資料1 第3回北極研究戦略委員会議事録(案)

科学技術・学術審議会 海洋開発分科会 第3回北極研究戦略委員会 議事録(案)

日時:平成28年6月13日(月曜日)16時~18時
場所:文部科学省17階 17F1会議室
出席者:
(委 員)
池島大策    早稲田大学国際学術院教授
浦辺徹郎    東京大学名誉教授・一般財団法人国際資源開発研修センター顧問
榎本浩之    国立極地研究所教授・副所長
三枝信子    国立環境研究所地球環境研究センター副研究センター長
杉山慎     北海道大学低温科学研究所准教授
高倉浩樹    国立大学法人東北大学東北アジア研究センター教授
瀧澤美奈子   科学ジャーナリスト
藤井良広    上智大学地球環境学研究科客員教授・一般社団法人環境金融研究機構代表理事
藤井良一    大学共同利用機関法人情報・システム研究機構理事
山口一     東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
横山広美    国立大学法人東京大学大学院理学研究科准教授

(事務局)
田中正朗    文部科学省研究開発局長
林孝浩     文部科学省研究開発局海洋地球課長
小酒井克也   文部科学省研究開発局海洋地球課極域科学企画官
山口茂     文部科学省研究開発局海洋地球課長補佐

議 事:
(1)事務局より、当日の議題・配付資料について確認。
(2)以下の議題について、各担当者より説明及び報告があった。
(3)1.今後の北極研究のあり方について
(4)2.その他

【藤井主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまより海洋開発分科会の北極研究戦略委員会第3回を開催します。
まず事務局より、本日の出欠、それから配付資料の確認をお願いいたします。
【山口海洋地球課長補佐】  本日は、13名の委員中11名の委員の方に御出席いただいており、会議の定足数を満たしております。また、本日は、白山委員と谷委員が御欠席となっております。
お手元にお配りしております資料をごらんください。本日の配付資料は、議事次第記載の配付資料1から7までをお配りさせていただいております。加えて、参考資料1から3までをお配りさせていただいております。不足等がございましたらお申し出願います。
【藤井主査】  それでは、議事に入ります。
最初に、前回の議事の記録について、資料1をごらんください。時間の関係上、御確認いただき、修正などありましたら、1週間後の6月20日までに事務局に御連絡願います。
続きまして、アジェンダを見ていただきまして、今後の北極のあり方について御議論をお願いしたいと思います。
本日はここに書いてありますように、前半では、(1)の研究観測の現状について。これは前回も出ましたけれども、人文・社会科学分野、気候変動等分野、研究データについて、ご発表いただき、その後、御議論をいただきたいと思います。
後半につきましては、北極研究のあり方として、今まで2回の委員会の議論を踏まえながら、議論に当たっての論点の中で、これまで十分に議論いただいていない点を中心に、議論を進めていきたいと思っています。
それでは最初に、研究観測の現状についてです。本日は、人文・社会科学分野、気候変動等分野、研究データについて、ご説明いただき、その後5分程度質疑応答の時間を設けたいと思います。
最初に、人文・社会科学分野について、高倉委員からお願いします。
【高倉委員】  お手元の資料2に基づき、お話ししたいと思います。人文・社会科学分野の研究の現状について、経済、環境、ガバナンスということで発表を行うというお話でしたので、このレジュメに沿ってお話ししたいと思います。
どのように整理できるかと思って作成したものです。北極圏に関連して、人文・社会科学では、経済学とか人類学、これは文化人類学ですけれども、それから法学、政治学などのディシプリンベースで研究が行われているというふうに思われます。
大きく実態そのものを明らかにするというアプローチと、それからいわゆる国際制度とか法制度とかという、制度に関するアプローチというものが2つあるかと思います。いずれのディシプリンも、実態論的アプローチ、あるいは制度論的アプローチをする形で研究を進めてきていると思います。
これはほかの国際的な学会などでもそうですが、北極研究というのもが恐らくディシプリンベースで自覚されるということは、ごくごく最近始まったのではないかなと、認識しています。というのは、もともと例えばロシアの北極圏の研究や、カナダの北極圏の研究という形で社会科学は研究を進めておりまして、それを北極圏という形で総合的に扱わなければいけないという研究目標が、ほとんどなかったということです。
恐らくソ連崩壊後の社会主義が崩壊して、そのことと気候変動が具体的な問題になることによって、北極圏というものが、研究対象とする地域として認識されてきたという現状だと思います。ただ、そうはいっても多くの社会科学者は、依然として、国ベースで研究をしているのが現状でして、それを統合するということが、今後一番大切なのではないかなと思います。
それから欧米の北極研究との一番大きな違いというものは、欧米、特にヨーロッパですけれども、探検史というものを強く持っております。これは自国の歴史と非常に強く絡んでいまして、つまり自分たちの歴史の延長上に北極を見ているという特徴があると思います。
しかしながら日本の場合は、そのような形で北極というのを捉えてこなくて、資源開発、あるいは純粋な研究対象として見ているところがあります。これは研究をどういうふうに社会に還元していくかというときの、ある種の弱さにもなっているのではないかなと思います。つまり科学的な話を社会に伝えていくときに、やはり自分たちのナショナルヒストリーと絡んで話すことができないという点です。そのような形で大きく分けることができるかと思います。
引き続き、経済、人類学、ガバナンスについてお話ししていきたいと思います。
経済学に関しては、関連する先生方から情報提供していただきましたので、ある程度の情報はまとめてあるのですけれども、必ずしも統一的になっておりません。経済学に関しては、恐らく様々な実務的な、特に工学系の社会経済的な研究もあると思いますが、そちらの方はフォローできていなくて、むしろ純粋に経済学の方からの情報ということです。
特にロシアの専門家の先生なので、ロシアの北極圏の資源開発と地域経済発展、それから環境保護とそれに対する政策と現状ということが、経済学の大きな特徴だとお話しされていました。
そして、むしろ特にロシア研究においては、北極圏という形で経済学がアプローチすることはこれまで恐らくなくて、実際の具体的なプロジェクトとしても、余り具体的なものは浮かばないと。最近始まったものとして、フィンランドと共同でロシア極北の地域を明らかにするような研究が進んできたということです。
国際協力状況というのも、フィンランドとロシアを中心にして動いているという状況です。
2枚目に行きまして、文化と社会についてです。これは主に人類学ですけれども、恐らく唯一北極域を比較的統合的に捉えていたのは、言語学と文化人類学だと思います。それは北極域研究というよりは、むしろ北方研究というような枠組みで研究を考えており、戦前からこういう形の研究の関心があり、あるいは国立大学の中に研究の機関があって、それが続いてきたということです。
特に、ここの主要研究項目に科研費の番号を記載しましたけれども、このような形で多くの研究が行われております。大きな特徴として、1つは絶滅に瀕した言語研究。これはシベリア、それから環北太平洋地域には先住民言語がたくさんあり、この言語というのは、話者が数百人から数千人ぐらいの規模の民族がたくさんおります。いわゆるこの文化的多様性を維持するための応用的なことを含む、言語政策を含むような研究というものが、日本の大きな特徴の一つだと思います。
それから近年、特に気候変動と地域住民の適応に関わる人類学及び地域研究というものが活発に行われてきているのも特徴です。
それからもう一つは、研究支援をするための組織というのは比較的充実していて、国立民族学博物館とか北方民族博物館、それから北大スラブ研、東北大東北アジア研究センターなど、地域研究センターが様々な形で実施しているということです。そしてそれぞれ歴史がありますので、既にロシアや北米の研究機関と中長期的な研究協力体制が構築されています。
ただ、一つの特徴は、応用研究というのが低調で、現在ですとCapacity buildingとかhuman developmentと言われるような研究、これは欧米の方でかなり盛んですが、そこは余り行っていないなと。言語の方は比較的、教育みたいなことまで進めておりますので、そういう特徴はあります。
それから次に行きまして、ガバナンスですけれども、ガバナンスは2つぐらいの枠としてお話ししたいと思います。
1つは政治ということで、主要研究テーマは、まさに北極域をどう捉えるかというところで近年出てきた北極海のガバナンスをどのように作っていくのかということで、理論モデルとか実際の実態分析が行われてきております。ここにもありますように、国際的に牽引するような研究者がいて、日本がそれをフォローするような形で行われているということです。
これに関しては、主要プロジェクトのところにも少しありますけれども、比較的若い研究者がこういう研究を実際に進めてきているのが現状で、これも恐らく日本の弱さかなと思います。
それから、研究の傾向と課題というところですが、対象地域が偏っているということが指摘されて、ロシアなど大国が中心で北大西洋海域は日本国内だけではなくて世界的にも空白域となっている。そういう意味ではもっと焦点を当てる必要があるのではということです。
それから、対象主体の偏りというところで、これは先ほど私が申し上げた探検史との関わりですけれども、外交戦略を前提とするために、AC(北極評議会)への過度な関心が見られているということが言われています。
その次に行きまして、北極国際法制度・北極法ということの特徴です。これはいわゆる法律、国際法の専門家から頂いたものですけれども、先ほども少し申し上げましたが、北極域は冷戦時代は軍事拠点ですので、そういう意味で北極域の研究というのは特に人文・社会系は非常に行いにくいところがありました。
それが冷戦が崩壊して、環境問題を中心に北極を見ようということで、フィンランドのリーダーシップで北極評議会設立につながっていく状況がありますけれども、それに対応して89年には、ラップランドで北極センターというものが設立されており、これが北極ガバナンスの研究の幕明けだという形です。
その後、海外の研究動向にあるように、北極条約の提唱とかAC(北極評議会)を中心とした国際法・制度研究の本格化という形が続いておりますが、まさにこれが日本ではどのように対応して出てきたのかということが、このガバナンスの2の方から出てきている状況です。
ここでもお分かりのとおり、2000年代の後半とか2010年ぐらいになってから、特に我が国では、北極国際法・制度研究というものが始動して、これは具体的には神戸大学の極域協力センターの柴田先生という先生がおられますが、彼は南極条約の専門家でもありまして、北極のことも最近研究されるようになったのですが、そういう中で法制度の研究がある、あるいは北大スラブ研究センターの中の国際政治などををやっている方々がこういった問題に取り組んでいるということです。
まとめですけれども、北極域の人間社会の国際的優先研究、何か直訳で申し訳ないのですが、要するに国際的な潮流として北極評議会とか国際北極科学委員会といった様々な組織で、今後どのような研究をすべきかということがここ10年ぐらい継続して議論されていると思います。
