが、この溝はアイスランドを通ってずっと、喜望峰の南の方までつながって、もっとずっと、メキシコまでつながっているようなものですが、海底がちょうど割れているところでして、海底がこの溝を中心に左右に割れており、この細長いもの、ここにくっついていたものが、割れてここまで伸ばされた。そのちょうど中央に、海嶺といえば海嶺ですが割れ目がある。それからここで、もともとこのあたりにくっついていた陸の塊が、ここにあります。それからもう一つ、この辺にモヤモヤしたものがありますが、これも山脈のようになっていて、北極海には、この右上から左下方向に、3本の海嶺がある。それ以外は割と深い、深海底のようなものがあります。
一方で、シベリアの沖のあたりは色が薄くなっていますけれども、すごく浅くて、200メートルというのが大陸棚の一つの目安だと言われていますが、そこまでの距離が海岸から600キロとか、800キロとか離れている。非常になだらかに浅いところです。北極海航路といえばこのあたりを通ることになりますが、実はすごく浅いところです。
このIBCAOを作ったデータソースがこれで、右上、シベリアの沿岸のピンク色のところは、ロシアの航海用の海図から拾ったものです。したがって、非常にデータで見ても密度が粗いですし、データの精度も全然よくないと言っていいと思います。
ほかは、いろいろなプロジェクトで作ったデータとか、ほかの国のプロジェクトのデータで、この色を塗ってあるところはそうやってカバーされていまして、足りないところはどうしたかといいますと、いろいろな航海、科学的航海でとったデータです。特に着目したいのは、アメリカとカナダの間の白く抜けているところで、この水色の線が真っすぐ伸びていますが、これはアメリカの原子力潜水艦が取ったデータを開放してもらったものです。冷戦時代ではあり得ないのですが、最近こういうものが出てくるようになっています。
御覧いただいておわかりいただけるように、白抜きのところがまだ随分残っています。これはどうやって作っているかといいますと、学者が地質学的、地形学的な交流でもって、コンタ等深線を書いて、コンピューターでグリッドに変えているという仕掛けなので、ファクトかと言われると、ファクトでないかもしれませんが、解釈の賜物で、今ここまでは来ているということです。
このIBCAO、北極の海底地形図の課題ですが、まずこのすき間を埋めないといけない。それからより細かい分解能のデータが要るという指摘があります。これはサイエンティフィックな理由です。
どのようにデータを取るかということですが、一つはCloud Sauced Bathymetryと言いまして、いろいろな船のデータをとりあえずかき集めようということで、今、私の方で努力をしています。それから特に学会から言われているのは、グリーンランド周辺が最近非常に科学的に注目を集めていまして、グリーンランド周辺の調査からのデータが期待できるという話があります。それからUNCLOS、国連海洋法条約の延長大陸棚のデータがあります。これは申請するのにデータが必要ですが、申請が済んで勧告も出た後は公開されるのではないかと、皆さん期待しており、これがかなり重要なソースになる可能性があります。それから、詳細なデータということになると、北極はまだアイスカバーがありますので、AUVしかないのではないかというようなことも言われております。
より細かい分解能の話ですけれども、例えばどういうところで学問と関係しているかということですが、これはチリ沖の一つの論文の例です。海底地形とアイスシートのインタラクションが研究されており、海底地形からアイスシートがどういう形成をしたかというのが読めるというわけです。そのときに例えばスケール的には、全体の氷が通った後はキロメーターオーダーの話ですし、細かい海底の微細な地形に関していえば、Tens of metersと書いていますが、メートルサイズの細かいものが必要です。
実際、これは取られたマルチビームデータという詳細な地形を取るデータの代物で、コルゲートと言っていますが、段ボールの内側みたいにでこぼこしたものがあります。こういったものが、氷がどう動いたか、どんな速度で動いたかという証拠になっています。これは解釈ですけれども、一番上の状態から氷が割れていって、さらに割れたアイスバーンが動く、潮汐で動くときに、削って海底にこのコルゲートを作っているのだろうという推定がされています。その幅が大体90メートルから200メートル、高さが1~2メートルぐらいの、海底のノッチがありまして、これを距離でスペクトルをとって調べますと、この青い線が潮汐のスペクトルですが、潮汐のスペクトルとすごく似たようなところに持ってくることができて、これからアイスシートの横に動いている速度が計算できるということが、この論文に書いてあります。
今、とにかくIBCAOの3.0が最高の出来で、これは500メートルグリッドになっています。GEBCOは1キロですが、IBCAOは500メートルグリッドで作っています。ただし、これは計算的に500メートルを作っているだけで、実際に500メートルの分解能があるわけではありません。
データソースは、氷上のステーションとか原子力潜水艦とか、あるいは表面のサーフェースシップだったりします。
マーティン・ヤコブソンというストックホルム大学の教授が、このIBCAOのリードをしています。これはGEBCOとしてやっています。マーティン・ヤコブソンはGEBCOのvice-chair、私の同僚です。私はchairですけれども、彼はvice-chairです。
で、ご覧いただいたようにシベリア沖が非常に弱い。「みらい」は、シベリア沖には行っていませんが、あのあたりの少し弱いところのデータを持ってきてくれているので、非常に歓迎されております。
中長期的にはやはり、国際的に皆さん、誰もIBCAO以外のことは考えていませんので、IBCAOをどう進化させるかということですが、よりたくさんのサーフェースシップを放り込むとか、あるいはAUVがもし活躍できればいいなというようなことを言っています。
それからデータギャップを埋めたい。特にロシア沖のところを何とかしたいというようなことが言われています。チャレンジはロシアの延伸大陸棚が認められて、それが発効することであり、恐らくロシアは延伸大陸棚を認められると、本当はそんなこと言ってはいけないのですけれども、EZの外側にも調査の規制をかけてくるのではないかということを恐れている人がいます。そうなると、ただでさえデータがないところが、ますますデータが取れなくなるということが心配されています。
一方でチャンスとしては、温暖化によって氷のないところが増えるので、あるいは氷のない期間が増えるので、もっと調査できるようになるのではないかという期待があります。それとAUVの技術が飛躍的に発展するのではないかということを期待する向きがあります。Xプライズというシェルが行っているのがあって、海底を5メートルグリッドで何日間にこれだけの費用で測れるような技術開発をしたら、幾らあげますとかいう莫大なお金の出るチャレンジがあって、そのXプライズでAUVを使った深海の測量というのが、今テーマで出ていますので、もしそれがうまくいくと、かなり安く海底地形を測る技術が開発されるとすると、北極にとってはいい話かなと考えております。
日本はどうかということですが、まずJAMSTECのデータとして「みらい」のデータが貢献しているということがあります。一方で、IBCAOに対して人的な貢献は一切ありません。IBCAOから言われているのは、とにかくすき間を埋めるように船を走らせてもらう、例えば「みらい」が入るのだったら、今まで通ったことのないところを走ってもらいたいというような話があります。とにかくロシア側にもっとたくさんデータが欲しいというのが私どもの願いであります。
国際的には、米国、英国はnuclear submarineの測深データを我々に提供してくれています。それからロシアは、研究者レベルではデータとか、あるいは人的貢献、作業にかなり労力を使ってくれています。ドイツはPolarsternとか、ハンゼとか、スウェーデンはオーデンという調査船を運航してデータを取っています。カナダ、米国は、コーストガードの船にマルチビーム測深器を付けて、データを取っています。ロシアは、延伸大陸棚の申請のために大量の調査をしています。これが出てくれば最高ですが、これはよく分かりません。それから、ロシアは北極海航路を安全にするために、マルチビーム測量を一生懸命やっています。限られていますが。デンマーク、ノルウェー、カナダの延伸大陸棚のデータが、申請が全部認められた暁には出てくるのではないかなと、皆さん期待しているところです。アメリカは既に公開しています。
最後、まとめですが、海底地形情報というのは、研究する際の基盤データなので、非常に重要な役割があると考えています。それはもう国際的にはIBCAOしかない。で、データ空白域を解消する、それから特にアイスシートの動きと関連する高精細のバシメトリが非常に重要であると考えています。
「みらい」のデータが歓迎されているということと、一方で我が国は「みらい」でしか貢献できていない、それもオープンパスでやっているわけでなくて、トランジットのデータを出してもらっているということす。プログラムの中に入っているわけではないのですが、データが公開されていることは非常に歓迎されています。
我が国として何をすればいいかというと、作業に対する人的貢献とか、あるいはマルチビームデータを出すとか、あるいはAUVは我が国が強いですから、AUVでもって北極海の下を測るということができるというようなことがあります。
以上です。
【藤井主査】  ありがとうございます。御質問等ございましたら、お願いします
これを作っている組織は、どういう性質の組織でしょうか。このGeneral Bathymetric Chart of the Oceans。
【谷委員】  これは、プロジェクトです。
GEBCOという海底地形図を作るプロジェクトに参加したいと思っている人たちを、取りまとめる委員会があります。それを指導委員会と言いますが、その指導委員会が全体の相互調整をしており、そのトップを私が務めています。事務局はモナコにあります。モナコの国際水路機関というところが、もともとモナコの王様が始めたプロジェクトであり、モナコが本拠になっています。通常はネットワークでやりとりをして、進めています。
【藤井主査】  そうするとICSUとか、何かそういうものと関係あるわけではないわけですね。
【谷委員】  上が一つはIMO、国際水路機関、もう一つがIOC、ユネスコの政府間海洋学委員会です。この2つの下で、ジョイントで指導委員会というのを作っていますので、どこか関係があるとすれば、学問的にはIOCとリンクがあります。
ICSUなど、いろいろな組織がありますが、そういうところでは、海底地形図はGEBCOだねという認識をされていて、お呼びがかかって説明に行ったり、我々データをオープンにしていますから、歓迎はされています。
【白山委員】  データを取るために、例えばクルーズを仕立てるとすると、研究費の補助が出たりしますか。
【谷委員】  GEBCOのチェアマンは、無給です。チェアマンですら無給で、事務費は全部持ち出しですので、クルーズに補助金はでません。
モナコに事務所があるとか、時々モナコに行っていますので皆さん、プライベートジェットで行っていると冗談で言うと、本当に信用しているのですが、そのようなことは決してありません。
【藤井主査】  このプロジェクトは、グローバルなプロジェクトですよね。そういう中で北極とか南極というのが、特別に何か焦点が当てられるような理由とか、背景などはあるのですか。
【谷委員】  それぞれグローバルでやるとどうしても散漫になりますので、地域海のプロジェクトを足し算しようというような動きはあります。例えば南東太平洋、ペルーとかチリの沖合に関心のある国が集まって一つの地域海のデータを作って、それをGEBCOに投げてくるみたいなのがありますが、北極はその一つで、北極研究に関心のある人たちが、地形データがないと始まらないのでIDCAを始めています。これはもともとユネスコのIOCのプログラムとして始まったものです。
南極も同様で、やはり南極に集う人たちが、地形データがないと話にならないのでIDCSO、Southern Oceanと言っていますが、ユネスコIOCの下で始めたという、過去がございます。
【藤井主査】  ありがとうございます。
【池島主査代理】  これはどのぐらい続くプロジェクトで、その区切りというか、または継続的にずっと行っていくという形のものですか。
【谷委員】  もともとモナコの王様が最初に始めたのが1903年、今で113年目です。GEBCO全体からいうと、バージョンも7つ目ぐらいにはなりますが、北極のIBCAOは1994年が最初で、最初は2.5キロのグリッドで、次は2キロのグリッド、2012年に作ったのが500メートルのグリッドと、第4版はさらに細かくすると言っています。なぜ細かくするかというと、細かいデータが取れるところがあるので、そこをベースにして、データがないところもとにかくグリッドは250メートルにしようということを言っています。
【池島主査代理】  ほとんどエンドレスに続くということでしょうか。
【谷委員】  そうです。特に、何かキャンペーンがあって、IBCAOのために、あるいはGEBCOのためにデータをどんどん入れていこうというものではなくて、データがあったらそれを入れてアップデートしていくということになっていますので、本当に完全にデータで埋め尽くす日が来るまでは、仕事は続いています。
【藤井良広委員】  ロシアは研究者が参加しているわけですね。
【谷委員】  そうです。
【藤井良広委員】  商業利用の方向に行った場合、軍事的な、自前のものを出すというような議論はないのですか。ロシアがどんどん出してくれれば、つまり彼らは、商業ベースでやる場合は安全性が必要ですので、ユーザーに信頼されなければいけませんよね。それを担保するために、データ面の供出とかそういうことは、アメリカなりと同じレベルで、可能性はないでしょうけど。
【谷委員】  ロシアはなかなか難しい国ですが、軍が測っているデータは出てこないです。軍が海図を作っていますので、海図に出てくる水深というのは本当に間引いた水深しか書いていません。もっと細かく測っているに違いないのですが、ごくまばらにパラパラとしか出てこない。軍以外の例えば石油会社がロシアにあり、それから科学者が船を出しています。そのデータは出てくることもあります。先ほどロシアの人的貢献と書きましたのは、北極海に入れ込んでいるロシア人の科学者が、GEBCOの作業に参加して、データを持ってくる。それはやはり、勇敢な人が手を伸ばしてはいかんところまで手を伸ばして持ってきているのではないかと思います。
【藤井主査】  ありがとうございました。
【藤井主査】  続きまして、北極域共同研究推進拠点について北海道大学北極域研究センター長の齊藤先生から、お願いします。
【齊藤北大北極域研究センター長】
この拠点は北海道大学、国立極地研究所、海洋研究開発機構、3機関で連携して運営しています。資料3の2ページをごらんください。
我が国の北極政策とありますけれども、その具体的な取組の研究開発の3番目に、国内の研究拠点のネットワーク形成というのがあります。これが、複数の大学と研究機関で、ネットワークにより分野横断的な取組、研究基盤の共同利用促進という北極域研究共同推進拠点のことを指していると考えています。
次のページですが、拠点の設置ですが、従来は大学が幾つか集まったネットワーク型拠点はあったのですが、今回のように国立大学法人と、大学共同利用機関法人、国立研究開発法人、この異なる組織の形態の機関が運営するということで、ネットワークの前に連携というのが付いています。連携ネットワーク型拠点ということで、英語でJapan Arctic Research Center Network、J-ARC NETというのを愛称にしています。
3機関ですが、文部科学省の仕組みとしては、大学から申請ということで北大が中核施設、極地研とJAMSTECが連携施設ということで申請して、大臣の認可を得て、4月1日から活動を開始しております。
この拠点の特色は、3機関の特色を生かしてということで、北海道大学には自然科学系の研究者もちろんおりますが、人社系とか実学系分野の研究者が多いということと、人材育成の経験、教育という面で実績があると。極地研は、研究者も多いのですが、さらにスバールバルのニーオルスン基地、北極の観測拠点も長年運営しています。JAMSTECは、「みらい」が、20年以上にわたって北極海の観測を継続して実施している。そういった3機関のいろいろなハード、ソフトの強みを生かして、この連携ネットワーク拠点を形成しています。
目的は、ここにある4つですが、上の3つが大きな目的で、異分野連携による課題解決に資する先端的、学際的共同研究等の推進、2つ目は研究者コミュニティと企業や官公庁とを仲介して、北極の課題解決に資する産学官の取組を促進。3番目が俯瞰的な視野を持ち、北極の課題解決に貢献できる人材の育成、3つが大きな柱になっています。それらをアウトリーチして、発信していくというのが、4番目になっています。
次のページです。拠点の事業の全体像です。大きく右と左に書いてあります研究者コミュニティ支援事業が1つ、それから右の方の産学官連携支援事業が1つ、この2つが全体の事業になっていります。
従来の共同利用拠点は、左側の研究者コミュニティ支援が中心ですが、北極に関しては今後のいろいろな産学官の連携ということに視野を置いて、その支援事業を含んでいます。
拠点の運営はその下の方に書いてありますように、3センターのセンター長が拠点本部を形成して、その下に運営委員会と共同研究推進委員会があります。これはほかの拠点でも同じような形ですが、運営委員会では、事業に関する事項を審議するということで、そこに書いてあります研究計画とか事業計画、予算等について審議しています。
共同研究推進委員会では、共同研究の課題の募集や選考について審議します。その中に産学官連携部会というのがありまして、これが産学官連携のいろいろな事業を運営することになっており、既に4月18日に運営委員会を開催して、運営方針を決定しています。また6月17日に共同研究推進委員会を開催して、公募要項を決定しています。7月8日、今週の金曜日に公募を開始する予定です。
産学官コーディネーターを、5月1日に採用して、特任教授として産学官連携の活動を開始しています。
次のページです。事業の内容が1から4まで書いてありますが、1は研究者コミュニティの支援で、共同推進研究と共同研究集会があります。共同推進研究は、自然科学系、人文社会系、実学系と幅広い研究者の自由な発案による共同研究を促進します。共同研究集会も、共同研究に係る研究プロジェクトを形成するための議論の機会を提供します。このようなものを土台に、萌芽的異分野連携共同研究というのを考えています。
2が産学官連携の推進ですが、こちらも矢印の下の方に産学官連携課題設定集会というものがあります。これをもとに上の方に向かって、産学官連携フィジビリティ・スタディを行っていくということを考えています。それと並行して、北極域オープンセミナーにて、企業や官公庁の関係者に、北極域の最新情報を提供することを計画しています。
3は課題解決人材育成の推進ですが、こちらは後でもう一度詳しく出てきますが、2週間ぐらいのフィールドワークなどを含めたパッケージを考えています。これは北大の方で、日露ジョイントセンターというものの設置を考えており、そういったセンターも、フィールド研修に使う計画しています。
期待される波及効果は、そこに挙げた6つです。
次のページです。具体的なスケジュールですが、この拠点の事業は6年ごとに評価され、継続するかどうかということになっています。ですから今年度から平成33年度の6年間、その中で先ほどの①の研究者コミュニティの支援は、上から、共同研究集会を年4回程度、萌芽的異分野連携共同研究は最長2年で年1件、最大2件、毎年採用するということになっています。また、共同推進研究は、年10件程度、シンポジウムは適宜行う予定です。
次のページが2の産学官連携と3の人材育成、これも6年間の計画で、産学官連携のフィジビリティ・スタディは今年から始まって、平成29年の2年間をまず1件採択して、それに合わせて毎年1件ずつ採択していく。そのほか、課題設定集会、オープンセミナーを毎年行っていくというふうに考えています。
人材育成コースは、俯瞰的な視野を養うということで、北極域の政策、ガバナンス、産学連携に関するセミナーを基に年に1回程度提供、大体10名ぐらいの採用を考えています。
最後の人材育成についてですが、今、ArCSで若手派遣による人材育成及び国際連携ということで、こちらは分野を問わずに北極域の課題解決に貢献する研究を、自分で計画したものを提出して、海外の研究機関に滞在して実施する取組を採用、支援しています。こちらは2週間から一番長い派遣期間で1年を考えて、既に第1次募集が終わって、今、4名の派遣が決まって、第2次募集を8月に実施する予定です。
これと並行して、J-ARC NETの課題解決実践フィールドコースというのは2週間、パッケージのコースを考えています。これは大学院生、研究者のほかにも企業人、自治体職員など幅広い対象者を、北極域の研究機関に派遣して、基礎的な座学と現場見学、異分野人材混成グループで模擬課題解決実習などを含めて、2週間程度のコースです。下は、ヘルシンキ大学で行う案を示しています。
最後、4月1日にオープンになったホームページですが、北極域研究共同推進拠点のアドレスにアクセスすると、ニュースから概要、共同研究、組織、規程等があります。共同研究については、先ほど申し上げました7月8日に、公募の開始をそこに載せる予定です。
あと2枚は事例で、英文のサイトも同時に開設しています。
以上です。
【藤井主査】  ありがとうございました。それでは御質問等、お願いします。
【横山委員】
5ページ目の事業内容ですが、連携ネットワーク型拠点ということで、3拠点が独自の強みを持って共同研究を進められると思いますが、萌芽的異分野連携共同研究が年1件程度、共同推進研究が年10件程度と、非常に控えめな数を書かれている印象を受けたのですが、この数というのはどのような考えによって設定されたのか。
【齊藤北大北極域研究センター長】  他の拠点ですと支援金額が1件10万とか、20万とか、比較的低額ですが、こちらの共同研究は50万から70万ぐらいで、少し金額を多めに設定しています。萌芽的研究では、年間250万、2年間で500万というふうに、少し予算規模を大きくしています。共同研究集会も1件50万ぐらいということで、コミュニティの大きさもあり、ほかの拠点の共同研究とか共同集会に比べて金額を少し上げるという配慮をしています。
【横山委員】支援金額を少し多めにしておかないと、共同研究も進まないような状況であるから、このような金額設定をされたという理解でよろしいか。
【齊藤北大北極域研究センター長】  はい。
【横山委員】 それに関連してなんですが、共同研究の他のネットワークで成功しているところは、大きな枠組みは運営委員会の方で決めて、トップダウン型のテーマと、ボトムアップ型のテーマを組み合わせて運営していくというところが、特に物性分野などは非常にうまくいっているように承知していますが、こちらはそのようなテーマ設定は、運営委員会で行うというわけではなく、申請されたものを審査して決めていくというようなことをお考えでしょうか。