その一つは、北極評議会の中で作られたArctic Human development Reportというレポートがありまして、2004年と2015年に出ております。それからもう一つは、International Conference on Arctic Research Planning、これは3と書いてあり、今回は3回目が行われたわけですが、この中で北極研究に関する統合をどうしていくのかということで、ロードマップのようなものが提唱されています。
ここには日本の北極研究のコンソーシアムが提唱した、10年にわたる長期の研究の提案のようなものも言及されております。そこで何が言われているかといいますと、持続可能な自然資源の開発というものについて、人文・社会と学際的な研究が行われなければいけないということ、それから、食料と水に関わる人間の安全保障という問題、年齢とかジェンダーとかエスニシティといった社会的な差異というものが、この北極を理解していく上で大変重要なことになりますので、もっとたくさんあるのですけれども、大きく言うとこの3つぐらいを学際的に研究していくことが重要であると言っています。
そして環境変動、気候と社会、両方ありますけれども、北極域の社会への適応とその支援の実際的な政策的なことを含めたことを考えていこうと。それから、北極と非北極圏の連携に関わる制度設計の重要性というものが言われています。
そうして見てきますと、これはまとめですけれども、北極域の人文・社会科学として今後必要だと思われるのは、1つはガバナンスということで安全保障、国際秩序、経済交流、人権、先住民といった問題を制度設計と実態論で両方明らかにするということだと思います。それからもう一つは、人間環境ということに関連して経済開発と地域社会、人間開発、そして先住民です。
両方に先住民というのが出てきますが、どうしても国家というものを中心にして、我々人文・社会科学者は考えがちなところですが、北極評議会にも正式な国としてのメンバーではありませんけれども、常時参加者という形で先住民団体が登録されていまして、国家に準じるような意思決定の社会組織として、国際的に認知されております。そういう意味では、先住民という存在を抜きにして語ることはできないと思います。そういう意味で言いますと、こういったこと2つが恐らく中心になっていくだろうと。
今後は、現状分析研究は大変重要だと思いますし、私もそれが好きですけれども、未来設計をするような研究に向かっていく必要が、国際的にも求められているということ、それから、人文・社会科学は今、4つぐらい挙げてきましたけれども、従来、お互いにほとんど相互認知がないという状況がありまして、恐らく人文・社会科学間で学際研究をしていかないと、北極域の人間社会そのものを総合的に理解することはできないということが言えると思います。その上で、文理融合研究というものが非常に重要な役割を持ってくると考えております。
考え方としては、人文・社会科学系の連携の必要性というのが、恐らくstake holder、特に先住民はstake holderでなくて、我々はright holderと既に言っている現状がありますので、そことの協働というものを進めていくおかげで、特に自然科学との知見の融合というのが非常に強く求められるだろうとこのように思います。
以上です。
【藤井主査】  ありがとうございます。ご質問等あればお願いします。
【杉山委員】  私の分野では北極というと今、温暖化に代表されるような環境の変化が一番大きなバックグラウンドにあるのですが、お話があった中で、今行われている研究のプロジェクト名などを見てみると、この3ページ目の高倉さんご自身の温暖化の先住民族社会への影響分析といったような明示的に環境変化と社会科学の連携が見えるタイトルが、ほかには余り見当たらなかったのですが、そういう環境変化が北極に与える影響という意味合いで社会科学分野の研究はこれから進んでいくというイメージでしょうか、それとも、今まだここに隠れてあるんでしょうか。
【高倉委員】  恐らくこれから出ていく必要があると思います。やはり政治学、経済学をやられている方の研究としては、自然環境の変化が社会に影響を及ぼして、その及んだ結果をどのように解決していくか、あるいは及んだ結果がどのようになっているのかということに関連する質的、量的な分析というのは普通に行われているのですけど、要するにそれの変化をもたらす自然科学との協働というのは、恐らく日本ではそれほど進んでいないのが現状だと思います。
ただ、昨年度富山で行ったIASCの北極科学サミットなどにしても、自然科学と対応する窓口が多く出てきていまして、今後そういう意識を持つ社会科学者が出てくると思います。
【杉山委員】  そうですね、IASCなどを見ていても国際的にはそういう盛り上がりを感じますので。
【高倉委員】  だからそこは多分重要だと思います。むしろ国際的に文理融合する機運というのは非常に強くて、海外の国際的な会議に行くと、自然科学者とタッグを組んだ社会科学のセッションとかそういうものがたくさん出てきます。それが刺激になって、自然科学とやらなければいけないという現状になっているのではないかなと思います。
【杉山委員】  ありがとうございました。
【藤井主査】  そのほかに。お願いいたします。
【浦辺委員】  実態を明らかにする方は、タイトルを読むだけである程度何となく私のような理系の人間でも分かるのですが、ガバナンスの方の研究は、いろんな国の国益が云々かんぬんという、これはもちろん現状分析的にはあるでしょうけれども、仮に日本でこういうことをやることによって、それが何らかの形で、今回は北極の研究戦略ということですけれども、どのようにつながっていくのか。日本人がそういうことをやる意味というのは、どういうところにあるのでしょうか。
【高倉委員】  私も政治学とかそのようなものが専門ではないので、正しい答えか少し躊躇するところはありますが、ただ1つ言えるのは、北極域をめぐる、特に北極海へのガバナンスというのは、いわゆるある特定の国の領海という側面もあるわけですけれども、公海としての側面というのもありまして、そこを国際的にどのように利用できる仕組みを作っていくのかということが、大変重要なのだと思います。
そこで私はいわゆる現状においては確たる組織があるわけではなくて、北極評議会が比較的そういうものを調整し、リードしていくような国際的な機関として機能しているのかなという理解です。
この組織というのは、もう既に確定された組織ではなくて、むしろ今後どのようにその組織を作っていくのかという側面を持っていますので。しかもその中には、日本はオブザーバー参加国ですけれども、北極の8か国が全てを決めるというスタンスではないわけです。ですので、日本がそのガバナンスの実態を踏まえて、どのような好ましい統治の在り方ができるのかという理想も含めて出すことで、日本の公益をも含めた日本の関わりということを理解するのに、あるいは実践するのに大変重要な研究になるのではないかなと思います。
【池島主査代理】  今の関連で質問というよりコメントですけれども、今簡潔にまとめられた中で補足といいますか、そのガバナンスの部分で特にこの2010年前後の日本のAC(Arctic Council)へのいわば何らかの参加に関連して、日本の研究がやや動いてきたという点は否めないわけで、逆に言うと日本の国自体にとって、また日本の国民一人一人とか皆さんにとって身近な話ではなかったということは、率直に言って一番大きな話ではないかなと私は思っています。
実際に我々のような、法とか制度とか国とかと、そういう単位で考えている人はやはり法制度とかガバナンスというものはおもしろいなと思うのですが、それは日本として、また日本がどのように関わってくるかというと、実は非常に具体的な要求が起きにくい。ましてやこういう形で、国として戦略的にそこを研究しようというインセンティブがなかなか見られない。
そこをどうするかというと、先ほどお話があったように、法制度にやはり日本も何らかの形で貢献したい、参加したい、科学的な実績はいろいろある、南極の経験もある。このことを考えたときに日本は何もなしでいるわけにいかない。当然温暖化、気候変動の下に、開発の問題も出てくる。氷が少なくなってくる。
そうするとその関連で、では経済も少し浮いてくるし、そこでやはり国として戦略、又は計画、政策なしでいいのか。そこでやったらどうだというのが、何か最近この五、六年、私がやってきて感じている動きかなと。そこを強引に何かまとめて戦略が必要だとなってきたから、このような委員会みたいなものが出てきて、本格的な議論が出てきたような気がします。
ですから、少しそこについての土台というか、策定的なこういうものだと先ほどあった歴史があるとか、実績があるという面ではやはり日本は北極圏の国、5か国や8か国に比べると、やや薄いというか、まだ浅いことは否めないかなという感じが私はしています。
【藤井主査】  ありがとうございます。

【瀧澤委員】  実際に北極の状況が今動いている中で、そういった研究をされるということは非常に重要だと思うのですが、その研究が研究成果として研究者の間で共有されるだけではなくて、そこに住んでいる方とか、あとはその関係する方々、地域の方々がそういった情報を共有して、自分たちの健全な経済発展、地域の発展のために役に立つような、例えばNGO団体ですとかジャーナリストといった、実務的な人たちとの関わりというのは出てきているのでしょうか。
【高倉委員】  全体としてはすごく正しい方向なのだと思います。ロシアに関連して私の専門で言いますと、NGOはなかなかちょっと難しい部分というのはあります。特に外国のファンドを持っているNGOは、最近いわゆる政治的にはかなり圧力を掛けられているようなところがありまして、私自身が今瀧澤先生からおっしゃられたようなことに関連して言いますと、やっぱり現地の行政機関と一緒に組んで、特に私は永久凍土のことをやっているのですけど、永久凍土でいろんな地面の崩落とかそういうのが起きるものですから、そのことを例えば小学校などと組んで地元に教えていくとか、そういったことを今細々とやり始めているというのが現状だと思います。
恐らく社会科学の中で、やはり従来は研究、あるいは本を書けば良いというところがあったと思うのですが、それをむしろ教育とか行政にどう還元していくかということが、今すごく国際的にもチャレンジングにされている領域かなと思います。
【瀧澤委員】  そうしますと各国ともどちらかというと行政の枠の中で、何か子供たちを対象にしたプログラムを通して教育活動をしている、そういう状況なのですか。
【高倉委員】  例えば北米の方だと、またNGOとか全然違いますので、もっと活発に実際に動いていると思います。ロシアに関連しては教育というのが1つと、あとはそれから例えば農業政策とかそういったものに研究者の派遣というのが随分役に立ちますので、それを地元で講演会をしたり、行政とのワーキンググループを作ったりというのが、今現状で動いていることだと思います。
【藤井良広委員】  4ページに書かれているのですが、ご説明がなかった安全保障についてです。私は、これが一番、経済にしろ何にしろ軸になると思います。ですので、」ここの点の記述が薄いというのが非常に心配なのです。安全保障問題はマルチの場ではやらないものだと思います。つまり北極評議会ではやらない。ではバイ(二国間)でやるとその辺をどうするのか。つまりわが国のロシア研究をしている方が、アメリカの北極政策だけでなく軍事政策についても理解を深めねばならないということですよね。逆もそうですね。この辺は手応え的にどうですか。そういうことを目指されている若い人たちとかいるのでしょうか。