【齊藤北大北極域研究センター長】  例えば産学官連携の課題設定集会を使って、その意味ではボトムアップかもしれませんが、課題を設定して、実際のフィジビリティ・スタディを実施することを考えています。
ですので、初年度は逆に言うとそのような流れでは作れないので、初年度はある程度こちらでもいろいろなテーマを提案して、始めようと考えています。
【藤井主査】  ほかにございますか。
【谷委員】  外から見たときにどう見えることを目指しておられるのか。つまり外国から見たときに、日本の北極研究はワンストップでJ-ARC NETにアクセスすれば全部出てくるという思いなのか、あるいは研究成果を出すときはそれぞれの構成要素、例えば北大さんとか、極地研さんとか、JAMSTECさんとか、そういうところが発表したり、まあ、実際そこに所属されているから、そういう発表をされるのでしょうが、外から見たときに日本はJ-ARC NETが仕切っているのだというふうに見えるように活動されるのか、そうではなくて、国内の束ねをやっているだけで、手柄はそれぞれの研究機関という仕掛けにするのか、どちらを狙ってらっしゃるのか。
【齊藤北大北極域研究センター長】  前者を考えていまして、コミュニティといっても国内の研究者コミュニティと海外、もちろんこの3機関で作るJ-ARC NETが、国外の研究機関との窓口にもなるようなことを、目指していきたいと考えております。ですから国内だけ、もちろんサービスは国内の研究者向けに資金を使いますけれども、国外とのネットワークも、ここがワンストップで見られる格好にするのが、よいと考えています。
【谷委員】  同じ趣旨の質問ですが、例えば国の政策決定者が、北極のことを知りたいといったときに、それはここの3つの研究組織でなくてJ-ARC NETにアプローチして、J-ARC NETが代表して答えると。このようなイメージを想像されているんでしょうか。
【齊藤北大北極域研究センター長】  そこまで具体的にはまだ考えてはいませんが、そういうことはあり得ると思います。
【藤井良広委員】  産官学の2週間のフィールドコースの件ですが、これは例えばということでヘルシンキ大学と書いていますが、コースは、マルチな何かがあって、そこに各国の人が参加するということではなくて、希望者によってヘルシンキ大学など一定の拠点と連携してやるということですか。
【齊藤北大北極域研究センター長】  3つぐらいは今、用意しています。ただ、特色としては研究者だけでなくて、企業の方と自治体の方が一緒になって、何かそこで議論するとか、そういうのも効果があるのではということを考えています。
【藤井良広委員】  企業の人の反応はどうですか。参加したいというふうに。
【齊藤北大北極域研究センター長】  今、公募が始まるので、そこでいろいろ、宣伝をすることと、いろいろな感触を、これから確認していきたいと思っています。
【藤井良広委員】  企業の人の場合は全部予算から出るわけですか。
【齊藤北大北極域研究センター長】  旅費は拠点で出すので、企業としては負担がありません。ただ、2週間社員を休ませて、そこに派遣するというのは、それなりの経費がかかると思います。
【藤井主査】
共同推進研究という項目がありますが、ArCSとの関係ですが、ArCSで将来やっていくような萌芽的な課題とか、そういうのを見つける関係なのか、ArCSとは規模も違うし、分野も違うと思いますが、どのようなすみ分けになっているのですか。
【齊藤北大北極域研究センター長】  こちらはいろいろな将来的なもの、ポテンシャルのある研究を探すということも大きな目的にしていますので、そこは違いがあると思います。
【藤井主査】  すみ分けを意識している、全然違うということですね。
【齊藤北大北極域研究センター長】  そうです。
【藤井主査】  その辺が、同じようなことに関する共同研究となると、どういう関係になるか、少しはっきりしないような気もします。
【齊藤北大北極域研究センター長】  募集の際にそのあたりも、切り分けが分かるような格好で、説明していきたいと思います。
【三枝委員】  今の件についてですが、やはりその違いが分からないと感じました。もしやるのであれば、例えば北極圏における社会問題の解決のための研究をどうするかというように、もう少し共同企画というか、コデザインみたいなのをやる場というふうに強く位置付けではいかがかと思います。そのような取組みは今、多くの分野で取り組んでいますが、トップダウンで少数の重要なテーマを選んで、たくさんの件数でなくてもいいからそれを本気でやってみるチームをきちんと作って、そしてステークホルダーの方に来ていただいてミーティングはするものの、結局1回か2回意見を伺っただけで、あとは研究者の人が立案してやってしまうといった難しい状況にあるものが多数であると思います。そこから一歩踏み出すための工夫をしているというのが分かるようにすると、いいなと思います。
【齊藤北大北極域研究センター長】  萌芽的な異分野連携共同研究ではそういうことを目指しているところです。
【白山委員】  やはり研究者の提案によるというのを基本にしてしまうと、研究者の発想というのは、自分たちがやってきたチームの研究をもう一歩進めたいというボトムアップになるので、そこは難しいですが、発想の方向を変えた仕組みにした方がいいかと思います。このような感じですと、研究者同士の異分野連携は、これから数年で大きく進むのだろうなという感覚はあるのですが、最初のコデザインのところをもう少し明確に書き込んだ方が、次につながるのではないかなと思います。
【藤井主査】  では、3番目ですが、観測船について、河野先生からお願いします。
【河野JAMSTEC研究担当理事補佐】  前回の委員会で御質問いただきましたので、北極で活動する主な観測船等について、御説明します。資料4になります。
まず北極で活動する主な観測船等、1枚目は欧米のものを中心にまとめています。米国、カナダなどは北極圏国であります。赤い字はこの後に少し詳しい説明が付いています。例えば米国ですと、アメリカ沿岸警備隊のHealyという船がありまして、全長128メートル、排水量1万6,000トンぐらい、砕氷能力が1.4メートル掛ける3ノット、船員数19、その他乗員116というような形になって、その後目的ということでまとめています。
砕氷能力というのが実は1.4メートル厚の平らな氷があるところを、3ノットで連続して割ながら進めるという性能を示していて、大概3ノットでどれぐらい割れるかというところでノーマライズして、書くことになっているようですが、中には違う数字を出して、氷の厚みを増やしたり、あるいは速度が出るのだということを強調したりしているものもあります。
幾つか特徴的なものですが、米国が持つSikuliaqという船、上から3つ目ですが、アラスカ大学の新造船、2014年竣工の船です。他に比べて著しく小さい3,700トンぐらいで、乗員数も非常に少なくて、目的が教育観測ということになっています。そのほか、Louis S.St-Laurentは非常に古い観測船です。ノルウェーでHaakonという新しい船を作っていて、2017年竣工予定です。グロストンなので排水量ではありませんけれども、9,000トン内外、1.0メートルの氷を5ノットで割れるというような性能を持っています。
ロシアは詳しく調べられませんでしたが、ドイツのPolarsternというのは、非常に活躍している砕氷研究船です。これも1.5メートルの氷を5ノットで割れるという強力な砕氷能力を持っていて、大体100人近くの人が乗れるということです。
大体見ていただくと、特徴は南北両方に行っている船が多いということ、それからヘリコプターをおおむね登載、あるいは少なくとも搭載可能な状況になっているというのが、特徴かと思います。
次のページがアジア諸国で活動している船、4か国についてまとめました。中国には雪龍という砕氷船がありまして、これも両極で活動している船です。1993年にウクライナで建造されて、中国が購入しています。砕氷能力1.1メートルの氷を1.5ノットで割れるというもので、160人ぐらい乗れるという船です。
新規建造予定があるということが盛んに言われていまして、公開されている範囲の能力を書いていますが、やはり強力な砕氷船をもう1隻作るという計画のようで、着工済みという話も出ています。
韓国はARAONという砕氷船がありまして、これは大きさとしてはやや小振り、9,000トンぐらいの船です。砕氷能力も余り高くはなくて、1.0メートルを3ノットぐらいということで、これも両極で活動をしているということです。
インドは、建造するという宣言は出ていて、漫画のような絵も出ていますが、まだ未着工の様子です。
我が国は、観測船として「みらい」、これは砕氷船ではなくて耐氷船です。耐氷能力は最低限と言ってもいいかもしれません。あと「しらせ」は防衛省海上自衛隊の船で、比較的新しく2009年竣工。突出して船員数、乗員数が多いですが、これは目途が主に輸送船であるということによると思います。
次のページですが、これから少し細かく見る船についての写真が出ております。まずHealy、これは米国の船で、後ほど説明しますがポーラークラスというものがあって、砕氷能力あるいは極域航行能力を示す指標ですが、1というのが一番高くて、7というのが一番下になります。Healyは、ここにあるとおりラボスペースがあり、CTD観測、XBT、ADCPなどのハイドログラフィの機能があり、かつ海上気象も測れ、ジオロジーの観測もできるということで、もちろん船尾にAフレームクレーンも装備して、ピストンコアなども可能、コンテナも搭載でき、ヘリコプターも運用可能です。ただ、PC2という強力な砕氷機能を有しますので、固定ピッチプロペラということです。また機関、出力も非常に大きいということです。
この船は、JAMSTECでアメリカの研究者が行う北極海での観測研究に共同研究として参加をしたことがあります。分担金のようなものはこのときには発生せず、研究者が参加する実費のみを払っているということです。
次がSikuliaqという船で、ポーラークラスは5になります。11ノット程度の船で、教育と観測を主な目的として作っていますので、観測機能はCTD、ハイドログラフィ、気象、ジオロジーもできます、船尾にAフレームクレーンを有していて、観測機材の運用も可能ですが、少し特徴的なのは、アジマススラスターを持っています。これはプロペラ自体が回転するような形のもので、位置の保持が非常にやりやすくなるというものです。新造船ですので、まだ一緒にやったという実績はないと思いますが、研究者のネットワークにより、相乗りの乗船は可能だと考えています。
次にLouis S.ST-Laurent。これは古いのでポーラークラスというのはないのですが、アークティッククラス4を、昔持っていたということです。16ノット程度で走って、やはりハイドログラフィの観測は可能、海上気象も可能ですが、ジオロジーの観測については調べ切れませんでした。当然ヘリコプターを持っていて、これも強力な砕氷機能を有しますので、固定ピッチプロペラということになります。これはJAMSTECでも砕氷航海に何度か参加したことがあります。カナダ海洋科学研究所、DFOのIOSというところですが、そこと調整してIAという契約のようなものを結び、必要日数に応じた分担金を支払って観測をしていました。1日当たり9万5,000カナダドル。これは傭船とは若干違うのですが、傭船とほぼ同じ形態で利用していたということになります。
次はPolarsternで、これもPC2ということなので、強力な砕氷船ということになります。一通りの観測機能を有していまして、少し違うのが強力な砕氷機能を持つにもかかわらず可変ピッチプロペラを採用しているというところで、これは日本の造船所に行くとなかなかチャレンジングなのかもしれません。これもアルフレッドウェゲナー研究所が行う航海に、共同研究や相乗りの形で参加することができます。分担金も発生しておらず、旅費、機材輸送費などの実費だけでやっているということです。
次が韓国のAraonです。これは砕氷機能が少し微妙で、PC4.5になっています。観測機能は一通り有していまして、Aフレームクレーンなども有して、観測機材の運用が可能です。アジマススラスターですので、位置保持も可能という形です。これは実際、研究者のネットワークにより、東京海洋大学の方が乗船したこともありますし、JAMSTECでも今後乗船する可能性があるということで、これも特に傭船費のようなものは発生していないと聞いています。
次がHaakonという建造中のノルウェーの船ですが、ポーラークラス3、強力な砕氷船と言っていいと思います。全ての観測ができるように考えられていて、特徴的なのがムーンプールという船体の真ん中辺に穴をあけて、そこから観測機材の運用ができるような施設を有しているということです。これもアジマススラスター2基ということですので、位置保持が非常に容易な形式をとっています。
次ページですが、参考までに観測船ではありませんが、日本の船と、砕氷船ではありませんが日本の極域に行っている研究船ということで、「しらせ」と「みらい」です。「しらせ」はポーラークラスですと2相当で、強力な砕氷船ということになります。輸送を主に設計されていたので、ラボスペースはコンテナを搭載しているということです。ハイドログラフィについてはXBT、ADCPなどが可能で、一般海上気象ももちろん測れます。ジオロジーについてはマルチナロービームを有しているということで、係留系の運用などは可能、実績もあるはずです。ヘリコプターは搭載しておりますが、強力な砕氷船ということで、固定ピッチプロペラとなっています。
「みらい」ですが、ポーラークラスに換算しますと7相当の船ということになります。観測船なので、観測機能は充実していまして、可変ピッチプロペラということになります。これは傭船ということではないのですが、基本的に運行スケジュールが空いていて、JAMSTECが受託できる趣旨の航海であれば、受託するにやぶさかでないという状態になっています。通常やっている航海であれば、外国人は日本人と同行であれば、あるいは日本の研究機関からの申し込みに応じて乗船できるわけですけれども、特別な分担金等は不要で、公募の航海は実施しています。
参考までに、ポーラークラスというのが次のページに出ています。1から7までありまして、実は日本はクラスNK、船級協会の定義では砕氷ではなくて、氷海船というのがありまして、NK-1A-SuperからNK-1Dというのまであります。「みらい」はこのNK-1Aというのを持っている船です。砕氷船の支援のもとに、厳しい海氷域を航行する能力を有するということで、自分では氷は割れませんが、エスコートされれば少しは行ってもいいよというような船です。これが、大体PC7に相当するということで、PC7というのは多年氷が一部混在する薄い一年氷の中を夏季または秋季に航行する極地氷海船ということになります。
砕氷船か、砕氷船でないのかというのはなかなか曖昧ですが、いろいろ話を聞いていると、PC5、一年氷の中を通年航行が可能な船というところで、どうも仕分けているようで、PC5から上を砕氷船と呼ぶことが多いようです。ただ、ここで言うPCというのは、耐氷機能、そういう氷があっても壊れないという指標で、本来の砕氷機能とは別のものですが、ある程度の耐氷機能を有している船は当然ある程度の砕氷機能を有しているべきだという思想もあって、その区分からいってPC5から上は当然砕氷機能をある程度持っていて、砕氷船なのだろうという言い方をされているようです。
次ページの補足ですが、主な砕氷船ですが、これは北極と南極の両極で活用されている事例が多いということです。当機構で今年度独自に調査していますが、特に韓国と中国の砕氷船が北極で活動する場合は、実はほぼ「みらい」と同じ季節、北極の冬は南極の夏ですので、南極の方に行っているということなのでしょうが、「みらい」とほぼ同じ季節、夏季に同じような海域で活動しています。
それから、保有機関との共同研究等によって乗船ということ自体は、可能な船舶が多数あるということです。
それから、ごく最近作られる新造船は、観測船、研究船のようなことを意識すると、砕氷能力だけではなくて、定点保持機能など、観測船としての機能を重視する傾向があるという感じがします。
中国の新砕氷船は、建造に着手したという情報がありまして調査中です。
以上です。
【藤井主査】  御質問等をお願いします。
【山口委員】  補足ですが、日本は砕氷船と耐氷船と明確に区別したがりますが、実は耐氷船規則を守りながらも、砕氷する船というのは多くあって、貨物船でも耐氷船と呼ばれながらも90センチぐらいの氷が割れるとか、要は船首の形をどうするかなんですね。「みらい」が氷海域に入らないのは、砕氷船首じゃないからです。だから、氷に押し寄せられたらどうしようもないので、怖くて入れないという状況です。
それと、北極、南極両方というのがありましたが、日本の場合、昭和基地のあるリュツォ・ホルム湾は、10数年氷が居座るようなところでして、新しい「しらせ」が接岸できなかった年というのは、8メートルの氷が昭和基地の周りをバシッと覆っていました。「しらせ」の喫水は9メートルですから、喫水9メートルの船で8メートルの氷は絶対割れません。それで行けなかったのですが、リュツォ・ホルム湾の海氷は十数年おきに割れて流れ出すので、今年は多分楽だろうと思っています。
とにかく「しらせ」は、世界で一番ひどい海氷状況を航海する砕氷船です。数千回ラミングする砕氷船、ラミングとは体当たりで氷を割っていく航法ですが、それは世界で「しらせ」だけです。ですから、海氷状況が厳しいときに昭和基地への輸送を終えて帰ってきたときの「しらせ」は、もうボロボロです。とてもじゃないけど、北極には行けません。ちゃんとメンテナンスする必要があるわけです。
ですので、自衛隊所属で手続上の課題があるというのを別にしても、「しらせ」を北極、南極両方にというのは、非常に困難です。
あと、可変ピッチプロペラというのは、一時期流行したことがあります。Polarsternを造った頃は、流行の時期だったのです。いろいろ問題があるのは確かなので、これも、シップオーナーとオペレーターのディシジョンによると思います。
【高倉委員】  2つ質問があって、1つはこのポーラークラスとか、classNKというのは、どの機関が決めている基準なのかというところが一つ。
それからPC1の砕氷船は出てこなかったのですが、例えばロシアとかそういうところは持っているのでしょうか。
【河野JAMSTEC研究担当理事補佐】  まず後者から。PC1の船というのは、ロシアの原子力砕氷船がそれに該当するかと思います。
あと船級ですけれど、classNKというのは日本船級協会の基準です。
【山口委員】  補足します。船級協会というのは各国にあって、保険絡みの制度です。船級協会の等級付けをパスしていないと、保険が適用されないので、必ずパスしないといけない。これが、実は各国ばらばらにあるのですが、日本は、NK、正式名称は日本海事協会というのがあります。ここの1Aとか1A-Superとかいう昔のクラスは、スウェーデンとフィンランドが合同で決めたものを、ほとんどそのまま引用したものです。
各国によって、耐氷船、砕氷船のクラスが違う、基準が違うというのは大変困るので、IASC、国際船級協会というところで、国際統一ルールを作ることになり、そこでPCの1から7を決めました。実はまだ細かいところは決まっていないところがあって、ただ、20年ぐらい議論して、何もアウトプットが出ないというのはまずいというので、無理やりルールにしたところです。それで今、日本海事協会は2つのルールを持っているということになっています。
ですからロシアの砕氷船も、PC1というわけではないのです。ロシアの船級協会の一番強いものとなっている、それはPC1でしょうと、そういう話です。
【藤井主査】  前回、他国の船をレンタルすると、非常に使い勝手が悪いみたいな議論がありましたが、いますが、今お聞きすると、いろいろ共同研究等で利用できるものはあると。その場合、どのぐらい前に例えばスケジュールが分かっていると、利用できる、できないかが分かるのでしょうか。
【河野JAMSTEC研究担当理事補佐】  おおむね前年度には、話がついていないと難しいです。
【藤井主査】  そうすると、逆に言えば、かなり前にそういう計画を立てることは可能ということでしょうか。
【河野JAMSTEC研究担当理事補佐】  ただし、もちろん自由ではなくて、共同研究といっても、単に自分たちで行って、一緒に作業してデータをもらってくるだけとか、あるいは自分たちにしか測れないものを分担して、測器を持っていって測るとか、そういう、全て自分たちで計画したものではないです。主にはならないことが多いです。
【山口委員】  要するに、向こう側のやりたいことでないとやれない。
【河野JAMSTEC研究担当理事補佐】  Louis S.ST-Laurentのときだけは、我々のときでも日数をもらうのですが、その日数だけ我々の好き勝手にできるかというと、そういうことではありません。乗船人員とかも限られますので、まあ、可能ですし、研究者個人で見れば満足する人たちも多いかと思いますが、日本独自の研究を自由にできる状況にあるというわけではないです。
【藤井主査】  こういうほかの船で取られたデータというのは、基本的に利用できるようオープンになっているのでしょうか。
【河野JAMSTEC研究担当理事補佐】  事例によります。
【藤井主査】  定点観測というか、定常観測みたいなものはある品目で決まっていると思いますが、そういったものはオープンになっているのですか。
【河野JAMSTEC研究担当理事補佐】  なっているものもあるし、なっていないものもあるということだと思います。各国でそういうことを積極的にやっていれば、そういうサイトがあって出ていきますし、これは研究目的だから研究者が自分たちで自由にすればいいというところであれば、出ていかないものもあります。
あと北極全体でそういう海洋のデータをうまくコーディネートして、全てオープンにしていきましょうという話題は出ますけれども、実現はしていない状況です。
【藤井主査】  それは前にお話ししたデータベースとか、そういう議論の中に含まれてくると考えてよろしいでしょうか。
【河野JAMSTEC研究担当理事補佐】  はい。
【藤井主査】  ありがとうございます。
【白山委員】  少しミスリーディングになるといけないと思いますが、レンタルするというのと、相手の運行にピギーバックで乗るというのは全く違う話だと思います。レンタルするということは、その間船を持っている国側としてはその船は使えなくなるわけですから、容易に合意を得ることはできないということだと思います。
それと、それぞれに利権が絡むような話になってくると、例えばデータの帰属とか、そういうことでネゴシエーションする必要があるので、別の国の船を借りるというのはいろいろなファクターがあって、余り簡単にできる話ではないのではということをコメントさせていただきます。
【藤井主査】  ありがとうございます。