【高倉委員】  私も防衛研究所に比較的親しい知り合いがいて、ロシアの安全政策をやっていて、こういうことに関心がある人がいるのですけど、関心としてはやはり全体的なことに関心があるという話になります。ただ、制度的に一緒に共同研究やろうかとか、そういう形には多分なっていないのではないかなという印象を持っています。
ですからそれは何らかの共同研究をするような、あるいはそれをエンカレッジするようなスキームがある程度必要なのではと思います。
【藤井主査】  どうもありがとうございます。
では続きまして、気候変動等分野について、榎本委員から御報告お願いいたします。
【榎本委員】  資料3に、我が国における北極環境研究の取組状況ということでまとめさせていただきました。第2回目のときにも大急ぎで作った資料を簡単に御紹介したのですが、抜けている空間的カバー、時間的カバー、あとこれまで行ってきた活動についての網羅性が少し足りなかったので、改良して作成してきました。
1ページですが、北極システムということで自然科学を中心に書いています。1番上にジオスペースがありまして、前回の議論の中でジオスペースに関わる資料がないということで今回は入れています。
あとは前回の海底地形の話ですが、これについては次回以降、谷委員の方から紹介があるのだろうと思います。
構成する大気、陸域、海洋、あとは外、太陽から来るエネルギーの注入、そういったものの外観を並べようとしています。このように空間的な分布、高層大気、熱圏・電離圏、それの上のところから海底まで、あとは固体地球の話もありますし、時間的なスケールでもかなりレンジが広いものです。
それで今回の資料作成に当たりまして、次の2ページ目ですが、我が国の北極環境研究における課題、その下に「北極環境研究の長期構想」(JCAR)、北極環境研究コンソーシアムという2011年に設立された団体ですけれども、このグループがおととし、このような長期構想をまとめておりまして、その中で特定のグループの議論ではなくて、国内の140人の研究者が2年ほど掛けて議論した結果があります。その構成をもう一回振り返りまして、そこから抽出してきたものです。
1、2、3、4とその下に書いてありますけれども、ここの内部に入っていくと時間が足りなくなりますので、ここで今御紹介する1、2、3、4、あとはその次の節の構造ぐらいを記憶にとどめていただきまして、あとの詳細のところはかいつまんでこちらから御紹介していくということで進めていきます。
まず、1の急激な環境変化というところで、温暖化の話などから中緯度との連鎖、1.1、1.2、1.7というところまで入ってきまして、各海洋、雪氷、あとは1.6では古環境というところを、2ページの急激な環境変化の中に入れております。1.7では環境変化の社会への影響。ここで社会というものが登場してきます。
次に、2のところでは変動時間スケールの比較的長い分野ということで、幾つか分けてみました。
あと、3のところで出てくるのは、ブレークスルーを可能にする手法ということで、モニタリング、モデリングなどという話。
最後の4番、基盤のところでは、観測プラットホーム、設備、データ、体制、人材育成などとして構成していきます。
その中から幾つか抽出してお話ししていきたいと思います。
3ページ目にポンチ絵を掲げていますが、中心部に温暖化というのがありまして、最近の環境変化の大きな関心事、温暖化をめぐる様々な研究分野の関係ということを、ここにまとめています。
両矢印があるのですが、フィードバックとありまして、これは片側への影響ではなく、原因が結果になって結果が原因になってと、そのようなやりとりがあるということで、大変複雑なものです。どれか1か所を理解したからといって、ほかのところが全部うまくつながるわけではなく、同時に両方見ないといけないという複雑さ、あるいは取組の難しさがあります。この中で幾つかのターゲットを絞って、今まで研究が行われてきていたところです。
次の1.1からこのようなデザインでまとめていきますけれども、北極温暖化増幅。北極が現在、大変大きな関心、大変大きな社会への影響となっているところは、温暖化がいち早く進んでいて、その影響がいろいろなところに出てきている。自然科学に出て、それが社会に出て、あとは高倉委員からお話があったいろいろな場面に出てくるというところです。北極でどうして温暖化が進んでいるのかという根本的な原因を探る研究が、ここで行われています。
それぞれのページ1番下のところに、緑、赤、青、黄色と、タイムライン、時間スケールを少し入れています。これは、GRENEプロジェクトで実施されたものは、どういったものがこのリストの中にあるか、あとはArCSで現在実施されて、重点的に注目されているところというものがあります。
右側の青と黄色のところは、特にコミュニティーのコンセンサスをとったものではなく、左側の緑と赤で抜けていたもの、まだ取り組まれていないもの、あとすぐには結論が出なくて続いていくだろうというもの、そういったものが入っていますので、赤までのところと右側の次期、今後のところでは少し性格が変わります。左側の方はこれまでに行ってきたところです。右側は残っているところ、あるいは今後問題になるだろうというところです。
5ページには、上の青いタイトルのところに、北極と中緯度の気象連鎖ということで、北極ではない中緯度の国がどうして北極に関心を持ってきているか、あるいはどう関係しているかというところですと、今、経済、社会、政治、いろんなところで北極との関わりが話題になっていますけれども、もともとはこの自然科学的なつながりというものが発見されてきていました。中緯度の気象は北極の影響を受けているという理解が、かなり進んできています。
最近ですけれども、逆に中緯度から低緯度の影響が北極に及んできているということで、一巡してきているという理解がこの数年の間に進んできました。中緯度側は結果、北極の影響を受けているだけではなくて、実は返しているのだということが分かってきています。そういった取組、自然科学としての取組みについてです。
次の6ページには、物質循環、生態系というもの。ここでは物循環というところで、大気、温室効果気体の話だとか海洋生態系の話といったものが入っております。個に見ていくと時間がありませんので、ここで見ていただければと。
下の緑、赤のところ、ここは問題点の認識もありまして、GRENEでもArCSでもかなりいろいろな取組が行われてきたところですが、すぐに答えは出ないものですけれども、そういう取組が行われてきました。
海洋・海氷変動が次の1.4にあります。海氷が目に見える形で環境の変化が分かりやすいものですから、北極の温暖化、地球温暖化とすると、そこに目が行きますけれども、実はその背景になる海洋そのもの、あとは大気、そういったところに原因があることは分かっていますので、海氷とその周りの環境についての話になります。
次の8ページには、雪氷圏・水循環とあります。温暖化の話題のときには、氷河氷床が解けて海水準が上がる。これがグリーンランドのような高緯度の世界の話から、熱帯に近い低緯度の島嶼国の海水の上昇による危険というところまでつながるような、氷河氷床の融解という言葉がまず出てくるのですけれど、見えないところでも変化が起きておりまして、マル2のところに永久凍土とありますが、こういった永久凍土が静かにどんな変化を起こしているのか、そういったところも今話題になってきているところですが、まだここは手がついていないところです。
特に土壌としての永久凍土の研究だけではなくて、メタンを放出するものということで、陸上の永久凍土、あとは海底の永久凍土も未知のものがたくさん残っているところがあります。
降雪量、水文過程の水循環というところも、温暖化に伴って動き始めたところがあります。
次の1.6ですが、GRENEでは何も記載がなく、ArCSで少し書かれているような古環境から探る現在未来の環境変化というのがあります。過去の研究、それも長時間のスケールになってきますと、目の前の温暖化とは余り関係ないような認識になりがちですけれども、実は将来予測をするためのモデル計算には、それが大切な検証データになっているというところで、過去に起きたことをきちんと再現できているかというところが将来予測のために重要なものとなります。
その中で氷床の研究など、氷床から出てくるデータがそのようなところで使われています。あとは今後の変動についても気になっているところです。
1.7、10ページ目ですけれども、ここで社会への影響ということを書いています。長期構想の執筆者の中には、人文・社会の研究の方にも入っていただいたのですけれども、まだ人数が少なくて、いろいろと情報を盛り込むことができていません。ですが一応ここは、社会への影響というところもその長期構想の中にも入っておりまして、そこから抽出してきたものです。
長期構想計画では、なるべく広い分野の問題点を抽出していくということをやったのですけれども、どれが最もプライオリティーが高いかというところは、その活動の中では抜けていますのでたくさん羅列しておりますが、大体重要なところはここに入ってきているだろうと言うことができます。
前回話題になりましたが、ジオスペースというところが前回の資料の中に全く入っていなかったということで、11ページ目、2.1、ジオスペース・超高層・中層大気というページをここに入れました。
温暖化というと、人間が住んでいる環境は地面に近いところなのですが、研究の認識は、上下方向に結合した大きなシステム、あとは高緯度と低緯度をつなぐシステム、そういったもののところに向かっていきまして、北極においてもこのジオスペースの研究、これまでの活動の実績から、今後の期待されている新しい研究テーマというところは、ここに挙げさせていただいているところです。
成層圏から対流圏の低い方の大気のところから、中層・超高層大気の横の変化へのつながり、あとは太陽風・磁気圏、そういったところの話がここに入っています。これはArCSやGRENEではほとんど扱われておらず、抜けていたところ。前回までの御紹介の中には何も入ってこなかったところです。
12ページには生物多様性、陸域と海洋のところを入れています。これも急激に変化が来る部門、あとは見えないところでじわじわ変わっていくと、いろいろな時間スケールのものがあります。あとは人間活動との関わりというところも、ここは大きく出てくるところです。
2.3、先ほど雪氷圏、水文、水循環というところで、凍土というものが見えない状態で、まだ手がついていないと。あとは陸上の永久凍土と海底の永久凍土、そういったところは凍土の中のメタンがメタン爆弾とかと言われているような感じで、急激に大きな変化が起きて、気候に影響を与えるかもしれないという警告は出ているのですが、研究は余り進んでいないところはあります。
GRENE、ArCSでも気にはしているものの、メーンのところに持ってくることができないという中で、昨年からIPCCの次期のレポートの中で永久凍土が抜けているというところも出てきまして、今後いろいろな国際活動の中でも注目すべきであるというものが話題になっているところです。
固体地球が2.4にありますが、これは大変長い時間スケールのもので、GRENE、ArCSの枠の中には収まらない、そういったものがありました。北極にとっても大事なテーマです。地形とか海底というところでは、ここは大きな関わりがあります。
次に、3というくくりの中では、ブレークスルーを可能にする手法ということで、3.1、3.2と、2枚上下に2つ、コンパクトにまとめています。
シームレスなモニタリング。モニタリングする対象と手法を、3.1の中に並べています。絵の中には人工衛星、船舶による観測、係留系などの現地での長期観測の実施、そのようなものをポンチ絵ふうに入れています。