【浦辺委員】  今説明があった、データがオープンになっている、なっていないというのは、研究者はもちろんプロパレタリーホールドで、基本的に1年間は、そのデータは自分たちが作ったのだから自分たちのものだという意味で、オープンになっていないということのように、説明をされたと思うので、サイエンティックな論文だから、いつかは論文として出てくるという意味だろうと思うのですがピギーバックでも、ほかの国の船を借りることによって、そこの船で取られたものが、安全保障とか何かの理由で出てこないという意味ではないですね。
【河野JAMSTEC研究担当理事補佐】  ないです。
【浦辺委員】  それは日本の船に乗ったって、ほかの人のデータは当然、協調がなきゃ使えないという意味でも同じだと思います。
それと「しらせ」は確かに帰ってきたときは船体にいろいろな負担があるので、北極には行きづらいということをおっしゃったのですが、他の国はできているのに、なぜ日本の「しらせ」はできないのですか。
【山口委員】  それは南極の昭和基地がある場所の氷況が、南極で一番厳しいところだからです。ラミングという体当たり砕氷を何千回も繰り返さないと、昭和基地に行けない。そのため、船も傷みます。だから戻ってきたらしっかりメンテをしないと、次の年行けない。その期間が夏に必要なのです。
ただし、昭和基地の周りの氷況も、10数年単位で変わったりしています。例えば今年実は昭和基地の周りの多年氷が、ごそっと割れて出ていったのです。だから多分今年の冬は、楽だと思います。そういうときは多分、技術的な話だけでいえば、北極に行くことは可能と思いますが、とにかく事前に計画が立てられないわけです。いつ、あのひどい氷がなくなるかというのが分からない状況ですので、それが問題です。
【藤井良広委員】  昭和基地の場所が問題なのですね。
【山口委員】  そうです。
【浦辺委員】  要するに毎年北極に本来行くべき時期に、ずっとドックに入っているということなのですか。
【山口委員】  ドック入りを、海氷が薄かった年は短くするとか、そのようなことは可能だと思いますが、技術的な面からだけ言っても、毎年、南極と北極に行けという話は無理なところです。
【藤井主査】  ありがとうございました。
それでは、(2)今後の北極研究のあり方に移りたいと思います。
前回、資料7としてお配りしています本委員会として議論すべき点と、議論に当たっての論点に基づいて、これまで十分に御議論いただいていなかった点も御議論いただきましたが、本日も引き続いていろいろ、御意見等いただければと思います。
今、前回、ご質問がありました観測船等についても御報告もいただいたところです。本委員会も本日が4回目ですので、そろそろ議論の取りまとめということも意識して、御議論いただきたいと思います。
まず事務局から、資料5の第1回から第3回委員会での主な議論、資料6の審議の取りまとめ(素案)、それから榎本委員に作成いただきました資料8の我が国における北極研究の取組状況について、追記した事項がございますので、御説明いただきたいと思います。
【小酒井極域科学企画官】  資料5をごらん願います。ひし形の部分を中心に御説明させていただきます。
2ページ目の一番下のところです。人文・社会科学の研究分野の現状ですとか、国、地域を対象としている個々の研究を統合していくといったことの重要性について、記載しています。
3ページ目。人文・社会科学においても未来設計に資する研究が国際的にチャレンジングな領域であるとともに、国際的にも求められているのではないかといった御意見。またその下、人文・社会科学と社会科学との間での学際的研究が必要だということで、その上で文理融合というものが重要だという御意見。またその下ですが、経済的な開発資源ですとか、人間社会への対応など、様々な研究を進める上では、安全保障の観点が重要であるといったことを記載しております。
その下のプラットフォームのところですが、研究観測船について、何を観測するために、どの程度の規模の観測船が必要となるのか、保有・傭船のどちらが効果的、効率的となるのかといった検討の必要性。またその下は、傭船の場合の問題点。海氷予測に関する研究等では、冬期の情報が不足している、衛星である程度のデータ取得は可能ですが、現地で本格的に観測できる体制が今のところはないという点、また観測船に当たっては、科学的ニーズが存在するか等のボトムアップの議論が重要だという御意見。またプラットフォームとしては、ソフト面ということでネットワークの活用が考えられるのではないかといった御意見を記載しております。
5ページ目ですが、全球的な影響については、全球を専門に取り組んでいる研究者が中心となって、横断的なネットワークを形成し、実施していくことが効果的である。また将来予測に資するようなデータを提供していくという戦略作りというのは、時宜を得たものとなるのではないかといった御意見。また研究データの共有等については進めるべきではあるが、何を、いつまでに実施するといった、ロードマップが必要であるといったようなことが、前回の主な意見として記載しております。
続きまして、資料6です。 全体ですが、4項目で構成されておりまして、まず1つ目として、北極域をめぐる現状、2つ目として北極域研究の意義、役割、3番目として北極域研究におけるこれまでの取組、成果、現状、4番目として今後取り組むべき課題といった形で、取りまとめているところです。
まず1ページ目ですが、1.北極域をめぐる現状ということで、北極域における環境変動といったものが、非北極圏にも与える影響が全球的な課題である。また一方で、海氷域の減少による利用可能な海域の拡大は、資源開発や航路の確立など経済的な活動にも大きな影響を与えるといったことで、国際的な関心が高まっている。
2.北極域研究の意義、我が国の役割ですが、(1)北極域研究の意義としては、我が国の強みである科学技術力を生かして、北極域の変化等について包括的、総合的に捉え、精緻な将来予測を行い、これにより社会、経済的なインパクトを明らかにしていくことが重要。またこうした貢献を行うことが、北極圏国や国際社会に対する我が国のプレゼンスの強化につながるものである。また一方で、非北極圏である我が国は、北極圏国の領域や利益に直接関与しない立場を生かして、北極域の持続的発展、利用における国際的なルール形成や政策形成過程へ、科学的知見を生かして貢献することが重要である。
(2)我が国の役割として、北極域における様々な科学的知見というのはまだ十分には解明されていない。北極域全体を俯瞰し、中長期的な課題と短期的な課題を整理しつつ、国際的に手つかずになっている課題や、我が国の強みを生かし得る課題解決を通じて、国際社会に貢献できるよう、戦略的に研究、観測を推進し、世界の北極域研究をリードしていくことが必要。また、これまでの我が国の研究観測の蓄積をもとに、オープンデータサイエンスを積極的に主張していくことも必要である。また先住民をはじめ北極圏には多くの人々が暮らしているといったことから、科学的知見に基づく情報や課題解決のための手法、選択肢等を、適切に内外のステークホルダーに発信していくことが重要である。
3.北極域研究におけるこれまでの取組、成果、現状で、(1)ニーオルスン基地の開設を通じて、大気、雪氷等の観測を開始していること、またJAMSTECにおける海洋地球観測船「みらい」を用いた海洋観測を実施している。その次ですが、EISCATレーダーの整備、あるいはその研究観測を実施してきていること。平成23年から、GRENE事業の一環として北極気候変動分野を取り上げ、北極気候システム及び全球的な影響の総合的解明を行ってきたと。その次ですが、オールジャパン体制で北極環境研究コンソーシアム、JCARが設立されている。またその次ですが、JAMSTEC、北海道大学、あるいは国立極地研究所がそれぞれ北極域に関するセンターを、それぞれの機関で設置しているということです。
(2)成果ですが、ニーオルスン基地、EISCATレーダー、「みらい」による北極海観測、GRENE事業による北極域の気候変動の研究により、これまでに多くの実績を我が国は有している。1990年に国際北極科学委員会が設立され、第1回評議会で我が国もそれに加盟が認められている。またこれまでの成果が認められ、平成25年には北極協議会へのオブザーバー資格が承認されています。また平成27年、富山において北極科学サミットを、我が国で初めて開催いたしまして、約700名が参加し、北極研究の推進等に関する議論が行われたところです。
(3)現状ですが、平成27年からArCSプロジェクトを開始し、国際連携拠点の整備、国際共同研究の推進等に取り組んでいるところです。また本年4月、北海道大学北極域研究センターが、ネットワーク型の共同利用・共同研究拠点、北極域研究共同推進拠点として、文部科学大臣から認定を受けているところです。
4.今後取り組むべき課題ですが、こちらは9項目を掲げています。
まず、研究全般についてです。北極域における環境変動とは、全球的な環境変動を増幅する懸念があるといったことから、我が国としても引き続き北極域研究に積極的に取り組んでいく必要がある。また従来の研究者、研究者グループを中心に実施されてきた研究から、より外交や安全保障といったグローバルな政策判断、課題解決に資する国際共同研究の拡充や、新たな国際共同研究等の推進が必要である。その上で、北極域研究全体を僻敵した僻敵図を作成するとともに、北極域における中長期、短期的な課題の抽出及び整理をするとともに、政策形成、課題解決に向けた研究・観測等の実施が必要である。またそういった成果については、AC等の国際場裡の場で発信し、科学技術を通じた我が国の貢献を積極的に打ち出す必要があるといったところです。また北極域における国際的な研究観測の動向を把握して、我が国として進める必要のある研究分野等を検討していく必要があるといったことで、整理しています。
(2)研究の枠組みですが、ArCS、あるいはArCS終了後も、同様な目的による研究支援の枠組みが必要であるといった点。また北極域研究につきましては、やはり長期間に及ぶ継続的な研究観測が必要なものであることから、年限を区切った研究プロジェクトとしてではなく、長期間の研究観測が実施可能な体制の確保が必要であるといった形にしております。
(3)人文・社会科学分野を含めた研究者ネットワークの構築ということで、幅広い分野を対象とする北極域研究については、専門分野を越えた研究者ネットワークの構築、研究者の協働が必要である。また人文・社会科学においては、人文科学や社会科学の聞でも学際的研究を進める必要がある。その上で人文・社会科学、自然科学分野全体における研究者ネットワークの構築、協働のもとに、北極域全体を総合的に理解していくことが必要である。
(4)観測データの共有では、観測データの共有化は重要な課題であり、国際的な関心も高いところですが、現状としては、メタデータについては一定の連携が進んでいるが、実データの連携については、不十分な現状。このため、我が国が率先して実データの連携構築に取り組むことは、我が国の自らの強みである科学技術力を生かした、北極域における国際貢献として大きな意味があると考えられるため、積極的に取り組んでいく必要がある。
次のページですが、(5)研究拠点の整備ということで、北極域研究共同推進拠点においては、より一層の体制の強化を図るとともに、ArCSプロジェクトと車の両輪として機能していくことが必要ではないか。また、北極域における研究対象は、長期間にわたり確実に観測が実施できる体制を構築するとともに、現在空白となっている観測網の強化を図ることが必要である。
(6)国際連携、国際協力。北極域における研究観測は、北極圏諸国の主権等に配慮する必要があるため、国際的な連携の下で進めることが必要であるとともに、非北極圏国との連携、協力も、効果的、効率的な研究観測を実施するためには必要である。また諸外国との聞において、大学や研究機関等の実際に研究を実施する機関では対応が困難な状況が生じた際には、これは主に政府等が中心となって交渉等適切に実施をし、そのような要因等の除去に取り組む必要があるといったこと。次に北極域における課題ですが、南極域や全球的な地球環境の変動と密接に連携するものであることから、南極や全球を専門とする研究者との連携、協力を促進し、効果的、効率的に研究、観測を進めることが必要である。
(7)研究観測のための施股・設備。北極域での研究観測船の建造、維持には多額の経費が必要である。このため、何を観測するために研究船が必要であるのか、保有・傭船のいずれが効果的、効率的であるのか、保有する場合の規模、性能等についてのあり方について議論を行う必要がある。またAUV等、既存の技術を応用した氷海下観測機器の開発等も必要である。すが、北極域の衛星からのデータを継続的に取得できる体制の構築とともに、研究観測拠点における観測データを、継続的に取得できる体制の強化が必要であるといったこと。またハード面だけでなくて、ソフト的なプラットフォームの構築、活用も必要である。
(8)人材育成。こちらは、若手研究者の育成の枠組みの構築が必要である。
(9)社会との連携、社会への情報発信。研究・観測を実施するためには、その技術開発が必要であり、その技術開発を含めた長期的な計画を作成することが必要である。また、民間企業からの研究資金の投入については、魅力的な研究支援の枠組みの構築が必要である。また、最後ですが、北極域における研究観測で得られた成果については、そこで生活する人々への暮らしに貢献していくことが必要であるといったことで、まとめています。
次の7ページから9ページにかけ、前回榎本委員からご説明のありました資料8を図的にあらわしたものです。必ずしも全て網羅できているということではありませんが、表の見方といたしましては、まずグレーのところが国際的な枠組みで実施をされているもの、緑色が日本で行ったGRENE事業で実施したもの、赤色がArCSで実施したもの、青が今後実施予定のものとなっています。必ずしも縦の線で区切られているということではなく、あくまでも国家的なプロジェクト等で対応しているもので、必ずしもそれ以後研究が進んでないというものではありませんので、その辺は注釈が必要かと思いますが、そういった形で整理させていただいているところです。
次は資料8です。前回榎本委員に御説明いただいたところから、7ページ目になりますが、海洋・海氷変動のところの4のところに、若干の修正点があります。あとは、赤字で、少し小さくて恐縮ですが、主にそういった研究等に必要な手法ですとか、観測機器等の設備等を記載させていただいております。
以上です。
【藤井主査】  ありがとうございました。
榎本委員からコメントはありますか。
【榎本委員】  今、御説明いただいた資料6の最後の部分と、資料8の赤の部分、研究テーマについてはいろいろな時間スケールがありますが、最初、発展的なものが始まって、その数年後以内に解析などが進み理解が進む。その後、それがモデルに取り込まれて、将来予測につながるというサイクルを繰り返しているわけですが、予測している間に新しい現象の発見というのがあって、もう一回計算をやり直すというのが科学の常だと思います。
【藤井主査】  ありがとうございます。
本日は、資料6の素案を基に、これをリバイスする、または必要があれば全面的に書き換えることも含めて、やっていきたいと思っております。これを見ていただきますと、成果のところ等は、非常に外形的に書いてあります。その中身は、今榎本委員が話された資料がありまして、どういうことが必要か、全体的な温暖化に関わる因果関係の図に示されているということです。
長期的な、ArCSなども含めた計画が必要だとかというような、説明がありましたが、それはここにありますように、緑と赤と黄色という形で、何がある程度終わったのか、この次にさらに必要なものは何かという整理をしたというのが、根拠になっています。ということで、これ自体は外形的に書いてありますけれども、中身としては、ここでずっと議論してきました、何が必要なのかということを、経年的にちゃんと考えるというところが根拠になっているということです。
そういうバックグラウンドを基にいろいろ御意見をいただけたらと思いますが、まずこの構成等に関して、御意見がありましたらお願いしたいと思います。例えば人材育成等も含めて、ここで議論しておりますので、こういう項目の中に、少し加えていくようなことは当然出てくると思いますので、それをどういうふうにしたらいいかということも含めて、御意見をいただければと思います。
【白山委員】  全体的に国際貢献をするというのが多く書いてあるのですが、基本的に国の委員会としては、日本の国益とか、そういうものとしてどのようなものがあるかという視点が、もっとあっていいのではないかという感じがいたします。北極研究あるいはその北極の研究の成果というのが、日本の国としてこういうものが必要、だから研究を進めなくてはいけないのだという視点が、もう少し強くあってもいいのではないかという気がいたします。
例えば産業界で北極航路のことはすごく注目されていると思いますが、そのために必要な研究としてはこういうものがありますというようなものは、比較的書きやすい。ほかにもそういう意味では、いろいろなものがあると思いますが、タックスペイヤーの視点をもう少し、全体にそういうところもあってもいいのではないかという印象を持ったところです。
あと、オープンデータの話がいろいろなところにちりばめられていて、それはすばらしいと思うので、是非強調していただければということ。
それと、一つだけ気になるのは、長期的な、継続的な研究、観測が必要であるというのは、これはまあ、自明のことですが、そのためにはやはり研究、観測に必要なファシリティーをしっかり持つということ、これも当然必要で、なければできないわけです。そういう意味からいうと、JAMSTECの立場に少しなってしまいますが、研究船についていろいろな検討が必要であるという書き方ですが、それでは、船がなくてもいいというニュアンスが、少しあると嫌だなというのがあります。是非、研究船はやはり必要であるというニュアンスに、例えば傭船とどっちが効率的かという視点というのは、少し書き方を検討していただければありがたいと思います。
【藤井主査】  ありがとうございます。
今、委員の言われたファシリティーの話というのは、自前の技術の開発ということを前にご発言されていましたが、それとも絡みますし、ファシリティーの場合は自前でやるのか、連携でやるのかという話が当然出てきますので、そこの切り分けで。
船に関しては、なぜ船が本当に必要なのか。リモートセンシングでダメなところは何なのか。要するに定点での観測と人工衛星等の非常に立体的といいますか、二次元的な観測の強み、弱みがあるわけで。そこの議論は当然必要だと思います。今回そういう観点では、あればいいというお話はあったと思いますが、本当にこれがないと、何ができないのか、エッセンシャルの部分。例えば榎本委員が作られたこういう中で、これと、これと、これは少なくとも自分のコンポーネント、船がなければ絶対できませんというような、そういう逆からのアプローチは今のところないので、それも少し、まとめるに当たってはそのような情報が必要かなと思っています。
今の点も含めて船に関して、非常に重要で、素案だと一応議論をすべきだということで終わってしまうので、もう一歩進めるべきだという御意見と、それからもう一押し、方向的にはポジティブに書くべきだという、そういう御意見かと思います。
【榎本委員】  日本が科学的、技術的に今までいろいろ重要な役割をしてきて、それが北極での日本の役割というふうに書いています。海の観測はその中で大変重要なところにあります。3月にアラスカで開催された北極サミットウイークの中のアークティック・オブザービング・サミットというところで、日本からの貢献の発表の後に韓国からの発表がありました。日本の発表の中で強調したところは、重要な委員会に日本から委員がかなり参加し、デザインするところで貢献しているという話でした。
次の韓国はARAONが登場してきて、ARAONは、実は砕氷の能力というか、運用が始まったときも、余り氷に近づけないということで、研究者の目は少し厳しかったのですが、それでも10か国以上の国の研究者を乗船させ、国際的なプラットフォームとしての韓国の立場というものを、すごくアピールしていました。そういった、船というところは場を提供することになり、そこで各国の研究者が活躍しているというところは、そのまま外交につながるものであり、韓国はそのあたりをうまくやっているという印象がありました。
もう一つですが、船とリモートセンシングという技術、やはり日本が科学外交を出すときに、今まで「しずく」衛星とか、日本のJAXAの衛星技術というのが、科学を出すときの目玉商品の一つだったのですが、その打ち上げ計画が今、海氷面積を出している「しずく」が今年で運用終了で、その後の計画がないというところが、この先、オープンデータも衛星データがやっぱりその中の目玉商品なので、そういったところが危惧されるところです。
【高倉委員】  資料6に関連して思ったことなのですが、この取りまとめは、よくまとまっていると思ったのですが、その取りまとめと榎本先生からの提示と、資料6に付いているところに、もう一段階何かあった方がいいのではないかなと思います。つまりこちらの方は具体的なサイエンスのプログラムの話になっていて、それ自体はとても重要なことですが、ただ実際に議論しているのは、もう少し抽象的なことを議論しているわけです。ですので、カテゴリーとしては観測データの共有とか、国際協力とかということの必要性というのがあり、その中でこの具体的なプログラムが当てはまるという形が望ましいかと思います。何かここに来るといきなり具体的になって、それはこの提案の説得力を下げるような感じがしたので、もう少しそこの議論がなぜこっちに反映してくるのかということのクッションがあった方がいいかなというふうに思いました。
【藤井主査】  ありがとうございます。確かに少し乖離というか、本当は関係しているのですが、その関連性が必ずしもすっきりは見えないように思います。
【池島主査代理】  その点に関して、つまり資料6にも表が付いていますけれど、この表の経緯ですね、今までこのGRENE、ArCS、そして今後という、この歴史的というと大げさですけど、時系列的な推移が反映する形で、またこの素案の方に少し、1か、2か、どこかその辺のところで必要なのかなというのが一つです。
これまでの取組というところで多少あるのですが、ここがそれぞれの部分として、どのように具体的になってきたのかというところが、少しそれ以降の提案の部分と、関連が見えないような気がします。そこを詳しくすると、この最後の表みたいなものがもう少し生きるのかな、というところがあります。
それともう一つ、そこのところとの乖離というか、また出てくるのが、人文・社会の上にというのは、まだこれからの大きな課題だと思います。まだ今回のものでは、余り議論が深まっていないように思います。これも実際、学問の世界自体で難しいあれがあるものですから、どういうふうに深まるかというのは今後の、さらに時間が必要かなという気がします。

【藤井主査】  ありがとうございます。人文・社会科学に関しては、今回どういう方向性でやるべきかという議論のところが前回までなので、具体のこういう項目に落とし込むところの、直前かなという気もします。