モニタリング、それが3.1でして、3.2の方はモデリングとデータ同化。計算機を使ったいろいろな活動というところで、モデルの改良。モデルの改良は、例えば5年間のプロジェクトで新しいモデルを作る、改良するということはなかなかできず、それをターゲットにしてしまうと、5年間の中でなかなか成果が出ないことになるので、そこはプロジェクト的には対象にならないことがあるのですが、確実に改良していかないといけない活動で、努力が続けられているところです。
モデルが対象とする時間スケール、あるいは空間スケールについて、これもJCARの長期構想の中で研究者が作ったグラフですが、どういった研究対象をどれぐらいの時間スケール、空間スケールで見ているのかというものを、その中で網羅しています。
最後の2枚が基盤整備ということで、今まで見てきたのは個々の研究テーマ対象でしたが、基盤としてどういったものが考えられるかということを、ここに挙げています。
観測プラットホーム。砕氷観測船、衛星リモートセンシング、航空機、海外の研究観測拠点。観測拠点は、それぞれ他国の領土の中に日本の活動の場を作るということで、その国とのやりとりというものが必要になってきますが、上の方にあります観測船、衛星リモートセンシングなどは、これまで日本の研究の科学的な活動を引っ張ってきたもので、船舶や衛星による観測は、今後も途絶えてはいけない大事なところです。
設備というところでは、これも新しい計測設備を挙げていくと切りがないのですが、話題になっているものをここに挙げています。
あと、次の4.3、別の話題のこれもまた御紹介しますが、データというのは国境を越えて、あとは研究分野を越えて、大変ユニバーサルに重要なものとして認識されています。
この長期構想というものを作った際にそれぞれの研究者が自分の分野のレポートをまとめていったわけですが、同分野の情報を読むことではなく、他の分野のレポートを読むこと、見ることが実はこの長期構想のレポートの中で大変効用がありました。
他の分野がどんなことを気にしているか、どんなデータを持っているか、協力できそうか、そういったところで原型と種というものがこの長期構想という話題の中で出た経験があります。データはそれを可能にするもので、分野を越えたもの、国境を越えたものというところで重要なものです。
また、体制について。研究機関の話、あとは基盤の整備、広報、コミュニティーの支援、国際協力の推進、この辺も基本的で大切な活動です。
最後の4.5は人材育成というところで、いろいろな北極における活動の機会、チャンスが増えてきて、実は若手に対してはかなりチャンスが増えているはずですが、それを受け止める若手の人材がそれほど多くない、もったいない状況が実は発生していまして、もう少し上の方、教員から若手をサポートする、背中を押すような活動もここでは必要だろうと。魅力ある北極研究への人材育成というところで、改良がさらに必要なところだと思われます。
【藤井主査】  どうもありがとうございました。後ろの方のデータとか研究、観測プラットホーム、体制とか人材育成もこの次の今後の北極研究のあり方でも御議論いただきますので、それ以外のところで御質問等ありましたらお願いしたいと思います。
今回は比較的全体像が示されたと思いますけれども、この全体像、この問題意識、ここをやればいいというこの項目等は、国際的なコミュニティーの中で大体これをやればいいというコンセンサスや共有されているものと考えてよろしいですか。
【榎本委員】  この長期構想を作る際に、国際的に重要な関心、その中で日本がかなり貢献できるものという背景が少しありました。
【藤井主査】  ということは、これ以外にもあって、今でなくていいのですが、本当の全体像の中で日本がどこを分担し、又は国際協力でやっていくのかという図が1つ理解できればいいなと思うのと、あとは今回、GRENEとArCSと次期5年、その後のまた5年周期という形で出していただきましたけど、例えばGRENEの中でどこまでが達成されて、何が積み残されて次の期に入ったかみたいなところというのも、もう少し明確にできたらいいかなという気がします。
例えば番号が次のところにない場合には、それはもう終了して解決が過ぎたのかとかということもありますので、例えばページの8のところを見ますと、雪氷圏と水循環のあたりは、GRENEでは1がありますけれども、次のArCSは1がないので、ということは氷河の縮小とかそういう傾向の把握はもう既に終わったのかというところも含めて、明確になるといいと思います。これは終わったということを言っているのだと思います。
【榎本委員】  いろいろなArCSという予算の枠、あとは社会へのつながりというところに重点を置いたArCSプロジェクトの中で活動しているものが、ここに挙げられていまして。
【藤井主査】  必ずしも解決しているわけではない。
【榎本委員】  ないです。自然科学に集中したプロジェクトで別に動いている。
【藤井主査】  ですからその辺の関係ですね。ここだけでやる必要は全くないので、どの部分をやっているのかというところが明白になるといいなと思います。
皆さん、いかがでしょうか。
【藤井良広委員】  先ほどと同じですが、やはり10ページの人間社会の対応のところに軍事、安全保障が全くないので、これは今後繰り入れていかないといけないと思います。アメリカのその分野のデータは使えませんので。かつ、このロシアの安全保障をやらなければいけないので、ロシア研究の人にやってもらわないと。そこの辺を1つ項目で入れていただければなと思います。
【藤井主査】  どういう文言で入れたらいいでしょう。
【藤井良広委員】  「北極圏の軍事」と入れた方がいいのかどうか分かりませんけど、あるいは、安全保障研究とかルール作りとか。これは経済開発におけるルール作りと連動ですから。主要国の北極政策は、経済だけで軍事抜きというわけにはならないと思うのです。特に沿岸8か国は。ですから、この中に入れてもいいのです。政治・経済とやってもいいかもしれないです。あるいは、軍事という表現より、政治・経済か、あるいは政治・安全保障とか。実際には軍事ですけど。
【藤井主査】  ここでのスタンスとしてここでやるべきことなのか、例えば外務省なら外務省でやることなのか。項目として出していくことは非常に重要だと思うので、あとはここでどう扱うかみたいなのは、また御議論いただければなと思います。文科省の考えもあると思いますので。
【高倉委員】  よろしいですか。多分今の安全保障ということに関連しては、従来の軍事を含むようなハードな安全保障というのと、それから人間の安全保障を含むような、むしろ健康とかそういうことが恐らく一体となって研究されている現状があるので、それは多分経済的な開発資源とも絡むし、その経済的な開発をすることと気候変動というのは大きく絡んでいますので、軍事という言葉を出すかどうかというのは結構センシティブだと思いますが、全体としてやはり非常に必要な枠ではないかなと私も思っております。
【榎本委員】  北極のいろいろな国際会議の中では、例えばAC関係のところではセキュリティーというと、誘導セキュリティーですとか健康問題というところで、私の関わっているコミュニティでは話題になっていないところなので、そこは人文から意見を頂きまして、大事な項目ですと何か記述をしていただければと思います。
【藤井主査】  文科省の方として、何かお考えがありますでしょうか。
【林海洋地球課長】  文科省としてどこまでやるかということですけれども、安全保障といっても、物を作る、開発をするというのと違って、人文・社会科学としての政治学の研究になろうかと思いますので、あとはどう表現するかということではないかと思います。
【藤井主査】  内容として重要な部分は当然含んでいくということでよろしいかと思いますが、そういう形でよろしいでしょうか。テクノロジーとしては注意深くやっていく必要があり、不必要な誤解を受ける必要はありませんので。それではよろしいでしょうか。
これは今後のいろいろなプロポーザルの中で、最も重要なデータ、根拠となりますので、是非その辺のところも含めて、先ほどの海外の部分がもし非常に重要な部分があるのであれば、それも含めた形で全体を俯瞰できるようにして、日本がやっているところ、外国と連携するところという形ではっきりとしていただくと強くなると思います。
【池島主査代理】  日本語で安全保障というと、いろんな意味合いがあるので、セキュリティーという言葉を使ったときに、先ほどから出てきている先住民などの話で言うとヒューマンセキュリティーですよね。
いわゆる気候の地球規模の変化によって、氷が減っていく、融解してくるとかいうとコミュニティーが崩れるとか、先住民族の生活圏その他が脅かされる。それから食物連鎖その他のいわゆる生態系関係にも影響を及ぼして、それが先ほどの風説、そういうものにも関係してくるという意味でのセキュリティーというのは、一般的に使う言い方はあります。そしてACでもそういう形で使われることは多いし、人文科学でも社会人類学等で使われている。
どうしても、もう一つの方の安全保障というか、軍事という言い方で、軍事安全保障の方になると、やはり国ということを抜きではなかなか話が出てこないことが現状で、国の安全保障、それから国家間の枠組みというものを越えてどうするか、そこの位置づけをやっておく必要が行く行くはあるのかなと。今は特に入れることはできても、国というものがどうしても出てこざるを得ないのかなという感じはするのです。政治というふうにするにせよ。
【藤井主査】  ありがとうございます。それでは続きまして研究データについて、これも榎本委員からお願いします。
【榎本委員】  次の資料4、見開きで上下に2枚だけですけれども、我が国の北極環境研究データの連携状況ということでまとめました。
ADSと1ページの左肩に書いていますけれども、Arctic Data archive Systemというものです。サンプルとして御紹介に持ってきました。GRENE北極研究プロジェクトが始まった際に、そのプロジェクトの中では異分野の連携、あとはモデルと観測の協働ということが目指されました。
異分野ということで、生態系を調べている人、気象を調べている人、海岸の物理環境と上空の大気、そういったものは必ず関係しているものですから、それの情報共有をスムーズにするというところで、こういったData archive Systemというものを作りました。観測してきたデータは、そこに必ず短い期間の間に収めること、そういった流通させる仕組みを作ったところです。
あと、モデル研究、将来予測が大変重要でして、あとは起きているシステムがきちんと理解どおりなのかを検証するためにも、モデル研究、理論研究が行われていますが、観測とモデル、同じ研究地域、研究対象を見ていても、かなり言語が違うということがありました。
白くて太陽が反射するものというのが、モデルから見た白い雪ですけれども、雪の研究者は、実際内部の詳細な情報を見ています。あとは、下に地面があることも知っています。そういった分野ごとの連携と、あとはモデル観測間の交流というところでデータを、まずは自然科学の中だけでも、もう少し流通をよくしないといけないところでスタートしたものです。その後、これは国際的にもオープンになりまして、海外からのアクセス件数などもかなり増えているところです。研究データの検索もここで行われています。
あとはデータがあるのは分かっていて、使いたいけれどもアクセスするのが大変で、誰か研究所の研究者に頼んで切り出してもらうということがよく発生するのですが、自分で少し思いついたことを、その数時間のうちに少し試してみられないかというアクセシビリティーというところで、可視化ということをここで注目したところです。アイデアをすぐ見てみたいというのが研究者の常ですから、そういうところも進むと研究の一助となるかと思います。
あと、先ほどの日本が持っている科学技術の中の大切なものとして、衛星データというのがあります。北極のモニターとして日本の衛星は活躍していますので、そこについてはJAXAの全面的な応援、協力体制を作りまして、JAXAは、打ち上げてデータを作るところはしっかりやっているのですけれども、研究者の個別のニーズ、特に北極の分野に合うようなアクセスをここで可能にするということで、そこはJAXAの衛星検索件数も画期的にこれで増えましたので、両方とも協力したかいがあったということです。
国内でそういったものを整備してきまして、それが海外にも日本の売り、日本ができるものとして売り出していったところ、1つの国の中だったのでやりやすかったです。ヨーロッパに行くと、国を越えてなかなかそこまで合意が取れないので、やりたいもののなかなか進まない、うまくいくのだろうかどうか分からず、見ているほかにないという状況があります。
その点、日本が先進的にモデルケースをやったということがありまして、どうやったらそうやってうまくいくのだとか、こういうことは悩んでいないのではないかという質問が逆に来るような感じで、例えばACの会合などでもADSについての質問がかなり集中しています。
そういった活動を今、国際的にも公開してまして、次の2ページの右側の方にADSからメタデータ連携というところで、IASC(国際北極科学委員会)、あとはWMO、GEO(Group of Earth Observations)、DIAS、SIOS、SAONとありますけれども、こういった大きな国際的なデータを共有する取組との関わりが、大分確立してきました。
ただし、メタデータというと誰がいつどんなデータをとってきたか、どこにあるかという情報までは今できているのですが、その下の赤で書いています実データ連携構築というところはまだ部分的にしかできていないところで、これが今後の大きな課題。どの国もここに向かうところで苦労しているというのがあります。
初の日本で作られたデータアーカイブシステム、あとはアプリケーション、あるいは公開システムが今、北極の中ではかなり重要な先行研究として、あるいは実際に使われるものとして、日本が誇れるものになってきましたという紹介です。
【藤井主査】  御質問等お願いいたします。
【三枝委員】
モニタリングとモデリングの関係するところで、前回までも何度か問題になっていますように、北極の研究、あるいは温暖化の影響評価、将来予測という研究をするには、非常に重要な要素については、5年のプロジェクトで終わるのではなくて、ある種の方法でずっと続けていかなければなりません。
それは20年、30年、あるいはもっと長くという努力が必要で、でも5年ごとに切れていくプロジェクトでどうやって続けていくかというと、例えばある5年で手法開発をして、検証を一生懸命やって、本当は研究は終わらないのですけれど、大体できたものをモニタリングフェーズに持ってきて、だけれども予算は少し削減しなければいけないので、重要な項目についてはどうにかして続けますと、何かそういう、ここで開発してここから先はモニタリングフェーズとかいう計画があればと。
それでそういうものが例えば2.1から2で分かるようにして、その結果がモデラーにも分かるし、今説明していただいたこのすばらしいデータ公開システムでも分かるようにしていくと、これから研究していく人たちもこのデータについてはこのコミュニティーがかなり頑張って続けていく意思が強いと分かり、こういうデータに基づいた予測をやっていこうとか、こういうデータは恐らく続くと見込んでいろんな次の活動を計画しようとか、そういうことができるような気がします。
なので、研究開発の時点で、これは最終的にモニタリングに持っていくのだというのが分かるように持っていき、データ公開でも分かるようにしていただくといいと思います。
【榎本委員】  今年の3月にアラスカで、Arctic Science Summit WeekというArctic Observing Summit、何を観測して、どう維持していけばいいかというサミットがありまして、その中で今おっしゃられたような書かれる人の合意、理解はまずはリサーチでスタートしたもの、それがいずれはオペレーショナルなものに切り替わっていく時代が来る。そして、継続してデータを取っていくべきだと。
そのオペレーショナルに切り替わる際に、個人の個別の研究プロジェクト、1つの国では無理なときもあるということで、どう維持するかのファンディングのメカニズムをそこで考えないといけないということが話題になりました。いろいろな国、機関が今そこで悩んでいるところですけれども、ファンディングメカニズム、例えばステークホルダーという言葉が出てきますけれど、ステークホルダーが役に立つ場合には、ステークホルダーのファンドを期待してはどうかと、そういう話も出ていました。
あと、北極はすぐ国境で切られてしまいますから、国際的なルール、枠組みでカバーしておかないと、ぶつぶつ切れたデータになってしまうということで、そこは国際的な枠組みが、例えばあるデータが今ロシアで止まってしまっているんですけれども、国同士の事情はあるだろうけれども、科学データはこの10年間欠測になるようなことがないように、そこは維持するような取組をもっとハイレベルなところで作ってもらえないだろうかと、そういったところが話題になったところです。
【藤井主査】  ありがとうございます。今おっしゃったようにロードマップがすごく重要で、こういう絵だけだと何をいつまでにやるのかが分からないので、将来のことは分からないにしても、ある程度、何をいつまでにやるという計画をできれば出していただいた方が、議論になりやすいと思いますので、次に出すときは是非そういう形でも出していただければと思います。
それでは、次に移らせていただきます。
今後の北極研究のあり方という後半の方に移りたいと思います。今まで2回の議論があったわけですけれども、それを踏まえて資料5をお配りしております。
第1回委員会で、本委員会で議論すべき点として議論になった論点の中で、これまで十分に議論いただいていなかった点がありますので、本日はそれについて御意見いただければと思っております。既に今まで出たものでももちろん結構です。
ではまず事務局から、主な議論をまとめましたので、説明願います。
【小酒井極域科学企画官】  資料5をごらんください。こちらは第1回、第2回における主な意見を取りまとめたものです。○が第1回、◎が第2回で頂いた主な意見で、◎を中心に御説明させていただきます。
まず、【北極域研究の意義】の3つ目ですが、北極域に関して我が国は直接的な権利を有していない。そのため、北極圏諸国の領域ですとか利益にとらわれない、北極圏の持続的な発展・利用のため、非北極圏である我が国が科学技術の優位性を活かして、国際的な意思決定やルール策定等の政策形成過程へコミットしていくなど、国際社会においてどのような働き掛けができるのかを考えていくことが重要であるといったような御意見。
また、その次ですが、諸外国が科学技術を外交に利用することを明確に打ち出している。こういった中で、我が国の科学技術力の強みを踏まえた北極域研究の推進も、我が国の外交の強みとして位置付けてもよいのではないかといったような御意見。
また、その次ですが、これまでの個々の研究者といったものは、必ずしも我が国の立ち位置や北極全体を通した政策を意識して研究を行ってきたわけではない。北極域研究全体を俯瞰的に示すことによって、大きな目的と研究の関係を示すことができるのではないかといったような御意見。
その下ですが、北極域研究全体を俯瞰し、中長期的な課題や短期的な課題が明確になれば、コミュニティーとしても政策判断・課題解決に資する研究を戦略的に進めることが可能となるのではないかといったような御意見。
また、次ですが、北極域におけるオープンデータサイエンスというようなポリシーを明確に打ち出すことが重要ではないかといったような御意見。
2ページ目ですが、研究・観測というところで、上から2つ目、これまで得てきた知見を、大陸スケール、10年単位の時間スケール等で、今どのような変化が、どこで起こりつつあるかといった点で取りまとめ、全体が見えるようにする必要があるのではないかといった御意見。
また、その次のところですが、自然科学分野で得られた知見等を参考に、様々な法的枠組みは国際社会で形成されてきた。こういったことから、日本でしか得られない知見が枠組み形成に不可欠なものであれば、枠組み形成の場における日本の発言権が増すのではないかといったような御意見。
また、次ですが、これまでの研究成果により、今後の地球環境の変動を考える際の重要なケーススタディを、北極としては実施する場所として取り組んでいく必要があるのではないかといったような御意見。
その次ですが、北極海海底地形図の作成プログラムについても、全体を俯瞰する際には目を配っていく必要があるのではないかといった御意見。
また、海洋生物ですが、様々な分野によって、時間軸、研究のスピードが異なることへの留意が必要ではないかといったような御意見。
また、その次ですが、分野によっては10年、20年といった長期の観測が必要となる。現在多く見られる5年を区切りとするプロジェクト型の研究では、人材の確保でございますとか観測機器の整備など、継続性に課題があるのではないかとったような御意見。
次のページですが、3ページ目の上から2つ目の○です。ここは主にGRENE、ArCSのプログラムということで記載しています。GRENEの成果としては、北極研究に関するおおよその俯瞰図を取りまとめることができた点。またArCSでは、日本が国際社会の中でどの部分を担って、どのような部分で強みを発揮していくべきかという最終目標に向け、研究を進めていく必要があるのではないかといった御意見。
また、GRENE、ArCSを経験することにより、研究者も他分野との協働を意識し始めた。日本の強みを活かして、各分野の研究者が協働することが、北極研究での日本の存在感の強化につながるのではないかといったような御意見。
次ですが、ArCSでは、個別の研究が総合的な知につながっていくというストーリー性が必要ではないか。社会的ニーズを踏まえた、一歩先の知見に結び付くといったストーリー性が今後必要なってくるのではないかといったような御意見。
次の観測データのところですが、一番下ですが、大気、陸域、海洋といった個別の研究データの共有等によって、総合的な知見が生み出されるのではないか。共有されたデータを使用したモデル比較等によって、これまでの研究を一歩進めた知見を得ることができるのではないかといったような御意見。
4ページ目ですが、国際的な観測データのワンストップサービスについて、日本がリーダーシップをとってまとめていくというメッセージを出すことは、大きな意味があるのではないかといったような御意見。
次に、技術というところですが、観測を実施するためにはそのための技術が必要。こうした技術がないと今後の北極域における研究開発の進展はないというものもある。必須な技術のリストアップ等、技術維持・育成の観点が必要であるとともに、技術開発を含めた長期的な計画を作成することが重要。
その下ですが、海氷下での調査技術等、環境に悪影響を与えない調査、探査技術の開発を通じて、日本が北極域の持続可能な発展に貢献することは可能ではないかといったような御意見。
最後、ステークホルダーへの情報発信、産業界との関係のところですが、科学、技術、産業という分野がある。出口を見据えたときに、市場性がないと民間企業は参入してこない。そうなると、研究、調査だけで終了してしまう。そのためには、民間が研究資金を投入するような魅力的な枠組みを作ることが必要ではないか。