【藤井良広委員】  まさに先生方が言われていることだと思います。これを今、議論する意味ということは、北極海自体の変化が起きて地球環境に影響を与えている状況です。ですから、研究プロジェクトとしてはこれまでのものをベースとして行くが、新たに、例えば資料6の4ページ目、(2)に長期的なものが大事であると。これがベースだが、これに加えて直近の変化に応じた、臨機応変に行っていかなければならないと。新たなタスクが出てくると。かつそこは、人文・社会科学だけではなく、商業化に直結しているような局面に、もう議論しないといけない。研究がそこまで、それも想定範囲にしていくというようなことは、この辺で少し変化への対応力を求められるということを、どこかで書いていただければと思います。
それから一番最後のところ、先ほども出たように需要サイドというのが出てきているので、これが国家の国益にもつながってくるのですが、この需要サイドの議論をすると、先ほどの韓国にもつながってくるのですが、つまり非北極圏国というものはアジアだけ見ても多様にあるわけです。その中で我が国は非北極圏国の一つとして、かつ大きなマーケットを持っている国としてのリーダーシップがとれるというようなことぐらいまで書いてもいいのではないかと思います。それは実は北極圏国から見ても、北極圏国だけが利権を持っているわけでなくて、マーケットにつなげないと彼らの資源なりも使えないわけなので、需要国というのは実はすごいパワーを持っているということです。
ですから、ここで市場化の議論を少し書いているのですが、もう少し具体的に書く必要があるのと、民間は市場化が明確でないと動かないわけではなくて、そんな楽な商売はありませんので、見通しがあればリスクを取って動くわけです。ですから、ここで大事なことは、民間が取るリスクと、官が取るリスクというものをうまく設計しなくてはいけないということです。民間がもし明確ならば、官のことをほったらかしにして、自分たちで稼ぎに走りますので。ここはしかし、そこまで至っていないが、展望として変化が見えてきていて、相当のビジネスチャンスもある。かつそれは日本だけじゃなくて、アジア、インドまで含めて、そこまで民間の資金も使えるような仕組み作りみたいなものということを、一つ提言として書いてもらえばと思います。
【藤井主査】  ありがとうございます。
【谷委員】  2点申し上げたいと思います。1つ目ですが、長期の観測が要るとか、特に若手の人材を何とかしなければいかんということが書いてありますが、どうするのかという点がありません。だけど、これは両方とも個別の研究のテーマをどうするとか、国際関係をどうするとかと違って、これは文科省の世界だと思いますが、長期を保障する仕掛けというのが確約されていないと、若手が乗ってこないと思います。どうやってその長期にデータを継続して取り続けて、それが日本の財産になり、世界に対するメッセージになり、日本の強い施策の根拠となるので国益ですが、それをどうやって実現するのかということがどこかにないと、個別の研究プロジェクトに落とし込んでしまうと、もう見えなくなってしまう。そこがないなと思います。
もう一つですが、国民の理解を得る、政策決定者がなるほどと思う、それから予算を継続させる、これはみんなアウトリーチだと思います。ここで私が一番大事だと思っているのは、6ページの(9)のところですけれども、こうしないといけない、ああしないといけないと書いていますが、多分研究者にできないと思います。個別の研究プロジェクトの成果をアウトリーチするというのは、多分聞いている人には何のことか分からなくて、それぞれの、これは全体の研究の出口といいますか、現状は、こんなことが分かっていて、ここが課題だというのを分かる日本語で書く仕掛けが要る。それは研究者の仕事では多分なくて、そういう仕掛けを作るアウトリーチのための組織といいますか、グループというのか、そういう人がいて、意識的にそればかりやるというか、アウトリーチのために情報を集め、研究成果の最新のところをかいつまんで外に出すという努力を、継続してやってくれる、そういう仕掛けがないと、アウトリーチにならないのではないかと思います。やっている方はアウトリーチしているつもりでも、聞いている方は何かよく分かりません、北極点って何?というのがずっと続くのではないかという気がします。
個別の研究というのは、どれもこれもすごくおもしろくて、いい意味があると私は思いますが、この後人類がどうなるのというところにつなげるように書いてもらわないと、多分受けない。受けないとお金も来ないし。日本の国益に関わるというふうに、納税者が思ってくれないと思います。
【藤井主査】  ありがとうございます。
【横山委員】  今の御発言に関連してなんですが、とてもいいことをおっしゃっていただきました。私はアウトリーチ関連のことも、研究もしておりますが、監督もさせていただいている立場から少し補足しますと、極地研は、共同利用研の中でも非常にアウトリーチが上手な研究所です。またJAMSTECも非常に活発で、いい成果をたくさん上げていますので、そういう意味では地球惑星関連の研究の中でも非常にアウトリーチが上手な拠点機関が、共同利用を組んでいるということで、南極の方も非常に上手にやっていますし、恐らく研究自体が進んでいけば、上手にアウトリーチが進んでいくものと拝見しています。
ただ、ここで非常に気をつけなければいけないのは、目先の利益をアピールして、そこで強く推進を引っ張っていくようなアウトリーチをすると、もしその成果が出てこなかった場合、非常に大きな不信を買います。ということで、その辺のバランス感覚は、非常に気をつけなければいけなくて、この報告書の書きぶりもそうですが、利益が出ることはもちろん見込めて、それに大きな期待や国益があるというのは見据えつつも、書きぶりについては国民の不信を買わないように、控えめにしておくというのも手かもしれません。
あと、若手の方は私たちもどの分野でも、今、18歳人口がこれだけ減っていますので、どの分野も苦労しています。そういう意味では長期観測が必要な分野は特に、頑張っていただきたいと思います。
【藤井主査】  ありがとうございます。
先ほどの長期に担保する仕組みというのは、どこも苦しんでいて、例えばGRENE、ArCSを見ますと、個別の課題というよりも、パッケージにしてその重要性を主張して、5年、10年ごとに継続していく、進化していくような形式を取って、一応個別の弱さみたいなものは防いで、ただ、本日の文章の中にはそういうのが入っていませんので、もう少し先ほどの俯瞰図みたいなものを開設するようなものも含めて、入れたらいいのではと思っています。
あと教育とかそういうのも、長期的になかなか確保できない、これ、世の中全体がそうなっているような気もしますが。全体的に長期的に確約されないという状況があるわけです。これはもうどこもみんな一緒であると思います。
【藤井主査】  結局、北極の非常に魅力的なところに、学生が来たいとか、やりたいと思うと思うのですが、これが例えば10年、5年だと、その先のめどは原理的にはないので、止まる可能性もあるので、非常に仕組みを救いにくいという御指摘かと思います。ほかの分野も全部そうだと言ってしまうと、それきりではあります。なるべくいろいろな大学などでそのような分野を増やして、継続的に実施できる仕組みを作っていくというのを補完的にやっていかないと、プロジェクトだけだとやはり非常に不安定になるかなという気はします。
【浦辺委員】  資料6のいろいろ色が付いたものを見ると、例えば後ろの方からいくと、9ページの真ん中辺にある生物多様性の海洋というのはほとんど日本だけのマークで、インターナショナルのマークが付いていなくて、しかも後ろに大きくなっていっている。ところがその上のジオスペースを見ると、使うものがレーダー系だからかもしれませんが、今は全くやっていなくても将来もすごくやるのだと。例えば7ページにいくと、真ん中の全球との相互作用の中の海洋の役割って、昔はそれほどGRENEのときはやっていなかったが、もうあとは全部やるみたいに、何となくここに書いてあることは、研究のトレンドみたいなものを無理やり読もうと思うと、読めるようにも書いてある。ただ、これと前の文章とは全然一致していないので、これが要するにウィッシュリストなのか、自分たちの決意なのか、例えばさっきのレーダーの例で言えば、レーダーがあればそういうことができるので、レーダーを是非欲しいという意味でそう書いているのか。
それから、衛星が多く出てきます。ところが衛星のことは本文の中にはものすごく少なくしか書いていなくて、それでは、衛星があってそれを見てグラウンドトルーシングで、船で行くみたいなリンクのことも書かれていない。そうすると、衛星があれば大分解決できることがあるのか。そこら辺のリンクが、この図からも、本文からも、すごく分かりにくい。
だからこれは、必要性があるのだと、だからこれをやらなくてはいけないのだというのか、こういうレーダーができれば、これもできます、船ができればこれもできます、だけど、なければできませんというのか、そこら辺の受容性とか、論理構図がまるで分からないので、もう少しそこら辺を工夫していただければありがたいなと思います。
【藤井主査】  具体的にどういうふうにしたらいいという、そういうサジェスチョンはありますか。
【浦辺委員】  これ、やはり、新しい状況に対して、このデータがなければこれはできないので、まずこれをやるべきだと。そうするとそれに伴うハードウエアみたいなもの、それからプラットフォームは何かというのが、当然出てくるわけで、そういうふうなのが普通は研究のプロポーザルとして出てきて、そのためにこれが欲しいと。そういうふうなものだと、すごく分かりやすいのですが、どうもこの論理の行き方が、全くそれとは違う行き方になっているので、少しみんなとまどっているように思います。
【藤井主査】  恐らく、温暖化一つとってみても、様々な要素があって、それが連関していると思います。そういうコンテキストをまず出して、そのいろいろなコンポーネントが全部相互作用しているとしたときに、何をどこまでやれば全体が分かるか、ということで、この項目出しをまずしていただく。そして、網羅性という意味では自分たちがやりたいだけではなくて、我々の力ではできないこと、他国もやっていることも含めて、必要なものは全部項目を出していただき、その中で今のこの計画を位置付ける。それが一番強くする方法だということだと思います。
それで、ここにあるこの図というのは、見ていただくと外国はやっていないとか、今後やらなくてはいけないとか、そういう仕分けがあって、一応今までの説明からすると、この項目全体が、大小はあるにしても、分からないと全体の概要は分からない。その中で各国の連携と役割も含めて、また今期では分からないことも含めて書いたのが、この図であり、そういう論理立てで一応作ろうと、ここはしてきています。
ですから、その辺のところがしっかり出ないと、ただ自分たちでやりたいことをリストアップしたんだけということになりますので、それは避けたいというのがもともとの意志です。ですからその辺について、榎本先生とかオブザーバーというか、来られているほかの方でも結構ですので、御意見があればお願いしたいと思います。非常に重要なポイントだと思います。
恐らくこの分野の世界の科学者が見たときに、このリストはこれをやれば本当に分かるのです、というふうに言っていただくのが、一番いいことだと思っています。
そういう観点で、前のJCARのときの図も含めて、こういう全体の相関図みたいなものが出てきているのではないかと思っています。ですからこれが全部なのかどうかというのは、一つの疑問ではありますが、少なくともこれは網羅されているというふうには思っています。
具体的にどう作ると、より分かりやすいでしょうか。これはウィッシュリストというよりも、日本がやらない部分も実は入っている。それは他国の方が強いからやるとか、他国と連携でやるからというのも入っていますので、そういうところをちゃんと強調するということだと思います。