次ですが、長期的な視点からは、研究・観測の成果が産業に結び付くまでには10年程度、また、構造物の寿命も20年、30年であるので、それだけの投資をするか否かという点についての議論も必要ではないかといったような御意見でございます。
以上、資料の御説明でございます。
【藤井主査】  今の説明に何か、御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。これは確認ですので、きょう前半でやったこともかなりこの中に入っております。
この整理の下で、資料6をごらんになっていただきたいと思いますが、審議に当たっての論点というところで幾つかの論点があり、これに基づいていろいろ議論をしてきたわけですけれども、この中で特に今まで余り議論されてきていなかったと思われるところについて、きょう御議論いただきたいと思います。
1つは北極域に関する研究開発に関する論点。2の(2)ですが、その中の下から2番目のポツである、北極域研究を一層進める観点から、北極域研究船など、北極域の国際研究プラットホームの在り方についての検討が必要ではないかというのが一つであります。それから、温暖化等、全球的な課題でありますので、南極域研究やグローバルな研究の相互連携を進めるべきではないかという、この2つについて、御議論いただきたいと思います。
それから、その下に国内の研究拠点ということで、極地研、JAMSTEC、北大という研究拠点が掲示されているわけですけれども、これについて余り議論されてこなかったと。次回、この点については、きょうと同じように発表していただくということになっておりますけれども、そこでどういう発表をしていただいたらいいか、どういう情報を知りたいかということも含めて、ここで御意見いただければと思います。
それから、人材育成と次のページにありますけれども、特に若手研究者をどう育てていくかという観点については非常に重要ですので、これについても御議論いただきたいと思います。
大体これ1つあたり10分ぐらいしか時間がとれないですが、御議論いただければと思います。
それでは、最初の北極域研究を一層進める観点から北極域研究船など、北極域の国際研究プラットホームの在り方について検討をお願いしたいと思います。これについては、前のときにJAMSTECの船を使った研究等の御発表がありましたけれども、今後どういうプラットホームを形成していく必要があるのかということも含めて、いろいろ御意見いただければと思います。いかがでしょうか。
いろんなプラットホームはあればあるにこしたことはないわけですが、今御議論いただいております研究課題の中で、こういうプラットホームがあればそれは格段に進む。それから、国際的にいろいろな連携でやることもできるけれども、日本がこういうものを整備することによって、科学が一段と進むし、国際貢献になるし、日本のビジュアリティーに非常に貢献する。そういういろんな観点があるかと思います。
まず例えば、ここに出ておりますような北極域の研究船等について、御意見等があれば頂きたいと思います。お願いします。
【浦辺委員】
例えば、北極研究に非常に熱心な国としてインドがありますけれども、インドは船は持っていない。南極も研究をしているけど、南極の船も持っていなくて、全部傭船でやっている。ただ、北極の場合なかなか難しいというようなことは、研究所の方がおっしゃっていましたけれども、やはり耐氷船なのか砕氷船なのかとか、そこら辺になってくるともう大決断になるので難しいなという感じがします。
それでやはりインドが悩んでいるように、何らかの形でそういう船を自分で作るのか、借りるのかとか、ちょっとそこら辺の検討を先に進める、あるいはほかの国と、例えばシップタイムを交換してやるとか、そういうことの情報を少し出していただくとありがたいと思っています。
それと、船というのはやはりそれに何を乗せて何をやるかにも非常に関わってきます。一つの例として、地形の話が出ましたけれど、例えば大陸棚の延長申請という私が関わっていることに関して言いますと、サテライトを使った地形図というのはできるわけですけど、それで作った地形図では申請が受け付けられないということなので、例えばロシアの場合には原子力潜水艦を科学用として、マニュピュレーターまで付けて、北極の海氷の下を2か月ぐらい走り回るのも平気ということがあって、地形図は非常にきちっと作れるわけです。
ところがデンマーク、実際にはグリーンランドですけれども、デンマークであるとかカナダはそういうものを持っていないし、それから海の氷の底を調査できるようなAUVなども持っていないので、申請に関してはもう大変に不利になります。
デンマークはそれでも、構わず申請しているのですが、カナダは2年申請を遅らせて、海氷の下で地形調査ができるようなAUV、自律型ロボットと造ると言っていますが、そこまで考えているわけで、そういうものを乗せる母船なのかどうかということも含めて、北極域研究船というのはどこまで踏み込んでやるのかによって変わってくるのです。
さらに、砕氷船は大きいものと小さいものが要ります。大きいもので大きい氷を壊して、小さいものでその壊し損ねたものを細々と壊しながら、普通の調査船が調査をするということが必要になってくるので、そういうパッケージで持っている国がロシアしかないものですから、そういうところとどうつながっていくのかとか、そういう可能性が研究者の間であり得るのかとか、お金を出して傭船するのであればそれは可能なのかとか、そこら辺の情報がもう少しあると、判断ができやすいなと、素人ながら思う次第です。
【藤井主査】  この辺の検討については、極地研等を中心に何か、今まで研究というか、調査を積み上げられてきたのでしょうか。
【榎本委員】  GRENEプロジェクトのときには、カナダの砕氷船をチャーターして、チャーターに対してシップタイム分を払ったのですが、かなり苦労しました。その国の都合で簡単に計画がキャンセルになったり、航海自体が今年ありませんと言われてしまったり、現場にいても簡単にプライオリティーが向こうの都合で変えられてしまうという苦労をしました。その辺でいい方法が出来上がったらよかったのですが、結局は苦労する経験で、逆に今終わっているところがあります。
あと、研究対象としましては、北極海、北極中心に海があって、それがターゲットになることが多いのですけれども、周り60度、70度にちょうど一周する入口があります。60度、70度、シベリアがちょうどありますし、アラスカも全部60度、70度。グリーンランドの大半がやっぱり60度、70度です。そのゾーンは陸がカバーしていまして、70度から北に行くと極が始まるのですけれども、70から80の間、氷が夏は減って冬はオーバーする。それが振動しているような状況です。
そこは、夏の間に入っては冬、凍り始めるとすぐ逃げてくるところなのですが、実は自然現象、先ほどは国境を越えての観測と言いましたけれども、時間を超えて、季節を超えての情報が大変必要なところで、冬になってもその場で何らかの観測が作られるようなものが、70度から80度のところであり、今後重要な関心になってくるだろうと思います。
さらにその最北部の80度から90度、実はここにも変化が起きてきているところで、北極の海氷を研究するときに船が通れるかどうかが今気になっていますけれど、実は真ん中にも氷がすかすかになるような時期、場所はあります。海外の研究者の研究発表なんかにそういったところの真ん中を貫くようなラインを時々見掛けることがあります。公海もそこにあるというところなので、公海であって次の海流変化が起きそうなところということで、誰が一番先に、どういう形で真ん中のデータ収集が取り組まれるのかなというところは大きな関心があるところです。
【山口委員】  私もGRENEでカナダの観測船に乗せてもらったりもしたのですけれども、やはり大変です。どうしても傭船となると持ち主の意向が全てに優先されますので、手続上も非常に大変です。実施許可がいつ出るのかというのも全然分からなかったりします。国民性の違いというのもあると思います。
基本的に北極圏域が今これだけ注目されているけど、砕氷船の数が足りないというのが現状だと思います。したがって、そういうことが起きているのだと思います。買い手市場で向こうがお金をもらいたくて、遊んでいる船を使ってほしいという状態だったら、こちらの意向も聞いてくれるけど、今そういう状態ではない。そういう意味では日本独自の砕氷観測船というのが是非必要だと思います。
どのレベルまで必要かというのはこれも大きな問題だと思いますが、例えばGRENEのところの私の課題で夏の海氷分布を予測するというのをやって割といいやり方を見つけたのですが、それは実は冬の氷の動きに注目しています。
冬の氷の動きから夏の予報をしていますが、生態系に関しても春、氷が解け出したらアイスエッジブルームといって植物プランクトンの大発生が起きますけど、それのもとになっているのがアイスアルジーといって冬場に氷についているコケみたいな植物プランクトンじゃないかとも言われていますし、一方では、アイスエッジブルームはそうではなく、別のものであって、アイスアルジー、氷にくっついている植物プランクトンは、動物プランクトンの越冬に役に立っているという説もあります。
要は冬と夏でつながっているのですが、冬の情報が決定的にないのです。だから、冬も含めて観測できるような体制というのが是非欲しいとは思います。これは研究者はみんなそう思っていると思います。
【藤井主査】  そうするとやはり、冬という氷が非常に張った状態の中での観測ができることが必要だと言われているのですね。
【山口委員】  ただ、冬の北極海の氷も宇宙から見たらいつも全面を覆っていて、ああ、いつもすごい氷だねとしか見えないのですが、実は夏解けている範囲が凍っているだけですので、昔の冬の氷とは全然違います。ですので、そういう意味では、砕氷船も楽にはなっているはずです。
【藤井主査】  リモートセンシングでできる部分がどの部分で、実際に最中に行って、例えば高さ、深さ分布が必要とか、そういうのは決定的に必要なところはどの分野なのかのような選別が、先ほど榎本先生の出された課題の中で、どこが本質的に重要なのかというところがまず非常に重要と思います。
その後にそれが必要だとなったときに、恐らくどういう機能が必要かということも、そういう中からある程度出てきて、最大公約数的なものか、最小公倍数にするかは分かりませんけれども、そういうのが出てくると。
その中で今度はアベイラビリティーとしては、自分たちで作るのか、それともほかのものをレンタルするのかみたいな選択になっていくかなと思います。恐らくかなりその場での観測というのがどうしても必要になってくる部分があると思うので、その辺を少し整理していただくことが、まず非常に重要かなと思います。その後、さっき浦辺先生がおっしゃったみたいに、どのくらいの選択枝があるのか、そもそもないのかというような話になるかと思います。
これは今決断したとしても、例えば4年とかかかる話です。概算要求して作るとなると、どんな早くても4年。だからこの中期は間に合わないような、又はArCSの中では入りきらないということなので、当然今議論している次の期に関してのニーズというのが必要になってくるのではないかなと思います。ただ、今始めないと次の中期もあり得ないので、ここで議論しておくことは非常に重要かなと思います。
【横山委員】  加速器科学を中心としたビッグサイエンスをよく拝見している立場から、やはり船というのは大きな決断であって、それで行うサイエンスをよく考えた上で、設計をしていかなければいけないということだと考えております。
恐らく船の建造となると非常に巨額な予算が必要になってくると思います。
そうすると、昨今は先生方もよく御存じのように、そうした大きなプロジェクトが次々と通るような状況ではないので、ボトムアップ的には本来、学術会議を通してマスタープランの中に載せて、そこから文科省に持ってきて、ロードマップの中の何番目にランクインするかというような手順を踏んで持っていくというのが、学術コミュニティーとしては恐らく正当な持ち上げ方なのではと思います。

そういう議論を経るとやはり、レビューが十分にされるので、作った後にこれはまずかったということになりにくい体制になると思います。やはり政策的な背景はあれど、本当に作るのか、作らないのではないかということも含めて、ボトムアップの議論を是非十分に重ねる必要があるともおいます。

【藤井主査】  マスタープランについては、2017年はもう閉め切り、評価を学術会議でやっているところです。マスタープランでは国策としてやるという部分は扱いませんので、どう切り分けるかだと思うのですが、今言われたように科学的な重要性については、そういうところのしっかりしたレビューをとるということはかなり重要かと思うんですけど、その進め方として、そういう大型研究計画に出すみたいな話というのはなかったんでしょうか。
これは次は2020年なのでかなり先のことになりますけれども、そこの重点に入りますと、文科省のロードマップの中に入る可能性があるという仕組みになっていますが、それが極地研とかそういうのはなかったのですか。
【榎本委員】  大型研究計画では、極域科学のフロンティアというところで、この次の(2)の一番下の方にも、南極という言葉がどこかに出ていましたけれども、共通の科学的な現象、興味、あとはアプローチがあります。
そこでは北極は氷が減っていて、南極は実は氷が増えていて、両方とも理解するためには両方主要な案件、そういった科学的な検討もありますので、両方ともの科学に関する提案は、そこではまとめていたのですが、船に関しては予算規模が大分違いますので、サイエンスプランの中には、必要性は書いてあるものの、そこの中には書き込んでいない、まだ弱いところです。2020年に向けて、今もう一度全部活動を再検討しようとしています。
【林海洋地球課長】  観測船については、去年作られた我が国の北極政策の中でも言及されているものですから、当然必要性であるとかはきちんと議論をしないといけないと思いますけれども、その作り方については必ずしも学術の大型プロジェクトでだけではないのかなと思っております。政策の中にも、検討と書いてありますので、それも踏まえて考えていかないといけないと思っております。
【藤井主査】  国策的な見地からやられる場合には、大型プロジェクトを通る必要はありませんので。
【林海洋地球課長】  必ずしもないですが、もちろん必要性等については当然、検討しておかないといけないと思います。
【瀧澤委員】  私も関連して、横山さんと同じ委員会に入っているものですから、大型プロジェクトの方は現実的には学術機関課の方でやられていて、伝統的にもどちらかというとトップダウンからの志向が強いものとボトムアップからの志向の強い政策のカバーする分野は、多少違ってきたのかなと思うのですけれども、いずれにしましても横山さんの主張というのは、ボトムアップの意見をたくさん取り入れるような機会を作ってくださいということですので、別に大型プロジェクトでやる必要はなくて、そういうところに出た意見を加味しながらこちらで計画を練られるとよりいい計画になるのではないかなと思います。
【杉山委員】  私自身は船を強く希望する研究分野にいないのですけれども、私から見ても海洋の若手北極研究者を中心に船が必要だ、どういう研究ができるというような、まさにボトムアップの議論がここGRENEのあたりから始まっていて、私にも見えてきていますので、今こういうところには入っていないですけれども、そういう下地はよくできていると思います。
【榎本委員】  今紹介していただいたように、議論はいろいろと出てきていますので、これをもう一回集約するというか。
あと、その国内のボトムアップというものから、例えば国際的な、各国はそれぞれの分担地域をどうやって決めているのだろう、どこら辺の海峡にどれだけ船が入っているかと、時々そういったものを見ている話題もあります。
そういった中で、先ほどカナダの砕氷船の話をしましたけれども、カナダの砕氷船はやはりカナダの海域から出られない。地域が限定されてしまう。やはり自国の興味の範囲内でしかというものがあります。
その領土を持っている国が主張している以前の自然科学のデータ、環境に関するデータは信頼が落ち、第三者が客観的な目で評価したものの方が国際的に評価されることもありまして、そういった性格から船の活動範囲も、それぞれの領土がある国はやっぱり自分の領土の活動範囲になります。もう少し自由にデザインされているのは、例えばドイツの船だったり中緯度の国の方が、ここをしたりするようなことが見受けられます。
【藤井主査】  今いろいろご示唆いただきましたので、これについてはそういう形で、ボトムアップの議論があるということですので、それらをいろいろ開陳していただくのと同時に、さらにそのボトムアップの意見を集めることで、透明性を高めていただいて、議論できればいいかと思います。
実際にその後どういう形でそれを実行するかということについては、また先ほど浦辺先生がおっしゃったようにいろんな方法があり得るので、それについて、どういうところがそういう耐氷船、砕氷船を持っていて、それがレンタルできるのかとかいうことも含めて、御説明いただければと思います。
どこかで1回時間を設けて議論することは可能でしょうか。
【小酒井極域科学企画官】  承知しました。
【藤井主査】  今、船だけの話になりましたけれども、そのほかに国際研究プラットホームというのがあり得るのかどうか、もしおありでしたらちょっとどういうものがあるか。お願いします。
【高倉委員】  研究プラットホームと言えるかどうか分からないのですが、今のお話を聞いていて思い浮かんだのは、University of the Arcticというものがありまして、これは多分大学の連合みたいなものだと思います。要するに、北極域を研究する大学間のネットワークで、サマースクールや実際の研究のファンドも含めたことを行っているネットワークです。北極域の研究と言ったときに、ここは多分人文・社会科学だけではないと思うのですけど、普通、大学ではディシプリンベースで研究をやってくると、恐らく人文・社会系は比較的地域に関心を持ちがちなので、北極域というのは具体的にはテーマになるのですが、自然科学は余り北極域というテーマに関心を持たないと思うのです。
それは自然科学の人の意見を聞いてみると、やはり一番の問題は若手が育ってこないという現実があって、そうすると、こういった人材育成とかみんな全部絡む話ですけど、どのように研究をしていく枠を作っていくのかというのは、すごく重要な問題だと思います。
それでUniversity of the Arcticというのを見ていると、多分各国共通にそういう課題は抱えているのかなという印象がありますが、それを国際的にやっていくような枠組みなのかなと見ていて、やはり国際的なプラットホームというときに、国連のように何でも中立的な機関を作るのか、それとも比較的、ある種の方向性みたいなのを設けて国際的なプラットホームを作るのかによっても、随分作り方が変わると思います。例えばさっきの北極船のこともそうですけれども、日本の立場からその国際的なプラットホームを作るようなイニシアチブがあってもいいのかなと思ったところです。
【藤井主査】  これは人材育成にもきっと関わるので、また後で人材育成のところもありますので、そのときちょっとまた御議論いただければと思います。そういうソフト的なものもあるということですね。
【藤井主査】  次の全球的な課題を我々は扱っているわけなので、反対の南極や全球的な研究の相互連携を進めるべきではないかという、これは非常に当然といえば当然のお話だと思うのですが、これについて御議論いただけますでしょうか。
【三枝委員】
もちろん進めるべきと思います。ただ、北極域あるいは南極域を専門にやっているプロジェクトが、温暖化研究の全部を引っ張っていくのは大変なことだと思うので、次の2ページ目の一番上の「各省で実施する研究・観測について、オールジャパンとしての横断的なネットワークを構築すべきではないか」、これと一緒に進めていくのがいいのだろうと思います。
やることはたくさんあると思います。例えば1つは、その温暖化の問題であれば、北極研究で得られた過去10年ぐらいの非常に詳細なデータを使って、日本における地球システムモデルをよくしていく。つまり気候変化の二極モデルを、ステップを踏みながらよくしていくと。そのときに、その北極研究が収集した陸域も海洋も大気もエアロゾルも生態系も含む階層的で総合的なデータが生きると思いますし、あるいは全球的なコミュニティーに対してそれをやっていますよと言うことによって、さらにモデルの人が関心をもつとか、あるいはもっと予測をよくするためには、どういうデータを長期的にとらなければならないかが明確になってきて、プライオリティーの付け方が明らかになっていくとか、いろんなメリットがあると思うので、それは一例ですけれども、多分北極だけでも非常に大変だと思うので、横断的なネットワークをうまく作り、例えば全球モデルをやっている人にうまくリードしてもらう形でそこをうまく進めるとか、何かそういう連携の仕方ができたら進むだろうなと思います。
【藤井主査】  観測は非常に重要な要素だけれども、モデラーとかシミュレーションが中心となって全体を理解すると。
【三枝委員】  それは一つの例ですが、全球的な例えば大気観測とか全球的な海洋観測とか、観測の連携というのももちろんあると思いますし、でもそれは意外ともうやっていられるのかもしれない。研究者同士は結構もう知り合っているのだろうと思うのですけど。
【榎本委員】  それほどでもないです。
【三枝委員】  それほどでもないですか。では、分野ごとの連携も必要かもしれませんが、やったらすごく進むだろうなと思うのが、極域の将来予測をこのデータでうんとよくするというのは、誰が見ても進むだろうと思うのです。古環境のデータも生きると思いますし、過去10年ぐらいの総合的なデータが大きく生きると思います。
【藤井主査】  今までの議論で、北極の温暖化の顕著さというのが非常に強いとかあったのですけれども、シミュレーションとかモデリングをする中で、ほかのところのデータも必要なわけだけれども、特段に南極、北極が必要だという理由は何かあるのでしょうか。今まで決定的に欠けているとか、そういうような理由がありますか。
【三枝委員】
全球的なモデル開発をしている人たちは、しばしばモデル比較実験や改良を行いますが、全部のプロセスを一度によくすることはできません。
ですから、今回の例えば国際モデル比較実験では、陸域生態系のプロセスを焦点にしましょう、観測データがこれだけありますから、これが再現できるかどうかやってみましょうとか、そういうふうに進めていくわけです。海と大気の熱交換のところがうまくいくかどうか、それをターゲットにやりましょうとか。
その一つとして、極域の観測データが過去10年にわたり、よく再現できるかどうか、今度はそれをターゲットにやりましょうというようなデータの使い方ができるだろう。
【藤井主査】  そうするとグローバルのシミュレーションも拡大に進歩する、そういうコンセプトでよろしいですか。
【三枝委員】  そういうことです。そのターゲットの選び方に工夫が必要で、今やると本当に進むところを選ぶ必要があり、しかももっと言うならば、できればこの全体の流れから言うと、すごく難しい物理プロセスをよくしますというよりは、人間の生活に関わるような部分、例えば農業生産への影響に関わる部分ですとか、水循環や水資源、あるいは森林火災や健康被害の問題でも結構ですが、人の生活に関わるような将来予測がこのデータを使うことによってよくなりますという戦略が作れれば、非常にタイムリーだろうと思います。