【高倉委員】  やはり資料6の3ページ以下の今後取り組むべき課題というのがあり、ここにこの1とか、2、3、4、5、6というふうにあるわけですが、ここに細かいプログラムの、例えばここのカテゴリーはこっちに持っていくとかいうふうなものがあると、ある程度、今回の会合との整合性は出てくると思います。多分この図表というのはやはり、サイエンスとして何が重要なのかということを示しているものであって、今後日本がやらなければいけないことの具体的なリストが出てきた後で、それを科学に戻すとこういうふうな形のアウトプットが、サイエンスとしてできるのですよという形が、一つかと思いました。
そういうふうにすると、例えば今回議論になってきた人文・社会科学もそうですけど研究船の問題にしても、あるいは今問題になった人材育成とか、長期とか、あるいはアウトリーチとかいうのも、少し別立てで考えるような形になっていく。だけど、決して具体的にやらなきゃいけないプログラムそのものを、なくしてしまうことではないので、という印象を持ちました。
【藤井主査】  ありがとうございます。
【白山委員】  個別でいろいろ、ここで議論するというのは、少し細かすぎると思いますが、今までやっていてやめてしまうというのが、幾つかあり、確かにこれはこれから進めます、これはやめますというのが、これを見ると、ある方向性が見えます。その方向性と先ほど高倉委員がおっしゃいましたように、今後の方向性というのとは、当然整合性があるものにならなければいけないと思います。
全般的にはそういう意味で、何となく時間軸に沿っているのですが、一部分は一回やめてもう一回復活するようなやつもあったりしまして、少し各委員から、本当のこの図に対するコメントを詰めていただくというようなことも、していただくといいかなという感じがします。
【藤井主査】  なるほど。やりますかね。
【林海洋地球課長】  この表自身は、もともと北極研究の全体像を俯瞰して、これまでやってきたこと、今やっていること、将来やりたいことって、この青と黄色というのをどう位置付けるか難しいのですが、そういう今までやってきたことと現状を見ながら、日本としてやらなければいけないことは足りているのか、そしてそういう重要なことを進めるために、どういう推進方策があり得るのか、やらないといけないのか。そういうものを見るための、基礎的なデータということだと思います。そういう意味で少なくとも灰色で今、国際的にやっていること、緑で今までやってきたこと、赤で今やっていること、そういったものをバッと見ていただくとともに、これで多分、北極研究で必要なことを網羅的に表にしてあると思うので、この中で日本としてやらなければいけないことで、欠けている部分は何なのかということと、あと重要なものをきちんと進めるために、必要な方策というのはなになのか、そういう点が前の文章の中にきちんと、表れてくればいいのかなと思います。今、そこのところ確かに余りリンクはなくて、ニュートラルに少し前半の部分も書いてあるところはあります。
例えば3ページの研究全般のところには、3つ目のポツに俯瞰した俯瞰図を作成するとともに、課題を抽出して整理し行っていくことが必要であると書いてある、これはもう少しやらないといけない作業のタスクとして書いてありますが、これを、この図を見て、どういうところが足りなくて、どういうことを今後やらなければいけない部分がありますねというのを、文章として書いていくということなのではないかと思いますので、少し我々も、先生方とも相談して、日本として重要なところはどういうところで、欠けているところはどこで、進めるために、推進方策としてさらに考えなければいけないことについて、もう少し具体化すればいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【藤井主査】  ありがとうございます。
【池島主査代理】  その点で、結局この表の扱い、全体の素案取りまとめの中で、この表をどのように位置付けるかということだと思うのですが、こうやって付いていると浮いてしまうので、大きく分けて2つあるのかと思います。一つは、この素案の取りまとめのところにクロスリファレンスを付けて、いろいろな項目等もう少し詳しく書くところがあるとすれば、それは書くが、これは表のどこの部分のことだという具体的なクロスリファレンスを、この素案に付ける、というのが一つです。
もう一つは、これをまた各論というわけでもないですが、別立てにしてしまって、現状の具体的な説明というのはさらにこの要旨なり、重要なところ、欠けているところという具体的な説明を、これに対して付けるというのを、これと並行にというか、別につけるものです。この2つを私は考えたのですが、どれがいいかは、それ以外にもあるかもしれませんし、そういう何か、リファレンスの工夫をすると、さらにこの表が生きるというか、そういう感じがします。先生方に来週までに何かコメントをもらうというような、形はどうですか。
【藤井主査】  今おっしゃった後半の部分も作らないと、完全にこれのリンクが見えないで進めるのはよくないので、まずはこれ全体をまとめるような、解説のようなものが必要ではないかという気はします。
あと、今現在ArCSが走っており、この中に位置付けられています。ArCSは非常によく練られた計画なわけですが、それにも関わらずこういう観点から見たときにやるべきことがあるのかどうかということまで、踏み込むかどうかです。これを見ると、やるところとやらないところははっきり出ていますので、GRENEでとまったところが解決したのかどうかとか、よりそのプライオリティが下がったのかどうかとか、いろいろなケースがあり得ると思います。ですからそこの部分も含めてもう少し、きょうは時間がありませんけれども、踏み込むかどうかといところまで、少し皆さんの御意見を聞きたいと思います。
これ自体が先ほど言われたみたいに、全てを完全に表現しているわけではないので、ちょっと一回おのおのについて御意見を聞きたいところでは、この場では聞ききれませんので、やるとしたらこちらからお願いして、やっていただくことになりますが、いかがですか。
ArCSのPDである深澤さんとか来られていますけど、今のような議論で何か御意見ございますか。
【傍聴者(深澤PD)】  これを取りまとめたときには、ArCSのPDとして、ArCSを通しやすい格好で作ってくださることを祈るのみです。ただ、この中でこの先に何があるのかというのが、これではとても読めません。現状とか役割とか書いてあるのですが、その先に何があるのかが、これだと全然見えなくて、これで研究者を集めようなんて甘すぎます。つまり、日本は北極ポリシー、北極政策を出して、確かに不満も多い人はいるとしても、あれが大事なのは今、我々がやっている研究の先に何があるのかというのを、一応日本の政府の形として示したから、使いようがあるのです。ですから、これもまとめるときには、これの先に何があるのかが見えるような書き方だと、すごくうれしいです。
諸先生方に今さらいうまでもないでしょうが、例えば課題解決型とかいうお話がありますけど、課題とは何なのか、何を解決すればいいのか、どういう課題が今、北極にあって、それに日本はどういうぐあいに接しようとしているのかというのが、言ってみれば北極の政策ですが、あるいは日本の北極政策に否定的なものでもいいのですが、ArCSをやる際に、そのあたりが見えて動機づけとなるような形にならなければいけないと思います。
【藤井主査】  ありがとうございます。
サイエンスに関しては、ここで是非やりたかったのは、今、深澤さんがおっしゃったように、今後これをArCSでやったとしてもどういうものが残るのか、解決するべき課題は多くあるわけで、それをある程度意識した整理が、これになっているということです。ただ、もう少し今言われたのは、大きなまとめのことを言われたのではないかという気もいたしますので、この文章の中にも一部そういうことは書いてはあるのですが、それを強めるということも必要かもしれません。この後に何が残るのかといったら、この中に文章として書かれていますので、意識はしているわけです。
【藤井良広委員】  このリストの件は、先ほどの事務局が御説明になったような形で、これまでの取組なり、今後のということについて、この3ページのところで俯瞰図、具体的にはこういうことを含めた取組をやってきましたということは、詳細は別添というか、これを見てくださいねというのを書いて、頭のところに少し先ほどあったように、大まかな整理のものを1枚ぐらい付けてやるといかがでしょうか。
で、今御指摘のあったことは、確かに非常に大事なことで、何のために我々はやっているのかという点だと思いますので、それは私がさっき言った変化であり、今後の課題です。そういうものがあるのだということを、明確に書く必要があると思います。ただしその変化、課題が具体的にどうなのだというところまでは、ここでは書く必要はないと思います。それは体制を作った上で、膨大なものになってくると思いますので、つまり新たな使命なり、課題というものに対応できるような仕組みにしていきましょう、これの成果はこうです、今後はこうですよということを、その一つの手段として、船なりいろいろ組み合わせも出てくるというものが読めるような形で若干書いた方がいいと思います。それぐらいにとどめないと、これで全部説明するのはとても無理ですので、そういう感じに改編できればいいのではないかと思います。
【藤井主査】  ありがとうございます。
今のような方針でいかがでしょうか。本委員会では、北極に関する科学をベースに、様々な出口、産学官の連携もありますし、それはきちんと全部フォローしようと、入り口から出口までやろうということですが、一番大事なのはまず行っているサイエンスの部分というのが、本当にしっかりしたものなのかどうかというのが基盤になりますので、先ほど御用意いただいたいろいろなこの資料を、もう少し分かりやすい形で取りまとめて、入れる。その中で今、深澤さんがおっしゃったみたいな、将来の課題というのは当然残るわけですから、こういうプロジェクトは、期限は切りますけれども、スタンディングでやっていかなければいけないという趣旨が分かるような形で、作ったらいかがかなと思います。
今、非常に貴重な御意見をいただきましたので、それを基にリバイスをかけて、皆様方に展開をして、そこでもしかしたらフレームも含めて、いろいろな御意見をいただきながら、作っていけたらどうかと思います。次回は、25日の開催ですが、そこでまた議論をしたいと思いますが、その前にリバイスしたものをお送りしたいと思います。
それで、これに対する意見は、で、来週の前半ぐらいまで、よく考えていただければと思います。
今、いろいろなご意見をいただきましたが、帰ってみたらもっといい案があるというケースもあると思いますので、是非それも入れていただいて結構です。これについて電子ファイルは皆様の方に行っていると思いますので、それを基にコメントいただければと思います。いただいたご意見は最初から皆さんと共有しておいた方がいいと思いますので、事務局から共有Bいただければと思います。
それでは、きょうの議論、ありがとうございました。予定したところは全てこれで終わったと思いますので、何か委員の方々からおっしゃりたいことがあれば、お伺いしたいと思います。
それでは、次回は7月25日ということでございます。また資料は机上に残していただければ、郵送させていただきます。
本日は、ありがとうございました。

―― 了 ――

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