【藤井主査】  非常に重要なアドバイスだと思うのですけど、ArCSの中にはもう既にそういうような試みというのは計画されているのでしょうか。
【榎本委員】  はい。なかなか完成、満足できるところまでは行き着くものではないのですけれども。
【藤井主査】  というか目的として入っているかどうか。
【榎本委員】  はい。GRENEでまず関わり始めまして、ArCSでも進めているところですが、まだ努力途上というところです。
【藤井主査】  今言われたみんな同じようなことをやると言っているのだけれども、例えば北極のことがちゃんと再現できるかどうかということをターゲットにしてやるみたいな、特化してやることが全体に非常によくなるという考え方ですよね。そういう考え方は今設定されているのですか。
【榎本委員】  はい、全球のプログラムをいろいろいじっていても、北極がボトルネックになっていて、そこがきちっとつながっていないと全体がよくならないという認識があります。ただ、5年間のプロジェクトでは改造するところまではなかなかいかなくて、どこが外れているか確認する、そういったところに問題点を絞っていく時点にあります。
【藤井主査】  そういうことはちゃんと織り込まれてはいるということですね。
【榎本委員】  はい
【藤井良広委員】  少しこの説明では、今の話は出てこないですよね。やっぱり追加的にここで、論点として研究開発の今後をやっていくときにはもう少し書かないといけないと思います。このようにやっているのではないのということと、その延長線だけなのということですよね。しかしこの表現では、そう読まれてしまう可能性がある。そうではなく「さらにこの北極研究をこうやることにやって、全地球的な観測等が進むのですよ」と読めるような表現にした方がいいと思います。
【藤井主査】 最初に北極域の温暖化にして理解するという話が出たわけですけれど、それをもってしてグローバルな温暖化のメカニズムが、どこまで解明がさらに進むのかという、逆のフィードバックみたいなものが非常に重要で、本来一番重要なところは、北極も大事だけれども、全球的な温暖化の問題ですので、その辺のアルゴリズムというか論理的なフィードバックをちゃんと明確にしていくと。
どの部分がよくなるのかというよりも、先ほどのダイアグラムがあったと思うのですが、どの部分がよくなって今までよりも格段にいいものができるのか、理解が進むのかというところも強調していただけると、非常に北極、南極の強みが増すんじゃないかと思いますので、ちょっとそういう観点でもよろしくお願いしたいと思います。
【浦辺委員】
資料6で見ると、国際連携とか国際協力という欄があるのですけど、基本的にはほかの国でも言っているように、国際分担というのが非常に重要かなという気がします。要するに、同じことを重複してやるのも必要かもしれませんけど、できればそれぞれの強みを生かして分担していって、ここは日本が分担してきちっとやることによって、全世界的に現象の理解を早くすることができるとか。
そうしないと、例えば船ができないから研究が遅れると言っていると、多分その間にほかの国で先にいろんなことをおやりになるでしょうし、日本がどうしてもそれをやらないと前に進まないという説得力が非常に弱くなるので、基本的には国際分担の案をお示し頂ければと思います。
そうすると、例えば船を造るでも、IODPの場合と同様に、どうやって分担をしていくのか、ある国は何を分担しましょうとか、お金をコミングルドファンドにして本当に良い研究にはそのファンドから出しましょうとか、あるいは船のオペレーションやプランニングは一緒にやりましょうとかいうものがあって、そういう中で、例えば国際的に日本はこういうことをやってくださいとかという要請が来れば、非常に明快に日本の寄与というのが分かると思うのです。今の段階だと少しそういうところがなくて、日本では何をすればいいのか、それはほかの国とどういう関係があるのかというのがちょっと見えにくい。
それともう一つは、先ほどのプレゼンにもありましたけど、やらなければいけないことが山のようにあるなと。そうすると、その山のようなリストがある中で、さっき出てきた船は一体どれとどれに関係していて、どれとどれがどれぐらい重要なのかとかいうのが、むしろ分かりにくくなってしまう恐れがあります。もし日本が日本のテクノロジーを生かして船を造るべきだということになれば、ほかの国も、例えばドイツがPolarsternを持っているような形で、日本はこっちの半球でそういうPolarsternみたいな船を造って、国際協力でやれば、向こうの船が来られないところはこっちから行けるのだとか、そこら辺の大きな枠組みの中で寄与ができると思います。
そうすると例えば、船を持たないと決めている国、持つと決めている国との間でもう少し枠組みができれば、いろんな問題が少なくとも私にとっては非常にクリアになるので、日本だけでやると思わずにという枠組みが何とかできないものか。さっき三枝先生がおっしゃったように、モデルをやるためには、日本がこれを分担しなくちゃいけないとか、そういうことがぱっと見えてくると、すごく助かるなという気がします。

【藤井主査】  その辺のディスカッションというのは、いろいろなところで行われているようにも思うのですが、物事が必要性は言っているけれども、どうシェアをするかとかいう議論はなかなか進まない、欲しい、欲しいというところが多いような気がするのです。
例えば日本みたいな経済的に発展した国に対してはこういうシェアをしてほしいとか、貢献してほしいとかというのはあるのでしょうか。先ほどのデータの方では、日本に対する期待が大きいという話があったかに思うのですが、その辺はどうですか。日本に是非船を持ってほしいという、北極の科学のコミュニティーからの強い要請みたいなのがあるのかどうかということだと思うのですが。
今までそういう話は余りなかったということですか。持つにしろ持たないにしろ、そういう話はある程度決着を付けた方がいいので、国際的にどこかで議論をすることは可能ですか。
【横山委員】
少しほかの例ですけれども、ほかの分野では重要な成果がでるサイエンスがそこにあるときには、みんなが一生懸命自分の国に訴えかけて、自分たちでもって、自分たちの成果として論文を発表するということを好みます。逆に大き過ぎて持ちにくいし、成果も分かりにくくて説明しにくいから、とにかく日本でやってくれ、経済発展しているだろうということで押し付けたがる、そういうやりとりもあります。
なので、専門のの先生方が本当に必要だと思えば、それはやっぱりこうした場でも分かりやすく、これまでも十分お話しいただいて、ボトムアップの意見を我々に見えるように整理していただけるとありがたいと思います。
【藤井主査】  一番重要なのはいわゆるサイエンティフィックのニーズが本当にあるかどうかですね。
【藤井良広委員】  ドイツの場合はそういう国際貢献的な、国際協力的な形で、その船が位置付けられているのでしょうかね。
【浦辺委員】  ドイツは不思議な国で、自分の国の海はほとんど存在しないぐらいしかないみたいなところですけれども、世界的にそういう海の資源の補助であるとか、SONNEという船はほとんど母港に帰ったことがないぐらいずっと海へ出ております。
今は2代目のSONNEがまた世界中を回っているし、Polarsternはやっぱり名前がそうなので、北極とかそういう極地にすごく出掛けていって、ドイツの研究者もたくさんおられますけれども、そういう意味では非常に国際的に両方とも動いている、不思議な国ですね。あるいは元造船屋さんの強かった国なので、そういう船を造るということが好きなのかもしれませんけれども、非常に大きな寄与をしている。
【藤井良広委員】  例えばドイツのやり方をそのままマネする必要はないのだけれども、そういう例を見せれば分かりやすいですよね。実際に恐らくは、インドの先ほどの例もありましたように、持っていないところは、もし日本が持てば一緒にやりたい、と考える可能性はあると思います。インドだけじゃなくて、ほかの小さなアジアの国でも研究者がもしいれば、日本の船で一緒に研究できますよという絵を描いて示すことはできると思うのです。
【藤井主査】  研究を行うだけではなくて、イニシアチブをどうとるかというときに、自分たちのものがあるかどうか、これはやっぱり本当に大きな違いになるので。ただ単にいい成果を出すだけであれば、人のデータでもいいわけですけど、どこまで本当に主体的に進めるかだと思うので、こういう話はその辺の覚悟も必要と思います。
では次、研究拠点ですが、3つの機関による研究拠点ができたわけですけれども、ここの体制・整備状況を強化すべきではないかということがこの項目であります。そういうものができたということはよく存じ上げているわけですけど、実態がどういうふうになっているのかとか、その中でいろいろ苦労されていることがいっぱいあると思うのですが、もしあるのであれば、どういうところが苦労されているのかとか、それをどうよくしていくか、今活動されていると思いますけど、そういう観点もあるかと思います。
次回、北大の齋藤先生に、お話をいただければと思っております。齋藤先生、よろしければ御発言いただけますでしょうか。
【北大齋藤教授】  北極域研究共同推進拠点というのが4月1日にできまして、中核施設が北大の北極域研究センターで、連携施設としてJAMSTECと極地研の北極環境研究センターが入っています。
ある意味でこの拠点は、コミュニティーへのサービスを中心にやります。研究コミュニティーへのサービスと、産学連携という、いわゆるステークホルダーへのサービス、その大きく2つの点で、従来の全国の共同利用拠点と同じように、共同研究とか共同集会も入っています。
あとは人材育成についても、権利者だけでなく、産とか官の方も含めて人材育成をしようというのが入っています。
【藤井主査】  どうもありがとうございます。今のような中で進んでおりますけれども、ここで何か御質問などございますか。
お願いします。
【藤井良広委員】  今、日本人以外の方、何人か海外の研究者は拠点にいらっしゃるんですか。
【北大齋藤教授】  その拠点は日本のコミュニティーと、もちろん海外の研究機関との連携とかいうのも入ってきます。
【藤井良広委員】  海外の研究者がこちらのセンターに来たり、一緒に研究されているというケースはないのですか。
【北大齋藤教授】  拠点そのものにはそういう仕組みはないです。
【藤井主査】  3つの機関での役割分担と、それから連携が重要だと思うのですけれども、役割分担がどういうふうになっているのかとか、そういうことも含めて、次回特にいろいろお話しいただければなと思いますが、いかがでしょうか。
大変申し訳ないのですが時間がなくなってしまって、人材育成について議論する時間がなくなりました。非常に重要な項目を残してしまいましたが、次回にこれはやらせていただくということで、お許しいただけますでしょうか。
そうしましたら、事務局の方から何か御連絡ございますか。
【山口海洋地球課長補佐】  次回会議につきましては、先生方に日程調整をさせていただいた結果、7月5日の開催を予定しております。開催案内につきましては、後ほど御案内させていただきますのでよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【藤井主査】  それでは、今日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――


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